JP4438822B2 - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、ノズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板上に設けられた圧電素子の変位によりノズルからインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
従来から、圧電素子等の圧力発生手段によって液体に圧力を付与することで、ノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッドが知られており、その代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。このようなインクジェット式記録ヘッド(ユニット)としては、例えば、圧力発生室が形成された流路形成基板に、ノズル開口が穿設されたノズルプレート、ヘッドケース等が接合されてヘッド本体が構成され、これら複数のヘッド部材(ヘッド本体)が固定部材(固定板)に接着固定されると共に、ヘッドケースによって覆われているものがある(例えば、特許文献1参照)。
このように複数のヘッド部材を有するインクジェット式記録ヘッドにおいては、ヘッド部材間の隙間にインクが溜まってしまい、例えば、そのインクが記録媒体に付着してしまい、印刷不良が発生するといった問題があった。
このような問題を解決するために、例えば、固定部材(カバープレート)上に複数のヘッド部材(フロントヘッドユニット)が並設されて固定された構成において、これらヘッド部材間の隙間に接着剤が充填されているものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2005−096419号公報 特開2006−62373号公報
しかしながら、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、ヘッド部材間の隙間を埋めた接着剤によって固定部材、つまりノズル面が湾曲してしまう虞がある。具体的には、接着剤は硬化させると若干収縮するため、この収縮に伴って固定部材が湾曲してしまう虞がある。そして、固定部材が湾曲してしまうと、インク滴の吐出方向にばらつきが生じてしまい、印刷品質を良好に維持することができなくなる虞がある。
例えば、ヘッド部材間の隙間に充填する接着剤として比較的粘度の高いものを用いることで固定部材の湾曲を小さく抑えることはできるかもしれない。しかしながら、ヘッド部材間の隙間は狭いため、粘度の高い接着剤を良好に充填することができない虞がある。またヘッド部材間の間隔を広げることで、このような問題は解消することはできるが、ヘッドが大型化してしまうため好ましくない。さらに、ヘッド部材間の隙間に充填した接着剤によってヘッド部材と固定部材とを接着していることもあり、このような場合には、接着剤が良好に充填されていないとヘッド部材と固定部材との接合不良が生じる虞もある。
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、近接して配置した各ヘッド部材間の隙間を接着剤によって確実に塞ぐことができ且つ各ヘッド部材と固定部材とをその接着剤によって良好に固定することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、圧力発生素子の駆動によって圧力発生室内の液体をノズルから吐出するヘッド本体と、該ヘッド本体の液体吐出面とは反対側の面に接合されて前記圧力発生室に液体を供給するための流路を有するヘッドケースとを有する複数のヘッド部材と、各ヘッド部材の前記液体吐出面側に接着され複数のヘッド部材が所定間隔で位置決め固定される固定部材とを具備し、前記固定部材に固定された各ヘッド部材の隙間には、これらの隙間に充填されて硬化された所定の接着剤からなる充填部が設けられ、該充填部が前記固定部材側に設けられる第1の充填層と該第1の充填層上に設けられて当該第1の充填層を構成する第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い第2の接着剤からなる第2の充填層とで構成されており、前記ヘッド部材の並設方向における前記ヘッドケースの端面には、当該ヘッドケースの厚さ方向に亘って形成され前記第1の接着剤が導入される第1の切欠き部と、前記ヘッドケースの下面に達することなく形成され前記第2の接着剤が導入される第2の切欠き部とが設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる本発明では、固定部材とヘッド本体とが第1の接着剤からなる第1の充填層によって確実に固定され、この第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い第2の接着剤からなる第2の充填層によって各ヘッド部材間の隙間が埋められる。このため、接着剤の硬化収縮に伴う固定部材の変形が極めて小さく抑えられる。また、第1及び第2の切欠き部から各ヘッド部材間の隙間に第1及び第2の接着剤を導入することで、これら第1及び第2の接着剤がヘッド部材間の隙間に良好に充填することができる。
さらに、第2の切欠き部がヘッドケースの下面に達することなく形成されていることで、第2の切欠き部の形成領域に制限がなくなるため、ヘッドの小型化を図ることができる。仮に第2の切欠き部をヘッドケースの厚さ方向に亘って形成してしまうと、ヘッドケースとヘッド本体との接着性という観点から、この第2の切欠き部はヘッドケースのヘッド本体との接合領域の外側に形成する必要性が生じてしまう。つまりヘッドケースを大型化する必要性が生じてしまう。しかしながら、本発明の構成では、第2の切欠き部の形成位置が制限されないため、ヘッドケースの小型化を図りつつ、ヘッドケースとヘッド本体とを良好に接合することができる。
ここで、前記第1の切欠き部と前記第2の切欠き部とが、それぞれ独立して設けられていることが好ましい。これにより、第1の接着剤及び第2の接着剤を別々の切欠き部から良好に各ヘッド部材間の隙間に充填することができる。
また、前記ヘッドケースが、前記ヘッド本体に接合される第1のヘッドケースと該第1のヘッドケース上に接合される第2のヘッドケースとで構成され、前記第2の切欠き部が前記第2のヘッドケースにその厚さ方向に亘って形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、ヘッドケースの厚さ方向の一部に第2の切欠き部を極めて容易に形成することができ、製造コストが低減される。
また前記ヘッドケースの前記ヘッド本体が接合される接合面の面積が前記ヘッド本体の面積よりも広いことが好ましい。特に、前記ヘッドケースの前記ヘッド本体が接合されていない部分に前記第1の切欠き部が設けられていることが好ましい。これにより、ヘッド本体とヘッドケースとの接合不良が発生するのをより確実に防止することができる。
また前記第1の充填層の厚さが前記第2の充填層の厚さよりも薄いことが好ましい。また前記第1の充填層が前記ヘッドケースに接しない程度の厚さで形成されていることが好ましい。このように未硬化状態での粘度が比較的低い第1の接着剤からなる第1の充填層の厚さを薄くすることで、接着剤の硬化収縮に伴う固定部材の変形をより確実に防止することができる。
さらに、本発明は、このような液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。これにより、ヘッドの耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの組立斜視図であり、図3は、その要部断面図である。
図示のインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)1は、カートリッジケース100と、ヘッド部材200と、複数のヘッド部材200が位置決め固定される固定部材としての固定板300と、カバーヘッド400とを有する。カートリッジケース100は、例えば、樹脂材料で形成され、インク供給手段(液体供給手段)であるインクカートリッジ(図示なし)がそれぞれ装着されるカートリッジ装着部101を有する。また、カートリッジケース100の底面側には、一端が各カートリッジ装着部101に開口し、他端がヘッド部材200側に開口する複数のインク連通路102が設けられている。さらに、カートリッジ装着部101のインク連通路102の開口部分には、インクカートリッジに挿入されるインク供給針103が固定されている。
このカートリッジケース100の底面に、所定間隔で位置決めされた複数(図示例では4個)のヘッド部材200が固定されて記録ヘッド1が構成されている。記録ヘッド1の各ヘッド部材200は各色のインクに対応してそれぞれ設けられている。また、各ヘッド部材200は固定板300に接着固定されることにより互いに位置決めされている。このように位置決めされた状態で各ヘッド部材200はカートリッジケース100の底面に固定されている。
ここで、ヘッド部材200の構成について説明する。図4は、ヘッド部材の分解斜視図であり、図5は、ヘッド部材の断面図であり、図6は、記録ヘッドの要部断面図である。図4〜図6に示すように、ヘッド部材200は、ヘッド本体210とヘッドケース250とで構成されている。ヘッド本体210を構成する流路形成基板211は、例えば、シリコン単結晶基板からなり、その一方面側には予め熱酸化することによって二酸化シリコンからなる弾性膜212が形成されている。また、流路形成基板211には複数の圧力発生室213が、流路形成基板211をその他方面側から異方性エッチングすることにより形成されている。例えば、本実施形態に係る流路形成基板211には、圧力発生室213が幅方向に並設された列が2列形成されている。また、各列の圧力発生室213の長手方向外側には連通部214が形成され、連通部214は後述する保護基板に設けられるリザーバ部と連通し、各圧力発生室213の共通のインク室となるリザーバ215を構成している。また、連通部214は、インク供給路216を介して各圧力発生室213の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。
流路形成基板211の開口面側にはインク滴を吐出する複数のノズル217が穿設されたノズルプレート218が接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。つまり、本実施形態に係るヘッド部材200の構成においては、このノズルプレート218の表面がインク吐出面(液体吐出面)となる。ノズルプレート218は、例えば、本実施形態では、ステンレス鋼(SUS)によって形成されている。
一方、流路形成基板211の表面に形成された弾性膜212上には、例えば、白金、イリジウム等の金属材料からなる下電極膜219と、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層220と、例えば、イリジウム等の金属材料からなる上電極膜221とからなる圧電素子222が形成されている。
このような圧電素子222が形成された流路形成基板211上には、圧電素子222に対向する領域に圧電素子222を保護するための圧電素子保持部223を有する保護基板224が接合されている。また、この保護基板224には、上述したように流路形成基板211の連通部214と連通されて各圧力発生室213の共通のインク室となるリザーバ215を構成するリザーバ部225が形成されている。
保護基板224上には、各圧電素子222を駆動するための駆動IC226が実装されている。この駆動IC226の各端子は、図示しないが、ボンディングワイヤ等を介して各圧電素子222の個別電極から引き出されたリード電極と接続されている。そして、駆動IC226の各端子には、図1に示すような、フレキシブルプリントケーブル(FPC)等の外部配線227が接続され、この外部配線227を介して印刷信号等の各種信号が供給されるようになっている。
保護基板224上のリザーバ215に対応する領域には、例えば、ステンレス材料(SUS)からなるコンプライアンス基板228が接合され、これら各部材でヘッド本体210が構成されている。コンプライアンス基板228には、リザーバ215に対応する領域に、他の領域よりも厚さが薄い可撓部229が設けられており、リザーバ215内の圧力変化が、この可撓部229が変形することで吸収されるようになっている。また、コンプライアンス基板228には、リザーバ215に連通するインク導入口230が形成されている。
ヘッドケース250は、ヘッド本体210の流路形成基板211側の面、本実施形態では、コンプライアンス基板228の表面に接合されている。そして、このヘッドケース250とヘッドケース250の下面に接合されたヘッド本体210とでヘッド部材200が構成されている。ヘッドケース250は、本実施形態では、ヘッド本体210に接合される第1のヘッドケース251と、第1のヘッドケース251の上面側(インク吐出面とは反対側の面)に接合される第2のヘッドケース252とで構成されている。ヘッドケース250には、コンプライアンス基板228のインク導入口230に連通すると共にカートリッジケース100のインク連通路102に連通するインク供給連通路253が設けられている。そして、これらインク連通路102、インク供給連通路253及びインク導入口230を介してインクがリザーバ215内に供給されるようになっている。
またヘッドケース250には、詳しくは後述するが、ヘッド部材200の並設方向における端面に、第1及び第2の切欠き部254,255が形成されている。
さらにヘッドケース250には、駆動IC226に対向する領域に、厚さ方向に貫通する駆動IC保持部256が設けられており、図示しないが、この駆動IC保持部256内には各駆動IC226を覆うようにポッティング剤が充填される。なお、ヘッドケース250の材料は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、ヘッドケース250は、ステンレス材料(SUS)によって形成されている。
なお、このような構成のヘッド部材200では、リザーバ215からノズル217に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC226からの記録信号に従い、圧力発生室213に対応するそれぞれの圧電素子222に電圧を印加し、弾性膜212及び圧電素子222をたわみ変形させて各圧力発生室213内のインクに圧力を付与することにより、ノズル217からインク滴が噴射される。
そして、このようなヘッド部材200が、複数個、本実施形態では4個、所定間隔で互いに位置決めされた状態で固定板300に接着固定されている(図6参照)。この固定板300にはノズル217を露出する開口部301が、例えば、各ヘッド部材200に対応して設けられている。すなわち、固定板300には、各ヘッド部材200の間に対応する領域に梁部302が設けられ、その結果、各ヘッド部材200に対応して開口部301が形成されている。このような梁部302を有する固定板300に各ヘッド部材200のインク吐出面側、例えば、ノズルプレート218側の表面の周縁部が接着剤350によって接合されている。
また、固定板300の周縁部には、ヘッド部材200側に折り曲げられた折り曲げ部303が設けられている。すなわち、本実施形態に係る固定板300は、一方面側が開口する略箱形に形成されており、折り曲げ部303を側壁とする凹部304を有し(図1参照)、各ヘッド部材200のノズルプレート218は、この凹部304の底面に接着固定されている。なお固定板300の材料は、特に限定されないが、ヘッド部材200の固定板300に接合される部分、すなわち、ノズルプレート218と同等か若しくはそれよりも低い線膨張率を有する材料を用いることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定板300の材料として、ノズルプレート218と同一材料であるステンレス鋼(SUS)を用いている。
そしてこのように固定板300に固定された複数のヘッド部材200の周囲には、これら複数のヘッド部材200をインク等から保護するためのカバーヘッド400が設けられている。このカバーヘッド400は、本実施形態では、各ヘッド部材200をそれぞれ露出させる複数の露出開口部401を有しているが、勿論、複数のヘッド部材200を露出させる1つの露出開口部を有するようにしてもよい。
このカバーヘッド400は、本実施形態では、ヘッド部材200が固定されたカートリッジケース100に固定されている。詳しくは図2及び図3に示すように、カバーヘッド400は、ヘッド部材200側の端部にフランジ部403を有し、このフランジ部403には、当該フランジ部403を貫通する固定孔404が設けられている。一方、カートリッジケース100のヘッド部材200側の面には、カバーヘッド400の固定孔404に対応する位置に突起部104が設けられている。そして、このカートリッジケース100の突起部104をカバーヘッド400の固定孔404に挿入し、この突起部104の先端を加熱してかしめることによって、カバーヘッド400をカートリッジケース100に固定している。
ここで、固定板300に所定間隔で接着された各ヘッド部材200間の隙間には、所定の接着剤が充填されて硬化されてなる充填部270が設けられている。本実施形態では、充填部270が、固定板300の周縁部にも連続的に設けられている。つまり、充填部270が、固定板300の折り曲げ部303と各ヘッド部材200との隙間にも連続的に設けられている。
また充填部270は、本実施形態では、固定板300側に設けられる第1の充填層271と、第1の充填層271上に設けられる第2の充填層272とで形成されている。この第2の充填層272を構成する第2の接着剤としては、第1の充填層271を構成する第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高いものが用いられる。
第1の充填層271は、各ヘッド部材200と固定板300とを固定する役割を果たす。このため、第1の充填層271を構成する第1の接着剤としては未硬化状態の粘度が比較的低いものを用い、第1の接着剤がヘッド部材200間の隙間に確実に充填されるようにしている。一方、第2の充填層272は、各ヘッド部材200間の隙間を埋めることを目的として設けられるものである。この第2の充填層272を構成する第2の接着剤としては、第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い接着剤を用いている。未硬化状態の粘度が低い接着剤は硬化する際の収縮量を大きいため、比較的粘度の低い接着剤を第2の接着剤として用いると硬化収縮によって固定板300が変形してしまう虞があるからである。そして、このように第2の接着剤として第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い接着剤を用いることで、接着剤の硬化収縮に伴う固定板300の変形、つまりノズル面の湾曲が可及的に小さく抑えられる。
また第1の充填層271の厚さを厚くし過ぎた場合にも第1の接着剤の硬化収縮に伴って固定板300に変形が生じる虞がある。このため、第1の充填層271の厚さは、固定板300と各ヘッド部材200とを確実に固定できる程度に可及的に薄くすることが好ましく、少なくとも第2の充填層272の厚さよりも薄くすることが好ましい。第1の充填層271は、特に、ヘッドケース250に接しない程度の厚さで形成されていることが好ましく、本実施形態においては、ヘッドケース250と共に、コンプライアンス基板228にも接しない程度の厚さで形成するようにしている。ヘッドケース250及びコンプライアンス基板228は、シリコン基板である流路形成基板211等と比較して変形し易い材料(SUS)で形成されているため、第1の充填層271が接していると接着剤の硬化収縮に伴ってヘッドケース250が変形し易く、またそれに伴って固定板300が変形し易くなるからである。
このような充填部270を設けることにより、第1の充填層271によって固定板300と各ヘッド部材200とを確実に固定することができる。またヘッド部材200間等の隙間が充填部270によって確実に塞がれることで、印刷品質を常に良好に維持することができる。すなわち、ノズル217から吐出したインク滴のミスト等がヘッド部材200間の隙間に入り込んで溜まってしまうと、記録媒体に付着する等の問題が生じる虞があるが、このような充填部270が設けられていることで、ヘッド部材200間の隙間にインクが溜まることがないため、記録媒体の汚れ等の発生を防止することができ、常に良好な印刷品質を維持することができる。
また充填部270は、各ヘッド部材200を固定板300に位置決めして固定した後、各ヘッド部材200間の隙間に所定の接着剤を充填して硬化させることによって形成される。本実施形態では、まず第1の接着剤を各ヘッド部材200間の隙間に充填し、それを硬化させることによって第1の充填層271を形成する。その後、第2の接着剤を各ヘッド部材200間の隙間に充填して硬化させることによって第2の充填層272を形成する。これにより第1及び第2の充填層271,272からなる充填部270が形成される。
ここで、このように充填部270を形成する際、第1及び第2の接着剤はヘッド部材200のヘッドケース250側から各ヘッド部材200間の隙間に導入される。各ヘッド部材200間の隙間は極めて狭いため、第1及び第2の接着剤をこの隙間に良好に充填するのは難しく時間もかかる。また、第1及び第2の接着剤がヘッドケース250の表面に付着してしまい、その後の工程で、ヘッドケース250とカートリッジケース100とを接合する際に、接合不良が生じる虞もある。しかしながら、本発明に係る記録ヘッド1では、以下に説明するように、各ヘッド部材200間の隙間に第1及び第2の接着剤を比較的容易に充填することができ、第1及び第2の充填層271,272からなる充填部270を良好に形成することができる。
図7は、ヘッドケースの平面図である。図5〜図7に示すように、ヘッドケース250には、ヘッド部材200の並設方向における端面部分に、第1の接着剤が導入される第1の切欠き部254と、第2の接着剤が導入され第1の切欠き部254よりも開口面積が広い第2の切欠き部255とがそれぞれ独立して設けられている。本実施形態では、第1の切欠き部254が、ヘッド部材200の並設方向におけるヘッドケース250の一端面の両隅部にそれぞれ設けられている。また、第2の切欠き部255は、ヘッドケース250の両端面のインク供給連通路253の両側にそれぞれ設けられている。なお、ここで言う開口面積とは、図7に示すヘッドケース250の表面における第1及び第2の切欠き部254,255の開口面積のことである。
また、第1の切欠き部254は、ヘッドケース250の厚さ方向に亘って形成され、第2の切欠き部255は、ヘッドケース250の下面に達することなく、つまりヘッドケース250を厚さ方向に貫通することなく形成されている。例えば、本実施形態では、上述したようにヘッドケース250が第1及び第2のヘッドケース251,252で構成されている。そして、第1の切欠き部254はこれら第1及び第2のヘッドケース251,252に連続して設けられており、第2の切欠き部255は第2のヘッドケース252のみに形成されている。なお、本実施形態に係るヘッドケース250は、ヘッド本体210よりも若干大きく形成されており、ヘッド本体210はヘッドケース250の下面の中央部に接合されている。そして、ヘッドケース250を厚さ方向に貫通する第1の切欠き部254は、ヘッドケース250のヘッド本体210が接合されていない領域に形成されている。
ヘッドケース250をこのような構成とすることで、ヘッドケース250の下面にヘッド本体210を接合する際、ヘッド本体210の接合面全体をヘッドケース250の下面に当接させることができる。したがって、ヘッドケース250によってヘッド本体210の接合面全体を略均一に加圧されるため、両者を良好に接合することができる。また第2の切欠き部255はヘッドケース250の下面に達することなく形成されているため、第1の切欠き部254のようにヘッドケース250のヘッド本体210が接合されていない部分に形成しなくても、ヘッド本体210の接合面全体をヘッドケース250の下面に当接させることができる。したがって、第2の切欠き部255は、ヘッド本体210が接合されている領域にも形成することができる。つまり第2の切欠き部255の形成領域に制限がなくなる。これにより、ヘッドケース250の小型化を図ることもできる。
仮に第2の切欠き部をヘッドケースの厚さ方向に亘って形成した場合、ヘッドケースとヘッド本体との接着性という観点から、この第2の切欠き部はヘッドケースのヘッド本体との接合領域の外側に形成する必要性が生じてしまう。つまりヘッドケースを大型化する必要性が生じてしまう。しかしながら、本発明の構成では、第2の切欠き部の形成位置が制限されないため、ヘッドケースの小型化を図りつつ、ヘッドケースとヘッド本体とを良好に接合することができる。
図8は、充填部の形成手順を示す図であり、図8(a)は、図7のA−A′断面に対応する断面図であり、図8(b)は、図7のB−B′断面に対応する断面図である。図8(a)に示すように、複数のヘッド部材200が固定板300に位置決め固定された状態で、第1の切欠き部254に第1のシリンジ501を挿入して、この第1のシリンジ501からヘッド部材200間の隙間に第1の接着剤571を導入する。第1の切欠き部254は、本実施形態ではヘッドケース250のヘッド本体210が接合されていない領域に設けられている。このため、第1の切欠き部254に、第1のシリンジ501を固定板300近傍まで挿入することができる。そして、この第1のシリンジ501の先端部から第1の接着剤571をヘッド部材200間の隙間に流し込むことにより、比較的短時間でヘッド部材200間の隙間全体に第1の接着剤571を行き渡らせることができ、この第1の接着剤571を硬化させることで第1の充填層271が良好に形成される。そして、この第1の充填層271によって各ヘッド本体210と固定板300とが確実に固定される。
次いで、図8(b)に示すように、第1の切欠き部254とは独立して設けられる第2の切欠き部255に第2のシリンジ502を挿入し、この第2のシリンジ502からヘッド本体210間の隙間に第2の接着剤572を導入する。このとき、第1の切欠き部254と第2の切欠き部255とが独立して設けられていることで、第2の接着剤572をヘッド部材200間の隙間に良好に流し込むことができる。つまり、第1の切欠き部254と第2の切欠き部255とが独立して設けられていることで、第2の切欠き部255内に第1の接着剤571が固着して第2の接着剤572を流し込むことができない等の問題が生じることがない。
この第2の接着剤としては、第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高いものを用いている。このため、第2のシリンジ502は、内径が第1のシリンジ501よりも大きいものを使用することが好ましい。第2の切欠き部255は、第1の切欠き部254よりも開口面積が広く形成されているため、第2のシリンジ502として内径が比較的大きいものを使用することができる。これにより、第2の接着剤572が比較的粘度の高いものであったとしても、第2のシリンジ502によって良好に流し込むことができる。また、第2の接着剤の粘度が高い場合、第2の切欠き部255からヘッド部材200間の隙間に第2の接着剤が充填されるのに時間がかかり、作業効率が低下することが考えられる。しかしながら、本実施形態の構成では、第2の切欠き部255内に第2のシリンジ502によって所定量の第2の接着剤を導入しておけばよい。つまり、第2の切欠き部255に所定量の第2の接着剤を溜めて放置しておけば、第2の切欠き部255内の第2の接着剤が徐々にヘッド部材200間の隙間に充填されていく。したがって、第2のシリンジ502によって第2の接着剤を流し込む作業自体は極めて短時間で終了するため、作業効率が低下することはない。また、第2の接着剤を第2の切欠き部255内に導入することで、第2の接着剤がヘッドケース250の表面に付着することがなく、その後の工程で、ヘッドケース(ヘッド部材)250とカートリッジケース100とを良好に接合することができる。
そして、このように各ヘッド部材200間の隙間に充填された第2の接着剤を硬化させることで、第1及び第2の充填層271,272からなる充填部270を極めて良好に、且つ比較的短時間で効率的に形成することができる。
なお、第1及び第2の切欠き部254,255の大きさ(開口面積)は、特に限定されるものではなく、挿入される第1又は第2のシリンジ501,502の太さを考慮して適宜決定されればよいが、第2の切欠き部255は、できるだけ大きく形成しておくことが好ましい。これにより、比較的大量の第2の接着剤をヘッド部材200間の隙間に充填する場合でも、比較的短時間で作業を終了させることができ作業効率を向上することができる。
なお、第2の充填層272を構成する第2の接着剤としては、第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い接着剤を用いればよいが、さらに、硬化状態での硬度が比較的低いものを用いることが好ましい。これにより、接着剤の硬化に伴う収縮をより確実に抑えることができ、接着剤の硬化収縮に伴う固定板300の変形を極めて小さく抑えることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した構成に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、第1及び第2の切欠き部がそれぞれ独立して設けられているが、これに限定されず、第1及び第2の切欠き部は、ヘッドケースの同一箇所に設けられていてもよい。つまり、第2の切欠き部が第1の切欠き部の一部を兼ねるようにしてもよい。また上述の実施形態では、ヘッドケースがヘッド本体よりも大きく、ヘッドケースのみ第1及び第2の切欠き部を設けた構成を例示した。しかしながら、例えば、ヘッドケースとヘッド本体とが同一の大きさであってもよい。そしてこの場合、第1の切欠き部は、ヘッドケース及びヘッド本体に連続して形成されていることが望ましい。つまり、第1の切欠き部は、第1の接着剤を導入する第1のシリンジを固定板近傍まで挿入できるように形成されていることが望ましい。
また、ヘッドケースが、第1及び第2のヘッドケースの二つの部材が積層された構成を例示したが、ヘッドケースは、勿論、三つ以上の部材が積層された構成であってもよいが、必ずしも複数の部材が積層されている必要はない。
また、上述の実施形態では、各ヘッド部材の周囲、具体的には、各ヘッド部材間の隙間及び各ヘッド部材と折り曲げ部との間に充填部を設けるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち充填部は、少なくとも各ヘッド部材間の隙間に設けられていればよい。
また、上述した実施形態では、圧力発生室内の液体に圧力を付与する圧力発生素子として、撓み振動型の圧電素子を例示したが、圧力発生素子は、特に限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子であってもよいし、発熱素子等であってもよい。
なお、上述した記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図9に示すように、記録ヘッド1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッド1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッド1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また上述の実施形態では、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの組立斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。 実施形態1に係るヘッド部材の分解斜視図である。 実施形態1に係るヘッド部材の断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。 実施形態1に係るヘッドケースの平面図である。 実施形態1に係る充填部の形成手順を示す断面図である。 一実施形態に係る記録装置の概略図である。
符号の説明
1 記録ヘッド、 100 カートリッジケース、 103 インク供給針、 200 ヘッド部材、 210 ヘッド本体、 211 流路形成基板、 218 ノズルプレート、 222 圧電素子、 228 コンプライアンス基板、 250 ヘッドケース、 251 第1のヘッドケース、 252 第2のヘッドケース、 253 インク供給連通路、 254 第1の切欠き部、 255 第2の切欠き部、 270 充填部、 271 第1の充填層、 272 第2の充填層、 300 固定板、 400 カバーヘッド、 501 第1のシリンジ、 502 第2のシリンジ、 571 第1の接着剤、 572 第2の接着剤

Claims (6)

  1. 圧力発生素子の駆動によって圧力発生室内の液体をノズルから吐出するヘッド本体及び
    該ヘッド本体の液体吐出面とは反対側の面に接合されて前記圧力発生室に液体を供給する
    ための流路を有するヘッドケースを有する複数のヘッド部材と、各ヘッド部材の前記液
    体吐出面側に接着され複数のヘッド部材が所定間隔で位置決め固定される固定部材とを具
    備し、
    前記固定部材に固定された各ヘッド部材の隙間には、これらの隙間に充填されて硬化された所定の接着剤からなる充填部が設けられ、
    該充填部が前記固定部材側に設けられる第1の充填層と該第1の充填層上に設けられて
    当該第1の充填層を構成する第1の接着剤よりも未硬化状態での粘度が高い第2の接着剤
    からなる第2の充填層とで構成されており、
    前記ヘッド部材の並設方向における前記ヘッドケースの端面には、
    当該ヘッドケースの厚さ方向に亘って形成され前記第1の接着剤が導入される第1の切欠き部と、
    前記ヘッドケースの下面に達することなく形成され前記第2の接着剤が導入される第2の切欠き部とが設けられており、
    前記第2の切欠き部の開口面積が、前記第1の切欠き部の開口面積よりも広く、
    前記ヘッドケースの前記ヘッド本体が接合されていない部分に前記第1の切欠き部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記ヘッドケースが、前記ヘッド本体に接合される第1のヘッドケースと該第1のヘッ
    ドケース上に接合される第2のヘッドケースとで構成されており、前記第2の切欠き部が
    前記第2のヘッドケースにその厚さ方向に亘って形成されていることを特徴とする請求項
    1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記ヘッドケースの前記ヘッド本体が接合される接合面の面積が前記ヘッド本体の面積
    よりも広いことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記第1の充填層の厚さが前記第2の充填層の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項
    1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 前記第1の充填層が前記ヘッドケースに接しない程度の厚さで形成されていることを特
    徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴
    射装置。
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