JP4438188B2 - カラーフィルタ及びその製造方法、並びに液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光機能付きカラーフィルタ及びその製造方法、並びに液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、ノート型パソコンやLCD(液晶ディスプレイ)モニタ、液晶テレビ、カーナビゲーション、モバイル、携帯電話等に、その薄さや軽さからあらゆる用途のディスプレイ装置へ展開されている。
【0003】
液晶表示装置は、ガラス基板や偏光板、カラーフィルタ、液晶スイッチングデバイス、駆動電極など多くの部材により構成されているが、より薄く、より軽く、より安くを目標に、従来から様々な努力が続けられている。
【0004】
1980年代、液晶表示装置が民生用として我々の目に付くようになった当時は、ガラス基板の厚さは1.1mmであったが、現在では0.7mmが主流で、これ以下の厚さのガラスも実用化されつつある。
【0005】
また、近年、ガラスに代わって厚さ0.5mm以下の無複屈折性プラスチック基板を用いた液晶表示装置が主にモバイル用途や携帯電話用途に採用され始めた。
【0006】
偏光板は、ヨウ素錯体を吸着させたポリビニルアルコール(PVA)を一軸方向に延伸にする方法(ヨウ素系偏光板)や、一軸方向に延伸したPVAに二色性染料を吸着させる方法(染料系偏光板)により製造され、強度を増す目的で50〜200μmの2枚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの無複屈折性保護フィルムで挟まれた構成になっており、厚さは100〜400μm程度ある。
【0007】
液晶表示装置のカラー化のキーデバイスであるカラーフィルタに,光配向膜と二色性色素の組み合わせによって着色層に偏光板の機能を持たせようとする試みが、例えば特開平8−286029号公報に開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記PVAを用いた偏光板は、PVAが一軸延伸であるため裂けやすく,強度を増す目的で2枚の保護フィルムに挟まれた非常に厚い構成となっているばかりか,原理的に保護フィルムには高価な無複屈折性フィルムを用いなければならず,コストが高くなる原因となっている。
【0009】
又、上記特開平8−286029号公報の偏光機能付きカラーフィルタは、原理的に着色状態と透明状態(白)の制御のみが可能であり、暗状態(黒)を表現できないという問題がある。
【0010】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、薄く、軽く、製造コストが安価であり、且つ、暗状態を表現できるようにした偏光機能付きカラーフィルタ及びその製造方法、並びにこれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、基材上に光活性分子を塗布し、前記光活性分子が光化学反応を起こす波長の直線偏光又は斜め非偏光を照射して表面の配向状態を制御した後、二色性色素を塗布して配向させ、その上にレッド、グリーン、ブルーからなる着色層を形成することにより、偏光機能付きカラーフィルタを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
カラーフィルタの発明は、請求項1のように、着色層と、基材と、これらの間に、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射により表面の配向状態を制御された光活性分子層と、黒色を呈する水溶液を前記光活性分子層に塗布してなり、前記光活性分子層に接触することにより配向制御された二色性色素層と、を有してなるカラーフィルタにより上記目的を達成するものである。
【0013】
前記光活性分子は、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射による光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解一結合のうち、いずれかの反応により配向性能が発現されるようにしてもよい。
【0014】
更に、前記二色性色素層における二色性色素はリオトロピック液晶性を示すものとしてもよい。
【0015】
液晶表示装置の発明は、請求項4のように、上記のようなカラーフィルタと、基板と、液晶層と、偏光板と、を重ね合わせて有してなる液晶表示装置により上記目的を達成するものである。
【0016】
本方法発明は、請求項5のように、基材上に光活性分子を塗布する工程と、前記光活性分子が光化学反応を起こす波長の直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方を照射して表面の配向状態を制御する工程と、黒色を呈する水溶液である二色性色素を塗布する工程と、レッド、グリーン、ブルーからなる着色層を形成する工程と、を有してなることを特徴とするカラーフィルタの製造方法により上記目的を達成するものである。
【0017】
前記偏光機能付きカラーフィルタの製造方法において、前記光活性分子層における光活性分子は、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射による光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解一結合のうちいずれかの反応により配向性能が発現されているようにしてもよい。
【0018】
又、前記二色性色素層における二色性色素はリオトロピック液晶性を示すものであるようにしてもよい。
【0019】
本発明によれば、着色層と基材の間に、直線偏光照射又は斜め非偏光照射により表面の配向状態を制御された光活性分子層と、この光活性分子層に接触することにより配向制御された二色性色素層を具備することにより、薄く、軽く、安価な偏光機能付きカラ一フィルタを製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1に示されるように、本発明の実施の形態の例にかかる偏光機能付きのカラーフィルタ10は、基材12と、この基材12上に形成された光活性分子層14と、さらにその上に形成された二色性色素層16及び着色層18とにより構成されている。
【0022】
本発明に用いる基材の材料としては、透明なものが望ましく、ガラス、石英などの無機物のほかに、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)などのポリエステル,ポリイミド,ポリエチレン等の各種プラスチックを用いることができる。
【0023】
液晶を異方的に配向させる方法としては、ラビングが公知の手段として知られている。ラビングは、レーヨンや綿などからなる毛足の短いベルベット状の布を巻き付けたドラムを回転させながら接触させる方法であり、ラビング処理を施された配向膜は、その表面に微細な溝が一方向に形成されるとともに、配向膜の最表面の分子が一方向に配向する。この場合、微細な溝と最表面分子の配向が液晶を配向させる駆動力となっている。
【0024】
配向膜材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコールなどが多用されている。
【0025】
近年、ラビングに変わる液晶の配向方法として、光配向が注目されている。光配向は、アゾベンゼン系ポリマーやポリビニルシンナメート等の光活性分子に光化学反応を起こす波長の直線偏光や斜め非偏光を照射して光配向膜の表面に異方性を生成させる方法であり、光配向膜最表面の分子の配向が液晶を配向させる駆動力となる。
【0026】
本発明に用いる光活性分子は、前記のアゾベンゼン系ポリマーやポリビニルシンナメ一卜の他に、光活性分子が光化学反応を起こす波長の直線偏光又は斜め非偏光照射により光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解一結合のうち、いずれかの反応により表面に異方性を生成するものであればよく、例えば、「長谷川雅樹、日本液晶学会誌,Vol3.NO.1、p3(1999)」や、「竹内安正、日本液晶学会誌、Vol3.NO.4、p262 (1999)」に記載される種々の光活性分子を使用できる。
【0027】
図2(A)のように、基材12上に塗布され、且つ、図2(B)のように、直線偏光照射又は斜め非偏光照射により表面の配向状態を制御された光活性分子層14の上に、図2(C)に示されるように、リオトロピック液晶性(水溶液で液晶となる性質)を示す二色性色素水溶液を塗布すると、光活性分子層最表面の分子の配向を駆動力として二色性色素が配向する。二色性色素は、分子の長軸方向とそれと直交する方向の吸光度が大きく異なる色素のことであり、この二色性色素が異方的に配向している場合、二色性色素層を通過した後の光は、分子長軸方向と平行な直線偏光成分が少なく、分子長軸方向に垂直な直線偏光成分が多く、両者の比率は大きく異なってくる。
【0028】
従って、この上にレッド、グリーン、ブルーからなる着色層18を形成すれば、容易に偏光機能付きカラーフィルタ10を製造することができる。
【0029】
本発明に用いる二色性色素は、水溶性でリオトロピック液晶性を示す二色性色素であればよく、例えば、「90年代機能性色素の開発と市場動向、シーエムシー、P22-29」や、「特殊機能色素一技術と市場一、シーエムシー、P58-70」に記載される種々の二色性色素を使用することができる。
【0030】
なお、前記二色性色素層16の耐久性が十分でない場合は、図3に示される実施形態の第2例のカラーフィルタ20のように、前記二色性色素層16と前記着色層18との間に保護層17を設ける必要がある。又、前記着色層18の上にオーバーコート層19を設けてもよい。
【0031】
二色性色素層16の上に形成する保護層17としては、透明な樹脂膜、例えば、アクリル系やエポキシ系の硬化性樹脂を用いることができる。
【0032】
前記のように、透明な基材12と、この基材12上に形成された光活性分子層膜14と、二色性色素層16と着色層18により構成されている偏光機能付きカラーフィルタ10は、保護フィルムで挟まれた偏光板を貼り付ける必要がないため、薄く、軽く、また、高価な紫複屈折性フィルムを使用する必要がなく安価である。
【0033】
図4は、上記のようなカラーフィルタ10、20を用いた液晶表示装置30の実施の形態の例を示すものであり、カラーフィルタ10、20の他に、基板32、液晶層34、偏光板36を重ね合わせて構成されている。図4の符号38A、38Bは電極、40A、40Bは配向膜をそれぞれ示す。これらの基板、液晶層及び偏光板等については、従来周知の構成であるので説明は省略する。
【0034】
この液晶表示装置30においては、カラーフィルタ10、20が偏光機能を有しているので、偏光板は1枚のみで足りる。又、キーデバイスであるカラーフィルタ10、20が薄く、軽いので、装置の容積、重量が小さく軽くなる。更に、低コストである。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
下記に示すアゾベンゼンポリマ−10重量部とトルエン90重量部からなる溶液を厚さ0.7mmのガラス(基材)上にスピンコーターで塗布し、自然乾燥後厚さ30nmの光活性分子層を形成した。
【0037】
【化1】
【0038】
これに超高圧水銀灯を光源として,バンドパスフィルタを用いて波長436nmの可視光を取り出し、偏光板を通して直線偏光を照射した。このとき照射した光の照射線量は100mJ/cm2であった。
【0039】
アゾベンゼンポリマーは、直線偏光照射により光異性化反応を起こし、照射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に配向する。
【0040】
次に、二色性色素C.I Direct Blue 67を5重量部、C.I.Direct Green 59を5重量部にノニオン系界面活性剤エマルゲン108(花王製)を1重量部加え、89重量部の純水を加え黒色を呈する水溶液とした。
【0041】
これを先の基板上に形成された光活性分子層の上にスピンコーターで塗布し室温で自然乾燥した。形成した二色性色素層の厚みは約1μmであった。
【0042】
次に顔料分散法によりレッド、グリーン、ブルーからなる着色層を形成した。こうして得られた偏光機能付きのカラーフィルタは、偏光板を貼る必要がないため、薄く、軽く、又、高価な無複屈折性保護フィルムを用いないため安価である。
【0043】
(実施例2)
下記に示すスチリルピリジンポリマ−10重量部とトルエン90重量部からなる溶液をガラス上にスピンコーターで塗布し、自然乾燥後厚さ30nmの光活性分子層を形成した。
【0044】
【化2】
【0045】
これに超高圧水銀灯を光源としてバンドフィルタを用いて波長313nmの紫外光を取り出し、紫外線用偏光板を通して直線偏光を照射した。このとき照射した光の照射線量はそれぞれ100mJ/cm2 であった。
【0046】
スチリルピリジンポリマーは、直線偏光照射により光二量化反応を起こし、照射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に配向する。
【0047】
次に、二色性色素C.I.Direct Blue 67を5重量部、C.I.Direct Green 59を5重量部にノニオン系界面活性剤エマルゲン108(花王製)を1重量部加え、89重量部の純水を加え黒色を呈する水溶液とした。
【0048】
これを先の基板上に形成された光活性分子層の上にスピンコーターで塗布し室温で自然乾燥した。形成した二色性色素層の厚みは約1μmであった。
【0049】
次に顔料分散法によりレッド、グリーン、ブルーからなる着色層を形成した。
【0050】
こうして得られた偏光機能付きカラーフィルタは、偏光板を貼る必要がないため、薄く、軽く、又、高価な無複屈折性保護フィルムを用いないため安価である。
【0051】
(実施例3)
基材に厚さ200μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、実施例2と同様にして偏光機能付きカラーフィルタを作製した。
【0052】
こうして得られた偏光機能付きカラーフィルタは、偏光板を貼る必要がないため、薄く、軽く、又、高価な無複屈折性保護フィルムを用いないため安価である。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、カラーフィルタを上記のように構成したので、薄く、軽く、安価な偏光機能付きカラーフィルタ又は液晶表示装置を作製することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例に係るカラーフィルタを示す拡大断面図
【図2】同カラーフィルタの製造工程を示す略示断面図
【図3】同実施の形態の第2例のカラーフィルタを示す拡大断面図
【図4】本発明のカラーフィルタを用いた液晶表示装置の実施の形態の例を示す拡大断面図
【符号の説明】
10、20…カラーフィルタ
12…基材
14…光活性分子層
16…二色性色素層
17…保護層
18…着色晶
30…液晶表示装置
32…基板
34…液晶層
36…偏光板
Claims (7)
- 着色層と、基材と、これらの間に、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射により表面の配向状態を制御された光活性分子層と、黒色を呈する水溶液を前記光活性分子層に塗布してなり、前記光活性分子層に接触することにより配向制御された二色性色素層と、を有してなるカラーフィルタ。
- 請求項1において、前記光活性分子層における光活性分子は、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射による光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解一結合のうちいずれかの反応により配向性能が発現されていることを特徴とするカラーフィルタ。
- 請求項1または2において、前記二色性色素層における二色性色素はリオトロピック液晶性を示すものであることを特徴とするカラーフィルタ。
- 請求項1乃至3のいずれかのカラーフィルタと、基板と、液晶層と、偏光板と、を重ね合わせて有してなることを特徴とする液晶表示装置。
- 基材上に光活性分子を塗布する工程と、前記光活性分子が光化学反応を起こす波長の直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方を照射して表面の配向状態を制御する工程と、黒色を呈する水溶液である二色性色素を塗布する工程と、レッド、グリーン、ブルーからなる着色層を形成する工程と、を有してなることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
- 請求項5において、前記光活性分子層における光活性分子は、直線偏光又は斜め非偏光の少なくとも一方の照射による光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解一結合のうちいずれかの反応により配向性能が発現されていることを特徴とするカラ一フィルタの製造方法。
- 請求項5又は6において、前記二色性色素層における二色性色素はリオトロピック液晶性を示すものであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
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