JP4429476B2 - 電気部品内蔵用ヒュ−ズ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒュ−ズ素子に関し、特に、コンデンサやトランジスタ等の電気部品に内蔵して使用するヒュ−ズ素子として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
電気部品においては、電流ヒュ−ズ素子を電気部品本体に接続し、これらを樹脂モ−ルド等により封止することがある。
例えば、タンタルコンデンサにおいては、万一の極性誤装着による過電流を未然に防止するために、コンデンサ素子にヒュ−ズ素子を接続し、これらを樹脂でモ−ルドしている。また、パワ−トランジスタにヒュ−ズ素子を接続し、これらを樹脂で封止することも知られている。
【0003】
これらのヒュ−ズ内蔵電気部品においては、ヒュ−ズ溶断時のヒュ−ズ素子の発熱温度で加熱される。而して、その電気部品本体やモ−ルド樹脂の炭化・燃焼を防止するために、その発熱温度を所定温度以下に抑える必要がある。
すなわち、溶断電流をi、溶断時間をtm、ヒュ−ズ素子の溶断時温度をTm、同じく抵抗をR、同じくヒュ−ズ素子の単位長さ当たりの熱容量をK、周囲温度をθとすると、ほぼ
【数1】
tm=K(Tm−θ)/Ri2 (1)
が成立し、Tmを所定温度以下に抑える必要がある。
【0004】
上記のヒュ−ズ内蔵電気部品は、通常リフロ−法またはフロ−法により、回路基板に実装される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、リフロ−法やフロ−法には、Pb−Sn系はんだが使用されており、その実装温度は220℃〜230℃とされていた。
従来、上記ヒュ−ズ素子には、実装温度よりも高い固相線温度の合金を使用するとの前提に基づき、Pb−1〜10Sn、Pb−0.5〜10Sn−1〜5Ag、Pb−1〜20In、Pb−1〜20In−1〜5Ag、Pb−0.5〜5In−0.1〜5Cu等のPb系合金(融点260℃〜330℃)を使用している。
これらの合金系のヒュ−ズ素子では、固相線温度が前記実装温度よりも高いから、ヒュ−ズ内蔵電気部品の安全な実装を保証できる。また、液相線温度が330℃程度であり、ヒュ−ズ素子の前記溶断時温度Tmを充分に低くでき、ヒュ−ズ素子を、電気部品本体やモ−ルド樹脂の炭化・燃焼を発生させることなく、安全に溶断作動させることができる。
【0006】
ところで、近来、廃棄された電子・電気機器からの鉛イオンの溶出による環境汚染を防止するために、鉛フリ−はんだの使用が要請され、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Bi系等の鉛フリ−はんだが開発されている。これらの鉛フリ−はんだを使用しての実装温度は、Pb−Snはんだ使用の場合よりも高く、最高で280℃が予定されている。
このはんだの鉛フリ−化に対応して、上記ヒュ−ズ素子においても、鉛フリ−化が要請されるが、従来のように固相線温度が実装温度よりも高い合金を使用することを前提としてヒュ−ズ素子の鉛フリ−化を行うと、実装温度280℃よりも高い固相線温度の合金がヒュ−ズ素子に使用されることになる。
而して、そのヒュ−ズ素子の液相線温度が従来のPb系ヒュ−ズ素子の液相線温度よりもかなり高くなり、前記ヒュ−ズ素子の溶断時温度Tmが高くなって、ヒュ−ズ溶断時に電気部品本体若しくはモ−ルド樹脂に炭化・燃焼が生じ易くなって危険である。
【0007】
本発明の目的は、タンタルコンデンサ等の電気部品に内蔵させるヒュ−ズ素子において、ヒュ−ズ内蔵電気部品の鉛フリ−はんだによる安定な実装やヒュ−ズ溶断作動時の電気部品の炭化・燃焼防止を満足に保証しつつ、そのヒュ−ズ素子のSn系での鉛フリ−化を良好に達成することにある。
【0008】
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係るヒュ−ズ素子は、ヒューズ素子を内蔵させた電気部品を実装温度230℃〜280℃で回路板に実装する方法において使用するヒューズ素子であり、 Snに、Ag、Ni、Ge、Alの二種以上を配合した固相線温度が214℃以上で230℃未満、液相線温度が300℃〜550℃の多元合金を細線に加工したことを特徴とする構成であり、他の金属元素の配合量はAg:5〜30重量%、Ni:0.5〜5重量%、Ge:1〜10重量%、Al:1〜10重量%とされる。
本発明に係るヒュ−ズ素子の好適な構成は、Ag5〜30重量%、Cu1〜15重量%、残部Snである多元合金を細線に加工したことを特徴とする。
【0009】
〔作用〕
固相線温度がほぼ210℃〜230℃であり、鉛フリ−はんだによる実装温度260℃〜280℃よりも低いが、ヒュ−ズ素子の液相線温度が300℃以上であってその実装温度よりも高くされているために、実装時にヒュ−ズ素子が完全な液状に成らずに半溶融状態になり、ヒュ−ズ電極に対する濡れ性が悪く、かつヒュ−ズ素子の線径が50μm〜150μmと細く表面張力による線状保持力(線径をr、表面張力をfとすれば、f/r)が大きいために、後述の実施例から明らかなように、ヒュ−ズ素子の実質的な損傷なく、ヒュ−ズ素子内蔵電気部品を実装できる。
【0010】
また、ヒュ−ズ素子の液相線温度を550℃以下としてあるから、後述の実施例から明らかなように、前記のTmを600℃以下に抑えることができ、電気部品本体若しくはモ−ルド樹脂を炭化・燃焼させることなく、ヒュ−ズ素子を安全に溶断作動させ得る。
また、Snと上記の他金属元素一種との2元合金で液相温度を300℃〜550℃とするには、他金属元素の配合量を多くする必要があり、例えばSn−Ag二元合金の場合、Ag配合量を10〜55重量%以上にする必要があり、Ag25重量%以上で合金の脆弱化が顕著になるが、本発明に係るヒュ−ズ素子では、Snに、Ag、Cu、Ni、Ge、Al等の他金属元素を二種以上配合しており、後述の実施例と比較例との対比から明らかなように、他金属元素の少ない配合量で液相線温度を上げることができ、ヒュ−ズ素子の脆弱化をそれだけよく抑え得、実装時の曲げや製線時のボビン巻取り時にヒュ−ズ素子が折損するのを良好に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係るヒュ−ズ素子を内蔵させたコンデンサの一例を示している。
図1において、1はタンタルコンデンサ素子、2は陽極リ−ド導体である。3は配線板であり、一対の電極31,32を有し、その電極間に本発明に係るヒュ−ズ素子aを接続し、一方の電極31をコンデンサ素子1の陰極に接合し、他方の電極32にリ−ド導体4を接合してある。5は封止樹脂層、例えばエポキシ樹脂層である。
上記ヒュ−ズ素子と電極との接合には、抵抗溶接、ワイヤボ−ルボンディング、ウェッジボンディング等を用いることができる。
【0012】
上記のコンデンサは、IC、トランジスタ、チップ抵抗等の他の電気部品と共に鉛フリ−はんだを使用してリフロ−法やフロ−法によって回路板に温度230℃〜280℃で実装される。
【0013】
本発明に係るヒュ−ズ素子の合金には、SnにAg、Cu、Ni、Ge、Al等の他金属元素の二種以上を配合して液相線温度を300℃〜550℃に調整した多元合金が使用され、他金属元素の配合量がAg:5〜30重量%、Cu:1〜15重量%、Ni:0.5〜5重量%、Ge:1〜10重量%、Al:1〜10重量%とされる。下限値未満では、液相線温度が300℃以下となり、上限値を越えると、液相線温度が550℃以上となるからである。また、線径は通常50μm〜150μmとされる。
【0014】
このヒュ−ズ素子では、固相温度が214℃〜230℃であり、前記実装温度230℃〜280℃のもとで半溶融状態になり、液相中に固相粒体が混在した状態となり、濡れ性が悪く、実装加熱中での電極への濡れ広がりによるヒュ−ズ素子の細りを僅かにとどめ得、実装終了時での冷却凝固でほぼ元の太さに保持できる。
従って、上記のヒュ−ズ内蔵コンデンサを、ヒュ−ズ素子の固相線温度温度よりも高い実装温度240℃〜280℃という鉛フリ−はんだによるリフロ−法またはフロ−法でも、ヒュ−ズ素子を安定に保持しつつ実装できる。
【0015】
上記したヒュ−ズ素子をタンタルコンデンサに内蔵させる理由は、万一の極性誤接続によって過電流が流れるのを防止するためであり、遮断電流をi、遮断時間をtm、ヒュ−ズ素子の溶断時温度をTm、同じく抵抗をR、同じくヒュ−ズ素子の単位長さ当たりの熱容量をK、周囲温度をθとすると、ほぼ前記の式(1)が成立する。
而るに、本発明に係るヒュ−ズ素子においては、後述の実施例から明らかなように、線径50μmφ〜150μmφのもとで、2〜6Aを数msecの遮断時間で、かつ、ヒュ−ズ素子の溶断時温度600℃以下で過電流を遮断でき、タンタル焼結体の発煙温度600℃以下で安全に溶断作動させ得る。
【0016】
本発明に係るヒュ−ズ素子は、前記したようにタンタルコンデンサに装着して使用することの外、回路板のヒュ−ズ電極にヒュ−ズ素子単体を前記したリフロ−法またはフロ−法により実装する形態でも使用することができる。
また、本発明に係るヒュ−ズ素子は、リフロ−法またはフロ−法により実装した後での補修やあと付けでも、鏝で安全にはんだ付けすることもできる。
これらの場合、ヒュ−ズ素子が曲げをうけるが、充分な柔軟性を有し、折損なく、スム−ズに、装着、実装またはあと付けできる。
【0017】
本発明に係るヒュ−ズ素子は、充分な柔軟性を有する多元合金を使用しているから、前記50〜150μmφの線引き加工をスム−ズに行うことができる。この線引き加工の外、回転液中紡糸法によっても製造できる。すなわち、回転ドラムの内周面に遠心力により形成保持された冷却液層に、ノズルから噴射した溶融ジェットを冷却液層の周速と同速・同方向で入射させ、この液層入射ジェットを冷却液層で急冷・凝固させて紡糸することもできる。この場合、ノズルから冷却液層に至る空間でのジェットは、ノズルの円形形状が溶融金属の表面張力により保持されて円形断面となる。更に、ジェットの表面張力による円形保持力を冷却液層の動圧(ジェットを扁平化しようとする圧力)よりも大とするように、冷却液層周速、ジェットの冷却液層入射角等を調整してあり、冷却液層に入射されたジェットも、断面円形を保持しつつ冷却・凝固されていく。従って、線径50μmφ〜150μmφという細線のヒュ−ズ素子を容易に製造できる。
これらの製線中、ボビンへの巻取りを必要とするか、充分な柔軟性のために、折損なく、スム−ズに巻き取ることができる。
【0018】
【実施例】
〔実施例1〜6〕
内径500mm,巾45mmのドラムを200rpmで回転させて約1600mlの水を層状に形成し、この冷却液層中に、ヒ−タにて溶融させた組成材を窒素ガス加圧により、石英ガラスノズルからジェットとして上記冷却液層周速と同速度で噴射して紡糸する方法により、表1に示すSn−Ag−Cu合金で線径ほぼ100μmφの細線を製造し、これをヒュ−ズ素子とした。
【0019】
〔比較例1〕
表1に示すように、合金をSn−40重量%Agの二元とした以外、上記実施例に同じとした。
【0020】
これらの実施例品及び比較例品の固相線温度及び液相線温度、抵抗値変化率、電流遮断特性(遮断時間及び温度)及び柔軟性を測定したところ、表1の通りであった(試料数20個の平均値)。
【0021】
なお、測定方法は次ぎの通りである。
〔固相線温度及び液相線温度〕DSCによる測定条件は加熱速度10℃/minとした。
〔抵抗値変化率〕温度280℃のもとでの実装の可否を評価するためのものである。図2に示すように、セラミック基板61にAgペ−ストの塗布・焼成により対電極62,62を設け、両電極間にヒュ−ズ素子aを載置し、更に各電極62に錫メッキ銅線63を溶接し、その溶接熱で各電極とヒュ−ズ素子aとの間を溶接した試料を10分間、280℃に保持し、10分時の初期に対する抵抗値変化率を測定した。
〔遮断電流特性〕ヒュ−ズ素子に5Aの電流を通電し、遮断時間と遮断時のヒュ−ズ素子温度を測定した。
〔柔軟性〕長さ約100mmのヒュ−ズ素子を180°で折り曲げ、折れなかったときを合格、折れたときを不合格とした。
【0022】
【表1】
【0023】
本発明に係るヒュ−ズ素子においては、溶け始め温度(固相線温度)が実装最高280℃より低くても、液相線温度が300℃以上であり、温度280℃のもとでは完全に液化せずに半溶融状態となり、かかる半溶融状態では濡れ性が低くて細くなり難く、本発明に係るヒュ−ズ素子を内蔵させた電気部品を280℃という高い温度のもとで実装してもそのヒュ−ズ素子を実質的な細り無く安定に保持できる。このことは、抵抗変化率が10%以下と充分に小さいことから確認できる。
【0024】
また、本発明に係るヒュ−ズ素子においては、液相線温度が550℃以下であり充分に低く、溶断時のヒュ−ズ素子の温度を600℃以下に抑え得て電気部品や封止樹脂の炭化・燃焼を防止できることは、表1の電流遮断特性の溶断時温度からも確認できる。
また、比較例1との対比から、二元合金で実施例相当の特性を得るには、柔軟性の悪化が避けられず、コンデンサへの装着作業や製線上から工業的使用が困難であるが、本発明によれば、かかる障害なく円滑に工業的使用できることが明らかである。
【0025】
〔実施例7〕
実施例3のSn−20Ag−5Cuに対し、Sn−20Ag−1Niとした以外、上記実施例3に同じとした。
【0026】
〔実施例8〕
実施例3のSn−20Ag−5Cuに対し、Sn−20Ag−4Geとした以外、上記実施例3に同じとした。
【0027】
これらの実施例品の固相線温度及び液相線温度、抵抗値変化率、電流遮断特性(遮断時間及び温度)及び柔軟性を測定したところ、表2の通りであった。
【表2】
実施例3と実施例7や8との対比から、Cuに対するNiやGeの置換有用性が確認できる。Alについても、同様に確認済みである。
【0028】
〔実施例9〕
合金組成をSn−5Cu−1Niとした以外、上記実施例1に同じとした。
【0029】
〔比較例2〕
【0030】
合金組成をSn−20Cuとした以外、上記実施例1に同じとした。
この実施例品及び比較例2の固相線温度及び液相線温度、抵抗値変化率、電流遮断特性(遮断時間及び温度)及び柔軟性を測定したところ、表3の通りであった。
【表3】
実施例9と比較例2との対比から、Sn−Cu二元の劣柔軟性をSn−Cu−Niの三元により解消できることが明らかである。Sn−Cu−Niや上記Sn−Ag−Cuの外、Sn−Cu−Ge、Sn−Cu−Alについても、その有効性を確認済みである。
【0031】
〔実施例10〕
合金組成をSn−5.5Ge−4.5Alとした以外、上記実施例1に同じとした。
【0032】
〔実施例11〕
合金組成をSn−8Ge−7Alとした以外、上記実施例1に同じとした。
【0033】
これらの実施例品の固相線温度及び液相線温度、抵抗値変化率、電流遮断特性(遮断時間及び温度)及び柔軟性を測定したところ、表4の通りであった。
【表4】
これらの実施例から、Sn−Ge−Alの三元系が、上記Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Ge、Sn−Ag−Niと同様に有効であることが明らかである。これら以外の請求項1に属する三元系の有効性も確認済みである。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、タンタルコンデンサ等の電気部品に内蔵させるヒュ−ズ素子において、ヒュ−ズ内蔵電気部品の鉛フリ−はんだによる安定な実装及びヒュ−ズ溶断作動時の電気部品の炭化・燃焼防止、更には、ヒュ−ズ素子の容易な取扱いや製線性等の点を満足に保証しつつそのヒュ−ズ素子のSn系での鉛フリ−化を可能にでき、鉛フリ−化による環境保全上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るヒュ−ズ内蔵電気部品の一例を示す図面である。
【図2】抵抗変化率の測定試料を示す図面である。
【符号の説明】
a ヒュ−ズ素子
1 コンデンサ素子
5 封止樹脂層
Claims (3)
- ヒューズ素子を内蔵させた電気部品を実装温度230℃〜280℃で回路板に実装する方法において使用するヒューズ素子であり、 Snに、Ag、Ni、Ge、Alの二種以上を配合した固相線温度が214℃以上で230℃未満、液相線温度が300℃〜550℃の多元合金を細線に加工したことを特徴とする電気部品内蔵用ヒュ−ズ素子。
- Agが5〜30重量%、Niが0.5〜5重量%、Geが1〜10重量%、Alが1〜10重量%である請求項1記載の電気部品内蔵用ヒュ−ズ素子。
- ヒューズ素子を内蔵させた電気部品を実装温度230℃〜280℃で回路板に実装する方法において使用するヒューズ素子であり、Ag5〜30重量%、Cu1〜15重量%、残部Snであって、固相線温度が214℃以上で230℃未満、液相線温度が300℃〜550℃の多元合金を細線に加工したことを特徴とする電気部品内蔵用ヒュ−ズ素子。
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