JP4429479B2 - 遮水壁の構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は地下水を遮水する遮水壁の構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、汚染土壌を地中に封じ込める方法としては、側壁を構築して、その内側に汚染土を封じ込める方法がある。
そして、仮置き保管のための汚染土封じ込めの側壁としては、側壁で封じ込められた内側の汚染物質が外側に漏液、漏洩、排出されない必要がある。
このため、地盤を薄く切り裂き、そこに極薄の壁を構築することが考えられ、一般的に、ワイヤーソウ、チェインソウ等のノコギリを用いて地盤を切り、そこに薄い板材を差し込む方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような方法では、コストが割高になったり、シート間の遮水性確保の問題が残り、実用化にはいたっていないのが現状である。
【0004】
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものでその目的とするところは、工費が低廉で、止水性の高い遮水壁及びその構築方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述した問題を解決するための本発明は、汚染土の周囲に、溝を構築する工程と、前記溝の内部に、遮水シートを設ける工程と、前記溝の内部に、グラウトまたはモルタルを充填する工程と、を具備する遮水壁の構築方法であって、前記溝を構築する工程は、板部材を打設する工程と、前記板部材の地表面付近の周囲を掘削し、注液溝を構築する工程と、前記注液溝に、ベントナイト液を注入する工程と、前記板部材を抜き取り、前記板部材により構築された前記溝に、前記注液溝より前記ベントナイト液が注入される工程と、を具備することを特徴とする遮水壁の構築方法である。
【0006】
第2の発明は、汚染土の周囲に、溝を構築する工程と、前記溝の内部に、遮水シートを設ける工程と、前記溝の内部に、グラウトまたはモルタルを充填する工程と、を具備することを特徴とする遮水壁の構築方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1から図9は、土壌封じ込め壁体(遮水壁)の構築方法の説明図であり、図5は、図4の斜視図、図7は、図6のA−A断面図、図9は、全体斜視図である。
図1に示すように、汚染土9の周囲の地面1に汚染土9を囲むように土壌封じ込め壁体を構築する場合、例えば長さが約5mの板部材であるシートパイル3を難透水層7まで到達するように、打設装置5によって地面1に打設する。
【0008】
次に、図2に示すように、シートパイル3の地表面付近の両側を掘削して、注液溝11を構築し、注液溝11に、ベントナイト液13を充填する。
図3に示すように、打設したシートパイル3をクレーン15により抜き取る。その際、抜き取りと同時に、注入溝11から、シートパイル3を抜き取った隙間であるシートパイル抜取溝17にベントナイト液13が進入する。このベントナイト液は、シートパイル抜取溝17の側壁崩壊を防ぐ役割をする。
【0009】
次に、図4、図5に示すように、注液溝11と地面1とに脚部22を有する遮水シート垂込用ガイド治具19を設置する。この遮水シート垂込用ガイド治具19上に、ガイド棒20を載置する。遮水シート垂込用ガイド治具19の形状は、シートパイル抜取溝17の断面形状に応じた形状となる。
遮水シート21の先端には、ウェイト(重り)23を設ける。この遮水シート21をガイド棒20上に載置し、遮水シート21の端部を作業員が握る。ウェイト23の重みにより、遮水シート21は、ガイド棒20を介して、ベントナイト液13が充填されたシートパイル抜取溝17に挿入され建て込まれる。
【0010】
図6は、シートパイル抜取溝17内のベントナイト液13中に、遮水シート21が建て込まれた状態を示し、図7は、遮水シート21の合せ部における図6のA−A断面図である。
図6、図7に示すように、遮水シート重ね合わせ部29は、シートパイル抜取溝17内のベントナイト液13中に、遮水シート21aと遮水シート21bとを重ねて建て込む。この遮水シート21aと遮水シート21bとの重ね代の両端部のシートパイル抜取溝17に差し矢板25を差し込み、遮水シート21aと遮水シート21bとを仮固定する。遮水シート21aと遮水シート21bとで挟まれた部分に、無収縮モルタル27を注入することにより、遮水シート重ね合わせ部29の遮水性を確保する。
【0011】
次に、図8に示すように、シートパイル抜取溝17内の遮水シート21の両側に、グラウトまたはモルタル31を注入して、ベントナイト液13を排出し、注液溝11を埋め戻す。
更に、図9に示すように、一定の幅で、前述の土壌封じ込め壁体の構築方法を繰り返すことにより、汚染土9の周囲に、極薄の遮水壁である土壌封じ込め壁体を構築する。
この場合、2組のシートパイル3を用いて、この2組のシートパイル3を繰り返し交互に利用する。
汚染土9の周囲への土壌封じ込め壁体の構築を完了した後、アスフアルト舗装等のトップカバー(図示せず)を施工して、汚染土9の封じ込めを完了する。
【0012】
この土壌封じ込め壁体の深さ分に渡って横方向へ、汚染土9の周囲に汚染物質の流入、または、流出等の移動を防止できる。
尚、汚染土9の底部に遮水工が必要な場合には、地盤改良工法により、シートパイル3の打設に先だち、汚染土9の底部に遮水工の構築をする。
このように、本実施の形態によれば、遮水シート21を用いるため、遮水性が良好で、工費も安い、遮水壁(土壌封じ込め壁体)及びその構築方法を提供することができる。
【0013】
図10から図12は、別のウエイト33を用いた場合に関するもので、図10は、遮水シート21を建て込む場合の斜視図、図11は、ウエイト33の斜視図、図12は、図11のB−Bによる断面図に相当する図である。
図10から図12に示すように、ウエイト33は、前述のウエイト23と同様に、遮水シート21をシートパイル抜取溝17内に建て込む際に、重りの役割をする。
【0014】
図12に示すように、ウエイト33の断面形状は、シートパイル3の断面形状に応じたものであり、ボルト35により、建て込む遮水シート21の幅にあわせて、必要数をつなぎ合わせる。このウエイト33を設けた遮水シート21は、遮水シート垂込用ガイド治具19に設けられたガイド棒20を介して、シートパイル抜取溝17に建て込まれる。
【0015】
次に、本発明の別の実施の形態であり、施工実現性を確保するために、シートパイル抜取り時の負圧対策を兼用したモルタル壁築造について説明する。図13から図19は、別の実施の形態の土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図であり、図14は、圧入治具67を有するシートパイル53の斜視図であり、図15は、図14のC−C断面図、図19は、図18のD部拡大図である。
【0016】
前述した土壌封じ込め壁体を構築する際、シートパイル3を抜き取る時に、地面1の土質によりベントナイト液13を注入してもシートパイル抜取溝17の側壁が崩壊を起こす場合がある。図13から図18に示す別の実施の形態は、シートパイル53を抜き取る作業中に打設溝71内に負圧が働き打設溝71壁の崩壊を防ぐために、打設溝71の厚さを大きくする圧入治具67を考案し、モルタル圧入管72を圧入してモルタル74を送りながら、シートパイル53を抜取り、モルタル74壁を築造する土壌封じ込め壁体の構築方法である。
【0017】
図13に示すように、汚染土59の周囲の地面51に汚染土59を囲むように土壌封じ込め壁体を構築する場合、土壌封じ込め壁体の構築位置の地面51に注液溝61を掘削し、注液溝61内にベントナイト液63を充填する。57は難透水層を示す。
【0018】
次に、図14、図15に示すように、シートパイル53の先端に、アングル66が設けられ、断面がV字形の圧入治具67の支持部68をガムテープ69等で仮に取り付ける。そして図16に示すように、この圧入治具67が仮固定されたシートパイル53から圧入直前にガムテープ69をはがして、打設装置55により、注液溝61の下方に打設する。
尚、図14は、圧入治具67とシートパイル53との位置関係を概念的に理解するために書かれた斜視図であり、施工時では、aはゼロとなるように圧入治具67がシートパイル53に取付けられる。
【0019】
図17に示すように、シートパイル53は、難透水層57まで到達するように打設する。圧入治具67の断面は、V字形であり、シートパイル53の打設時にはシートパイル53の厚みより厚く打設溝71が構築される。この打設溝71内にモルタル圧入管72を別途に挿入し、モルタル74を打設溝71の溝内底面から充填することにより、モルタル74で壁体を構築する。
【0020】
次に図18、図19に示すように、打設したシートパイル53をクレーン65により抜き取る。圧入治具67は、シートパイル53の抜き取りと同時に、シートパイル53からはずれ、打設溝71の底部にのこる。この打設溝71は、シートパイル3の厚みより厚いため、シートパイル53の抜取り時に、シートパイル53は、打設溝71の側壁に接触せず、またモルタル注入管72からのモルタル74を圧送することにより負圧が発生することがなく、打設溝71の側壁の崩壊を防止しながら、モルタル74を充填してモルタル74による壁体が構築される。尚、このモルタル74による壁体中に遮水シートが設けられる。
その後の工程は、前述の実施の形態と同様である。
【0021】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明によれば、鋼矢板の代わりに遮水シートを用いるため、工費が低廉で、止水性の高い遮水壁(土壌封じ込め壁体)及びその構築方法を提供することができる。
また、従来からの工法では、ライフサイクルコスト(LCC)の観点から、将来的に壁体撤去を余儀なくされた場合に、コンクリート壁体の撤去処分に莫大なコストがかかり、またシートパイル等においては、腐食鋼材の処分等の問題が発生する。本発明による遮水シートの将来的な撤去の工費については、通常の掘削工事によって、掘り出した部分を切断除去して、産業廃棄物処分するコストだけになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図2】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図3】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図4】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図5】 図4の斜視図
【図6】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図7】 図6のA−A断面図
【図8】 土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図9】 土壌封じ込め壁体の構築方法の全体斜視図
【図10】遮水シート21を建て込む場合の斜視図
【図11】ウエイト33の斜視図
【図12】図11のB−B断面図
【図13】土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図14】圧入治具67を有するシートパイル53の斜視図
【図15】図14のC−C断面図
【図16】土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図17】土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図18】土壌封じ込め壁体の構築方法の説明図
【図19】図18のD部拡大図
【符号の説明】
1、51…地面
3、53…シートパイル
9、59…汚染土
11、61…注液溝
13、63…ベントナイト液
19…遮水シート垂込用ガイド治具
21…遮水シート
23、33…ウエイト
67…圧入治具
72…モルタル圧入管
74…モルタル
Claims (4)
- 汚染土の周囲に、溝を構築する工程と、前記溝の内部に、遮水シートを設ける工程と、前記溝の内部に、グラウトまたはモルタルを充填する工程と、を具備する遮水壁の構築方法であって、
前記溝を構築する工程は、板部材を打設する工程と、前記板部材の地表面付近の周囲を掘削し、注液溝を構築する工程と、前記注液溝に、ベントナイト液を注入する工程と、前記板部材を抜き取り、前記板部材により構築された前記溝に、前記注液溝より前記ベントナイト液が注入される工程と、を具備することを特徴とする遮水壁の構築方法。 - 前記遮水シートを設ける工程は、前記溝の上部の地表面に竿状のガイド棒を設置する工程と、前記ガイド棒に沿わせるように、前記遮水シートを前記溝の内部に設ける工程と、を具備することを特徴とする請求項1記載の遮水壁の構築方法。
- 前記遮水シートは、一部が重ね合わされ、重ね合わされた部分の2枚の遮水シートの内側に充填された無収縮モルタルを有することを特徴とする請求項1記載の遮水壁の構築方法。
- 前記遮水シートを設ける工程は、前記遮水シートの端部に重りを設けて、前記溝の内部に前記遮水シートを挿入していくことを特徴とする請求項1記載の遮水壁の構築方法。
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