JP4437134B2 - 剛直複素環高分子、その製造法および繊維 - Google Patents

剛直複素環高分子、その製造法および繊維 Download PDF

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Description

本発明は剛直複素環高分子、その製造法およびそれからなる繊維に関する。
ポリベンゾビスオキサゾール系化合物については広範な紹介例がある(WO85/04178号パンフレット参照)。このパンフレットには、ベンゾビスオキサゾールとピリジン−ベンゾビスオキサゾールの共重合体の製造についての記載があるが、繊維などの成形体の開示はなされていない。
US4051108号公報にはポリベンゾアゾール等のパラ配向芳香族複素環ポリマーからのフィルム製造法が記載されている。またUS4225700号公報にはポリベンゾビスチアゾールのポリマーが記載されている。
水酸基を有するアゾール系ポリマー及びその製造方法は、US5039778号公報やPolymer,35,(1994)3091に報告されている。しかしながら、この報告には、ベンゾビスオキサゾールとピリジン−ベンゾビスオキサゾールの共重合体等の窒素基をフェニレン基に含有するアゾールポリマーとの組成物、共重合体の繊維等の成型、物性等の開示はされていない。
本発明の目的は、剛直な複素環高分子の分子間水素結合を導入し引張り強度、圧縮強度ともに優れた剛直複素環高分子を提供することにある。
本発明の他の目的は、カチオン染料、酸性染料による高い染色性を剛直複素環高分子、およびそれからの繊維を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記高分子を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
下記式(A)および(B):
Figure 0004437134
ここで、nは1〜4の整数であり、XはO、SまたはNHであり、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、そしてArは炭素数4〜20からなりそして(n+2)価の芳香族基である、
のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1繰返し単位、および
下記式(C)および(D):
Figure 0004437134
ここで、XはO、SまたはNHであり、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、YおよびYはNまたはCHである、但しYおよびYの少なくともいずれか一方はNであるものとする、
のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2繰返し単位
からなり、
下記式(1)
0.1≦(a+b)/(c+d)≦10 ・・・(1)
ここで、a、b、cおよびdは、それぞれ、上記式(A)、(B)、(C)および(D)で表わされる各繰返し単位のモル数である、
を満足しそして
メタンスルホン酸に濃度0.5g/100mlの濃度で溶解した溶液の25℃において測定した還元粘度が0.05〜200dl/gである、
ことを特徴とする高分子によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
下記式(G)および(H)
Figure 0004437134
ここで、XおよびArの定義は上記式(A)および(B)における定義と同じである、
のそれぞれで表わされる芳香族アミンおよびその強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1原料と、
下記式(I)
Figure 0004437134
ここで、Arおよびnの定義は上記式(A)に同じでありそしてLはOH、ハロゲン原子またはORで表わされる基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基である、
で表わされる第1芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2原料および
下記式(J)
Figure 0004437134
ここで、Lの定義は上記式(I)に同じであり、YおよびYの定義は上記式(C)および(D)に同じである
で表わされる第2芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第3原料を、
下記式(2)および(3)
0.8≦(g+h)/(i+j)≦1.2 ・・・(2)
0.1≦i/j≦10 ・・・(3)
ここで、g,h,iおよびjは、それぞれ、上記式(G)、(H)、(I)および(J)で表わされる第1原料、第2原料および第3原料のモル数である、
を満足する割合で用い、重縮合せしめて本発明の上記高分子を生成せしめる、ことを特徴とする高分子の製造法によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
本発明の上記高分子およびメタンスルホン酸およびポリリン酸のいずれかである溶媒からなりそして上記高分子が上記溶媒中に溶解している、ことを特徴とする溶液、例えば紡糸用ドープとして用いられる溶液を提供することにある。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第4に、
本発明の高分子からなる繊維によって達成される。
発明の好ましい実施形態
本発明の高分子は、上記式(A)および(B)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1繰返し単位、および上記式(C)および(D)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2繰返し単位からなる。
式(A)および(B)において、Arは炭素数4〜20の芳香族基である。Arは1〜2個の環員窒素原子を含有していてもよい。
Arとしては、例えば
Figure 0004437134
を好ましいものとして挙げることができる。Arは炭素数4〜20からなりそして(n+2)価の芳香族基である。
Figure 0004437134
Figure 0004437134
ここで、nは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数であり、nおよびnは0〜4の整数である、但しn+nは1〜4であるものとする、
で表わされる基を好ましいものとして挙げることができる。
XはO、SまたはNHであり、これらのうちOまたはSが好ましい。
nは1〜4の整数である。
上記第1繰返し単位としては、下記式(A−1)
Figure 0004437134
ここで、Xの定義は上記式(A)に同じであり、ZおよびZはそれぞれ独立に、NまたはCHである、
および下記式(B−1)
Figure 0004437134
ここで、Xの定義は上記式(B)に同じであり、ZおよびZはそれぞれ独立に、NまたはCHである、
のそれぞれで表わされるものが好ましい。
また、式(C)および(D)において、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基である。Arとしては、Arについて既に例示した基と同じ基を好ましいものとして挙げることができる。
XはO、SまたはNHである。これらのうち、O、Sが好ましい。YおよびYはNまたはCHであるが、YおよびYのいずれか一方はNである。
Figure 0004437134
上記第2繰返し単位としては下記式(C−1)
Figure 0004437134
ここで、X、YおよびYの定義は上記式(C)に同じでありそしてZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
および下記式(D−1)
Figure 0004437134
ここで、X、YおよびYの定義は上記式(D)に同じでありそしてZおよびZの定義は上記式(B−1)に同じである、
のそれぞれで表わされるものが好ましい。
本発明の高分子は、とりわけ、上記式(A−1)で表わされる第1繰返し単位と上記式(C−1)で表わされる第2の繰返し単位の組合せからなるか、または上記式(B−1)で表わされる第1繰返し単位と上記式(D−1)で表わされる第2繰返し単位の組合せからなるのが特に好ましい。
本発明の高分子は、さらに、第1繰返し単位と第2繰返し単位とを下記式(1)を満足する割合で含有する。
0.1≦(a+b)/(c+d)≦10 ・・・(1)
ここで、a、b、cおよびdは、それぞれ、上記式(A)、(B)、(C)および(D)で表わされる各繰返し単位のモル数である、
第1繰返し単位と第2繰返し単位の割合は、好ましくは下記式(1−1)
0.1≦(a+b)/(c+d)≦1 ・・・(1−1)
ここで、a、b、cおよびdの定義は上記式(1)に同じである
で表わされる。
本発明の高分子は、メタンスルホン酸に濃度0.5g/100mlの濃度で溶解した溶液の25℃において測定した還元粘度が0.05〜200dl/gであり、好ましくは1.0〜100dl/gであり、より好ましくは10〜80dl/gである。
本発明の高分子は、必要により、下記式(E)および(F):
Figure 0004437134
ここで、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基である、
のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第3繰返し単位を、さらに含有することができる。
Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、その例としては、Arについて既に記載した具体例と同じ基を挙げることができる。
第3繰返し単位は、第1繰返し単位、第2繰返し単位および第3繰返し単位の総和を基準にして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下で用いられる。
次に、本発明の高分子は、前記式(G)および(H)のそれぞれで表わされる芳香族アミンおよびその強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1原料と、前記式(I)で表わされる第1芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2原料および前記式(J)で表わされる第2芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第3原料を重縮合せしめることによって製造される。
式(G)および(H)において、XおよびArは式(A)および(B)におけるXおよびArの定義と同じである。
第1原料としては、下記式(G−1)
Figure 0004437134
ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
および下記式(G−2)
Figure 0004437134
ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
のそれぞれで表わされる化合物およびこれらの化合物の強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種または、
下記式(H−1)
Figure 0004437134
ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
および下記式(H−2)
Figure 0004437134
ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
のそれぞれで表わされる化合物およびこれらの化合物の強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記式(I)において、Arおよびnの定義は前記式(A)に同じである。
LはOH、ハロゲン原子またはOR(ここでRは炭素数6〜20の1価の芳香族基である。ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。炭素数6〜20の1価の芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、4−(2−フェニルプロピル)フェニル基、フェノキシフェニル基、フェニルチオフェニル基、フェニルスルホニルフェニル基、ベンゾイルフェニル基等を挙げることができる。
なお、これらの芳香族基は水素原子のうち1つまたは複数が各々独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。
また、前記式(J)において、Lの定義は上記式(I)に同じであり、YおよびYの定義は前記式(C)および(D)に同じである。
強酸塩の強酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸の如き無機酸あるいはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の如き有機酸を挙げることができる。
第2原料としては、下記式(I−1)
Figure 0004437134
ここで、Lおよびnの定義は上記式(I)に同じである、
で表わされ第1ベンゼンジカルボン酸類が好ましく、また
第3原料としては下記式(J−1)
Figure 0004437134
ここでLの定義は上記式(J)に同じである、
で表わされる第2芳香族ジカルボン酸類が好ましい。
これらの第1、第2および第3原料は、
下記式(2)および(3)
0.8≦(g+h)/(i+j)≦1.2 ・・・(2)
0.1≦i/j≦10 ・・・(3)
ここで、g,h,iおよびjは、それぞれ、上記式(G)、(H)、(I)および(J)で表わされる第1原料、第2原料および第3原料のモル数である、
を満足する割合で用いられる。上記式(3)の関係は、
下記式(3−1)
0.1≦i/j≦1 ・・・(3−1)
ここで、iおよびjの定義は上記式(3)に同じである、
を満足するのが好ましい。
第1原料、第2原料および第3原料は、上記割合でそのまま混合して縮合反応に供するか、あるいは第1原料と第2原料との塩あるいは第1原料と第3原料との塩を予め形成して縮合反応に用いることもできる。
反応は、溶媒中で行う溶液反応、無溶媒の加熱溶融反応のいずれで行うこともできる。中でも、反応溶媒中で攪拌下に加熱反応させるのが好ましい。反応温度は、50〜500℃が好ましく、70〜350℃がさらに好ましい。50℃より温度が低いと反応が進みにくく、500℃より温度が高いと分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は加圧下から減圧下で行うことができる。
反応は、無触媒でも進行するが、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。エステル交換触媒としては、例えば三酸化アンチモンの如きアンチモン化合物、酢酸第一錫、塩化錫(II)、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートの如き錫化合物、酢酸カルシウムの如きアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの如きアルカリ金属塩等、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルの如き亜リン酸を挙げることができる。
反応に用いる好ましい溶媒としては、例えば1−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、りん酸、ポリリン酸等を挙げることができる。
得られる高分子の分解及び着色を防ぐため、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
本発明の高分子には、必要に応じて、各種の副次的添加物を加えていろいろな改質を行うことが出来る。副次的添加物の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等その他類似のものが挙げられる。
本発明の高分子は、非常に剛直な性能を示す。そのような性能は、例えば
成形した繊維について、引張り試験で求められたヤング率E(GPa)と、X線回折測定で求められた<Sinφ>との関係が下記式(4)
Figure 0004437134
Eは繊維のヤング率、eは結晶弾性率、Iは回折測定における回折強度、φはX線回折測定における方位角、gはシェアモジュラスである、
で表わされそして1/Eと<Sinφ>との直線関係の勾配1/2gから算出されるシェアモジュラスgが4GPaを超え20GPa未満であることによって表わされる。
本発明の高分子から繊維を製造するには、本発明の高分子を溶解し、得られる溶液について湿式紡糸あるいはドライジェット紡糸の如きそれ自体公知の紡糸を行えばよい。上記溶液すなわち紡糸用ドープとしては、本発明の高分子を溶媒に溶解するか、あるいは前記の如く溶解中で重縮合を行って得られた溶液をそのまま用いることもできる。
紡糸用ドープとしては、本発明の高分子がメタンスルホン酸およびポリリン酸のいずれかの溶媒に溶解したものが好ましい。溶媒としては、これらのうちポリリン酸が好ましく、特に、Pの含有割合が80〜84重量%であるポリリン酸が好ましい。溶液中における高分子の濃度は、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。かかる紡糸用ドープを形成する溶液はライオトロピック液晶質であるのが好ましい。
本発明の繊維の紡糸工程では、高いドラフト比あるいは延伸倍率を採用するのが好ましく、例えば紡糸口金から押し出された繊維は10倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは80倍以上のドラフト比あるいは延伸倍率で巻き取ることが好ましい。
本発明によれば、上記の如くして製造された、本発明の高分子からなる繊維、例えば単糸の繊度が1.1デシテックス以下の繊維が提供される。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによっていささかも限定されるものではない。なお、以下の実施例における各測定値は次の方法により求めた値である。
(1)還元粘度:0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値である。
(2)機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aにより引っ張り強度を求めた。
参考例1
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。ピリジンジカルボン酸5.347重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、ピリジンジカルボン酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/ピリジンジカルボン酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3,000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
参考例2
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。2,5−ジヒドロキシテレフタル酸6.180重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3,000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
参考例3
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。テレフタル酸5.3重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、テレフタル酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/テレフタル酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3,000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
実施例1
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/ピリジンジカルボン酸塩8.726重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩4.803重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は50dl/gであった。
[紡糸1]
上記の方法にて得られたポリマードープを孔径0.2mm、孔数1個のキャップを用いドープ温度を180℃に保ち、2.0g/minでイオン交換水の凝固浴に押し出した。キャップ面と凝固浴との距離は20cmとした。押し出した繊維は38.5m/minにて水洗バス中で巻き取り、フィラメントを得た。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
[紡糸2]
75m/minで巻き取った以外は紡糸1と同様の操作を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
[紡糸3]
140m/minで巻き取った以外は紡糸1と同様の操作を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
[シェアモジュラスgの算出]
延伸1〜3の<sinφ>を3点プロットし、ヤング率Eの値と下記式(4)の1/2gの項よりgを求めた。
Figure 0004437134
(式中Eは繊維のヤング率、eは結晶弾性率、IはX線回折測定における回折強度、φはX線回折測定における方位角、gはシェアモジュラスを表す。)
その結果、シェアモジュラスgは4.2GPaと算出された。すなわち実施例1の複素環高分子より得られた繊維のシェアモジュラスは4.2GPaであった。
[紡糸4]
リマードープを孔径0.1mm、孔数1個のキャップを用いドープ温度を180℃に保ち、0.8g/minでイオン交換水の凝固浴に押し出した。キャップ面と凝固浴との距離は20cmとした。押し出した繊維は50m/minにて水洗バス中で巻き取り、フィラメントを得た。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
[熱処理1]
糸1で得られた繊維を0.5g/deの張力を加えながら窒素雰囲気下で450℃6分間熱処理を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
実施例2
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのピリジンジカルボン酸塩6.545重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩7.205重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は47dl/gであった。
[紡糸]
上記の方法にて得られたポリマードープを孔径0.2mm、孔数1個のキャップを用いドープ温度を180℃に保ち、2.0g/minでイオン交換水の凝固浴に押し出した。キャップ面と凝固浴との距離は20cmとした。押し出した繊維は90m/minにて水洗バス中で巻き取り、フィラメントを得た。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
実施例3
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのピリジンジカルボン酸塩4.363重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩9.607重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は43dl/gであった。
[紡糸]
上記の方法にて得られたポリマードープを孔径0.2mm、孔数1個のキャップを用いドープ温度を180℃に保ち、2.0g/minでイオン交換水の凝固浴に押し出した。キャップ面と凝固浴との距離は20cmとした。押し出した繊維は130m/minにて水洗バス中で巻き取り、フィラメントを得た。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
比較例1
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのピリジンジカルボン酸塩13.1重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーのポリりん酸溶液ドープは偏光顕微鏡による観察の結果液晶性を示した。この液晶ドープを水にて再沈殿し得られたポリマーの還元粘度は36dl/gであった。
[紡糸]
上記の方法にて得られたポリマードープを用い、190m/minでイオン交換水の洗浄浴に巻き取ったほかは紡糸1と同様の操作を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
比較例2
参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩13.1重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し150℃にて6時間攪拌を行った。得られたポリマーの還元粘度は15dl/gであった。
[紡糸]
上記の方法にて得られたポリマードープを用い、50m/minでイオン交換水の洗浄浴に巻き取ったほかは紡糸1と同様の操作を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
比較例3
参考例3で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのテレフタル酸塩13.1重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて1時間反応を行った。得られたポリマーのポリりん酸溶液ドープは偏光顕微鏡による観察の結果液晶性を示した。この液晶ドープを水にて再沈殿し得られたポリマーの還元粘度は35dl/gであった。
[紡糸]
上記の方法にて得られたポリマードープを用い、50m/minでイオン交換水の洗浄浴に巻き取ったほかは紡糸1と同様の操作を行った。得られたフィラメントの物性を表1に示す。
Figure 0004437134
実施例4
9重量部の4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール2塩酸塩、2.789重量部の2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4.706重量部の2,5−ピリジンジカルボン酸、15重量部のP、及び43.3重量部の84%ポリリン酸を80℃で1時間攪拌後、3時間で温度を100℃まで上げ、窒素を流しながら、系内の圧力を40ミリバールに保ち攪拌した。
その後130℃に昇温して3時間、180℃に昇温して20時間攪拌、常圧に戻した後200℃で24時間攪拌した。
この液晶ドープを水にて再沈殿し得られたポリマーの還元粘度は15dl/gであった。
実施例5
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/ピリジンジカルボン酸塩8.725重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩4.803重量部、参考例3で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのテレフタル酸塩0.391重量部、ポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は38dl/gであった。
実施例6
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/ピリジンジカルボン酸塩12.716重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩7重量部、ポリりん酸42.5重量部、5酸化りん22.5重量部および塩化錫(II)0.1重量部を80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて20時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は48dl/gであった。
実施例7
4.65重量部の2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール2塩酸塩、1.253重量部の2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2.113重量部の2,5−ピリジンジカルボン酸、6.5重量部のP、及び31重量部の84%ポリリン酸を80℃で1時間攪拌後、3時間で温度を100℃まで上げ、窒素を流しながら、系内の圧力を40ミリバールに保ち攪拌した。
その後130℃に昇温して5時間、180℃に昇温して20時間攪拌、常圧に戻した後190℃で24時間攪拌した。
この液晶ドープを水にて再沈殿し得られたポリマーの還元粘度は18dl/gであった。

Claims (21)

  1. 下記式(A)および(B):
    Figure 0004437134
    ここで、nは1〜4の整数であり、XはO、SまたはNHであり、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、そしてArは炭素数4〜20からなりそして(n+2)価の芳香族基である、
    のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1繰返し単位、および
    下記式(C)および(D):
    Figure 0004437134
    ここで、XはO、SまたはNHであり、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、YおよびYはNまたはCHである、但しYおよびYの少なくともいずれか一方はNであるものとする、
    のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2繰返し単位
    からなり、
    下記式(1)
    0.1≦(a+b)/(c+d)≦10 ・・・(1)
    ここで、a、b、cおよびdは、それぞれ、上記式(A)、(B)、(C)および(D)で表わされる各繰返し単位のモル数である、
    を満足しそして
    メタンスルホン酸に0.5g/100mlの濃度で溶解した溶液の25℃において測定した還元粘度が0.05〜200dl/gである、
    ことを特徴とする高分子。
  2. 下記式(E)および(F):
    Figure 0004437134
    ここで、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基である、
    のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第3繰返し単位を、さらに含有する、請求項1に記載の高分子。
  3. 上記式(A)および(B)におけるArまたは上記式(C)および(D)におけるAr
    Figure 0004437134
    である請求項1に記載の高分子。
  4. 上記式(A)および(B)における
    Figure 0004437134
    ここで、nは1〜4の整数であり、nは1〜3の整数であり、nおよびnは0〜4の整数である、但しn+nは1〜4であるものとする、
    で表わされる請求項1に記載の高分子。
  5. 上記第1繰返し単位が下記式(A−1)
    Figure 0004437134
    ここで、Xの定義は上記式(A)に同じであり、ZおよびZはそれぞれ独立に、NまたはCHである、
    で表わされそして上記第2繰返し単位が下記式(C−1)
    Figure 0004437134
    ここで、X、YおよびYの定義は上記式(C)に同じでありそしてZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
    で表わされる請求項1に記載の高分子。
  6. 上記第1繰返し単位が下記式(B−1)
    Figure 0004437134
    ここで、Xの定義は上記式(B)に同じであり、ZおよびZはそれぞれ独立に、NまたはCHである、
    で表わされそして上記第2繰返し単位が下記式(D−1)
    Figure 0004437134
    ここで、X、YおよびYの定義は上記式(D)に同じでありそしてZおよびZの定義は上記式(B−1)に同じである、
    で表わされる請求項1に記載の高分子。
  7. 第1繰返し単位と第2繰返し単位の割合が下記式(1−1)
    0.1≦(a+b)/(c+d)≦1 ・・・(1−1)
    ここで、a、b、cおよびdの定義は上記式(1)に同じである
    で表わされる請求項1に記載の高分子。
  8. 下記式(G)および(H)
    Figure 0004437134
    ここで、XおよびArの定義は上記式(A)および(B)における定義と同じである、
    のそれぞれで表わされる芳香族アミンおよびその強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1原料と、
    下記式(I)
    Figure 0004437134
    ここで、Arおよびnの定義は上記式(A)に同じでありそしてLはOH、ハロゲン原子またはORで表わされる基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基である、
    で表わされる第1芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2原料および
    下記式(J)
    Figure 0004437134
    ここで、Lの定義は上記式(I)に同じであり、YおよびYの定義は上記式(C)および(D)に同じである
    で表わされる第2芳香族ジカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第3原料を、
    下記式(2)および(3)
    0.8≦(g+h)/(i+j)≦1.2 ・・・(2)
    0.1≦i/j≦10 ・・・(3)
    ここで、g,h,iおよびjは、それぞれ、上記式(G)、(H)、(I)および(J)で表わされる第1原料、第2原料および第3原料のモル数である、
    を満足する割合で用い、重縮合せしめて請求項1に記載の高分子を生成せしめる、ことを特徴とする高分子の製造法。
  9. 第1原料が下記式(G−1)
    Figure 0004437134
    ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
    で表わされる化合物、下記式(G−2)
    Figure 0004437134
    ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
    で表わされる化合物およびこれらの化合物の強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
  10. 第1原料が下記式(H−1)
    Figure 0004437134
    ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
    で表わされる化合物、下記式(H−2)
    Figure 0004437134
    ここで、ZおよびZの定義は上記式(A−1)に同じである、
    で表わされる化合物およびこれらの化合物の強酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
  11. 第2原料が下記式(I−1)
    Figure 0004437134
    ここで、Lおよびnの定義は上記式(I)に同じである、
    で表わされ第1ベンゼンジカルボン酸類でありそして
    第3原料が下記式(J−1)
    Figure 0004437134
    ここでLの定義は上記式(J)に同じである、
    で表わされる第2芳香族ジカルボン酸類である、請求項8に記載の方法。
  12. 第2原料と第3原料が、下記式(3−1)
    0.1≦i/j≦1 ・・・(3−1)
    ここで、iおよびjの定義は上記式(3)に同じである、
    を満足する割合で用いられる請求項8に記載の方法。
  13. 第1原料、第2原料および第3原料を、第1原料と第2原料との塩および第1原料と第3原料との塩を予め形成して用いる、請求項8に記載の方法。
  14. 請求項1に記載の高分子およびメタンスルホン酸およびポリリン酸のいずれかである溶媒からなりそして上記高分子が上記溶媒中に溶解している、ことを特徴とする溶液。
  15. ライオトロピック液晶質である請求項14の溶液。
  16. 溶媒がポリリン酸でありそして高分子の濃度が5〜25重量%である請求項14に記載の溶液。
  17. ポリリン液がPの含有割合が80〜84重量%である請求項14に記載の溶液。
  18. 紡糸用ドープである請求項14に記載の溶液。
  19. 成形した繊維について、引張り試験で求められたヤング率E(GPa)と、X線回折測定で求められた<Sinφ>との関係が下記式(4)
    Figure 0004437134
    Eは繊維のヤング率、eは結晶弾性率、Iは回折測定における回折強度、φはX線回折測定における方位角、gはシェアモジュラスである、
    で表わされ、1/Eと<Sinφ>との直線関係の勾配1/2gから算出されるシェアモジュラスgが4GPaを超え20GPa未満である請求項1に記載の高分子。
  20. 請求項1に記載の高分子からなる繊維。
  21. 単糸の繊度が1.1デシテックス以下である請求項20に記載の繊維。
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