JP4430806B2 - 結晶化ガラスの製造方法、結晶化ガラス基板の製造方法、および情報記録媒体の製造方法 - Google Patents

結晶化ガラスの製造方法、結晶化ガラス基板の製造方法、および情報記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板状ガラスを熱処理して板状の結晶化ガラスを製造する方法に関する。さらに本発明は、上記板状結晶化ガラスを研削、研磨して結晶化ガラス基板を製造する方法、上記基板上に情報記録層を形成する情報記録媒体の製造方法及び上記基板上に磁気記録層を形成する磁気記録媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ等に用いられる磁気記録装置の大容量化、書込み・読取りの高速化に伴い、磁気ヘッドの低浮上量化、磁気ディスクの回転の高速化が進められている。磁気ヘッドの低浮上量化を可能にするには、表面が高い平坦性及び平滑性を有する磁気ディスクが必要であり、そのため、ディスク基板表面にも高い平坦性及び平滑性が求められている。また、磁気ディスクの高速回転時に磁気ヘッドの浮上量を安定に保つには、高い剛性を有する磁気ディスク基板が必要である。このような要求を満足し得る基板として、結晶化ガラス基板が知られている。結晶化ガラス基板は、表面の平坦性及び平滑性を高くでき、かつ剛性も高くできる。
【0003】
結晶化ガラス基板の製造は、最初、アモルファス状態のガラスを基板形状に近い形に成形し、その後、加熱してガラスを結晶化し、さらに得られた結晶化ガラスの表面を研削、研磨することで行われる。このような結晶化ガラス基板の製造方法は、例えば特開平9−102125号公報(以下、公報(1)という)に記載されている。公報(1)に開示された方法は、結晶化工程での基板材料の反りを低減し、結晶化後に基板を平坦化するために研削で削り落とされる結晶化ガラスの量を低減することを目的とするものである。そのため、この方法では、基板材料(ガラス)を基板材料(ガラス)と反応しない押え板と交互に積層し、この積層物を最高850℃にまで加熱してガラスを結晶化する工程において、基板材料が反らないよう荷重を加える。押え板としては、両面が平坦なカーボンが使用され、カーボン以外にセラミックスの表面にカーボンがコートされたものを用いることができると記載されている。さらに、上記積層された基板材料と押え板はコンベアーにより加熱炉中を移動しながら窒素雰囲気中で加熱される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、公報(1)に記載された方法で、カーボン製押え板と基板材料とを交互に積層したものを熱処理することでガラスを結晶化させると、押え板の多くが加熱処理中に割れてしまい、押え板を再利用することができない。また押え板が割れることにより積層したガラスが崩れたりすることもある。さらに押え板が割れると、軟化状態のガラスに押え板の形状が転写して、得られた結晶化ガラスの形状が悪化して使い物にならなくなってしまうという大きな問題があった。また押え板の破片を生産ラインより除去しなければならず、その都度、生産ラインを止めなければならないという問題もあった。
【0005】
また、公報(1)に記載された方法では、荷重が最も大きい最下層の基板材料の反りが最も小さくなるはずであり、荷重が小さい最上層の基板材料の反り低減量は基板材料を積層しないときと変わらないはずである。ところが、実際は必ずしも荷重が最大になる最下層部分の基板材料の反りが小さくならず、基板材料の反りにバラツキが生じた。
【0006】
そこで本発明の第1の目的は、押え板と基板材料とを交互に積層したものを熱処理することでガラスを結晶化させて、結晶化ガラス基板材料を製造する方法であって、熱処理の間に押え板の破損が生じないか、または生じ難く、かつ基板材料の反りにバラツキが生じにくい方法を提供することにある。
【0007】
公報(1)に記載された方法のように、カーボン製押え板と基板材料とを交互に積層したものを熱処理することでガラスを結晶化させる場合、カーボンの酸化を防止する観点から、加熱の雰囲気を窒素雰囲気等の不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気とする必要があった。特に、公報(1)に記載の方法では最高温度が850℃であったが、最高温度が800℃を超え、1000℃前後にもなる結晶化ガラスの製造においては、カーボンは僅かな量の酸素でも容易に酸化するため、上記雰囲気制御が必須である。しかるに、加熱の雰囲気の制御には加熱炉の高い気密性が要求され、設備の大型化、複雑化を招く。そして酸素を含まない気体を導入するので、火炎を遮断しなければならず、加熱効率が悪化する。さらに万一気体が漏洩した場合、作業環境の酸素濃度が低下して危険である。従って、大気中での処理が好ましい。
そこで本発明の第2の目的は、押え板と基板材料とを交互に積層したものを熱処理することでガラスを結晶化させて、結晶化ガラス基板材料を製造する方法であって、熱処理を大気中で行える方法を提供することにある。
【0008】
さらに本発明は、高い生産性のもと、基板材料の反り低減が可能な板状結晶化ガラスの製造方法、および結晶化ガラス基板の製造方法、並びにこの方法で得られた基板に磁気記録層のような情報記録層を形成して情報記録媒体を作製する情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明者らが検討した結果、公報(1)の方法では、結晶化のための熱処理の工程において板状ガラス(基板材料)及び押え板との加熱状況(温度分布)が不均一であり、その結果、熱処理の間に押え板の破損が生じ、また、基板材料の反りにバラツキが生じることが分かった。そして、この不均一な温度分布は、押え板の平面形状が板状ガラスの平面形状と大きく異なる形状(例えば、正方形)であること、また積層状態で板状ガラスの周縁部と押え板の周縁部の距離が大きいことに起因していることを突き止めた。そこで本発明では、板状ガラス及び押え板がより均一に加熱されるように、押え板として板状ガラスの平面形状よりも僅かに大きい近似形状の板状の部材(セッター)を用いること、またはセッターの主表面から板状ガラスがはみ出さないようにし、かつ板状ガラスの周縁部に沿って、セッターの周縁部と板状ガラスの周縁部の距離を一定値以内になるように積層物を形成するで上記課題を解決した。即ち、押え板の平面形状が板状ガラスの形状に近いため、あるいは、セッターと板状ガラスとの位置関係を調整することで、押え板が外周から均一に加熱され、その結果、押え板と接触している板状ガラスも同様に均一に加熱され、押え板の破損や基板材料の反りにバラツキが生じにくくなった。
【0010】
即ち本発明は、板状ガラスを板状部材(以下、セッターという)の間に1枚づつ、前記板状ガラスが前記セッターからはみ出さないように挟み込んだ積層物を熱処理して、前記板状ガラスを結晶化することを特徴とする結晶化ガラスの製造方法に関する。
さらに本発明は、板状ガラスを板状部材(以下、セッターという)の間に挟み込んで積層物を形成し、前記積層物を熱処理して板状ガラスを結晶化する結晶化ガラスの製造方法であって、前記セッターの主表面から板状ガラスがはみ出さないように、かつ板状ガラスの周縁部に沿って、セッターの周縁部と板状ガラスの周縁部の距離が30mm以内になるように積層物を形成することを特徴とする結晶化ガラスの製造方法に関する。
加えて、本発明は、上記本発明の方法により得られた結晶化ガラスの主表面を平坦に研削、研磨して基板を形成することを特徴とする結晶化ガラス基板の製造方法、この本発明の製造方法により得られた結晶化ガラス基板の主表面に情報記録層を形成することを特徴とする情報記録媒体の製造方法、及び上記本発明の製造方法により得られた結晶化ガラス基板の主表面に磁気記録層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態について説明する。
ガラスは結晶化によって硬度が増加するので、研削加工や研磨加工の手間を考え、予めガラスを目的形状に近いものに成形した上で結晶化することが望ましい。そのため、結晶化ガラス基板を得るには、まず第1に、結晶化ガラスの母材となるアモルファス状態のガラス(以下、原ガラスと記す。)をプレス成形法等によって板状に成形したり、あるいは原ガラスの板から目的形状に近い形状のガラスを取る。次いで、このガラスに加熱処理を施して、結晶化ガラスを得る。得られた結晶化ガラスは、加熱して得られた板状の結晶化ガラスの主表面に冷間加工を施し、主表面を平坦化することで基板とすることができる。さらに、この基板の主表面に記録層を直接又は間接的に設けることで、結晶化ガラス基板と記録層を備えた情報記録媒体が得られる。
上記の原ガラス、原ガラスの成形、得られた結晶化ガラス、情報記録媒体については、後程、説明するとして、まず、本発明の特徴である結晶化の工程について説明する。
【0012】
(加熱処理のための積層物の構成)
本発明の製造方法においては、予め最終製品に近似する板状の原ガラス(板状ガラス)を用意し、この板状ガラスを熱処理して結晶化させる。本発明は結晶化ガラスの量産と、生産性の向上をも目的とするものなので、一度に複数枚(n枚)の板状ガラスに結晶化のための熱処理を施す。
板状ガラスはセッターの間に1枚づつ、板状ガラスがセッターからはみ出さないように挟み込んだ積層物を形成し、これを熱処理する。あるいは、セッターの主表面から板状ガラスがはみ出さないように、かつ板状ガラスの周縁部に沿って、セッターの周縁部と板状ガラスの周縁部の距離が30mm以内になるように積層物を形成し、これを熱処理する。
前記板状ガラスは、円板状または円板状以外の平面形状(例えば、正方形、長方形等の方形)であることができ、板状ガラスが円板状である場合、セッターも円板状であることが好ましく、板状ガラスが方形板状である場合、セッターも方形状であることが好ましい。
また、板状ガラスとセッターとは、交互に積層することが好ましいが、必ずしも1枚づつ交互にしなくてもよい。1枚づつ交互に積層する場合は、n枚の板状ガラス(nは1以上の整数である)に対しては、n+1のセッターを用意する。そして、n枚の板状ガラスをn+1枚のセッターの間毎に1枚づつ挟み込んだ積層物を形成する。即ち、セッターを一番底に置き、次いで板状ガラス及びセッターを交互に積層し、最上をセッターとする積層物を形成する。
【0013】
さらに、各セッターの両面は互いに平行に形成されていることが、積層した各板状ガラスを水平に維持し易く、かつ均一に加熱できるという観点から好ましい。セッターの両面は平坦化されており、その平坦な面上に上記板状ガラスを置き、その上にセッターを載せるというように、セッターと板状ガラスを一枚ずつ交互に積み重ねて行く。このとき、板状ガラスがセッターからはみ出さないよう、セッター上に板状ガラスを載せる位置を調整する。好ましくは、セッターの中心と板状ガラスの中心とが一致するように積み重ねていく。板状ガラス及びセッターの中心同一の軸上に配列させることが、板状ガラス及びセッターが均一に加熱されるという観点から好ましい。
【0014】
さらに、セッターが円板状の場合その直径は、円板状ガラスの直径の1倍から1.2倍とすることが、円板状ガラス及びセッターが均一に加熱されるという観点から好ましい。より好ましく、セッターの直径は、円板状ガラスの直径の1倍超〜1.1倍である。
【0015】
円板状の情報記録媒体用基板を製造する上で、ガラスを結晶化する前に基板形状に近似する形状にガラスを成形することは後加工の負担を軽減する上で有利であるが、板状ガラスを結晶化後に円板状に加工することも可能である。また、他の用途でも、円板状以外の結晶化ガラスを使用する場合は多い。例えば、マイクロプロセッサなどの電子部品を実装するための結晶化ガラス製の実装基板は平面形状が四角形である場合が多いが、このような実装基板を作製する上でも、本発明の製造方法は有効である。
【0016】
平面形状が四角形の板状ガラスを上述の方法によって熱処理し、結晶化させることもできる。熱処理条件はガラスによって適宜設定すればよい。熱処理を行う際、平面形状が板状ガラスよりも大きいセッターまたは、平面形状が等しいセッターを用いる。平面形状が等しいセッターを使用する場合は、セッターと板状ガラスが完全に重なるようにし、セッターから板状ガラスがはみ出さないようにして板状ガラスとセッターの積層物を形成する。平面形状が板状ガラスよりも大きなセッターを使用する場合は、板状ガラスの周縁部がセッターの周縁部からはみ出さないように積層物を形成する。なお、板状ガラスよりも大きなセッターを使用する場合は、板状ガラスの周縁部とセッターの周縁部の間隔が30mm以内、好ましくは20mm以内、より好ましくは10mm以内となるように積層物を形成する。このように板状ガラスの周縁部に沿って、板状ガラスの周縁部とセッターの周縁部の間隔を所定の値以内にすることによって、積層物外部からの熱が板状ガラス及びセッターに均等に伝わり、平面形状か方形(四角形)の板状ガラスとセッターとを組み合わせた場合にも、円板状ガラスと円板状部材を組み合わせた場合と同様、良好な結果が得られる。
【0017】
このように、板状ガラスの平面形状が円以外の場合でも、板状ガラスの平面形状と相似形状の平面形状をもつセッターを使用することが望ましい。さらに板状ガラスの平面形状によらず、上記板状ガラスの周縁部とセッターの周縁部の間隔が板状ガラスの円周部に沿って均等になるようにして積層物を形成することが好ましい。
【0018】
セッターとガラスの積層物の高さは、積層物が安定性を維持できること、加熱領域の高さによって適宜選択される。特に熱処理時のガラスの反り低減には、積層物の加熱を行う加熱領域に存在する温度分布を均一化することが好ましい。しかし、加熱炉内部における加熱領域の有効高さを大きくし過ぎると、炉内の温度分布が大きくなる。その結果、熱処理時に板状ガラスに大きな温度勾配が生じ、ガラスの反りが生じてしまう。したがって、均一な温度分布が得られる加熱領域の有効高さの範囲内において、なるべく多くの板状ガラスを処理できることが好ましい。そのような観点から、セッターの厚みは薄いほうが好ましい。しかし、セッターが薄すぎると、熱伝導率が比較的大きな材料からなるセッターでも、伝熱量が低下する。セッターと板状ガラスの積層物では、積層物中段にある板状ガラスの中心部付近の加熱は、ほとんどがセッターからの熱伝導によるものである。従って、セッターが薄くなりすぎて熱伝導量が低下しすぎると、板状ガラスの中心部付近と周辺部とで大きな温度勾配が生じてしまう。大きな温度勾配は、ガラスに変形を生じ、ガラスの変形によってセッターに応力がかかり、セッターを破壊する可能性がある。こられの事情を勘案して、セッターの厚みは、1.5〜15mmであることが好ましく、また、セッターは、板状ガラスよりも大きな熱伝導率を有することが好ましい。結晶化ガラス基板の厚みは、10mm以下とする場合が実用上多い。板状ガラスの厚みを10mm以下とする場合、セッターの厚みは、板状ガラスの厚みの半分より厚くすることが好ましい。
【0019】
上記積層物の高さは、上述したような理由により50〜300mmであることが望ましく、100〜200mmであることがより望ましい。また、この高さに対応して、積層段数は10〜30段(セッター1枚とガラス1枚の組合せを1段と数える)であることが望ましく、10〜20段とすることがさらに望ましい。
【0020】
セッターの材料としては、少なくとも結晶化工程で晒される最高温度において十分な耐熱性を有し、変形せず、分相、結晶化の際の高温下でガラスと融着しないものから選ばれる。そのような観点からセッターはセラミックス製であることが好ましい。さらに、セラミックス製であることは、熱処理を大気中で行えるという観点からも好ましい。セラミックスとしては、炭化珪素、窒化珪素、ムライトコーディエライト耐火物、アルミナ、シリカ、アルミナムライト系、スポジュメンなどのファインセラミックスなどを例示できる。ただし、上記セラミックスは種類により、一部の種類のガラスと融着する場合があるので、板状ガラスの種類に応じて、セッターの材料は適宜選択される。ガラスとの融着を起こしにくいという観点からは、炭化珪素、ムライトコーディエライト耐火物、アルミナなどのファインセラミックスを使用することが望ましい。また、セッターは、使いまわし可能なように、繰返し多数回の使用に耐える耐熱衝撃性の高いものが好ましい。即ち、セッターは耐熱衝撃温度差が300℃以上の材料(セラミックス)からなることが好ましい。耐熱衝撃温度差が300℃以上の材料(セラミックス)としては、炭化珪素(450℃)、窒化珪素(650℃)、ムライトコーディエライト耐火物(1000℃)、アルミナムライト系(350℃)、スポジュメン(700〜1000℃)を挙げることができる。
【0021】
さらにセッターは、上述のように、板状ガラスよりも大きい熱伝導率を有することが好ましい。ガラスの室温における熱伝導率は、一般に0.1〜10W/m・Kの範囲であり、この熱伝導率を考慮して、セッターは、室温における熱伝導率が1〜300W/m・Kの範囲であるものから適宜選択できる。セッターの室温における熱伝導率は、好ましくは1.5〜200W/m・Kの範囲である。この範囲にあって熱伝度率が比較的大きな材料としては、170W/m・Kの炭化珪素からなるファインセラミックス、比較的小さな材料としては2W/m・Kのムライトコーディエライト耐火物がある。
【0022】
板状ガラスが円板状の場合、直径が20〜150mm、板状ガラスの平面形状が方形の場合はその一辺が20〜500mm、厚みが10mm以下、0.5〜2mmの範囲にあることができるがこれらに限定されるものではない。また、本発明の製造方法は、板状ガラスの室温における熱伝導率が0.1〜10W/m・Kの範囲にある場合に好適に実施でき、室温における熱伝導率が0.8〜5W/m・Kの範囲にある板状ガラスについて特に好適に実施できる。
【0023】
本発明の製造方法では、セッターと板状ガラスとからなる積層物を1セットとして熱処理する。好ましくは、複数の積層物を順次、所定の温度に設定された加熱炉内を移動させて連続して熱処理を行なう。
またこの際、積層物の安定性(特に移送中の)を向上させる(積層物の倒壊防止の)ために、複数の積層物を上から見て面状に分布するように(縦横2列以上になるように)置き、これらの積層物の高さを揃え、加熱炉中の最高温度で長時間晒されても問題ない耐熱性板を複数の積層物上に載せることもできる。耐熱性板を載せることにより、横揺れに対して安定するとともに、複数の積層物全体の重心が積層物で囲まれた領域内に位置することになって安定した搬送を行なうことができる。
このように熱処理時には、必要に応じて積層物が崩れないように積層物全体を支持するなどしてもよい。ただし、セッターや板状ガラスの自重や、より上段の重量による荷重以外に、板状ガラスが反らないように、別途に荷重する必要はない。積層物を締め付けるなどの別途の荷重は、セッターを破壊する原因となるので、好ましくない。
【0024】
本発明のように板状のセッターと板状ガラスとを用い、好ましくはセッターの大きさを板状ガラスの大きさに近づけ、1枚のセッターと1枚の板状ガラスを交互に積層することにより、ガラスおよびセッターの外周部と中心部の温度差を低減できる。そのため、セッターに働く応力を低減でき、破損を防止できる。さらに、セッターによる熱伝導によりガラス中心部の加熱が十分行われ、積層物の中段付近のガラスでも、ガラスの反りの原因である表裏間の温度差を低減することができる。これにより、ガラスの反りを低減することができる。
本発明の製造方法は、結晶化処理温度が850℃よりも高温域であるガラスを結晶化する際に特に有効である。それは、セッターの破損及びセッターの破損による結晶化ガラスの形状の悪化は、より高温で顕著になるためである。
【0025】
(結晶化のための熱処理装置)
次に、上述したセッターと板状ガラスからなる積層物を結晶化のために熱処理するための装置について説明する。図1は、熱処理装置の概念図である。図の上方が結晶化のための熱処理を行う加熱炉であり、右側から積層物が投入され、左側から取り出される。加熱炉取り出された積層物は、円板状のセッターと円板状ガラス(結晶化ガラス)とを分別し、セッターは回収され、検査されて、再度投入される。その後、再度投入されたセッターと供給された円板状ガラスとは、装置の交互積層部において図2に示すように積層され、加熱炉に投入される。熱処理は、図2に示すように複数の積層物(図2では6つの積層物)を並行して同時に熱処理することが好ましい。
【0026】
積層されたガラスは、加熱炉中を搬送される過程で予備加熱、後述する分相工程、結晶化工程、冷却を経て結晶化ガラスとなる。加熱炉は積層物の搬送経路に沿ったものであり、上記の工程に応じた温度設定になっている。結晶化工程を行なう部分の炉内温度は、900℃であり、1000℃付近において積層物を水平状態に維持して搬送するため、ローラハースキルン方式を採用することが好ましい。ローラはセラミックスなどの耐火物で構成されており、炉内最高温度に長時間晒されていても十分な耐性を有する材料からなる。各ローラを回転させる駆動装置は、加熱炉の外部に設けられており、駆動装置からの動力は耐火性の部材により炉内のローラに伝達されるか、あるいはローラ端部が加熱炉の外部に出るようにして、端部に動力を伝えるようにすることができる。
【0027】
各ローラの間隔は、積層物を水平移動可能な間隔とする。ローラの間隔を狭くしておけば、積層物を直接、ローラ上に載せても傾くことなく、水平移動できるし、ローラの間隔を広くする場合は、ローラの間隔に比べて十分大きな耐火性板の上に積層物を載せて移動させることもできる。ローラハース方式は、メッシュベルトによる搬送と比較すると、ベルトの撓みがなく、積層物を水平に維持した状態で搬送できること、900℃以上という高温下での長時間使用にも十分耐えること、各ローラ間を通して下部からの加熱ができ、積層物のより均一な加熱ができるといったメリットがある。後述するように、情報記録媒体用基板として好適な結晶化ガラスは、原ガラスを900℃以上、より具体的な例としては1000℃付近で加熱して得られるものである。1000℃における加熱は、結晶化ガラスの結晶化工程としては比較的高温であり、搬送装置に求められる耐久性もより厳しい。ローラハース方式は、このような高温の結晶化炉として十分優れた性能を示すものである。加熱炉中での加熱源は積層物の搬送経路上部、下部、必要に応じて両側面に設けることができる。
【0028】
加熱源としては、気体燃料の燃焼(例えばガスバーナー)、液体燃料の燃焼、電気ヒーター、およびこれら加熱の併用、その他、公知のものを適宜用いることができる。また加熱炉内の雰囲気は不活性ガスを導入した雰囲気、空気などとすることができる。
結晶化されたガラスは積層状態で加熱炉外へと搬送され、取り出し部において結晶化ガラスとセッターに選別される。結晶化ガラスは研磨などの次の工程へと搬送され、セッターは交互積層部へと再導入され、再度、積層物を構成するために使用される。
上述した過程を繰り返すことにより、結晶化ガラスを量産することができる。加熱炉内でセッターが破損しないこと、分相工程、結晶化工程においてガラスの反りを低減し、平坦な板状の結晶化ガラスを得るために要する研削、研磨の量を最小限にすることにより、結晶化ガラス基板を生産性よく製造でき、研削、研磨により除去される材料も最小源に抑えることができるので、コスト、環境への負荷低減に役立つものである。
なお、装置全体のスペースの効率化、作業性向上のため、加熱炉の入口に交互積層部を、加熱炉出口に取り出し部を設け、積層物より結晶化ガラスから仕分けされたセッターが加熱炉に沿って、加熱炉内の積層物搬送方向とは逆方向に交互積層部へと戻るようにすることが好ましい。また、図1は円板状のガラスの結晶化について説明したが、円板状以外の平面形状のガラスについても同様に処理できる。
【0029】
(ガラスの分相工程と結晶化工程)
次に原ガラスを結晶化する過程(分相工程、結晶化工程)について、より詳細に説明する。ここでは、TiO2を結晶核生成剤として含有するガラス、例えば、MgO−(RO)−Al2O3−SiO2(R=アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba)、Zn及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種)系ガラスを、このガラスのガラス転移温度をTgと表した場合、(Tg−30℃)〜(Tg+60℃)、より好ましくはTg〜(Tg+60℃)の温度範囲、具体的には700〜850℃で熱処理してガラスを均質的に分相させた後に結晶化する過程を例にして説明する。このような結晶化過程により、高いヤング率を持つ結晶化ガラスが得られ、この結晶化ガラスを用いると、上記のように高いヤング率を有しかつ平均表面粗さが小さい主表面を有し、情報記録媒体用基板に適した結晶化ガラス基板が得られる。
【0030】
上記分相後のガラスを0.1〜10℃/分の昇温速度で結晶化のための温度(例えば、850〜1150℃)に昇温させることによって、高いヤング率を有する結晶化ガラスが得られ、この結晶化ガラスを用いて基板を作製することにより、上記高いヤング率を有しかつ平均表面粗さの小さい主表面を有し、情報記録媒体用基板に適した結晶化ガラス基板を提供することができる。
即ち、TiO2を含有するガラスを分相工程及び結晶化工程を経て結晶化ガラスとする際、分相工程が前記ガラスを上記範囲の温度で加熱することにより、高いヤング率を有するとともに、研磨加工等によって高い平滑性を有する表面を有する結晶化ガラスが得られる。
【0031】
上記の結晶化ガラスの製造工程において、加熱時間は約1−16時間であることができる。さらに、前記ガラスは、TiO2含有量が8モル%以上であることが適当である。また、前記ガラスは、TiO2を含有し、かつMgO、Al2O3及びSiO2の含有量の合計が80モル%以上であるMgO−Al2O3−SiO2系ガラス、及びMgO−RO−Al2O3−SiO2(R=アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、Ba)、Zn及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種)系ガラスであること、前記ガラスは、5モル%以下のアルカリ金属酸化物及び/又は5モル%以下のアルカリ土類金属酸化物を含有すること、または前記ガラスは、0.1〜5モル%のK2O及び/又は0.1〜5モル%のSrOを含有することができる。
さらに上記の方法では、結晶化工程が、分相工程で得られたガラスを10℃/分以下の昇温速度で850℃より高温かつ1200℃以下の温度範囲まで昇温し、当該温度範囲で約1−10時間熱処理することにより行われることが好ましい。
この方法により得られる結晶化ガラスは、主結晶相の結晶粒子サイズが10−100nmの範囲であり、波長600nmにおける透過率が40%以上である。
【0032】
出発原料となるガラスに含まれるTiO2は、結晶化ガラスの製造の過程で結晶核生成剤となる成分である。TiO2の含有量は、Tg+60℃以下の温度における熱処理(分相工程)において、ガラスが十分に分相し、結晶化工程において得られる結晶化ガラスの結晶粒子が所望の比較的小さな寸法になるという観点から、8モル%以上にすることが適当である。より小さい結晶粒子をガラスから析出させるためには、TiO2の含有量は、8.5モル%以上であることが好ましい。TiO2の含有量の上限は、15モル%であり、製造工程において溶解したガラスには成形可能な安定性が得られるという観点から12モル%以下である。
出発原料となるTiO2を含有するガラスは、例えば、TiO2を含有し、かつMgO、Al2O3及びSiO2の含有量の合計が80モル%以上であるMgO−Al2O3−SiO2系ガラス又はMgO−RO−Al2O3−SiO2(R=アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、Ba)、Zn及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種)系ガラスであることができる。これらTiO2を結晶核生成剤とするMgO−Al2O3−SiO2系ガラスやMgO−(RO)−Al2O3−SiO2系ガラスは、Tg付近で非常に分相しやすく、より低い温度での微分相を利用した微細な結晶構造をもつ結晶化ガラスの製造に適している。出発原料となるTiO2を含有するガラスとしては、前記米国特許5476821公報及び米国特許5491116公報に記載のガラスを挙げることができる。又は、SiO2:35-65モル%、Al2O3:5-25モル%、MgO:10-40モル%、SiO2+Al2O3+MgO≦80モル%、TiO2:5-15モル%、RO(R=アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba),Zn及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種):0-10モル%を含むガラスを挙げることができる。
出発原料となるTiO2を含有するガラスは、結晶化ガラスの所望の特性を損なわない範囲で、アルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O等)及び/又はアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO、SrO、BaO)等の成分を含んでもよい。出発原料となるTiO2を含有するガラスが上述のTiO2を含有するMgO−Al2O3−SiO2系ガラスである場合、アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土類金属酸化物をさらに含有することができる。また、出発原料となるTiO2を含有するガラスが上述のTiO2を含有するMgO−RO−Al2O3−SiO2系ガラスである場合、アルカリ金属酸化物をさらに含有することができる。当然のことながら、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物共に2種以上を併用することもできる。
アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土類金属酸化物は、ガラス原料として硝酸塩を使用できる。ガラス製造の際に脱泡剤としてSb2O3を使用するとガラス溶解用白金坩堝からガラスに白金が混入し易く、ガラス原料として硝酸塩を使用することにより、ガラスへの白金の混入を抑制することができる。アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量はそれぞれ0.1モル%以上であることが上記効果を得るという観点から好ましい。但し、アルカリ金属酸化物を含む場合、アルカリ金属酸化物はヤング率を低下させる傾向があることから、その含有量は5モル%以下とすることが適当である。又、アルカリ土類金属酸化物を含む場合、アルカリ土類金属酸化物は、結晶粒子を大きくする傾向があることから、その含有量は5モル%以下であることが適当である。アルカリ金属酸化物を含む場合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%、より好ましくは0.1〜1モル%のK2Oが好ましい。アルカリ土類金属酸化物を含む場合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%のSrOが好ましい。
上記の方法で製造した結晶化ガラスは、主結晶相として、エンスタタイト又はその固溶体及び/又は石英固溶体であるものを含む。
【0033】
結晶化ガラス製造のための各熱処理のプロセスについて以下に説明する。
ある程度の量のTiO2を含有するMgO−(RO)−Al2O3−SiO2(R=アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、Ba)、Zn又はNi)系ガラスは、Tg温度より高い温度で熱処理すると、TiO2に富むガラス相とSiO2に富む相の二つに分けられる。いわゆるガラスが分相となる(分相工程)。このようなガラスの分相は、結晶化ガラスの結晶種及び結晶粒子の大きさに大きな影響を与える。通常、TiO2に富む相はSiO2に富むガラス母体相に微粒子の形で分散している。TiO2に富む微粒子の大きさが小さければ小さいほどこの微分相粒子を核とする最終の結晶粒子の大きさが小さくなる。如何にこのような微分相粒子を小さく析出させるかが微細な結晶化ガラス作成のポイントとなる。
【0034】
分相工程前のアモルファス状態の成形されたガラス(原ガラス)に、分相のための熱処理を施した後、さらに昇温して更に高温で結晶処理を行う。結晶化処理した直径95mmの円板状のサンプルに研削加工を施し、CeO2やSiO2を用いて光沢研磨を行った。
表面粗さの測定は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面観察することによって行った。(Tg−30℃)〜(Tg+60℃)の温度範囲で分相のための熱処理した結晶化ガラスの表面粗さは0.5nm以下となる事が分かった。これはTg付近の温度範囲で分相処理したガラス中の結晶粒子の大きさが小さくなったことによるものである。表面粗さの小さい結晶化ガラスが得られるという観点から、分相のための熱処理は、好ましくは(Tg−30℃)〜(Tg+60℃)、より好ましくはTg〜(Tg+60℃)の温度範囲で行うことが適当である。具体的な数値範囲としては、700〜850℃の範囲が特に好ましい。
得られた結晶化ガラスの波長600nmでの透過率を求めたところ、上記温度範囲で分相処理した結晶化ガラスの透過率が高く、この温度範囲で分相処理して得られた結晶化ガラスの結晶粒子が小さいことが裏付けられた。
【0035】
上記の製造方法では、分相工程で得られたガラスを0.1〜10℃/分の昇温速度で結晶化工程における加熱温度に昇温することが好ましい。分相工程における処理温度から結晶化処理温度への昇温速度を10℃/分以下に抑えることによって、ガラスの変形をより低減することができる。通常の結晶化ガラスはより高い温度で分相のための熱処理が行われるので、処理中にガラスがすでに部分結晶化となっているため、昇温速度が速くても変形し難かった。しかし、この方法で分相のための熱処理したガラスには結晶粒子を含まず、昇温が速いとガラスが変形してしまう恐れがあるからである。10℃/分以下の遅い速度で昇温すると、昇温中に結晶粒子が徐々に析出するので、ガラスの変形をより抑えることができる。上記昇温速度は、好ましくは、1〜7℃/分の範囲である。より低い昇温速度は結晶粒子の均質化にも非常に有利である。
【0036】
このような方法により、結晶粒子の平均粒径が10〜100nmの範囲である結晶化ガラスを得ることが出来る。この方法で得られる結晶化ガラスは、結晶粒子の平均粒径が10〜100nmの範囲であるが、好ましくは結晶粒子の平均粒径は10〜70nmの範囲である。結晶粒子の平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0037】
また、この方法で得られる結晶化ガラスは、波長600nmにおける透過率が40%以上、さらに好ましくは50%であることができる。即ち、結晶粒子が小さい程この透過率は大きくなるため、この透過率は結晶粒子のおおよその大きさを推測するための指標とすることができる。但し、ガラスの組成によっては透過率に影響を及ぼす成分が含まれる場合があるので、結晶粒子の大きさと透過率の関係はガラスの組成によって若干異なる。
【0038】
結晶化のための熱処理を終えたガラスは、所望の形状に成形した後、さらに表面を研磨される。研磨方法については特に制限がなく、合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素などの合成砥粒や、天然ダイヤモンド、酸化セリウムなどの天然砥粒を用いて、公知の方法により研磨することができる。例えば、通常の研磨方法および装置でラッピングおよび酸化セリウムにてポリシング加工することによって、研磨面の表面粗さ(Ra)を0.1−0.5nmの範囲にすることができる。
【0039】
この方法で作成し、表面粗さ(Ra)が0.1−0.5nmの範囲である研磨面を有する結晶化ガラスは、磁気ディスク基板として必要な表面平滑性、平坦性などをすべて満足することができる。また、この結晶化ガラスは、従来のガラスに比べ約2倍以上の高いヤング率をもつので、ディスクの高速回転化によるたわみをより小さく抑えることができ、高TPI・高BPIハードディスク実現のための基板材料として好適である。
【0040】
次に本発明の応用例である実装基板の製造方法について説明する。まず、SiO2、Li2Oなどを含む板状ガラスにフォトリソグラフィ技術を用いて、穴開けなどガラスを除去したい部分に選択的に紫外線を照射する。次に紫外線照射済みの板状ガラスを熱処理(第1の熱処理)することによって紫外線照射部分に耐酸性の低いLi2O・SiO2相を析出させる。この板状ガラスをフッ酸でエッチングするとLi2O・SiO2相が析出した部分が選択的にエッチングされて所望の位置に所望の形状の加工が施された板状ガラスを得ることができる。このような微細加工された板状ガラスを本発明の方法によって熱処理(第2の熱処理)することによって、化学的安定性の高いLi2O・SiO2相が析出した結晶化ガラス基板を得ることが出来る。
【0041】
なお、このような方法によって得られる結晶化ガラスとしては、SiO2を60〜90モル%、Li2Oを5〜30モル%、Al23を1〜20モル%含有し、上記成分の合計含有量が85モル%以上であり、主結晶がクオーツ、二珪酸リチウム、クオーツの固溶体、二珪酸リチウムの固溶体からなる群より選ばれる少なくとも一種である結晶化ガラス、または上記成分に加えて、ZrO2、TiO2、P25、アルカリ土類金属酸化物の群より選ばれた少なくとも一種の酸化物を含む結晶化ガラスが好適である。なお必要に応じてAu、Ag、CeO2、ZnOなどを加えても良い。この場合第1の熱処理温度は後述する第2の熱処理温度よりも低く、第2の熱処理温度は820〜880℃で行うことが好ましい。なお、このガラスを原ガラスとして使用する場合も、大気中において第2の熱処理を行うことが可能であり、形状を適宜選択するだけで上述したセッターを同じものを使用することができる。
【0042】
この方法により、直径0.1mm程度の微細孔が位置決め形成された結晶化ガラス基板を得ることができ、第1、第2の熱処理による基板の変形は、長さ1cmあたり1μm以内の反りという極めて微小なものである。この結晶化ガラス基板はマイクロプロセッサなどの電子部品を実装するための実装基板、液晶パネル基板などに好適に用いることができる。結晶化後、基板は必要な大きさ、形状に切り分けることもできるし、研磨加工などを施すこともできる。
【0043】
次に、本発明の製造方法に用いられる結晶化ガラスの内、情報記録媒体用結晶化ガラス基板として好ましい結晶化ガラスを以下に示す。
(第1の結晶化ガラス)
まず、第1の結晶化ガラス(以下、結晶化ガラス1と記す)は、SiO2:35−65モル%、Al23:5−25モル%、MgO:10−40モル%、及びTiO2:5−15モル%を含有し、上記組成の合計が少なくとも92モル%以上であり、主結晶がエンスタタイト及び/又はその固溶体である結晶化ガラスである。上記結晶化ガラスとしては、主結晶相がエンスタタイトまたはエンスタタイトの固溶体であることが好ましい。また、モル比(Al23/MgO)をが0.5未満、より好ましくは0.2〜0.5とすることが適当である。
結晶化ガラス1は、TiO2成分を核形成剤とし、主結晶相がエンスタタイト及び/又はその固溶体であるSiO2−Al2O3−MgO系ガラスにおいて、モル比(Al2O3/MgO)を0.5未満とすることで、モル比(Al2O3/MgO)が0.5未満である組成を有し、140GPa以上の高いヤング率及び良好な表面平滑性及び優れた表面加工性を有し、液相温度が比較的低い情報記録媒体用基板に適した結晶化ガラスである。
【0044】
結晶化ガラス1は、高ヤング率などの特性及び均質な結晶性を保つという観点からSiO2、Al2O3、MgO、及びTiO2の合計を92%以上、好ましくは93%以上とする。SiO2、Al2O3、MgO、及びTiO2の合計は、好ましくは95%以上である。
上記範囲内であれば、上記以外の成分として、結晶化ガラスの所望の特性を損なわない範囲で、アルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O等)及び/又はアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO、SrO、BaO)等の成分を含んでもよい。アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土類金属酸化物は、ガラス原料として硝酸塩を使用できる。ガラス製造の際に脱泡剤としてSb2O3を使用するとガラス溶解用白金坩堝からガラスに白金が混入し易く、ガラス原料として硝酸塩を使用することにより、ガラスへの白金の混入を抑制することができる。アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量はそれぞれ0.1モル%以上であることが上記効果を得るという観点から好ましい。但し、アルカリ金属酸化物を含む場合、アルカリ金属酸化物はヤング率を低下させる傾向があることから、その含有量は5モル%以下とすることが適当である。又、アルカリ土類金属酸化物を含む場合、アルカリ土類金属酸化物は、結晶粒子を大きくする傾向があることから、その含有量は5モル%以下であることが適当である。アルカリ金属酸化物を含む場合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%、より好ましくは0.1〜1モル%のK2Oが好ましい。アルカリ土類金属酸化物を含む場合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%のSrOが好ましい。
【0045】
また、ガラスの均質化を図るために脱泡剤としてAs2O3及び/又はSb2O3を含有させることもできる。ガラスの組成により変化するの高温粘性に応じて、適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3をガラスに添加することで、より均質なガラスが得られる。但し、脱泡剤の添加量が多過ぎると、ガラスの比重が上昇してヤング率を低下させる傾向があり、また溶解用白金るつぼと反応してるつぼにダメージを与える場合もある。そこで、脱泡剤の添加量は2%以下、好ましくは1.5%以下とすることが適当である。
【0046】
以上の基本成分の他に原料中の不純物、例えばガラスの清澄剤となるCl、F、SO3等を本発明の結晶化ガラスの特性を損ねることのない、それぞれ1%以下であれば含有させることができる。
又、結晶化ガラス1は、ZnO及びNiOを含まないことが望ましい。ZnOは、硬い結晶であるスピネルを形成し易くさせるためである。またNiOは、スピネルを形成し易くさせるという観点からも環境に影響する成分であるという観点からも含有させることが望ましくない。
【0047】
結晶化ガラス1における主結晶相は、例えば、MgO・SiO2及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)である。また、エンスタタイトには、クリノエンスタタイト、プロトエンスタタイト及びエンスタタイトが包含される。さらに上記の結晶のほかチタン酸塩、ムライト、フォステライト、コージェライトなどその他の結晶を含むこともできる。エンスタタイトは、硬度が低いため(モース硬度5.5)、エンスタタイトを主結晶とする結晶化ガラスは非常に研磨がしやすく、比較的短い時間で所望の表面粗さを得ることができるという特徴がある。さらに、エンスタタイトは、その鎖状又は層状の結晶の形状から、そのすき間にガラス成分が入り込み、粒子サイズが小さくても高いヤング率が得られると考えられる。また、本発明のガラスは、実質的にスピネルを含まない。スピネルは、エンスタタイトと比較すると硬い結晶である(モース硬度8)であるため、研磨がしやすいという効果を損ねることが考えられる。また、本発明のガラスは、石英固溶体を実質的には含まない。
【0048】
尚、結晶化ガラス1に関して主結晶相とは、本発明の効果を得るために必須の結晶相であり、ガラス中の結晶(X線回折でその種類が特定可能な結晶)のうち50体積%以上含有されるものである。尚、本発明においては、多くの場合は、エンスタタイト及び/又はその固溶体が結晶のうち70体積%以上、又、場合によっては80体積%以上、さらには90体積%以上含有されるものである。また、結晶化ガラス1に関して、ガラス中の結晶の割合は、おおよそ20〜70%程度である。
【0049】
さらに、結晶化ガラス1に含まれる結晶のサイズ(粒径)の平均値は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。結晶化ガラス1に含まれる結晶のサイズの平均値は、最も好ましくは、50nm以下である。結晶サイズの平均値は0.5μmを超えると、ガラスの機械強度を低下させるだけでなく、研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラスの表面粗度を悪化させるおそれがある。このような結晶粒子のサイズの制御は、主に、含まれる結晶相の種類及び後述の熱処理条件によって行うことができるが、結晶化ガラス1における必須成分であるエンスタタイト及び/又はその固溶体の主結晶相が得られる熱処理条件において、上記したような微細な結晶のサイズを得ることが可能である。
【0050】
結晶化ガラス1及び結晶化ガラス1からなる基板は、積層物として熱処理すること以外、公知のガラスの製造方法を用いて製造することができる。例えば、高温溶融法、即ち所定の割合のガラス原料を空気中または不活性ガス雰囲気で溶解し、バブリングや脱泡剤の添加や撹拌などによってガラスの均質化を行い、周知のプレス法やダウンロード成形などの方法により板ガラスに成形し、その後、研削、研磨などの加工を施こすことで、所望のサイズ、形状のガラス成形品を得ることができる。得られたガラス成形品は、結晶化のための熱処理方法を施される。
【0051】
熱処理条件には特に制限はなく、結晶化促進剤の含有量やガラスの転移温度、結晶化ピーク温度などに応じて適宜選択することができる。但し、初期の段階で比較的低温度(例えば、700〜850℃)で熱処理して多数の結晶核を発せしめ、その後、温度を850〜1150℃に上げて結晶を成長させることが、結晶を微細化するという観点からは好ましい。結晶化ガラス1の製造に際しては、熱処理のスケジュール又はガラス組成を順次に変えることにより、析出結晶サイズや結晶量を制御することができ、それにより結晶化ガラスの特性を大幅に調整することができる。また、結晶化ガラス1に関して、同じヤング率や同じ結晶粒子の大きさまたは同じ結晶化均質性を有する結晶化ガラスを作製するための結晶核生成熱処理及び結晶成長熱処理の許容温度範囲は30℃以上の温度幅をもつので、結晶化の製造工程を容易に制御することができる。
【0052】
さらに、結晶化ガラス1に関して、熱処理によりMgO・SiO2の組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタタイト固溶体が主結晶として析出する熱処理条件とする。尚、これらの主結晶のほか、フォステライト、コージェライト、チタン酸塩、ムライトなどのその他の結晶が析出してもよいが、エンスタタイトやその固溶体が析出する条件を上述したように設定する。
熱処理を終えた結晶化ガラス1の成形品は、必要により研磨することができ、研磨方法については特に制限がない。例えば、合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素などの合成砥粒や、天然ダイヤモンド、酸化セリウムなどの天然砥粒を用いて、公知の方法により研磨することができる。
結晶化ガラス1からなる情報記録媒体用基板は、上記方法において、成形品を基板形状とすることで得ることができる。
【0053】
結晶化ガラス1からなる基板は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した平均粗さRaで10オングストローム以下の表面平滑性を有することが好ましい。特に結晶化ガラス1を磁気ディスク基板に用いる場合、表面の平均粗さRaは、磁気ディスクの記録密度に大きく影響する。表面粗さが10オングストロームを超えると、高記録密度化を達成しにくくなる。結晶化ガラス1からなる基板の表面粗さは磁気ディスクの高記録密度化を考慮すると、7オングストローム以下であることがより好ましく、5オングストローム以下であることがさらに好ましい。
【0054】
エンスタタイトやその固溶体を主結晶として含む結晶化ガラス1からなる基板は、高強度、高硬度、高ヤング率であり、かつ化学的耐久性や耐熱性が優れることから、磁気ディスク基板として有用である。さらに、結晶化ガラス1は、無アルカリ、又は低アルカリであるため、磁気ディスク基板とした場合でも、磁気膜と基板とのコロージョンを大いに低減することができ、磁気膜を最善に保つことができる。
【0055】
尚、ここで主結晶相とは、ガラス中の結晶(X線回折でその種類が特定可能な結晶)のうち50体積%以上含有されるものである。この結晶化ガラスは、多くの場合、エンスタタイト及び/又はその固溶体が結晶のうち70体積%以上、又、場合によっては80体積%以上、さらには90体積%以上含有されるものである。また、この結晶化ガラスにおいて、ガラス中の結晶の割合は、おおよそ20〜70%程度である。
【0056】
この態様の結晶化ガラス1からなる基板においては、結晶化ガラスに含まれる結晶のサイズ(粒径)の平均値(結晶粒子の平均粒子径)は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。結晶化ガラスに含まれる結晶のサイズの平均値は、最も好ましくは、50nm以下である。結晶サイズの平均値は0.5μmを超えると、ガラスの機械強度を低下させるだけでなく、研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラスの表面粗度を悪化させるおそれがある。このような結晶粒子のサイズの制御は、主に、含まれる結晶相の種類及び後述の熱処理条件によって行うことができるが、結晶化ガラス1の必須成分であるエンスタタイト及び/又はその固溶体の主結晶相が得られる熱処理条件において、上記したような微細な結晶のサイズを得ることが可能である。
【0057】
この態様の結晶化ガラス1からなる基板は、ヤング率が140GPa以上であることが高速回転基板として好ましい。また、主結晶相として石英固溶体を実質的に含有しないこと、及び結晶相としてスピネルを実質的に含有しないことが好ましい。スピネルは、エンスタタイトと比較すると硬い結晶である(モース硬度8)であるため、研磨しにくく、表面粗さRaが10オングストローム以下である研磨面が得られにくい。
【0058】
結晶化ガラス1からなる磁気ディスク基板は、磁気ディスク基板として必要な表面平滑性、平坦性、強度、硬度、化学耐久性、耐熱性などをすべて満足することができる。また、高いヤング率をもつので、ディスクの高速回転化によるたわみをより小さく抑えることができ、高TPIハードディスクの実現のため基板材料として好適である。
結晶化ガラス1は、耐熱性、表面平滑性、化学耐久性、光学的性質及び機械的強度に優れているので、磁気ディスク等の情報記録媒体用基板や光磁気ディスク用のガラス基板や光ディスクなどの電子光学用ガラス基板として好適に使用できる。
【0059】
(第2の結晶化ガラス)
次に、情報記録媒体用結晶化ガラス基板として好ましい第2の結晶化ガラス(以下、結晶化ガラス2と記す)について説明する。
結晶化ガラス2には、SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相がα−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含むもの (以下、結晶化ガラス2(1)と記す。)、
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、α−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、α−石英固溶体、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量%以上であるもの(以下、結晶化ガラス2(2)と記す。)、
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、かつ比重が2.9以上であるもの (以下、結晶化ガラス基板2(3)と記す。)、
SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、石英系結晶、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量%以上であり、かつ比重が2.9以上であるもの(以下、結晶化ガラス2(4)と記す。)がある。
上記結晶化ガラス2(1)〜2(4)においては、SiO2+Al2O3 が58-80モル%の範囲であること、MgO/(SiO2+Al2O3) が0.125-0.55の範囲であること、ZrO2を0-4モル%含有すること及びY2O3を0.1−5モル%含有することができる。
【0060】
さらに結晶化ガラス2にはSiO2+Al2O3 が58-80モル%の範囲であり、MgO/(SiO2+Al2O3) が0.125-0.55の範囲であり、主結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、かつ比重が2.9以上であるもの(以下、結晶化ガラス基板2(5)と記す。)、
SiO2+Al2O3 が58-80モル%の範囲であり、MgO/(SiO2+Al2O3) が0.125-0.55の範囲であり、結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、石英系結晶、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量%以上であり、かつ比重が2.9以上であるもの(以下、結晶化ガラス2(6)と記す。)がある。
【0061】
結晶化ガラス2(5)及び2(6)においては、ZrO2を0-4モル%含有すること及びY2O3を0.1−5モル%含有することができる。
結晶化ガラス2(1)〜2(6)は、ヤング率が110GPa以上であり、熱膨張係数が90×10-7/℃以上であることができ、また結晶相の結晶粒子径が10〜1000nmの範囲であることができる。
【0062】
結晶化ガラス2結晶化は、SiO2、Al2O3 、MgO及び TiO2を含有する原ガラスを核生成熱処理工程及び結晶化処理工程を経て行われる。核生成熱処理工程は760〜840℃の温度範囲で、かつ結晶化処理工程は950℃〜1150℃の温度範囲で行われる。
結晶化ガラス2の高ヤング率結晶化ガラスは、例えば、高剛性のエンスタタイト(又その固溶体)結晶と高膨張のα−石英固溶体結晶または石英系結晶を主結晶相として含むものである。
【0063】
結晶化ガラス2は110GPa以上のヤング率、及び90×10-7/℃以上の熱膨張係数をもち、MgO-Al2O3-SiO2系ガラスにおいて、TiO2を必須成分として含有させた原ガラスを適当な温度範囲で熱処理することによりα−石英固溶体または石英系結晶やエンスタタイトなどの微細な結晶粒子を析出でき、110〜180GPaの範囲の高いヤング率をもち、かつ90×10-7/℃以上の高い熱膨張係数を有し、容易に成形することができる結晶化ガラスであり、しかも得られた結晶化ガラス2からなる基板は容易に研磨加工することができる。
【0064】
α−石英固溶体は、比較的高い熱膨張係数を有する(α−石英固溶体:約150×10-7/℃、β−石英固溶体:約−5×10-7/℃、エンスタタイト:約78×10-7/℃、スピネル:約88×10-7/℃)。また、エンスタタイトは、その鎖状又は層状の結晶の形状から、そのすき間にガラス成分が入り込み、粒子サイズが小さくても高いヤング率が得られると考えられる。このような高膨張のα−石英固溶体とエンスタタイト及び/又はその固溶体を主結晶相とすることにより、高いヤング率及び高い熱膨張係数の結晶化ガラスを得ることができたものと考えられる。
【0065】
なお、上記の成分の他に、所望の特性を損なわない範囲でLi2O、Na2O、K2O、CaO、SrO、BaO、Fe2O3、Ga2O3、B2O3、P2O5、Nb2O5、Ta2O5及びLa2O3等の希土類金属酸化物成分を5%まで、結晶化ガラス2に添加しうる。しかし、これらの成分は著しくガラスのヤング率を低下させたり、主結晶の析出を阻害したりするので、その導入量を5%以下に抑えることが望ましい。さらに、ガラスの生産性のことを考慮すると、その含有量は4%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
As2O3とSb2O3は元のガラスの均質化を図るために脱泡剤として添加される成分である。各ガラスの高温粘性に応じて適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3をガラスに添加するともっと均質なガラスが得られる。しかし、これらの脱泡剤の添加量が多くなり過ぎるとすると、ガラスの比重が上昇してヤング率を低下させる傾向があり、また溶解用白金るつぼと反応して、るつぼにダメージを与える恐れもある。そこで、ので、As2O3+Sb2O3の添加量は2%以下とすることが好ましい。特にAs2O3+Sb2O3の添加量は1.5%以下であることが好ましい。
【0067】
結晶化ガラス2(1)における主結晶相は、例えば、MgO・SiO2及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)結晶相、またはα-石英固溶体若しくは石英系結晶を含む。エンスタタイトは含まず、エンスタタイト固溶体のみを含む場合もある。また、エンスタタイトには、クリノエンスタタイト、プロトエンスタタイト及びエンスタタイトが包含される。α−石英固溶体は、例えば、2MgO・2 Al2 O3・5SiO2、MgO・ Al2 O3・3SiO2及びMgO・ Al2 O3・3SiO2 から選ばれることができる。
【0068】
尚、結晶化ガラス2(1)に関して主結晶相とは、必須の結晶相であり、ガラス中の結晶(X線回折でその種類が特定可能な結晶)のうち他の結晶相に比べて多い結晶である。結晶化ガラス2において、主結晶であるα−石英固溶体及びエンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)の合計は50体積%以上である。
また、結晶化ガラス基板2(2)においては、例えば、MgO・SiO2及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)結晶相及びα−石英固溶体を合計で50体積%以上含有する。
【0069】
結晶化ガラス2(3)〜2(6)においては、結晶相として、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶、並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含む。さらにこの結晶化ガラスは、比重が2.9以上であることができる。結晶化ガラス2(3)及び2(5)においては、石英系結晶、並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を主結晶相として含む。この場合の主結晶相とは、必須の結晶相であり、ガラス中の結晶(X線回折でその種類が特定可能な結晶)のうち他の結晶相に比べて多い結晶である。また、結晶化ガラス2(4)及び2(6)においては、石英系結晶、並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を50体積%以上含有する。
【0070】
また、結晶化ガラス基板2(3)〜2(6))は、比重が2.9以上である。X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶は、石英の結晶系をほぼ維持しつつ、その他の酸化物分子を固溶しているものと考えられ、そのため、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される。また、このため、石英系結晶の代わりに石英結晶を含む結晶化ガラスと比較すると比重が大きい2.9以上である。結晶化ガラス2(3)〜2(6)の比重の上限は約3.5である。結晶化ガラス2(3)〜2(6)は、概ね、3.0〜3.2の間の比重を有する。
【0071】
さらに上記の主結晶相のほか少量のスピネル、ムライト、フォステライト、コージェライト、チタン酸塩などその他の結晶を含むこともできる。チタン酸塩はエンスタタイト及びα-石英固溶体または石英系結晶の結晶核として作用し得る。
結晶化ガラス2は、例えば、α-石英固溶体または石英系結晶が約40体積%、エンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)が約25−30体積%、チタン酸塩が約10−15体積%であることができる。
【0072】
また、結晶化ガラス2において、ガラス中の結晶の割合は、おおよそ20%以上であることが好ましい。但し、ガラス中の結晶の割合が80%を超えると結晶の粒子径が大きくなりやすく好ましくない。ガラス中の結晶の割合は、40〜80%、特に45〜80%の範囲であることが好ましい。
さらに、結晶化ガラス2に含まれる結晶(エンスタタイト、その固溶体及び/またはα-石英固溶体若しくは石英系結晶)の平均粒子径は10〜1000nm範囲にあることが好ましい。より好ましくは10〜700nmの範囲である。結晶サイズの平均値が、1000nm(1μm)以下であることで、ガラスの機械強度を低下させることなく、かつ研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラスの表面粗度を悪化させることもない。
【0073】
結晶化ガラス2の製造方法は、積層物を熱処理すること以外、特に限定されず、各種ガラス製造方法を用いることができる。例えば、高温溶融法、即ち所定の割合のガラス原料を空気中や不活性ガス雰囲気で溶解し、バブリングや脱泡剤の添加や撹拌などによってガラスの均質化を行い、成形方法としては、周知のプレス法、フロート法やダウンドロー成形などの方法により板ガラスに成形することができる。結晶化ガラス2から基板を得るには、板状ガラスに成形した後、研削、研磨などの加工が施され、所望のサイズ、形状のガラスとされる。
成形品の熱処理条件には特に制限はなく、結晶化促進剤の含有量やガラスの転移温度、結晶化ピーク温度などに応じて選択することができる。例えば、初めに比較的低い温度で熱処理して多数の結晶核を発せしめた後、温度を上げて結晶を成長させることが、微細な結晶を得る上で好ましい。本発明においては、熱処理条件を制御することにより結晶粒子径が10〜1000nm範囲にあるエンスタタイト及び/またはα-石英固溶体若しくは石英系結晶を含む結晶化ガラスが得られる。
【0074】
また、結晶化ガラス2においては、熱処理によりエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体及びα−石英固溶体若しくは石英系結晶が主結晶相として、または50体積%以上析出する熱処理条件とする。尚、これらの主結晶のほか、スピネル、ムライト、フォステライト、コージェライト、チタン酸塩などのその他の結晶が析出してもよいが、上記の主結晶相が析出する条件を設定する。そのような条件としては、ガラスの組成に応じて、核生成熱処理(一次熱処理)の条件として760〜840℃の温度範囲で1〜8時間、その後に行う結晶化処理(二次熱処理)の条件として950℃〜1150℃の温度範囲で1〜6時間から、適宜設定することができる。特に、核生成熱処理条件は、得られる主結晶相に影響を及ぼすと考えられる。即ち、核生成熱処理(一次熱処理)が低すぎると、結晶化処理(二次熱処理)においてα−石英固溶体(または石英系結晶)が得られにくい。核生成熱処理(一次熱処理)の条件としては好ましくは800〜840℃、より好ましくは810〜830℃の温度範囲である。結晶化処理(二次熱処理)の条件としては好ましくは1010℃〜1140℃の温度範囲、より好ましくは1030℃〜1120℃の温度範囲である。結晶化処理(二次熱処理)の温度が低いと、例えば、β−石英固溶体がα−石英固溶体に相転移しにくい場合があり、所望の結晶相が得られにくくなる。
【0075】
熱処理を終えた板状結晶化ガラスの研磨方法については特に制限がなく、合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素などの合成砥粒や、天然ダイヤモンド、酸化セリウムなどの天然砥粒を用いて、公知の方法により研磨することができる。例えば、通常の研磨方法および装置でラッピングおよび酸化セリウムにてポリシング加工することによって、表面粗さ(Ra)を0.1−1.0nmの範囲にすることができる。
【0076】
結晶化ガラス2を磁気ディスク基板に用いると、磁気ディスク基板として必要な表面平滑性、平坦性、強度、硬度、化学耐久性、耐熱性などをすべて満足することができる。また、従来のアルミ基板に比べ、約1.5倍以上の高ヤング率をもつので、ディスクの高速回転化によるたわみをより小さく抑えることができ、高TPIハードディスクの実現のための基板材料として好適である。結晶化ガラス2に含まれる析出結晶径や結晶量は、熱処理のスケジュール又はガラス組成を順次に変えることにより制御することができる。結晶化ガラスに含まれる析出結晶径や結晶量を変化させることで、結晶化ガラスの特性を大幅に調整することができる。
【0077】
(磁気記録媒体について)
次に、磁気記録媒体を例に本発明の情報記録媒体の実施の形態について説明する。
本発明の情報記録媒体は、本発明の基板と、該基板上に形成された記録層とを有するものである。以下、本発明の結晶化ガラスからなる基板の主表面に、少なくとも磁性層を形成した磁気ディスク(ハードディスク)ものについて説明する。
性層以外の層としては、機能面から、下地層、保護層、潤滑層、凹凸制御層などが挙げられ、必要に応じて形成される。これらの各層の形成には各種薄膜形成技術が利用される。磁性層の材料は特に制限されない。磁性層としては、例えば、Co系の他、フェライト系、鉄−希土類系などが挙げられる。磁性層は、水平磁気記録、垂直磁気記録のいずれの磁性層でもよい。
【0078】
磁性層としては、具体的には、例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCrやCoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtSiO などの磁性薄膜が挙げられる。また、磁性層を非磁性層で分割してノイズ低減を図った多層構成としてもよい。
磁性層における下地層は、磁性層に応じて選択される。下地層としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Alなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料、又はそれらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等からなる下地層等が挙げられる。Coを主成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。下地層は単層とは限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とすることもできる。例えば、Al/Cr/CrMo、Al/Cr/Cr等の多層下地層等が挙げられる。
【0079】
また、基板と磁性層の間又は磁性層の上部に、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着することを防止するための凹凸制御層を設けてもよい。この凹凸制御層を設けることによって、磁気ディスクの表面粗さは適度に調整されるので、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着することがなくなり、信頼性の高い磁気ディスクが得られる。凹凸制御層の材料及び形成方法は多種知られており、特に制限されない。例えば、凹凸制御層の材料としては、Al、Ag、Ti、Nb、Ta、Bi、Si、Zr、Cr、Cu、Au、Sn、Pd、Sb、Ge、Mgなどから選ばれる少なくとも一種以上の金属、又はそれらの合金、あるいは、それらの酸化物、窒化物、炭化物等からなる下地層等が挙げられる。形成が容易であるという観点からは、Al単体やAl合金、酸化Al、窒化AlといったAlを主成分とする金属であることが望ましい。
また、ヘッドスティクションを考慮すると、凹凸形成層の表面粗さは、Rmax=50〜300オングストロームであることが好ましい。より好ましい範囲は、Rmax=100〜200オングストロームである。Rmaxが50オングストローム未満の場合、磁気ディスク表面が平坦に近いため、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着し、磁気ヘッドや磁気ディスクが吸着し、磁気ヘッドや磁気ディスクが傷ついてしまったり、吸着によるヘッドクラッシュを起こすので好ましくない。また、Rmaxが300オングストロームを超える場合、グライド高さ(グライドハイト)が大きくなり記録密度の低下を招くので好ましくない。
尚、凹凸制御層を設けずに、結晶化ガラス基板表面に、エッチング処理やレーザー光の照射等の手段で凹凸を付け、テクスチャリング処理を施してもよい。
【0080】
保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合金膜、炭素膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げられる。これらの保護膜は、下地層、磁性層等とともにインライン型スパッタ装置等で連続して形成できる。また、これらの保護膜は、単層としてもよく、あるいは、同一又は異種の膜からなる多層構成としてもよい。上記保護層上に、あるいは上記保護膜に替えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、上記保護層上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2)膜を形成してもよい。この場合、保護膜と凹凸制御層の両方の機能を果たす。
潤滑層としては多種多様な提案がなされているが、一般的には、液体潤滑剤であるパーフルオロポリエーテルをフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディッピング法、スピンコート法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じて加熱処理を行って形成する。
以上のようにして、情報記録媒体を生産性よく製造することができる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明する。
実施例1〜12
表1には実施例1〜12のガラス組成をモル%(または重量%)で示すとともに、結晶化条件、得られた結晶化ガラスの特性等を示した。なお、表1に記載の組成は原料の組成であるが、各実施例の結晶化ガラス組成を分析し、比較した結果、両者の差は±0.1モル%以内であり、表1の原料ガラス組成は結晶化ガラス組成と実質的に同じである。各実施例で使用したガラスを溶解する際の出発原料としては、SiO2、Al2O3、Al(OH)3、MgO、Y2O3、TiO2、ZrO2、KNO3などを用いて表1に示した所定の割合に250−300g秤量し、十分に混合して調合バッチと成し、これを白金るつぼに入れ、1550℃で攪拌しながら空気中4−5時間ガラスの溶解を行った。熔融後、ガラス融液を金型で円盤形状にプレス成形し、ガラスの転移点温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニールして炉内で室温まで放冷した。得られたガラスは顕微鏡で観察できる結晶が析出しなかった。
【0082】
この円板状ガラスに研削、研磨を施して直径85mm、厚みが2.0mmの板状ガラスとした。実施例1〜3、7〜9については、このような板状ガラスを20枚、Al23及びSiO2を含むムライトコーディエライトセラミックス(例えば、Al23とSiO2の合量が95重量%以上占めるセラミックスで熱伝導率2W/m・K)からなる耐火性のセッター(直径90mm、厚み5.0mmの円盤形状)を21枚用意し、加熱処理装置の交互積層部で、セッター、板状ガラスの順に交互に積層して20段の積層物を構成した。このような積層物を複数、形成し、加熱炉中のローラ上に載せて搬送しつつ、加熱を行なった。
実施例4〜6、10〜12については、上記セッターの代りに、炭化珪素からなるファインセラミックスからなるセッター(熱伝導率170W/m・K)を用いて結晶化を行った。
【0083】
なお、ローラ上には複数の積層物が隊列を組むように置き、その上に耐熱性の板を載せて、積層物を安定に搬送できるようにしてもよい。
積層物がローラを搬送する過程での加熱炉内の温度変化は次の通りである。表1に示した条件で、第一次熱処理、第二次熱処理を行った後、炉内で室温まで冷却することによって結晶化ガラスを作製した。
得られた板状結晶化ガラスの反りは、3〜14nmとすべて20nm以下であった。また結晶化処理に使用したセッターはすべて破損せず、再度使用可能な状態であった。
【0084】
一方、上記のものと材質は同じで主表面が400mm角の正方形のセッターを用いて直径80mmの円板状ガラスを4枚、セッターに載せ、その上にセッターを載せるとういように、次とセッターを交互に載せて20段に積層したもので同様の結晶化処理を行ったところ、セッターが破損し、セッターの再利用ができないばかりでなく、破損したセッターを生産ラインから除去しなければならないので、生産性が低下してしまった。また、得られた結晶化ガラスには割れているものが有った。
また、セッターを介さないで板状ガラスを直接積層した場合は、ガラス同士が融着してしまい、所望形状の板状結晶化ガラスを得ることができなかった。
得られた板状結晶化ガラスを研磨、加工してヤング率、比重の測定サンプルとした。ヤング率の測定は超音波法で行われた。測定で得られたデータをガラスの組成と共に表1に示した。
【0085】
【表1】
Figure 0004430806
【0086】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜12の結晶化ガラスはヤング率(130GPa以上)や比弾性率(40-60MNm/kgの範囲)などの強度特性が大きい。そのため、これらのガラスを磁気記録媒体等の情報記録媒体用基板として使用した場合、このガラス基板が高速回転しても、基板に反りやブレが生じにくく、より基板の薄型化にも対応できることが分かる。また、熱処理前のガラスについて液相温度を測定したところ、それぞれ1300℃付近であり、ガラスの溶融及び成形の面から要求される液相温度(例えば1350℃以下)を満足するものであった。また、各実施例の結晶化ガラスについて、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて結晶粒子の平均粒径を測定したところ、表1に示す平均粒径が得られていることがわかった。また、表面粗さ測定用に光学ガラス研磨を施したサンプルの研磨面について、原子間力顕微鏡(AFM)による表面観察を行った結果、表面粗さ(Ra)は表1に示す通りであった。これらの結晶化ガラスの表面粗度(Ra)は、例えば、合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化セリウムなどの研磨剤を用いる通常の光学ガラスの研磨法で5オングストローム以下に研磨することができる。そのため、平坦性に優れた基板を得ることができ、磁気ヘッドの低浮上化を図ることを目的とする磁気記録媒体用ガラス基板として有用である。本実施例の結晶化ガラスはいずれも、厚さ1mmの場合、波長600nmでの透過率が50%以上であり、ある程度透明性があった。かかる透明性は、所望の結晶種、結晶粒径が得られているかの指標にもなり得る。本発明の結晶化ガラスの場合、上記透過率は、例えば、60〜90%になり得る。
【0087】
以上のことから、磁気記録媒体用基板として使用するためには、上述した物理的、熱的或いは機械的性質が優れていることが好ましく、上記実施例で得られた本発明の高ヤング率を有する結晶化ガラスが非常に有用であることが分かる。次に、実施例1で得られた結晶化ガラス基板を用い、その主表面上に磁気記録層を含む多層膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
【0088】
実施例1〜12として示したように、本発明の製法によればセッターの破損を低減し、多数回、繰り返して使用できるので、コスト低減が図られる。また結晶化装置内のセッター破片を除去する必要もなくなるので、生産ラインを止める頻度も大幅に緩和され、生産性を向上させることができる。なお、上述したAl2O3-SiO2系コーディエライトセラミックスや炭化珪素からなるファインセラミックスのセッター以外のセッターを、発明の実施の形態の説明に従って、使用しても良好な結果が得られた。
さらに、従来の方法と比べ、得られる板状結晶化ガラスの反りを低減できるので、結晶化処理後、結晶化ガラスを平坦にするための研削、研磨加工の負担を軽減することができる。
【0089】
実施例13
SiO2を70モル%、Li2Oを14モル%、Al23を8モル%、ZnOとアルカリ金属酸化物の合量が7モル%、残りが金、銀、CeO2、Sb23からなるガラスを平面形状が1辺500mmの正方形の形状に成形してガラス板を得た。このガラス板の主表面にフォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターンを形成し、レジスト開口部を通して選択的に紫外線の照射を行った。紫外線照射後、レジストパターンを除去し、第1の熱処理を行って、紫外線照射部分にLiO2・SiO2相を析出させた。次に、このガラス板をフッ酸でLi2O・SiO2相が析出した部分を選択的にエッチングして直径100mmの微細な穴を、所定に位置に形成した。このような板状ガラスを20枚作製した。
【0090】
次に、平面形状が一辺504mmの正方形のセッターを21枚用意し、セッターの周縁部と板状ガラスの周縁部の間隔が2mmとなるように、セッターの真中に板状ガラスがはみ出さないように載せて、セッター、ガラス、セッター、…と交互に積層物を形成した。この積層物をローラハースキルン方式の加熱炉を通過させながら加熱して板状ガラスを結晶化させた。セッターとして、炭化珪素製セラミックス、窒化珪素製セラミックス、ムライトコディエライト耐火物、アルミナ製ファインセラミックスなど各種材料を用いたが何れの場合も、セッターの破損は見られず、結晶化ガラス基板の反りは長さ1cmあたり、1μm以内と非常に小さいものであった。なお、セッターの大きさを520mm×520mm、540mm×540mm、560mm×560mmと大きくして上記大きさの板状ガラスの結晶化を行ったが何れの場合もセッターの破損は見られず、基板の反りも上記範囲内に納まっており、良好な結果が得られた。
次に板状ガラスの一辺の長さを100mm、セッターの一辺の長さを120mmとした以外は、上記結晶化処理と同じ条件で、板状ガラスの結晶化を行ったところ、セッターの破損は認められず、長さ1cmあたりの反り量1μm以下であった。
次にセッターの一辺の長さを140mmにした場合と160mmとした場合で、同様の処理を行ったところ、いずれも上記の結果と同様、良好な結果がえら得れた。
このようにして得られた結晶化ガラス基板にマイクロプロセッサを実施して実装基板として使用可能なことを確認した。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高い生産性のもと、基板材料の反り低減が可能な円板状結晶化ガラスの製造方法、および結晶化ガラス基板の製造方法、ならびにこの方法で得られた基板上に、情報記録層を形成して情報記録媒体を作製する情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の実施に使用される熱処理装置の一例の概念図。
【図2】積層物の説明図、及び複数の積層物の配置の説明図。

Claims (20)

  1. 板状ガラスを板状部材(以下、セッターという)の間に1枚づつ、前記板状ガラスが前記セッターからはみ出さないように挟み込んだ複数の積層物を加熱炉内を移動させて熱処理して、前記板状ガラスを結晶化することを特徴とする結晶化ガラスの製造方法であって、
    前記複数の積層物を、上から見て面状に分布するように置き、該複数の積層物の高さを揃えるとともに耐熱板を前記複数の積層物上に載せた状態で前記加熱炉内を移動させる、前記製造方法。
  2. 板状ガラスを板状部材(以下、セッターという)の間に挟み込んだ複数の積層物を形成し、前記複数の積層物を加熱炉内を移動させて熱処理して板状ガラスを結晶化する結晶化ガラスの製造方法であって、
    前記セッターの主表面から板状ガラスがはみ出さないように、かつ板状ガラスの周縁部に沿って、セッターの周縁部と板状ガラスの周縁部の距離が30mm以内になるように積層物を形成し、
    前記複数の積層物を、上から見て面状に分布するように置き、該複数の積層物の高さを揃えるとともに耐熱板を前記複数の積層物上に載せた状態で前記加熱炉内を移動させることを特徴とする結晶化ガラスの製造方法。
  3. 前記積層物の高さは、50〜300mmの範囲である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記板状ガラス及びセッターの平面形状が円形または方形である請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記積層物がn枚の板状ガラス(nは1以上の整数である)をn+1枚のセッターの間毎に1枚づつ挟み込んだものである請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. セッターはセラミックス製である請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. セッターは耐熱衝撃温度差が300℃以上の材料からなる請求項に記載の製造方法。
  8. セッターは板状ガラスよりも大きい熱伝導率を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 熱処理を大気中で行う請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記熱処理時における処理対象物の最高到達温度が850℃以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記熱処理時における処理対象物の最高到達温度が800℃以上であり、かつ前記熱処理を大気中で行う請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 板状ガラスが水平を維持した状態で板状ガラスとセッターとの積層物の熱処理を行う請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 前記積層物の1つまたは2つ以上を耐熱板上に載置し、板状ガラスの水平状態を保ちつつ加熱領域に移送することにより前記熱処理を行うことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
  14. 耐熱性ローラを備えたローラハース方式の移送手段により前記移送を行うとともに、少なくとも前記ローラ下方とローラ上に載置された積層物の上方より前記積層物の加熱を行う請求項12または13に記載の製造方法。
  15. SiO2を35−65モル%、Al23を5−25モル%、MgOを10−40モル%、及びTiO2を5−15モル%含有し、上記組成の合計が少なくとも92モル%以上であり、主結晶がエンスタタイト及び/又はその固溶体である結晶化ガラスを得ることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. SiO2を60−90モル%、Li2Oを5−30モル%及びAl23を1−20モル%含有し、上記組成の合計が少なくとも85モル%以上であり、クォーツ、二珪酸リチウム、クォーツの固溶体、二珪酸リチウムの固溶体からなる群から選ばれる少なくとも1種の主結晶を含む結晶化ガラスを得ることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  17. 板状ガラスがTiO2を含有するガラスからなり、前記ガラスの転移温度をTgとしたときに、前記熱処理工程が、前記板状ガラスを(Tg−30℃)乃至(Tg+60℃)の温度範囲に加熱してガラスを分相させる分相工程と、前記分相工程より高温に前記板状ガラスを加熱して結晶化させる結晶化工程を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の方法により結晶化ガラスを得ること、および、得られた結晶化ガラスの主表面を平坦に研削、研磨して基板を形成することを特徴とする結晶化ガラス基板の製造方法。
  19. 請求項18に記載の方法により結晶化ガラス基板を得ること、および、得られた結晶化ガラス基板の主表面に情報記録層を形成することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
  20. 請求項18に記載の方法により結晶化ガラスを得ること、および、得られた結晶化ガラス基板の主表面に磁気記録層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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