JP3583250B2 - 反射型液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特殊な配向膜を備えた反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置として従来、図8に示す構造のものが知られている。図8に示す反射型液晶表示装置Aは、一対のガラスからなる基板1、2のそれぞれの対向面側に透明電極層3、4が設けられ、それらの透明電極層3、4上に配向膜5、6が設けられ、これら一対の基板間にカイラル性ネマチック液晶等の液晶層7が封入され、基板1、2の外側にそれぞれ偏光板8、9が設けられ、更に図8の下方の偏光板9の外方に反射板10が設けられて構成されている。
【0003】
図8に示すような構造の反射型液晶表示装置Aは、偏光板を2枚使用する構造であるがために、偏光板8側から入射する光の60%以上がこの液晶表示装置Aの内部でカットされ、従って、入射光の40%程度のみが画面表示に利用されるという状況にあり、この構造の反射型液晶表示装置Aは表示が暗いという問題を有していた。
【0004】
そこで、反射型液晶表示装置の表示を明るくするための構造として、近年、偏光板を用いることなく、ゲストホストタイプの液晶とλ/4板を用いた構造の液晶表示装置が提案されている。
【0005】
図9と図10はこの種のゲストホストタイプの液晶表示装置の一従来例を示すもので、この例の液晶表示装置Bは、上下一対のガラスの基板11、12の間に、誘電異方性の液晶層13が封入され、液晶層13中に液晶分子13aに加えて2色性色素分子14が混入され、基板11下面にコモン電極層16と配向膜17が設けられ、基板12上に複数の画素電極群からなる電極層18と配向膜19が設けられるとともに、基板12の下面側にλ/4波長板20と反射板21が設けられて構成されている。
【0006】
上記液晶表示装置Bにあっては、図9に示すように液晶層13に電界を印加して液晶分子13a・・・を起立させた状態において、上の基板11側から入射した光が液晶層13を通過して反射板21で反射され、再び液晶層13を通過して上の基板11から出射されるので、明表示となる。
また、図10に示すように、液晶層13に電界を印加しない状態において、液晶層13の液晶分子13a・・・と2色性色素分子14は、基板1、2に平行に倒れた状態となる。ここで2色性色素分子14はその分子長軸方向に垂直な方向の振動を有する光を吸収する。従って、上の基板11側から入射した光は液晶層13を通過する際に、2色性色素分子14の長軸に平行な振動のものが吸収され、その他の方向の振動を有するもののみが液晶層13を通過する。
また、この後入射光はλ/4波長板20を通過してその振動方向を変更され、その後に反射板21で反射され、再びλ/4波長板20を通過する際に、基の入射光の振動方向から90度振動方向を回転させられることになり、再度液晶層13を通過する場合に、2色性色素分子14の分子長軸方向に平行な方向の振動を有する光が吸収される結果、入射光の大部分が吸収されて液晶表示装置Bとしての暗表示がなされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の液晶表示装置Bは、偏光板を用いていないので、図8に示す液晶表示装置Aに比べて明るい表示を得ることができる利点を有するものの、2色性色素分子14は入射光の中で2色性色素分子14の長軸方向に平行方向の振動を有する光を主に吸収するので、2色性色素分子14が吸収できる光は入射光の半分程度であり、このためλ/4波長板20で振動方向を変えて反射光から更に光を吸収したとしても入射光全体の70〜80%程度しか吸収できない問題がある。このため、暗表示の場合の暗さを十分にすることが難しく、暗表示と明表示の場合のコントラストが十分には確保できない問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、入射光をできるだけ多く吸収することで暗表示の場合の明るさを少なくし、もって、明表示の場合とのコントラストを大きくすることで表示品位を高くした反射型液晶表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、光の入射側と反射側に対向して設けられる一対の透明の基板間に2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶層が設けられ、前記両基板の液晶層側にそれぞれ電極層と配向膜が積層されるとともに、前記両基板のうち、光の反射側の基板の前記液晶層側と基板外方側のどちらか一方に液晶層に近い側から順にλ/4波長板と反射板が設けられてなる一方、前記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜とされ、光の反射側の配向膜が一方向配向された配向膜とされ、前記配向方向の異なる複数の配向領域が、各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた領域であり、前記配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなり、前記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなることを特徴とする。
また本発明は上記課題を解決するために、光の入射側と反射側に対向して設けられる一対の透明の基板間に2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶層が設けられ、前記両基板の液晶層側にそれぞれ電極層と配向膜が積層されるとともに、前記両基板のうち、光の反射側の基板の前記液晶層側と基板外方側のどちらか一方に液晶層に近い側から順にλ/4波長板と反射板が設けられてなる一方、前記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜とされ、光の反射側の配向膜が一方向配向された配向膜とされ、前記配向方向の異なる複数の配向領域が、各画素よりも小さく同心円状に配向方向を異ならせた領域であり、前記配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなり、前記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなることを特徴とする。
【0010】
前記構成の液晶表示装置においては、液晶分子と2色性色素分子が両基板間で起立状態となる場合に、この起立状態の液晶分子と2色性色素分子間を光が通過し、明表示となる。また、上記構成の液晶表示装置においては、両基板間に液晶分子と2色性色素が基板と平行になる状態において、各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた複数の配向領域あるいは各画素よりも小さく同心円状に配向方向を異ならせた複数の配向領域が形成された一方の配向膜により、配向膜近くの液晶分子と2色性色素分子が、配向方向の異なる複数の配向領域に沿って両基板間で基板に平行状態で配向方向の異なる複数の配向領域に沿って配向される一方、この配向膜から離れて他方の一方向配向された配向膜に近づくにつれて液晶分子と2色性色素分子は両基板間で基板に平行状態で一方向配向される。
従って、上記構成の液晶表示装置に対し、光の入射側の基板から液晶層側に入射された光は、各画素よりも小さく配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜に沿って、各画素よりも小さく配向方向の異なる複数の配向がなされた液晶分子に揃う2色性色素分子により、その大部分が吸収される。また、液晶層を通過したごくわずかの通過光は、λ/4波長板を通過して反射板で反射され、再度λ/4波長板を通過することでその振動方向が90度変換されるので、再度、配向方向が異なる複数の2色性色素分子に吸収されてほとんど吸収される。この結果として暗表示の際の光の吸収度が向上し、暗状態と明状態のコントラストが大きくなる。
【0011】
また、前記配向方向の異なる配向領域が、各画素よりも小さな放射状に配向方向を異ならせた配向領域又は同心円状に配向方向を異ならせた配向領域とされてなることが必要である。
上記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が、上記配向方向の異なる配向領域を複数形成した配向膜とされ、光の反射側の配向膜が、一方向配向された配向膜とされてなり、この配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなることが好ましい。
【0012】
上記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなることが好ましい。UV感応樹脂は、UV照射により上記放射状又は同心円状の配向方向の異なる配向領域を形成できるものであれば良く、カルコン等が挙げられる。
本発明において前記放射状または同心円状の配向領域の直径が3〜100μmの範囲とされ、かつ、前記1つの画素に3〜100個互いに近接して互い違いに形成されてなることが好ましい。
本発明において前記一対の基板のどちらか一方にカラーフィルタが付設されてなることが好ましい。
【0013】
前記の各反射型液晶表示装置の構成において適用される配向方向の異なる配向領域は、例えば次のようにして形成する。
前記ホールパターン電極と前記透明導電膜との間に電界を印加して前記液晶層の液晶分子を配向させ、前記ホールパターン電極の電極未形成領域に対応する前記液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与し、前記ラジアルホモジニアス配向セルを通過させた放射状偏光を前記UVに反応する感応樹脂に照射することで放射状に配向方向を異ならせた前記配向膜を得ることができる。
放射状配向領域においては、電極未形成領域を複数備えたホールパターン電極とこのホールパターン電極に対向して設けられる一方向配向処理済みの透明導電膜との間に硬化型液晶層が封入され、硬化型液晶層中の液晶分子の配向方向が一方向配向処理済みの透明導電膜側では一方向配向され、ホールパターン電極側に向かうにつれて液晶分子の配向方向が各ホールパターンを中心とする放射状に配向されたラジアルホモジニアス配向セルを用い、UV硬化樹脂からなる配向膜素材に対し、ラジアルホモジニアス配向セルのホールパターンを通過させて放射偏光させた光を照射し、配向膜素材上に複数の放射状配向領域を形成する。
更に前記ラジアルホモジニアス配向セルの液晶層をUV硬化型の液晶層から構成し、前記ホールパターン電極と前記透明導電膜との間に電界を印加して前記液晶層の液晶分子を配向させた状態でこの液晶層にUV光を照射して液晶層を硬化させて液晶分子の向きを固定し、前記液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与することを特徴とする方法でも良い。
【0014】
また、電極未形成領域を複数備えたホールパターン電極とこのホールパターン電極に対向して設けられる一方向配向処理済みの透明導電膜との間に液晶層を封入し、電界印加した状態で液晶の温度を上げて相転移させ、徐々に冷却させてその配向状態を保持メモリさせることで作製したラジアルホモジニアス配向セルのホールパターンを通過させて放射偏光させた光を照射し、配向膜素材上に複数の放射状配向領域を形成する。
ラジアルホモジニアス配向セルを用い、これらの方法を実施することによってUV硬化樹脂に方向の異なる配向方向の領域を複数備えた配向膜を得ることができる。
【0015】
また、本発明の反射型液晶表示装置においては、基板にカラーフィルタを付設することでカラー表示が可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1〜図5は本発明に係る反射型液晶表示装置の要部を示すもので、図1と図2の図面上で上の基板30と下の基板31が互いの間に所定の間隔(セルギャップ)をあけて平行に対向配置され、基板30、31の間にゲストホストタイプの液晶層32が設けられている。また、上の基板30の下面には、光拡散層33とコモン電極34と配向膜35が積層され、下の基板31の上面には、薄膜トランジスタなどのスイッチング素子と画素電極からなる電極層36が形成され、更にその上に配向膜37が積層されるとともに、下の基板31の下面側には、基板31に近い側から順にλ/4波長板38と反射板39が積層されている。
【0017】
これらの基板30、31はガラス等の透明基板からなるが、実際の構成においては基板30、31の周縁部を図示略の封止材で取り囲み、基板30、31と封止材により囲まれた空間に液晶を封入して液晶層32が形成されていて、基板30、31と液晶層32とλ/4波長板38と反射板39等を組み合わせることによって液晶表示装置40が構成されている。
【0018】
この例の構造にあって、配向膜35は感光性高分子、例えば、(ポリビニルシンナメート(PVCi)、カルコン(三宝(株)製の商品名AR−G30)等のUV樹脂から構成されるが、配向膜35の下面には図3に拡大して示すように放射状に配向方向を異ならせた微小な配向領域Rが多数、互いに近接してかつ互い違いになるように形成されている。これらの配向領域Rは、好ましくは表示装置の1つの画素中に複数設けられる程度の大きさとされている。なお、これら配向領域Rの代わりに、配向膜35は、図4に拡大して示すように同心円状に配向方向を異ならせた微小な配向領域Sが多数、互いに近接してかつ互い違いになるように形成されたものでも良い。
この例の液晶表示装置40をノートパソコンの表示画面と見立てた場合、VGA表示を行うには、1つの画素が300μm角程度であるので、この画素の大きさに対し、3〜100個程度の範囲で放射状配向領域R又は同心円状の領域Sが形成されていることが好ましい。従って、放射状配向領域R又は同心円状配向領域Sの大きさは直径3〜100μmの範囲の大きさに形成されていることが好ましい。
【0019】
次に、配向膜37は、例えばポリイミド等の配向膜生成材料から構成され、図5に示すように平面矩形状の配向膜37の長辺と平行に矢印aに示すように右向きに一方向配向されている。この一方向配向処理は配向膜にラビングロールを擦り付ける等の方法でなされている。
反射板39の表面全面には図2に示すように微細な凹凸部39aが形成され、光を反射すると同時に反射光を拡散できるように構成されている。
【0020】
液晶層32は、液晶分子32aに2色性色素分子41を配合して構成された誘電異方性を有するゲストホストタイプの液晶からなる。ここで、2色性色素分子を有する液晶層32としては、例えば、正の誘電異方性を有する液晶を使用できる。
正の誘電異方性を備えた液晶層32の場合は、液晶層32に電界を加えない時に各液晶分子が基板に平行な状態、即ち、図2のように寝た状態となり、他方、液晶層32に電界を印加した場合は一対の基板30、31間を横切る方向に向いた状態、即ち、起立状態となる。
液晶層32に電界を印加したとき、起立状態の液晶分子32a・・・と2色性色素分子41・・・は光を透過させるので表示は明状態となる。
【0021】
一方、液晶層32に電界を印加しないとき、2色性色素分子41・・・が液晶分子32a・・・と同じ方向に、即ち、基板30、31と平行に配向するので、入射する光において2色性色素分子41の長軸方向に平行となる振動を有する光が2色性色素分子41に吸収される結果、暗表示となる。また、λ/4波長板38は、それを通過する光の振動方向を変更するものであり、λ/4波長板38を通過して反射板39に反射されて再度λ/4波長板38を通過した光の振動方向を90度だけ変換する。従って基板30、31と平行な状態の2色性色素分子41に吸収されずに反射板39に到達して反射板39で反射されたわずかな量の反射光は、振動方向が変更されているので再度2色性色素分子41に吸収され、結果的にほとんどの光が吸収される。
【0022】
ここで、この例の液晶表示装置40にあっては、上の配向膜35に微細な複数の放射状の配向領域R又は同心円状の配向領域Sが設けられ、上の配向膜35に近接していて、基板30、31と平行な状態の液晶分子32a・・・が配向領域Rの放射状配向方向に沿って又は配向領域Sの同心円状の配向方向に沿って種々の向きに図3の矢印に示すように又は図4の同心円に示されるように配向される状態とされる。また、下の配向膜37に近接していて基板31と平行な状態の液晶分子32a・・・は図5に示す矢印a方向に配向することになる。また、それらの間の部分に存在する液晶分子32a・・・と2色性色素分子41・・・はこれら上下の基板間において徐々にねじれるように配向された状態となる。
この結果として、上の配向膜35に近接した液晶分子32a・・・と2色性色素分子41・・・とが領域R毎又は領域S毎に放射状配置又は同心円状配置とされ、その状態から徐々に放射状配置又は同心円状配置が崩されてねじれ、最後は下の配向膜37の近傍において矢印a方向に揃って配向される。
【0023】
この状態の2色性色素分子41・・・に上の基板30側から光を入射すると、種々の方向(全方向)に向いた2色性色素分子41・・・により、ほぼ全振動方向の光の吸収がなされ、即ち、放射状配向領域R又は同心円状配向領域Sのそれぞれの配向方向に合わせた振動方向のものが吸収され、結果的に入射光のほとんどが吸収される。
また、配向膜35の放射状配向方向に沿う2色性色素分子41・・・において、配向膜37の配向方向aと直交する方向に配向するものが多少存在するので、これらの2色性色素分子41・・・と平行な振動を有する入射光を吸収することはできない。しかしながら、これらの2色性色素分子41・・・で吸収しきれなかったごくわずかの入射光は、λ/4波長板31を通過して反射板39に到達して反射され、再びλ/4波長板31を通過するが、この反射光は、振動方向が90度変更されているので、再度種々の領域毎に放射状配向方向された多数の2色性色素分子41・・・に吸収され、結果的にほぼすべての光が吸収される。この結果として暗表示をより暗くすることができ、明表示とのコントラストを向上させることができる。
従って図1と図2に示す構造の液晶表示装置40は、暗表示と明表示のコントラストの大きな表示品質の高いものとなる。
【0024】
次に、上記放射状の微細な配向領域RをUV硬化配向膜に複数形成して前述の配向膜35を製造する方法について説明する。
配向膜35を形成するには、まず、基板30上に光拡散層33と電極層34を形成し、更にその上面にUV硬化樹脂の配向膜素材48を塗布したものを図6に示すように用意する。
次に、図6に示すように、透明基板49上に形成された微細な丸形の電極未形成領域R’を複数備えたAl薄膜等からなるホールパターン電極50と、このホールパターン電極50上にこれに対向して設けられる図6の矢印Cで示す方向に配向処理済みの配向膜51と透明導電膜52とを備えた透明の基板53との間にUV硬化型の液晶層55が封入された構成のラジアルホモジニアス配向セル54を用意する。
このラジアルホモジニアス配向セル54の液晶層55は、UV硬化型のものであり、ホールパターン電極50と透明導電膜52との間に電界印加した状態で液晶の温度を上げて相転移させ、徐々に冷却させてその配向状態を保持して液晶分子を配向させるので、この状態でUV光を液晶層55に照射することで液晶層55を硬化させることができ、このUV硬化型樹脂の硬化により液晶層55中の液晶分子の向きが固定されている。なお、ホールパターン電極50と透明導電膜52との間に強い電圧を印加し、瞬時に印加を止めても、上記と同様な所定の配向状態を得ることができる。このように液晶層55の液晶分子の向きが固定されていることで、このラジアルホモジニアス配向セル54は、直線偏光を多数の放射状偏光に偏光する変換素子となる。
【0025】
次に、このラジアルホモジニアス配向セル54の下に上記光拡散層33と電極層34とUV硬化樹脂の配向膜素材48を有する基板30を図6に示すように設置したまま、それらの上方から図6に示すようにUV照射を行う。ここでラジアルホモジニアス配向セル54は、電極未形成領域R’を通過するUV光を放射状に偏光させるので、この放射状偏光UV光を配向膜素材48に照射することでUV配向膜素材48に図6に示すように複数の微細な放射状偏光領域Rを備えた配向膜35を得ることができる。
【0026】
また、上記のように液晶層55を硬化させたものではなく、通常の液晶層のように配向制御できる液晶を設け、この液晶に電界を印加した状態で液晶の温度を上げて相転移させ、徐々に冷却させてその配向状態を保持メモリさせることでラジアルホモジニアス配向セルを作製し、図6に示すようにUV硬化型の配向膜素材48に照射して領域毎に放射状配向させて配向膜35を得ることもできる。
【0027】
ところで前述の実施形態においては、液晶表示装置40に光拡散層33を内蔵したが、光拡散層33は省略しても差し支えない。更に、上記の実施形態においては下基板31の底面にλ/4波長板38と反射板39を設けたが、下基板31の上面とその上の電極層36との間にλ/4波長板38と反射板39を設けて内蔵化することもできるのは勿論である。
更に、上記構造の液晶表示装置40の基板30の液晶層32側に図1の2点鎖線に示す如くカラーフィルタ60を設けて反射型カラー液晶表示装置とすることができるのは勿論である。
【0028】
【実施例】
ソーダガラス基板の下面にITOからなる透明導電膜とUV硬化配向膜(カルコン(三宝(株)製商品名AR−G30)を備えた上部基板と、他のソーダガラス基板の上面にITOからなる透明導電膜と配向膜(JALS171(日本合成ゴム(株)商品名))を積層した下部基板との間に、メルクジャパン(株)商品名MJ9569の液晶に対し、LA121(三菱化学(株)商品名)の色素分子を2重量%の割合で混合してなるゲストホストタイプの液晶をシール部材で封入し、更に下部基板の下面にλ/4波長板と反射板を設けて反射型液晶表示装置を作製した。このうち、上部基板の配向膜には、図3に示すような直径10μmの円形状の放射状配向領域が、多数、2μm程度の間隔をあけて多数形成されたものを用い、下基板の配向膜には、図5に示すように矩形状の配向膜の長辺に平行なa方向にラビングロールにより配向処理したものを用いた。また、λ/4波長板は日東電工(株)製のものを用い、その光軸は図5に矢印bで示すように、a方向に対して45度の傾斜角度とし、反射板は東洋メタライジング(株)製の市販のものを用いた。
【0029】
得られた液晶表示装置と図8と図9に示す従来の液晶表示装置(上下の配向膜がいずれも一方向配向膜からなる構造)の印加電圧と反射率の関係を求めた結果を図7に示す。
図7に示す反射率とは、一対の透明ガラス基板間に白濁した液晶層の光拡散層とAl蒸着膜(反射鏡)を挟んだ構造の白色試料と、透明ガラス基板に白濁した液晶層の光拡散層と黒色樹脂を密着した黒色試料を用意し、これらの試料の表面に対する法線に対して入射角30度で標準白色光を照射し、上記法線位置に検出器を配置し、白色試料で得られた反射率を100%、黒色試料で得られた反射率を0%と設定し、これらの値に対する規格値として表したものである。
【0030】
本願発明に係る液晶表示装置の方が従来構造の液晶表示装置よりも暗表示の際の反射率が低いことが明らかであり、これにより、本発明に係る液晶表示装置の方が良好なコントラストを得ることができることが明らかになった。
なお、液晶表示装置としてコントラストは、(明表示の明るさ)/(暗表示の明るさ)で表記できるので、暗表示の明るさを小さくすること、即ち、暗くすることでコントラストは向上し、暗表示を良くすることで明表示も良好にすることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶を備えた反射型液晶表示装置において、液晶を挟む一対の配向膜のうち、一方を各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた複数の配向領域あるいは各画素よりも小さく同心円状に配向方向を異ならせた複数の配向領域が形成された配向膜とし、他方を一方向配向された配向膜としたので、配向方向の異なる複数の領域を有する配向膜により配向制御された液晶分子に2色性色素分子が揃う結果、配向方向の異なる複数の配向領域に沿って種々の方向に配向された2色性色素分子により種々の振動方向の入射光を効率良く吸収することができる。
また、吸収されなかった入射光のごく一部は、λ/4波長板を通過した後で反射板に反射され、再度λ/4波長板を通過する間に90度振動方法を変換されるので、入射光の段階で吸収されずに残ったわずかな光を再度、各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた複数の配向領域あるいは各画素よりも小さく同心円状に配向方向を異ならせた複数の配向領域に沿って配向されている配向方向の異なる種々の2色性色素分子で吸収することができ、より完全に光を吸収できる。これにより、入射光のほぼ全てを完全に吸収できるので、暗表示の場合の光の反射率を従来装置よりも低く抑えることができ、相対的に明表示の場合と暗表示の場合のコントラストを向上させて高品質な表示をできる効果がある。
【0032】
また、上記配向方向の異なる複数の配向領域を形成した配向膜をUVに反応する感応樹脂から構成すると、配向膜にUV光を照射することで、配向方向の異なる複数の配向領域を有する配向膜を得ることができる。
本発明では、前記放射状または同心円状の配向領域の直径を3〜100μmの範囲、かつ、前記1つの画素に3〜100個互いに近接して互い違いに形成することが好ましい。
更に、上記一対の基板のどちから一方にカラーフィルタを設けることにより、コントラストの高い、表示品質の優れたカラー表示の液晶表示装置を提供することができる。
本発明では、前記の各反射型液晶表示装置の構成において適用される配向方向の異なる配向領域は、以下のようにして形成することができる。
ラジアルホモジニアス配向セルのホールパターン電極と透明導電膜との間に電界を印加して液晶層の液晶分子を配向させ、ホールパターン電極の電極未形成領域に対応する液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与し、ラジアルホモジニアス配向セルを通過させた放射状偏光をUVに反応する感応樹脂に照射することで放射状に配向方向を異ならせた各画素よりも小さな領域を有する配向膜を得ることができる。
更に前記ラジアルホモジニアス配向セルの液晶層をUV硬化型の液晶層から構成し、前記ホールパターン電極と前記透明導電膜との間に電界を印加して前記液晶層の液晶分子を配向させた状態でこの液晶層にUV光を照射して液晶層を硬化させて液晶分子の向きを固定し、前記液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与することを特徴とする方法でも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液晶表示装置の第1の実施形態の電圧印加状態を示す斜視図。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の第1の実施形態の電圧無印加状態を示す斜視図。
【図3】上記第1の実施形態の一方の配向膜の放射配向領域を示す拡大図。
【図4】上記第1の実施形態の一方の配向膜の同心円状配向領域を示す拡大図。
【図5】上記第1の実施形態の他方の配向膜の配向領域を示す拡大図。
【図6】配向膜を作製している状態を示す斜視図。
【図7】上記第1の実施形態と従来のゲストホストタイプの液晶表示装置の印加電圧と反射率の関係を示したグラフ。
【図8】従来の偏光板を備えた液晶表示装置を示す断面図。
【図9】従来のゲストホストタイプの液晶表示装置の構造と液晶分子起立状態を示す斜視図。
【図10】従来のゲストホストタイプの液晶表示装置の構造と液晶分子が倒れた状態を示す斜視図。
【符号の説明】
R 放射状配向領域
S 同心円状配向領域
30、31 基板
32a 液晶分子
34、36 電極層
35、37 配向膜
38 λ/4波長板
39 反射板
40 液晶表示装置
41 2色性色素分子
Claims (6)
- 光の入射側と反射側に対向して設けられる一対の透明の基板間に2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶層が設けられ、前記両基板の液晶層側にそれぞれ電極層と配向膜が積層されるとともに、前記両基板のうち、光の反射側の基板の前記液晶層側と基板外方側のどちらか一方に液晶層に近い側から順にλ/4波長板と反射板が設けられてなる一方、
前記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜とされ、光の反射側の配向膜が一方向配向された配向膜とされ、前記配向方向の異なる複数の配向領域が、各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた領域であり、前記配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなり、前記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなることを特徴とする反射型液晶表示装置。 - 光の入射側と反射側に対向して設けられる一対の透明の基板間に2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶層が設けられ、前記両基板の液晶層側にそれぞれ電極層と配向膜が積層されるとともに、前記両基板のうち、光の反射側の基板の前記液晶層側と基板外方側のどちらか一方に液晶層に近い側から順にλ/4波長板と反射板が設けられてなる一方、
前記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜とされ、光の反射側の配向膜が一方向配向された配向膜とされ、前記配向方向の異なる複数の配向領域が、各画素よりも小さく同心円状に配向方向を異ならせた領域であり、前記配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなり、前記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなることを特徴とする反射型液晶表示装置。 - 前記放射状または同心円状の配向領域の直径が3〜100μmの範囲とされ、かつ、前記1つの画素に3〜100個互いに近接して互い違いに形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の反射型液晶表示装置。
- 前記一対の基板のどちらか一方にカラーフィルタが付設されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射型液晶表示装置。
- 光の入射側と反射側に対向して設けられる一対の透明の基板間に2色性色素分子を含む誘電異方性の液晶層が設けられ、前記両基板の液晶層側にそれぞれ電極層と配向膜が積層されるとともに、前記両基板のうち、光の反射側の基板の前記液晶層側と基板外方側のどちらか一方に液晶層に近い側から順にλ/4波長板と反射板が設けられてなる一方、
前記一対の配向膜のうち、光の入射側の配向膜が配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜とされ、光の反射側の配向膜が一方向配向された配向膜とされ、前記配向方向の異なる複数の配向領域が、各画素よりも小さく放射状に配向方向を異ならせた領域であり、前記配向膜の一方向配向方向とλ/4波長板の光軸方向が45度傾斜されてなり、前記配向方向の異なる複数の配向領域が形成された配向膜がUVに反応する感応樹脂からなる反射型液晶表示装置の製造方法であって、
前記放射状に配向方向を異ならせた領域に対応する大きさの丸形の電極未形成領域を複数備えたホールパターン電極を形成した透明基板と、この透明基板に対向して設けられ、一方向へ配向処理された配向膜及び透明導電膜を備えた透明の基板と、前記ホールパターン電極を形成した透明基板及び前記透明導電膜を備えた透明の基板との間に設けられた液晶層とを具備してなるラジアルホモジニアス配向セルを用い、
前記ホールパターン電極と前記透明導電膜との間に電界を印加して前記液晶層の液晶分子を配向させ、前記ホールパターン電極の電極未形成領域に対応する前記液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与し、前記ラジアルホモジニアス配向セルを通過させた放射状偏光を前記UVに反応する感応樹脂に照射することで放射状に配向 方向を異ならせた前記配向膜を得ることを特徴とする反射型液晶表示装置の製造方法。 - 前記ラジアルホモジニアス配向セルの液晶層をUV硬化型の液晶層から構成し、前記ホールパターン電極と前記透明導電膜との間に電界を印加して前記液晶層の液晶分子を配向させた状態でこの液晶層にUV光を照射して液晶層を硬化させて液晶分子の向きを固定し、前記液晶層内に直線偏光を放射状偏光に偏光させる変換素子機能を付与することを特徴とする請求項5に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
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