JP4428917B2 - 走査光学系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の発光点から発光した複数の光束を、夫々、線像形成レンズによって偏向器の反射面の近傍において副走査方向に収束させるとともに、この偏向器によって主走査方向へ動的に偏向し、結像光学系によって走査対象面上に点状に収束させる走査光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の走査光学系(以下、「マルチビーム走査光学系」という)によると、偏向器の一反射面による走査によって同時に複数本の走査線を走査対象面上に描画することができるので、各光束を夫々変調することによって、高速な印字が可能になる。
【0003】
このような走査光学系の光源としては、複数の発光点を有する単一の素子を用いることも可能である(例えば、特許文献1参照)し、夫々一個の発光点を有する複数の素子を用いることも可能である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
何れの光源を採用する場合であっても、光源を構成する各発光点同士の間隔を狭めるには自ら限度がある。従って、これらの光源の各発光点を、偏向器による走査方向(主走査方向)に直交する副走査方向に一列に配列すると、各発光点から発して線像形成レンズ及び結像光学系を透過して走査対象面上に収束された各光束からなる走査線同士が、互いに分離してしまい、最終的に走査対象面上に形成される画像の品質を劣化させてしまう。
【0005】
そのため、従来、マルチビーム走査光学系によって走査対象面上に形成される走査線同士を重なり合わせるための様々な手段が、開発されている。その第一は、光源における発光点の並び方向を副走査方向に向けたまま、線像形成レンズの瞳位置に配置された開口によって各光束を絞ることによって、走査対象面上における各光束のスポット径を拡げる方法である。また、その第二は、光源における発光点の並び方向を主走査方向から僅かに傾けた方向へ向けることによって、走査対象面上における各光束のスポット形成位置を副走査方向に圧縮する方法である。なお、走査光学系全体の副走査方向における横倍率を拡大する手段は、走査対象面上における各光束のスポット径を拡げるが、各光束の中心同士の間隔をも拡げてしまうので、走査線同士を重なり合わせることはできない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−54914号公報
【0007】
【特許文献2】
特開昭61−15119号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の手段のうち、第1の手段によると、各発光点から発した光エネルギーのうちの大きな部分が開口によって遮断されるので、走査光学系全体としての効率が悪くなるという問題点を生ずる。他方、第2の手段によると、走査光学系として好ましい長径方向(即ち、副走査方向)と半導体レーザーのファーフィールドの長径方向が略直交してしまうため、各光束のスポット形状の長径方向を副走査方向に向けるにはアナモフィックな光束径変換手段やスリット状の開口が必要となる。その結果、アナモフィックな光束径変換手段を用いた場合には走査光学系全体としてのコストアップを招き、スリット状の開口を用いた場合には走査光学系全体としての効率が悪くなるという問題点を生じてしまう。
【0009】
本発明は、従来の手段による上記した問題点を解決し、光エネルギーの損失を伴うことなく、また、高価なアナモフィックな光束径変換手段を用いることなく、走査対象面上に形成される走査線同士を実質的に重なり合わせることができる走査光学系の提供を、課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために案出された本発明による走査光学系は、光源から発した複数の光束を偏向器によって同時に動的に偏向することによって走査対象面上で主走査方向に走査させる走査光学系であって、光束を発する複数の発光点が前記主走査方向に直交する副走査方向に並んで設けられた構造を有する第1光源部と、光束を発する複数の発光点が前記副走査方向に並んで設けられた構造を有する第2の光源部と、前記第1光源部の各発光点から夫々発散光として発した複数の光束を夫々平行光束とする第1コリメートレンズと、前記第2の光源部の各発光点から夫々発散光として発した複数の光束を夫々平行光束とする第2のコリメートレンズと、前記第1コリメートレンズを透過した全光束及び前記第2のコリメートレンズを透過した全光束を共に前記副走査方向に収束させるために、前記各光源部側から順に、副走査方向に負のパワーを有する第1シリンドリカルレンズ及び副走査方向に正のパワーを有する第2シリンドリカルレンズから構成された第1光学系と、この第1光学系によって前記各光束が前記副走査方向において収束されることによって複数の線像が形成される位置近傍において、これら各光束を同時に前記主走査方向へ動的に偏向する前記偏向器と、この偏向器によって同時に偏向された前記各光束を前記主走査方向及び前記副走査方向において前記走査対象面近傍に収束させる第2光学系と、前記第1及び第2の光源部,前記第1及び前記第2のコリメートレンズ,前記偏向器,前記第2光学系が夫々固定されるとともに、前記第1光学系を構成する第1シリンドリカルレンズ及び第2シリンドリカルレンズを、夫々の母線方向における両端において、夫々、前記第1及び第2のコリメートレンズの光軸方向に位置調整可能に保持する保持部が固定されているフレームとを備え、前記第1の光源部と前記第2の光源部とは、前記第1の光源部の各発光点の走査対象面上での結像位置と、前記第2の光源部の各発光点の走査対象面上での結像位置とが、前記副走査方向において互い違いとなるように配置されたことを、特徴とする。
【0011】
このように構成されると、各光源部(第1の光源部,第2の光源部)の各発光点から夫々発散光として発せられた複数の光束は、各光源部に対応するコリメートレンズによって夫々平行光束となり、第1光学系によって、主走査方向においては平行光束のまま、且つ、副走査方向においては偏向器の反射面近傍における各発光点と共役な点に収束することによって、複数の線像を形成する。この時、第1の光源部から発した光束による線像と、第2の光源部から発した光束による線像とは、副走査方向に互い違いに並ぶ。そして、これら複数の線像を形成した各光束は、偏向器の反射面によって反射され、第2光学系によって走査対象面上に収束されて、上記線像同士のピッチに応じたピッチで副走査方向に並ぶスポットを走査対象面上に形成する。このとき、第1の光源部から発した光束によるスポットと、第2の光源部から発した光束によるスポットとは、各光源部単独の場合と比較して1/2のピッチにて、副走査方向に互い違いに並ぶ。そのため、偏向器によって各光束が主走査方向に同時に動的に偏向されると、走査対象面上に夫々形成される全走査線は、副走査方向において、実質的に重なり合う。そのため、走査対象面上には、スポットによって走査されない隙間が生じ難くなるので、最終的に走査対象面上に形成される画像の品質が劣化することがない。
【0012】
なお、本発明において、第1及び第2の光源部は、夫々、半導体レーザーアレイである。
【0013】
また、第1の光源部の前記各発光点から発して前記第1光学系を透過した前記各光束と、前記第2の光源部の前記各発光点から発して前記第1光学系を透過した前記光束とは、主走査方向において、平行に進行しても良いが、互いに異なる角度で前記偏向器に入射し、前記複数の線像が形成される位置近傍において交われば、偏向器によってほぼ同位置にて偏向することができるので、偏向器の反射面を有効に利用した走査が可能となる。
【0014】
また、本発明において、第1光学系は、各光源部側から順に、第1シリンドリカルレンズ及び第2シリンドリカルレンズから構成されていても良い。第一光学系が2枚のシリンドリカルレンズからなる場合には、第1シリンドリカルレンズは副走査方向に負のパワーを有し、第2シリンドリカルレンズは、副走査方向に正のパワーを有するように構成されても良いし、逆であっても良い。また、前者の場合、第2シリンドリカルレンズの副走査方向の倍率mcl2が条件:−1.1<mcl2<−0.8を満たしていることが、望ましい。
【0015】
また、本発明において、走査光学系は第1及び第2の光源部,第1及び第2のコリメートレンズ,偏向器,第2光学系が夫々固定されるフレームを更に備えるとともに、このフレームには、更に、前記第1光学系を構成するシリンドリカルレンズを、その母線方向における両端において、夫々、前記第1及び第2のコリメートレンズの光軸方向に位置調整可能に保持する保持部が固定されていることが望ましい。このように構成されると、簡単な保持機構でありながら、各光源部の発光点に対する第1光学系の倍率を夫々独立に調節できる。第1光学系の倍率を変化させるためには、第1シリンドリカルレンズ,第2シリンドリカルレンズのうちどちらのレンズを移動させても良く、また、両方のレンズを移動させても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる走査光学系の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態である走査光学系1の主走査方向における構成を示す光学構成図であり、図2は、副走査方向における構成を示す光学構成図である。これら図1及び図2に示すように、この走査光学系1は、複数のレーザー光束を夫々発する光源ユニット10、この光源ユニット10から夫々発された各レーザー光束を夫々平行光にするコリメートレンズ13,14、これらのコリメートレンズ13,14を透過した平行光束を副走査方向において収束光とすることによって複数の線像を形成する第1光学系17、その各側面がレーザー光束を反射する反射面として形成された正多角柱形状を有するとともにその中心軸を中心に回転する偏向器であるポリゴンミラー20、回転するポリゴンミラー20の各反射面にて反射されることによって動的に偏向された各レーザー光束を夫々スポットとして収束させる第2光学系30、及び、その外周面が走査対象面Sとして機能する感光ドラムから、構成されている。なお、以下の説明を容易にするために、ポリゴンミラー20の中心軸20aに直行する面と平行な方向(特に、ポリゴンミラー20と走査対象面Sとの間においては、第2光学系30の光軸とポリゴンミラー20の中心軸20aに直交する方向)を「主走査方向」と定義し、中心軸20aと平行な方向を「副走査方向」と定義する。また、第2光学系30の光軸を含みポリゴンミラー20の中心軸20aに直交する面を主走査断面と定義し、第2光学系30の光軸を含み、ポリゴンミラー20の中心軸20aと平行な面を副走査断面と定義する。
【0018】
光源ユニット10は、第1及び第2の光源部としての二つのレーザー光源11,12(図2においてはレーザー光源11のみ図示)から、構成される。各レーザー光源11,12は、何れも、副走査方向に並ぶように形成された複数の発光点から夫々レーザー光束を発散光として射出する半導体レーザーアレイである。夫々のレーザー光源11,12は、主走査方向において隣接するように配置されている。具体的には、一方のレーザー光源11の各発光点から発して第1光学系17を透過した光束と、他方のレーザー光源12の各発光点から発して第1光学系17を透過した光束とが、主走査方向において、互いに異なる角度でポリゴンミラーの反射面に入射するとともにその反射面近傍にて交差するように、各レーザー光源11,12の発光点の向きが調整されている。また、両レーザー光源11,12は、夫々の有する複数の発光点が、副走査方向において互い違いに並ぶように、互いに、発光点のピッチの1/2だけ副走査方向にずれた状態で配置されている。
【0019】
各コリメートレンズ13,14は、対応するレーザー光源11,12の各発光点から夫々発散光として発した複数のレーザー光束を夫々平行光束にするレンズである。なお、各レーザー光源11,12毎に1枚のコリメートレンズ13,14が備えられているが、図2においては一方のコリメートレンズ13のみが図示されている。
【0020】
第1光学系17は、光源側から順に、副走査方向に負のパワーを有する第1シリンドリカルレンズ15,及び副走査方向に正のパワーを有する第2シリンドリカルレンズ16から、構成されている。
【0021】
第1シリンドリカルレンズ15及び第2シリンドリカルレンズ16は、全体として線像形成光学系を構成しており、両コリメートレンズ13,14から夫々平行光として射出されたレーザー光束を副走査方向にのみ収束することによって、その焦点面上に複数の線像を形成する。なお、レーザー光源11の各発光点から発した各レーザー光束によって当該焦点面上に形成された線像群のピッチは、レーザー光源11の各発光点のピッチに対して、これらレーザー光束の光路上におけるコリメートレンズ13,14及び第1光学系17の倍率を乗じた値に、一致する。同様に、レーザー光源12の各発光点から発した各レーザー光束によって当該焦点面上に形成された線像群のピッチは、レーザー光源12の各発光点のピッチに対して、これらレーザー光束の光路上におけるコリメートレンズ13,14及び第1光学系17の倍率を乗じた値に、一致する。なお、当該焦点面は、上述したように各レーザー光束が主走査方向において交差する点を含んでいる。このように構成されているので、レーザー光源11の各発光点から発した各レーザー光束によって形成される線像群とレーザー光源12の各発光点から発した各レーザー光束によって形成される線像群とは、当該焦点面において、(各部が設計値通りに構成されている限り)副走査方向に互い違いに並んで形成される。
【0022】
各シリンドリカルレンズ15,16は、共に、シリンドリカル面を有する中央部と、その主走査方向における両端に突出形成された平板状の被保持部とからなり、当該被保持部の光源側の面(以下「被当付面」という)は、そのシリンドリカルレンズ15,16のシリンドリカル面の母線方向及び副走査方向に平行な平面となっている。また、個々のシリンドリカルレンズ15,16は、図示せぬフレームに設けられた保持具18,19によって、各被保持部がコリメートレンズ13,14の光軸方向へ移動調整され得るように、固定されている。即ち、各保持具18,19は、各シリンドリカルレンズ15,16を保持する機能だけでなく、主走査断面内における各シリンドリカルレンズ15,16の各光束に対する角度(以下、シリンドリカルレンズの「傾き角度」とする)及び光軸(各コリメートレンズ13,14の光軸)上の位置を調節する機能をも、有している。具体的には、各保持具18,19は、両レーザー光源11,12及び両シリンドリカルレンズ15,16の対称軸(図1において一点鎖線にて図示)に直交する方向を向いた当付面を持つ様に図示せぬフレームから突出形成された一対の直方体と、固定対象シリンドリカルレンズ15,16の被保持部をはさんで各直方体とは反対側に設置されたバネとからなる。このバネは、シリンドリカルレンズ15,16の被保持部を直方体の当付面に向けて付勢することによって、そのシリンドリカルレンズ15,16を固定している。
【0023】
この各保持具18,19の直方体の当付面と各シリンドリカルレンズ15,16の被当付面との間には薄板状のスペーサー18a,19aが数枚挟み込まれており、このスペーサー18a,19aの枚数が適宜選択されることによって、各レーザー光束の光路上での各シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び位置が、個別に調整される。
【0024】
ポリゴンミラー20は、第1光学系17の第2シリンドリカルレンズ16から射出された各レーザー光束が何れかの反射面に対して主走査方向において常時斜めに入射するとともに、当該第2シリンドリカルレンズ16によって形成された各線像がその反射面の近傍に形成されるように、配置されている。このポリゴンミラー20は、その中心軸20aを中心として回転するので、ある反射面に入射した各レーザー光束は、ポリゴンミラー20の回転に伴ってその反射面に対する主走査方向の入射角が変化することによって、主走査方向へ動的に偏向される。
【0025】
ポリゴンミラー20によって動的に偏向された各レーザー光束は、主走査方向においては平行光束のまま、副走査方向においては収束点から発散しつつ、走査速度補正機能を有する結像光学系である第2光学系30に入射する。この第2光学系30は、主走査方向においては、入射した各レーザー光束を、走査対象面S上における光軸からy=k・θ(k:走査係数,θ:光軸を基準としたレーザー光束の傾斜角)離れた位置に収束させ、副走査方向においては、入射した各レーザー光束を、光軸に対して反転させて走査対象面S上に収束させる。従って、各レーザー光束によって走査対象面S上には複数のスポットが形成され、これらスポットは、この走査対象面S上を、主走査方向に等速度で走査する。
【0026】
図3は、走査対象面S上でスポットが形成される位置を示す説明図である。図示されるように、レーザー光源11の各発光点から発した複数のレーザー光束は、コリメートレンズ13,14及び第1光学系17によって形成された線像群のピッチに対応したピッチで並ぶスポット列41を形成し、レーザー光源12の各発光点から発した複数のレーザー光束は、第1光学系17によって形成された線像群のピッチに対応したピッチで並ぶスポット列42を形成する。そして、これらスポット列41とスポット列42とは、主走査方向において互いに離れて形成され、スポット列41を構成する各スポットとスポット列42を構成する各スポットとは、副走査方向においては、互い違いに並んでいる。図3において直線40a〜40hは、夫々のスポットの中心が走査対象面S上で描く軌跡を、示している。図3から明らかなように、個々のスポット列41,42におけるスポット同士の間隔は各スポットの直径(長径)よりも狭く、また、個々のスポット列41,42におけるスポット同士のピッチに比較して上記直線40a〜40hのピッチは1/2となるので、走査対象面S上に形成される走査線同士は、実質的に重なり合う。従って、走査対象面S上には、走査線が形成されない隙間が発生しないので、最終的に得られる画像が劣化することはない。
【0027】
なお、副走査方向において、第2光学系30によってポリゴンミラー20の各反射面近傍の線像形成位置と走査対象面Sとがほぼ共役関係となっているために、各レーザー光束がポリゴンミラー20のどの反射面によって反射されても、各反射面の僅かな傾き(いわゆる「面倒れ」)の有無に拘わらず、ポリゴンミラー20の反射面近傍に形成された各線像が走査対象面Sにおける夫々に対応する所定高さ位置に再結像される。その結果、各レーザー光束がポリゴンミラー20のどの反射面によって反射されても、走査対象面S上において、複数の走査線が常に同一ピッチにて描かれる。
【0028】
ところで、レーザー光源11,12は別個の半導体レーザーアレイであり、各コリメートレンズ13,14も個別に設置されるため、各レーザー光源11,12の発光点に対する第1光学系17の倍率が微妙に異なることがある。従って、レーザー光源11から発せられた各レーザー光束によって走査対象面S上に形成されたスポット同士のピッチが、レーザー光源12から発せられた各レーザー光束によって形成されたスポット同士のピッチとは、異なってしまう可能性がある。すると、図3に図示されたスポット中心の軌跡40a〜40h同士の間隔にバラつきが生じてしまい、各走査線41,42相互の重なりにもバラつきが生じ、結果として走査対象面S上に形成される画像の品質を劣化させることになりかねない。そこで、本実施形態では、各シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び光軸(各コリメートレンズ13,14の光軸)上の位置を調節することによって、各レーザー光源11,12に対するコリメートレンズ13,14及び第1光学系17の倍率を夫々独立に調節できるように構成してある。本実施形態での各シリンドリカルレンズ15,16の調節方法を、以下に述べる。
【0029】
まず、組立作業者は、光源ユニット10と、コリメートレンズ13,14と、第1光学系17と、ポリゴンミラー20と、第2光学系30とを図示せぬフレームに組み付けるとともに、走査対象面Sが配置されるべき位置にダミーのスクリーンを設置した状態において、各レーザー光源11,12を交互に励起して、夫々のレーザー光源11,12からのレーザー光束によってスクリーン(走査対象面S)上に形成されたスポット同士の間隔を測定する。その後、組立作業者は、各シリンドリカルレンズ15,16の被当付面と各保持具18,19の当付面との間に適宜スペーサー18a,19aを挟み込む(もしくは抜き取る)ことにより、各シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び光軸(各コリメートレンズ13,14の光軸)上の位置を調節する。このようにして、各シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び各コリメートレンズ13,14の光軸上での位置を適宜調節することによって、個々のコリメートレンズ13,14の光軸上において、各シリンドリカルレンズ15,16同士の間隔及びポリゴンミラー20との間の距離を、相互に独立して、ある程度自由に変更することができる。その結果として、組立作業者は、各シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び位置を調節するだけで、各レーザー光源11,12から発された光束に対するコリメートレンズ13,14及び第1光学系17の副走査方向における倍率を、個別に調節することができる。このようにして各光束に対する倍率を個別に調整すれば、各レーザー光源11,12による走査線毎に、走査対象面S上での走査線同士のピッチを個別に拡大及び縮小することができるので、各走査線の重なりを理想的な状態に調節できる。
【0030】
なお、両シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び光軸(各コリメートレンズ13,14の光軸)上の位置を共に調節すれば、各レーザー光源11,12からのレーザー光束に対するコリメートレンズ13,14及び第1光学系17全体の倍率を変更すると同時に、その焦点位置を適宜修正することが可能となる。即ち、ポリゴンミラー13の反射面上に、各レーザー光源11,12からのレーザー光束による線像を、均一なピッチで且つ理想的なピント状態で形成することができる。
【0031】
しかしながら、両シリンドリカルレンズ15,16の傾き角度及び光軸(各コリメートレンズ13,14の光軸)上の位置を夫々調節する作業は、煩雑さを伴うことがある。そのため、本実施形態において、第1シリンドリカルレンズ15の傾き角度及び位置のみ,もしくは第2シリンドリカルレンズ16の傾き角度及び位置のみを、調節してもよい。また、本実施形態では、両シリンドリカルレンズ15,16のうち、片方のシリンドリカルレンズの傾き角度及び位置のみを調節することに起因した各レーザー光源11,12からの光束に対するコリメートレンズ13,14及び第1光学系17の焦点位置ズレを最小限に抑えるために、第2シリンドリカルレンズ16の副走査方向における設計倍率(以下「設計副走査倍率」という)mcl2が、第1シリンドリカルレンズ15のみによる線像(虚像)形成位置に対して約−1倍(−1.2<mcl2<−0.8)となるようにした。第2シリンドリカルレンズ16単独の設計副走査倍率mcl2を−1倍とすれば、各シリンドリカルレンズ15,16の移動に伴う焦点位置ズレを最小限に抑えつつ、倍率を変化させられる。但し、本発明者が様々にシミュレーションをした結果、第2シリンドリカルレンズ16の設計副走査倍率mcl2が−1.2倍から−0.8倍であれば、各シリンドリカルレンズ15,16の移動に伴うスポット位置の変化量を、許容範囲内に抑えられることが判った。
【0032】
以下、本実施形態における走査光学系の実施例を2例示す。
【0033】
なお、第2光学系30を構成する各レンズのレンズ面は、回転非対称球面である場合もあるが、そのような形状を持つレンズ面には本来の意味での光軸を、定義することができない。そのため、以下、「光軸」との文言は、各レンズ面の面形状を式によって表現する時に設定される原点を通る軸(光学基準軸)との意味で、用いられるものとする。
【0034】
【実施例1】
図1は、実施例1の走査光学系の主走査断面における光学構成図である。
【0035】
実施例1では、走査係数kは200であり、第2光学系30全体としての焦点距離は200.0 mmであり、走査対象面S上での走査幅(レーザー光束が走査される主走査方向幅)は300 mmである。
【0036】
また、コリメートレンズ13,14の焦点距離は8.7mmである。また、個々のレーザー光源11,12は、4個の発光点を有しており、これらの発光点同士のピッチは、14μmとなっている。そして、レーザー光源12の各発光点から射出された4本のレーザー光束と、レーザー光源11の各発光点から射出された4本のレーザー光束とは、主走査方向において相互に4°の角度差をもって、ポリゴンミラー20の入射面に入射する。
【0037】
実施例1における第1光学系17から走査対象面Sに至る光路上の各面の具体的数値構成を、表1に示す。なお、この表1に示された数値構成は、調整前における第1光学系17の上記対称軸上における値,及び第2光学系30の近軸値である。
【0038】
【表1】
Figure 0004428917
【0039】
表1において、「面番号」の数字は、第2光学系30の面番号を示し、1及び2が、第1レンズ31の各レンズ面に相当し、3及び4が、第2レンズ32の各レンズ面に相当する。また、表1において、「Ry」は、主走査方向における曲率半径(単位[mm])である。また、「Rz」は副走査方向における曲率半径(単位[mm])である(回転対称面については省略)。また、表1において、「面間隔」は、光軸(対象軸)上における次の面までの距離(単位[mm])であり、「屈折率」は、次の面までの間の媒質の設計波長780mmに対する屈折率(空気については省略)である。
【0040】
表1に示された第1シリンドリカルレンズ15の前面は、シリンドリカル面(凹面)であり、その後面は、平面である。また、第2シリンドリカルレンズ16の前面は、シリンドリカル面(凸面)であり、その後面は、平面である。
【0041】
第2光学系30を構成する面番号1,2,4のレンズ面は、夫々、回転対称非球面である。従って、その断面形状は、光軸からの半径(h)の点における光軸での接平面からのサグ量Xとして、下記式(1)により表される。
【0042】
X(h)=1/Ry・h2/[1+√[1-(κ+1)2h2/Ry2]]+A4h4+A6h6+A8h8 …(1)
式(1)において、Ryは表1に挙げられた「曲率半径」、κは円錐係数、A4,A6,A8は、夫々、4次,6次,8次の非球面係数である。実施例1において面番号1,2,4の各レンズ面の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を、表2に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004428917
【0044】
第2光学系30の第2レンズ32を構成する面番号3のレンズ面は、アナモフィック非球面(即ち、主走査断面は光軸からの主走査方向の関数,副走査断面は曲率が光軸からの主走査方向の距離の関数として、独立に定義される非球面)である。従って、その主走査断面における形状は、光軸からの高さ(y)の点における光軸での接平面からのサグ量X(y)として、下記式(2)により表され、主走査方向の各高さ(y)での副走査方向における形状は、円弧形状をとる。また、その曲率1/[Rz(y)]は、下記式(3)により表される。
【0045】
X(y)= 1/Ry・y2/[1+√[1-(κ+1)2y2/Ry2]]
+AM1y+AM2y2+AM3y3+AM4y4+ AM5y5+AM6y6+AM7y7+AM8y8… …(2)
1/[Rz(y)]=1/Rz
+ AS1y+AS2y2+AS3y3+AS4y4+ AS5y5+AS6y6+AS7y7+AS8y8… …(3)
これら式(2),(3)において、Ryは表1に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径であり、Rzは表1に挙げられた副走査方向における近軸曲率半径であり、κは円錐係数、AM1,AM2,AM3,AM4,AM5,AM6,AM7,AM8…は夫々主走査方向に関する1次,2次,3次,4次,5次,6次,7次,8次…の非球面係数であり、AS1,AS2,AS3,AS4,AS5,AS6,AS7,AS8…は夫々副走査方向に関する1次,2次,3次,4次,5次,6次,7次,8次…の非球面係数である。実施例1において面番号3のレンズ面の具体的形状を特定するためにこれら各式(2),(3)に適用される各係数を、表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004428917
【0047】
以上のように具体的に構成された実施例1の走査光学系1において、第1シリンドリカルレンズ15のみを主走査方向に傾けた場合に、その傾きの変化によって生じるビーム間隔の変化を、表4に示す。
【0048】
【表4】
Figure 0004428917
【0049】
表4において、「傾き量」は、上記対称軸に直交した方向に対する第1シリンドリカルレンズ15の母線の角度を表す。従って、表4において傾き量が0°である事は、第1シリンドリカルレンズ15の母線が、上記対称軸に対して主走査断面において垂直な状態を示す。また、傾き量が正の値をとる事は、上記対称軸とシリンドリカルレンズ15の厚さ中心の交点を中心に、第1シリンドリカルレンズ15の母線が、図1の紙面上において反時計回りに傾いていることを示す。また、「第1のビーム列のビーム間隔」は、レーザー光源12の各発光点から発した複数のレーザー光束によって走査対象面S上に形成されたスポット列42における中心同士の間隔(単位:mm)、「第2のビーム列のビーム間隔」は、レーザー光源11の各発光点から発した複数のレーザー光束によって走査対象面S上に形成されたスポット列41における中心同士の間隔(単位:mm)を、夫々示す。表4から理解されるように、実施例1によると、一方のシリンドリカルレンズ15のみを傾けるだけでも、個々のスポット列41,42における中心同士のピッチを個別に調整することができる。
【0050】
なお、実施例1の第2光学系30の諸収差図を、図4に示す。図4(a)は、fθ誤差図(縦軸はy=kθによって定まる走査対象面Sでの光軸からの高さy,横軸は走査対象面S上での実際のスポット位置とyとのズレ量)であり、図4(b)は、像面湾曲図(縦軸は走査対象面Sでの光軸からの高さy,横軸は光軸方向における焦点位置ズレであって、Sは副走査方向,Mは主走査方向のものである)である。
【0051】
【実施例2】
図5は、実施例2の走査光学系の主走査断面における光学構成図である。
実施例2では、走査係数kは180であり、第2光学系30全体としての焦点距離は180.0 mmであり、走査対象面S上での走査幅(レーザー光束が走査される主走査方向幅)は216 mmである。
【0052】
また、コリメートレンズ13,14の焦点距離は7.5mmである。また、個々のレーザー光源11,12は、2個の発光点を有しており、これらの発光点同士のピッチは、14μmとなっている。そして、レーザー光源12の各発光点から射出された2本のレーザー光束と、レーザー光源11の各発光点から射出された2本のレーザー光束とは、主走査方向において相互に4°の角度差をもって、ポリゴンミラー20の入射面に入射する。
【0053】
実施例2における第1光学系17から走査対象面Sに至る光路上の各面の具体的数値構成を、表5に示す。
【0054】
【表5】
Figure 0004428917
【0055】
表5における各欄の意味は、上述した表1のものと同じである。表5において、「面番号」1及び2が、第1レンズ31の各レンズ面に、3及び4が、第2レンズ32の各レンズ面に、5及び6が第3レンズ33の各レンズ面に、夫々相当する。
【0056】
表5に示された第1シリンドリカルレンズ15の前面は、シリンドリカル面(凹面)であり、その後面は、平面である。
【0057】
第2シリンドリカルレンズ16の前面は、シリンドリカル面(凸面)であり、その後面も、シリンドリカル面(凸面)である。
【0058】
第2光学系30を構成する面番号1,2のレンズ面は、夫々、回転対称非球面である。実施例2において面番号1及び2の各レンズ面の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を、表6に示す。
【0059】
【表6】
Figure 0004428917
【0060】
第2光学系30の第3レンズ33を構成する面番号5のレンズ面は、アナモフィック非球面である。実施例2において面番号5のレンズ面の具体的形状を特定するためにこれら各式(2),(3)に適用される各係数を、表7に示す。
【0061】
【表7】
Figure 0004428917
【0062】
以上のように具体的に構成された実施例2の走査光学系において、第2シリンドリカルレンズ16のみを主走査方向に傾けた場合に、その傾き角度の変化によって生じるビーム間隔の変化を、表8に示す。
【0063】
【表8】
Figure 0004428917
【0064】
表8における各項目の意味は、上述した表4のものと同じである。
【0065】
なお、実施例2の第2光学系30の諸収差図を、図6に示す。図6(a)は、fθ誤差図であり、図6(b)は、像面湾曲図である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光エネルギーの損失を伴うことなく、また、高価なアナモフィックな光束径変換手段を用いることなく、走査対象面上に形成される走査線同士を実質的に重なり合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である走査光学系の主走査断面における光学構成を示す光学構成図
【図2】本発明の一実施形態である走査光学系の副走査方向における光学構成を示す概略構成図
【図3】走査対象面S上におけるスポット及び走査線形成位置を示す説明図
【図4】実施例1の諸収差図
【図5】実施例2の光学構成を示す主走査断面における光学構成図
【図6】実施例2の諸収差図
【符号の説明】
1 走査光学系
10 光源ユニット
17 第1光学系
20 ポリゴンミラー
30 第2光学系
S 走査対象面

Claims (4)

  1. 光源から発した複数の光束を偏向器によって同時に動的に偏向することによって走査対象面上で主走査方向に走査させる走査光学系であって、
    光束を発する複数の発光点が前記主走査方向に直交する副走査方向に並んで設けられた構造を有する第1光源部と、
    光束を発する複数の発光点が前記副走査方向に並んで設けられた構造を有する第2の光源部と、
    前記第1光源部の各発光点から夫々発散光として発した複数の光束を夫々平行光束とする第1コリメートレンズと、
    前記第2の光源部の各発光点から夫々発散光として発した複数の光束を夫々平行光束とする第2のコリメートレンズと、
    前記第1コリメートレンズを透過した全光束及び前記第2のコリメートレンズを透過した全光束を共に前記副走査方向に収束させるために、前記各光源部側から順に、副走査方向に負のパワーを有する第1シリンドリカルレンズ及び副走査方向に正のパワーを有する第2シリンドリカルレンズから構成された第1光学系と、
    この第1光学系によって前記各光束が前記副走査方向において収束されることによって複数の線像が形成される位置近傍において、これら各光束を同時に前記主走査方向へ動的に偏向する前記偏向器と、
    この偏向器によって同時に偏向された前記各光束を前記主走査方向及び前記副走査方向において前記走査対象面近傍に収束させる第2光学系と
    前記第1及び第2の光源部,前記第1及び前記第2のコリメートレンズ,前記偏向器,前記第2光学系が夫々固定されるとともに、前記第1光学系を構成する第1シリンドリカルレンズ及び第2シリンドリカルレンズを、夫々の母線方向における両端において、夫々、前記第1及び第2のコリメートレンズの光軸方向に位置調整可能に保持する保持部が固定されているフレームとを備え
    前記第1の光源部と前記第2の光源部とは、前記第1の光源部の各発光点の走査対象面上での結像位置と、前記第2の光源部の各発光点の走査対象面上での結像位置とが、前記副走査方向において互い違いとなるように配置された
    ことを特徴とする走査光学系。
  2. 前記第1及び第2の光源部は、夫々半導体レーザーアレイである
    ことを特徴とする請求項1記載の走査光学系。
  3. 前記第1の光源部の前記各発光点から発して前記第1光学系を透過した前記各光束と前記第2の光源部の前記各発光点から発して前記第1光学系を透過した前記光束とは、主走査方向において、互いに異なる角度で前記偏向器に入射し、前記複数の線像が形成される位置の近傍において交わる
    ことを特徴とする請求項2記載の走査光学系。
  4. 前記第2シリンドリカルレンズの副走査方向の倍率mcl2が条件
    −1.1<mcl2<−0.8
    を満足することを特徴とする請求項記載の走査光学系。
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