JP4427766B2 - コンデンサ用ポリエステルフィルム及びフィルムコンデンサ - Google Patents
コンデンサ用ポリエステルフィルム及びフィルムコンデンサ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ用フィルムおよびフィルムコンデンサに関するものであり、さらに詳しくは耐電圧性と絶縁抵抗に優れたコンデンサ用ポリエステルフィルムおよびポリエステルフィルムコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、有機高分子フィルムを誘電体として用いたコンデンサは広く用いられている。特開昭63−182351号公報、特開昭63−194318号公報などに例示されるように、ポリエステルフィルムと金属箔を交互に巻回するか、フィルムに金属を蒸着して電極とし、これを巻回または積層することによりコンデンサを得る技術が知られている。
【0003】
また、特開平6−312453号公報などに例示されるように、これらのコンデンサ用ポリエステルフィルムのほとんどは、無機あるいは有機粒子を添加することなどにより表面を粗面化し、加工性、すなわちコンデンサ製造工程におけるスリット性、巻取り性、あるいは積層性などを確保している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ポリエステルフィルムコンデンサの絶縁抵抗のさらなる改善が望まれるようになってきている。原料ポリマーの改良などによる改善や、特開平03−122133号公報に例示されるような分子の結晶構造や配向による改善は従来から行われているが、その要求に対し改善はまだ十分ではない。
【0005】
本発明の課題は、コンデンサ製造の際に十分な加工性を持ち、かつ絶縁抵抗の良好な、フィルムコンデンサ用途に好適なコンデンサ用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係るコンデンサ用ポリエステルフィルムは、平均粒径da=0.1〜0.7μm、分散σa/da=0.5〜1.1なる凝集粒子Aを0.1〜1.0重量%、平均粒径db=0.5〜1.6μm、分散σb/db=0.2〜0.8なる単分散粒子Bを0.01〜0.5重量%含有し、
前記凝集粒子Aが、一次径が0.01〜0.1μmである凝集シリカを主成分とし、前記単分散粒子Bが炭酸カルシウムを主成分とし、
フィルム中の凝集粒子Aの扁平率Caが1.5〜5.0であり、三次元表面粗さ計による最大高さSRmaxが750〜1400nmであり、フィルム厚みが0.5〜5μmであり、
さらに凝集粒子Aと単分散粒子Bの分散が下記の式を満たすことを特徴とするものからなる。
σa/da≧σb/db
【0007】
従来技術では、表面粗さと絶縁抵抗の関係についてはほとんど知見がなく、表面形状は主にコンデンサ製造の際の加工性のみを主眼に設計されていた。しかしながら発明者の検討によれば、表面形状は耐電圧性および絶縁抵抗を左右する一つの大きな要因であり、表面形状を本発明に示されるように設計することによって、良好な絶縁抵抗、および十分な加工性を両立した、従来にないコンデンサ用途に好適なポリエステルフィルムを得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルフィルムは、添加粒子として、凝集粒子Aと、単分散粒子Bの少なくとも2種類以上の粒子を含有する必要がある。凝集粒子とは、小さな粒子が集合体となって一つの大きな粒子を形成している粒子である。これに反して、単分散粒子とは、単結晶もしくは多結晶、あるいは非晶質の、凝集せずに実質的に単分散された均一な粒子である。
【0009】
凝集粒子Aは、平均粒径da=0.1〜0.7μmである必要がある。daが0.1μm未満であるとフィルムの滑りが低下し加工性が悪化し、0.7μmを超えると絶縁抵抗が悪化する。凝集粒子Aの平均粒径daはより好ましくは0.2〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。
【0010】
凝集粒子Aの分散σa/daは、絶縁抵抗および加工性の観点から0.5〜1.1である必要がある。1.1を超えると実質的に非常に大きな粒子が存在する可能性があり、絶縁抵抗に影響を及ぼす。0.5未満では、蒸着時及びコンデンサ作成時に巻きずれが生じ、加工性が悪化する。より好ましくはσa/da=0.6〜1.0の範囲であり、より好ましくは0.7〜0.9である。
【0011】
凝集粒子Aはフィルム中に0.1〜1.0重量%添加されている必要がある。0.1重量%未満であると加工性および絶縁抵抗が悪化する。1.0重量%を超えると絶縁抵抗が悪化する。凝集粒子Aの添加量は、より好ましくは0.2〜0.8重量%であり、さらに好ましくは0.4〜0.7重量%である。
【0012】
単分散粒子Bは、平均粒径db=0.5〜1.6μmである必要がある。dbが0.5μm未満であるとフィルムの滑りが低下し加工性が悪化し、1.6μmを超えると絶縁抵抗が悪化する。単分散粒子Bの平均粒径dbはより好ましくは0.7〜1.5μmであり、さらに好ましくは0.8〜1.3μmである。
【0013】
粒子Bの分散σb/dbは、絶縁抵抗及び加工性の観点から0.2〜0.8である必要がある。0.8を超えると実質的に非常に大きな粒子が存在する可能性があり、この粒子が絶縁抵抗に影響を及ぼす。0.2未満では、加工性が悪化する。より好ましくはσb=0.3〜0.7の範囲であり、より好ましくは0.4〜0.6μmである。
【0014】
粒子Bはフィルム中に0.01〜0.5重量%添加されている必要がある。0.01重量%未満であると加工性および絶縁抵抗が悪化する。0.5重量%を超えると絶縁抵抗が悪化する。凝集粒子Bの添加量は、より好ましくは0.03〜0.4重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%である。
【0015】
本発明におけるポリエステルフィルムは、上記の特徴を持つ粒子を2種類組み合わせられて存在することにより初めて加工性、絶縁抵抗の良好なフィルムが得られるものであり、どちらか1種類の粒子では十分な加工性を得られない。さらにそれ以外の粒子を添加することもできるが、粒子A,Bを含めた粒子の存在量の合計が10重量%を超えないようにすることが耐電圧性の観点から好ましい。
【0016】
また、粒子A、Bの分散は下記の式を満たすことが加工性の面から必要である。
σa/da≧σb/db
【0017】
上述したような粒子として、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、タルク、アルミナ、及ぶそれらの凝集体などが挙げられる。さらに架橋高分子粒子などを用いることが可能であるが、本発明では、絶縁抵抗の観点から、凝集粒子Aは、一次径が0.01〜0.1μmである凝集シリカを主成分とし、単分散粒子Bは炭酸カルシウムを主成分としている。凝集粒子Aの一次径は0.015〜0.08μmが耐電圧性の観点からより好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.07μmである。
【0018】
重合段階でこれらの粒子を添加する場合、所望の分散を得るためにジェットアジタによる分散やメディア分散を行うことが効果的である。フィルム上にプライマー層を設ける場合には、プライマー層に公知の粒子を添加し目的の表面を形成することもできる。
【0019】
本発明におけるポリエステルフィルムの表面は、絶縁抵抗およびコンデンサ製造の際の加工性の観点から、表面粗さが三次元粗さ計による最大高さSRmaxにして、750〜1400nmであることが必要である。より好ましくは800〜1200nmであり、さらに好ましくは850〜1100nmである。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムの絶縁抵抗の改良効果が発揮されるには、フィルム厚みが0.5〜5μmであることが必要である。より好ましくは0.7〜3.5μmであり、さらに好ましくは1.0〜2.5μmであるのが良い。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、溶融比抵抗が1.0×109Ω・cm以上であることが絶縁抵抗の観点から好ましい。より好ましくは1.5×109Ω・cm以上である。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムには、電気伝導性のイオンなどが少ないことが絶縁抵抗の観点から好ましい。ポリマーを重合する際の触媒などとして、方法によってはやむなく金属化合物を添加する必要があるが、金属イオンはリンで失活されるので、フィルム中のCa、Mg、Li、Mnなどの金属元素の合計量Mからリン量Pを差し引いたM−Pなる量をこの指標とすることができる。この金属イオン残存量M−Pは、0〜200ppmであることが、絶縁抵抗の観点から好ましい。より好ましくは0〜170ppmであり、さらに好ましくは0〜150ppmである。
【0023】
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合によって高分子化されている結晶性の熱可塑性樹脂化合物である。このようなポリエステルはジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合することにより得られる。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などが例示でき、グリコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが例示できる。これらのうちジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボキシレートが好ましく、グリコール成分としてはエチレングリコールが好ましい。該ポリエステルの融点は250℃以上であることが耐熱性の点から好ましく、また280℃以下であることが生産性の面から好ましい。二軸延伸性の面から溶融状態では光学的に等方であることが好ましい。このような好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどを挙げることができる。これらのポリマに30モル%未満、好ましくは15モル%未満の上述したような他の成分が共重合、ブレンドされていることは差し支えない。
【0024】
本発明のポリエステルはその極限粘度が0.50dl/g以上、好ましくは0.60dl/g以上、より好ましくは0.65dl/g以上、さらに好ましくは0.7dl/g以上が耐電圧性、機械特性の観点から好ましい。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムには、層間接着性を向上させる目的、もしくは耐湿性を向上する目的、加工性を向上させる目的などのために、各種のプライマー層を設けることができる。実用的には、塗工の際の安全性、加工性の観点から水溶性もしくは水分散性のものを用いるのが好ましいが、用途によってはそれ以外のプライマーを用いることもできる。プライマーの成分としては、アクリル、ウレタン系樹脂、ワックスなど、各種の公知のプライマー剤を、目的に応じ単体もしくは混合、あるいは共重合して用いることができる。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルムを蒸着などの方法により金属化して用いる際、コーティングなどの方法により、絶縁を目的とした非電導層などのコート層を金属化層の上に設けることがより好ましい。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムは、2種以上のポリエステルを、2層以上に積層あるいは貼合わせを行って得ることもできるが、絶縁抵抗、および誘電正接(tanδ)の観点から、単層、単膜であることがより好ましい。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、100℃における長手方向の熱伸びLが−0.1〜1.0%であることが、絶縁抵抗および加工性の観点から望ましい。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムは、加熱収縮率が長手方向について1.5〜3.0%、幅方向について0.0〜2.0%であることが、耐電圧性の観点から好ましい。より好ましくは、長手方向について1.7〜2.8%、幅方向について1.0〜1.8%であることが好ましい。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、示差走査カロリメータによる熱処理ピーク温度Tmetaが190℃〜240℃であることが好ましい。190℃未満では、コンデンサの誘電正接の観点から好ましくない。240℃を越えるものではフィルムの機械的特性やコンデンサの耐電圧や誘電正接が悪化し、好ましくない。より好ましくは200〜235℃であり、210〜230℃であることがより好ましい。
【0031】
本発明に係る金属化フィルムは、上記のようなポリエステルフィルムを用いてなるものである。たとえばポリエステルフィルムの少なくとも片面を金属化したもの、少なくとも片面を金属化し、少なくとも片面の金属化層の上に絶縁体層もしくは誘電体層を設けたものである。このような金属化フィルムを用いてフィルムコンデンサが作製される。
【0032】
次に本発明のポリエステルフィルム、金属化フィルム、フィルムコンデンサの製造方法について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、前述のポリエステルをその融点を超える温度で常法の押出機にて溶融押出し、ガラス転移点以下に冷却、キャストし、ガラス転移点以上に加熱した後、長手方向に2.8〜7.5倍延伸する。続いてステンターにてガラス転移点以上に加熱し、幅方向に3〜6倍に延伸し、引き続き熱処理する。熱処理温度はフィルムの温度にして200℃〜[融点−5℃]であるのが好ましい。200℃未満では高温ライフ性や誘電正接が悪くなり、[融点−5℃]を越えるとポリエステルフィルムの耐電圧性や機械的特性が低下し、好ましくない。
【0033】
プライマー層を設ける場合は、この熱処理後のフィルムにコーティングを施す方法が例示できるが、例えば長手方向に延伸した後にコーティング剤の塗布を行い、ステンターで幅方向に延伸する前に乾燥するインラインコーティングの手法を用いることもできる。
【0034】
次に金属化ポリエステルフィルムとする場合には、少なくとも片面にアルミニウムを蒸着してコンデンサの内部電極となるアルミニウム蒸着膜を設けるが、この時アルミニウムと同時あるいは逐次にたとえばニッケル、銅、金、銀、クロム、亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。アルミニウムの蒸着膜の厚さはコンデンサの電気特性とセルフヒール性の点から20〜100nm(または表面電気抵抗で1〜5Ω/□)であることが望ましい。
【0035】
必要により、蒸着後に特定の温度でエージング処理を行ったり、再度オフラインで熱処理を行ったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、この金属化フィルムの少なくとも片面にコーティングを施すこともできる。
【0036】
こうして得られたフィルムは公知の方法で積層もしくは巻回してフィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサを例示するならば、金属化するフィルムの両面にアルミニウムを真空蒸着する。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する(表面と裏面のパターンは交互になるようにずらして蒸着する)。次に表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有し、裏面が反対側にマージンを有するような、テープ状の巻取リールにする。得られたリールと、金属化しない合わせフィルム各1本ずつを、幅方向に金属化フィルムが合わせフィルムよりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。この巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型コンデンサ素子を得る。
【0037】
〔物性の測定方法ならびに効果の評価方法〕
(1)粒子の平均粒径、分散
粒子を含有したポリエステルチップを、o-クロロフェノール溶解法で除去し、これをエタノールに分散させ、堀場製作所製CAPA500を使用し延伸沈降法で体積平均径および分散σを測定した。
【0038】
(2)粒子の扁平率
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察する。MD方向が切断面内になるように切片を作成し、厚さは約100nmとした。100個の粒子について長手方向の直径(D(MD))と、厚さ方向の直径(D(ZD))を測定し、D(ZD)の大きいものから順に20個のみについて下記の式による扁平率を計算し、20個の平均値を粒子の扁平率とした。
扁平率C=D(MD)/D(ZD)
【0039】
(3)粒子の一次径
フィルムをプラズマ低温灰化処理にで表面のポリマを除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の画像からその粒子を構成している一次粒子の直径を測定する。100個の平均をとって粒子の一次径とした。
【0040】
(4)ポリエステルの極限粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
【0041】
(5)溶融比抵抗
押出機の出口短管部に25cm2の電極を2枚対立して設置し(この際、電極間の空の絶縁抵抗を1012Ω・cm以上にする。)、試料を280℃で押し出しする。ついで電極間に直流5kVを印加し、その際に流れる電流I(mA)を測定する。280℃における溶融比抵抗ρは、下記の式から求められる。
ρ(Ω・cm)=1.25×108/I
【0042】
(6)金属イオン残存量M−P
フィルム中のCa、Mg、Li、Mnなどの金属元素の定量を原子吸光法により行い、リン元素量は比色法により測定した。
【0043】
(7)フィルムの表面粗さ(中心面平均粗さSRa,最大高さSRmax,中心面山高さSRp)
(株)小坂研究所製の三次元表面粗さ計ETB−30HKを用い、触針式で以下の条件で測定した。
触針先端径 :2μm
触針加重 :6mg
測定長 :1mm
送りピッチ :50μm
測定本数 :40本
カットオフ値:0.25mm
上記の条件で、粗さ曲面f(x,y)が得られたとき、SRaは下記の式で与えられる。
SRa=1/S∫0 1x ∫0 1y |f(x,y)|dxdy
但し、lx;測定長=1mm、1y=(送りピッチ)×(測定本数)=2mm、S=lx×lyである。
上記測定範囲の最大の山と最深の谷を平均面と平行な2面で挟み、その間隔を最大高さSRmaxとする。測定範囲における最大の山の頂上と、中心面との間の距離を中心面山高さSRpとする。
【0044】
(8)熱処理ピーク温度
パーキンエルマー社の示差走査カロリメータDSC−7を用いた。ポリエステルフィルムを10mg採って試料とし、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し測定を行った。熱処理を行ったフィルムは、融点のピークよりも低い温度に融点とは異なる小さい吸熱ピークが認められる。このピークのピーク温度を読みとり、熱処理ピーク温度Tmetaとする。Tmetaが融点に近く、融点ピークの肩にある場合は、融点ピークと熱処理ピークをチャート上で分離し、熱処理ピークのピーク温度を読みとった。
【0045】
(9)加熱収縮率
JIS−C2318に準じて測定した。
【0046】
(10)熱伸び
パーキンエルマー社の熱機械分析装置TMAー7を用いた。フィルム長手方向について、測定幅を5mm、測定長を15mmとして測定した。100mNの一定荷重をかけながら10℃/分の速度で25℃から100℃まで昇温し、サンプルの寸法変化を測定した。30℃および80℃のサンプル寸法をそれぞれL(30℃)、L(80℃)とすると、熱伸びは下記の式で与えられる。3回の測定を行い平均値を計算した。
熱伸び(%)=〔(L(80℃)−L(30℃))/L(30℃)〕×100
【0047】
(11)コンデンサの製造
ポリエステルフィルムの片面に表面抵抗が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅8.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)。次に各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に0.5mmのマージンを有する全幅4.5mmのテープ状に巻取リールにした。得られたリールの左マージン及び右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部より0.5mmはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、静電容量約0.5μFの巻回体を得た。素子巻回には皆藤製作所製KAW−4NHBを用いた。この巻回体から芯材を抜いて、そのまま150℃、10kg/cm2の温度、圧力で5分間プレスした。この両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型コンデンサ素子を得た。
【0048】
(12)コンデンサ製造の際の加工性
上記のコンデンサの製造の際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、しわやずれが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした(以下素子巻収率と称する)。素子巻収率は高いほど好ましい。95%以上を良好、95%未満を不良とした。
【0049】
(13)絶縁抵抗
25℃雰囲気下で、上記の方法で得たコンデンサ素子を100Vにて1分荷電後の抵抗値を超絶縁計(HP製)を用い測定した。10000MΩ以上を良好、10000MΩ未満を不良とした。
【0050】
(14)絶縁破壊電圧
上記の方法で得たコンデンサ素子を試料とし、春日電機(株)製高電圧直流電源を用いて、100V/sの速度で昇圧しながら電圧を印加し、10mA以上流れた時絶縁破壊したものとした。絶縁破壊電圧は50個の測定結果の平均値として求めた。
【0051】
【実施例】
以下本発明を実施例に基づき説明する。
実施例1
熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いた。重合段階に粒子Aとして、平均粒径0.4μm、分散σa/da=0.8の凝集シリカ粒子(一次径が0.03μm)を0.5重量%、粒子Bとして平均粒径1.1μm、分散σb/db=0.6の炭酸カルシウム粒子を0.15重量%、それぞれ添加しチップを製造した。炭酸カルシウム粒子は、直径50μmのガラスビーズを用いてメディア分散した後に添加した。このチップの極限粘度は0.60dl/g、溶融比抵抗は1.3×109Ω・cmであった。
【0052】
このチップを180℃で真空乾燥し、押出機に供給し、290℃で溶融させた後Tダイよりシートを吐出させ、冷却ドラムにてキャストした。このフィルムを90℃に加熱し、長手方向に3.5倍延伸し、100℃に加熱して幅方向に3.6倍に延伸し、引き続き210℃で4%弛緩処理をし、1.5μmの二軸延伸フィルムを得た。フィルム中の粒子Aの扁平率Caは1.8となった。熱伸びは4.0%であった。熱収縮率は長手方向2.6%、幅方向1.5%であった。これを片面金属化フィルムとした後、巻回してコンデンサを得た。その結果、素子巻き収率が99%、絶縁抵抗は13000MΩと共に良好であった。
【0053】
実施例2
粒子Aの分散σa/daを0.6とし、粒子Bの平均粒径を0.6μm、分散σb/dbを0.7とし、縦延伸温度を100℃とする以外は、実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗が11000MΩ、巻き取り収率が96%と共に良好であった。
【0054】
比較例1
粒子Aの平均粒径を0.9μm、分散σa/daを0.7とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は6000MΩと不良であった。
【0055】
比較例2
粒子Aの分散σa/daを1.4とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は7000MΩと不良であった。
【0056】
比較例3
粒子Aの分散σa/daを0.3とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は13000MΩと良好であったが巻き取り収率が78%と低下した。
【0057】
比較例4
粒子Aの添加量を1.5%とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は7000MΩと不良であった。
【0058】
比較例5
粒子Bの平均粒径を1.9μmとする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は5000MΩと不良であった。
【0059】
比較例6
縦延伸倍率を2.5倍とし、横延伸倍率を2.6倍とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。フィルム中の粒子Aの扁平率Caが1.3となり、絶縁抵抗は5000MΩと不良であった。
【0060】
比較例7
縦延伸温度を100℃、倍率を5.5倍とし、横延伸倍率を5.0倍とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。フィルム中の粒子Aの扁平率Caが5.5となり、絶縁抵抗は11000MΩと良好であったが、巻き取り収率が87%と不良であった。
【0061】
比較例8
粒子Bの添加量を0.8%とする以外は実施例1と同様のフィルムを製造し、コンデンサを得た。絶縁抵抗は8000MΩと不良であった。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のコンデンサ用フィルムに比べ、コンデンサ製造の際に十分な加工性を持ち、かつ絶縁抵抗の良好な、フィルムコンデンサ用途に好適なコンデンサ用ポリエステルフィルムを得ることができる。
Claims (7)
- 平均粒径da=0.1〜0.7μm、分散σa/da=0.5〜1.1なる凝集粒子Aを0.1〜1.0重量%、平均粒径db=0.5〜1.6μm、分散σb/db=0.2〜0.8なる単分散粒子Bを0.01〜0.5重量%含有し、
前記凝集粒子Aが、一次径が0.01〜0.1μmである凝集シリカを主成分とし、前記単分散粒子Bが炭酸カルシウムを主成分とし、
フィルム中の凝集粒子Aの扁平率Caが1.5〜5.0であり、三次元表面粗さ計による最大高さSRmaxが750〜1400nmであり、フィルム厚みが0.5〜5μmであり、
さらに凝集粒子Aと単分散粒子Bの分散が下記の式を満たすことを特徴とするコンデンサ用ポリエステルフィルム。
σa/da≧σb/db - 100℃における長手方向の熱伸びLが−0.1〜1.0%であり、150℃の加熱収縮率が長手方向1.5〜3.0%、幅方向0.0〜2.0%であることを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルの溶融比抵抗が1.0×109Ω・cm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いてなる金属化フィルム。
- 請求項4に記載の金属化フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも片面を金属化し、少なくとも片面の金属化層の上に絶縁体層もしくは誘電体層を設けたことを特徴とする金属化フィルム。
- 請求項6に記載の金属化フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12385999A JP4427766B2 (ja) | 1999-04-30 | 1999-04-30 | コンデンサ用ポリエステルフィルム及びフィルムコンデンサ |
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