JP4430020B2 - フレキシブルプリント配線板用銅箔、その製造方法及びフレキシブルプリント配線板 - Google Patents
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しかし圧延銅箔は電解銅箔に比較して高価であり、特に12μm、9μmといった薄物になるほど飛躍的にコストが上昇する。これは薄物を作る場合には、厚い銅箔を何回にもわたって圧延を繰り返して製造するためである。
また圧延で製造される銅箔の幅は通常600mm程度と狭く、FPC製造時の生産性が悪いという欠点があった。
本出願人はこうした従来の電解銅箔の欠点をなくし、屈曲性に優れた銅箔を開発した(特許文献1参照)。特許文献1に示す未処理銅箔は、その粗面(以下M面と記す。)側の表面粗度Rzは2.1μm以下であり、かつ、光沢面の表面粗度Rzと同じかそれより小さいことを特徴とする未処理電解銅箔であり、メルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10,000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加した電解液を用いて電解製箔された未処理銅箔である。(なお、ここで、未処理銅箔とは、銅箔工業会規格 プリント配線板用銅はく用語 CFIA 0001−1999 に記載があるように、表面処理を施す前の銅箔を指す。)
この未処理電解銅箔の屈曲性は、圧延銅箔と同等レベルの屈曲性を有している。
なお、電解銅箔の場合は、通常M面に粗化処理を施し、S面には、通常粗化処理はせず、防錆或いは耐熱変色を抑える目的の亜鉛めっき処理、クロメート処理等を施している。
作成したCCLにエッチング法により回路を形成し、回路側に絶縁フィルムのカバーレイを接着してFPCとする。
電解銅箔のS面は肉眼で見ると光沢のある面であるが、SEM(Scanning Electron Microscope)で観察すると筋状の凹凸の多い表面をしている。
電解銅箔は図1に示すように硫酸銅を主成分とする電解液3から、回転するカソード(チタン製ドラム)2に銅を箔状に析出させ、これを連続的に引き剥して未処理銅箔4を製造する。製箔されたS面はチタン製ドラムと接していた面であるため、その表面はちょうどチタン製ドラム2の面を転写した面になっている。
特に、筋に対して直角方向に曲げが入る場合に比べ、筋に対して平行に曲げが入る場合は破断しやすくなる。
本発明は絶縁フィルムと接着する接着性に優れ、かつ、絶縁フィルムと接着後の耐屈曲性に優れるフレキシブルプリント配線板用銅箔を提供することを目的とする。
また、本発明は絶縁フィルムと接着する接着性に優れ、かつ、絶縁フィルムと接着後の耐屈曲性に優れるフレキシブルプリント配線板用銅箔の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は絶縁フィルムと接着する接着性に優れ、かつ、絶縁フィルムと接着後の耐屈曲性に優れるフレキシブルプリント配線板用銅箔の製造方法を提供することができる。
更に、本発明は耐屈曲性に優れたフレキシブルプリント配線板(FPC)を提供することができる。
本発明において未処理電解銅箔は、好適には、メルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10,000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加した電解液を用いて電解製箔された未処理電解銅箔である。
前記未処理電解銅箔に、粗面側の表面粗さが、表面粗度Rzが2.1μm以下であり、かつ、光沢面側の表面粗度Rzと同じかそれより小さい電解銅箔を使う理由は、耐屈曲性を高めるためである。
粗面側の表面粗さが粗い銅箔を屈曲すると、粗面表面凹凸の凹の部分に応力が集中し、最初の折り曲げで亀裂がはいらない場合でも、繰り返し屈曲した場合には早い段階で、亀裂が発生し、亀裂が銅箔内部に伝播し、最終的には破断に至る。
これは、光沢面も同じである。光沢面表面凹凸(表面筋)の凹の部分に応力が集中し、繰り返し屈曲した場合には亀裂が発生し、亀裂が銅箔内部に伝播し、最終的には破断に至る。
従って、耐屈曲の良い電解銅箔を得るためには、もともとの未処理電解銅箔自体の粗面、光沢面の粗さが、共に平滑であることが好ましい。
また、光沢面の表面粗度Rzが2.1μm以下で、なおかつ粗面の粗さが光沢面の粗さと同じか、それ以下でないと粗化面からの亀裂により平滑めっきの効果が半減される恐れがある。即ち、光沢面の粗さのみ平滑にしても、粗面の粗さが粗くては、そこから亀裂がはいるからである。
ところで、未処理電解銅箔の光沢面に設ける平滑めっきは、粒状の結晶組織で、平均結晶粒径で2μm以下の銅めっきである。
めっきにより形成される銅の結晶組織は、そのめっき液組成により柱状の結晶組織となる場合がある。しかし、未処理電解銅箔のS面に行うめっきとしては、柱状組織のめっきは耐屈曲性が必要とされる場合には適さない。
その理由は、銅箔に曲げ応力が加わったとき、柱状の結晶組織の場合、柱状の結晶粒界にそって亀裂がはいり、かえって破断しやすくなる確立が高いためである。
なお、柱状の結晶組織の平滑めっきが形成されても、該平滑めっきを再結晶させることで粒状の結晶組織とすることができる場合がある。このような場合には先ず柱状結晶組織の平滑めっきを施し、次いで再結晶させて粒状結晶組織とする。
なお、本発明でいう平均粒径とは、まず結晶粒が形成されている表面の写真を透過顕微鏡で撮影する。そして、その写真における結晶粒の面積を10点以上実測し、その面積をもつ真円としたときの直径を計算し、その計算値を平均粒径とする。
カーボン量を18ppm以下とするためには、めっき液中に添加する有機添加剤を極微量にするか、或いは全く加えない銅めっき液にする必要がある。こうしためっき液から形成された銅めっきは、めっき直後の状態は柱状の結晶組織をしている。しかし、結晶粒界に存在する有機添加剤成分が少ないため(有機添加剤量は銅中のカーボン量を測定することにより定量が可能である。)、200℃以下という比較的低い温度で再結晶して粒状の結晶組織に変化する。200℃以下という温度で再結晶するためには銅箔中のカーボン量が18ppm以下であることが必要である。
これは2層の銅張積層板を製造する場合も同様である。2層の銅張積層板を製造する場合には、通常300℃以上の温度がかかるため、3層銅張積層板と同様に銅めっき層は再結晶して粒状の結晶組織に変化する。
このように、再結晶して粒状の結晶組織に変化した銅めっき層は、FPCに曲げ応力がかかった場合でも銅箔に亀裂が入りにくく、銅箔の屈曲破断に至る屈曲回数が増える。
このめっきを行う場合にはめっき液の組成、温度、電流密度条件を選び、S面の筋を埋めるようにめっき条件を選ぶ。
しかし、元箔を製箔する時に使用する銅めっき液とS面に平滑めっきを行う時に使用する銅めっき液が異なる場合には、M面にも平滑めっきを行った方が、屈曲性が上がる場合がある。
このようにM面にも平滑めっきを施す理由は、S面のめっきに使用した銅めっき液から電析した銅の性能値(引張強さ、伸び等)が、元箔の性能値(引張強さ、伸び等)と大きく異なることがあり、S面のみにそのようなめっきを施した場合にはS面とM面のバランスが取れなくなり、支障をきたすことがあるためで、そのような場合にはS面と同時にM面にもめっきを施し、S面とM面のバランスをとる必要がある。
めっき液組成1:
めっき浴:Cu 70〜130g/L
H2SO4 80〜140g/L
3-メルカプト1-プロパンスルホン酸ナトリウム 0.5〜5ppm
ヒドロキシエチルセルロース 1〜10ppm
低分子量膠(分子量3000) 1〜10ppm
塩化物イオン 5〜50ppm
電流密度:10〜100A/dm2
浴温: 40〜60℃
めっき液組成2:
めっき浴:Cu 70〜130g/L
H2SO4 80〜140g/L
電流密度:10〜100A/dm2
浴温: 40〜60℃
上記めっき液組成2で平滑銅めっきを施した銅箔の平滑銅めっきのカーボン量を測定したところ、C=6.0ppmであった。
なお、カーボン量は、堀場製作所EMIA−U511により測定した。
測定は、脱脂した銅箔を酸素雰囲気中電気炉燃焼により発生するCO2ガスの赤外吸収を測定し、カーボン量に換算した。
標準試料名:JSS200−11
標準値:56.00ppm
助燃剤:測定時なし 校正時:Sn 0.5g
酸素精製器使用
条件:C:INT.TIME=60sec FURNACE TEMP 1250℃
C:COMP.LVL=0.0% WAIT TIME=0sec
実施例1の条件で35μm厚さの未処理電解銅箔を作成した。この後、表面処理装置を通して、密着性向上のための粗化処理、防錆処理を行って、厚さ35μmの銅箔を得た。
実施例1の条件で34μm厚さの未処理電解銅箔を作成し、そのS面にめっき液組成3のめっき液を使用してS面に1μm厚さの銅めっきを行った。この後、表面処理装置を通して、密着性向上のための粗化処理、防錆処理を行って、厚さ35μmの銅箔を得た。
めっき液組成3:
めっき浴:Cu 70〜130g/L
H2SO4 80〜140g/L
膠 1〜10ppm
塩化物イオン 5〜50ppm
電流密度:10〜100A/dm2
浴温: 40〜60℃
実施例1〜6、及び比較例1〜2に示した銅箔をニッカン工業株式会社製ニカフレックスCISV−2525(ポリイミドフィルム25μm、接着剤厚さ25μm)に、150℃、40kg/cm2、55分の条件でラミネートした後、JIS C 5016−1994に記載されているライン/スペース=1.5mm/1.0mmの耐屈曲性試料を作成した。その後カバーレイとしてニカフレックスCISV−2525をラミネートした。
信越エンジニアリング株式会社製FPC高速屈曲試験機SEK−31B2Sにより、上記の耐屈曲性評価試験片(FPC)をセットし、曲率半径1.5mm、ストローク長さ20.0mm、屈曲回数2000回/分で耐屈曲性の測定を行った。測定は、回路抵抗を経時的に測定し、破断するまでの回数をカウントした。
結果を表1に記載した。
また、比較例2に示すようにS面に行うめっきが柱状結晶の場合は、比較例1に比べてかえって破断サイクルが小さくなる。これは回路が屈曲された時、柱状結晶の結晶粒界からクラックが入りかえって破断しやすくなるためである。
2 電解製箔装置のカソード(チタン製ドラム)
3 電解製箔装置の電解液
4 未処理銅箔
Claims (5)
- メルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10,000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加した電解液を用い、製箔後の銅箔の粗面側の表面粗さRzが2.1μm以下で、かつ、光沢面側の表面粗さRzと同じかそれより小さく製箔された未処理電解銅箔の光沢面に、粒状の結晶組織からなる平滑銅めっき層が設けられているフレキシブルプリント配線板用電解銅箔。
- 前記平滑銅めっき層が、カーボン量18ppm以下で再結晶温度が200度以下の平滑銅めっき層である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用電解銅箔。
- メルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10,000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加した電解液を用い、製箔後の銅箔の粗面側の表面粗さRzが2.1μm以下で、かつ、光沢面側の表面粗さRzと同じかそれより小さく製箔して未処理電解銅箔を製造し、該未処理電解銅箔の光沢面に、粒状の結晶組織からなる平滑銅めっき層を形成するフレキシブルプリント配線板用電解銅箔の製造方法。
- 前記平滑銅めっき層を、カーボン量18ppm以下で再結晶温度が200度以下の平滑銅めっきで形成する請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板用電解銅箔の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板用電解銅箔により製作されたフレキシブルプリント配線板。
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