JP2001325718A - 情報記録媒体用基板および情報記録媒体 - Google Patents

情報記録媒体用基板および情報記録媒体

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JP2001325718A
JP2001325718A JP2001065096A JP2001065096A JP2001325718A JP 2001325718 A JP2001325718 A JP 2001325718A JP 2001065096 A JP2001065096 A JP 2001065096A JP 2001065096 A JP2001065096 A JP 2001065096A JP 2001325718 A JP2001325718 A JP 2001325718A
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crystal
crystallized glass
mol
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JP2001065096A
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Gakuroku Suu
学禄 鄒
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Hoya Corp
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Hoya Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】摺動信頼性に優れ、高記録密度化が可能な表面
性状を有するとともに、高剛性を有する情報記録媒体用
結晶化ガラス基板を提供すること、及びこの基板を用い
た情報記録媒体を提供すること。 【解決手段】非晶質であるガラスの連続相中に結晶粒子
が分散する結晶化ガラスからなる基板であって、この基
板の少なくとも主表面に前記結晶粒子の一部が、前記連
続相から部分的に突出して存在する情報記録媒体用結晶
化ガラス基板。前記突出して存在する結晶粒子の粒径が
1000nm以下であり、かつ前記主表面に突出して存在し、
記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与する結晶粒子の面
密度が106個/mm2を超えかつ109個/mm2以下である。上記
結晶化ガラス基板を用いた磁気記録媒体のような情報記
録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高剛性・高平滑性
の情報記録媒体用基板およびこの基板を用いた情報記録
媒体に関する。特に、本発明の基板を用いた磁気ディス
クは、磁気ヘッドに対して粘着を起こしにくく、耐摺動
信頼性及びヘッド浮上特性に優れており、さらに本発明
の基板は低コストな磁気ディスクを製造するのに好適な
基板である。
【0002】
【従来の技術】従来、薄膜磁気ディスク用基板表面は、
ヘッドとの粘着防止などの要求から鏡面であるよりむし
ろ適度な粗さが必要とされてきた。基板表面に適度な粗
さを付与する方法としては、例えば、Al/NiPのNiP表面
にテクスチャーと呼ぶ同心円状溝を機械加工する方法
や、下地めっき膜中に微粒子を分散させる方法等の様々
な方法が考案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】例えば、Al/NiP基板の
境面研磨表面に下地Cr膜、磁気膜媒体、保護膜、潤滑油
膜を形成した磁気ディスクでは、ヘッドの停止時におい
て、ディスクとヘッドの接触面に潤滑油や水分が集ま
り、ヘッド粘着現象を生じてしまう。そのため、ディス
クの回転不能やヘッドの保持機構部品の破壊や変形を生
じ、問題となる。そこで、Al/NiP研磨表面に同心円状の
溝を加工するテクスチャー加工によりディスクの表面を
粗して、粘着を防ぐ方法が現在広く行われている。しか
し、このようなテクスチャー加工は、微小な砥粒でNiP
表面を研削加工することで施こされるため、本質的に加
工時の材料の塑性流動によるバリや、切粉の再付着によ
り、ヘッドに衝突する突起を生じ易い。
【0004】このようなテクスチャー加工を施した基板
は、ディスク性能、コスト、量産性のすべての点を満足
するものはなく、実際にはいずれかの特性が満足ではな
いまま使用せざるを得ない状況であった。さらに、上記
テクスチャー加工では、ディスク全面にわたって30nm以
下のスペーシングでヘッドを浮上させる表面を形成する
のは難しい。磁気ディスクの記録密度は年々加速度的に
増大し、磁気ディスクの記録密度をさらに著しく増加さ
せるためには、磁気ヘッドの浮上距離を現状よりさらに
低減させる必要が出てくるが、そのとき、上記のような
テクスチャー加工では到底対応できない。
【0005】Al/NiP基板以外の基板としてガラス基板が
知られている。特に、磁気ディスク基板としては、化学
強化ガラス基板を用いることが知られている。化学強化
ガラス基板とは、通常のガラスの表面層中にあるリチウ
ムやナトリウムイオンをそれよりイオン半径の大きなカ
リウムイオンなどにイオン交換処理し、ガラスの表面に
圧縮応力を有する強化層を設けることにより、割れにく
くしたガラス基板である。この強化ガラス基板を実際に
用いて、磁気ディスクを形成するときには、その表面に
NiPめっき膜と同様なテクスチャー加工を行って表面を
適当に粗して用いることが必要である。しかし、圧縮応
力が入ったガラス表面をテクスチャー加工すると、周辺
部にかけなどが生じ易く、表面形状が均一な無欠陥なテ
クスチャー加工面を形成するのは難しい。
【0006】特開平10-91934号公報(以下、先行技術1
という)には、結晶化ガラスを用いた、摺動信頼性に優
れ、低コストな磁気ディスク用基板が開示されている。
しかし、この基板を用いて可能な磁気ヘッドの最小浮上
量は0.08μm程度すなわち80nm程度であり、近い将来、
記録媒体に求められる高記録密度化に対応可能な30nm以
下という磁気へッドの浮上量を実現することは困難であ
る。磁気ヘッドの低浮上化の実現は、単に基板表面の平
滑性向上だけでは達成できず、媒体を回転させたときに
媒体が変形しない、すなわち情報記録層などを支持して
いる基板が変形しないことも求められる。さらに、高記
録密度化に伴い、記録媒体の回転数はさらに高速化され
ることになる。高速回転時、基板の剛性が低いと媒体が
撓み、磁気ヘッドの浮上量の低減を妨げることになる。
しかし、先行技術1では、基板の曲げ強度については言
及しているものの、高速回転時の撓みの原因となる剛性
の問題については何ら考慮していない。
【0007】そこで本発明は、上記の問題に鑑み、摺動
信頼性に優れ、高記録密度化が可能な表面性状を有する
とともに、高剛性を有する情報記録媒体用結晶化ガラス
基板を提供すること、及びこの基板を用いた情報記録媒
体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段としては、以下の構成を要する。 (1)非晶質であるガラスの連続相中に結晶粒子が分散
する結晶化ガラスからなる基板であって、この基板の少
なくとも主表面に前記結晶粒子の一部が、前記連続相か
ら部分的に突出して存在する情報記録媒体用結晶化ガラ
ス基板において、前記突出して存在する結晶粒子の粒径
が1000nm以下であり、かつ前記主表面に突出して存在
し、記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与する結晶粒子
の面密度が10 6個/mm2を超えかつ109個/mm2以下であるこ
とを特徴とする情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (2)前記記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与する結
晶粒子の粒径が、10nm以上1000nm以下であることを特徴
とする(1)に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基
板。 (3)前記突出して存在する結晶粒子の粒径が、10nm以
上500nm以下であることを特徴とする(1)または
(2)に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス。 (4)前記ガラス基板の主表面の原子間力顕微鏡により
測定した表面粗さRmaxは、1〜30nmであることを特徴と
する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の情報記録媒
体用ガラス基板。 (5)単位体積に占める結晶粒子体積の総和の割合が15
〜80%である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の情報
記録媒体用結晶化ガラス基板。 (6)ヤング率が110GPa以上である(1)〜(5)のい
ずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。 (7)少なくともSiO2、A12O3、MgO、TiO2を含む結晶化
ガラスからなることを特徴とする(1)〜(6)のいず
れか1項に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (8)前記結晶化ガラスが、SiO2を35〜65モル%、A12O3
を5〜25モル%、MgOを10〜40モル%、TiO2を5〜15モル%含
有し、上記組成の合計が92モル%以上あり、かつ主結晶
がエンスタタイト及び/又はその固溶体である(7)に
記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (9)前記結晶化ガラスが、SiO2を42〜65モル%、A12O3
を11〜25モル%、MgOを15〜33モル%、TiO2を5.5〜13モル
%含有し、かつ主結晶としてα-石英固溶体並びにエンス
タタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含む(7)
に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の基板の
主表面上に少なくとも情報記録層を有することを特徴と
する情報記録媒体。 (11)前記情報記録層が磁性層であることを特徴とす
る(10)に記載の情報記録媒体。
【0009】また、本発明は、以下の態様も包含する。 (11)非晶質であるガラスの連続相中に結晶粒子が分
散する結晶化ガラスからなる基板であって、この基板の
少なくとも主表面に前記結晶粒子の一部が、前記連続相
から部分的に突出して存在する情報記録媒体用結晶化ガ
ラス基板において、前記突出して存在する結晶粒子の粒
径が1000nm以下であり、かつ前記主表面に突出して存在
する、粒径が10nm以上である結晶粒子の面密度が106個/
mm2を超えかつ109個/mm2以下であることを特徴とする情
報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (12)単位体積に占める結晶粒子体積の総和の割合が
15〜80%である(11)に記載の情報記録媒体用結晶化
ガラス基板。 (13)少なくともSiO2、A12O3、MgO、TiO2を含む結晶
化ガラスからなることを特徴とする(11)または(1
2)に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (14)前記結晶化ガラスが、SiO2を35〜65モル%、A12
O3を5〜25モル%、MgOを10〜40モル%、TiO2を5〜15モル%
含み、上記組成の合計が93モル%以上あり、モル比(A12O
3/MgO)が0.5未満である組成を有する(13)に記載の
情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (15)主結晶がエンスタタイト及び/又はエンスタタ
イト固溶体であることを特徴とする(14)に記載の情
報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (16)前記結晶化ガラスが、SiO2を42〜65モル%、A12
O3を11〜25モル%、MgOを15〜33モル%、TiO2を5.5〜13モ
ル%を含有する(13)に記載の情報記録媒体用結晶化
ガラス基板。 (17)主結晶相としてα−石英固溶体並びにエンスタ
タイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含むことを特
徴とする(16)に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス
基板。 (18)α−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又
はエンスタタイト固溶体を含み、α−石英固溶体、エン
スタタイト及びエンスタタイト固溶体の合計が50重量
%以上であることを特徴とする(16)に記載の情報記
録媒体用結晶化ガラス基板。 (19)主結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有
の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される
石英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタ
イト固溶体を含み、かつ比重が2.9以上であることを特
徴とする(16)に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス
基板。 (20)結晶相が、X線回折パターン中に石英に特有の
回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測される石
英系結晶並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイ
ト固溶体を含み、石英系結晶、エンスタタイト及びエン
スタタイト固溶体の合計が50重量%以上であり、かつ
比重が2.9以上であることを特徴とする(16)に記載
の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。 (21)ヤング率が110GPa以上である(11)〜(2
0)のいずれか1項に記載の情報記録媒体用結晶化ガラ
ス基板。 (22)熱膨張係数が60×l0-7/℃以上である請求項
(11)〜(21)のいずれか1項に記載の情報記録媒
体用結晶化ガラス基板。 (23)(11)〜(22)のいずれか1項に記載の基
板の主表面に少なくとも情報記録層が形成されている情
報記録媒体。 (24)磁気記録媒体である(23)に記載の情報記録
媒体。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について
説明する。本発明の情報記録媒体用基板は、非晶質であ
るガラスの連続相中に結晶粒子が分散する結晶化ガラス
からなる。さらに、この基板の少なくとも主表面に前記
結晶粒子の一部が、前記連続相から部分的に突出して存
在する。基板の主表面とは、基板表面のうち情報記録層
を形成することになる面である。微小な結晶粒子の一部
がガラスの連続相から露出し、突起(凸部)を形成する。
本発明の基板は、非晶質であるガラスを連続相とし、そ
のガラス相中に高剛性・高ヤング率の結晶粒子を分散さ
せた、一種の複合材料である結晶化ガラスであって、そ
の主表面に微細な突起を多数形成したものである。
【0011】本発明の基板では、突出して存在する結晶
粒子の粒径が1000nm以下である。結晶粒子の粒径の測定
は、基板を試料として透過型電子顕微鏡(TEM)の写真を
もとに結晶粒子部分とガラス部分の濃淡の差から結晶粒
子の粒径を求めることができる。本発明でいう結晶粒子
の粒径は基板の主表面に対して垂直方向から観察したと
きの粒径を意味する。即ち、透過型電子顕微鏡で主表面
に垂直な方向から基板を拡大観察したときの粒径であ
る、結晶粒子の粒径が1000nm以下である。但し、主表面
に対して垂直方向から観察したときの結晶粒子の形状が
円形でないときには、長径をもって粒径とする。
【0012】結晶粒子の突起は、後に詳細に説明する
が、一般に、研磨により結晶化ガラス表面を平滑化し、
平滑化した表面をエッチングすることにより形成され
る。結晶化ガラス中に存在する結晶粒子のうち、表面に
露出しているものや、表面に露出していないが表面近傍
に存在するものは、研磨及びエッチングによって一部が
表面に露出することになる。粒径が小さい結晶粒子は、
研磨及びエッチング中に表面に露出しても、研磨及びエ
ッチングが進むと、大きな凸部を形成する前に表面から
脱落する。しかし、粒径が大きい結晶粒子の場合、研磨
及びエッチングが進み、凸部が高くなっても表面から脱
落せず、高い突起となって主表面に残ってしまう。その
ため、粒径が大きい結晶粒子を含む結晶化ガラスの場
合、主表面に存在する凸部が高くなり過ぎ、そこに情報
記録層を形成しても高い平滑性を有する媒体表面は得ら
れない。そのため、媒体にデータを書込むためのヘッド
(記録用ヘッド)や媒体に書込まれているデータを読取
るための読取りヘッド(再生用ヘッド)と媒体表面の間
隔(ヘッドの浮上距離)を小さくすることができず、高記
録密度化がさらに進む次世代高密度化情報記録媒体に要
求される低浮上(30nm以下)の阻害要因となる。
【0013】よって、本発明では、ヘッドの低浮上化の
ために、結晶粒子の粒径を1000nm以下とする。結晶粒子
径が1000nmより大きくなると、表面突起が大きくなりす
ぎて、ビットエラーも増加する。結晶粒子の粒径を1000
nm以下とすることにより、基板の主表面に露出する凸部
の高さを低く抑えることができ、平滑な表面を有する媒
体を得ることができる。好ましい結晶粒子の粒径は700n
m以下、より好ましい結晶粒子の粒径は300nm以下、さら
に好ましくは100nm以下である。結晶粒子の粒径は磁気
記録密度に応じて例えば、10-300nmの範囲であることが
好ましいが、磁気記録密度の飛躍的な増大に伴い磁気ヘ
ッドの浮上距離がますます小さくなるので、要求される
結晶粒子の粒径がますます小さくなる。例えば磁気記録
密度が20Gb/inch2となると、磁気ヘッドの浮上距離は15
nm程度となるので、基板ガラス中の結晶粒子が最大でも
100nm以下に抑える必要がある。
【0014】本発明の基板では、前記主表面に突出して
存在し、記録再生用ヘッド(書込読込ヘッド)との摺動
特性に寄与する結晶粒子の面密度を、106個/mm2を超え
かつ109個/mm2以下とする。記録再生用ヘッドとの摺動
特性に寄与する結晶粒子とは、本発明の基板を用いて作
製した情報記録媒体において、記録再生用ヘッド面と対
向することになる情報記録層が設けられる基板主表面に
存在する結晶粒子であって、記録再生用ヘッドの情報記
録媒体への吸着防止や、記録再生用ヘッドにおける摩擦
係数の低減を可能にする所定の結晶粒径を有する結晶粒
子をいう。本発明の基板では、前記主表面に突出して存
在し、記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与する結晶粒
子の粒径を、10nm以上1000nm以下とすることが好まし
い。
【0015】本発明の基板では、主表面に突出して存在
する結晶粒子の粒径を1000nm以下と小さくし、基板主表
面の平滑性を向上させている。浮上量の低減には主表面
上に突出している結晶粒子の粒径は小さいほうが好まし
い。しかし、CSS方式の磁気記録媒体などにおいては、
結晶粒子の粒径を小さくしたことによって、主表面上の
凸部の高さが低くなるので、書込読込ヘッドと媒体表面
との吸着を防ぐために、上記凸部の面密度をある程度大
きくする(106個/mm2を超える)ことが適当である。ヘ
ッドの吸着防止効果は、本発明者らの検討の結果、粒径
が10nm以上の結晶粒子が露出した場合に得られるので、
本発明では、粒径が10nm以上である結晶粒子の面密度を
規定している。上記粒径が10nm未満のものは、主表面に
露出しても書込読込ヘッド(例えば磁気ヘッド)とこの基
板を用いた情報記録媒体の表面との吸着防止には寄与し
ない。主表面に突出して存在する結晶粒子の粒径は、好
ましくは10nm以上500nm以下、更に好ましくは、10nm以
上300nm以下、特に好ましくは、10nm以上100nm以下が望
ましい。
【0016】上記理由から、粒径が10nm以上(1000nm以
下)である結晶粒子の面密度は、10 6個/mm2を超えるこ
とが適当である。しかし、上記面密度が大きくなり過ぎ
ると、個々の結晶粒子が融着して大きな結晶粒子を形成
しやすくなり、結晶粒子の粒径を1000nm以下とすること
が困難になる。大きな結晶粒子は、上述したように基板
主表面の平滑性を損なう原因となる。そこで、結晶粒子
の面密度は109個/mm2以下にする。即ち、本発明の基板
では、前記主表面に突出して存在する、粒径が10nm以上
(1000nm以下)である結晶粒子の面密度は、106個/mm2
を超えかつ109個/mm2以下、好ましくは107個/mm2以上か
つ109個/mm2以下とすることが好ましい。
【0017】また、上記理由とは別に、結晶化ガラス中
に、数多くの結晶粒子を析出させてガラスの結晶化度を
上げ、基板のヤング率や硬度などの特性を向上させ、高
速回転化、低浮上量化に対応した基板の剛性を得るとう
い観点からも、主表面に突出して存在する、粒径が10nm
以上(1000nm以下)である結晶粒子の面密度は、106個/
mm2を超えかつ109個/mm2以下であることが適当である。
基板に一定以上の剛性を与えるためには、基板全体に占
める結晶相の体積の割合を高める必要が有る。しかし、
本発明の基板では、結晶粒子の粒径を1000nm以下に抑え
ているので、基板全体に占める結晶相の体積の割合を高
めるためには結晶粒子の数を増やす必要が有る。そのた
め、本発明の基板では、上記面密度を10 6個/mm2より大
きくする。しかし、上述のように、結晶粒子を多く析出
させると、結晶化のための熱処理中において結晶粒子間
の融着が生じ、異常に大きい結晶粒子が形成されしま
い、研磨及びエッチングによって形成された主表面に異
常な突起が生じ、信号ノイズの増加やビットエラーが生
じるといった不具合を生じる恐れがある。このような問
題を防ぐため、主表面に露出する結晶粒子密度を109個/
mm2以下とする。即ち、結晶粒子の面密度の特定は、上
記ヘッドの摺動特性のほかに、記録再生時におけるエラ
ーの発生を防止することや、基板のヤング率をある特定
値以上(110GPa以上)にすることが可能となり、高速回
転時においても、基板が撓むことがないので、ヘッドの
低浮上量化を実現するためにも重要である。
【0018】なお、粒径が10nm以上の結晶粒子のうち、
主表面に凸部を形成しているものの、主表面における面
密度の測定は、基板の主表面を走査型電子顕微鏡(SEM)
により観察して行われる。面密度は、走査型電子顕微鏡
で観察した面積をもとに1mm2あたりの結晶粒子の個数を
求めることにより得られる。
【0019】また、主表面の凸部(突起)の高さは、平均
高さは5〜50nmが好適な範囲である。主表面の凸部(突
起)の高さが50nm以下であれば、ビットサイズの短小化
による磁気記録密度の向上が制限されることがない。ま
た、CSS方式の磁気記録媒体において、主表面の凸部(突
起)の高さが5nm以上であれば、基板の表面特性が鏡面の
それに近づき過ぎず、ヘッドとの粘着などの不具合を生
じることはない。尚、LUL(ロードアンロード(ランプ
ロード))方式の磁気記録媒体において、凸部の平均高
さは、5nm未満であっても不具合を生じることはない。L
UL方式の磁気記録媒体の場合、平均高さは0.1〜50nmの
広い範囲まで好適を範囲とすることが可能である。但
し、ヘッドの低浮上化、記録密度の点などから、凸部の
平均高さは、CSS方式の場合、5〜10nmとすることが望ま
しく、LUL方式の場合、0.1〜10nm、好ましくは0.1〜2n
m、更に好ましくは0.1〜1nmとすることが望ましい。微
小突起の凸部の高さは原子間力顕微鏡(AFM)などによ
り測定することができる。原子間力顕微鏡は、非常に小
さい突起の高さまで測定することができるので好まし
い。尚、主表面において、連続相であるガラス相がもつ
表面粗さの中心位置を基準線とし、そこからの結晶粒子
からなる凸部(突起)の頂上までの平均高さを凸部の高さ
としている。また、基板主表面の表面粗さ(最大高さ)
Rmaxを、1〜30nmとすることにより、高記録密度化に対
応可能な30nm以下というヘッドの浮上量を実現すること
ができる。尚、表面粗さ(最大高さ)Rmaxは、原子間力
顕微鏡で測定したものとする。基板主表面の平均粗さ
(最大高さ)とヘッドの浮上高さには相関があり、更な
る低浮上化のためには、Rmaxを1〜15nm、より好ましく
は1〜10nmとすることが望ましい。
【0020】本発明の基板においては、単位体積中に占
める結晶粒子体積の総和の割合が15〜80%であることが
好ましい。単位体積に占める結晶粒子体積の総和の割合
(以下、結晶化度という)を80%以下とすることで、結晶
粒子間が融着して異常に大きな結晶粒子の形成を抑える
ことができ、その結果、主表面の異常突起の発生を防ぐ
ことができる。また、結晶化度を15%以上とすること
で、高剛性、硬度を有する基板を得ることができる。結
晶化度の測定は、一般に知られているX線回折法によっ
て求めることができる。好ましい結晶化度は20〜75%、
より好ましくは、20〜30%または45〜75%である。
【0021】本発明の基板は、少なくともSiO2、A1
2O3、MgO、TiO2を含む結晶化ガラスからなることが好ま
しい。この組成により結晶粒子の数、大きさを容易に制
御することができる。また、上記結晶粒子によって、研
磨あるいは研磨と研磨後のエッチングにより上記面密度
(主表面に突出して存在する結晶粒子の面密度)が得ら
れる。本発明の結晶化ガラスは、例えば、アルカリ金属
酸化物(Li2O、Na2O、K2O)やアルカリ土類金属酸化物(Mg
O、CaO、SrO、BaO)と遷移金属酸化物(NiO、ZnOなど)
や、A12O3、SiO2、TiO2、ZrO2などより選び組み合わせ
た材料よりなるものであることができる。但し、材料の
高剛性を保つため、できるだけアルカリ金属酸化物成分
の含有量を少なく抑えることが重要である。加工特性が
良好であって、結晶粒子径が小さく、高ヤング率が得ら
れる点から、主結晶がエンスタタイト及び/若しくはそ
の固溶体、又はα-石英固溶体並びにエンスタタイト及
び/若しくはその固溶体を含む材料が好ましい。前者の
場合の結晶化ガラスとしては、SiO2を35〜65モル%、Al
2O3を5〜25モル%、MgOを10〜40モル%、TiO2を5〜15モル
%含有し、上記組成の合計が92モル%以上であり、かつ
主結晶がエンスタタイト及び/又はその固溶体であるも
の、後者の場合の結晶化ガラスとしては、前記結晶化ガ
ラスとしては、前記結晶化ガラスが、SiO2を42〜65モル
%、Al2O3を11〜25モル%、MgOを15〜33モル%、TiO2
5.5〜13モル%含有し、主結晶としてα-石英固溶体並び
にエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含
むものがある。結晶化ガラスの具体例についてさらに説
明する。
【0022】[結晶化ガラス1]結晶化ガラスとして
は、SiO2を35〜65モル%、A12O3を5〜25モル%、MgOを10
〜40モル%、TiO2を5〜15モル%含み、上記組成の合計が9
2モル%以上あり、モル比(A12O3/MgO)が0.5未満である組
成を有することが好ましい。上記組成を有する結晶化ガ
ラス1は、好適な結晶粒子、面密度、結晶化度、剛性、
優れた化学的な耐性、媒体を回転させるための金属製の
駆動系(媒体を回転するための軸とこの軸に媒体を固定
するための治具)との熱膨張係数の適合が得やすい等の
利点がある。
【0023】結晶化ガラス1においてSiO2はガラスの網
目構造の形成物であり、主な析出結晶であるMgO・SiO2
組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al)SiO3の組成を
有するエンスタタイト固溶体の構成成分でもある。SiO2
の含有量が35%未満では溶解したガラスが非常に不安定
なので、高温成形ができなくなるおそれがあるうえ、上
記のような結晶も析出し難しくなる。また、SiO2の含有
量が35%より少なくなると、残存ガラスマトリックス相
の化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する傾向がある。
一方、SiO2の含有量が65%を超えると、主結晶相として
エンスタタイトが析出しにくくなり、ガラスのヤング率
が急激に小さくなる傾向がある。そのため、SiO2の含有
量は、析出結晶種及びその析出量、化学耐久性、耐熱性
及び成形・生産性を考慮すると、35−65%の範囲である。
より好ましい物性を有する結晶化ガラスが得られるとい
う観点から、SiO2の含有量は、好ましくは、40−60%の
範囲である。
【0024】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、ガラ
ス表面硬度の向上に寄与する。しかし、Al2O3の含有量
が 5%未満ではガラスマトリックス相の化学耐久性も低
下し、基板材料に要求される強度が得られにくくなる傾
向がある。一方、Al2O3の含有量が25モル%を超える
と、主結晶相としてのエンスタタイトの析出がしにくく
なるとともに、溶融温度が高くなってガラスが溶けにく
くなるうえ、失透しやすくなって容易に成形しにくくな
る傾向がある。従って、ガラスの溶解性、高温度成形
性、析出結晶種などを考慮して、Al2O3の含有量は5−25
%の範囲、好ましくは7−22%の範囲とすることが適当で
ある。
【0025】MgOはガラスの修飾成分であり、MgO・SiO2
の組成を有するエンスタタイト及びその固溶体の結晶の
主成分でもある。MgOの含有量が10%未満では上記のよ
うな結晶が析出しにくく、ガラスの失透傾向及び溶融温
度が高く、かつガラス成形の作業温度幅が狭くなる傾向
がある。一方、MgOの含有量が40モル%を超えると、ガ
ラスの高温粘性が急激に低くなって熱的に不安定とな
り、生産性も悪化し、ヤング率や耐久性も低下する傾向
がある。そこで、MgOの含有量は、ガラスの生産性、化
学耐久性、高温粘性及び強度などを考慮すると、10−40
%の範囲であること、好ましくは12−35%の範囲である
ことが適当である。
【0026】但し、モル比(Al2O3/MgO)が0.5未満
となるように、MgO及びAl2O3の含有量を調整することが
好ましい。モル比(Al2O3/MgO)が、0.5以上になる
と、結晶化ガラスのヤング率が急激に低下する傾向があ
るからである。Al2O3/MgO<0.5とすることで、150
GPa以上の高ヤング率を有する結晶化ガラスを得るこ
ともできる。好ましくはAl2O3/MgO<0.45である。
但し、Al2O3/MgOのモル比を小さくし過ぎると、ガラス
の高温粘性が低下する傾向及び結晶粒子が大きくなる恐
れがあるのでAl2O3/MgO比は0.2以上、好ましくは
0.25以上であることが適当である。
【0027】TiO2はMgO・SiO2の組成を有するエンスタタ
イト及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタタイト固
溶体の結晶相析出の核生成剤である。さらに、TiO2は、
SiO2の含有量が少ない場合に、ガラスの失透を抑える効
果も有する。但し、TiO2の含有量が5%未満の場合、主結
晶の核生成剤としての効果が充分に得られず、ガラスが
表面結晶化してしまい、均質な結晶化ガラスの作製が難
しくなる傾向がある。一方、TiO2の含有量が15%を超え
ると、ガラスの高温粘性が低くなりすぎて分相したり、
失透したりするので、ガラスの生産性が極端に悪化する
傾向がある。そのため、ガラスの生産性、化学耐久性、
高温粘性、結晶核生成などを考慮すると、TiO2の含有量
は5−15%の範囲であること、好ましくは5.5−14%の範
囲であることが適当である。
【0028】結晶化ガラス1において、Y2O3は必須の成
分ではないが、例えば、2%のY2O3を導入することによっ
て結晶化ガラスのヤング率を10Gpa程度増大でき、かつ
液相温度を50−100℃程度低減することができる。即
ち、少量のY2O3の導入によってガラスの特性や生産性を
格段に向上させることができ、Y2O3の含有量が0.3%以
上であれば、Y2O3の効果が得られる。Y2O3の含有量は好
ましくは0.5%以上である。但し、Y2O3は前述のガラス
に含まれる主結晶の成長を抑える力をもつ。そのため、
Y2O3の含有量が多過ぎると、ガラスを結晶化させる目的
で行われる熱処理において、表面結晶化が起り易く、目
的とする結晶化ガラスが作れなくなる傾向がある。この
ような観点からY2O3の含有量は、10%以下とすることが
適当である。特に、Y2O3の含有量は、好ましくは8%以
下、より好ましくは3%以下である。
【0029】結晶化ガラス1は、ZrO2を含有するこ
とができる。ZrO2はガラスの安定性を高め、特にM
gOを多く含むガラスの安定性の向上に大きな役割を果
たすことができる。また、核生成剤としても作用し、T
iO2の補佐役として予備処理中のガラス分相を促進し
て結晶粒子の微細化に貢献することができる。しかし、
ZrO2の含有量が6%を超えると、ガラスの高温溶解
性や均質性が悪化するおそれがあるので、その導入量は
6%以下であることが適当である。さらに、ガラスの高
温溶解性や結晶粒子の均質性などを考慮すると、ZrO
2の導入量は5%以下であることが好ましい。
【0030】結晶化ガラス1は、高ヤング率などの特性
及び均質な結晶性を保つという観点からSiO2、Al2O3、M
gO、及びTiO2の合計を93%以上とする。SiO2、Al
2O3、MgO、及びTiO2の合計は、好ましくは95%以上で
ある。
【0031】上記範囲内であれば、上記以外の成分とし
て、結晶化ガラスの所望の特性を損なわない範囲で、ア
ルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O等)及び/
又はアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO、SrO、BaO)
等の成分を含んでもよい。アルカリ金属酸化物及び/又
はアルカリ土類金属酸化物は、ガラス原料として硝酸塩
を使用できる。ガラス製造の際に脱泡剤としてSb2O3
使用するとガラス溶解用白金坩堝からガラスに白金が混
入し易く、ガラス原料として硝酸塩を使用することによ
り、ガラスへの白金の混入を抑制することができる。ア
ルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量
はそれぞれ0.1モル%以上であることが上記効果を得ると
いう観点から好ましい。但し、アルカリ金属酸化物を含
む場合、アルカリ金属酸化物はヤング率を低下させる傾
向があることから、その含有量は5モル%以下とすること
が適当である。又、アルカリ土類金属酸化物を含む場
合、アルカリ土類金属酸化物は、結晶粒子を大きくする
傾向があることから、その含有量は5モル%以下であるこ
とが適当である。アルカリ金属酸化物を含む場合、特
に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%、より好まし
くは0.1〜1モル%のK2Oが好ましい。アルカリ土類金属酸
化物を含む場合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜
2モル%のSrOが好ましい。
【0032】また、ガラスの均質化を図るために脱泡剤
としてAs2O3及び/又はSb2O3を含有させることもでき
る。ガラスの組成により変化するの高温粘性に応じて、
適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3をガラスに添
加することで、より均質なガラスが得られる。但し、脱
泡剤の添加量が多過ぎると、ガラスの比重が上昇してヤ
ング率を低下させる傾向があり、また溶解用白金るつぼ
と反応し、るつぼにダメージを与える場合もある。そこ
で、脱泡剤の添加量は2%以下、好ましくは1.5%以下
とすることが適当である。以上の基本成分の他に原料中
の不純物、例えばガラスの清澄剤となるCl、F、SO3等を
本発明の結晶化ガラスの特性を損ねることのない、それ
ぞれ1%以下であれば含有させることができる。又、結
晶化ガラス1は、ZnO及びNiOを含まないことが望まし
い。ZnOは、硬い結晶であるスピネルを形成し易くさせ
るためである。またNiOは、スピネルを形成し易くさせ
るという観点からも環境に影響する成分であるという観
点からも含有させることが望ましくない。
【0033】結晶化ガラス1における主結晶相は、例え
ば、MgO・SiO2及び(Mg・Al)SiO3の組成を有するエンスタ
タイト(エンスタタイト固溶体を含む)である。また、
エンスタタイトには、クリノエンスタタイト、プロトエ
ンスタタイト及びエンスタタイトが包含される。さらに
上記の結晶のほかチタン酸塩、ムライト、フォステライ
ト、コージェライトなどその他の結晶を含むこともでき
る。エンスタタイトは、硬度が低いため(モース硬度
5.5)、エンスタタイトを主結晶とする結晶化ガラス
は非常に研磨がしやすく、比較的短い時間で所望の表面
粗さを得ることができるという特徴がある。さらに、エ
ンスタタイトは、その鎖状又は層状の結晶の形状から、
そのすき間にガラス成分が入り込み、粒径が小さくても
高いヤング率が得られると考えられる。また、結晶化ガ
ラス1は、実質的にスピネルを含まない。スピネルは、
エンスタタイトと比較すると硬い結晶である(モース硬
度8)であるため、研磨がしやすいという効果を損ねる
ことが考えられる。また、結晶化ガラス1は、石英固溶
体を実質的には含まない。
【0034】尚、結晶化ガラス1において主結晶相と
は、ガラス中の結晶(X線回折でその種類が特定可能な
結晶)のうち50体積%以上含有されるものである。結
晶化ガラス1においては、多くの場合は、エンスタタイ
ト及び/又はその固溶体が結晶のうち70体積%以上、
又、場合によっては80体積%以上、さらには90体積
%以上含有されるものである。また、結晶化ガラス1に
おいて、ガラス中の結晶の割合は、おおよそ20〜70
%程度である。さらに、結晶化ガラス1に含まれる結晶
のサイズ(粒径)の平均値は、0.5μm以下であること
が好ましく、0.3μm以下であることがより好まし
く、0.1μm以下であることがさらに好ましい。本発
明の結晶化ガラスに含まれる結晶の粒径の平均値は、最
も好ましくは、50nm以下である。結晶粒径の平均値
は0.5μmを超えると、ガラスの機械強度を低下させ
るだけでなく、研磨加工時に結晶の欠落を引き起こして
ガラスの表面粗度を悪化させるおそれがある。このよう
な結晶粒子の粒径の制御は、主に、含まれる結晶相の種
類及び後述の熱処理条件によって行うことができるが、
結晶化ガラス1における必須成分であるエンスタタイト
及び/又はその固溶体の主結晶相が得られる熱処理条件
において、上記したような微細な結晶粒子を得ることが
可能である。
【0035】[結晶化ガラス2]結晶化ガラスとして
は、SiO2を42〜65モル%、A12O3を11〜25モル%、MgOを15
〜33モル%、TiO2を5.5〜13モル%を含有することが好ま
しい。結晶化ガラス2は主結晶としてエンスタタイトお
よび/又はその固溶体を含むものであることが好まし
い。結晶化ガラス2は、好適な結晶粒子、面密度、結晶
化度、剛性、優れた化学的な耐性、媒体を回転させるた
めの金属製の駆動系(媒体を回転するための軸とこの軸
に媒体を固定するための治具)との熱膨張係数の適合が
得やすくなるという利点がある。
【0036】上記結晶化ガラス2としては、具体的には
以下の結晶化ガラスを挙げることができる。結晶化ガラス基板2−1 SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33
モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相が
α−石英固溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンス
タタイト固溶体を含む結晶化ガラス。結晶化ガラス2−2 SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33
モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、α−石英固
溶体並びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固
溶体を含み、α−石英固溶体、エンスタタイト及びエン
スタタイト固溶体の合計が50重量%以上である結晶化
ガラス。結晶化ガラス2−3 SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33
モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、主結晶相
が、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンと
ほぼ同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びに
エンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含
み、かつ比重が2.9以上である結晶化ガラス。結晶化ガラス2−4 SiO2:42-65モル%、Al2O3:11-25モル%、MgO:15-33
モル%、及びTiO2:5.5-13モル%を含有し、結晶相が、
X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンとほぼ
同等の回折パターンが観測される石英系結晶並びにエン
スタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を含み、石
英系結晶、エンスタタイト及びエンスタタイト固溶体の
合計が50重量%以上であり、かつ比重が2.9以上であ
る結晶化ガラス。
【0037】結晶化ガラス2において、SiO2はガラスの
網目構造の形成物であり、主な析出結晶であるα-石英
固溶体または石英系結晶とエンスタタイトの構成成分で
もある。SiO2の含有量は42%未満ではα−石英固溶体結
晶または石英系結晶の析出が難しくなるので、結果的に
高膨張特性を有する結晶化ガラスが得られない。また、
SiO2の含有量が42%より少なくなると、残存ガラスマト
リックス相の化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する傾
向がある。一方、SiO2の含有量が65%を超えると、ガラ
スのヤング率が急激に小さくなる恐れがある。従って、
SiO2の含有量は、析出結晶種及びその析出量、化学耐久
性、耐熱性及び成形・生産性を考慮すると、42〜65%の範
囲であることが適当であり、好ましくは44〜60%の範囲
である。
【0038】MgOはSiO2成分とともに原ガラスの熱処理
によりエンスタタイト結晶を生成し、強度や耐熱性を向
上しつつ高ヤング率を維持させる効果を有するきわめて
重要な成分である。しかし、MgOの含有量が 15%未満で
は上記のような効果が得られないので、その含有量を15
%以上にする。一方、MgOの含有量が33%を超えると、ガ
ラスから高膨張のα−石英固溶体結晶または石英系結晶
が析出し難くく、高膨張特性が得られない。そこで、Mg
Oの導入量は33%以下にする。MgOの含有量は、ガラスの
生産性、化学耐久性、高温粘性及び析出した結晶種など
を考慮すると、15〜33%の範囲であることが適当であ
り、好ましくは17〜32%の範囲である。
【0039】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種であるα-石英固溶体または石英系結晶の構成成
分でもある。Al2O3の導入はα−石英固溶体結晶または
石英系結晶の析出を促進し、ガラス表面硬度の向上に寄
与する。Al2O3の含有量が 11%未満では、高膨張のα-
石英固溶体または石英系結晶の析出が難しくなる一方、
得られた結晶化ガラスのヤング率も小さくなる傾向があ
る。しかし、Al2O3の含有量が25%を超えると高ヤング
率のエンスタタイトの析出が難しくなり、ガラスの高温
粘性も高くなったり、高温溶解性も悪化したりして望ま
しくない。従って、Al2O3の含有量は、ガラスの溶解
性、高温粘性、析出結晶種などを考慮して、11〜25%の
範囲であることが適当であり、好ましくは12−22%の範
囲である。
【0040】結晶化ガラス2においてSiO2とAl2O3 の合
計(SiO2+Al2O3)は58モル%以上であり、80モル%以下
であることが好ましい。(SiO2+Al2O3)が58モル%未満
では、α-石英固溶体または石英系結晶が析出しにくく
なる。(SiO2+Al2O3)が80モル%を超えるとヤング率が
低下する傾向がある。(SiO2+Al2O3)は好ましくは60モ
ル%以上、より好ましくは62モル%以上である。また、
(SiO2+Al2O3)は好ましくは75モル%以下、より好まし
くは73モル%以下である。さらに、結晶化ガラス2にお
いてMgOと(SiO2+Al2O3)のモル比 MgO/(SiO2+Al 2O3)は
0.125以上、0.55以下であることが好ましい。モル比 Mg
O/(SiO2+Al2O3)が0.125未満になるとヤング率が低下す
る傾向がある。モル比 MgO/(SiO2+Al2O3)が0.55を超え
る膨張係数が小さくなる傾向がある。モル比 MgO/(SiO2
+Al2O3)は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上
である。また、モル比 MgO/(SiO2+Al2O3)は好ましくは
0.5以下、より好ましくは0.4以下である。
【0041】TiO2は結晶核の生成剤としてα-石英固溶
体または石英系結晶やエンスタタイトなどの結晶粒子の
析出に欠かせない成分であり、またSiO2の含有量が少な
い時、ガラスの熱的な安定性を持たせる重要な成分でも
ある。TiO2の含有量が5.5%未満では、主結晶の核生成
剤としての役割を果たせない上、ガラスが表面結晶化と
なり、均質な結晶化ガラスの作製が困難となる。しか
し、TiO2の含有量が13%を超えると、高膨張のα-石英固
溶体または石英系結晶の析出が難しくなる一方、ガラス
の高温粘性が低くなりすぎて分相したり、失透したりす
るので、ガラスの生産性は極端に悪化してしまう傾向が
ある。従って、TiO2の含有量は、ガラスの生産性、高温
粘性、結晶核生成などを考慮すると、5.5〜13%の範囲
であることが適当であり、好ましくは6.5〜12%の範囲
である。
【0042】結晶化ガラス2は、上記成分以外にZrO2
導入することができる。ZrO2はガラスの高温粘性や安定
性などを調整するために添加される成分である。少量の
ZrO2を導入するとガラスの熱的な安定性を向上させた
り、溶融体の高温粘性を高めたりしてガラスがより容易
に製造できる。しかし、ZrO2の含有量が4%を超えると
ガラスの高温溶解性を悪化したり、主結晶の析出を阻害
したりして望ましくない。そのため、ZrO2の導入量は、
4%以下にすることが適当であり、好ましくは3%以下
である。
【0043】結晶化ガラス2は、上記成分以外にY2O3
導入することができる。結晶化ガラス2においては、1
%程度のY2O3を導入することによって結晶化ガラスのヤ
ング率を5Gpa程度増大し、液相温度を50℃程度低減す
ることができる。さらに、Y2O 3の導入により、ガラスの
熱的な安定性を向上させることもできる上、α-石英固
溶体または石英系結晶の析出にも貢献する。しかし、Y2
O3は上記のチタン酸塩の核形成を抑える力をもつので、
Y2O3の導入量が多くなりすぎると、ガラスは熱処理中に
表面結晶化を起こし、目標の結晶化ガラスが作れなくな
る場合がある。従って、Y2O3の含有量は0.1〜5%の範囲
とすることが好ましい。特にY2O3の含有量は0.2-4%の範
囲であることがより好ましい。
【0044】なお、上記の成分の他に、所望の特性を損
なわない範囲でLi2O、Na2O、K2O、CaO、SrO、BaO、Fe2O
3、Ga2O3、B2O3、P2O5、Nb2O5、Ta2O5及びLa2O3等の希
土類金属酸化物成分を5%まで、結晶化ガラス2に添加
しうる。しかし、これらの成分は著しくガラスのヤング
率を低下させたり、主結晶の析出を阻害したりするの
で、その導入量を5%以下に抑えることが望ましい。さ
らに、ガラスの生産性のことを考慮すると、その含有量
は4%以下であることがさらに好ましい。
【0045】As2O3とSb2O3は元のガラスの均質化を図る
ために脱泡剤として添加される成分である。各ガラスの
高温粘性に応じて適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+S
b2O3をガラスに添加するともっと均質なガラスが得られ
る。しかし、これらの脱泡剤の添加量が多くなり過ぎる
とすると、ガラスの比重が上昇してヤング率を低下させ
る傾向があり、また溶解用白金るつぼと反応して、るつ
ぼにダメージを与える恐れもある。そこで、ので、As2O
3+Sb2O3の添加量は2%以下とすることが好ましい。特
にAs2O3+Sb2O3の添加量は1.5%以下であることが好ま
しい。
【0046】結晶化ガラス2−1における主結晶相は、
例えば、MgO・SiO2及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエン
スタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)結晶相、ま
たはα-石英固溶体若しくは石英系結晶を含む。エンス
タタイトは含まず、エンスタタイト固溶体のみを含む場
合もある。また、エンスタタイトには、クリノエンスタ
タイト、プロトエンスタタイト及びエンスタタイトが包
含される。α−石英固溶体は、例えば、2MgO・2 Al2 O3
5SiO2、MgO・ Al2 O3・3SiO2及びMgO・ Al2 O3・3SiO2 から
選ばれることができる。尚、主結晶相とは、ガラス中の
結晶(X線回折でその種類が特定可能な結晶)のうち他
の結晶相に比べて多い結晶である。結晶化ガラス2−1
において、主結晶であるα−石英固溶体及びエンスタタ
イト(エンスタタイト固溶体を含む)の合計は50体積
%以上である。また、結晶化ガラス2−2は、例えば、
MgO・SiO2及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタタイ
ト(エンスタタイト固溶体を含む)結晶相及びα−石英
固溶体を合計で50体積%以上含有する。
【0047】本発明の結晶化ガラス2−3及び2−4に
おいては、結晶相として、X線回折パターン中に石英に
特有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測さ
れる石英系結晶、並びにエンスタタイト及び/又はエン
スタタイト固溶体を含む。さらにこの結晶化ガラスは、
比重が2.9以上であることができる。結晶化ガラス基板
2−3においては、石英系結晶、並びにエンスタタイト
及び/又はエンスタタイト固溶体を主結晶相として含
む。この場合の主結晶相とは、本発明の効果を得るため
に必須の結晶相であり、ガラス中の結晶(X線回折でそ
の種類が特定可能な結晶)のうち他の結晶相に比べて多
い結晶である。また、結晶化ガラス基板2−4において
は、石英系結晶、並びにエンスタタイト及び/又はエン
スタタイト固溶体を50体積%以上含有する。
【0048】また、結晶化ガラス2−3及び2−4は、
比重が2.9以上である。X線回折パターン中に石英に特
有の回折パターンとほぼ同等の回折パターンが観測され
る石英系結晶は、石英の結晶系をほぼ維持しつつ、その
他の酸化物分子を固溶しているものと考えられ、そのた
め、X線回折パターン中に石英に特有の回折パターンと
ほぼ同等の回折パターンが観測される。また、このた
め、石英系結晶の代わりに石英結晶を含む結晶化ガラス
と比較すると比重が大きい2.9以上である。結晶化ガラ
ス2−3及び2−4の比重の上限は約3.5である。結晶
化ガラス2は、概ね、3.0〜3.2の間の比重を有する。
【0049】さらに上記の主結晶相のほか少量のスピネ
ル、ムライト、フォステライト、コージェライト、チタ
ン酸塩などその他の結晶を含むこともできる。チタン酸
塩はエンスタタイト及びα-石英固溶体または石英系結
晶の結晶核として作用し得る。結晶化ガラス2は、例え
ば、α-石英固溶体または石英系結晶が約40体積%、
エンスタタイト(エンスタタイト固溶体を含む)が約2
5−30体積%、チタン酸塩が約10−15体積%であ
ることができる。結晶化ガラス2において、ガラス中の
結晶の割合は、おおよそ20%以上であることが好まし
い。但し、ガラス中の結晶の割合が80%を超えると結
晶の粒子径が大きくなりやすく好ましくない。ガラス中
の結晶の割合は、40〜80%、特に45〜80%の範
囲であることが好ましい。
【0050】結晶化ガラス2に含まれる結晶(エンスタ
タイト、その固溶体及び/またはα-石英固溶体若しく
は石英系結晶)の粒子径は10〜1000nm範囲にあること
が好ましい。より好ましくは10〜700nm、さらに好ま
しくは10〜300nm、特に好ましくは10〜100nmの範囲で
ある。結晶粒子の粒径の平均値が、1000nm(1μm)
以下であることで、ガラスの機械強度を低下させること
なく、かつ研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラ
スの表面粗度を悪化させることもない。
【0051】[結晶化ガラス3]結晶化ガラスとして
は、SiO2:42−65モル%、Al2O3:0−15モル%、MgO:5
−30モル%、Y2O3:0.5−8モル%、Li2O:10モル%を超
え、25モル%以下、を含有し、主結晶相がβ―石英固溶
体及び/又はエンスタタイトである結晶化ガラス3が好
ましい。
【0052】結晶化ガラス3においてSiO2はガラスの網
目構造の形成物であり、主な析出結晶であるβ−石英固
溶体やエンスタタイトの構成成分でもある。また、主結
晶ではないが、β−スポジュメン固溶体の構成成分でも
ある。SiO2の含有量は42%未満では溶解したガラスが不
安定なので、高温成形ができなくなる傾向がある上、上
記のような結晶を主結晶として析出し難しくなる。ま
た、SiO2の含有量が42%より少なくなると、残存ガラス
マトリックス相の化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化す
る傾向もある。一方、SiO2の含有量が65%を超えるとガ
ラスのヤング率が急激に小さくなる傾向がある。このよ
うに、SiO2の含有量は、析出結晶種及びその析出量、ヤ
ング率、化学耐久性、耐熱性及び成形・生産性を考慮す
ると、42〜65%の範囲であり、下限は、好ましく45%以
上、より好ましくは、48%以上であり、上限は好ましく
は62%以下、より好ましくは60%以下である。
【0053】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種であるβ−石英固溶体の構成成分でもある。Al2O
3の導入は準安定なβ-石英固溶体結晶の析出を促進し、
ガラス表面硬度の向上に寄与する。しかし、Al2O3の含
有量が 15%を超えると、溶融温度や液相温度が高くな
ってガラスが溶けにくくなるうえ、成形しにくくなる。
そこで、Al2O3の含有量は15%以下とする。ガラスの溶解
性、高温度成形性、析出結晶種などのことを考慮する
と、Al2O3の含有量は0〜15%の範囲とし、下限は好まし
くは1%以上、より好ましくは2%以上であり、上限は好ま
しくは10%以下、より好ましくは7%以下である。さら
に、SiO2+ Al2O3の含有量は、ガラスに成形可能な高温
粘性を持たせるという観点から50%以上であることが好
ましく、より好ましくは55%以上である。
【0054】MgOはSiO2成分とともに原ガラスの熱処理
によりβ−石英固溶体やエンスタタイト結晶を生成し、
硬度や耐熱性を向上しつつ透明性を維持させる効果を有
するきわめて重要な成分である。しかし、MgOの含有量
が 5%未満では上記のような効果が得られない。さら
に、MgOの含有量が少なくなると、ガラスの失透傾向
も、溶融温度も高くなるので、MgOの含有量は5%以上と
する。一方、MgOの含有量が30モル%を超えると、ガラ
スの液相温度が急激に高くなり、生産性や加工性も悪化
する。そこで、MgOの含有量は30%以下とする。MgOの含
有量はガラスの生産性や溶融性及び機械強度などのこと
を考慮すると、5〜30%の範囲であり、下限は、好ましく
は7%以上、より好ましくは10%以上であり、上限は好ま
しくは25%以下、より好ましくは20%以下である。
【0055】結晶化ガラス3は、Y2O3を含有する。少な
くとも0.5%のY2O3を導入することによって結晶化ガラス
のヤング率を5GPa程度増大させ、かつ液相温度を50℃
程度低減することができる。さらに、少なくとも0.5%の
Y2O3を導入することによってガラスの熱的な安定性を向
上させることもできる。このように、少量のY2O3を導入
することによってガラスの特性や生産性を格段に向上さ
せることができる。しかし、Y2O3は上記のガラス主結晶
の核生成を抑制する作用も有するので、Y2O3の導入量が
多くなり過ぎると、ガラスは熱処理中で表面結晶化を起
こし、目標とする表面平滑性を有する結晶化ガラスが得
難くなる傾向がある。そこで、Y2O3の含有量を8%以下
とする。Y2O3の含有量の下限は、好ましくは0.5%であ
り、より好ましくは1%である。Y2O3の含有量の上限は、
好ましくは5%であり、より好ましくは3%である。
【0056】Li2OはSiO2とともに原ガラスの熱処理によ
りβ−石英固溶体やβ−スポジュメン固溶体等の結晶を
生成し、ガラスの液相温度や結晶化処理温度を低める効
果を有する成分である。Li2Oの含有量は10%以下では上
記のような効果が得られない。さらに、Li2Oの含有量が
10%以下では、ガラスの溶融温度も高くなり、ガラスデ
ィスク成形の作業温度幅も狭くなってしまう。そこで、
Li2Oの含有量は10%を超えることが適当である。一方、L
i2Oの含有量が25%を超えると、ガラスが非常に不安定と
なり、得られた結晶化ガラスのヤング率も大きく低下す
る傾向がある。そこで、Li2Oの含有量は25%以下とす
る。ガラスの生産性、化学耐久性、機械的な特性を考慮
すると、Li2Oの含有量の下限は、好ましくは10.5%以
上、より好ましくは11%以上である。また、Li2Oの含有
量の上限は、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以
下である。
【0057】結晶化ガラス3は、主結晶相としてβ―石
英固溶体及びエンスタタイトの一方または両方を含有す
る。β―石英固溶体の結晶相は、2MgO・2Al2O3・5SiO2、M
gO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO2からなる群から
選ばれる1種又は2種以上の組成を有するが準安定なク
オーツ(石英固溶体)である。また、エンスタタイトの
結晶相は、例えば、Mg2Si2O6の組成を有するクリノエン
スタタイト結晶相であることができる。さらに結晶化ガ
ラス3は、上記の結晶の他に、結晶相としてβ−スポジ
ュメン固溶体などその他の結晶を含むこともできる。
【0058】結晶化ガラス3に含まれる上記結晶の結晶
粒子粒径は、本発明の結晶化ガラスを表面粗さRaが0.1
−0.9nmの範囲となるように研磨表面を形成できる程度
であることが好ましく、より好ましくは結晶相の結晶粒
子粒径が、表面粗さRaが0.1−0.5nmの範囲となるように
研磨表面を形成できる程度である。結晶化ガラスに含ま
れる結晶相の結晶粒子粒径が上記範囲となることで、優
れた表面平滑性を有する情報記録ディスクを提供するこ
とができる。
【0059】結晶化ガラス3において、ガラスの組成
は、原ガラスの液相温度が1200℃以下となるように
選択することが好ましい。より好ましくは、原ガラスの
液相温度が1150℃以下となるように選択する。原ガ
ラスの液相温度が低いことで、結晶化ガラス基板の製造
が容易となる。即ち、ガラス基板を製造する際に行われ
る原料の熔解、成形等の工程において、著しく高い温度
を用いる必要がないため、熔解炉や成形型の材質の採用
範囲が広がる等、製造が容易になると言う利点がある。
【0060】TiO2、ZrO2、及びP2O5は、いずれも結晶核
の生成剤として作用し、β石英固溶体やエンスタタイト
などの微細結晶粒子の析出を促進する。また、SiO2の含
有量が比較的少ない場合には、ガラスに熱的な安定性を
持たせる成分でもある。従って、結晶化ガラス3は、Ti
O2、ZrO2、及びP2O5の少なくとも1種を含むことが好ま
しい。その場合、TiO2+ZrO2+P2O5の合計含有量が5%未満
では、主結晶の核生成剤としての効果が十分に得られ
ず、ガラスが表面結晶化となり、均質な結晶化ガラスの
作製が難しい傾向がある。そこで、TiO2、ZrO2、及びP2
O5の合計含有量を5%以上にすることが好ましい。一
方、TiO2、ZrO2、及びP2O5の合計含有量が18%を超える
と、ガラスの高温粘性が低くなりすぎて分相したり、失
透したりするので、ガラスの生産性は極端に悪化してし
まう傾向がある。そこで、TiO2+ZrO2+P2O5の合計含有量
は18%以下にすることが好ましい。ガラスの生産性、化
学耐久性、高温粘性、結晶核生成などのことを考慮する
と、TiO2+ZrO2+P2O5の合計含有量は、上述のように5〜1
8%の範囲であることが好ましい。TiO2+ZrO2+P2O5の合計
含有量の下限は、好ましくは6%以上、より好ましい7%
以上であり、上限は好ましくは15%以下、より好ましく
は13%以下である。
【0061】Na2O、K2O、CaO、SrO、BaO、ZnO、NiOなど
のアルカリ及びアルカリ土類金属酸化物成分は、主にガ
ラス高温粘性を調整し、失透傾向を抑え、結晶粒子を均
質化することができる成分である。これらの成分の少な
くとも1つをガラスに添加することで、ガラスのヤング
率は多少小さくなるが、ガラスの生産性が向上し、結晶
化粒子の粒径が均質化するなど、ガラスの他の特性を改
善することができる。ガラスのヤング率、生産性、結晶
化ガラスの表面平滑性、強度などの特性を考慮するとNa
2Oの含有量は0〜10%の範囲、K2Oの含有量は0〜10%の
範囲であり、かつNa2O+K2Oの含有量は10%以下であるこ
とが好ましい。Na2O、K2O及びNa2O+K2Oの含有量は、い
ずれも好ましくは8%以下である。また、同様に、CaOの
含有量は0−10%の範囲、SrOの含有量は0−10%の範
囲、BaOの含有量は0−10%の範囲、ZnOの含有量は0−10
%の範囲、NiOの含有量は0−10%の範囲であり、かつCa
O+SrO+BaO+ZnO+NiOの含有量は10モル%以下であること
が好ましい。さらに、CaO、SrO、BaO、ZnO、NiO及びCaO
+SrO+BaO+ZnO+NiOの含有量は、いずれも好ましくは8%以
下である。
【0062】結晶化ガラス3は、上記の成分の他に、所
望の特性を損なわない範囲でB2O3、Nb2O5、Ta2O5、及び
La2O3等の希土類金属酸化物成分を含有することができ
る。しかし、これらの成分は著しくガラスのヤング率を
低下させる。そこで、B2O3の含有量は0−5%の範囲、R2
O3の含有量は0−5%の範囲(但し、Rは希土類金属イオ
ン(例えば、Nd3+、Pr3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb
3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+)である)、CeO2
含有量は0−5%の範囲、N2O5の含有量は0−5%の範囲
(但し、NはNbまたはTaである)とし、かつB2O3+R2O3+
CeO2+N2O5≦5モル%であることが好ましい。さらに、
ガラスの生産性を考慮すると、上記各成分の含有量及び
合計の含有量は4%以下にすることがさらに好ましい。
【0063】As2O3とSb2O3は、結晶化ガラスの原料とな
るガラスの均質化を図るために脱泡剤として添加される
成分である。各ガラスの高温粘性に応じて適当量のAs2O
3及びSb2O3の一方又は両方をガラスに添加することで、
より均質なガラスが得られる。しかし、これら脱泡剤の
添加量が多くなり過ぎると、ガラスの比重が上昇してヤ
ング率を低下させる傾向があり、また溶解用白金るつぼ
と反応し、るつぼにダメージを与える恐れもある。そこ
で、As2O3の含有量は0−2%の範囲、Sb2O3の含有量は0
−2%の範囲とし、かつAs2O3+Sb2O3≦2モル%とするこ
とが好ましい。特に、As2O3、Sb2O3及びAs2O3+Sb2O3
含有量は、いずれも1.5%以下であることが好ましい。
【0064】[結晶化ガラス4]結晶化ガラスとして
は、SiO2:35−55モル%、Al2O3:0モル%以上、
5モル%未満、但し、SiO2+Al2O3≧40モル%、MgO:2
5−45モル%、Y2O3:0.5−8モル%、ZrO2:0−
10モル%、TiO2:0−12モル%但し、ZrO2+TiO2
4.5−18モル%を含有し、主結晶相がエンスタタイ
ト及び/又はβ−石英固溶体である結晶化ガラス4であ
ることが好ましい。
【0065】結晶化ガラス4においてSiO2はガラスの網
目構造の形成物であり、主な析出結晶であるエンスタタ
イトやβ−石英固溶体の構成成分でもある。SiO2の含有
量が35%未満では溶解したガラスが非常に不安定なの
で、高温成形ができなくなる傾向があるうえ、上記のよ
うな結晶も析出し難しくなる。また、SiO2の含有量が35
%より少なくなると、残存ガラスマトリックス相の化学
耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する場合もある。一方、
SiO2の含有量が55%を超えると、ガラスのヤング率が急
激に小さくなる傾向がある。そこで、析出結晶種及びそ
の析出量、化学耐久性、耐熱性及び成形・生産性を考慮
すると、SiO2の含有量の下限は35%であり、上限は55%で
ある。SiO2の含有量の下限は、好ましくは37%であり、
より好ましくは40%である。また、SiO2の含有量の上限
は、好ましくは54%であり、より好ましくは53%である。
【0066】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種のβ−石英固溶体の構成成分でもある。Al2O3
導入は準安定なβ−石英固溶体結晶の析出を促進し、ガ
ラス表面硬度の向上に寄与する。しかし、Al2O3の含有
量が 5%以上であると、溶融温度や液相温度が高くなっ
てガラスが溶けにくくなるうえ、成形しにくくなる。そ
こで、Al2O3の含有量は5%未満とする。ガラスの溶解
性、高温度成形性、析出結晶種などのことを考慮する
と、Al2O3の含有量の下限は、好ましくは0%であり、よ
り好ましくは1%である。Al2O3の含有量の上限は、好ま
しくは4.5%であり、より好ましくは4%である。尚、上記
のようにAl2O3は必ずしも含有されなくても良いが、ガ
ラスに十分な化学耐久性、量産可能な熱的安定性を付与
するという観点から、SiO2とAl2O3との合計含有量(SiO2
+Al2O3)は40モル%以上とする。そのため、Al2O3が含有
されない場合、SiO2の含有量は40モル%以上とする。ま
た、SiO2とAl2O3との合計含有量は、好ましくは42モル
%以上である。
【0067】MgOはSiO2成分とともに原ガラスの熱処理
によりエンスタタイト結晶を生成し、硬度や耐熱性を向
上しつつ透明性を維持させる効果を有する成分である。
MgOの含有量が 25%未満では上記のような効果は得られ
ない。そこで、MgOの含有量は25%以上とする。一方、Mg
Oの含有量が45モル%を超えると、ガラスの高温粘性が
急激に低くなって熱的に不安定となり、生産性や加工性
も悪化する傾向がある。そこで、MgOの含有量は45%以
下とする。MgOの含有量は、ガラスの生産性、化学耐久
性、高温粘性及び強度などのことを考慮すると、下限は
25%であり、上限は45%である。下限は、好ましくは28
%、より好ましくは32%であり、上限は好ましくは43%、
より好ましくは42%である。
【0068】結晶化ガラス4は、Y2O3を含有する。少な
くとも0.5%のY2O3を導入することによって結晶化ガラス
のヤング率を5Gpa程度増大させ、かつ液相温度を50℃
程度低減することができる。さらに、少なくとも0.5%の
Y2O3を導入することによってガラスの熱的な安定性を向
上させることもできる。このように、少量のY2O3を導入
することによってガラスの特性や生産性を格段に向上さ
せることができる。しかし、Y2O3は上記のガラス主結晶
の核生成を抑制する作用も有するので、Y2O3の導入量が
多くなり過ぎると、ガラスは熱処理中で表面結晶化を起
こし、目標とする表面平滑性を有する結晶化ガラスが得
難くなる傾向がある。そこで、Y2O3の含有量を8%以下
とする。Y2O3の含有量の下限は、好ましくは0.5%であ
り、より好ましくは1%である。Y2O3の含有量の上限は、
好ましくは5%であり、より好ましくは3%である。
【0069】TiO2とZrO2は結晶核の生成剤としてβ−石
英固溶体やエンスタタイトなどの結晶粒子の析出に欠か
せない成分であり、また、SiO2の含有量が少ない時、ガ
ラスの熱的な安定性を持たせる成分でもある。TiO2とZr
O2の合計含有量が4.5%未満では、主結晶の核生成剤とし
て十分に作用しないため、ガラスが表面結晶化を起こ
し、均質な結晶化ガラスの作製が困難となる。そこで、
TiO2とZrO2の合計含有量は4.5%以上とする。しかし、T
iO2とZrO2の合計含有量が18%を超えると、ガラスの高温
粘性が低くなりすぎて分相したり、失透したりするの
で、ガラスの生産性は極端に悪化してしまう傾向があ
る。そこで、TiO2とZrO2の合計含有量は18%以下にす
る。ガラスの生産性、化学耐久性、高温粘性、結晶核生
成などのことを考慮すると、TiO2とZrO2の合計含有量の
下限は4.5%であり、上限は18%である。TiO 2とZrO2の合
計含有量の下限は、好ましくは5%であり、上限は、好ま
しくは15%である。但し、ガラスの高温溶融性や熱的な
安定性を考慮すると、ZrO2の含有量は0〜10モル%の
範囲とし、TiO2の含有量は0〜12モル%の範囲とする
ことが適当である。
【0070】結晶化ガラス4は、主結晶相としてβ−石
英固溶体及びエンスタタイトの一方または両方を含有す
る。β−石英固溶体の結晶相は、2MgO・2Al2O3・5SiO2、M
gO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO2からなる群から
選ばれる1種又は2種以上の組成を有するが準安定なク
オーツ(石英固溶体)である。また、エンスタタイトの
結晶相は、例えば、Mg2Si2O6の組成を有するクリノエン
スタタイト結晶相であることができる。
【0071】結晶化ガラス4に含まれる上記結晶の結晶
粒子粒径は、本発明の結晶化ガラスを表面粗さRaが0.1
−1.0nmの範囲となるように研磨表面を形成できる程度
であることが好ましく、より好ましくは結晶相の結晶粒
子粒径が、表面粗さRaが0.1−0.5nmの範囲となるように
研磨表面を形成できる程度である。結晶化ガラスに含ま
れる結晶相の結晶粒子粒径が上記範囲となることで、優
れた表面平滑性を有する情報記録ディスクを提供するこ
とができる。
【0072】Li2O、Na2O、K2Oなどのアルカリ金属酸化
物はガラスの液相温度を下げ、結晶粒子をより細かく析
出させるために添加される成分である。例えば約2%程度
のLi 2OをMgO−Al2O3−SiO2−TiO2ガラスに導入すると、
ガラスのヤング率がほとんど変わらないのに対し、結晶
粒子の大きさはLi2Oを添加しないガラスと比べ約半分以
下となる。また、Li2O、Na2O、K2Oはガラスの液相温度
を下げる役割も大きく、2%程度のアルカリ金属酸化物の
導入でガラスの液相温度を約50℃程度下げることができ
る。しかし、Li2Oなどのアルカリ成分の含有量が多過ぎ
ると、ガラスのヤング率は下がり、失透傾向が大きくる
など、ガラスの生産性を著しく悪化させる傾向がある。
そのため、Li2O、Na2O及びK2Oの合計導入量は5%以下
とする。Li2O、Na2O及びK2Oの合計導入量は、より好ま
しくは4%以下である。
【0073】CaO、SrO、BaO、ZnO、NiOなどのアルカリ
土類金属酸化物成分は、主にガラス高温粘性を調整し、
失透傾向を抑え、結晶粒子を均質化することができる成
分である。これらの成分の少なくとも1つをガラスに添
加することで、ガラスのヤング率は多少小さくなるが、
ガラスの生産性が向上し、結晶化粒子の粒径が均質化す
るなど、ガラスの他の特性を改善することができる。ガ
ラスのヤング率、生産性、結晶化ガラスの表面平滑性、
強度などの特性を考慮するとCaOの含有量は0−10%の範
囲、SrOの含有量は0−10%の範囲、BaOの含有量は0−10
%の範囲、ZnOの含有量は0−10%の範囲、NiOの含有量
は0−10%の範囲であり、かつCaO+SrO+BaO+ZnO+NiOの含
有量は10モル%以下であることが好ましい。さらに、Ca
O、SrO、BaO、ZnO、NiO及びCaO+SrO+BaO+ZnO+NiOの含有
量は、いずれも好ましくは8%以下である。
【0074】結晶化ガラス4は、上記の成分の他に、所
望の特性を損なわない範囲でB2O3、P2O5、Nb2O5、Ta
2O5、及びLa2O3等の希土類金属酸化物成分を含有するこ
とができる。しかし、これらの成分は著しくガラスのヤ
ング率を低下させる。そこで、B2O3の含有量は0−5%の
範囲、P2O5の含有量は0−5%の範囲、R2O3の含有量は0
−5%の範囲(但し、Rは希土類金属イオン(例えば、Nd
3+、Pr3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、H
o3+、Er3+、Tm3+、Yb3+)である)、CeO2の含有量は0−5
%の範囲、N2O5の含有量は0−5%の範囲(但し、NはNb
またはTaである)とし、かつB2O3+P2O5+R2O3+CeO2+N2O5
≦5モル%であることが好ましい。さらに、ガラスの生
産性を考慮すると、上記各成分の含有量及び合計の含有
量は4%以下にすることがさらに好ましい。
【0075】As2O3とSb2O3は、結晶化ガラスの原料とな
るガラスの均質化を図るために脱泡剤として添加される
成分である。各ガラスの高温粘性に応じて適当量のAs2O
3及びSb2O3の一方又は両方をガラスに添加することで、
より均質なガラスが得られる。しかし、これら脱泡剤の
添加量が多くなり過ぎると、ガラスの比重が上昇してヤ
ング率を低下させる傾向があり、また溶解用白金るつぼ
と反応し、るつぼにダメージを与える恐れもある。そこ
で、As2O3の含有量は0−2%の範囲、Sb2O3の含有量は0
−2%の範囲とし、かつAs2O3+Sb2O3≦2モル%とするこ
とが好ましい。特に、As2O3、Sb2O3及びAs2O3+Sb2O3
含有量は、いずれも1.5%以下であることが好ましい。
【0076】[結晶化ガラス5]結晶化ガラスとして
は、SiO2:35−65モル%、Al2O3: 5−25モル%、MgO:
10−40モル%、TiO2:5−15 モル%、Y2O3:0.8−10モ
ル%を含有する組成を有することを特徴とする結晶化ガ
ラス5であることが好ましい。結晶化ガラス5において
SiO2はガラスの網目構造の形成物であり、主な析出結晶
である2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2及びMgO・Al
2O3・4SiO2のような準安定な石英固溶体、MgO・SiO2の組
成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al )SiO3の組成を有
するエンスタタイト固溶体を構成成分でもある。SiO2
含有量が35%未満では溶解したガラスが非常に不安定な
ので、高温成形ができなくなるおそれがあるうえ、上記
のような結晶も析出し難しくなる。また、SiO2の含有量
が35%より少なくなると、残存ガラスマトリックス相の
化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する傾向がある。一
方、SiO2の含有量が65%を超えると、主結晶相として準
安定な石英固溶体及びエンスタタイトが析出しにくくな
り、ガラスのヤング率が急激に小さくなる傾向がある。
そのため、SiO2の含有量は、析出結晶種及びその析出
量、化学耐久性、耐熱性及び成形・生産性を考慮する
と、35−65%の範囲である。より好ましい物性を有する
結晶化ガラスが得られるという観点から、SiO2の含有量
は、好ましくは、37−60%の範囲である。
【0077】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種である2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及
びMgO・Al2O3・4SiO2等の準安定な石英固溶体結晶の構成
成分である。Al2O3の導入は準安定な石英固溶体結晶の
析出を促進し、ガラス表面硬度の向上に寄与する。しか
し、Al2O3の含有量が 5%未満では上記のような高ヤン
グ率結晶が析出しにくくなり、ガラスマトリックス相の
化学耐久性も低下し、基板材料に要求される強度が得ら
れにくくなる傾向がある。一方、Al2O3の含有量が25モ
ル%を超えると、エンスタタイトのような高ヤング率結
晶相が析出しにくくなくとともに、溶融温度が高くなっ
てガラスが溶けにくくなるうえ、失透しやすくなって容
易に成形しにくくなる傾向がある。従って、ガラスの溶
解性、高温度成形性、析出結晶種などを考慮して、Al2O
3の含有量は5−25%の範囲、好ましくは7−22%の範囲と
することが適当である。MgOはガラスの修飾成分であ
り、エンスタタイト結晶や準安定な石英固溶体の結晶構
造をもち、2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及び
MgO・Al2O3・4SiO2のような組成を有する結晶種の主成分
でもある。MgOの含有量が10%未満では上記のような結
晶が析出しにくく、ガラスの失透傾向及び溶融温度が高
く、かつガラス成形の作業温度幅が狭くなる傾向があ
る。一方、MgOの含有量が40モル%を超えると、ガラス
の高温粘性が急激に低くなって熱的に不安定となり、生
産性も悪化し、ヤング率や耐久性も低下する傾向があ
る。そこで、MgOの含有量は、ガラスの生産性、化学耐
久性、高温粘性及び強度などを考慮すると、10−40%の
範囲であること、好ましくは12−38%の範囲であること
が適当である。
【0078】TiO2はエンスタタイト結晶相や準安定な石
英固溶体の結晶構造をもつ2MgO・2Al 2O3・5SiO2、MgO・Al2
O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO2結晶相析出の核生成剤
である。さらに、TiO2は、SiO2の含有量が少ない場合
に、ガラスの失透を抑える効果も有する。但し、TiO2
含有量が5%未満の場合、主結晶の核生成剤としての効果
が充分に得られず、ガラスが表面結晶化してしまい、均
質な結晶化ガラスの作製が難しくなる傾向がある。一
方、TiO2の含有量が15%を超えると、ガラスの高温粘性
が低くなりすぎて分相したり、失透したりするので、ガ
ラスの生産性が極端に悪化する傾向がある。そのため、
ガラスの生産性、化学耐久性、高温粘性、結晶核生成な
どを考慮すると、TiO2の含有量は5−15%の範囲であるこ
と、好ましくは5.5−14%の範囲であることが適当であ
る。
【0079】結晶化ガラス5において、Y2O3は重要な働
きをする。例えば、2%のY2O3を導入することによって結
晶化ガラスのヤング率を10Gpa程度増大でき、かつ液相
温度を50−100℃程度低減することができる。即ち、少
量のY2O3の導入によってガラスの特性や生産性を格段に
向上させることができる。但し、Y2O3の含有量が0.8%
よりも少ないと、このようなY2O3の効果が充分に得られ
ない。また、Y2O3は前述のガラスに含まれる主結晶の成
長を抑える力をもつ。そのため、Y2O3の含有量が多過ぎ
ると、ガラスを結晶化させる目的で行われる熱処理にお
いて、表面結晶化が起り易く、目的とする結晶化ガラス
が作れなくなる傾向がある。このような観点からY2O3
含有量は、10%以下とすることが適当である。特に、Y2O
3の含有量は、8%以下であることが好ましい。
【0080】上記以外の成分としては、結晶化ガラスの
所望の特性を損なわない範囲で、Li 2O、Na2O、K2O、Ca
O、SrO、BaO、ZnO、NiOなどのアルカリ金属及びアルカ
リ土類金属の酸化物成分の一種又は二種以上を0−10モ
ル%、 B2O3、P2O5、R2O3(R:Yを除く希土類金属イ
オン)、ZrO2、CeO2、N2O5(N:Nb、Ta)を0−5モル%
含有させることができる。また、ガラスの均質化を図る
ために脱泡剤としてAs2O3及び/又はSb2O3を含有させる
こともできる。ガラスの組成により変化するの高温粘性
に応じて、適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3
ガラスに添加することで、より均質なガラスが得られ
る。但し、脱泡剤の添加量が多過ぎると、ガラスの比重
が上昇してヤング率を低下させる傾向があり、また溶解
用白金るつぼと反応し、るつぼにダメージを与える場合
もある。そこで、脱泡剤の添加量は2%以下、好ましく
は1.5%以下とすることが適当である。以上の基本成分
の他に原料中の不純物、例えばガラスの清澄剤となるC
l、F、SO3等を本発明の結晶化ガラスの特性を損ねるこ
とのない、それぞれ1%以下であれば含有させることが
できる。
【0081】結晶化ガラス5における主結晶相は、例え
ば、MgO・SiO2及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタ
タイト(エンスタタイト固溶体を含む)結晶相、または
2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3
4SiO2からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組成
有するが準安定なクオーツ(石英固溶体)であることが
できる。石英固溶体としては、特にβ−石英固溶体を挙
げることが出来る。また、エンスタタイトには、クリノ
エンスタタイト、プロトエンスタタイト及びエンスタタ
イトが包含される。さらに上記の結晶のほかスピネル、
ムライト、2MgO・SiO2、MgO・SiO2などその他の結晶を含
むこともできる。さらに、結晶化ガラス5に含まれる結
晶の粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm
以下であることがより好ましい。結晶粒子の粒径が1μ
mを超えると、ガラスの機械強度を低下させるだけでな
く、研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラスの表
面欠陥が多くなるおそれがある。
【0082】[結晶化ガラス6]結晶化ガラスとして
は、SiO2:35−65モル%、Al2O3: 5−25モル%、MgO:
10−40モル%、TiO2:5−15 モル%、Li2O:0.2−10モ
ル%を含有し、主結晶相がエンスタタイト及び準安定な
石英固溶体であり、かつ結晶粒子の平均粒径が1μm以下
である結晶化ガラス6が好ましい。結晶化ガラス6にお
いて、SiO2はガラスの網目構造の形成物であり、主な析
出結晶である2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及
びMgO・Al2O3・4SiO2のような準安定な石英固溶体及びMgO
・SiO2の組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al )SiO3
の組成を有するエンスタタイト固溶体の構成成分でもあ
る。SiO2の含有量が35%未満では溶解したガラスが非常
に不安定なので、高温成形ができなくなるおそれがある
うえ、上記のような結晶も析出し難しくなる。また、Si
O2の含有量が35%より少なくなると、残存ガラスマトリ
ックス相の化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する傾向
がある。一方、SiO2の含有量が65%を超えると、主結晶
相として準安定な石英固溶体やエンスタタイトが析出し
にくくなり、ガラスのヤング率が急激に小さくなる傾向
がある。そのため、SiO2の含有量は、析出結晶種及びそ
の析出量、化学耐久性、耐熱性及び成形・生産性を考慮
すると、35−65%の範囲である。より好ましい物性を有
する結晶化ガラスが得られるという観点から、SiO2の含
有量は、好ましくは、37−60%の範囲である。
【0083】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種である:2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2
及びMgO・Al2O3・4SiO2等の準安定な石英固溶体結晶の構
成成分である。Al2O3の導入は準安定な石英固溶体結晶
の析出を促進し、ガラス表面硬度の向上に寄与する。し
かし、Al2O3の含有量が 5%未満では上記のような高ヤ
ング率結晶が析出しにくくなり、ガラスマトリックス相
の化学耐久性も低下し、基板材料に要求される強度が得
られにくくなる傾向がある。一方、Al2O3の含有量が25
モル%を超えると、主結晶相としてのエンスタタイトの
析出がしにくくなるとともに、溶融温度が高くなってガ
ラスが溶けにくくなるうえ、失透しやすくなって容易に
成形しにくくなる傾向がある。従って、ガラスの溶解
性、高温度成形性、析出結晶種などを考慮して、Al2O3
の含有量は5−25%の範囲、好ましくは7−22%の範囲と
することが適当である。
【0084】MgOはガラスの修飾成分であり、MgO・SiO2
の組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al )SiO3の組成
を有するエンスタタイト固溶体の結晶や準安定な石英固
溶体の結晶構造をもち、2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3
・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO 2のような組成を有する結
晶種の主成分でもある。MgOの含有量が10%未満では上
記のような結晶が析出しにくく、ガラスの失透傾向及び
溶融温度が高く、かつガラス成形の作業温度幅が狭くな
る傾向がある。一方、MgOの含有量が40モル%を超える
と、ガラスの高温粘性が急激に低くなって熱的に不安定
となり、生産性も悪化し、ヤング率や耐久性も低下する
傾向がある。そこで、MgOの含有量は、ガラスの生産
性、化学耐久性、高温粘性及び強度などを考慮すると、
10−40%の範囲であること、好ましくは12−37%の範囲
であることが適当である。
【0085】但し、モル比(Al2O3/MgO)は0.9未満
となるように、MgO及びAl2O3の含有量は調整することが
好ましい。モル比(Al2O3/MgO)が、0.9以上になる
と、結晶化ガラスのヤング率が低下する傾向があるから
である。Al2O3/MgO<0.9とすることで、150GPa以
上の高ヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもでき
る。好ましくはAl2O3/MgO<0.5、より好ましくはAl
2O3/MgO<0.45である。但し、Al2O3/MgOのモル比
を小さくし過ぎると、ガラスの高温粘性が低下する傾向
があるのでAl2O3/MgO比は0.2以上、好ましくは0.
25以上であることが適当である。
【0086】TiO2は、MgO・SiO2の組成を有するエンスタ
タイト及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタタイト
固溶体の結晶、または準安定な石英固溶体の結晶構造を
もつ2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al
2O3・4SiO2結晶相析出の核生成剤である。さらに、TiO2
は、SiO2の含有量が少ない場合に、ガラスの失透を抑え
る効果も有する。但し、TiO2の含有量が5%未満の場合、
主結晶の核生成剤としての効果が充分に得られず、ガラ
スが表面結晶化してしまい、均質な結晶化ガラスの作製
が難しくなる傾向がある。一方、TiO2の含有量が15%を
超えると、ガラスの高温粘性が低くなりすぎて分相した
り、失透したりするので、ガラスの生産性が極端に悪化
する傾向がある。そのため、ガラスの生産性、化学耐久
性、高温粘性、結晶核生成などを考慮すると、TiO2の含
有量は5−15%の範囲であること、好ましくは5.5−14%
の範囲であることが適当である。
【0087】結晶化ガラス6においてLi2Oは必須の成分
である。Li2Oはガラスの液相温度を下げ、より細かい結
晶粒子の析出を促進する成分である。例えば、約2%程度
のLi 2OをMgO−Al2O3−SiO2−TiO2ガラスに導入すると、
ガラスのヤング率がほとんど変わらないのに対し、結晶
粒子の大きさはLi2Oを添加しないガラスと比べ約半分以
下となる。また、Li2Oはガラスの液相温度を下げる役割
も大きく、2%程度のLi 2Oの導入でガラスの液相温度を約
50℃程度下げることができる。しかし、Li2Oの含有量含
有量が多くなり過ぎるとガラスの高温分相が顕著とな
り、失透傾向が大きくなったりするなど、ガラスの生産
性を著しく悪化させる傾向がある。そこで、Li2Oの含有
量は0.2−10%の範囲であることが適当である。より好ま
しくはLi2Oの含有量は0.5−8%の範囲である。
【0088】結晶化ガラス6において、Y2O3は必須の成
分ではないが、例えば、2%のY2O3を導入することによっ
て結晶化ガラスのヤング率を10Gpa程度増大でき、かつ
液相温度を50−100℃程度低減することができる。即
ち、少量のY2O3の導入によってガラスの特性や生産性を
格段に向上させることができ、Y2O3の含有量が0.8%以
上であれば、Y2O3の効果が得られる。但し、Y2O3は前述
のガラスに含まれる主結晶の成長を抑える力をもつ。そ
のため、Y2O3の含有量が多過ぎると、ガラスを結晶化さ
せる目的で行われる熱処理において、表面結晶化が起り
易く、目的とする結晶化ガラスが作れなくなる傾向があ
る。このような観点からY2O3の含有量は、10%以下とす
ることが適当である。特に、Y2O3の含有量は、8%以下で
あることが好ましい。
【0089】上記以外の成分として、結晶化ガラス6に
は、任意成分として、Na2O:0−10モル%、K2O:0−10
モル%、CaO:0−10モル%、SrO:0−10モル%、BaO:0
−10モル%、ZnO:0−10モル%、NiO:0−10モル%、R2
O3:0−5モル%(R:Bイオン、希土類金属イオン)、C
eO2:0−5モル%、ZrO2:0−5モル%、N2O5:0−5モル
%(N:Pイオン、Nbイオン、Taイオン)、As2O3:0-2
モル%、Sb2O3:0-2モル%を含有させることもできる。
【0090】Na2O、K2O、CaO、SrO、BaO、ZnO、NiOなど
のアルカリ及びアルカリ土類金属酸化物成分を含有させ
ることで、主にガラス高温粘性を調整し、失透傾向を抑
え、結晶粒子の均質化を図ることができる。例えば、上
記の成分を本発明の結晶化ガラス6に2−5%程度導入す
ると、ヤング率が多少小さくなるが、ガラスの生産性が
向上し、結晶化粒子の粒径が均質化するなど、ガラスの
他の特性を改善することができる。但し、ガラスのヤン
グ率、生産性、結晶化ガラスの表面平滑性、強度などの
特性を総合的に考慮すると、Na2O、K2O、CaO、SrO、Ba
O、ZnO、NiOなどのアルカリ及びアルカリ土類金属酸化
物成分の含有量は10%以下であることが好ましく、より
好ましくは7%以下である。
【0091】結晶化ガラス6にB2O3、P2O5を含有させる
ことで、主にガラス成形温度範囲での失透を抑制するこ
とができる。但し、これらの成分は著しくガラスのヤン
グ率を低下させるため、含有量は5%以下とすることが
望ましい。さらに、ガラスの生産性を考慮すると、その
含有量は4%以下とすることがさらに好ましい。
【0092】結晶化ガラス6にR2O3(R:希土類金属イ
オン)、CeO2、N2O5(N:Nb、Ta)を含有させること
で、ガラスの熱的な安定性や生産性及びヤング率などを
向上させることができる。さらにこれらの成分は、結晶
粒子の成長を抑える働きもあることから、表面平滑性に
より優れたガラスの作製を可能にする成分である。しか
し、これらの酸化物はいずれも高価なものであるうえ、
導入量が多くなり過ぎると、ガラスの液相温度を悪化さ
せたり、ガラスの比重を急激に増加したりする。そのた
め、その含有量は5%以下とすることが適当である。R2O
3の導入量は、このようにガラスの生産性、比重、液相
温度などを考慮して5%以下、好ましくは4%以下とする
ことが適当である。
【0093】結晶化ガラス6には、ガラスの均質化を図
るために脱泡剤としてAs2O3及び/又はSb2O3を含有させ
ることもできる。ガラスの組成により変化するの高温粘
性に応じて、適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3
をガラスに添加することで、より均質なガラスが得られ
る。但し、脱泡剤の添加量が多過ぎると、ガラスの比重
が上昇してヤング率を低下させる傾向があり、また溶解
用白金るつぼと反応し、るつぼにダメージを与える場合
もある。そこで、脱泡剤の添加量は2%以下、好ましく
は1.5%以下とすることが適当である。以上の基本成分
の他に原料中の不純物、例えばガラスの清澄剤となるC
l、F、SO3等を結晶化ガラス6の特性を損ねることのな
い、それぞれ1%以下であれば含有させることができ
る。
【0094】結晶化ガラス6における主結晶相は、例え
ば、MgO・SiO2及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタ
タイト(エンスタタイト固溶体を含む)、並びに2MgO・2
Al2O 3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO2
からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組成を有す
る準安定なクオーツ(石英固溶体)である。石英固溶体
としては、特にβ−石英固溶体を挙げることが出来る。
また、エンスタタイトには、クリノエンスタタイト、プ
ロトエンスタタイト及びエンスタタイトが包含される。
結晶化ガラス6は、エンスタタイト及び準安定な石英固
溶体を主結晶相として含有することで、優れたヤング
率、強度及び耐熱性を有することができる。但し、上記
の結晶のほかスピネル、ムライト、2MgO・SiO2、MgO・Si
O2、チタン酸塩などその他の結晶を含むこともできる。
【0095】結晶化ガラス6に含まれるエンスタタイト
や準安定な石英固溶体などの結晶の平均粒子径は1μm
以下である。結晶粒子の粒子径が1μm以下であること
で、強度及び表面平滑性に優れた結晶化ガラスとするこ
とができる。結晶の均粒子径が1μmを超えると、ガラ
スの機械強度を低下させるだけでなく、研磨加工時に結
晶の欠落を引き起こしてガラスの表面粗度を悪化させ
る。上記結晶粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以下で
ある。
【0096】[結晶化ガラス7]結晶化ガラスとして
は、SiO2:35−65モル%、Al2O3: 5−25モル%、MgO:
10−40モル%、及びTiO2:5−15 モル%を含有し、か
つモル比(Al23/MgO)が0.5未満である組成
を有する結晶化ガラス7が好ましい。結晶化ガラス7に
おけるSiO2はガラスの網目構造の形成物であり、主な析
出結晶である2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及
びMgO・Al2O3・4SiO2のような準安定な石英固溶体及びMgO
・SiO2の組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al )SiO3
の組成を有するエンスタタイト固溶体の構成成分でもあ
る。SiO2の含有量が35%未満では溶解したガラスが非常
に不安定なので、高温成形ができなくなるおそれがある
うえ、上記のような結晶も析出し難しくなる。また、Si
O2の含有量が35%より少なくなると、残存ガラスマトリ
ックス相の化学耐久性が悪化し、耐熱性も悪化する傾向
がある。一方、SiO2の含有量が65%を超えると、主結晶
相として準安定な石英固溶体やエンスタタイトが析出し
にくくなり、ガラスのヤング率が急激に小さくなる傾向
がある。そのため、SiO2の含有量は、析出結晶種及びそ
の析出量、化学耐久性、耐熱性及び成形・生産性を考慮
すると、35−65%の範囲である。より好ましい物性を有
する結晶化ガラスが得られるという観点から、SiO2の含
有量は、好ましくは、40−60%の範囲である。
【0097】Al2O3はガラスの中間酸化物であり、主な
結晶種である:2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2
及びMgO・Al2O3・4SiO2等の準安定な石英固溶体結晶の構
成成分である。Al2O3の導入は準安定な石英固溶体結晶
の析出を促進し、ガラス表面硬度の向上に寄与する。し
かし、Al2O3の含有量が 5%未満では上記のような高ヤ
ング率結晶が析出しにくくなり、ガラスマトリックス相
の化学耐久性も低下し、基板材料に要求される強度が得
られにくくなる傾向がある。一方、Al2O3の含有量が25
モル%を超えると、主結晶相としてのエンスタタイトの
析出がしにくくなるとともに、溶融温度が高くなってガ
ラスが溶けにくくなるうえ、失透しやすくなって容易に
成形しにくくなる傾向がある。従って、ガラスの溶解
性、高温度成形性、析出結晶種などを考慮して、Al2O3
の含有量は5−25%の範囲、好ましくは7−22%の範囲と
することが適当である。
【0098】MgOはガラスの修飾成分であり、MgO・SiO2
の組成を有するエンスタタイト及び(Mg・Al )SiO3の組成
を有するエンスタタイト固溶体の結晶や準安定な石英固
溶体の結晶構造をもち、2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3
・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO 2のような組成を有する結
晶種の主成分でもある。MgOの含有量が10%未満では上
記のような結晶が析出しにくく、ガラスの失透傾向及び
溶融温度が高く、かつガラス成形の作業温度幅が狭くな
る傾向がある。一方、MgOの含有量が40モル%を超える
と、ガラスの高温粘性が急激に低くなって熱的に不安定
となり、生産性も悪化し、ヤング率や耐久性も低下する
傾向がある。そこで、MgOの含有量は、ガラスの生産
性、化学耐久性、高温粘性及び強度などを考慮すると、
10−40%の範囲であること、好ましくは12−38%の範囲
であることが適当である。
【0099】但し、モル比(Al2O3/MgO)は0.5未満
となるように、MgO及びAl2O3の含有量は調整する。モル
比(Al2O3/MgO)が、0.5以上になると、結晶化ガラ
スのヤング率が急激に低下する傾向があるからである。
Al2O3/MgO<0.5とすることで、150GPa以上の高
ヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもできる。好
ましくはAl2O3/MgO<0.45である。但し、Al2O3/M
gOのモル比を小さくし過ぎると、ガラスの高温粘性が低
下する傾向があるのでAl2O3/MgO比は0.2以上、好ま
しくは0.25以上であることが適当である。
【0100】TiO2はMgO・SiO2の組成を有するエンスタタ
イト及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタタイト固
溶体の結晶、または準安定な石英固溶体の結晶構造をも
つ2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O
3・4SiO2結晶相析出の核生成剤である。さらに、TiO
2は、SiO2の含有量が少ない場合に、ガラスの失透を抑
える効果も有する。但し、TiO2の含有量が5%未満の場
合、主結晶の核生成剤としての効果が充分に得られず、
ガラスが表面結晶化してしまい、均質な結晶化ガラスの
作製が難しくなる傾向がある。一方、TiO2の含有量が15
%を超えると、ガラスの高温粘性が低くなりすぎて分相
したり、失透したりするので、ガラスの生産性が極端に
悪化する傾向がある。そのため、ガラスの生産性、化学
耐久性、高温粘性、結晶核生成などを考慮すると、TiO2
の含有量は5−15%の範囲であること、好ましくは5.5−1
4%の範囲であることが適当である。
【0101】結晶化ガラス7において、Y2O3は必須の成
分ではないが、例えば、2%のY2O3を導入することによっ
て結晶化ガラスのヤング率を10GPa程度増大でき、かつ
液相温度を50−100℃程度低減することができる。即
ち、少量のY2O3の導入によってガラスの特性や生産性を
格段に向上させることができ、Y2O3の含有量が0.8%以
上であれば、Y2O3の効果が得られる。但し、Y2O3は前述
のガラスに含まれる主結晶の成長を抑える力をもつ。そ
のため、Y2O3の含有量が多過ぎると、ガラスを結晶化さ
せる目的で行われる熱処理において、表面結晶化が起り
易く、目的とする結晶化ガラスが作れなくなる傾向があ
る。このような観点からY2O3の含有量は、10%以下とす
ることが適当である。特に、Y2O3の含有量は、8%以下で
あることが好ましい。
【0102】上記以外の成分としては、結晶化ガラスの
所望の特性を損なわない範囲で、Li 2O、Na2O、K2O、Ca
O、SrO、BaO、ZnO、NiOなどのアルカリ金属及びアルカ
リ土類金属の酸化物成分の一種又は二種以上を0−10モ
ル%、 B2O3、P2O5、R2O3(R:Yを除く希土類金属イ
オン)、ZrO2、CeO2、N2O5(N:Nb、Ta)を0−5モル%
含有させることができる。また、ガラスの均質化を図る
ために脱泡剤としてAs2O3及び/又はSb2O3を含有させる
こともできる。ガラスの組成により変化するの高温粘性
に応じて、適当量のAs2O3やSb2O3或いはAs2O3+Sb2O3
ガラスに添加することで、より均質なガラスが得られ
る。但し、脱泡剤の添加量が多過ぎると、ガラスの比重
が上昇してヤング率を低下させる傾向があり、また溶解
用白金るつぼと反応してるつぼにダメージを与える場合
もある。そこで、脱泡剤の添加量は2%以下、好ましく
は1.5%以下とすることが適当である。以上の基本成分
の他に原料中の不純物、例えばガラスの清澄剤となるC
l、F、SO3等を本発明の結晶化ガラスの特性を損ねるこ
とのない、それぞれ1%以下であれば含有させることが
できる。
【0103】結晶化ガラス7における主結晶相は、例え
ば、MgO・SiO2及び(Mg・Al )SiO3の組成を有するエンスタ
タイト(エンスタタイト固溶体を含む)、並びに2MgO・2
Al2O 3・5SiO2、MgO・Al2O3・3SiO2、及びMgO・Al2O3・4SiO2
からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組成を有す
る準安定なクオーツ(石英固溶体)であることができ
る。石英固溶体としては、特にβ−石英固溶体を挙げる
ことが出来る。また、エンスタタイトには、クリノエン
スタタイト、プロトエンスタタイト及びエンスタタイト
が包含される。さらに上記の結晶のほかスピネル、ムラ
イト、2MgO・SiO2、MgO・SiO2などその他の結晶を含むこ
ともできる。さらに、結晶化ガラス7に含まれる結晶粒
子の粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm
以下であることがより好ましい。結晶粒子の粒径が1μ
mを超えると、ガラスの機械強度を低下させるだけでな
く、研磨加工時に結晶の欠落を引き起こしてガラスの表
面粗度を悪化させるおそれがある。
【0104】本発明の基板は、ヤング率が110GPa以上で
あることが好ましい。ヤング率が110GPa以上であること
で、高剛性の基板が得られる。具体的にはヤング率110G
Pa以上の基板が得られる。ヤング率110GPa以上の基板を
用いることにより、高速回転時の媒体の変形を低減する
ことができ、低浮上化してもヘッドがクラッシュするな
どの問題の発生を防ぐことができる。ヤング率の好まし
い範囲は110GPa以上、より好ましい範囲は140GPa以上で
ある。ヤング率が110Gpa以上であることで、ガラス基板
が高速回転しても、基板に反りやブレが生じにくく、よ
り基板の薄型化にも対応できる。
【0105】本発明の基板は、熱膨張係数が60×10-7/
℃以上であることが好ましい。基板の熱膨張係数を上記
の範囲にすることにより、基板をドライブに取付ける際
の金属製(例えばステンレス)の取付け具や回転軸との熱
膨張係数のマッチングが得やすくなる。これらの結晶化
ガラスの熱膨張係数は90(10-7/℃)以上に大きく、ハ
ードディスクのステンレス部品との相性がよくなるので
高密度化に要求される精密設計がたやすくなる。
【0106】結晶化ガラス基板の製造方法 本発明の結晶化ガラス基板は、所定の組成割合で原料を
調合して所定の温度(例えば1400-1600℃の温度範囲)で
原料溶融し、溶融したガラスの融液をプレス法やフロー
ト法などの成形法によりガラス板化し、その後結晶化の
ための熱処理などにより、非晶質ガラスの中に部分的に
結晶粒子を析出させ、その後、研削、研磨、エッチング
などの加工を施こすことで得ることができる。結晶粒子
の粒径とその密度は、ガラスの組成や熱処理条件により
制御できる。
【0107】[結晶化のための熱処理方法]熱処理方法
には特に制限はなく、結晶化促進剤の含有量やガラスの
転移温度、結晶化ピーク温度などに応じて適宜選択する
ことができる。但し、初期の段階で比較的低温度(例え
ば、700〜850℃)で熱処理して多数の結晶核を発
せしめ、その後、温度を850〜1150℃に上げて結
晶を成長させることが、結晶を微細化するという観点か
らは好ましい。結晶化ガラスの製造に際しては、熱処理
のスケジュール又はガラス組成を順次に変えることによ
り、析出結晶サイズや結晶量を制御することができ、そ
れにより結晶化ガラスの特性を大幅に調整することがで
きる。また、同じヤング率や同じ結晶粒子の大きさまた
は同じ結晶化均質性を有する結晶化ガラスを作製するた
めの結晶核生成熱処理及び結晶成長熱処理の許容温度範
囲は30℃以上の温度幅をもつので、結晶化の製造工程を
容易に制御することができる。
【0108】特に、TiO2を含有するガラスを分相工程及
び結晶化工程を経て結晶化ガラスとする結晶化ガラスの
製造方法においては、前記分相工程が前記ガラスを該ガ
ラスの転移温度Tgから該ガラスの転移温度Tg+60℃まで
の範囲の温度で加熱することで行われることが好まし
い。この製造方法により、主結晶相の結晶粒子の粒径が
10−100nmの範囲であり、波長600nmにおける透過
率が40%以上である情報記録ディスク用基板として適
した結晶化ガラスが得られる。
【0109】上記TiO2を含有するガラスを分相工程及び
結晶化工程を経て結晶化ガラスとする方法において出発
原料となるガラスに含まれるTiO2は、結晶化ガラスの製
造の過程で結晶核生成剤となる成分である。TiO2の含有
量は、Tg+60℃以下の温度における熱処理(分相工程)
において、ガラスが十分に分相し、結晶化工程において
得られる結晶化ガラスの結晶粒子が所望の比較的小さな
寸法になるという観点から、8モル%以上にすることが
適当である。より小さい結晶粒子をガラスから析出させ
るためには、TiO2の含有量は、8.5モル%以上であるこ
とが好ましい。TiO2の含有量の上限は、15モル%であ
り、製造工程において溶解したガラスには成形可能な安
定性が得られるという観点から12モル%以下である。
【0110】出発原料となるTiO2を含有するガラスは、
例えば、TiO2を含有し、かつMgO、Al2O3及びSiO2の含有
量の合計が80モル%以上であるMgO−Al2O3−SiO2系ガラ
ス又はMgO−RO−Al2O3−SiO2(R=アルカリ土類金属
(例えば、Ca、Sr、Ba)、Zn及びNiからなる群から選ば
れる少なくとも1種)系ガラスであることができる。こ
れらTiO2を結晶核生成剤とするMgO−Al2O3−SiO2系ガラ
スやMgO−(RO)−Al2O3−SiO2系ガラスは、Tg付近で
非常に分相しやすく、本発明のように、より低い温度で
の微分相を利用した微細な結晶構造をもつ結晶化ガラス
の製造に適している。出発原料となるTiO2を含有するガ
ラスとしては、前記米国特許5476821公報及び米国特許5
491116公報に記載のガラスを挙げることができる。又
は、SiO2:35-65モル%、Al2O3:5-25モル%、MgO:10-
40モル%、SiO2+Al2O3+MgO≦80モル%、TiO2:5-15モ
ル%、RO(R=アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba),Zn及びNi
からなる群から選ばれる少なくとも1種):0-10モル%
を含むガラスを挙げることができる。さらにこの方法
は、少なくとも上記結晶化ガラス1、2、4〜7に適用
することができる。
【0111】出発原料となるTiO2を含有するガラスは、
結晶化ガラスの所望の特性を損なわない範囲で、アルカ
リ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O等)及び/又は
アルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO、SrO、BaO)等の
成分を含んでもよい。出発原料となるTiO2を含有するガ
ラスが上述のTiO2を含有するMgO−Al2O3−SiO2系ガラス
である場合、アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土
類金属酸化物をさらに含有することができる。また、出
発原料となるTiO2を含有するガラスが上述のTiO2を含有
するMgO−RO−Al2O3−SiO2系ガラスである場合、アルカ
リ金属酸化物をさらに含有することができる。当然のこ
とながら、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸
化物共に2種以上を併用することもできる。
【0112】アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土
類金属酸化物は、ガラス原料として硝酸塩を使用でき
る。ガラス製造の際に脱泡剤としてSb2O3を使用すると
ガラス溶解用白金坩堝からガラスに白金が混入し易く、
ガラス原料として硝酸塩を使用することにより、ガラス
への白金の混入を抑制することができる。アルカリ金属
酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量はそれぞれ
0.1モル%以上であることが上記効果を得るという観点か
ら好ましい。但し、アルカリ金属酸化物を含む場合、ア
ルカリ金属酸化物はヤング率を低下させる傾向があるこ
とから、その含有量は5モル%以下とすることが適当であ
る。又、アルカリ土類金属酸化物を含む場合、アルカリ
土類金属酸化物は、結晶粒子を大きくする傾向があるこ
とから、その含有量は5モル%以下であることが適当であ
る。アルカリ金属酸化物を含む場合、特に、0.1〜5モル
%、好ましくは0.1〜2モル%、より好ましくは0.1〜1モル
%のK 2Oが好ましい。アルカリ土類金属酸化物を含む場
合、特に、0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%のSrO
が好ましい。上記方法で製造した結晶化ガラスは、主結
晶相として、例えば、エンスタタイト又はその固溶体及
び/又は石英固溶体であるものを含むことができる。
【0113】上記結晶化ガラスの製造方法における各熱
処理のプロセスについて以下に説明する。ある程度の量
のTiO2を含有するMgO−(RO)−Al2O3−SiO2(R=アル
カリ土類金属(例えば、Ca、Sr、Ba)、Zn又はNi)系ガ
ラスは、Tg温度より高い温度で熱処理すると、TiO2に富
むガラス相とSiO2に富む相の二つに分けられる。いわゆ
るガラスが分相となる(分相工程)。このようなガラス
の分相は、結晶化ガラスの結晶種及び結晶粒子の大きさ
に大きな影響を与える。通常、TiO2に富む相はSiO2に富
むガラス母体相に微粒子の形で分散している。TiO2に富
む微粒子の大きさが小さければ小さいほどこの微分相粒
子を核とする最終の結晶粒子の大きさが小さくなる。如
何にこのような微分相粒子を小さく析出させるかが微細
な結晶化ガラス作成のポイントとなる。上記方法では、
Tg温度乃至Tg+60℃の温度範囲で分相のための熱
処理した結晶化ガラスの表面粗さは0.5nm以下となる。
これはTg温度乃至Tg+60℃の温度範囲で分相処理した
ガラス中の結晶粒子の大きさが小さくなったことによる
ものである。表面粗さの小さい結晶化ガラスが得られる
という観点から、分相のための熱処理は、Tg+10℃以
上の温度、Tg+50℃以下の温度範囲とすることが好ま
しく、Tg+20℃以上の温度、Tg+40℃以下の温度範
囲とすることがさらに好ましい。この方法で作成した結
晶化ガラスのヤング率や膨張係数は、従来の熱処理方法
で前処理した結晶化ガラスや前処理なしの結晶化ガラス
のそれに比べほとんど変わらず、結晶化ガラスの機械的
特性や熱的な特性を変えずに結晶粒子の粒径だけを小さ
くすることができる。
【0114】この製造方法では、分相工程で得られたガ
ラスを10℃/分以下(600℃/hr以下)の昇温速度で結晶化
工程における加熱温度に昇温することが好ましい。分相
工程における処理温度から結晶化処理温度への昇温速度
を10℃/分以下に抑えるのはガラスの変形を避けるた
めである。通常の結晶化ガラスはより高い温度で分相の
ための熱処理が行われるので、処理中にガラスがすでに
部分結晶化となっていた。そのため、昇温速度が早くて
も変形し難かった。しかし、この方法で分相のための熱
処理したガラスには結晶粒子を含まず、昇温が速いとガ
ラスが変形してしまう恐れがあるからである。10℃/
分以下の遅い速度で昇温すると、昇温中に結晶粒子が徐
々に析出するので、ガラスの変形を抑えることができ
る。上記昇温速度は、好ましくは、1〜7℃/分(60〜4
20℃/hr)の範囲である。より低い昇温速度は結晶粒子の
均質化にも非常に有利である。結晶化のための加熱は、
ガラス結晶粒子の大きさ、結晶化度、及びヤング率など
の特性を考慮して適宜決定されるが、例えば、900−110
0℃の範囲の温度で約1−10時間行われることができる。
【0115】この方法により、結晶粒子の平均粒径が10
〜100nmの範囲である結晶化ガラスを得ることが出来
る。この方法で得られる結晶化ガラスは、結晶粒子の平
均粒径が10〜100nmの範囲であるが、好ましくは結晶粒
子の平均粒径は10〜70nmの範囲である。結晶粒子の
平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測
定することができる。また、本発明の方法で得られる結
晶化ガラスは、波長600nmにおける透過率が40%
以上、さらに好ましくは50%であることができる。即
ち、結晶粒子が小さい程この透過率は大きくなるため、
この透過率は結晶粒子のおおよその大きさを推測するた
めの指標とすることができる。但し、ガラスの組成によ
っては透過率に影響を及ぼす成分が含まれる場合がある
ので、結晶粒子の大きさと透過率の関係はガラスの組成
によって若干異なる。
【0116】熱処理を終えた結晶化ガラス基板は、研磨
される。研磨方法については特に制限がない。例えば、
合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化アルミニウム、炭化
ホウ素などの合成砥粒や、天然ダイヤモンド、酸化セリ
ウムなどの天然砥粒を用いて、公知の方法により研磨す
ることができる。本発明の結晶化ガラスから基板は、AF
Mで測定した平均粗さRaで20オングストローム以下の表
面平滑性を有することが好ましい。特に本発明の結晶化
ガラスを磁気ディスク基板に用いる場合、表面の平均粗
さRaは、磁気ディスクの記録密度に大きく影響する。表
面粗さが20オングストロームを超えると、高記録密度化
を達成しにくくなる。本発明の結晶化ガラスから基板の
表面粗さは磁気ディスクの高記録密度化を考慮すると、
15オングストローム以下であることがより好ましく、10
オングストローム以下であることがさらに好ましい。
【0117】研磨された基板はさらにエッチングされ、
所望の表面特性(主表面に突出して存在する、粒径が10
nm以上である結晶粒子の面密度が106個/mm2を超えかつ1
09個/mm2以下である)を有する基板とされる。さらに、
研磨及びエッチングの条件は、主表面のRmaxが1〜60nm
の範囲となるように行うことが好ましい。尚、ヘッド浮
上量を30nm以下とする場合は、主表面のRmaxが1〜30nm
の範囲となるように行い、好ましくは1〜15nm、更に好
ましくは1〜10nmの範囲となるように行うことが望まし
い。エッチングは、フッ酸あるいはフッ酸と硫酸の他の
酸との混合酸を用いて行うことができる。尚、エッチン
グ溶液としては、これらの酸に限定されることはなく、
エッチング後の基板主表面に突出した結晶粒子が存在す
るようにできる溶液であれば使用することができる。上
記の酸以外に、実施例に挙げたケイフッ酸やフッ酸とケ
イフッ酸との混合酸を用いることもできる。エッチング
の条件(酸の種類、濃度、温度、処理時間等)は、基板
の主表面が上記特性を有するようになるように適宜設設
定される。例えば、ファイナル研磨を終えたガラス基板
を2%HF+50H2SO4で45℃/5分エッチングすると、表面粗さ
Rmaxが3nmであったガラス基板の表面粗さRmaxは約12nm
に大きくなる。同様のエッチング液で45℃/20分エッチ
ングすると表面粗さRmaxが3nmであったガラス基板の表
面粗さRmaxは約24nmに大きくなる。
【0118】本発明の結晶化ガラス基板を構成する結晶
化ガラスの結晶化部の組成はベースガラスの組成によっ
て異なるが、硬度や耐酸性が高く、かつヤング率も大き
い準安定な石英固溶体である2MgO・2Al2O3・5SiO2、MgO
・Al2O3・3SiO2及びMgO・Al2O34SiO2・エンスタタイト
であるMgO・SiO2とその固溶体、スピネルであるMgO・A 2
O3、ZnO・A12O3及びその固溶体、MgO・CaO・2SiO2、CaO
・Al2O3・2SiO2、BaO・Al2O3・2SiO2などであることが
好ましい。結晶化部は、一般にマトリックス層より硬
く、化学的にも安定であるため、加工方法や条件を適切
に選択することによって基板表面に均一に分散する微小
突起となる。この微小突起は磁気ヘッドの点状接触点と
なるため、潤滑油や水を原因とするヘッドとの粘着現象
を防ぐ効果を持っており、ディスク高速回転時に間歌的
に接触する磁気ヘッドとの衝突による磁気膜の損傷を防
ぐ役目もする。さらに、この微小の突起は磁気ヘッドの
スライダー面に堆積する汚れをクリーニングする作用を
も有する。このため、磁気ヘッドの墜落や衝突を防ぎ、
ディスク装置の信頼性寿命を飛躍的に増加させることが
できる。このようなガラス表面にある微小突起は従来広
く使用されているテクスチャー加工表面が有する作用・
効果以上の特性を持っている。
【0119】上記の微結晶は、本質的には非晶質ガラス
から安定な結晶へと相変ずることにより生じ、突起は母
体ガラス部と結晶部との硬度や耐酸性などの材料物性の
差を用いて形成している。そのため、従来のテクスチャ
ー加工で問題となるバリやチッピングや切粉の再付着と
いう問題がない。さらに、結晶粒子の粒径や密度をガラ
ス組成の調整や熱処理条件の調整で最適化することによ
り突起の高さを制御でき、その結果基板全面において磁
気ヘッドの浮上特性が非常に優れた面を形成できる。ま
た、結晶粒子はガラス連続層に生じるミクロクラックの
終点になるため、クラックの成長や拡大を抑制する作用
もある。このため、結晶化ガラスの機械的強度や硬度が
増加し割れにくくなり、磁気ディスク基板として十分な
機械強度を実現する作用効果も有する。また、結晶化ガ
ラス材料そのものが非磁性なので、加熱などにより磁化
する心配がなく、材料的にも単一基板材料であるため、
工程数が少なくてすみ製造コストを低くすることができ
る。さらに同材料は溶融過程を経てガラス化して形成す
るため、焼結材料で問題となるボイドや空隙がない。
【0120】以上に示したように結晶化ガラスは析出結
晶層とマトリックスガラス層がそれぞれの長所を出し合
い、また、その相互作用により優れた物性を有す観従っ
て、本発明の結晶化ガラスは磁気ディスク用高性能基板
として好適な複合材料である。
【0121】本発明は、前記本発明の結晶化ガラス基板
の主表面に少なくとも情報記録層が形成されている情報
記録媒体を包含する。前記本発明の基板は、高速回転時
の変形が小さく、書込読取ヘッドを情報記録媒体の表面
に極めて近い距離にまで安定した状態で近づけることが
できる。そのため、信頼性の高い高記録密度の媒体を得
ることができる。
【0122】本発明の情報記録媒体は、磁気記録媒体で
あることができる。磁気ヘッドと媒体表面の粘着の問題
を防ぎ、磁気ヘッドの低浮上化を図ることができる。そ
の結果、信頼性の高い高記録密度の磁気記録媒体を得る
ことができる。 〔磁気ディスクの説明〕本発明の情報記録媒体は、本発
明の基板と、該基板上に形成された記録層とを有するこ
とを特徴とする。以下、本発明の結晶化ガラスからなる
基板の主表面に、少なくとも磁性層を形成した磁気ディ
スク(ハードディスク)ものについて説明する。磁性層
以外の層としては、機能面から、下地層、保護層、潤滑
層、凹凸制御層などが挙げられ、必要に応じて形成され
る。これらの各層の形成には各種薄膜形成技術が利用さ
れる。磁性層の材料は特に制限されない。磁性層として
は、例えば、Co系の他、フェライト系、鉄−希土類系な
どが挙げられる。磁性層は、水平磁気記録、垂直磁気記
録のいずれの磁性層でもよい。磁性層としては、具体的
には、例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、Co
NiCr、CoCrTa、CoPtCrやCoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtT
a、CoCrPtSiO などの磁性薄膜が挙げられる。また、磁
性層を非磁性層で分割してノイズ低減を図った多層構成
としてもよい。
【0123】磁性層における下地層は、磁性層に応じて
選択される。下地層としては、例えば、Cr、Mo、Ta、T
i、W、V、B、Alなどの非磁性金属から選ばれる少な
くとも一種以上の材料、又はそれらの金属の酸化物、窒
化物、炭化物等からなる下地層等が挙げられる。Coを主
成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上の観点から
Cr単体やCr合金であることが好ましい。下地層は単層と
は限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とす
ることもできる。例えば、Al/Cr/CrMo、Al/Cr/Cr等
の多層下地層等が挙げられる。また、基板と磁性層の間
又は磁性層の上部に、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着
することを防止するための凹凸制御層を設けてもよい。
この凹凸制御層を設けることによって、磁気ディスクの
表面粗さは適度に調整されるので、磁気ヘッドと磁気デ
ィスクが吸着することがなくなり、信頼性の高い磁気デ
ィスクが得られる。凹凸制御層の材料及び形成方法は多
種知られており、特に制限されない。例えば、凹凸制御
層の材料としては、Al、Ag、Ti、Nb、Ta、Bi、Si、Zr、
Cr、Cu、Au、Sn、Pd、Sb、Ge、Mgなどから選ばれる少な
くとも一種以上の金属、又はそれらの合金、あるいは、
それらの酸化物、窒化物、炭化物等からなる下地層等が
挙げられる。形成が容易であるという観点からは、Al単
体やAl合金、酸化Al、窒化AlといったAlを主成分とする
金属であることが望ましい。
【0124】また、ヘッドスティクションを考慮する
と、凹凸形成層の表面粗さは、Rmax=5〜30nmであ
ることが好ましい。より好ましい範囲は、Rmax=10〜
20nmである。Rmaxが5nm未満の場合、磁気ディス
ク表面が平坦に近いため、磁気ヘッドと磁気ディスクが
吸着し、磁気ヘッドや磁気ディスクが吸着し、磁気ヘッ
ドや磁気ディスクが傷ついてしまったり、吸着によるヘ
ッドクラッシュを起こすので好ましくない。また、Rmax
が30nmを超える場合、グライド高さ(グライドハイ
ト)が大きくなり記録密度の低下を招くので好ましくな
い。尚、凹凸制御層を設けずに、ガラス基板表面に、エ
ッチング処理やレーザー光の照射等の手段で凹凸を付
け、テクスチャリング処理を施してもよい。
【0125】保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合金
膜、炭素膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げられる。
これらの保護膜は、下地層、磁性層等とともにインライ
ン型スパッタ装置等で連続して形成できる。また、これ
らの保護膜は、単層としてもよく、あるいは、同一又は
異種の膜からなる多層構成としてもよい。上記保護層上
に、あるいは上記保護膜に替えて、他の保護層を形成し
てもよい。例えば、上記保護層上にテトラアルコキシラ
ンをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシ
リカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ
素(SiO2)膜を形成してもよい。この場合、保護膜と凹
凸制御層の両方の機能を果たす。潤滑層としては多種多
様な提案がなされているが、一般的には、液体潤滑剤で
あるパーフルオロポリエーテルをフレオン系などの溶媒
で希釈し、媒体表面にディッピング法、スピンコート
法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じて加熱処理
を行って形成する。
【0126】
【実施例】以下、磁気記録媒体用基板および磁気記録媒
体に関する実施例について説明する。結晶化ガラスを用
いた磁気ディスク基板の製造工程は所定組成に応じて材
料調合から出発し、以下加熱溶融、攪拌清澄、プレス法
などによる高温成形、アニール処理、円板形状加工、核
生成熱処理、核成長熱処理、表面研削・研磨・洗浄の順
序で行うのは基本である。製造工程は、上記に限ったも
のではなく、例えば表面研磨加工の代わりにスパッタエ
ッチングや化学的エッチングヤレーザーテクスチャなど
を行ってもよい。また結晶化のための熱処理は一段で済
ませることもできる。さらに、技術内容、材料特性に応
じて工程の順序や工程の内容を変更することは本発明の
主旨に反するものではない。
【0127】以下、代表的な製造工程手順を実施例で説
明する。本実施例において使用される材料はMgO-AL2O3-
SiO2-TiO2系結晶化ガラスである。具体的な組成は、MgO
成分が30.5モル%、Al2O3成分が10.5モル%、SiO2成分が4
6モル%、TiO2成分が10.0モル%、ZrO2成分を2.0モル%に
なるように、原料粉末であるMgO、N2O3、SiO2、TiO2、Z
rO2を300kg秤量し、ガラスの溶解性を向上させるために
0.5モル%のY2O3と0.5モル%のK2OになるようにK2CO3とY2
O3を導入し、十分混合して調合バッチ(組成1)とした。
また、MgO成分が26.0モル%、A12O3成分が14.0モル%、Si
O2成分が50.0モル%、TiO2成分が9.0モル%になるよう
に、原料粉末であるMgO、Al2O3、SiO2、TiO2、を300kg
秤量し、ガラスの溶解性を向上させるために1.0モル%の
Y2O3とになるようにY2O3を導入し、十分混合して調合バ
ッチ(組成2)とした。次いでに組成1の調合バッチを白金
柑禍に入れ、ガラス溶解炉において1600℃で撹拝しなが
ら12時間溶解した後、溶解炉の温度を1300℃までに下げ
て、同温度で約10-30分間保持した。その後、直径7mmの
白金パイプを通してガラスの融液をステンレス金型に流
しだし、プレス法で直径90mm、厚み2mmの円板を作っ
た。
【0128】上記作製したガラス円板を200cm固定砥粒
のダイヤモンドペレットで厚み1.1mmに研削した後、結
晶化処理炉に入れ、毎分間10℃の昇温速度で770℃まで
に加熱し、同温度下で60分間程度核生成熱処理を行った
後、直ちに毎分間5℃の昇温速度で1000℃までに加熱
し、同温度下で3時間結晶化熱処理を行った。熱処理し
たガラス円板を毎分間5℃の降温速度で室温まで冷却
し、結晶化ガラス円板を得た。上記核生成処理温度と時
間及び結晶化処理温度と時間は、結晶粒子の密度と粒径
を決定することができる。従って、本実施例で示した条
件以外にも必要に応じて熱処理温度と時間を変えること
ができる。一般的には核生成処理温度はガラスの転移温
度Tgより少し高い温度(例えばTg温度からTg+60℃までの
温度範囲)が好ましく、ガラスの軟化点温度より低いほ
うがよい。より大きな結晶粒子が必要な場合結晶化処理
温度を高め、結晶化処理時間を延長することによって実
現でき駈逆により小さな結晶粒子が必要な場合、結晶化
処理温度を低め、結晶化処理時間を短縮することによっ
て実現できる。結晶粒子の大きさは磁気記録の面記録密
度や磁気ディスクとしての表面特性に応じて決定され
る。上記の製造工程で作成した実施例1-1の結晶化ガラ
スの各特性を表1に示す。
【0129】組成2についても同様の工程で結晶化ガラ
スを得たが、熱処理条件は表1の右欄に示した条件とし
て実施例2-1の結晶化ガラスを得た。次に熱処理冷却後
の結晶化ガラス基板(実施例1-1、2-1ともに)を固定砥粒
のダイヤモンド研削機で研削し、流動研磨材(例えばコ
ロイダルシリカ、酸化セリウム、アルミナ等)を用いた
研磨機で両面研磨する。研削機は固定砥粒を装備してい
る研削定盤を上下に2枚設けたもので、加工するガラス
基板を、治具を用いてその中間にはさみ、定盤を回転す
ることにより研削する。両面研磨機も同様な方式で結晶
化ガラス円板を研磨する。本研磨加工の目的は、結晶化
ガラスの表面に微細な突起をつくるためである。結晶化
ガラス中のガラスの部分は結晶化部と比較して硬度が低
いため比較的にすみやかに研磨加工され、結果としてガ
ラスの表面には微細な突起を形成できる。この場合は結
晶化部が当然突起となる。万が一表面に異常ほど突起が
ある場合、定盤加圧力がその点に集中するため、このよ
うな異常な突起がすみやかに除去される。従って、この
ような加工方法を用いれば、基板面内突起の高さがよく
揃った加工表面を得ることができる。よって、磁気ヘッ
ドに衝突する異常に高い突起がなく、かつ摺動信頼性や
粘着を防止するには必要十分な微細で均一な突起を有す
る表面が得られる。もちろん、当研磨加工の定盤加圧
力、定盤の回転速度、時間や研磨材質は、加工面の微細
突起形状を支配する重要な要素である。
【0130】研磨表面よりさらに高い突起を有する基板
表面を得るためには、上記研磨した結晶化ガラスをさら
にケイ弗酸(H2SiF6)や弗酸(HF)及びその混合酸溶液でエ
ッチングすることによって必要サイズの表面突起を得る
こともできる。例えば、図1に0.25%の弗酸と0.25%のケ
イ弗酸の混合酸でエッチングした実施例1の結晶化ガラ
スの表面粗さRmaxとエッチング時間との関係を示す。エ
ッチング前の結晶化ガラスの表面粗さはRmaxで約5.0nm
であるが、弗酸とケイ弗酸の混合溶液でエッチングする
と表面粗さRmaxはエッチング時間の増加とともに徐々に
大きくなり、要求される表面突起の高さとなるようエッ
チング時間を設定すれぱ基板面内で突起の高さがよく揃
った加工表面を得ることができる。
【0131】得られた実施例1-1、2-1の基板の主表面を
観察したところ、結晶粒子の粒径は100nm以下(粒径の平
均値は20〜30nm)であった。尚、結晶粒子の粒径の測定
は、基板を試料として透過型電子顕微鏡(TEM)の写真を
もとに結晶粒子部分とガラス部分の濃淡の差から結晶粒
子の粒径を求めた。実施例1-1の基板のTEM写真を図2に
示す。粒径10nm以上の結晶粒子で主表面に露出したもの
の面密度、結晶化度、ヤング率、その他の物性値を測定
した結果を表1に示す。尚、表1中の面密度の値は、ガ
ラス基板の主表面における任意の4箇所の面密度を測定
したときの平均値を示す。4箇所の面密度は、107個/mm
2〜109個/mm2の範囲内であった。また、実施例1-1、2-1
の基板のヤング率も140GPa以上と高い値を示し、AFMに
より測定した表面粗さ(最大高さ)Rmaxは、10nm以下で
あった。
【0132】
【表1】
【0133】その後、真空スパッタ装置内にて約300℃
程度の温度下で真空べ一クした後、クロム下地層、磁気
膜層、及びカーボン保護膜を順次形成する。最後に大気
中で表面に弗素系炭化水素よりなる潤滑剤を塗布して磁
気ディスクとして完成する。本実施例係わる磁気ディス
クの性能(グライドハイトテスト)を試験したところ、そ
の最小浮上距離は10nmであった。磁気記録の高密度化に
好適する基板として認めた。
【0134】表1に示す組成を有する実施例3の結晶化ガ
ラスを実施例1-1と同様にして作成し、粒径10nm以上の
結晶粒子で主表面に露出(突出)したものの面密度、結
晶化度、ヤング率、その他の物性値を測定した結果を表
1に示す。尚、表1中の面密度の値は、ガラス基板の主表
面における任意の4箇所の面密度を測定したときの平均
値を示す。4箇所の面密度は107個/mm2〜109個/mm2の範
囲内であった。また、表2及び3に組成を示す実施例1-2
〜1-15を実施例1-1と同様にして作成し、粒径10nm以上
の結晶粒子で主表面に露出(突出)したものの面密度、結
晶化度、ヤング率、その他の物性値を測定した結果を表
2及び3に示す。同様に、表4及び5に組成を示す実施例2-
2〜2-23を実施例2-1と同様にして作成し、粒径10nm以上
の結晶粒子で主表面に露出(突出)したものの面密度、
結晶化度、ヤング率、その他の物性値を測定した結果を
表4及び5に示す。これらの実施例1-2〜1-15、実施例2-2
〜2-23のガラス基板の主表面における任意の4箇所の面
密度を測定したところ、表2〜5に示すように、いずれも
107個/mm2〜109個/mm2の範囲内であった。実施例2-2〜2
-23の結晶化ガラスは、主結晶または50重量%以上含
まれる結晶が、α−石英固溶体又は石英系結晶及びエン
スタタイト(その固溶体を含む)であった。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】上記実施例1〜3においてはMgO-A12O3-SiO
2-TiO2系結晶化ガラスを用いたが、結晶化ガラス材料と
してはこれに限るものではなく、以下の材料系にも好適
なディスク用結晶化ガラス基板を提供できる。 MgO-A12O3-SiO2; Li2O-MgO-A12O3-SiO2; MgO-ZnO-A12O3-SiO2; MgO-SrO-A12O3-SiO2; MgO-A12O3-SiO2-ZrO2; BaO-A12O3-SiO2; CaO-A12O3-SiO2; MgO-CaO-Al2O3-SiO2;
【0140】また、上記の材料系より得られる結晶相と
しては、次のものがある。 MgO・SiO2及びその固溶体(例えば、(Mg,Al)O・SiO2); 各種石英固溶体(MgO・A12O3・3SiO2、2MgO・2Al2O3・5S
iO2、MgO・Al2O3・4SiO2); MgO・Al2O3及びその固溶体(例えば、ZnO・Al2O3など) Li2O・A12O3・2SiO2 SiO2 これらの結晶相は出発材料、熱処理条件及び核生成剤の
種類とその含有量によって決定されるもので、さまざま
な組合せで析出するものであり、決して一義的に決まる
ものではない。特に好ましい結晶化ガラスとしては、上
述の結晶化ガラス1と2が挙げられる。
【0141】一般に結晶化ガラスを作成するのに核生成
剤の添加が必要である。例えば、金や銀や銅とセリウム
との組合せで生じる金属コロイドを用いる方法がある。
一方、TiO2、ZrO2、P2O5のような上記ガラスの分相を促
進することのできる酸化物も核生成促進剤としてしばし
ば使用される。これ以外にNb、Ta、Mo、Wなどの重金属
元素などを用いてもよい。また、ガラスの種類によって
核生成剤を添加しなくてもよいものもある。析出結晶相
の出発原料が同一の場合には、結晶粒子の平均密度と粒
子径は二段階熱処理温度と時間によって決定され、得ら
れる析出結晶相の密度と寸法が重要なファクターであ
る。上記の実施例1-2〜1-15の種々の結晶化ガラス基板
についても、結晶粒子の粒径の平均値は10〜300nmの範
囲であり、突出して存在する結晶粒子の粒径が100nm以
下であり、その面密度は106個/mm2を超えかつ109個/mm2
以下の範囲の情報記録媒体用基板として好適な範囲の基
板が得られる。また、ヤング率も140GPa以上と高い値を
示し、AFMにより測定した表面粗さ(最大高さ)Rmax
は、10nm以下であった。実施例1-1、2-1と同様の成膜を
行い、磁気記録媒体を得た。また、上記の実施例2-2〜2
-23の種々の結晶化ガラス基板についても、表4及び表5
に示すように、結晶粒子の平均値(平均粒径)は0.5μm
(500nm)未満であり、突出して存在する結晶粒子の粒径
が300nm以下であり、その面密度は106個/mm2を超えかつ
109個/mm2以下の範囲の情報記録媒体用基板として好適
な範囲の基板が得られる。また、ヤング率も130GPa以上
と高い値を示し、AFMにより測定した表面粗さ(最大高
さ)Rmaxは、30nm以下であった。実施例1-1、2-1と同様
の成膜を行い、磁気記録媒体を得た。上記実施例1-2〜1
-15及び2-2〜2-23の各媒体をグライドハイトテストした
結果、いずれの結果も30nm以下(実施例1-2〜1-15につ
いては10nm以下、実施例2-2〜2-23については30nm以
下)の低浮上量を安定して実現でき、吸着の発生も見ら
れず、優れた摺動性が得られた。
【0142】(比較例1〜2)次に、ガラスの組成、結
晶核成長のための熱処理条件(熱処理温度、時間)を適
宜調整して、表6のような特性値を有する結晶化ガラス
基板を作製した。その後、実施例1-1、2-1と同様の成膜
を行い磁気記録媒体を得た。
【0143】
【表6】
【0144】比較例1の結晶化ガラス基板の場合、粒径
10nm以上の結晶粒子の面密度が5×104〜1×106個/mm
2と、106個/mm2以下になっており、磁気ヘッドとの摺動
特性が悪く(吸着現象、摩擦係数大)、結晶化度が14%
と小さく、ヤング率も90〜100GPaと実施例と比較して小
さいため、表面粗さRmaxで想定されるヘッド浮上量より
も高い値を示し、摺動信頼性、低浮上化(30nm以下)と
もに満足するものとは言えなかった。一方、比較例2の
結晶化ガラス基板の場合、粒径10nm以上の結晶粒子の面
密度が2×109〜5×1010個/mm2と、109個/mm2を超えてお
り、結晶化度が70〜80%と高く、ヤング率も165〜180GPa
と高い値を示し、剛性の面では良好であった。しかし、
面密度が大きくなり過ぎたことにより、個々の結晶粒子
が融着して大きな結晶粒子が形成している箇所ができ、
その結果、基板の表面粗さRmaxが45nmと悪化する結果と
なった。そのため、磁気ヘッドとの摺動特性(吸着現
象、摩擦係数大)は良好であったものの、ヘッド浮上量
30nm以下を満足することができなかった。
【0145】実施例1をはじめとする上記実施例におい
て結晶核成長のための熱処理後に研磨加工を実施し、結
晶相とガラス相(連続相)の硬度差を利用して表面に突
起(連続相から部分的に突出して存在する結晶粒子)を
形成した。この研磨加工はただ一つの応用例であり、そ
れ以外にも、ガラス基板を真空中にセットしてArイオン
を高速で衝突させてエッチングする、いわゆるスパッタ
エッチング法によっても代替可能である。また、A12O3
やSiCの微粒子を空気とともに吹き付けて加工する、い
わゆるサンドブラスト処理と言われている方法によって
も可能である。
【0146】
【発明の効果】以上のように、本発明のよれば、摺動信
頼性に優れ、高記録密度化が可能な表面性状を有すると
ともに、高剛性を有する情報記録媒体用結晶化ガラス基
板を提供すること、及びこの基板を用いた情報記録媒体
を提供することができる。本発明によれば、書込み読込
みヘッドと情報記録媒体表面との吸着が防止されるとと
もに、書込み読込みヘッドと情報記録媒体表面との距離
の低減を妨げる大きな突起がなく、高速回転時にも変形
が極めて小さい高剛性の情報記録媒体用基板が得られ、
また書込み読込みヘッドと情報記録媒体表面との吸着が
防止されるとともに、書込み読込みヘッドと情報記録媒
体表面との距離の低減を妨げる大きな突起がなく、高速
回転時にも変形が極めて小さい高剛性で、高記録密度の
情報記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 0.25%の弗酸と0.25%のケイ弗酸の混合酸でエ
ッチングした実施例1の結晶化ガラスの表面粗さRmaxと
エッチング時間との関係を示す。
【図2】 実施例1-1の結晶化ガラス基板の透過型電子
顕微鏡(TEM)を図2に示す。
フロントページの続き Fターム(参考) 4G062 AA11 BB01 CC01 CC09 CC10 DA05 DA06 DB03 DB04 DC01 DD01 DE01 DF01 EA01 EA02 EA03 EB01 EB02 EB03 EC01 EC02 EC03 ED04 ED05 EE01 EE02 EE03 EF01 EF02 EF03 EG01 EG02 EG03 FA01 FB03 FB04 FC01 FC02 FC03 FD01 FE01 FF01 FG01 FH01 FJ01 FJ02 FJ03 FK01 FL01 GA01 GA10 GB01 GB02 GC01 GD01 GE01 GE02 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH11 HH13 HH15 HH17 HH20 JJ01 JJ03 JJ04 JJ05 JJ06 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM27 NN40 QQ06 5D006 CB04 CB07

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非晶質であるガラスの連続相中に結晶粒子
    が分散する結晶化ガラスからなる基板であって、この基
    板の少なくとも主表面に前記結晶粒子の一部が、前記連
    続相から部分的に突出して存在する情報記録媒体用結晶
    化ガラス基板において、前記突出して存在する結晶粒子
    の粒径が1000nm以下であり、かつ前記主表面に突出して
    存在し、記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与する結晶
    粒子の面密度が10 6個/mm2を超えかつ109個/mm2以下であ
    ることを特徴とする情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
  2. 【請求項2】前記記録再生用ヘッドとの摺動特性に寄与
    する結晶粒子の粒径が、10nm以上1000nm以下であること
    を特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用結晶化ガ
    ラス基板。
  3. 【請求項3】前記突出して存在する結晶粒子の粒径が、
    10nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス。
  4. 【請求項4】前記ガラス基板の主表面の表面粗さRmax
    は、1〜30nmであることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  5. 【請求項5】単位体積に占める結晶粒子体積の総和の割
    合が15〜80%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の
    情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
  6. 【請求項6】ヤング率が110GPa以上である請求項1〜5
    のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
  7. 【請求項7】少なくともSiO2、A12O3、MgO、TiO2を含む
    結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1〜6の
    いずれか1項に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基
    板。
  8. 【請求項8】前記結晶化ガラスが、SiO2を35〜65モル
    %、A12O3を5〜25モル%、MgOを10〜40モル%、TiO2を5〜1
    5モル%含有し、上記組成の合計が92モル%以上あり、か
    つ主結晶がエンスタタイト及び/又はその固溶体である
    請求項7に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
  9. 【請求項9】前記結晶化ガラスが、SiO2を42〜65モル
    %、A12O3を11〜25モル%、MgOを15〜33モル%、TiO2を5.5
    〜13モル%を含有し、かつ主結晶としてα-石英固溶体並
    びにエンスタタイト及び/又はエンスタタイト固溶体を
    含む請求項7に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基
    板。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれか1項に記載の基
    板の主表面上に少なくとも情報記録層を有することを特
    徴とする情報記録媒体。
  11. 【請求項11】前記情報記録層が磁性層であることを特
    徴とする請求項10に記載の情報記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021044841A1 (ja) * 2019-09-05 2021-03-11 株式会社 オハラ 結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラス
JP2021042116A (ja) * 2019-09-05 2021-03-18 株式会社オハラ 結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラス

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WO2021044841A1 (ja) * 2019-09-05 2021-03-11 株式会社 オハラ 結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラス
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