JP5092637B2 - コアシェル型銀錫複合粒子の製造方法及びコアシェル型銀錫複合粒子並びに黒色材料、黒色遮光膜、黒色粒子分散液 - Google Patents
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Description
これらの黒色材料は、黒色光遮蔽性フイルム、黒色光遮蔽性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキ、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)のブラックマトリックス材料、ブラックシール材、ブラックマスク材等に黒色や光遮蔽性を付与する材料として利用されている。
さらに、感光材料の分野では、鮮鋭性を向上させ、裏面から露光された光学情報を適切な濃度で記録し、かつ現像処理時の赤外線検出特性が改良された写真用の感光材料として、水性ゼラチン中に黒色コロイド銀を分散した黒色コロイド銀分散物が提案されている(特許文献3参照)。
これらの黒色材料を白色基材上に黒色の線を描く記録材として用いた場合、光遮蔽性が弱いために下地の白色基材との境界線部分がぼやけてしまい、シャープな線を描くことができないという問題点があった。
これらの黒色材料を光遮蔽材料として用いた場合、光遮蔽性を高めるためには材料中の黒色材料の体積比を多くする必要があり、相対的にバインダーの含有量が減少することになる。したがって、これらの黒色材料を用いて黒色塗膜を作製した場合、塗膜の強度が低下し、信頼性を維持することができないという問題点があった。
また、写真フイルム等に用いられている臭化銀を還元することにより生成される銀粒子は、黒色度及び光遮蔽性に優れているが、銀自体が貴金属で、しかも高価であることから、一部の高額な製品は別として、一般に汎用製品の黒色材料として用いられることはない。
さらに、銀コロイドを用いて黒色塗膜を形成する場合では、遮光性には優れるものの、メタリック色を帯びるために、優れた黒色度を発現することができない。
錫を主成分としかつ核となる微粒子の表面に、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜からなる外殻層を形成し、次いで、前記微粒子の一部を溶解し除去することにより、前記微粒子と前記外殻層との相対量を調整することを特徴とする。
前記微粒子及び前記外殻層からなる粒子全体の銀の含有率が30質量%以上かつ80質量%以下となるように、前記微粒子の質量及び前記外殻層の出発原料の質量を調整することが好ましい。
前記外殻層は、微細孔を有する膜、極微粒子が集合してなる膜のいずれかであることが好ましい。
前記微粒子の一部を溶解し除去する際に用いられる溶解剤は、有機酸であることが好ましい。
前記溶液の水素イオン指数を調整し、この調整後の溶液を前記分散液に添加することが好ましい。
前記コアシェル型銀錫複合粒子の一部が除去されていることが好ましい。
このコアシェル型銀錫複合粒子は、本発明のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法により得られたことが好ましい。
このコアシェル型銀錫複合粒子では、銀の含有率は30質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましい。
本発明の黒色遮光膜は、本発明の黒色材料を含有してなることを特徴とする。
本発明の黒色粒子分散液は、本発明のコアシェル型銀錫複合粒子を分散媒に分散してなることを特徴とする。
また、微粒子の一部を溶解し除去することにより、微粒子と外殻層との相対量を調整するので、コアシェル型銀錫複合粒子の特性を容易に調整することができる。
また、核となる微粒子の主成分を錫としたので、銀微粒子と比べて安価である。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
錫を主成分としかつ核となる微粒子の表面に、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる外殻層を形成し、次いで、前記微粒子の一部を溶解し除去することにより、前記微粒子と前記外殻層との相対量を調整する方法である。
図1は、本実施形態のコアシェル型銀錫複合粒子の断面構造を示す模式図であり、図において、1は平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下のコアシェル型銀錫複合粒子であり、錫を主成分としかつ核となる錫微粒子2が、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜である外殻層3により被覆された構造である。
ここで、銀の含有率を30質量%以上かつ80質量%以下と限定した理由は、銀の含有率が30質量%未満であると、核となる錫微粒子2を被覆する外殻層3、13に含まれる銀の量が少なくなり過ぎてしまうために、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれの外殻層を用いても充分に被覆することができず、熱的安定性に乏しい錫微粒子2が酸化し易くなり、変色等が生じ易くなり、したがって、黒色度の低下、遮光性の低下を生じる虞があるからであり、一方、銀の含有率が80質量%を越えると、外殻層3、13に含まれる銀の量が多くなり過ぎてしまうために、遮光性は優れるものの、外殻層3、13自体が金属色を帯びるようになり、反射率が高くなるという問題が生じるからである。
まず、錫を主成分としかつ核となる錫微粒子2を、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる外殻層3、13により被覆する。外殻層による被覆の方法としては、所望の外殻層3、13が得られるように、無電解めっき法等のめっき法、あるいは気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等の微粒子合成法を適宜選択して用いることができる。
さらに、上記の銀化合物、銀化合物および錫化合物、のいずれか一方または双方と錯化剤とを含む溶液は、予め水素イオン指数(pH)を調整した後に、上記の分散液に添加することが好ましい。この水素イオン指数(pH)としては9以上かつ13以下が好ましく、より好ましくは10以上かつ11以下である。
これら錯化剤の選定や水素イオン指数の調整を行なう理由は、溶液中の銀イオンおよび銀イオン錯体を安定して維持するとともに、無電解めっきを容易かつ安定に行なわせるためである。
また、極微粒子12が密に集合した外殻層13を得るには、上記とは逆に還元剤を使用することで、あらかじめ銀および/または銀錫極微粒子を液中に析出させ、その後、錫微粒子2の表面に付着させるように調整すればよい。
この調整の際には、得られるコアシェル型銀錫複合粒子の化学的安定性と黒色度を同時に満足するために、上述したとおり、銀を30質量%以上かつ80質量%以下含有するように、核となる錫微粒子2と外殻層3、13との相対量を調整することが好ましい。
なお、錫微粒子2の一部を溶解する際には、外殻層3、13の一部も溶解するが、これら錫微粒子2と外殻層3、13との溶解量を異ならせることにより、錫微粒子2と外殻層3、13との相対量を調整することができる。
この錫微粒子2は卑金属である錫を主成分とするものであり、一方、外殻層3、13は銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金銀というように貴金属である銀を主成分とするものであるから、溶解剤として酸を用いれば、卑金属である錫微粒子2の溶解速度が貴金属である銀を含む外殻層3、13の溶解速度より大となり、したがって、錫微粒子2と外殻層3、13との間に溶解速度差を生じさせることができる。
このキレート作用を有する酸が好ましい理由は、錫微粒子2の表面で錫イオンとキレート錯体を形成することにより、錫微粒子2の表面での錫イオンの離脱を促進し、錫微粒子2の表面における錫の溶解性を向上させることが可能であるからである。
また、これらの酸は外殻層3、13を形成する銀イオンに対してキレート作用を及ぼし、銀イオンと安定したキレート化合物を生成することにより一時的に外殻層3、13としての効果を減じ、その結果、核となる錫微粒子2の酸への溶解を助長することとなるからである。
一般に、核となる金属微粒子を外殻層により被覆したコアシェル粒子の場合、外殻層を維持した状態で、酸により金属微粒子を溶解することは容易ではない。
さらに、外殻層3、13の一部が溶解された場合、この溶解により外殻層の表面に微細な凹凸等が形成される等、外殻層の表面状態が変化することもあり得る。このような場合も、黒色度の向上、遮光性の向上等を図ることが可能である。
この黒色材料は、黒色度が高くかつ遮光性に優れたものであるから、この黒色材料を用いて黒色遮光膜を得ることができる。
また、本実施形態のコアシェル型銀錫複合粒子を、ガラス等の無機材料あるいは樹脂等の有機材料と水や有機溶媒等の溶媒との混合物からなる分散媒中に分散させることにより、黒色粒子分散液を得ることができる。
さらに、この黒色粒子分散液を基材上に塗布して塗膜とし、この塗膜に乾燥処理、熱処理、紫外線照射または赤外線照射を施すことにより、黒色遮光膜を作製することもできる。
また、核となる微粒子の主成分を錫としたので、銀微粒子と比べて安価である。
さらに、上記のコアシェル型銀錫複合粒子1、11を用いることで、黒色度が高く、遮光性及び耐熱性に優れ、しかも安価な黒色材料を、容易に提供することができる。
錫コロイド(平均粒子径:50nm、固形分:5.4質量%、住友大阪セメント製)を50g分取し、これに純水160gを加え、さらに1%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液10gを加え、A液を作製した。
また、硝酸銀5gを純水に溶解して全量が150gの硝酸銀水溶液とし、これに濃アンモニア水(NH3:28%)10gを加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:25%)3gを加え、B液を作製した。
また、36%クエン酸水溶液から50gを分取し、C液とした。
次いで、このD液にC液を加えて4時間攪拌し、その後、遠心分離により固液分離を行い、固形分(ケーキ)を採取した。次いで、このケーキを純水に分散させ、限外濾過法により導電率が200μs/cmになるまで洗浄することにより、コアシェル型銀錫複合粒子を純水中に分散したE液を作製した。
その結果、銀と錫の比率(Sn/Ag)は0.35、錫と銀錫合金の比率(Sn/合金)は0.15、合金と銀の比率(合金/Ag)は0.71であった。
次いで、この塗布液をスピンコート法により厚さ1.1mmのガラス基板上に塗布し、黒色塗膜とした。ここでは、塗布液中の水分量を調整することにより、塗膜の厚みを0.5μmとした。なお、塗膜の厚みは、膜厚測定機 テンコール(テンコール社製)にて測定することにより、確認した。
また、この黒色塗膜の500nmの波長の光に対する反射率を、分光スペクトルメーターを用いて測定した。
乾燥後の黒色塗膜の膜厚を、膜厚測定機 テンコール(テンコール社製)を用いて測定し、次いで、この乾燥後の黒色塗膜の光学濃度(OD値)及び500nmの波長の光に対する反射率を、上記と同様にして測定した。このようにして得られたOD測定値と膜厚の測定値を用いてOD4膜厚を算出した。
これらの測定値を用いて、乾燥前後におけるOD4膜厚値の変化率を算出した。これらの結果を表1及び表2に示す。
実施例1にてD液にC液を加えた際の攪拌時間を3時間とした他は、実施例1と同様にして、実施例2の粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板を作製した。
これら粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板それぞれの特性を実施例1と同様にして測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
実施例1にて用いるB液において、B液中に溶解させる硝酸銀の量を6.5gとし、また実施例1にてD液にC液を加えた際の攪拌時間を3時間とした他は、実施例1と同様にして、実施例3の粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板を作製した。
これら粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板それぞれの特性を実施例1と同様にして測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
実施例1にてD液にC液を加えた際の攪拌時間を2時間とした他は、実施例3と同様にして、実施例4の粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板を作製した。
これら粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板それぞれの特性を実施例1と同様にして測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
実施例1にてD液にC液を加えた際の攪拌時間を2時間とした他は、実施例1と同様にして、比較例1の粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板を作製した。
これら粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板それぞれの特性を実施例1と同様にして測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
実施例1にてD液にC液を加えた際の攪拌時間を1.5時間とした他は、実施例1と同様にして、比較例2の粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板を作製した。
これら粉末試料、黒色塗膜及び黒色遮光膜付きガラス基板それぞれの特性を実施例1と同様にして測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
(1)攪拌時間が増加するにしたがって、銀および銀錫合金に対する錫の比率が減少しており、核となる錫微粒子から錫が溶解していることが分かる。
(2)錫の比率の減少に伴い、OD4膜厚値の変化量が1に近づき、塗布時のOD4膜厚値と乾燥後のOD4膜厚値との差が減少していることが分かる。これにより、錫の比率の減少に伴い、乾燥時の加熱による高温劣化が減少していることが分かる。
さらに、錫の比率の減少に伴い、塗布時・乾燥後ともOD4膜厚値が減少しており、遮光度が向上していることも分かる。
(3)錫の比率の減少に伴い、反射率が低下していることが分かる。
したがって、錫を溶解させて錫の比率を調整することにより、生成したコアシェル型銀錫複合粒子のOD4膜厚値、このOD4膜厚値を基にした高温劣化特性、および反射率を制御することができることが分かった。
以上により、このコアシェル型銀錫複合粒子を用いた黒色材料及び黒色遮光膜の特性を制御することができ、良好な黒色材料及び黒色遮光膜を得ることができることが分かった。
2 錫微粒子
3、13 外殻層
12 極微粒子
Claims (14)
- 錫を主成分としかつ核となる微粒子を、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜からなる外殻層により被覆してなるコアシェル構造の粒子からなり、かつ、このコアシェル構造の粒子の平均粒子径は1nm以上かつ300nm以下であるコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法であって、
錫を主成分としかつ核となる微粒子の表面に、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜からなる外殻層を形成し、次いで、前記微粒子の一部を溶解し除去することにより、前記微粒子と前記外殻層との相対量を調整することを特徴とするコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。 - 前記微粒子の一部を溶解し除去する際に、前記微粒子及び前記外殻層各々の溶解・除去する量を異ならせることにより、前記微粒子と前記外殻層との相対量を調整することを特徴とする請求項1記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 前記微粒子及び前記外殻層からなる粒子全体の銀の含有率が30質量%以上かつ80質量%以下となるように、前記微粒子の質量及び前記外殻層の出発原料の質量を調整することを特徴とする請求項1または2記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 前記外殻層は、微細孔を有する膜、極微粒子が集合してなる膜のいずれかであることを特徴とする請求項1、2または3記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 前記微粒子の一部を溶解し除去する際に用いられる溶解剤は、有機酸であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 前記錫を主成分としかつ核となる微粒子を分散媒に分散した分散液に、銀化合物、銀化合物および錫化合物、のいずれか一方または双方と錯化剤とを含む溶液を添加し、前記微粒子の表面に銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜からなる外殻層を形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 前記溶液の水素イオン指数を調整し、この調整後の溶液を前記分散液に添加することを特徴とする請求項6記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法。
- 錫を主成分としかつ核となる微粒子を、銀、銀錫合金、銀及び銀錫合金のいずれか1種からなる微細孔を有する膜からなる外殻層により被覆してなるコアシェル構造の粒子からなり、かつ、このコアシェル構造の粒子の平均粒子径は1nm以上かつ300nm以下であることを特徴とするコアシェル型銀錫複合粒子。
- 前記コアシェル型銀錫複合粒子の一部が除去されていることを特徴とする請求項8記載のコアシェル型銀錫複合粒子。
- 請求項8または9記載のコアシェル型銀錫複合粒子であって、
請求項1ないし7のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子の製造方法により得られたことを特徴とするコアシェル型銀錫複合粒子。 - 銀の含有率は30質量%以上かつ80質量%以下であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子。
- 請求項8ないし11のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子を含有してなることを特徴とする黒色材料。
- 請求項12記載の黒色材料を含有してなることを特徴とする黒色遮光膜。
- 請求項8ないし11のいずれか1項記載のコアシェル型銀錫複合粒子を分散媒に分散してなることを特徴とする黒色粒子分散液。
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