JP4436533B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑油組成物に関し、詳しくは、優れた摩擦特性とその持続性を有し、特に摩擦により影響をうける部位を持つ機構に使用される潤滑油組成物に関する。具体的には、シンクロナイザリングを使用した手動変速機用または自動変速機用潤滑油や、トラクターや建設機械に使用される変速機とブレーキを同時に潤滑する共通潤滑用潤滑油等の動力伝達機構用の潤滑油としての使用に特に適する潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にギヤ油にはSP系添加剤と呼ばれるイオウ系添加剤とリン系添加剤を主成分とする添加剤が使用される。これはこの添加剤が極圧性と呼ばれる耐摩耗性や耐焼き付き性に優れた性能をもつためである。
ところがシンクロメッシュ機構にシンクロナイザリングを使用した自動車用手動または自動変速機では、変速時にシンクロナイザリングとギヤコーンの間に十分な動摩擦係数がないと、なかなか同期せず変速に時間を要したり、変速操作に過度の力が必要になる。また変速時にシンクロナイザリングとギヤコーンの間の静摩擦係数が高いと引っ掛かりと呼ばれる不具合が生じ易い。これは変速操作時、いったん静止したシンクロナイザリングを若干ギヤコーン上で滑らす必要があり、このときの静摩擦係数が高いと引っかかりが発生するためである。
【0003】
従来使用されているSP系添加剤はこの摩擦特性を悪化させることが知られている。特にSP系添加剤の主成分の一つである公知のポリサルファイドは銅系シンクロナイザリングの摩耗を促進するため急激な動摩擦係数の低下を招き、また静摩擦係数も非常に高いためにSP系添加剤系の手動または自動変速機用潤滑油組成物では十分な変速操作性が得られていなかった。
一方、トラクターや建設機械では変速機と車輪のブレーキは同じ潤滑油で潤滑する共通潤滑がほとんどである。このため、使用する潤滑油にはギヤ油としての高い極圧性と同時にブレーキ鳴き防止の性能が要求される。ブレーキ鳴きは湿式ブレーキ(湿式摩擦機構を利用したブレーキ)のスティックスリップ又は自励振動によって発生する。これを防ぐには、より低速滑り条件で摩擦係数を下げる特性を持つ摩擦調整剤が添加された潤滑油組成物が使用される。しかしながら従来のトラクター用もしくは建設機械の潤滑油組成物の性能は十分でなく、しばしばブレーキ鳴きを生じ製品のクレームが発生していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、特に、自動車の手動変速機油または自動変速機油や、トラクターや建設機械の共通潤滑用潤滑油等の動力伝達機構用潤滑油としての使用に適する、優れた極圧性と摩擦特性を有する潤滑油組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、潤滑油基油に、(A)下記式(1)で表されるポリサルファイド化合物を組成物全量基準で0.01〜10.0質量%、及び(B)下記式(2)で表されるリン酸エステル、下記式(3)で表される亜リン酸エステル、およびこれらリン系化合物の誘導体の中から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物を組成物全量基準でリン元素量として0.005〜0.5質量%含有してなることを特徴とする手動変速機用又は自動変速機用潤滑油組成物、あるいはトラクター及び建設機械用共通潤滑用潤滑油組成物である。
【0006】
【化5】
(式(1)中、R1およびR3は炭素数12〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。またR2は炭素数6〜30のアルキレン基を示す。xおよびyはそれぞれ独立に1〜15であり、nは0〜2である。)
【化6】
(式(2)中、R 4 、R 5 及びR 6 は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R 4 、R 5 及びR 6 のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、X 1 、X 2 、X 3 及びX 4 は、酸素原子を示す。)
【化7】
(式(3)中、R 7 、R 8 及びR 9 は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R 7 、R 8 及びR 9 のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、X 5 、X 6 及びX 7 は、酸素原子を示す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油に、(A)下記一般式(1)で表されるポリサルファイド化合物を組成物全量基準で0.01〜10.0質量%含有する。
【0008】
【化8】
(式(1)中、R1およびR3は炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよい。またR2は炭素数6〜30のアルキレン基を示す。xおよびyはそれぞれ独立に1〜15であり、nは0〜2である。)
【0009】
式(1)において、R1およびR3はそれぞれ個別に炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基である。R2は炭素数6〜30のアルキレン基である。R1〜R3の炭素数が6未満や30を越える場合は、潤滑油の摩擦特性が悪化するため、それぞれ好ましくない。さらに、静摩擦係数の低減効果という点で、R1〜R3の炭素数は10〜30であることが好ましく、12〜24であることが特に好ましい。また、x,yはそれぞれ独立に1〜15の整数であるが、化合物としての安定性や腐食性という面で、それぞれ10以下であることが好ましい。なお[-(S)x-R2-]nで示される各繰り返し単位の中のxは、他の繰り返し単位の中のxとおのおの独立であり、それぞれ異なってもよくまた同じであっても良い。
【0010】
R1およびR3としては、具体的には例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);等が挙げられる。またアルキル基又はアルケニル基は、摩擦特性に優れる点から直鎖状が好ましい。さらに酸化安定性の面からアルキル基が好ましい。
【0011】
R2としては、具体的には、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基等のアルキレン基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。
【0012】
本発明のポリサルファイド化合物中の硫黄の含有量としては特に制限はないが、その下限は5質量%、好ましくは15質量%である。硫黄の含有量が少なすぎると化合物としての反応性が落ちたり、極圧性が低下するおそれがある。また、その上限は70質量%、好ましくは60質量%である。硫黄の含有量が多すぎると化合物として不安定になり、貯蔵安定性に問題がでてきたり、反応性が高すぎ腐食性が高くなるというおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物においては、ポリサルファイド化合物として、式(1)で表される構造の異なる2種以上のポリサルファイド化合物の混合物も用いることができる。
【0013】
本発明の潤滑油組成物においては、式(1)で表されるポリサルファイド化合物(以下(A)成分ともいう。)を含有することにより、潤滑油組成物が手動または自動変速機や、トラクターあるいは建設機械に用いられた場合、手動または自動変速機で使用されるシンクロナイザリングや、トラクターもしくは建設機械で使用される湿式ブレーキの材質である銅合金での動摩擦係数(μd)を高く保持するとともに、静摩擦係数(μs)を低下させることができる。
本発明の潤滑油組成物における(A)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で0.01質量%、好ましくは0.05質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で10.0質量%、好ましくは5.0質量%である。本発明のポリサルファイド化合物の含有量が組成物全量基準で0.01質量%に満たない場合は、ポリサルファイド化合物配合による極圧性ならびに摩擦特性の改善効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準で10.0質量%を越える場合は、ポリサルファイドの腐食性が大きくなり過ぎるため、それぞれ好ましくない。
【0014】
また、本発明の潤滑油組成物における基油としては、通常の潤滑油の基油として用いられる任意の鉱油及び/又は合成油が使用できる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の各種精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用できる。
【0015】
また合成油としては、特に制限はないが、ポリ−α−オレフィン(1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、イソブテンオリゴマー及びその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、並びにポリフェニルエーテル等が使用できる。
なお、これら潤滑油基油の動粘度は、特に限定されず任意であるが、通常、100℃における動粘度が1〜50mm2/s、好ましくは2〜20mm2/sであるものを用いるのが望ましい。
【0016】
また、本発明の潤滑油組成物は、さらに(B)リン系化合物を含有することができる。
リン系化合物(以下(B)成分ともいう。)を併用することにより、潤滑油組成物の極圧性能をさらに改善し、初期から優れた摩擦特性を発揮することが可能となる。
(B)成分のリン系化合物としては、具体的には、下記の一般式(2)で表されるリン酸エステル、下記の一般式(3)で表される亜リン酸エステル、およびこれらリン系化合物の誘導体の中から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物等が挙げられる。
【0017】
【化9】
式(2)中、R4、R5及びR6は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0018】
【化10】
式(3)中、R7、R8及びR9は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、かつ、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、X5、X6及びX7は、それぞれ個別に、酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0019】
上述したとおり、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又は炭素数3〜30の炭化水素基、より好ましくは水素原子又は炭素数4〜24の炭化水素基を示す。ここで、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは炭化水素基であり、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは炭化水素基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の炭化水素基の炭素数が30を超える場合は、潤滑油組成物の摩擦特性が悪化するため好ましくない。
【0020】
このような炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基の置換位置は任意である);フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12の各アリールアルキル基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く,またアリール基の置換位置も任意である)等が挙げられるが、これらの中でもアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルアリール基であるのが好ましい。
【0021】
また、リン系化合物の誘導体としては、具体的には例えば、リン酸、亜リン酸、前記式(2)においてR4、R5及びR6のうち1つ又は2つが水素である酸性リン酸エステル若しくは前記式(3)においてR7、R8及びR9のうち1つ又は2つが水素である酸性亜リン酸エステル等のリン系化合物に、アンモニアや炭素数1〜8の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の含窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩等が挙げられる。
【0022】
この含窒素化合物としては、具体的には例えば、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でも良い);及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
(B)成分のリン系化合物としては、摩擦特性により優れる点から、前記式(2)においてR4、R5及びR6のうち1つ又は2つが水素である酸性リン酸エステル若しくは前記式(3)においてR7、R8及びR9のうち1つ又は2つが水素である酸性亜リン酸エステル、又は上述したようなこれらリン系化合物のアミン塩、アルカノールアミン塩等がより好ましく用いられる。
【0024】
(B)成分として特に好ましい化合物としては、具体的には、モノブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノペプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノウンデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノテトラデシルホスフェート、モノペンタデシルホスフェート、モノヘキサデシルホスフェート、モノヘプタデシルホスフェート、モノオクタデシルホスフェート、モノノナデシルホスフェート、モノイコシルホスフェート、モノヘンイコシルホスフェート、モノドコシルホスフェート、モノトリコシルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート等のモノアルキルホスフェート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またチオホスフェートであっても良い);モノオクタデセニルホスフェート等のモノアルケニルホスフェート(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスフェートであっても良い);モノフェニルホスフェート、モノクレジルホスフェート等のモノ(アルキル)アリールホスフェート(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスフェートであっても良い);ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジペプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジンウンデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジテトラデシルホスフェート、ジペンタデシルホスフェート、ジヘキサデシルホスフェート、ジヘプタデシルホスフェート、ジオクタデシルホスフェート、ジノナデシルホスフェート、ジイコシルホスフェート、ジヘンイコシルホスフェート、ジドコシルホスフェート、ジトリコシルホスフェート、ジテトラコシルホスフェート等のジアルキルホスフェート(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またチオホスフェートであっても良い);ジオクタデセニルホスフェート等のジアルケニルホスフェート(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスフェートであっても良い);ジフェニルホスフェート、ジクレジルホスフェート等のジ(アルキル)アリールホスフェート(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスフェートであっても良い);モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノノニルホスファイト、モノデシルホスファイト、モノウンデシルホスファイト、モノドデシルホスファイト、モノトリデシルホスファイト、モノテトラデシルホスファイト、モノペンタデシルホスファイト、モノヘキサデシルホスファイト、モノヘプタデシルホスファイト、モノオクタデシルホスファイト、モノノナデシルホスファイト、モノイコシルホスファイト、モノヘンイコシルホスファイト、モノドコシルホスファイト、モノトリコシルホスファイト、モノテトラコシルホスファイト等のモノアルキルホスファイト(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い、またチオホスファイトであっても良い);モノオクタデセニルホスファイト等のモノアルケニルホスファイト(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスファイトであっても良い);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等のモノ(アルキル)アリールホスファイト(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスファイトであっても良い);ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジンウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジトリデシルホスファイト、ジテトラデシルホスファイト、ジペンタデシルホスファイト、ジヘキサデシルホスファイト、ジヘプタデシルホスファイト、ジオクタデシルホスファイト、ジノナデシルホスファイト、ジイコシルホスファイト、ジヘンイコシルホスファイト、ジドコシルホスファイト、ジトリコシルホスファイト、ジテトラコシルホスファイト等のジアルキルホスファイト(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、またチオホスファイトであっても良い);ジオクタデセニルホスファイト等のジアルケニルホスファイト(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意であり、またチオホスファイトであっても良い);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等のジ(アルキル)アリールホスファイト(アルキル基の置換位置は任意であり、またチオホスファイトであっても良い);これらリン系化合物と上述したようなアミン、アルカノールアミンとの塩;又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
なお、(B)成分が、式(2)のR4、R5若しくはR6のうち1つ若しくは2つ、又は、式(3)のR7、R8若しくはR9のうち1つ若しくは2つが、炭素数6以上、好ましくは炭素数9以上のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基であり、他が水素原子であるリン酸エステル(チオリン酸エステルでも良い)や亜リン酸エステル(チオ亜リン酸エステルでも良い)である場合は、特に潤滑油組成物の初期なじみ性の改善効果が大きいため好ましい。
【0026】
本発明の潤滑油組成物において任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(B)成分を併用する場合、その含有量の下限値は、組成物全量基準でリン元素量として0.005質量%、好ましくは0.01質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準でリン元素量として0.5質量%、好ましくは0.3質量%である。(B)成分の含有量が組成物全量基準でリン元素量として0.005質量%に満たない場合は、(B)成分併用による潤滑油組成物の極圧性の向上効果や初期なじみ性の改善効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準でリン元素量として0.5質量%を越える場合は、潤滑油組成物の腐食性が増加したり、またシール材や樹脂材等の耐久性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、それぞれ好ましくない。
【0027】
また、本発明の潤滑油組成物は、さらに(C)リンを含有しない摩擦調整剤を含有することができる。
本発明に係る(A)ポリサルファイド化合物を含有する潤滑油組成物は優れた摩擦特性とその耐久性を有するものであるが、シクロナイザリング、湿式ブレーキ等の摩擦特性により高い効果を必要とする場合がある。この場合、リンを含有しない摩擦調整剤(以下(C)成分ともいう。)を併用することにより、より優れた摩擦特性を発揮することが可能となる。
(C)成分としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、特に炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するものが好ましい。アルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でも良く、炭素数は6〜30、好ましくは9〜24の化合物が望ましい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が6未満や30を越える場合は、潤滑油組成物の摩擦特性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0028】
このアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);等が挙げられる。
【0029】
(C)成分の摩擦調整剤としては、具体的には例えば、
(C−1)炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するアミン化合物、又はその誘導体、
(C−2)炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する脂肪酸のエステル、アミド、イミド又は金属塩、ならびに不飽和脂肪酸エステルの硫化物の中から選ばれる1種又は2種以上の化合物、
等が好ましい化合物として挙げられる。
ここでいう(C−1)のアミン化合物としては、より具体的には例えば、下記の一般式(4)で表される脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、下記の一般式(5)で表される脂肪族ポリアミン、一般式(6)で表されるイミダゾリン化合物等が挙げられる。
【0030】
【化11】
式(4)中、R10は炭素数6〜30、好ましくは9〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、R11及びR12はそれぞれ個別にエチレン基又はプロピレン基を示し、R13及びR14はそれぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、a及びbは、それぞれ個別に0〜10、好ましくは0〜6の整数を示し、かつa+b=0〜10、好ましくは0〜6である。
【0031】
【化12】
式(5)中、R15は炭素数6〜30、好ましくは9〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、R16はエチレン基又はプロピレン基を示し、R17及びR18はそれぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、cは1〜5、好ましくは1〜4の整数を示している。
【0032】
【化13】
式(6)中、R19は炭素数6〜30、好ましくは9〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、R20はエチレン基又はプロピレン基を示し、R21は水素又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、dは、0〜10、好ましくは0〜6の整数を示している。
【0033】
なお、R10、R15及びR19を示すアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でも良いが、その炭素数は6〜30、好ましくは9〜24が望ましい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が6未満の場合や30を超える場合は潤滑油組成物の摩擦特性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
R10、R15及びR19を示すアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には前述したような各種のアルキル基やアルケニル基等が挙げられるが、摩擦特性がより優れる点から、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等の炭素数12〜18の直鎖アルキル基又はアルケニル基が特に好ましい。
【0034】
また、R13、R14、R17、R18及びR21を示す基としては、具体的には、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また置換位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12の各アリールアルキル基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また置換位置も任意である);等が挙げられる。
【0035】
前記式(4)で表される脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物としては、摩擦特性により優れる点から、式(4)において、R13及びR14が、別個に水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、かつa=b=0である脂肪族モノアミンや、R13及びR14が水素であり、かつa及びbが別個に0〜6でありa+b=1〜6となる数である脂肪族モノアミンのアルキレンオキシド付加物がより好ましく用いられる。
また、前記式(5)で表される脂肪族ポリアミンとしては、摩擦特性により優れる点から、式(5)において、R17及びR18が、別個に水素又は炭素数1〜6のアルキル基である脂肪族ポリアミンがより好ましく用いられる。
また、前記式(6)で表されるイミダゾリン化合物としては、摩擦特性により優れる点から、式(6)においてR21が、水素又は炭素数1〜6のアルキル基であるイミダゾリン化合物がより好ましく用いられる。
【0036】
一方、(C−1)でいうアミン化合物の誘導体としては、例えば、前記式(4)〜(6)のようなアミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;式(4)〜(6)のようなアミン化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和した、いわゆるホウ酸変性化合物;式(4)又は(6)のようなアミン化合物に、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを反応させた、いわゆるアミン化合物のアルキレンオキシド付加物;これらの中から選ばれる2種以上の変性を組み合わせて得られるアミン化合物の変性物;等が挙げられる。
【0037】
(C−1)のアミン化合物又はその誘導体としては、具体的には、摩擦特性に優れる点から、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等のアミン化合物;これらアミン化合物のアルキレンオキシド付加物;これらアミン化合物のアルキレンオキシド付加物;又はこれらの混合物等が特に好ましく用いられる。
【0038】
前記(C−2)の脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸イミド又は脂肪酸金属塩における脂肪酸としては、直鎖脂肪酸でも分枝脂肪酸でもよく、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも良いが、そのアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、6〜30、好ましくは9〜24が望ましい。および不飽和脂肪酸エステルの硫化物の炭化水素基も同様である。脂肪酸のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が6未満の場合や30を超える場合は、湿式クラッチの摩擦特性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0039】
この脂肪酸としては、具体的には、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪酸(飽和脂肪酸は直鎖状でも分枝状でも良い);ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和脂肪酸は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)、さらには同様のアルケニル基を持つアルケニルコハク酸;等が挙げられるが、特に摩擦特性により優れる点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、各種油脂から誘導される直鎖脂肪酸(ヤシ油脂肪酸等)の直鎖脂肪酸やオキソ法等で合成される直鎖脂肪酸と分枝脂肪酸の混合物が好ましく用いられる。
【0040】
(C−2)でいう脂肪酸エステルとしては、具体的には、前記脂肪酸の多価アルコールエステル等が挙げられる。
この多価アルコールとしては、炭素数3〜6の多価アルコール又はその2量体、3量体が挙げられ、具体的には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価アルコール、及びその2〜3量体であるジグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリグリセリン、トリトリメチロールエタン、トリトリメチロールプロパン、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
なおここでいうエステルとしては、多価アルコール中の水酸基のすべてがエステル化された、いわゆるフルエステルでも良く、また、多価アルコール中の水酸基の少なくとも1個以上がエステル化されない水酸基の形のままで残っている、いわゆる部分エステルでも良いが、本発明においては、摩擦特性により優れる点から部分エステルを用いるのが好ましい
【0041】
脂肪酸エステルとして好ましい化合物としては、具体的には、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノイソラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンジイソラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノイソミリステート、グリセリンジミリステート、グリセリンジイソミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノイソパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジイソパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジイソステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノイソオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリンジイソオレエート等のグリセリン部分エステル;トリメチロールエタンモノラウレート、トリメチロールエタンモノイソラウレート、トリメチロールエタンジラウレート、トリメチロールエタンジイソラウレート、トリメチロールエタンモノミリステート、トリメチロールエタンモノイソミリステート、トリメチロールエタンジミリステート、トリメチロールエタンジイソミリステート、トリメチロールエタンモノパルミテート、トリメチロールエタンモノイソパルミテート、トリメチロールエタンジパルミテート、トリメチロールエタンジイソパルミテート、トリメチロールエタンモノステアレート、トリメチロールエタンモノイソステアレート、トリメチロールエタンジステアレート、トリメチロールエタンジイソステアレート、トリメチロールエタンモノオレエート、トリメチロールエタンモノイソオレエート、トリメチロールエタンジオレエート、トリメチロールエタンジイソオレエート等のトリメチロールエタン部分エステル;トリメチロールプロパンモノラウレート、トリメチロールプロパンモノイソラウレート、トリメチロールプロパンジラウレート、トリメチロールプロパンジイソラウレート、トリメチロールプロパンモノミリステート、トリメチロールプロパンモノイソミリステート、トリメチロールプロパンジミリステート、トリメチロールプロパンジイソミリステート、トリメチロールプロパンモノパルミテート、トリメチロールプロパンモノイソパルミテート、トリメチロールプロパンジパルミテート、トリメチロールプロパンジイソパルミテート、トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンモノイソステアレート、トリメチロールプロパンジステアレート、トリメチロールプロパンジイソステアレート、トリメチロールプロパンモノオレエート、トリメチロールプロパンモノイソオレエート、トリメチロールプロパンジオレエート、トリメチロールプロパンジイソオレエート等のトリメチロールプロパン部分エステル;ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノイソラウレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールジイソラウレート、ペンタエリスリトールトリラウレート、ペンタエリスリトールトリイソラウレート、ペンタエリスリトールモノミリステート、ペンタエリスリトールモノイソミリステート、ペンタエリスリトールジミリステート、ペンタエリスリトールジイソミリステート、ペンタエリスリトールトリミリステート、ペンタエリスリトールトリイソミリステート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノイソパルミテート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールジイソパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールトリイソパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノイソステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジイソステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールトリイソステアレート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノイソオレエート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールジイソオレエート、ペンタエリスリトールトリオレエート、ペンタエリスリトールトリイソオレエート等のペンタエリスリトール部分エステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノイソラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジイソラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリイソラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノイソミリステート、ソルビタンジミリステート、ソルビタンジイソミリステート、ソルビタントリミリステート、ソルビタントリイソミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノイソパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジイソパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリイソパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジイソオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリイソオレエート等のソルビタン部分エステル;およびこれらの混合物等が例示できる。
【0042】
さらに、特に摩擦特性に優れる点から、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、トリメチロールエタンモノオレエート、トリメチロールエタンジオレエート、トリメチロールプロパンモノオレエート、トリメチロールプロパンジオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールジオレエート、ペンタエリスリトールトリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート及びこれらの混合物等がより好ましく用いられ、さらにモノオレエートであるグリセリンモノオレエート、トリメチロールエタンモノオレエート、トリメチロールプロパンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ソルビタンモノオレエート及びこれらの混合物等が最も好ましく用いられる。
また、(C−2)でいう脂肪酸アミドとしては、具体的には、前記脂肪酸やアルケニルコハク酸無水物あるいはその酸塩化物をアンモニアや炭素数1〜8の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の含窒素化合物を反応させて得られるアミドあるいはイミド等が挙げられる。
【0043】
この含窒素化合物としては、具体的には、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でも良い);及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
(C−2)の脂肪酸アミドとしては、具体的には、摩擦特性により優れる点から、ラウリン酸アミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ミリスチン酸アミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノプロパノールアミド、パルミチン酸アミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸モノプロパノールアミド、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノプロパノールアミド、オレイン酸アミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、炭素数12〜13の合成混合脂肪酸アミド、炭素数12〜13の合成混合脂肪酸ジエタノールアミド、炭素数12〜13の合成混合脂肪酸モノプロパノールアミド、及びこれらの混合物等が特に好ましく用いられる。
【0045】
一方、(C−2)でいう脂肪酸金属塩としては、具体的には例えば、前記脂肪酸のアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
(C−2)の脂肪酸金属塩としては、具体的には、湿式クラッチの摩擦特性により優れる点から、ラウリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、ヤシ油脂肪酸カルシウム、炭素数12〜13の合成混合脂肪酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ヤシ油脂肪酸亜鉛、炭素数12〜13の合成混合脂肪酸亜鉛、及びこれらの混合物等が特に好ましく用いられる。
さらに(C−2)でいう不飽和脂肪酸エステルの硫化物としては、例えば、前記不飽和脂肪酸エステルと硫黄の反応物が挙げられる。
(C−2)の不飽和脂肪酸エステルの硫化物としては、シンクロ特性やブレーキの摩擦特性により優れる点から、オレイン酸メチルエステルの硫化物が特に好ましく用いられる。
また、言うまでもなく、(C)成分としては、(C−1)及び(C−2)で代表されるような摩擦調整剤の中から選ばれる2種以上の異なる構造の化合物の任意の混合割合からなる混合物も用いることができる。
【0046】
本発明の潤滑油組成物において任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(C)成分を併用する場合、その含有量の下限値は、組成物全量基準で0.01質量%、好ましくは0.03質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で5.0質量%、好ましくは3.0質量%である。(C)成分の含有量が組成物全量基準で0.01質量%に満たない場合は、(C)成分併用による摩擦特性に対する改善効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準で5.0質量%を越える場合は、静摩擦係数(μs)が下がりすぎ、湿式ブレーキの効きが低下するため、それぞれ好ましくない。
【0047】
ここで、本発明において(C)成分として(C−1)のアミン化合物を使用する場合は、前述した(B)成分として、式(2)のR4、R5若しくはR6のうち1つ若しくは2つ、又は、式(3)のR7、R8若しくはR9のうち1つ若しくは2つが、炭素数1〜30の炭化水素基であり、他が水素原子であるリン酸エステル(チオリン酸エステルでも良い)や亜リン酸エステル(チオ亜リン酸エステルでも良い)、特に亜リン酸エステルを併用すると、潤滑油組成物の初期なじみ性の改善効果が特に大きい。この場合、(C−1)成分のアミン化合物と(B)成分の上記リン酸エステル又は亜リン酸エステルは、それぞれ単独で潤滑油基油に加えても良く、また予め両者を反応させたアミン化合物とリン化合物の塩の形で潤滑油基油に加えても良い。
【0048】
また、本発明の潤滑油組成物は、(D)塩基性金属系清浄剤を含有することができる。
この塩基性金属系清浄剤(以下(D)成分ともいう。)は、手動または自動変速機のシンクロ特性やトラクターや建設機械のブレーキ鳴き防止に必要な高い動摩擦係数(μd)や低い静摩擦係数(μs)を出現させる効果がある。本発明に係る(A)ポリサルファイド化合物は、単独で使用しても動摩擦係数(μd)を維持しかつ静摩擦係数(μs)を低減する効果を持つが、(D)成分と併用することによりその効果が増大する。
(D)成分の塩基性金属系清浄剤の全塩基価の下限値は、50mgKOH/g、好ましくは100mgKOH/gであり、一方、その上限値は450mgKOH/gである。全塩基価が50mgKOH/g未満の場合は潤滑油組成物の酸化安定性が悪化し、一方、全塩基価が450mgKOH/gを超える場合は、潤滑油組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、それぞれ好ましくない。なおここで言う全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味している。
【0049】
(D)成分の具体例としては、例えば
(D−1)全塩基価が50〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属スルフォネート、
(D−2)全塩基価が50〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属フェネート、
(D−3)全塩基価が50〜450mgKOH/gの塩基性アルカリ土類金属サリシレート、
の中から選ばれる1種類又は2種類以上の塩基性金属系清浄剤等が挙げられる。
アルカリ土類金属スルフォネートとしては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルフォン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルフォン酸や合成スルフォン酸等が挙げられる。
【0050】
石油スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルフォン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルフォン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルフォン化する際のスルフォン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
また、アルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には例えば、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられる。
【0051】
また、アルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には例えば、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられる。
(D−1)塩基性アルカリ土類金属スルフォネート、(D−2)塩基性アルカリ土類金属フェネート及び(D−3)塩基性アルカリ土類金属サリシレートには、その全塩基価が50〜450mgKOH/gの範囲にある限りにおいて、アルキル芳香族スルフォン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)を過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガスの存在下で中性塩(正塩)をアルカリ土類金属の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)が含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
【0052】
本発明の潤滑油組成物において任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(D)成分を併用する場合、その含有量の下限値は、組成物全量基準で0.05質量%、好ましくは0.1質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で5.0質量%、好ましくは3.0質量%である。(D)成分の含有量が組成物全量基準で0.05質量%に満たない場合は、(D)成分併用による潤滑油組成物の摩擦特性の向上効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準で5.0質量%を越える場合は、潤滑油組成物の酸化安定性が低下したり、また摩擦材の目詰まりを起こすおそれがあるため、それぞれ好ましくない。
【0053】
また、本発明の潤滑油組成物は、さらに(E)チオリン酸亜鉛を含有することができる。
このチオリン酸亜鉛(以下(E)成分ともいう。)は、酸化安定性を向上させると同時に静摩擦係数(μs)を低減させる効果があり、特に(D)塩基性金属系清浄剤と併用した場合にその効果が大きい。また(E)成分が静摩擦係数(μs)を低減する効果は、銅合金を使用した手動または自動変速機のシンクロナイザリングやトラクターや、建設機械の湿式ブレーキにおいて顕著であり、手動または自動変速機における引っかかりやトラクターや建設機械におけるブレーキ鳴きをより効果的に防止することができる。
(E)成分のチオリン酸亜鉛としては、具体的には、下記の一般式(7)で表されるジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0054】
【化14】
式(7)中、R22、R23、R24及びR25は、それぞれ個別に、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基又は炭素数7〜18のアルキルアリール基を示す。
【0055】
アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、特に炭素数3〜8のアルキル基が好ましい。これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い。これらはまた第1級(プライマリー)アルキル基でも第2級(セカンダリー)アルキル基でも良い。
【0056】
R22、R23、R24及びR25を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、式(7)で表される化合物としては異なる構造のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物となる。
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アルキルアリール基としては、具体的には、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また全ての置換異性体を含む)が挙げられる。
【0057】
R22、R23、R24及びR25としては、このようなアルキル基、アリール基、アルキルアリール基のいずれでも良く、潤滑油組成物に極圧性が要求される場合は(E)成分として第2級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛を、耐熱性が要求される場合は(E)成分としてアリール基又はアルキルアリール基を有するジチオリン酸亜鉛を用いるのが好ましいが、摩擦特性の改善効果等を考慮すると、総合的には第1級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛を用いるのが最も好ましい。
またさらに塩基性第1級アルキル基を有するジチオリン酸亜鉛は特に優れた酸化安定性を示し単独または他のジチオリン酸亜鉛との併用が有効である。
【0058】
本発明の潤滑油組成物において任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(E)成分を併用する場合、その含有量の下限値は、組成物全量基準で0.05質量%、好ましくは0.1質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で5.0質量%、好ましくは3.0質量%である。(E)成分の含有量が組成物全量基準で0.05質量%に満たない場合は、(E)成分併用による潤滑油組成物の静摩擦係数(μs)の低減効果に乏しく、一方、含有量が組成物全量基準で5.0質量%を越える場合は、摩擦材の目詰まりを起こす恐れがあり、またシール材や樹脂材等の耐久性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、それぞれ好ましくない。
【0059】
また、本発明の潤滑油組成物は、(F)コハク酸イミド系無灰分散剤を含有することができる。
コハク酸イミド系無灰分散剤(以下(F)成分ともいう。)を併用することにより組成物の酸化安定性、熱安定性の向上が期待できる。また変速操作時のシンクロナイザリングとギヤコーン間や湿式ブレーキの系合中の動摩擦係数(μd)を上げる効果を有する。
(F)成分の具体的としては、例えば、炭素数30〜300のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体が挙げられ、これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
(F)成分としては、より具体的には、例えば、下記の一般式(8)又は(9)で示される化合物等が挙げられる。
【0060】
【化15】
式(8)中、R26は炭素数30〜300、好ましくは40〜150のアルキル基又はアルケニル基を示し、eは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示している。
【0061】
【化16】
式(9)中、R27及びR28は、それぞれ個別に炭素数30〜300、好ましくは40〜150のアルキル基又はアルケニル基を示し、fは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示している。
【0062】
なお、コハク酸イミドとは、イミド化に際しては、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(8)のようないわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(2)のようないわゆるビスタイプのコハク酸イミドがあるが、(F)成分としては、そのいずれでも、またこれらの混合物でも使用可能である。
このアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でも良いが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は30〜300、好ましくは40〜150である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が30未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が300を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0063】
(F)成分のコハク酸イミド系無灰分散剤の含有量は任意であるが、耐摩耗性、酸化安定性及び摩擦特性等の点から、通常、その窒素含有量が0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜10質量%のものが望ましく用いられる。
また、(F)成分のコハク酸イミド系無灰分散剤の誘導体としては、例えば、前述したようなコハク酸イミドに炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述したような含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述したような含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述したような含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。なお、これら誘導体の中ではホウ酸変性品が動擦係数(μd)を向上させる効果に特に優れるため、この効果を強調するためには、ホウ酸変性したコハク酸イミド系無灰分散剤を用いることも効果的である。
【0064】
本発明の潤滑油組成物において任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(F)成分を併用する場合、耐摩耗性、酸化安定性及び摩擦特性等の点から、通常、その窒素含有量が0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜10質量%のものが望ましく用いられる。(F)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で0.1質量%、好ましくは0.5質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準で15.0質量%、好ましくは10.0質量%である。(F)成分の含有量が組成物全量基準で0.1質量%に満たない場合は、(F)成分の効果が得られず、一方、含有量が組成物全量基準で15.0質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化し、またシール材等の耐久性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
【0065】
以上のように、本発明の潤滑油組成物においては、潤滑油基油に(A)成分のポリサルファイド化合物を特定量含有させることにより、潤滑油組成物が手動変速機または自動変速機や、トラクターあるいは建設機械に用いられた場合、手動変速機または自動変速機で使用されるシンクロナイザリングやトラクターもしくは建設機械で使用される湿式ブレーキの材質である銅合金での動摩擦係数(μd)を高く保持するとともに、静摩擦係数(μs)を低下させることができる。
【0066】
また、必要に応じて(B)〜(F)成分の中から選ばれる1種又は2種以上の化合物をそれぞれ特定量併用することにより、摩擦特性をさらに一層改善することができる。
すなわち、本発明における潤滑油組成物は、潤滑油基油に(A)成分を配合した組成の他に、潤滑油基油と(A)成分と(B)〜(F)成分の各種組み合わせからなる組成の全ての態様を包含する。このうち(A)成分の他に(B)成分を含む組成が特に好ましく、特に以下の態様が好ましい。
(1)基油+(A)+(B)、
(2)基油+(A)+(B)+(C)又は(D)又は(E)又は(F)、
(3)基油+(A)+(B)+(C)+(D)又は(E)又は(F)、
(4)基油+(A)+(B)+(C)+(D)+(E)又は(F)、
(5)基油+(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)、
(6)基油+(A)+(B)+(D)+(E)又は(F)、
(7)基油+(A)+(B)+(D)+(E)+(F)。
その他の好ましい組成としては、(A)成分の他に(E)成分を含む組成が好ましく、以下の態様が挙げられる。
(8)基油+(A)+(E)、
(9)基油+(A)+(E)+(C)又は(D)又は(F)、
(10)基油+(A)+(D)+(E)+(C)又は(F)、
(11)基油+(A)+(C)+(D)+(E)+(F)。
【0067】
本発明の潤滑油組成物においては、その性能を更に向上させる目的で、必要に応じて、さらに粘度指数向上剤、流動点降下剤、酸化防止剤、極圧添加剤、腐食防止剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等に代表される各種添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて含有させても良い。
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体若しくは共重合体、又はその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、あるいはさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる)、又はその水素化物、ポリイソブチレン、又はその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレン等が例示できる。
【0068】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、5,000〜150,000、好ましくは5,000〜35,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン・α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は800〜150,000、好ましくは3,000〜12,000のものが好ましい。
またこれら粘度指数向上剤の中でもエチレン・α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0069】
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準0.1〜40.0質量%であるのが望ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸等の(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸類と1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサポリサルファイド、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等)とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%であるのが望ましい。
【0070】
極圧添加剤として、本発明の必須成分である(A)成分のポリサルファイド化合物の他は、例えば、ジスルフィド類、硫化油脂類等の硫黄系化合物等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%であるのが望ましい。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜3.0質量%であるのが望ましい。
消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.001〜0.05質量%であるのが望ましい。
着色剤は任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.001〜1.0質量%であるのが望ましい。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、本発明の潤滑油組成物は優れた極圧性および摩擦特性を有しており、特に、シンクロナイザリングを使用した手動または自動変速機用潤滑油や、トラクターや建設機械に使用される変速機とブレーキを同時に潤滑する共通潤滑用潤滑油等の動力伝達機構用の潤滑油としての使用に適している。
【0072】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0073】
[試験1]
手動または自動変速機で使用されるシンクロナイザリングやトラクターで使用される湿式ブレーキの材質である銅合金における摩擦特性を評価するため、表1に示す潤滑油組成物について、以下に示す条件でシンクロ摩擦試験を行い、なじみ運転1000サイクル経過後の静摩擦係数μs(μsはシンクロナイザリングが静止状態から1rpmでスリップ開始後の最大摩擦係数を示す。)を測定した。
【0074】
シンクロ摩擦試験の運転条件
シンクロナイザリング:国産手動変速機用銅合金シンクロナイザリング
ギヤコーン :国産手動自動変速機用鋼製ギヤコーン
油 温 :80℃
モーター回転数 :1200rpm
押しつけ荷重 :400N
押しつけサイクル :ON 0.5 sec/OFF 1.0sec
【0075】
【表1】
【0076】
1)精製鉱油A:動粘度4.1mm2/s(@100℃)、粘度指数123のパラフィン系水素化分解鉱油。
2)潤滑油A:精製鉱油Aに、組成物全量基準でポリメタクリレート20質量%、ジ−2−エチルヘキシル酸性リン酸エステルアミン塩0.3質量%、チアジアゾール0.2質量%を添加した動粘度13.6mm2/s(@100℃)の潤滑油。
3)潤滑油B:精製鉱油Aに、組成物全量基準でポリメタクリレート20質量%、ジブチル亜リン酸エステル0.2質量%、塩基性プライマリーZnDTP1.2質量%、TBN300Caスルフォネート2.0質量%、アルケニルコハク酸イミド0.5質量%、ソルビタンモノオレート0.3質量%を添加した動粘度14.8mm2/s(@100℃)の潤滑油。
4)ポリサルファイド化合物A:式(1)において、R1〜R3の炭素数8、n=0〜1、x,y=3〜9のポリサルファイド化合物。
5)ポリサルファイド化合物B:式(1)において、R1〜R3の炭素数16または18、n=0〜1、x,y=1〜9のポリサルファイド化合物。
6)ポリサルファイド化合物C:式(1)において、R1〜R3の炭素数4、n=0〜1、x,y=2〜13のポリサルファイド化合物。
7)μ1200:10000サイクル後の1200rpmの摩擦係数。
8)[0.5]:ポリサルファイド化合物を組成物全量基準で硫黄0.5質量%となるよう添加した。
【0077】
表1の結果から明らかなとおり、本発明に係る(A)ポリサルファイド化合物を含有する実施例の潤滑油組成物は、手動または自動変速機のシンクロメッシュ機構やトラクターの湿式ブレーキで用いられる銅合金での動摩擦係数μ1200が高く、シンクロメッシュ型手動または自動変速機でのギヤ鳴りの原因となるシンクロ時の摩擦係数の低下を防ぐことができる。
【0078】
[試験2]
本発明の潤滑油組成物について、摩擦特性への影響を評価するため、表1に示した各組成の静摩擦係数μ1をシンクロ摩擦試験機で測定した。その結果を表2に示した。
【0079】
シンクロ摩擦試験の運転条件
シンクロナイザリング:国産手動変速機用銅合金シンクロナイザリング
ギヤコーン :国産手動自動変速機用鋼製ギヤコーン
油 温 :80℃
モーター回転数 :慣性吸収試験後1rpm
押しつけ荷重 :400N
押しつけサイクル :ON 2.0 sec/OFF 5.0sec
【0080】
【表2】
【0081】
1)精製鉱油A:表1の精製鉱油Aと同一。
2)潤滑油A:表1の潤滑油Aと同一。
3)潤滑油B:表1の潤滑油Bと同一。
4)ポリサルファイド化合物A:表1のポリサルファイド化合物Aと同一。
5)ポリサルファイド化合物B:表1のポリサルファイド化合物Bと同一。
6)ポリサルファイド化合物C:表1のポリサルファイド化合物Cと同一。
7)μ1:慣性吸収試験後100サイクル後の1rpmの最大摩擦係数。
8)[0.5]:ポリサルファイド化合物を組成物全量基準で硫黄0.5質量%となるよう添加した。
【0082】
表2の結果から明らかなとおり、本発明の潤滑油組成物において、特に式(1)におけるR1〜R3が長鎖のポリサルファイド化合物Bを用いた実施例8、10および12は対応する比較例5〜8に比較して著しく低いμ1を示す。これは低滑り速度での摩擦係数が低いことを意味し、手動または自動変速機のシンクロメッシュ機構でのひっかかり現象の防止やトラクターの湿式ブレーキでのブレーキ鳴き防止に有効なことを示している。
【0083】
[試験3]
本発明に係る潤滑油組成物による、トラクターのブレーキ鳴きへの影響を評価するため、表3に示す組成を有する実施例13び比較例9の潤滑油組成物について、以下に示す条件で、油温が5℃及び油温が外気温と同一の場合のトラクターブレーキ鳴き試験を行い、その結果を表3に示した。
【0084】
トラクタ−ブレーキ鳴き試験
(1)使用トラクター:15馬力トラクター
(2)試験方法:まず試験油を充填したトラクターを12時間以上低温室(0℃)にて冷やす。低温室から出したトラクターを暖気なしで時速30kmに加速しフルブレーキをかけ音の発生を聞いた後油温を測定する。これを2度繰り返し5℃の試験とする。さらに走行を繰り返し油温が30℃に達したところでフルブレーキをかけ音の発生を聞く。これを2度繰り返し外気温の試験とする。
【0085】
【表3】
【0086】
1)潤滑油C:精製鉱油Aに、組成物全量基準でポリメタクリレート7.5質量%、塩基性プライマリーZnDTP1.8質量%、TBN100Caスルフォネート2.0質量%、TBN300Caスルフォネート1.5質量%、オレイルアミド0.1質量%を添加した動粘度9.1mm2/s(@100℃)の潤滑油。
2)ポリサルファイド化合物B:表1のポリサルファイド化合物Bと同一。
3)ポリサルファイド化合物C:表1のポリサルファイド化合物Cと同一。
4)[0.5]:ポリサルファイド化合物を組成物全量基準で硫黄0.5質量%となるよう添加した。
【0087】
表3の結果から明らかなとおり、本発明の潤滑油組成物(実施例13)は、トラクターのブレーキ鳴きの防止効果に優れることがわかる。
Claims (2)
- 潤滑油基油に、(A)下記式(1)で表されるポリサルファイド化合物を組成物全量基準で0.01〜10.0質量%、及び(B)下記式(2)で表されるリン酸エステル、下記式(3)で表される亜リン酸エステル、およびこれらリン系化合物の誘導体の中から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物を組成物全量基準でリン元素量として0.005〜0.5質量%含有してなることを特徴とする手動変速機用又は自動変速機用潤滑油組成物、あるいはトラクター及び建設機械用共通潤滑用潤滑油組成物。
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