JP4429374B2 - 排水管構造 - Google Patents

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Description

本発明は、サイホンの原理を利用して円滑な排水を実現すると共に、屋内への悪臭や虫の侵入を防止し得る排水管構造に関するものである。
一般的な建物に於ける排水管構造は、排水器具毎に、或いは排水経路の途中に水封トラップを配置して構成され、屋内に対する下水からの悪臭や害虫の侵入を防止し得るように構成されている。また水封トラップの機能を維持するため、自然流下である排水管の内部圧力は大気圧に近い方が良い(満水を避ける)とされている。
最近では、サイホンの原理を利用した排水システムが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この技術は、管路を構成する排水立管を排水が満水状態で流下する際に、流通する排水の後方に発生する吸引力によって上流側にある排水を吸引し得るようにしたものであり、円滑な排水と排水管の口径を15mm〜40mm程度とする小口径化を実現することが出来る。
サイホンとは、液体をいったん高所に上げて、低所に移すために使う曲がり管を言うが、以下説明する本発明では、液体が管内を略満水状態で落下する際に、該液体の上流側に吸引作用を生じさせる原理を「サイホンの原理」といい、このサイホンの原理によって発生する力を「吸引力」或いは「サイホン力」というものとする。
上記排水管構造では、排水立管を小口径配管によって構成することで、該排水立管の上流側端部に設けた排水器具から排水が生じたとき、排水された排水が排水立管内を満水状態で流下するのに伴って、該排水の上流に於ける排水立管の内部に吸引力が発生する。この吸引力は、排水器具及び該排水器具の下流側の排水管に存在する排水に作用し、これらを円滑に流すことが出来る。
上記サイホン原理を利用した排水システムでは、小口径の排水管を利用することから、該排水管を壁の内部や床下に収容したとき、排水管が占有する配管スペースを削減することが出来る。このため、壁の内部空間,床下空間を有効に活用することが出来るという利点がある。また排水器具から充分に低い位置にある合流部までの間に若干の逆勾配を許容することが可能となり、硬質塩ビ管等に代表される一般的な配管材料に加えてフレキシブル管を利用することが可能となる。
特に、排水管路をフレキシブル管を利用して構成した場合、排水器具から合流部までの間に継目を設けることなく配管することが可能であり、施工性を大幅に向上させることが出来る。またフレキシブル管を利用することによって、該フレキシブル管をさや管の内部に通して配管することが出来、更新の必要が生じたとき、壁や床,天井を壊すことなく作業することが出来るという利点もある。
上記の如く、サイホン原理を利用した排水システムでは勾配の制約が少ないため、配管経路上の障害物の回避や竣工後の排水器具の移動も可能となるという利点もある。これらの利点は、建築計画や建築コスト、建築後の使い勝手を考慮する上で有利である。
特開平06−042019号公報 特開2000−074260号公報 特開2001−271406号公報 特開2002−121792号公報。
しかしながら、上述の如き排水管構造においては、排水管に逆勾配が形成されている場合、サイホン力を発揮させる前に排水器具から排水された排水を何らかの手段で一度逆勾配の頂部に移動させることが必要となり、上記各特許文献では、ポンプを設けたり、排水器具と逆勾配の頂部との高低差を利用している。前者の場合、電気エネルギーが必要となり、且つモーター,ポンプ等の機器類や配線等が必要になる。
また高低差を利用する場合には、排水管が小口径であることから、該排水管に滞留している空気と排水管に流入すべき排水との置換が簡単には行われないため、排水器具と排水管の最も高い部位との間の残留排水が下流方向へ押し出せない虞がある。例えば図10(a)に示すように、排水管51に於ける最高部位54と排水器具52の間にある排水55が下流方向へ流れるためには、最高部位54の高さH を乗り越える必要がある。しかし同図(b)に示すように、排水器具52で発生した水頭圧がH (H の方がH よりも大きいとする)とすると、排水55は最高部位54に向かってH だけ上昇するものの、途中で平衡してしまい、連続的な排水を実現し得ないことになる。即ち、同図(c)に示すように、排水器具52で排水が生じたとき、排水管51内に存在する空気と速やかに置換する必要が生じる。
本発明の目的は、排水器具から排水が生じたとき、排水管に速やかにサイホン力を発生し得る排水管構造を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る排水管構造は、小口径排水管により形成されて且つ排水器具に接続され排水管を備え、サイホンの原理を利用し当該排水管内を流れる排水を処理する排水管構造であって、前記排水管の上流側の端部と前記排水器具の間には、前記排水器具から流れる排水に当該排水よりも下流に滞留する排水と空気のいずれか一方又は両方を排水管の下流側の端部に向けて押出す水頭圧を付与する水頭圧取得手段が設けられており、前記水頭圧取得手段は、前記排水管を形成する小口径排水管の断面積よりも大きい断面積を有する排水チャンバーであることを特徴とするものである。
上記排水管構造では、小口径排水管の最上流側に水頭圧取得手段を設けることによって、溜まった排水が水頭圧を生じる。このため、水頭圧取得手段に接続された排水管の内部に於ける空気の存在の有無に関わらず、速やかな排水を実現することが出来る。
上記排水管構造に於いて、前記排水チャンバーと排水管の下流側の端部の間となる位置に1又は複数の逆勾配部が存在し、前記排水チャンバーは、前記1又は複数の逆勾配部の高さの総和よりも大きい高さに形成されていることが好ましい。
即ち、排水管に逆勾配が形成されている場合であっても、逆勾配部に水頭圧取得手段による水頭圧を持った排水が速やかに流れ込み、排水管に存在する空気と置換し或いは押し出して、該逆勾配部を乗り越えることが出来る。排水管の逆勾配部を排水が通過し、排水立管に達するとサイホン効果が生じ、上流側の排水官の速やかな排水を実現することが出来る。
上記排水管構造に於いて、前記排水チャンバーは、前記排水管の内径の1.5倍以上の内径又はこれと同等の断面積を有して形成されていることが好ましく、また前記排水チャンバー上流側に大気に開放される通気手段が設けられていることが好ましく、更に、前記小口径排水管は、15mm〜40mmの呼び径を有していることが好ましい。
上記排水管構造では、排水管に逆勾配が存在する場合であっても、円滑で速やかな排水を実現することが出来る。
また、前記サイホン力が作用する排水管の下端以降に水封トラップを設け、該水封トラップの出口が大気に開放されていることが好ましい。
また、前記水封トラップの出口は、当該水封トラップの下端部よりも上方となる位置に設けられていることが好ましい。
本発明に係る排水管構造によれば、小口径排水管の最上流側に水頭圧取得手段を設けることによって、排水管に逆勾配が形成されている場合であっても、この空気を排水と置換して排水が速やかに流れ込んで逆勾配部を乗り越えることが出来る。このため、排水の上流側の排水管に吸引力を作用させて速やかな排水を実現することが出来る。
排水立管の下端以下のレベルに水封トラップを設けた排水管構造を模式的に説明する図である。 排水立管と水封トラップとの関係を説明する図である。 図2を正面から見た図であり排水立管の設置例を説明する図である。 複数の排水管を一つの水封トラップに接続した例を説明する図である。 水頭圧取得手段として排水チャンバーを設けた例を模式的に説明する図である。 キッチンに於ける排水チャンバーの構成を説明する図である。 洗面器具に於ける排水チャンバーの構成例を説明する図である。 排水チャンバーへ通気手段を設けた図である。 排水管の最上流側に排水チャンバーを設けると共に排水立管の下端以下のレベルに水封トラップを設けた例を説明する図である。 排水管に逆勾配部が存在する際の課題を説明する図である。 洗面ボウルから排水する際の課題を説明する図である。
以下、本願発明に係る排水管構造の好ましい実施形態について説明する。本発明は、サイホン力を発揮させるために、排水器具からの排水を行うに際し、小口径の排水管を用いることで該排水管を満水状態で落下させる排水方法に於いて、排水管の上流側に水頭圧取得手段を設けることで、排水管の逆勾配部の上流側に存在する空気を排水と置換、或いは排水によって押し出すことが可能であり、サイホン効果を確実に発生させて逆勾配部よりも上流側の速やかな排水を実現し得るようにしたものである。
排水管の口径は特に限定するものではないが、従来の排水管の口径と比較して充分に小さい値に設定される。即ち、従来の中低層住宅に於ける排水横枝管,排水立主管は呼び径が100mm程度の管を利用するのが一般的であるが、本発明では、呼び径が15mm〜40mm程度の管を好ましく採用することが可能である。特に望ましい管径の範囲としては、15mm〜25mmである。
本発明で利用する排水管は管の材質や構成等を限定するものではなく、塩ビ管や金属管等からなる剛性を持った定尺の直管や、可撓性を持ったフレキシブル管を利用することが可能である。
排水立管は、1個の排水器具に対し1本接続される。即ち、本発明に係る配管構造では、浴槽や洗面ボウル,キッチンシンク、或いは他の排水器具毎に1本の排水管が接続され、各排水管毎に排水立管が設けられる。そして、排水立管を有する排水管は排水立管の末端側で排水桝に接続されて大気に開放される。ここで、水封トラップを排水桝に接続すると共に該水封トラップの下流端を排水桝で開放し得るように構成すると有利である。このように水封トラップを設けることで、該水封トラップの設置場所を排水桝と共用することが可能となる。
排水立管の下端とは、縦方向に配置された排水管の下端部分を意味するものではなく、縦方向に配置された排水管に於ける最も上流側に位置する排水器具に作用させる吸引力を発生させるのに充分な高さを確保し得る位置を意味する。また、上記水封トラップの位置は、縦方向に配置された排水管が前記高さを確保し得る位置よりも下方で、且つ水封トラップを流出した排水による吸引力が作用しても封水を確保し得るレベルであることが好ましい
上記の如く、排水立管に於ける水封トラップの位置を設定することで、如何なる量の排水が流通した場合であっても、封水の量を確保して破封を防止することが可能となる。前述したように、排水立管に於ける水封トラップの好ましい設置位置は、該排水立管の下方側の端部で且つ排水管が排水桝に接続される部位の周辺である。
排水立管は、必ずしも排水管を垂直に直立させて構成したものである必要はなく、上方から下方に導かれるものであれば良い。即ち、排水立管の内部を流下する排水によって、速やかな排水を実現するのに充分なサイホン力を発生させることが可能であれば、排水立管が垂直に設置されていなくとも良く、傾斜していても問題が生じることはない。
このため、屋内に設置した排水器具と屋外に設置した排水桝との位置がズレているような場合であっても、排水管を傾斜させて壁内に配管することで排水立管を構成することが可能である。このように、排水立管を直管で且つ垂直方向に設置しなくとも、充分なサイホン力を発生し得ることから、屋内の排水管及び排水立管にフレキシブル管を用いた場合でも、サイホン式の排水システムを構成することが可能である。
本発明に於ける小口径の排水管の最上流側に設ける水頭圧取得手段は、排水管路に逆勾配が生じている場合、排水管路に於ける逆勾配部の上流側に滞留している空気を排水と置換する機能を発揮し、排水器具から排水された排水に逆勾配部の高さよりも大きい水頭圧を付与して該逆勾配部を乗り越えさせる。特に、排水管としてフレキシブル管を用いた場合、このフレキシブル管が逆勾配部が出来易いため、この問題を容易に克服することが可能となる。
逆勾配部の高さよりも大きい水頭圧とは、排水管路に存在する逆勾配部の高さの総和よりも大きい水頭圧を意味する。即ち、排水管路に複数の逆勾配部が存在する場合、個々の逆勾配部に於ける高さを加えた高さよりも大きい水頭圧をいうものである。
上記機能を発揮し得る水頭圧取得手段としては、排水管路に想定される逆勾配部の高さに対し充分な深さと排水管の径に対し充分な太さとを持った排水チャンバー、或いは排水管路に想定される逆勾配部よりも上流側に設けた通気手段があり、何れも利用することが可能である。
排水チャンバーの場合、排水管路に複数の逆勾配部が存在しても、深さがこれらの逆勾配部の総和よりも大きければ良く、この排水チャンバーを排水器具の排水口に設ければ良い。
水頭圧取得手段として排水チャンバーを用いる場合、該排水チャンバーの断面積を排水管の断面積よりも充分に大きく設定しておくことが好ましい。本件発明者の知見では、排水チャンバーの径を排水管の径の約1.5倍かそれ以上に設定することで、確実で且つ速やかな置換を実現することが可能であった。
また排水チャンバーの深さを排水管路に想定される逆勾配部の高さ(逆勾配の部位が複数存在する場合、これらの総和の高さ)よりも充分に大きい水頭圧を発生し得るように構成しておくことで、排水器具から排水チャンバーに流れ込んだ排水は排水管に於ける逆勾配部を確実に乗り越えてサイホン効果を発揮することが可能である。
なお、ここで、逆勾配部の高さとは、「逆勾配頂部の管(の中心)」と「該逆勾配上流側直近で、水平をなす管(の中心)」との差Aのことであって、排水チャンバーの高さとは、排水チャンバー上端」と「排水チャンバーと小口径排水管の接続部中心」の差Bのことであって、B>Aとすることが好ましい。また、逆勾配部がn箇所存在する場合には、B>nAとすることが好ましい。
次に、上記排水管構造の好ましい実施例について図を用いて説明する。
図1〜図4は本願発明の実施形態の前提となる参考例の一形態であって、排水立管1の下端以降の下流に水封トラップ2が設けられており、該水封トラップ2の開口端部は地中に埋設された排水桝3に開放され、流下した排水を直接排水桝3に排水し得るように構成されている。排水立管1の上流側の端部には浴槽や洗面ボウル或いはキッチンシンク等の排水器具4が接続されている。また排水器具4から排水立管1に至る繋ぎ配管5は、建物の壁内空間や床下空間の内部を縦方向,横方向に配置されている。
排水器具4から水封トラップ2に至る排水立管1,繋ぎ配管5は実質的に1本である。即ち、個々の排水器具4毎に1本の繋ぎ配管5,排水立管1からなる排水管6が構成されている。
排水器具4が2階或いは3階に設置されている場合、排水立管1は外壁7に形成された壁内空間7aに配置されている。排水立管1の下端は、基礎8の上端部分で外壁7を通過して屋外に出た後、排水桝3に導かれる外部配管9に接続されており、該外部配管9の排水桝3内に水封トラップ2が設けられている。尚、図に於ける12は敷地内配管である。
また目的の排水器具4が1階に配置されている場合であって、例えば図6,8に示すように、床下10に於ける排水管に積極的に逆勾配部20を形成した場合、この逆勾配部20が水封トラップ2としての機能を発揮する。即ち、逆勾配部20よりも下流側の配管が略水平状態で床下を通過し、その後、基礎を貫通して排水桝3までの落差が小さい場合、排水チャンバー23,21が排水に駆動力を与える排水立管として機能することになる。
上記の如く、排水器具4が1階に設置されている場合、又は2階以上の階に設置されている場合であっても、水封トラップ2は排水立管1の下流に設けられることとなる。
また排水立管1は、壁内空間7aに於いて必ずしも垂直方向に設置される必要はなく、排水が排水立管1を落下する際に該排水の上流側の排水を吸引するのに充分なサイホン力を発生させることが可能であれば良い。即ち、図3の中央に示す垂直方向に設置された排水立管1、同図右側及び左側に示す比較的強い曲線を持って屈曲した排水立管1の何れであっても良く、夫々上流側に接続された排水器具4に対し充分な吸引力を作用させることが可能である。
繋ぎ配管5は排水器具4と排水立管1の上端との間を繋ぐ配管であり、排水器具4の設置位置と、高さに応じて適宜なされる配管である。この繋ぎ配管5では積極的にサイホン効果を発揮させるような構成とすることなく、各階毎の床下空間10内を自由に設置することが可能である。
排水立管1,繋ぎ配管5を構成する管材は、塩ビ管や鋼管等の直管であって良いが、本実施例では可撓性を有する長尺の合成樹脂管を用いており、該合成樹脂管を、排水器具4から排水桝1に至る予め設定された経路に従って長さを設定して切断して利用している。このため、排水器具4から水封トラップ2に至る経路を1本の排水管6によって形成することが可能であり、途中に曲がり部が存在しても、エルボ等の継手を必要とせず、配管抵抗を低減させると共に汚物が引っかかる虞をなくすことが可能である。
また本実施例では、予め設定された配管経路に沿って設置されると共に所定位置で柱や梁に固定されたさや管11の内部に可撓性を有する合成樹脂管を挿入して排水管6を構成するさや管工法を採用している。
上記構成に於いて、充分なサイホン力を発揮し得る排水管6を構成する合成樹脂管の径は20mm程度で良い。またこの合成樹脂管を収容するさや管の外径は40mm程度である。
上記排水管構造では、排水器具4から流れた排水は排水立管1を落下する際に上流側に吸引力を作用させることが可能であり、この吸引力の作用によって排水器具4にある排水を積極的に吸引して排水することが可能である。そして排水管6を流通した排水が水封トラップ2に到達したとき、該排水は水封トラップ2を満水状態として通過し、排水桝3に開放される。そして排水桝3に接続されている敷地排水管12を通って他の排水桝3と合流する。
次に、本実施形態であって、逆勾配部20を有する排水管6の最上流部に水頭圧取得手段となる排水チャンバー23を設けた例について図5,図6により説明する。
図に於いて、排水チャンバー23は排水管6の最も上流部である排水器具4の排水口に設けられており、深さは逆勾配部20の高さ(複数個所に逆勾配部が存在する場合は各逆勾配部の高さの総和、水封トラップも含む)よりも大きい値となるように設定されている。例えば、排水管6に存在する逆勾配部の高さが120mmである場合、排水チャンバー23の深さは120mm以上であれば良いが、充分な深さとして300mm〜それ以上に設定されている。
また排水チャンバー23の断面積は排水管6を構成する管(可撓性を持った合成樹脂管)の断面積の約1.5倍以上に設定されている。本実施例では排水管6の管径は20mmに設定されており、排水チャンバー23の径は50mmに設定している。しかし、排水チャンバー23は前記径に限定するものではなく、40mm〜75mm程度の範囲で選択的に用いることが可能である。
上記の如く構成された排水管6では、排水器具4から排水された排水は排水チャンバー23に溜まって、溜まった深さに相当する水頭圧が発生する。従って、逆勾配によって排水管6の中に空気と水が交互に存在するような場合でも、排水チャンバー23に溜まった排水の水頭圧が排水管6にある逆勾配部20の高さよりも大きい値となったとき、排水チャンバー23から排水管6に流れ込んで一気に逆勾配部20を乗り越えて下流側に流通する。このため、排水管6の内部が充水され、サイホン力が発生し、以降、排水器具4に滞留する水がなくなるまで排水が継続する。
図7は排水器具4としての洗面ボウルの排水口に排水チャンバー23を設けた例を説明する図である。同図(a)は、排水器具4と排水チャンバー23との接続部位にポケット24aを形成し、該ポケット24aと洗面ボウル4のオーバーフロー口24bを接続したものである。この構成では、排水器具4から排水が生じたとき、ポケット24aとオーバーフロー口24bが排水チャンバー23に存在する空気の排出通路としての機能を発揮する。このため、排水チャンバー23の入口が小さい場合も、該排水チャンバー23の空気を効率良く追い出すことができ、速やかに必要な水頭圧を得ることができる。ちなみに、排水チャンバーがない場合は、サイホン力が強いと図11(a)に示すように排水とオーバーフロー口から入った空気が交互に流れ騒音を発し、また排水時間が長くかかってしまう。
図7(b)は、洗面ボウルとしての排水器具4の排水口に排水チャンバー23を設けると共に該排水チャンバー23に渦の発生を防止する障壁筒25を配置したものである。この場合、排水器具4から排水しても、図11(b)の如く、排水口に渦が発生することがなく、流下する排水にサイホン力を弱める空気を巻き込むことがない。従って、排水がなくなるまで強いサイホン効果を継続して発揮することが可能となる。
図8は排水チャンバー21に通気管26を設けた例を示すものである。通気管26は、端部が排水器具4の上面よりも高い位置に配置された状態で大気に開放している。もし、通気管26がなければ、逆勾配部20に滞留する排水と、該排水と排水器具4に挟まれた空気の存在により、排水器具4に溜められた排水は逆勾配部の高さを凌ぐ水位でない限り、ほとんど下流側へ移動することができない。即ち、排水できない。
しかし、図8の如く構成された排水管構造では、排水器具4と逆勾配部20の間に存在する空気は通気管26を介して大気に移動することが可能なため、排水器具4の排水も、排水チャンバー21へ流れ込むことができ、該排水チャンバー21で水頭圧を生じるため、一気に逆勾配部20を乗り越えて下流側に流れ込み、この過程でサイホン効果を発揮して逆勾配部20よりも上流側に吸引力を作用させることが可能となる。この吸引力は排水器具4に作用し、該排水器具4に排水が滞留している場合、滞留した排水を吸引して速やかに排水することが可能である。
図9は、排水管6の最上流側に排水チャンバー23を設けると共に排水立管1の下端以下のレベルに水封トラップ2を設けることで水封トラップの破封を防止し、排水管に逆勾配が存在する場合であっても速やかな排水を実現することのできる排水管構造を説明する図である。
この図では、排水チャンバー23に対する排水管6の接続部を底部23aから離隔させた側面23bとすることによって、排水器具4から排水される排水に水よりも比重の大きい物質が存在する場合、この物質を排水チャンバー23の底部23aに沈殿させることも可能としている。
1 排水立管
2 水封トラップ
3 排水桝
4 排水器具
5 繋ぎ配管
6 排水管
7 外壁
7a 壁内空間
8 基礎
9 外部配管
10 床下
11 さや管
20 逆勾配部
21 排水チャンバー
23 排水チャンバー
23a 底部
23b 側面
24a ポケット
24b オーバーフロー口
25 障壁筒
26 通気管

Claims (7)

  1. 小口径排水管により形成されて且つ排水器具に接続され排水管を備え、サイホンの原理を利用し当該排水管内を流れる排水を処理する排水管構造であって、
    前記排水管の上流側の端部と前記排水器具の間には、前記排水器具から流れる排水に当該排水よりも下流に滞留する排水と空気のいずれか一方又は両方を排水管の下流側の端部に向けて押出す水頭圧を付与する水頭圧取得手段が設けられており、
    前記水頭圧取得手段は、前記排水管を形成する小口径排水管の断面積よりも大きい断面積を有する排水チャンバーである
    ことを特徴とする排水管構造。
  2. 前記排水チャンバーと排水管の下流側の端部の間となる位置に1又は複数の逆勾配部が存在し、前記排水チャンバーは、前記1又は複数の逆勾配部の高さの総和よりも大きい高さに形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の排水管構造。
  3. 前記排水チャンバーは、前記排水管の内径の1.5倍以上の内径又はこれと同等の断面積を有して形成されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の排水管構造。
  4. 前記排水チャンバー上流側に大気に開放される通気手段が設けられている
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の排水管構造。
  5. 前記小口径排水管は、15mm〜40mmの呼び径を有している
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排水管構造。
  6. 前記排水管の下端以降に水封トラップを設け、該水封トラップの出口が大気に開放されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の排水管構造。
  7. 前記水封トラップの出口は、当該水封トラップの下端部よりも上方となる位置に設けられている
    ことを特徴とする請求項6に記載の排水管構造。
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