JP4439620B2 - ホスファゼニウム塩の製造方法 - Google Patents

ホスファゼニウム塩の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホスファゼニウム塩の製造方法に関する。詳しくは、無機アニオンからなるホスファゼニウム塩を、塩基性水酸化物によりアニオン交換するアニオンからなるホスファゼニウム塩の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機アニオンからなるホスファゼニウム塩は、ポリオキシアルキレンポリオールを製造する際、アルキレンオキサイドの重合触媒として有用な化合物であることが特開平10−77289号公報に開示されている。更に、該公報には、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン等の有機アニオンからなるホスファゼニウム塩の製造方法として、クロライドのような無機アニオンからなるホスファゼニウム塩を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド等で処理する方法や、イオン交換樹脂を利用する方法が例示されている(21頁、カラム40、8〜19行)。
【0003】
しかし、該公報には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド等で処理する方法において、その詳細な製造条件や得られたホスファゼニウム塩の組成に関して、何ら記載されていない。
【0004】
更に、有機アニオンからなるホスファゼニウム塩であるホスファゼニウムヒドロキシドの製造方法として、イオン交換樹脂を使用する方法が例示されている。ホスファゼニウムヒドロキシドの前駆体である、ホスファゼニウムクロライド、例えば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムクロリド(特開平10−77289号公報、28頁、カラム53、比較例1に記載)を例にとると、該化合物は、水に殆ど溶解しないため、水、及び、水に相溶する有機溶媒との混和溶媒に溶解させた際、溶液中の該化合物の濃度を希薄にする必要があるため、生成するテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシドの濃度も希薄となり、濃縮工程が必要になる。その為、生産スケールを上げた場合に、ホスファゼニウム塩の製造時間が長くなる。
【0005】
更に、イオン交換樹脂をカラムに充填して用いる場合、イオン交換樹脂中のイオン交換基を水酸基に交換する操作が必要であることから、より簡便、且つ、効率的な、ホスファゼニウム塩の製造方法が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無機アニオンからなるホスファゼニウム塩から簡便、且つ、効率的に、純度の高いホスファゼニウム塩を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を続けてきた結果、ホスファゼニウムカチオンとアニオンからなるホスファゼニウム塩を製造する方法において、ホスファゼニウムカチオンと無機アニオンの塩を含む溶液に、特定量の塩基性水酸化物を含む溶液を加えることで、上記課題が解決できることを見い出し、本発明の方法を完成するに至った。即ち、本発明は、化学式(1
【0008】
【化3】
Figure 0004439620
【0009】
〔化学式(1)中のa、b、c及びdは全てが同時には0とならない0〜3の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。Q- はヒドロキシアニオン、アルコキシアニオンを示す〕で表されるホスファゼニウムカチオンとアニオンとからなるホスファゼニウム塩を製造する方法において、化学式(2
【0010】
【化4】
Figure 0004439620
【0011】
〔化学式(2)中のa、b、c及びdは、全てが同時には0とならない0〜3の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。rは、1〜3の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Tr-は、価数rの無機アニオンを示す〕で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、及び、該無機アニオンの塩を溶解する有機溶媒を含む溶液に、該無機アニオンの塩に対して、塩基性水酸化物0.86〜1.6当量、及び、該塩基性水酸化物を溶解する有機溶媒を含む溶液を加えた後、反応生成物中における化学式(2)で表されるホスファゼニウム塩の含有量を15重量%未満に制御することを特徴とするホスファゼニウム塩の製造方法である。
【0012】
その際、化学式(2)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩に対して、塩基性水酸化物0.91〜1.3当量を加え、反応生成物中における化学式(2)で表されるホスファゼニウム塩の含有量を10重量%未満に制御する前記製造方法が好ましい。更に、化学式(1)中のQとしては、ヒドロキシアニオン、又は炭素数1〜4のアルコキシアニオンのホスファゼニウム塩が好ましく、化学式(2)中のTr-に関しては、Tがクロライドで、rが1であることが好ましい。
【0013】
本発明により、イオン交換樹脂法等の煩雑な操作を経由しないで、簡便で、且つ、効率的に、しかも純度の高いホスファゼニウム塩の製造方法が提供できる。従って、本発明の製造方法により得られるホスファゼニウム塩は、有機反応のみならず、高分子反応にも使用できる極めて有用な化合物である。特に、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合する際の触媒として有用である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、無機アニオンからなるホスファゼニウム塩から、アニオンからなるホスファゼニウム塩を得る新規な製造方法である。先ず、化学式(1)について説明する。化学式(1)で表されるホスファゼニウム塩は、特開平10−77289号公報記載(該公報記載の化学式(7)に該当する)の化合物と同一である。
【0015】
本発明において、化学式(1)中の、a、b、c、dは、全てが同時には0とならない0〜3の整数である。好ましくはa、b、c及びdの順序に関わらず、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)、(0,0,1,1)、(0,0,0,1)の組み合わせ中の数であり、最も好ましくは、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)の組み合わせ中の数である。
【0016】
Rは、同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。Rとして、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−ブテニル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチル−2−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、2−オクチル、2−エチル−1−ヘキシル、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル(tert−オクチル)、ノニル、デシル、フェニル、4−トルイル、ベンジル、1−フェニルエチル、又は、2−フェニルエチル等の脂肪族、又は、芳香族の炭化水素基が例示できる。これらのうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等の炭素数1〜10個の脂肪族炭化水素基が好まし。メチル基、又はエチル基が最も好ましい。
【0017】
更に、有機アニオンを示すQ- はヒドロキシアニオン、またはアルコキシアニオンを表す。アルコキシアニオンとしては、炭素数1〜4の脂肪族化合物が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール類から導かれる。アルコキシアニオンとして、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシであり、最も好ましくは、メトキシ、エトキシである。
【0018】
-は、ヒドロキシアニオン、又はアルコキシアニオンの形態であり、これらのアニオンの存在比は、特に限定されるものではない。ホスファゼニウム塩を適用する反応系においてQ-の形態を選択する。ホスファゼニウム塩を製造する際に用いる有機溶媒の組成にもよるが、ヒドロキシアニオンとアルコキシアニオンとのモル比は、99.99/0.01〜0.01/99.99である。
【0019】
このような化学式(1)で表される化合物としては、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシド、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム tert−ブトキシド等が例示できる。好ましくは、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシドである。
【0020】
次に、化学式(1)のホスファゼニウム塩の前駆体となる化学式(2)のホスファゼニウム塩について説明する。化学式(2)のホスファゼニウム塩についても、化学式(1)と同様、特開平10−77289号公報記載(該公報中の化学式(5)に該当する)の化合物と同一である。また、その製造方法については、特開平10−77289号公報(第13頁第24欄12行〜第14頁第26欄27行)記載の方法と同じである。更に、化学式(2)中の、a、b、c、d、及び、Rについては、化学式(1)の説明で述べたもの同じである。
【0021】
化学式(2)中のrは、1〜3の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Tr-は、価数rの無機アニオンを示す。無機アニオンとしては、例えば、臭素、塩素、フッ素、沃素、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、フッ化水素酸、塩酸、又は、シュウ化水素酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ヘキサフルオロリン酸、炭酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロタリウム酸及び過塩素酸などの無機アニオンが挙げられる。又、無機アニオンとしてHSO4 - 、HCO3 - もある。これら無機アニオンの中で、臭素、塩素、硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸イオンが好ましく、更には、塩素、リン酸、亜リン酸、炭酸イオンが最も好ましい。
【0022】
前記したアニオンのホスファゼニウム塩を得るためには、無機アニオンのホスファゼニウム塩を有機溶媒に溶解し、該無機アニオンのホスファゼニウム塩に対して、0.86〜1.6当量の塩基性水酸化物の溶液を加える。
【0023】
無機アニオンのホスファゼニウム塩を溶解する有機溶媒としては、該ホスファゼニウム塩、並びに、塩基性化合物を添加しても化学的変化を起こさないものが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素類や、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、クメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,2−ジイソプロピルペンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼンまたはドデシルベンゼン等のアルキル置換芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0024】
又、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−2−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼン、1−クロロナフタレンまたは1−ブロモナフタレン等のハロゲン化芳香族炭化水素類や、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2−ブロモトルエン、3−ブロモトルエン、2,4−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、1−クロロ−2−エチルベンゼン、1−クロロ−4−エチルベンゼン、1−ブロモ−2−エチルベンゼン、1−ブロモ−4−エチルベンゼン、1−クロロ−4−イソプロピルベンゼン、1−ブロモ−4−イソプロピルベンゼン、メシチルクロリド、2−クロロ−o−キシレン又は4−クロロ−o−キシレン等のハロゲン化アルキル置換芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0025】
更に、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、o−ジメトキシベンゼン、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、o−ジエトキシベンゼン等のエーテル類や、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエチレンまたはテトラクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素類等が挙げられる。その他、本発明の反応を阻害しなければ、いかなる溶媒でも構わない。
【0026】
これらのうち好ましくは、前記した飽和脂肪族炭化水素類、アルキル置換芳香族炭化水素類、又、ハロゲン化芳香族炭化水素類であり、更には、前記したハロゲン化アルキル置換芳香族炭化水素類や、エーテル類等の有機溶媒である。より好ましくは、飽和脂肪族炭化水素類、アルキル置換芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類やエーテル類等の有機溶媒である。
【0027】
これらの無機アニオンのホスファゼニウム塩を溶解し得る有機溶媒は、単独、もしくは併用しても構わない。無機アニオンのホスファゼニウム塩を溶解するための有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常、該ホスファゼニウム塩1重量部に対して、0.5〜500重量部である。好ましくは、1〜100重量部であり、より好ましくは1.5〜20重量部である。無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液は、一旦、分離された該ホスファゼニウム塩を、前記した有機溶媒に溶解させた溶液であり、一部不溶のホスファゼニウム塩が共存していても構わない。
【0028】
本発明において、無機アニオンのホスファゼニウム塩、及び該ホスファゼニウム塩を前記した有機溶媒で溶解した溶液中に含まれる水溶性の不純物を除去する目的で、塩基性水酸化物を有機溶媒で溶解した溶液と接触させる前に、水洗を行う場合もある。水洗は、該ホスファゼニウム塩を含む溶液、及び水を充分に接触させる方法であれば、いかなる方法でもよい。通常、水洗後、静置し、有機相と水相が分離した後に、水相を取り除く方法が好ましく用いられる。又、有機相中に、水が混入した場合には、減圧下、又は大気圧下に水を留去することもできる。
【0029】
この水洗における水の量は、特に限定されないが、通常、無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液1重量部に対して、0.05〜5重量部である。このような水の量により、該溶液を数回に分けて洗浄することもできる。好ましい方法としては、該溶液1重量部に対して、毎回、0.05〜1重量部の水で、2〜5回洗浄する。この操作時の温度、洗浄時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜80℃、好ましくは、15〜40℃、より好ましくは、17〜35℃の温度で、洗浄時間は、3時間以内、好ましくは0.01〜1時間、より好ましくは0.05〜0.5時間である。水洗操作後の溶液中の水分は、目的とするアニオンのホスファゼニウム塩の純度を向上させるために、可能な限り低減することが好ましい。
【0030】
次に、本発明の方法において、無機アニオンのホスファゼニウム塩及び該ホスファゼニウム塩を含む溶液に、加える塩基性水酸化物について説明する。本発明で用いられる塩基性水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物類や、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物類が挙げられる。更には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化アンモニウム塩類等も使用できる。
【0031】
これらの塩基性水酸化物の中で、好ましくは、アルカリ金属水酸化物類、アルカリ土類金属水酸化物類である。より好ましくは、アルカリ金属水酸化物類であり、特に、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムである。これらの塩基性水酸化物は、単独で用いても併用しても構わない。
【0032】
塩基性水酸化物の使用量は、目的とするアニオンのホスファゼニウム塩の純度の観点から、無機アニオンのホスファゼニウム塩に対して、0.86〜1.6当量になる量であり、好ましくは、0.91〜1.3当量、より好ましくは、0.95〜1.2当量である。塩基性水酸化物の使用量が、0.86当量未満になると、反応生成物中の、無機アニオンのホスファゼニウム塩の残存量が、15重量%以上となる。無機アニオンのホスファゼニウム塩の残存量が、15重量%以上であると、目的物質であるアニオンのホスファゼニウム塩を有機反応、或いは高分子反応の触媒として使用する際、ホスファゼニウム塩の単位重量当たりの活性が著しく低下する。本発明における、反応生成物とは、無機アニオンのホスファゼニウム塩と、塩基性水酸化物とを反応させた後の、反応系に存在する化合物を指す。ホスファゼニウム塩の単位重量当たりの活性を維持するために、反応生成物中の無機アニオンのホスファゼニウム塩は、15重量%未満、好ましくは、10重量%未満、より好ましくは、5重量%未満に制御する。
【0033】
一方、塩基性水酸化物の使用量が、無機アニオンのホスファゼニウム塩に対して、1.6当量を超えると、全反応生成物中に占める塩基性水酸化物の濃度が高くなる。反応系に依っては、該塩基性水酸化物が、アニオンのホスファゼニウム塩の触媒効果を低下させるので、塩基性水酸化物の使用量は、1.6当量以下に制御する必要がある。
【0034】
無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液と、塩基性水酸化物を、効率よく接触させるために、塩基性水酸化物を溶解する有機溶媒を用いる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0035】
これらの有機溶媒の中で、好ましいのは、脂肪族アルコール類であり、特に好ましいのは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の炭素原子数1〜4の脂肪族アルコール類である。これらの有機溶媒は単独で用いても、併用しても構わない。又、これらの溶媒の量は、塩基性水酸化物を充分に溶解できれば特に限定されないが、通常、無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液1重量部に対して、0.01〜5重量部である。好ましくは、0.05〜3重量部であり、より好ましくは、0.05〜2重量部である。
【0036】
無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液に、塩基性水酸化物を含む溶液を加える方法としては、塩基性水酸化物を含む溶液を、前記、ホスファゼニウム塩を含む溶液に、一括で装入する方法、或いは、塩基性水酸化物を含む溶液を滴下する方法のいづれでも良い。反応温度の制御の容易さから、滴下する方法が好ましく用いられる。
【0037】
無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液に、塩基性水酸化物を含む溶液を加えた後の反応条件としては、特に限定されるものではないが、通常、反応温度は、5〜180℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは、15〜45℃である。反応圧力は、大気圧下、又は加圧下のいづれでも良く、加圧反応を行う場合には、0.8MPaG以下、好ましくは0.5MPaG以下、より好ましくは、0.4MPaG以下である。反応時間は0.2〜3時間、好ましくは、0.3〜2.5時間、より好ましくは、0.3〜1時間である。
【0038】
このように、無機アニオンのホスファゼニウム塩と塩基性水酸化物とを接触させることにより、無機アニオンと水酸化物イオンが交換し、アニオンのホスファゼニウム塩、並びに、該塩基性水酸化物の水酸基が無機アニオンに置き換わった塩が生成する。
【0039】
出発物質である、無機アニオンのホスファゼニウム塩、及び、目的物質である、アニオンのホスファゼニウム塩は、出発物質を溶解した有機溶媒と、塩基性水酸化物を溶解した有機溶媒との混合溶媒(以下、反応液と略する)に溶解するが、生成する無機塩は、該反応液に難溶である。通常、生成する無機塩を濾過操作によって除去する。過剰の塩基性水酸化物も、該塩基性水酸化物を溶解する有機溶媒を反応液から留去し、固体として析出させた後、濾別することもできる。
【0040】
又、該反応液中に水が存在すると、この水が、無機アニオンのホスファゼニウム塩と、塩基性水酸化物から生成する無機塩を溶解するため、反応液からの無機塩の濾別が困難になる。従って、塩基性水酸化物を溶解させる有機溶媒中の水分は、可能な限り低減することが好ましい。更に、無機アニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液と、塩基性水酸化物を含む溶液との反応液中の水分に関しても、可能な限り低減することが好ましい。
【0041】
このようにして得られたアニオンのホスファゼニウム塩を含む溶液から、有機溶媒を留去することにより、任意の濃度の該ホスファゼニウム塩の溶液を得ることができる。更に必要であれば、その乾固物に対して、再結晶等の精製操作を行うこともできる。本発明の製造方法により得られるホスファゼニウム塩は、有機反応のみならず、高分子反応にも使用できる極めて有用な化合物である。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにする。先ず、使用した化合物について示す。
【0043】
(a)無機アニオンのホスファゼニウム塩
化学式(2)において、(a,b,c,d)=(1,1,1,1)で、Rがメチル基であり、r=1、T=ClであるCl-(塩素イオン)のホスファゼニウム塩(テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムクロリド{[(Me2N)3P=N]4+Cl-}(Fluka社製)、以下、P5Clと略する)を使用した。
【0044】
(b)無機アニオンのホスファゼニウム塩を溶解する有機溶媒
トルエン(和光純薬(株)試薬特級)を使用した。反応前に、モレキュラーシーブ(ユニオン昭和(株)製、型式;4AXH−5)をトルエンに対して、10重量%添加し、混合後、一昼夜放置し、水分の除去を行った。カールフィッシャー測定(測定装置:平沼産業(株)製、形式:AQUACOUNTER AQV−7)により求めたトルエン中の水分は、57ppmであった。
【0045】
(c)塩基性水酸化物
水酸化ナトリウム(和光純薬(株)試薬特級)を使用した。以下、NaOHと略する。
(d)塩基性水酸化物を溶解する有機溶媒
メタノール(片山化学(株)試薬特級、脱水品)を使用した。カールフィッシャー測定((b)と同様の装置)により求めたメタノール中の水分は、138ppmであった。以下、MeOHと略する。
【0046】
前記した化合物を使用することにより、アニオンのホスファゼニウム塩である、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド{[(Me2N)3P=N]4+OH-、以下、P5OHと略する}、及び、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド{[(Me2N)3P=N]4+OMe-、以下、P5OMeと略する}の混合物を得る。分析に際しては、P5Clを溶解させた有機溶媒、並びに、NaOHを溶解させた有機溶媒を反応液中から、60℃、665Paの条件で、留去した試料を用いた。以下に、反応生成物中の各成分の分析方法を示す。
【0047】
(1)無機アニオンのホスファゼニウム塩(P5Cl)の濃度(単位:重量%)
反応生成物中の塩素イオン濃度(単位:ppm)を求め、その値を塩素の原子量(単位:g/mol)で除し、更に、P5Clの分子量(単位:g/mol)を掛けることにより、反応生成物中のP5Cl濃度を算出する。以下に、反応生成物中の塩素イオン濃度の測定方法を示す。
【0048】
石英ボードに、試料を約60mg秤量後、電気炉内で、アルゴン/酸素混合ガス中、900℃に加熱し、混合ガスを1vol%濃度の過酸化水素の水溶液に吸収させ、超純水(MILLIPORE製、小型純水製造装置、型式:MILL−Q Laboにて比抵抗値17MΩ−cmに調製した水)にて10mlに定容した液を検液とする。次いで、該検液のイオンクロマトグラフィー(ダイオネックス社製、型式:DX−300型)分析を行い、反応生成物中の塩素イオン濃度を求める。分離カラムは、IonPacAS12A(ダイオネックス社製)を使用し、溶離液として、2.7mMの炭酸ナトリウム水溶液と0.3mMの炭酸水素ナトリウム水溶液を使用する。
【0049】
(2)アニオンのホスファゼニウム塩(P5OHとP5OMe)の濃度(単位:重量%)
P5OHの標品を合成し、それらを下記に示した分析方法を用いて測定することにより、反応生成物中のアニオンのホスファゼニウム塩の同定、及び、定量を行った。先ず、P5OHの製造例、並びに、その分析方法を示す。
【0050】
P5Cl(Fluka社製)31.02g(40mmol)を200mlの50重量%のメタノール−水の混合溶媒に溶解させて、0.2mol/lの溶液を調整した。この溶液を、室温にて、140mlの水酸基型に交換した陰イオン交換樹脂(バイエル社製、商品名;レバチットMP500)を充填したカラム(直径20mm、高さ450mm)に140ml/hの速度で流通した。次いで、450mlの50重量%のメタノール−水の混合溶媒を同速度で流通した。流出液を濃縮した後、80℃、665Paの条件で乾燥し、固形状とした。この固形物をテトラヒドロフランとジエチルエーテルの体積比1:15の混合溶媒に溶解後、再結晶することにより、28.76gの無色の化合物を得た。収率は95%であった。
【0051】
りん酸トリ−n−ブチルを内部標準化合物とした、該化合物の重水素化ジメチルスルホキシド溶液中の31P−NMR(日本電子(株)製核磁気共鳴装置)の化学シフトは、−33.3(5重線、1P)ppm、7.7(2重線、4P)ppmであり、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムカチオン中の中心のリン原子、及び、周りの4つのりん原子として帰属される。又、テトラメチルシランを内部標準とした1H−NMRの化学シフトは2.6ppmであり、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムカチオン中のメチル基に帰属され、リン原子とのカップリングにより、2重線として観測される。元素分析値(重量%)はC:38.28、H:9.82、N:29.43、P:19.94(理論値、C:38.09、H:9.72、N:29.61、P:20.46)であった。以上が、P5OHの分析方法である。
【0052】
P5OMeの分析方法に関しては、上記、31P−NMRにより、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムカチオンを測定し、更に、テトラメチルシランを内部標準とした、1H−NMRにより、メトキシアニオン基のメチル基(3.2ppm)の測定を実施する。次いで、P5OHとP5OMeの混在下におけるP5OMe濃度を測定するため、以下の分析を実施する。
【0053】
反応生成物を予め、金属ナトリウムで脱水処理を行ったテトラヒドロフランに溶解し、反応生成物に対して、5重量%の超純水を加えることにより、遊離するメタノールをガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、型式:GC−14A)により定量測定する。該メタノール濃度(単位:重量%)をその分子量で除し、次いで、P5OMeの分子量を掛けることにより、P5OMe濃度(単位:重量%)を算出する。更に、反応生成物を、リン酸トリ−n−ブチルを内部標準化合物として、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解後、31P−NMR(日本電子(株)製、核磁気共鳴装置)測定を実施し、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム構造の濃度(単位:モル)を求める。次いで、該値から、先に求めた、P5Cl、P5OMe濃度を各成分の分子量で除したモル数を差し引くことにより、P5OHのモル数を求め、その値に、P5OHの分子量を掛けることにより、反応生成物中のP5OHの濃度(単位:重量%)を求める。実施例におけるアニオンのホスファゼニウム塩の濃度とは、P5OHとP5OMeの濃度の総和である。以上、詳述した方法により、反応生成物の組成を求めた。(1)及び(2)以外の成分は、NaOH由来の化合物であることを、反応生成物のイオンクロマトグラフィー測定により、確認した。
【0054】
更に、実施例、比較例で得られたホスファゼニウム塩の触媒性能を比較するため、該化合物を用いたプロピレンオキサイドの重合試験を実施した。プロピレンオキサイドの反応率、並びに、得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価、総不飽和度の測定を行うことにより、ホスファゼニウム塩の触媒性能を調べた。
【0055】
(3)プロピレンオキサイドの反応率(単位:%)
2Lのオートクレーブを使用して、プロピレンオキサイドの重合を行った。グリセリンを重合開始剤として、重合温度120℃、最大反応圧力が0.45MPaGの条件で、一定量のプロピレンオキサイドを装入し、所定の時間になった時点で、反応系に残存している未反応のプロピレンオキサイドを捕集した。装入したプロピレンオキサイドの量(a、単位;g)から、捕集したプロピレンオキサイドの量(b、単位;g)を差し引き、その値を装入したプロピレンオキサイドの量(a)で除し、100を掛けることにより、プロピレンオキサイドの反応率を算出する。
【0056】
(4)ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(以下、OHVと略する、単位;mgKOH/g)、及び、総不飽和度(以下、C=Cと略する、単位;meq./g)
JIS K−1557記載の方法により求める。
【0057】
実施例1ホスファゼニウム塩A窒素雰囲気下、温度計、攪拌機、冷却管、及び、滴下ロートを装備した500mlの4つ口フラスコにP5Clを16.82g(21.7mmol)、及び、トルエン81.9gを加え、P5Cl濃度を17重量%に調整した。25℃において攪拌しながら、この溶液に水酸化ナトリウムの4.8重量%メタノール溶液(水酸化ナトリウム19.53mmol、P5Clに対して、0.9当量)を15分間かけて滴下した。25〜27℃で30分間、攪拌後、80℃まで昇温し、さらに3時間攪拌し、白色懸濁液を得た。この懸濁液を0.45μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターを用いて減圧濾過した。60℃、399Paの条件で、得られた濾液を濃縮し、乾燥することにより白色固体を得た。前記した方法により白色固体を分析した結果、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、88.3重量%であり、無機アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、11.5重量%であった。
【0058】
実施例2ホスファゼニウム塩BP5Clに対する水酸化ナトリウムの使用量を1.0当量に増加させた以外は、実施例1と同様な方法とした。得られた白色固体を分析した結果、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、98.4重量%であり、無機アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、1.52重量%であった。
【0059】
実施例3ホスファゼニウム塩CP5Clに対する水酸化ナトリウムの使用量を1.2当量に増加させた以外は、実施例1と同様な方法とした。得られた白色固体を分析した結果、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、97.0重量%であり、無機アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、1.51重量%であった。
【0060】
比較例1ホスファゼニウム塩DP5Clに対する水酸化ナトリウムの使用量を0.7当量に低下させた以外は、実施例1と同様な方法とした。得られた白色固体を分析した結果、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、68.4重量%であり、無機アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、31.5重量%であった。
【0061】
比較例2ホスファゼニウム塩EP5Clに対する水酸化ナトリウムの使用量を2.0当量に増加させた以外は、実施例1と同様な方法とした。得られた白色固体を分析した結果、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、91.8重量%であり、無機アニオンのホスファゼニウム塩の濃度は、1.42重量%であった。
【0062】
上記、実施例、及び、比較例の結果を[表1]にまとめた。
【0063】
【表1】
Figure 0004439620
【0064】
<実験結果の考察>無機アニオンのホスファゼニウム塩(P5Cl)に対する塩基性水酸化物(NaOH)の使用量が本発明の範囲内である実施例1〜3では、反応生成物中のP5Cl濃度は、5重量%以下である。しかし、NaOHの使用量が本発明の範囲より低い場合(比較例1)は、P5Cl濃度が31.5重量%となり、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度が低下する。一方、NaOHの使用量が本発明の上限値を超えた場合(比較例2)、P5Cl濃度は15重量%以下であり、アニオンのホスファゼニウム塩の濃度も91.8重量%と高い値を示しており、ホスファゼニウム化合物以外のナトリウム由来の化合物濃度が6.78重量%と高くなっている。
【0065】
実施例1〜3、比較例1〜2で得られたホスファゼニウム塩の触媒性能を比較するため、該化合物を触媒としてプロピレンオキサイドの重合を実施した。
【0066】
評価試験1
温度計、攪拌機、窒素導入管、及び、真空ラインを装備した4つ口フラスコに、グリセリン100重量部、及び、ホスファゼニウム塩A7.75重量部を加え、窒素を導入しながら105℃、1.33kPa以下の条件で4時間減圧処理を行った。その後、窒素により大気圧まで加圧し、フラスコの内容物37.8gを2.2Lのオートクレーブに装入した。オートクレーブ内を窒素による置換を実施した後、窒素加圧下、120℃まで昇温した。次いで、圧力を6.65kPaに調整した後、内温を一定に保持しながら、1600gのプロピレンオキサイドを装入した。120℃の重合温度で300分間反応させた後、反応系のプロピレンオキサイドを減圧留去し、その捕集量を測定した。プロピレンオキサイドの反応率は95.7%であった。
【0067】
次いで、内温を80℃に調整した後、ホスファゼニウム塩を含有しているポリオキシアルキレンポリオールに対して、5重量%のイオン交換水、及び、吸着剤(協和化学工業(株)製、商品名:KW−700SEL)を1重量%添加し、同温度にて、3時間攪拌混合した。その後、内温を105℃に昇温し、徐々に減圧していきながら、最終的に105℃、1.33kPa以下の条件で、3時間の減圧脱水処理を実施した。保持粒径が1μmのろ紙を用いて、減圧ろ過を行うことにより、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールのOHVは、42.8mgKOH/gであり、C=Cは0.033meq./gであった。
【0068】
評価試験2
ホスファゼニウム塩Bを用いた以外は、評価試験1と同様の方法により、プロピレンオキサイドの重合を行い、ポリオキシアルキレンポリオールを回収した。プロピレンオキサイドの反応率は97.2%であり、ポリオキシアルキレンポリオールのOHVは41.6mgKOH/g、C=Cは0.032meq./gであった。
【0069】
比較評価試験1
ホスファゼニウム塩Dを用いた以外は、評価試験1と同様の方法により、プロピレンオキサイドの重合を行い、ポリオキシアルキレンポリオールを回収した。プロピレンオキサイドの反応率は、42.5%であり、ポリオキシアルキレンポリオールのOHVは89.2mgKOH/g、C=Cは0.017meq./gであった。
【0070】
比較評価試験2
ホスファゼニウム塩Eを用いた以外は、評価試験1と同様の方法により、プロピレンオキサイドの重合を行い、ポリオキシアルキレンポリオールを回収した。プロピレンオキサイドの反応率は93.1%であり、ポリオキシアルキレンポリオールのOHVは45.2mgKOH/g、C=Cは0.043meq./gであった。
【0071】
上記、評価試験1〜2、及び、比較例評価試験1〜2の結果を[表2]にまとめた。
【0072】
【表2】
Figure 0004439620
【0073】
<評価試験の考察>
無機アニオンのホスファゼニウム塩であるP5Cl濃度が15重量%以下のホスファゼニウム塩をプロピレンオキサイドの重合触媒とした評価試験1、及び2においては、プロピレンオキサイドの反応率は高く、OHVは41〜43mgKOH/gのレベルである。しかも、プロピレンオキサイドの副反応で生じる総不飽和度(C=C)は、0.032〜0.033meq./gとほぼ一定となっている。一方、P5Cl濃度が本発明の範囲外であるホスファゼニウム塩を使用した比較評価試験1においては、プロピレンオキサイドの反応率が低く、プロピレンオキサイドの重合が進行していないことがわかる。又、ホスファゼニウム化合物以外の成分が多い化合物を触媒とした比較評価試験2においては、プロピレンオキサイドの反応率が、評価試験1、2と比較して低い上に、ポリオールの総不飽和度(C=C)の値も高くなっており、ホスファゼニウム塩の触媒性能が低下していることがわかる。従って、本発明の方法により製造されたホスファゼニウム塩は、高分子反応において優れた触媒性能を示す。
【0074】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、イオン交換樹脂法等の煩雑な操作を経由しないで、簡便で、且つ、効率的に、しかも純度の高いホスファゼニウム塩の製造が可能である。従って、本発明の製造方法により得られるホスファゼニウム塩は、有機反応のみならず、高分子反応にも使用できる極めて有用な化合物である。

Claims (6)

  1. 化学式(1
    Figure 0004439620
    (化学式(1)中のa、b、c及びdは、全てが同時には0とならない0〜3の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。Q-はヒドロキシアニオン、アルコキシアニオンを示す)で表されるホスファゼニウムカチオンとアニオンとからなるホスファゼニウム塩を製造する方法において、化学式(2
    Figure 0004439620
    (化学式(2)中のa、b、c及びdは全てが同時には0とならない0〜3の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合もある。rは、1〜3の整数であって、ホスファゼニウムカチオンの数を表し、Tr-は、価数rの臭素、塩素、フッ素、沃素、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、ハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ヘキサフルオロリン酸、炭酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロタリウム酸及び過塩素酸から選ばれる無機アニオン、またはHSO 、HCO で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩、及び、該無機アニオンの塩を溶解する有機溶媒を含む溶液に、該無機アニオンの塩に対して、塩基性水酸化物0.86〜1.6当量、及び、該塩基性水酸化物を溶解する有機溶媒を含む溶液を加えた後、反応生成物中における化学式(2)で表されるホスファゼニウム塩の含有量を15重量%未満に制御することを特徴とするホスファゼニウム塩の製造方法。
  2. 化学式(1)中の が、ヒドロキシアニオン、又は炭素数1〜4のアルコキシアニオンであることを特徴する請求項1記載のホスファゼニウム塩の製造方法。
  3. 化学式(2)で表されるホスファゼニウム塩に対して、塩基性水酸化物0.91〜1.3当量を加えることを特徴とする請求項1記載のホスファゼニウム塩の製造方法。
  4. 化学式(2)中のTr-のTがクロライドで、r=1であることを特徴とする請求項1記載のホスファゼニウム塩の製造方法。
  5. 化学式(2)で表されるホスファゼニウム塩の含有量を10重量%未満に制御することを特徴とする請求項1記載のホスファゼニウム塩の製造方法。
  6. 反応温度が5〜180℃である請求項1記載のホスファゼニウム塩の製造方法。
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