〔第1実施形態〕
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係るアクティブバンパ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
図1には、作動時におけるアクティブバンパ装置10の平断面図が示されている。また、図2には、図2に示されるアクティブバンパ装置10の背面図が示されている。さらに、図3には、非作動時におけるアクティブバンパ装置10の縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態に係るアクティブバンパ装置10は、車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバ(図示省略)の前端部等の車体構造体と車両の前端部に車両幅方向を長手方向として配置されたフロントバンパ12の長手方向の端部付近との間にそれぞれ配設されている。フロントバンパ12について補足すると、フロントバンパ12は、意匠面を構成する図示しないフロントバンパカバーと、軽衝突時のエネルギー吸収を行うアブソーバと、フロントバンパ12の剛性を確保するための後述するフロントバンパリインフォース40と、を含んで構成されている。
アクティブバンパ装置10は、各々車両前後方向を長手方向として配置された第1の筒体としてのアウタパイプ(外筒)14及び第2の筒体としてのインナパイプ(内筒)16を備えている。アウタパイプ14及びインナパイプ16は、いずれも矩形管によって構成されている。インナパイプ16はアウタパイプ14よりも一回り小さく形成されており、通常はアウタパイプ14内に格納(収縮)されている。なお、本実施形態では、アウタパイプ14及びインナパイプ16として矩形管を用いたが、これに限らず、円管や矩形管以外の多角形管等を用いてもよい。
(アウタパイプ14)
アウタパイプ14の後端部はブロック状に形成されたケース18の前端収容部20に嵌合されており、複数箇所にて低頭ボルト22によって固定されている。ケース18の後端部は、車両幅方向を長手方向とする矩形平板状のベースプレート24の片側半分程度の位置に複数の低頭ボルト26(図2参照)によって固定されている。なお、ベースプレート24は、図示しない固定手段によってフロントサイドメンバの前端部等の車体構造体に固定されている。
また、アウタパイプ14の前端部には略四角筒形状に形成されたホルダ28の後端部が嵌合されており、この状態で複数の低頭ボルト30によってホルダ28の後端部がアウタパイプ14の前端部に固定されている。ホルダ28は、四角筒形状に形成された本体部28Aと、この本体部28Aの前端から一体に形成されかつテーパ状に絞られた絞り部28Bと、によって構成されている。絞り部28Bの内周面にはすべり板32が装着されており、更にその隣接位置(本体部28Aと絞り部28Bとの境界付近)には、断面内方へ向けて所定高さ突出する突起部34が一体に形成されている。
(インナパイプ16)
一方、インナパイプ16はアウタパイプ14の内側に同軸的に配置されており、車両前後方向に沿ってスライド可能に収容されている。インナパイプ16の軸長はアウタパイプ14の軸長よりも若干長く、その前端部はアウタパイプ14の前端部から車両前方側へ所定量突出されている。この突出端部には略箱状に形成されたキャップ36が被嵌されており、この状態で複数の低頭ボルト38によってキャップ36がインナパイプ16の前端部に固定されている。なお、キャップ36の高さは、車両幅方向を長手方向として配置されかつ断面形状が前後逆向きのコ字状とされたフロントバンパリインフォース40の上下対向面間の距離に略等しく設定されている(図3参照)。そして、インナパイプ16の前端部においてキャップ36が被嵌された部分が、フロントバンパリインフォース40の断面内方へ挿入されている。
また、フロントバンパリインフォース40の上下壁40A、40Bの上下面には、ヒレ状のシールカバー42(図3参照)の基端部が当接状態で配置されている。このシールカバー42とフロントバンパリインフォース40の上下壁40A、40Bにはカラー挿通孔(符号省略)が同軸上に形成されており、円筒状のカラー44が挿入されている。そして、このカラー44内へ上下から固定ボルト46がそれぞれ挿入され、キャップ36の周壁部に螺合されることにより、インナパイプ16の前端部とフロントバンパリインフォース40の車両幅方向の端部付近とが相互に連結されている。なお、キャップ36の後方側には、キャップ36よりも若干大きめに形成されたシール部材48が隣接して配置されている。シール部材48の内側面はテーパ状に形成されており、前記シールカバー42によって固定的に保持されている。アクティブバンパ装置10の非作動状態(組付状態)では、このシール部材48の内側に、前述したホルダ28の絞り部28Bが密着状態で挿入される構成である(図3参照)。
(コントロールパイプ50)
上述したインナパイプ16の内部には、円筒形状に形成されると共にインナパイプ16と一体に軸方向移動する第3の筒体としてのコントロールパイプ50が同軸上に挿入されている。
コントロールパイプ50の前端部には、略円柱形状のスライダ52が螺合されている。スライダ52は、外周面に雄ねじが形成されると共に軸芯部にスプール挿通孔54が形成された円柱形状の基部52Aと、この基部52Aの外周部から軸方向へ延出された薄肉環状の中間部52Bと、この中間部52Bの前端部から半径方向外側へ張り出されかつ正面視で矩形枠状に形成された張出し部52Cと、を含んで構成されている。
基部52Aはコントロールパイプ50の前端部に螺合されており、中間部52B及び張出し部52Cがコントロールパイプ50の前端部から車両前方側へ突出されている。また、張出し部52Cを収容するインナパイプ16の前端部は所定長さ(本実施形態では、張出し部52Cの厚さの約二倍程度の長さ)に亘って薄肉化されており(以下、この部分を「前端収容部16A」と称す)、これによりインナパイプ16の前端部の内周面には前端収容部16Aとそれ以外の一般部16Bとの境界部分に段差部56が形成されている。アクティブバンパ装置10の非作動時には、張出し部52Cはこの段差部56に当接係止された状態で保持される(図3参照)。
上記スライダ52の基部52Aのスプール挿通孔54には、図3に示されるように、ワイヤ58の先端部が係止されたスプール60が張出し部52C側から挿嵌されている。スプール60は全体としては略棒状に形成されており、小径の円柱形状に形成されて基部52Aのスプール挿通孔54内へ挿嵌される挿入部60Aと、この挿入部60Aよりも若干大径に形成されたスプリング保持部60Bと、このスプリング保持部60Bよりも若干大径に形成された鍔状のスプリング係止部60Cと、によって構成されている。
スプリング係止部60Cの中央には、ワイヤ58の先端ループ部58Aを係止させるためのワイヤ係止溝62が形成されている。また、スプリング保持部60Bには圧縮コイルスプリング64が巻装されている。圧縮コイルスプリング64の前端部はスプリング係止部60Cに当接係止されており、又後端部はスライダ52の基部52Aの底面に当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング64は、スプール60を介してワイヤ58を常時車両前方側へ引張り付勢しており、ワイヤ58にテンションをかける役割を果たしている。
一方、図1に示されるように、上述したコントロールパイプ50の後端部には、略矩形筒状に形成された作動部材(なお、より下位概念にする場合は「カム部材」として把握される)としてのストッパ66が装着されている。ストッパ66の前部66Aの内周面には雌ねじが形成されており、この雌ねじを使ってストッパ66はコントロールパイプ50の後端部に螺合されている。また、ストッパ66の前部66Aの板厚はインナパイプ16の内周面とコントロールパイプ50の外周面との間隙寸法に略一致しており、当該隙間68へストッパ66の前部66Aが挿嵌されている。
ストッパ66の後部66Bの内周面には、軸線側へ向けてフック状に形成された被係合部70が一体に形成されている。この被係合部70は、ストッパ66の後端部の全周に亘って環状に形成されている。これに対応して、前述したケース18の軸芯内部には、左右一対のトリガレバー72が支軸74回りに揺動可能に配設されている。左右一対のトリガレバー72は車両幅方向に所定距離だけ離間して配置されており、その前端部には径方向外側へ向けてフック状に形成された係合部72Aが形成されている。また、トリガレバー72の後端部にはスプリング係止部72Bが一体に形成されている。そして、左右一対のトリガレバー72のスプリング係止部72B同士に一本の引張コイルスプリング76が掛け渡されている。これにより、引張コイルスプリング76は、左右一対のトリガレバー72を支軸74回りに係合方向(係合部72Aが被係合部70に係合する方向)へ回転付勢し、トリガレバー72の係合部72Aを被係合部70に係合させている。
また、インナパイプ16の後端部には、ハウジング78及びガイドプレート80が装着されている。ハウジング78はアウタパイプ14内を摺動可能な矩形枠状に構成されており、複数の低頭ボルト82によってインナパイプ16の後端部に固定されている。ガイドプレート80はハウジング78と同一の矩形枠状に形成されており、ガイドプレート80との間に後述するロック爪86をスライド可能に保持している。なお、ハウジング78、ガイドプレート80及びロック爪86はインナパイプ16への組付前に予めねじ84(締結線で図示)でサブアッセンブリ化されている。ハウジング78がインナパイプ16の後端部に組付けられた状態では、ハウジング78の前端部が前述したホルダ28の内周面に形成された突起部34に対向した状態で(即ち、干渉可能に)配置されている。従って、アクティブバンパ装置10の作動時には、ガイドプレート80がアウタパイプ14の内部を車両前方側へ向けて所定ストロークだけ軸方向移動(伸長)すると、ハウジング78の前端部が前述したホルダ28の突起部34に当接し、これによりインナパイプ16の移動ストロークを所定のストロークに制限している。
ロック爪86はインナパイプ16の各面に対応してそれぞれ設けられており、インナパイプ16の面直角方向へスライド可能に保持されている。このロック爪86は、ハウジング78の後部の板厚よりも若干長く形成されている。これらのロック爪86に対応して前述したストッパ66の後部66Bの外周面には、環状の凹溝88が全周に亘って形成されている。凹溝88の断面形状は略二等辺三角形状とされており、アクティブバンパ装置10の非作動時には、図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段の付勢力によって、ロック爪86の内端部が凹溝88の中央底部に底付きするまで進入されている。
一方、前述したホルダ28の本体部28Aの内周面の所定位置(軸方向中間部付近)には、断面形状が矩形状とされたロック溝90が全周に亘って形成されている。ロック溝90の溝幅はロック爪86の爪幅よりも若干大きめに設定されている。アクティブバンパ装置10が作動すると、ロック爪86の内端部は凹溝88内へ進入された状態のままインナパイプ16と一体に車両前方側へ軸方向移動し、ハウジング78の前端部がホルダ28の突起部34に当接し、更にコントロールパイプ50が圧縮コイルスプリング92の付勢力に抗して車両前方側へ移動し、スライダ52の張出し部52Cが前述したキャップ36の底部との間の隙間94(図3参照)が無くなるまでストロークすると、ロック爪86の内端部がストッパ66の凹溝88の傾斜面を昇り上がり、ストッパ66の後端部のカム面96によってロック爪86の外端部がロック溝90内へ挿入される。これにより、インナパイプ16は車両後方側へ軸方向移動することができない状態、即ちロック状態となる。
(ガイドパイプ98)
ガイドパイプ98は中空のロッド状に形成されており、アウタパイプ14の軸芯部に同軸的に配置されている。ガイドパイプ98はコントロールパイプ50よりも小径に形成されており、アクティブバンパ装置10の非作動時にはガイドパイプ98はコントロールパイプ50の軸芯部に挿入状態で配置されている。ガイドパイプ98は、アウタパイプ14と略同一の軸長を有している。ガイドパイプ98の基端部にはベース部材100が螺合されており、又ガイドパイプ98の先端部にはインサーション102が螺合されている。インサーション102は前述したスプール60の挿入部60Aと軸方向に対向して配置されており、その軸芯部にはワイヤ挿通孔104が形成されている。また、ベース部材100は、ガイドパイプ98の基端部に螺合される固定部100Aと、この固定部100Aと一体に形成されかつ固定部100Aよりも大径とされたスプリング係止部100Bと、によって構成されている。固定部100Aの軸芯部にはワイヤ挿通孔106が形成されており、スプール60に係止されたワイヤ58は、インサーション102のワイヤ挿通孔104及びベース部材100のワイヤ挿通孔106内を挿通されて前述したケース18内へ案内されている。
また、ベース部材100のスプリング係止部100Bには、広義には付勢手段として把握される圧縮コイルスプリング108の後端部が当接係止されている。圧縮コイルスプリング108はガイドパイプ98の外周部に巻装されており、その前端部は前述したスライダ52の基部52Aの後端面に当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング108は、スライダ52を介してコントロールパイプ50及びインナパイプ16を車両前方側へ常時押圧付勢している。
さらに、前述したスライダ52の底面とキャップ36の底面との間には、圧縮コイルスプリング108と同一径寸法の圧縮コイルスプリング92が同軸上に配置されている。この圧縮コイルスプリング92は前述したスプール60を車両前方側へ押圧付勢する圧縮コイルスプリング64の外側に同心円的に介装されており、スライダ52を車両後方側(即ち、スライダ52の張出し部52Cがコントロールパイプ50の段差部56に当接係止される方向)へ常時押圧付勢している。従って、圧縮コイルスプリング108と圧縮コイルスプリング92とは付勢力の作用方向が反対となるが、圧縮コイルスプリング108の付勢力の方が圧縮コイルスプリング92の付勢力よりも強く設定されている。アクティブバンパ装置10の非作動時には、後述するトリガレバー72がストッパ66の被係合部70に係合されているため、スライダ52の張出し部52Cはインナパイプ16の段差部56に当接した状態で保持され、この状態ではキャップ36の底部とスライダ52の張出し部52Cの前端面との間に所定の隙間94(図3参照)が形成されている。
(駆動系及びそれに関連する巻取機構、トリガ機構の一部)
上述したアウタパイプ14の隣(車両幅方向内側)には、駆動機構110が配設されている。駆動機構110はベースプレート24に支持されており、駆動モータ111及び一対のクラッチ112、114を含んで構成されている。一方のクラッチ112はトリガ機構の一部を成すカム116(図3参照)の回転軸であるカム軸118に接続されており、他方のクラッチ114は巻取機構の一部を成すプーリ120(図3参照)の回転軸であるプーリ軸122に接続されている。なお、一方のクラッチ112が接続状態のときには他方のクラッチ114は非作動状態とされ、逆に他方のクラッチ114が接続状態のときには一方のクラッチ112は非作動状態となるように図示しないコントローラによって切換制御がなされている。
カム116は、前述した左右一対のトリガレバー72の各々に対応して、側面視で三角形状に形成された押圧部116Aを対向した状態で備えており(つまり、図3において押圧部116Aは紙面の手前と奥に離間して二枚存在する)、カム軸118が軸線回りに回転することにより、左右一対のトリガレバー72の対向側面72Cを引張コイルスプリング76の付勢力に抗して係合解除方向へ押圧するようになっている。なお、カム116の下方側にはマイクロスイッチ124(図3参照)が近接して配置されており、ワイヤ58の巻取量を検出している。
プーリ120は、上記左右一対のトリガレバー72の中間位置の上方に配置されており(図3参照)、前述したワイヤ58を巻き取るようになっている。
上記により、駆動機構110は、カム116をカム軸118で回転させて左右一対のトリガレバー72を引張コイルスプリング76の付勢力に抗して支軸74回りに係合解除方向へ揺動させるトリガ系駆動経路と、プーリ120をプーリ軸122で回転させてワイヤ58をプーリ120に巻き取らせる巻取系駆動経路の二経路を備えている。
(エネルギー吸収機構)
上述したインナパイプ16の強度(軸圧縮強度)はアウタパイプ14の強度(軸圧縮強度)よりも低く設定されている。具体的には、本実施形態では、インナパイプ16及びアウタパイプ14は、いずれも長手方向に対して直交する平面で切断したときの断面形状が略均一に設定されている。板厚自体で比べればインナパイプ16の方がアウタパイプ14よりも僅かに厚く設定されているが、軸圧縮強度は材質が同じであれば断面形状(パイプ材であれば外寸)と板厚によって決まるので、これらの選定をインナパイプ16の軸圧縮強度の方がアウタパイプ14の軸圧縮強度よりも低くなるように決定している。従って、フロントバンパリインフォース40を介してインナパイプ16及びアウタパイプ14に車両後方側への衝突荷重が作用すると、最初にインナパイプ16が軸圧縮塑性変形(圧壊)し、続いてアウタパイプ14が軸圧縮塑性変形(圧壊)される構成である。
(第1実施形態の作用)
次に、図1及び図3の他に図4及び図5を交えながら、本実施形態の作用並びに効果について説明する。なお、図4及び図5は、ロック機構の作動を示す作動説明図であり、一部部品形状を簡略化しているが、上述した説明中の部品と実質的に同一のものは同一番号を付してその説明を省略する。
図3に示される状態が本実施形態に係るアクティブバンパ装置10の非作動時の状態、つまりインナパイプ16が収縮した状態である。この状態では、左右一対のトリガレバー72の前端部に設けられた係合部72Aがストッパ66の後端部に形成された被係合部70に係合されているため、インナパイプ16は圧縮コイルスプリング108の付勢力に抗してアウタパイプ14内へ収縮した状態を維持する。また、このとき、スライダ52の前端部に形成された張出し部52Cは、インナパイプ16の前端部に形成された段差部56に当接係止された状態にある。さらに、ロック爪86は、図示しない圧縮コイルスプリングの付勢力によって、ストッパ66の後部66Bの外周面に形成された凹溝88に進入した状態(非ロック状態)にある。また、ワイヤ58はプーリ120に全量巻き取られた状態にある。
この状態から車両の前端部等に配設された図示しない衝突予測センサ(プリクラッシュセンサ)によって歩行者等の衝突体との衝突が予測されると、図示しないコントローラによってアクティブバンパ装置10が作動され、インナパイプ16が車両前方側へ突出される。
具体的には、駆動モータ111が駆動されることにより、一方のクラッチ112を介してカム軸118が軸線回りに所定量回転される。これにより、カム116の一対の押圧部116Aが回動し、左右一対のトリガレバー72の対向側面72Cが係合解除方向へ押圧される。これにより、左右一対のトリガレバー72は引張コイルスプリング76の付勢力に抗して支軸74回りに揺動し、係合部72A同士が互いに接近する方向へ移動する。トリガレバー72の支軸74回りの揺動量が所定量に達すると、係合部72Aがストッパ66の被係合部70から外れ、インナパイプ16に対する拘束が解除される。
トリガレバー72による拘束が解除されると、圧縮コイルスプリング108の付勢力がスライダ52、圧縮コイルスプリング92及びキャップ36を介してインナパイプ16に作用し、インナパイプ16が車両前方側へ突出される(伸長される)。これにより、インナパイプ16と連結されたフロントバンパリインフォース40ひいてはフロントバンパ12の一部又は全部が車両前方側へ突出される。なお、このとき、他方のクラッチ114はフリー状態(非接続状態)とされているため、スライダ52が車両前方側へ移動するとそれに応じた量だけプーリ120が回転しワイヤ58が引き出される。
インナパイプ16が車両前方側へスライドしていくと、まず最初にハウジング78の前端部がホルダ28の内周面に形成された突起部34に当接し、インナパイプ16がフルストロークした状態となる。図4には、ハウジング78の前端部がホルダ28の突起部34に当接する直前の状態が示されている。この図に示されるように、この時点では、圧縮コイルスプリング92の付勢力によって、スライダ52の張出し部52Cの後端面がインナパイプ16の前端部に当接係止され、当該張出し部52Cの前端面とキャップ36の底部との間に所定の隙間94が形成された状態にある。また、ロック爪86の内端部は、図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段の付勢力によってストッパ66の凹溝88内に進入した状態を維持している。
この状態から、インナパイプ16のハウジング78の前端部がホルダ28の突起部34に当接すると、インナパイプ16はフルストローク状態となる。インナパイプ16がフルストロークした後も、圧縮コイルスプリング108の付勢力がスライダ52に作用するため、図5に示されるように、コントロールパイプ50は圧縮コイルスプリング92の付勢力に抗してスライダ52の張出し部52Cがキャップ36の底部に当接するまで車両前方側へ相対移動される。コントロールパイプ50の後端部にはストッパ66が螺合されているため、コントロールパイプ50が車両前方側へ相対移動すると、ストッパ66も車両前方側へ相対移動する。これにより、ロック爪86の内端部が凹溝88の斜面を摺動し、インナパイプ16の径方向外側へ強制的に押し出される。その結果、ロック爪86の外端部がロック溝90内へ入り込み、ロック状態となり、インナパイプ16の車両後方側へのスライド動作(収縮方向への移動)が阻止される。
上記の如くしてアクティブバンパ装置10が作動した状態で、歩行者等の衝突体と衝突すると、フロントバンパ12の一部又は全部への入力荷重が低い場合には、フロントバンパ12の一部又は全部が持つエネルギー吸収性能によって所定のエネルギー吸収がなされる。
フロントバンパ12への入力荷重が更に大きく、インナパイプ16の軸圧縮強度を超えると、インナパイプ16が車両後方側へ軸圧縮塑性変形される。これにより、所定のエネルギー吸収がなされる。インナパイプ16の軸圧縮塑性変形で衝突時のエネルギー吸収を吸収しきれない場合には、アウタパイプ14が軸圧縮塑性変形することにより、更なるエネルギー吸収がなされる。
一方、衝突予測センサの感度等の関係で結果的にアクティブバンパ装置10を作動させる必要が無かった等の場合には、アクティブバンパ装置10を元の状態に復帰させる必要がある。この場合、即ちアクティブバンパ装置10の作動後にこれを元の状態に復帰させる場合には、駆動モータ111が再び駆動される。なお、このときには、図示しないコントローラによって、一方のクラッチ112と他方のクラッチ114との接続状態が前述した場合と逆になるように変更される。すなわち、カム116側への駆動力伝達経路は遮断され、プーリ120側への駆動力伝達経路は接続される。
駆動モータ111が駆動されると、プーリ120のプーリ軸122が巻取方向へ回転される。これにより、プーリ120にワイヤ58が巻き取られていく。この際、ワイヤ58が巻き取られると、その牽引力がスプール60を介してスライダ52に伝達されるため、コントロールパイプ50がインナパイプ16に対して車両後方側へ相対移動される。これにより、図示しない圧縮コイルスプリングによって軸芯側へ押圧付勢されたロック爪86の外端部がロック溝90から外れ、内端部がストッパ66の凹溝88の底部へ再び入り込む。これにより、インナパイプ16のアウタパイプ14に対するロック状態が解除される。なお、このロック解除動作は、スライダ52の張出し部52Cがインナパイプ16の前端部の段差部56に再び当接係止されるまでになされる。
ロック解除後、ワイヤ58が更に巻き取られると、インナパイプ16はコントロールパイプ50と共に車両後方側へスライドし、アウタパイプ14内へ収縮されていく。インナパイプ16の収縮動作が完了する直前のとき、インナパイプ16の後端部に配設されたストッパ66の被係合部70とトリガレバー72の係合部72Aとが干渉し、トリガレバー72を引張コイルスプリング76の付勢力に抗して揺動させて、トリガレバー72の係合部72Aが再び被係合部70に係合される。これにより、インナパイプ16は元の状態に復帰される。
このように本実施形態に係るアクティブバンパ装置10では、インナパイプ16の軸圧縮強度をアウタパイプ14の軸圧縮強度よりも低く設定したので、歩行者等の衝突体と衝突した際には、まずインナパイプ16の軸圧縮塑性変形によるエネルギー吸収がなされ、続いてアウタパイプ14の軸圧縮塑性変形によるエネルギー吸収がなされる。よって、従来技術のように内筒と外筒との間に介在された複数の球体が外筒の内周面上を軸方向に摺動して当該外筒の内周面を塑性変形させていくことでエネルギー吸収する構成に比し、全体のエネルギー吸収量を増加させることができる。換言すれば、インナパイプ16及びアウタパイプ14が本来的かつ潜在的に有するエネルギー吸収性能をフル活用することができる。その結果、本実施形態によれば、バンパ突出後のエネルギー吸収性能を高めることができる。
また、本実施形態に係るアクティブバンパ装置10では、インナパイプ16及びアウタパイプ14は長手方向に沿って略均一断面形状とされており、その上でインナパイプ16の軸圧縮強度をインナパイプ16の軸圧縮強度よりも低く設定したので、断面形状が変わらない分、インナパイプ16及びアウタパイプ14の製造が容易になる。その結果、本実施形態によれば、アクティブバンパ装置10のトータルコストを削減することができる。
さらに、本実施形態に係るアクティブバンパ装置10では、インナパイプ16の内側にコントロールパイプ50を相対移動可能に配設し、このコントロールパイプ50の前端部にはスライダ52を取り付け、後端部にはストッパ66を設けたので、インナパイプ16がフルストローク伸長した後に更にスライダ52が所定ストローク車両前方側へ相対移動すると、ロック爪86がストッパ66の凹溝88から抜け出てロック溝90内へ進入し、ロック状態が維持され、アクティブバンパ装置10の復帰時にスライダ52を介してコントロールパイプ50を車両後方側へ相対移動させることにより、ロック爪86がロック溝90から外れロック状態が解除されてインナパイプ16の収縮動作が可能となるように構成したので、インナパイプ16が車両前方側へ突出してロックされた後に、インナパイプ16の一連の復帰動作の中でロック手段によるロック状態を自動的に解除することができる。
加えて、本実施形態に係るアクティブバンパ装置10では、前記の如く、インナパイプ16の内側にコントロールパイプ50を相対移動可能に配設したので、スライダ52及びストッパ66を用いたロック動作及びロック解除動作のタイミングを容易にコントロール(制御)することができる。その結果、本実施形態によれば、インナパイプ16を円滑に元の状態に復帰させることができる。
なお、上述したロック爪86としては種々の構成が適用可能であり、インナパイプ16及びコントロールパイプ50等の動作形態によって最適なものが使用される。以下、幾つかのロック部材の構成例について簡単に説明する。
図6(A)に示されるロック部材130は揺動形式のものである。このロック部材130は略円弧形状を成しており、狭幅部130Aと幅広部130Bとを含んで構成されている。狭幅部130Aには揺動軸が挿通される挿通孔132及び捩じりコイルスプリング134の一端部が挿入係止される小孔136が形成されている。なお、捩じりコイルスプリング134の他端部は前述したガイドプレート80等のガイド部材に挿入係止される。また、捩じりコイルスプリング134は、広義にはロック部材130をロック解除方向(又は非ロック方向)へ付勢する付勢手段として把握される要素であり、捩じりコイルスプリング134以外にも圧縮コイルスプリングや引張コイルスプリング、板ばね等の種々のスプリングを適用可能である。上記構成のロック部材130では、前記揺動軸を中心として矢印方向へ揺動することによりロック及びロック解除動作が行われる。
図6(B)に示されるロック部材138は摺動形式のものでる。このロック部材138は狭幅の矩形プレート形状を成しており、ロック部材138全体が矢印方向へスライドすることによりロック及びロック解除動作が行われる。
図6(C)に示されるロック部材140は片持ち形式のものである。このロック部材140は側面視で略L字状を成しており、支持部140Aと先端部140Bとを含んで構成されている。支持部140Aの上端部には揺動軸が挿通される挿通孔142が形成されており、当該揺動軸を中心として矢印方向へ揺動することにより先端部140Bが爪となってロック及びロック解除動作が行われる。
〔第2実施形態〕
次に、図7及び図8を用いて、本発明に係るアクティブバンパ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
第2実施形態に係るアクティブバンパ装置150には二つの特徴があり、以下、順に説明する。
図7には、作動時におけるアクティブバンパ装置150の平断面図が示されている。また、図8には、非作動時におけるアクティブバンパ装置150の縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態に係るアクティブバンパ装置150では、インナパイプ152の前部の外周面に、脆弱部としての複数の凹溝154が所定の間隔で形成されている。なお、本実施形態のインナパイプ152及びアウタパイプ156には、いずれも円管が使用されている。各凹溝154はインナパイプ152の全周に亘って形成されている。これにより、インナパイプ152の凹溝154が形成された部分の板厚は薄くなっており、凹溝154が形成されていない一般部152Aに比べて低剛性化されている。
上記構成によれば、インナパイプ152に所定値以上の軸圧縮荷重が作用すると、凹溝154が形成された部位が変形の起点となって、インナパイプ152は順次軸圧縮塑性変形して潰れていく(圧壊される)。従って、インナパイプ152の圧壊時の変形モードが狙い通りのものとなる(スムーズに圧壊が進行していく)。その結果、本実施形態によれば、エネルギー吸収性能に対する信頼性を高めることができる。
なお、本実施形態では、インナパイプ152の前部の外周面にのみ凹溝154を形成したが、これに限らず、アウタパイプ156の外周面にも凹溝154を形成してもよい。
また、本実施形態では、インナパイプ152の前部の外周面に複数の凹溝154を形成したが、これに限らず、一箇所にのみ凹溝を形成する構成を採ってもそれなりの効果は得られる。例えば、前述した第1実施形態を例にすれば、図1及び図3に二点鎖線で付記したように、インナパイプ16の前端部の外周面一箇所並びにアウタパイプ14の外周面一箇所にそれぞれ凹溝158を形成したとしても、変形起点の明確化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、脆弱部として凹溝154、158を採用したが、これに限らず、スリット等の開口部や凹み等の凹部やビード等、種々の脆弱部を採用することが可能である。
次に、図7及び図8に示されるように、本実施形態に係るアクティブバンパ装置150では、左右一対のインナパイプ152の内のいずれか一方のインナパイプ152の前端部が、ずれ吸収機構160を介してフロントバンパリインフォース40に連結されている点にもう一つの特徴がある。
具体的に説明すると、ずれ吸収機構160は、インナパイプ152の前端部に螺合された第1ブラケット162と、フロントバンパリインフォース40を車両前方側から覆うように装着された第2ブラケット164と、を含んで構成されている。
第1ブラケット162は有底略円筒形状に形成されており、底部162Aにインナパイプ16の前端部が螺合されて取り付けられている。このことから解るように、第1ブラケット162は、第1実施形態で説明したキャップ36を兼ねる部品である。また、第1ブラケット162の底部中央には、膨出部162Bが一体に形成されている。この膨出部162Bには、車両上下方向へ貫通するボルト挿通孔166が形成されている。
一方、第2ブラケット164は側面視で略コ字状に形成されており、フロントバンパリインフォース40を把持するように車両前方側から装着されている。この第2ブラケット164の上部壁164A及び下部壁164Bは、第1ブラケット162の膨出部162Bの上下面に重なり合うように延出されている。さらに、上部壁164A及び下部壁164Bには、車両上下方向に貫通する第1ボルト挿通孔168及び第2ボルト挿通孔170が前後に離間して形成されている。
後方側に形成された第1ボルト挿通孔168は膨出部162Bのボルト挿通孔166と同軸上に配置されて、軸172が通されて、貫通端部の小孔174に図示しない割りピンが挿入係止されることにより、第1ブラケット162と第2ブラケット164とが相対回転可能に相互に連結されている。さらに、フロントバンパリインフォース40の上部壁40A及び下部壁40Bには、第2ブラケット164の第2ボルト挿通孔132と同軸上に長孔176が形成されている。長孔176は車両幅方向を長手方向として形成されている。第2ブラケット164の上部壁164A及び下部壁164Bの第2ボルト挿通孔132並びにフロントバンパリインフォース40の上部壁40A及び下部壁40Bの長孔176が同軸上に配置された状態で、連結軸としての軸178が挿通されて、貫通端部の小孔180に図示しない割りピンが挿入係止されている。これにより、第2ブラケット164は、長孔176の長手方向へ相対移動可能に相互に連結されている。
上記構成によれば、衝突予測時又は衝突時に、左右一対のインナパイプ152が車両前方側へ同時に突出される際に、突出のタイミングや突出速度、トリガ解除荷重等の微量なバラツキに起因して左右差が生じることがある。この場合、仮に長孔176が無くピン結合されていたとすると、フロントバンパリインフォース40は平面視で若干斜めに傾いた状態で拘束されることになる。しかし、本実施形態のように軸178が長孔176内を移動可能に連結しておけば、そのバラツキを吸収することができ、フロントバンパリインフォース40が安定した姿勢を取ることができる。
なお、本実施形態では、フロントバンパリインフォース40側に長孔176を形成したが、逆に、第2ブラケット164側に長孔176を形成してもよい。
〔第3実施形態〕
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係るアクティブバンパ装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図9には、本実施形態に係るアクティブバンパ装置200の全体構成を示す平断面図が示されている。また、図10には、当該アクティブバンパ装置200の要部を拡大した平断面図が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態では、ねじ駒202を使ったワンウェイロック機構によってロック手段を構成した点に特徴があり、以下に詳細に説明する。
周辺構成から説明すると、可動側となるインナパイプ204は、固定側となるアウタパイプ206に対して軸方向移動可能に収容されている。なお、本実施形態では、インナパイプ204及びアウタパイプ206はいずれも円管が使用されており、インナパイプ204の外周面には第2の筒体側ねじ部としての雄ねじ(ねじ溝)208が形成されている。
上記インナパイプ204の後端部には、全体としては略円筒形状に形成されたストッパ210が装着されている。ストッパ210は小径部210A及び大径部210Bから成り、小径部210Aがインナパイプ204の後端部に螺合されて固定されている。大径部210Bはアウタパイプ206内に摺動(スライド)可能に挿入されており、後述するナットケース230の当接部212に当接することでインナパイプ204の移動ストロークを制限している。
また、インナパイプ204の前端部には、全体として略円柱形状に形成されたキャップ214が装着されている。キャップ214は、円柱形状に形成されたロッド支持部214Aと、このロッド支持部214Aの前端部から半径方向外側へ延出されたリング状のフランジ部214Bと、によって構成されている。ロッド支持部214Aの軸芯部には、インナパイプ204の軸芯部に配置されたロッド216の先端部が螺合等により固定されている。また、ロッド支持部214Aの外周部には雄ねじが形成されており、インナパイプ204の前端部の内周面に形成された雌ねじに螺合されて固定されている。これにより、ロッド216が軸線回りに回転すると、キャップ214を介してインナパイプ16も同一方向へ同一回転量だけ回転する構成である。
なお、キャップ214の軸芯部底面側にはベアリング218が配設されており、キャップ214を回転自在に軸支している。また、キャップ214のフランジ部214Bの底面側には、円座状に形成された固定プレート220が配置されている。この固定プレート220はフロントバンパリインフォース40に図示しないボルト等によって固定されており、当該固定プレート220の外周部に配置された環状の固定部材222とでキャップ36及びインナパイプ204の前端部が保持されている。
一方、アウタパイプ206の軸芯部には、コントロールパイプ224が配設されている。コントロールパイプ224の後端部には、後述する駆動軸262が挿入状態で固定されている。このコントロールパイプ224内には、ロッド216が軸方向移動可能に挿入されている。ロッド216の後端部の外周面には、半径方向外側(軸直角方向側)へ向けて突出されたピン形状のキー226が形成されている。これに対応して、コントロールパイプ224の周壁部には、その軸線方向に沿ってキー226が挿入可能なキー溝228が形成されている。従って、コントロールパイプ224が軸線回りに回転すると、ロッド216も同一方向へ回転する。
上記アウタパイプ206の前端部の外周部には、前述した第1実施形態のホルダ28に相当する部材としてナットケース230が装着されている。ナットケース230内には、後述するねじ駒202を収容可能なねじ駒収容部232が形成されている。ねじ駒収容部232は、インナパイプ204の後端部の外周面に対して所定距離だけ離間した位置で対向する第1壁面232Aと、この第1壁面232Aと連続しかつインナパイプ204の後端部の外周面と交差するテーパ形状の第2壁面232Bと、を備えている。
上記ねじ駒収容部232内には、ナットを切断した形状のねじ駒202が軸方向移動及び軸直角方向移動可能に収容されている。ねじ駒202は、第1壁面232Aに沿ってインナパイプ204の軸方向へ摺動可能な外周面202Aと、この外周面202Aと連続し第2壁面232Bに沿って摺動可能なテーパ面202Bとを備えている。また、ねじ駒202の内周面には、インナパイプ204の外周面に形成された雄ねじ208と螺合可能な駒側ねじ部としての雌ねじ234が形成されている。さらに、ねじ駒202の前端部と後述するハウジング238との間には、付勢手段としての圧縮コイルスプリング236が介在されている。これにより、ねじ駒202は常時テーパ面202Bが第2壁面232Bに押し付けられる方向へ押圧付勢されている。
上述したナットケース230の外周部の所定位置(ねじ駒202の下方側)には、ハウジング238がボルト240で固定されている。このハウジング238によってナットケース230の外周部に形成された空間部242には、アクチュエータ(ソレノイド)244が収容されている。アクチュエータ244は、通電及び非通電の切り替えにより軸方向移動するスライドピン(プランジャ)246を備えている。スライドピン246の先端部は、ナットケース230を貫通してねじ駒202の外周面202Aに形成されたピン挿入孔248内へ挿入され連結されている。なお、スライドピン246は若干の遊びをもってアクチュエータ244に保持されているため、インナパイプ16の軸直角方向へ移動可能であるだけでなく、インナパイプ204の軸方向へも多少動くことができる。
また、本実施形態においても、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様に、上述したインナパイプ204の軸圧縮強度はアウタパイプ206の軸圧縮強度よりも低く設定されている。但し、この実施形態では、インナパイプ204等に脆弱部は設定されていない。
また、前述したベースプレート24の前面には駆動手段としてのギヤードモータ250が取り付けられており、又ベースプレート24の後面にはギヤハウジング78が取り付けられている。ギヤードモータ250の出力軸252はベースプレート24を貫通しており、その貫通端部にはギヤハウジング78内に収容された第1ギヤ254が固定されている。第1ギヤ254は第2ギヤ256と噛み合っており、第2ギヤ256は第3ギヤ258と噛み合っており、駆動手段としての減速機構260を構成している。第3ギヤ258の軸芯部には駆動軸262が固定されている。駆動軸262はベースプレート24を貫通してアウタパイプ206の後端部内へ突出されている。
駆動軸262の貫通端部には、前述したコントロールパイプ224の後端部が固定されている。駆動軸262の軸方向中間部には半径方向へ延出された鍔部262Aが形成されており、この鍔部262Aとキャップ36との間にインナパイプ204を車両前方側へ突出させるための圧縮コイルスプリング108が介装されている。
以下、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
アクティブバンパ装置200の非作動時においては、インナパイプ204はアウタパイプ206内へ収縮されており、ねじ駒202の雌ねじ234がインナパイプ204の外周面の雄ねじ208に螺合された状態にある。
この状態から、衝突予測センサが衝突を予測すると、コントローラによってアクチュエータ244が作動し、スライドピン246がアクチュエータ244内へ引き込まれる。このため、スライドピン246の先端部と連結されたねじ駒202が、インナパイプ204の外周面から強制的に離間される。これにより、インナパイプ204は、圧縮コイルスプリング108の付勢力によって、ストッパ210がナットケース230の当接部212に当接するまで車両前方側へ突出される。なお、このときには、コントロールパイプ50のキー溝228に案内されて、ロッド216は軸線回りに回転することなくそのまま軸方向移動する。
インナパイプ204が車両前方側へ突出されると、アクチュエータ244が非作動状態となり、スライドピン246はフリーな状態となる。このため、ねじ駒202は圧縮コイルスプリング236の付勢力によってねじ駒収容部232内の第2壁面232B側へ押し付けられる。これにより、ねじ駒202のテーパ面202Bが第2壁面232Bに沿って摺動(上昇)し、楔効果によってねじ駒202の雌ねじ234がインナパイプ204の後端部の雄ねじ208に螺合される。その結果、インナパイプ204は、収縮方向へはスライド不可の状態で保持される。
この状態で、歩行者等の衝突体と衝突し、インナパイプ204の軸圧縮強度を超える荷重が入力されると、インナパイプ204はアウタパイプ206に先行して軸圧縮変形して(圧壊して)所定のエネルギー吸収を行う。さらに、アウタパイプ206にその軸圧縮強度を超える荷重が入力されると、続いてアウタパイプ206が軸圧縮変形して(圧壊して)所定のエネルギー吸収を行う。
一方、衝突予測センサの感度が良過ぎる等の理由により、本来アクティブバンパ装置200が作動する必要がない場合に作動してしまったような場合には、インナパイプ204をアウタパイプ206に収縮させて元の状態に復帰させる必要がある。
この場合、まず、ギヤードモータ250を駆動させる。ギヤードモータ250が駆動すると、減速機構260を介して駆動軸262が軸線回りに回転される。このため、駆動軸262の先端部に固定されたコントロールパイプ224がその軸線回りに同一方向へ回転される。コントロールパイプ224が回転すると、コントロールパイプ50のキー溝228内にロッド216のキー226が係合されているため、コントロールパイプ50と共にロッド216も同一方向へ回転する。ロッド216の先端部はキャップ214を介してインナパイプ204の前端部と連結されているため、ロッド216がその軸線回りに回転すると、インナパイプ204も同一方向へ回転する。インナパイプ204の外周面に形成された雄ねじ208はねじ駒202の内周面の雌ねじ234に螺合されており、ねじ駒202自身はアクチュエータ244のスライドピン246の先端部と連結されているため、ねじ駒202は軸方向に動かず、インナパイプ204がその軸線回りに回転して車両後方側へと軸方向移動(収縮)する。その結果、インナパイプ204はねじ駒202にワンウェイロックされた状態で回転されることにより、インナパイプ204はアウタパイプ206内へ収縮され、元の状態に復帰される。
このように本実施形態に係るアクティブバンパ装置200においても、インナパイプ204の軸圧縮強度をアウタパイプ206の軸圧縮強度よりも低く設定したので、歩行者等の衝突体と衝突した際には、まずインナパイプ204の軸圧縮塑性変形によるエネルギー吸収がなされ、続いてアウタパイプ206の軸圧縮塑性変形によるエネルギー吸収がなされる。よって、従来技術のように内筒と外筒との間に介在された複数の球体が外筒の内周面上を軸方向に摺動して当該外筒の内周面を塑性変形させていくことでエネルギー吸収する構成に比し、全体のエネルギー吸収量を増加させることができる。換言すれば、インナパイプ204及びアウタパイプ206が本来的かつ潜在的に有するエネルギー吸収性能をフル活用することができる。その結果、本実施形態によれば、バンパ突出後のエネルギー吸収性能を高めることができる。
また、本実施形態に係るアクティブバンパ装置200では、ねじ駒202を使ったワンウェイロック機構を採用したので、車両前方側へ突出したインナパイプ204のロック状態を確実に維持することができる。
さらに、本実施形態に係るアクティブバンパ装置200は、ねじ駒202を使ったワンウェイロック機構を採用したので、ギヤードモータ260を使ってインナパイプ204を軸線回りに回転させてやることにより、インナパイプ204を自動的に復帰させることができる。
〔実施形態の補足説明〕
なお、上述した第1実施形態では、インナパイプ16及びアウタパイプ14を角管とし、コントロールパイプ50及びガイドパイプ98を円管としたが、これに限らず、種々の筒構造を採用することができる。例えば、第2実施形態のようにインナパイプ(内筒)、アウタパイプ(外筒)、コントロールパイプ(制御筒)、ガイドパイプ(ガイド筒)のすべてを円管としてもよいし、すべてを角管や多角管としてもよい。要は、パイプ同士が相互干渉しない状態を作り出すことができる筒構造であれば、すべて適用可能である。
また、上述した第1実施形態等では、アウタパイプ14(外筒)を固定側パイプとし、インナパイプ16(内筒)を可動側パイプとしたが、これに限らず、アウタとインナの関係を逆にしても発明は成立する。
さらに、上述した各実施形態では、種々の場面で圧縮コイルスプリング64、92、108、引張コイルスプリング76等の付勢手段を使用したが、どの場面でどの種類に属するスプリングを使用するかは設置スペース等との関係で任意に選択することが可能であり、コイルスプリング以外にも板ばね等も使用可能である。
また、上述した各実施形態では、インナパイプ16等を車両前方側へ突出させるためのスプリングとして圧縮コイルスプリング108を用いたが、これに限らず、スプリング以外の突出機構(例えば、インフレータ形式のものや油圧シリンダ形式のもの)を使用することも可能である。但し、インフレータ形式のものは、インナパイプ16等を突出させた後に再び復帰させるメリットが活かせないディメリットがある。
さらに、上述した各実施形態では、プリクラッシュセンサによって衝突予測状態が検出された場合にアクティブバンパ装置10、150、200を作動させるように構成したが、これに限らず、衝突時にアクティブバンパ装置10、150、200を作動させるようにしてもよい。