JP4437063B2 - 黒色材料 - Google Patents

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本発明は、黒色材料に関し、特に、記録材、各種表示装置のブラックマトリックス等に好適に用いられ、黒色度が高く、遮光性に優れた黒色材料に関するものである。
従来、黒色材料としては、カーボンブラック、低次酸化チタン、酸化鉄、クロム、銀微粒子等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらの黒色材料は、黒色光遮蔽性フイルム、黒色光遮蔽性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキ、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)のブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等に黒色や光遮蔽性を付与する材料として利用されている。
一方、金、白金族元素、またはこれらの合金を黒色化する場合、これらの金属または合金の母材の表面に黒色酸化物からなる被膜を形成する方法が採られているが、この方法では、黒色酸化物が母材から剥離し易く、耐久性のある黒色金合金が得られなかった。そこで、金、白金族元素、またはこれらの合金、または前記いずれかの金属または合金に銀を添加した合金に、銅、ニッケル、鉄等の金属を添加し、酸化することにより、表面に密着性の良い黒色酸化物層を形成した黒色合金が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、感光材料の分野では、鮮鋭性を向上させ、裏面から露光された光学情報を適切な濃度で記録し、かつ現像処理時の赤外線検出特性が改良された写真用の感光材料として、水性ゼラチン中に黒色コロイド銀を分散した黒色コロイド銀分散物が提案されている(特許文献3参照)。
特開平5−127433号公報 特開平10−8235号公報 特開2000−155387号公報
ところで、従来のカーボンブラック、低次酸化チタン、酸化鉄等は、黒色ではあるが、光遮蔽性が不十分である。そこで、これらの黒色材料を含む膜を用いて光を遮蔽するためには、黒色材料を含む塗布液を厚く塗布して厚みのある膜を基材に形成する必要がある。
これらの黒色材料を白色基材上に黒色の線を描く記録材として用いた場合、下地の白色基材との境界線部分がぼやけてしまい、シャープな線を描くことができないという問題点があった。
これらの黒色材料を光遮蔽材料として用いた場合、光遮蔽性を高めるためには材料中の黒色材料の体積比を多くする必要があり、相対的にバインダーの含有量が減少することになる。したがって、これらの黒色材料を用いて黒色塗膜を作製した場合、塗膜の強度が低下し、塗膜を長期間に亘って維持することができないという問題点があった。
また、クロムは、黒色度及び光遮蔽性に優れているものの、重金属である点、環境負荷が大きい点等、様々な理由から、適用可能な製品が制限されるという問題点があった。
また、写真フイルム等に用いられている臭化銀を還元することにより生成される銀粒子は、黒色度及び光遮蔽性に優れているが、銀自体が貴金属で、しかも高価であることから、一部の高額な製品は別として、一般に汎用製品の黒色材料として用いられることはない。
さらに、銀コロイドを用いて黒色塗膜を形成する場合では、遮光性には優れるものの、メタリック色を帯びるために、優れた黒色度を発現することができない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、黒色度が高く、遮光性に優れた黒色材料を提供することを目的とする。
本発明者等は、黒色度に優れ、遮光性に優れた材料について鋭意検討した結果、従来の錫粒子を銀錫合金粒子に替え、さらに、この銀錫合金粒子の銀の含有率を47.6重量%以上かつ90重量%以下とし、さらに、この粒子の平均粒子径を1nm以上かつ300nm以下とすることで、黒色度が高く、遮光性に優れた黒色材料を得ることができることを見出し、さらに、この銀錫合金粒子は、錫粒子等と比べて耐熱性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の黒色材料は、黒色膜を形成するための黒色材料であって、銀を47.6重量%以上かつ90重量%以下含有してなる銀錫合金を主成分とする粒子からなり、かつ、この粒子の平均粒子径は1nm以上かつ300nm以下であることを特徴とする。
前記銀錫合金は、銀を73.17重量%以上かつ78.43重量%以下含有してなることが好ましい。
本発明の黒色材料によれば、銀を47.6重量%以上かつ90重量%以下含有してなる銀錫合金を主成分とする粒子からなるものとし、かつ、この粒子の平均粒子径を1nm以上かつ300nm以下としたので、黒色材料自体の黒色度を向上させることができ、遮光性を向上させることができる。
また、銀錫合金粒子を用いたので、錫粒子等と比べて耐熱性を向上させることができる。
さらに、銀の含有率を73.17重量%以上かつ78.43重量%以下とすれば、効果的に化学的安定性と黒色度を得ることができる。
本発明の黒色材料の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の黒色材料は、銀錫(AgSn)合金を主成分とする粒子からなり、かつ、この粒子の平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下である。
このAgSn合金は、化学式AgSnにて表した場合、化学的に安定したAgSn合金が得られるxの範囲は1≦x≦10であり、化学的安定性と黒色度が同時に得られるxの範囲は3≦x≦4である。
ここで、上記xの範囲でAgSn合金中のAgの重量比を求めると、
x=1の場合、 Ag/AgSn =0.4762
x=3の場合、 3・Ag/AgSn=0.7317
x=4の場合、 4・Ag/AgSn=0.7843
x=10の場合、10・Ag/Ag10Sn=0.9008
となる。したがって、このAgSn合金は、Agを47.6重量%以上かつ90重量%以下含有した場合に化学的に安定なものとなり、Agを73.17重量%以上かつ78.43重量%以下含有した場合にAg量に対し効果的に化学的安定性と黒色度を得ることができる。
本実施形態の黒色材料では、AgSn合金を主成分とする粒子により構成し、この粒子の平均粒子径を1nm以上かつ300nm以下としたことにより、Ag粒子やSn粒子に比べて黒色度が高まり、遮光性が向上する。
また、このAgSn合金を主成分とする粒子は、Sn粒子に比べて耐熱性に優れている。
さらに、このAgSn合金を主成分とする粒子は、Ag粒子やSn粒子に比べて機械的強度が高く、摩耗し難い。
本実施形態の黒色材料は、通常の微粒子合成法を用いて作製することができる。微粒子合成法としては、気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等、いずれの方法を用いても良い。
本実施形態の黒色材料によれば、AgSn合金を主成分とする粒子により構成し、この粒子の平均粒子径を1nm以上かつ300nm以下としたので、黒色度を高めることができ、光遮蔽性も向上させることができ、さらには耐熱性、機械的強度も向上させることができる。
以上により、黒色度が高く、遮光性および耐熱性に優れ、しかも環境負荷が小さく、安価な黒色材料を容易に提供することができる。
以下、実施例1〜2及び比較例1〜4により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
60℃に保温した純水300mlに、錫(Sn)コロイド(平均粒子径:50nm、固形分:20重量%、住友大阪セメント社製)15gと、銀(Ag)コロイド(平均粒子径:10nm、固形分:20重量%、住友大阪セメント社製)60gを加え、このコロイド溶液を60℃に保持した状態で60分間攪拌し、その後、超音波を5分間照射した。次いで、このコロイド溶液を遠心分離により濃縮し、固形分が15%のA液を得た。
次いで、このA液に、A液中の固形分:PVA=50:50の体積比となるようにPVA水溶液を加え、超音波分散機(ソニファイヤー450:BRANSON ULTRASONICS社製)にて分散処理した後、1時間静置し、塗布液とした。
次いで、この塗布液をスピンコート法により厚み1.1mmのガラス基板上に塗布し、黒色の塗膜とした。ここでは、塗布液中の水分量を調整することにより、塗膜の厚みを0.5μmとした。
次いで、この塗膜付きガラス基板を、加熱装置を用いて200℃にて1時間加熱し、黒色膜付きガラス基板を得た。
次いで、この黒色膜付きガラス基板の光透過率を測定した。ここでは、分光スペクトルメーターにより550nmの波長の光に対する黒色膜自体の光透過率を測定した。
また、この黒色膜の黒色度を評価するために、この黒色膜のCIE明度Lを、CIE(国際照明委員会)により規格化されたL表色系に基づいて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
さらに、上記のA液をフリーズドライ法により乾燥して実施例1の粉末試料を作製し、この粉末試料中の生成相をX線回折装置を用いて同定した。
図1は、実施例1の粉末試料の粉末X線回折図形を示す図であり、図中、△印はAgSn合金相またはAgSn合金相の回折線である。
これにより、A液中の粒子は、AgSn合金で構成された粒子であることが分かった。
(実施例2)
実施例1にて、Snコロイドを15g、Agコロイドを45gとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の黒色膜付きガラス基板を作製した。
次いで、実施例1と同様にして、光透過率の測定、CIE明度Lの測定を行った。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例1)
カーボンブラック(HA3、東海カーボン社製)に、実施例1と同様にカーボンブラック:PVA=50:50の体積比となるようにPVA水溶液を加え、実施例1と同様に分散処理、塗布液中の水分量の調整、スピンコート法によるガラス基板上への塗布を行い、厚みが0.5μmの黒色の塗膜を作製した。
次いで、この塗膜付きガラス基板を室温(25℃)にて乾燥させ、黒色膜付きガラス基板を得た。
次いで、実施例1と同様にして、光透過率の測定、CIE明度Lの測定を行った。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例2)
チタンブラック(13M、ジェムコ社製)に、実施例1と同様にチタンブラック:PVA=50:50の体積比となるようにPVA水溶液を加え、実施例1と同様に分散処理、塗布液中の水分量の調整、スピンコート法によるガラス基板上への塗布を行い、厚みが0.5μmの黒色の塗膜を作製した。
次いで、この塗膜付きガラス基板を室温(25℃)にて乾燥させ、黒色膜付きガラス基板を得た。
次いで、実施例1と同様にして、光透過率の測定、CIE明度Lの測定を行った。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例3)
銀ナノ粒子(住友大阪セメント社製)に、実施例1と同様に銀ナノ粒子:PVA=50:50の体積比となるようにPVA水溶液を加え、実施例1と同様に分散処理、塗布液中の水分量の調整、スピンコート法によるガラス基板上への塗布を行い、厚みが0.5μmの黒色の塗膜を作製した。
次いで、この塗膜付きガラス基板を室温(25℃)にて乾燥させ、黒色膜付きガラス基板を得た。
次いで、実施例1と同様にして、光透過率の測定、CIE明度Lの測定を行った。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例4)
アニリンブラック黒色染料(堀内化学研究所製)を用いて、スピンコート法によるガラス基板上への塗布を行い、厚みが0.5μmの黒色の塗膜を作製した。
次いで、この塗膜付きガラス基板を室温(25℃)にて乾燥させ、黒色膜付きガラス基板を得た。
次いで、実施例1と同様にして、光透過率の測定、CIE明度Lの測定を行った。これらの測定結果を表1に示す。
Figure 0004437063
この表によれば、実施例1、2の黒色膜は、比較例1〜4に対して光透過率が低く、CIE明度Lも優れており、遮光性及び黒色度に優れていることが確認された。
一方、比較例1の黒色膜は、黒色度が実施例1、2に近いものの、光透過率が高く、実施例1、2の黒色膜に対して遮光性が劣っていることが分かった。
また、比較例2、4の黒色膜は、黒色度、光透過率共に劣っていることが分かった。
また、比較例3の黒色膜は、実施例1、2とほぼ同様の遮光性が得られるものの、膜の色は灰色で黒色化しておらず、色調の点で問題があった。
本発明の黒色材料は、黒色度、遮光性に優れ、さらには耐熱性に優れ、しかも安価であるから、黒色度、遮光性、耐熱性が求められるあらゆる物に適用可能である。例えば、黒色光遮蔽性フイルム、黒色光遮蔽性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキ、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置向けのブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等としても利用できる。
本発明の実施例1の粉末試料の粉末X線回折図形を示す図である。

Claims (2)

  1. 黒色膜を形成するための黒色材料であって、
    銀を47.6重量%以上かつ90重量%以下含有してなる銀錫合金を主成分とする粒子からなり、かつ、この粒子の平均粒子径は1nm以上かつ300nm以下であることを特徴とする黒色材料。
  2. 前記銀錫合金における銀の含有率は、73.17重量%以上かつ78.43重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の黒色材料。
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