JP4426754B2 - 体液吸収性物品のインジケータ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、使い捨ておむつ等の体液吸収性物品に使用されて前記物品の体液吸収性コアが湿潤状態にあることの視認を可能ならしめるインジケータに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、着用した使い捨ておむつにおいて、尿が排泄されたことを裏面シートの外側から確認できるようにするためのインジケータは、種々知られている。例えば、特開平９‐２９９４０１号公報（特許文献１）に開示された公知のインジケータは、裏面シートと体液吸収性コアとの間に位置させるものであって、濡れると顕在化するインク層と、このインク層と裏面シートとの間に位置してインク層に密着するインク被覆層とからなり、インク被覆層が界面活性剤を含んでいる。前記公報では、インク被覆層として紙や第２のインク層が例示されている。
【０００３】
【特許文献１】
特開平９−２９９４０１号公報（図４）
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
前記公知のインジケータでは、インク被覆層として吸水性の紙を使用し、この紙に印刷によってインク層を形成する場合、印刷を行うための工程やおむつの生産工程において、紙にはしかるべき寸法安定性と強度とが求められる。そのために、その紙はおむつの表面シートや裏面シートに使用される不織布やプラスチックフィルムと比べて坪量が大きく、曲げ剛性の高いものになる傾向がある。そのような紙が裏面シートとコアとの間に位置していると、裏面シートはその紙と接する部分においてこわばったものになり、柔軟な肌触りを失うことがある。また、このように使用される紙には、吸収した尿がその紙の中を拡散しやすいという性質がある。しかるに、母親がインジケータによって得ようとする情報は、尿の排泄があったか否かだけではない。尿が何回ぐらい排泄されて、コアがどの程度の範囲まで濡れて湿潤状態にあるのかということも母親が得ようとする情報の一つである。これらの情報に基づいて母親は着用させたおむつを新しいものに取り替えるべきか否かを判断する。ところが、紙を使用した前記インジケータでは、尿が拡散し易いから、コアが濡れている範囲とインジケータが濡れている範囲とは一致しないことが多く、インジケータを利用してコアが濡れている範囲を特定することは難しい。それゆえ、前記公知のインジケータには、母親が得たいと思う情報を十分に与えられないという場合がある。
【０００５】
この発明では、吸水性の紙を使用した場合の前記公知のインジケータにみられるような問題の解消、即ちインジケータがそれを使用した物品の柔軟な肌触りを損なうことがないように改良することや、インジケータが母親に対してより多くの情報を提供することができるように改良することを課題にしている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、透液性のシートと不透液性シートとの間に体液吸収性のコアが介在してなる体液吸収性物品の前記不透液性シートとコアとの間に設けられて前記不透液性シートの外側から前記コアが湿潤状態にあることの視認を可能ならしめる吸水性シートと、前記吸水性シートによって一時的に隠蔽されている表示要素とからなるインジケータである。
【０００７】
かかるインジケータにおいて、この発明が特徴とするところは、前記吸水性シートは、前記コアに対向する内面と前記不透液性シートに対向する外面とを有する多孔質の熱可塑性プラスチックフィルムであり、前記フィルムの全光線透過率が乾燥状態において４０％以下であって吸水状態において６０％以上であり、前記表示要素が前記内面に密着した状態で形成され、前記熱可塑性プラスチックフィルムが、粒径０．１〜１０μの無機粒子を２０〜８０重量％含むとともに、０．５〜５重量％の親水化剤を含み、１〜１０ｍｍのクレム吸水度を有するものであり、前記表示要素が、光散乱性の無機粒子を含むこと、にある。
【０００８】
この発明には、次のような好ましい実施態様がある。
（１）前記吸水性シートは、前記表示要素の両外側縁よりも外側で前記不透液性シートに間欠的に接合される。
（２）前記親水化剤の少なくとも一部が前記無機粒子表面を被覆している。
（３）前記熱可塑性プラスチックフィルムは、前記無機粒子を含有する熱可塑性プラスチックをフィルム状に押出し成形した後に１軸および２軸のいずれかに１００〜３００％延伸することにより得られたものである。
（４）前記表示要素が前記吸水性シートの内面に間欠的に形成された印刷インク層および塗料層のいずれかである。
（５）前記表示要素が前記コアである。
（６）前記熱可塑性プラスチックフィルムは、吸水率が５〜１００重量％のものである。
【０００９】
この発明において、全光線透過率はＪＩＳ Ｋ ７１０５に規定の方法によって測定される。クレム吸水度は、ＪＩＳ Ｐ ８１４１に規定の方法によって測定される。また、熱可塑性プラスチックフィルムの乾燥状態、吸水状態および吸水率（重量％）が意味するところは、次のとおりである。吸水率は、式｛（Ｗ_０−Ｗ_１）／Ｗ_０｝×１００によって求められる値である。この式においてＷ_０は２３℃、Ｒ．Ｈ．２５％の条件下に４８時間放置して得られる乾燥状態の熱可塑性プラスチックフィルムの重量であり、Ｗ_１はこのフィルムを２３℃の蒸留水に１分間浸漬後、２枚の濾紙で挟んで０．１４ｇ／ｃｍ^２の面圧を加えながら２秒間水切りして得られる吸水状態の熱可塑性プラスチックフィルムの重量である。吸水率の測定に使用する熱可塑性プラスチックフィルムの大きさは、５×５ｃｍである。
【００１０】
【発明の実施の形態】
体液吸収性物品として使い捨てのパンツ型おむつを例にとり、添付の図面を参照してこの発明に係るインジケータの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【００１１】
図１に部分破断斜視図で示された使い捨てのパンツ型おむつ１は、透液性表面シート２と、不透液性裏面シート３と、これら両シート２，３間に介在する吸収性コア４とを有し、表裏面シート２，３がコア４の周縁から延出して重なり合い互いに接合している。おむつ１は、前胴周り域６と、後胴周り域７と、これら両胴周り域６，７間に位置する股下域８とを有し、前後胴周り域６，７の側縁部どうしが表面シート２を内側にして重なり合い、図の上下方向に間欠的に形成されている部位１０において接合している。おむつ１はまた、胴周り開口部１２と、一対の脚周り開口部１３とを有し、各開口部１２，１３の周縁部では、胴周り弾性部材１５と脚周り弾性部材１６とが伸長状態で表裏面シート２，３いずれかの内面に接合している。前胴周り域６では、尿が排泄されていることを母親に知らせるためのインジケータ１８が裏面シート３とコア４との間に設けられている。
【００１２】
表面シート２には、不織布や開孔プラスチックフィルムが使用される。そのプラスチックフィルムにおける開孔は、０．５〜３ｍｍの孔径を有することが好ましい。裏面シート３には、プラスチックフィルムまたはプラスチックフィルムの外面に不織布をラミネートしたものが使用される。裏面シート３は、プラスチックフィルムが乾燥状態にあるとき、またはコア４に接しているプラスチックフィルムの内面が尿で濡れているときに２０〜８０％の全光線透過率を有し、インジケータ１８が表示する内容、例えば図１に実線で示されている星の形を裏面シート３の外側から視認可能なものである。コア４は、粉砕パルプや粉砕パルプと高吸水性ポリマー粒子との混合物等からなる吸収材４Ａをティシューペーパ４Ｂで被覆することにより形成されている。図１のインジケータ１８は、マスキングシート２１を有し、そのシート２１に設けられた５個の星の形の表示要素１９のうちで、実線で示された２個の星はそれが顕在化して裏面シート３の外側から視認可能な状態にあることを示し、仮想線で示された３個の星はそれがまだ顕在化しておらず裏面シート３の外側からは視認できないことを示している。
【００１３】
図２は、図１のＩＩ−ＩＩ線切断面を示す図である。図のインジケータ１８は、マスキングシート２１とこれに密着する表示要素１９とからなる。マスキングシート２１は、図１において上下に長く延び、裏面シート３に対向する外面３２とコア４に対向する内面３１とを有する。表示要素１９は、マスキングシート２１の内面３１で縦に並ぶ５個の星（図１参照）を形成しているインクの層または塗料の層である。マスキングシート２１は、間欠的に塗布されたホットメルト接着剤２３によって裏面シート３に接合しており、実質的な意味において裏面シート３に密着している。マスキングシート２１はまた、表示要素１９とともにコア４に密着した状態にあり、好ましくはホットメルト接着剤４１によってティシューペーパ４Ｂに接合している。裏面シート３とティシューペーパ４Ｂとは、ホットメルト接着剤３３を介して互いに接合している。
【００１４】
マスキングシート２１を形成しているものは、微細孔を多数有する吸水性の熱可塑性プラスチックフィルムであって、この熱可塑性プラスチックフィルムの全光線透過率は、乾燥状態において４０％以下であり、吸水状態において６０％以上である。乾燥状態の熱可塑性プラスチックフィルムとは、熱可塑性プラスチックフィルムを２３℃，Ｒ．Ｈ．７５％の条件下に４８時間放置したものをいい、吸水状態の熱可塑性プラスチックフィルムとは、乾燥状態の熱可塑性プラスチックフィルムを蒸留水に１分間浸漬後、２枚の濾紙で挟んで０．１４ｇ／ｃｍ^２の面圧を加えながら２秒間水切りしたものをいう。好ましい吸水性の熱可塑性プラスチックフィルムが吸水状態にあるときの吸水率は、乾燥状態の重量を基準にすると５〜１００重量％の範囲にある。好ましい吸水性の熱可塑性プラスチックフィルムはまた、クレム法に基づく吸水度が１〜１０ｍｍの範囲にあって、水を吸収してもその水を殆ど拡散させることがない。かような熱可塑性プラスチックフィルムには、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系プラスチックであって、粒径０．１〜１０μの硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子を２０〜８０重量％、ポリエチレングリコール等の親水化剤を０．５〜５重量％含むものをフィルム状に押出し成形した後、１軸または２軸に１００〜３００％延伸してなる坪量１５〜８０ｇ／ｍ^２のフィルムがある。親水化剤は、プラスチックに練り込まれていてもよいし、一部のものが無機粒子にコーティングされていてもよい。このような熱可塑性プラスチックフィルムでは、多数の無機粒子の存在によって内外面３１，３２の少なくとも一方の表面が光散乱性を有する粗面となり、内面３１と外面３２との間ではそれら無機粒子の周囲に透湿性の微細孔が形成されている。その微細孔で最大のものの孔径は１０μ程度である。多数の微細孔を有する熱可塑性プラスチックフィルムのＪＩＳ Ｚ ０２０８に規定の方法に基づく透湿度は微細孔の個数の多寡を示す指標となるもので、好ましい熱可塑性プラスチックフィルムの透湿度は１０００〜６０００ｇ／ｍ^２・２４ｈｒｓの範囲にある。この熱可塑性プラスチックフィルムからなるマスキングシート２１は、それが親水化剤を含むことと、微細孔を多数含むこととによって、蒸留水に浸漬するとそれら微細孔の中へ水が浸入して滞留するので、短時間で高い吸水率を示す。内外面３１，３２が濡れるとともに吸水率が増大するとマスキングシート２１の全光線透過率が高くなり、容易に６０％以上に達する。マスキングシート２１の全光線透過率が４０％以下であるときにマスキングシート２１の外面３２の側から表示要素１９を透視することは難しいが、全光線透過率が６０％以上になると表示要素１９を透視することが容易になる。
【００１５】
表示要素１９は、マスキングシート２１および裏面シート３それぞれの色調と異なる色調を有することが好ましい。表示要素１９を形成する印刷インクまたは塗料にシリカやアルミナ等の光散乱性の無機粒子を含む親水性のものを使用すると、表示要素１９はコアが乾燥状態にあるときに光を散乱してマスキングシート２１の外面３２の側からの透視を一層困難にして目立ちにくくなり、コア４が濡れて湿潤状態にあるときには光の散乱が少なくなって透視が容易になる。表示要素１９の形状は、図示例のものに限らず任意のものを選ぶことができる。
【００１６】
インジケータ１８がこのように形成されているおむつ１では、マスキングシート２１に例えば坪量１５〜５０g／ｍ^２の低密度ポリエチレンフィルムを使用すれば、その坪量は裏面シート３として一般的に使用される低密度ポリエチレンフィルムのそれと大差がなく、このマスキングシート２１によってそれが密着している裏面シート３の柔軟な肌触りを損なうということがない。コア４が尿を吸収すると、その尿がマスキングシート２１に到達する。そのマスキングシート２１では、尿がマスキングシート２１の内外面３１，３２を濡らすとともにマスキングシート２１に形成された多数の微細孔に浸入して、それまでは粗面を呈していた内外面３１，３２や微細孔の内面を平滑にし、それに伴ってマスキングシート２１の全光線透過率が６０％以上なると、マスキングシート２１を介しての表示要素１９の透視が可能となり、その表示要素１９は裏面シート３とマスキングシート２１とを介しても透視が可能となる。マスキングシート２１は、そのクレム吸水度が１〜１０ｍｍであると吸収した尿を殆ど拡散させることがないから、コア４に接触している部分のうちでコア４の濡れている部分に対応する部分のみにおいて全光線透過率が高くなって、そこでの表示要素１９の視認が可能になる。つまり、このインジケータ１８では、表示要素１９が視認できたならば、その表示要素１９に接している部分のコア４が尿を吸収して濡れていると判断することができる。図１を例にすれば、インジケータ１８ではおむつ１の下方に位置する星の形をした２個の表示要素１９が裏面シート３の外側から視認できるように顕在化しているから、コア４は星の見えるところまでが濡れており、コア４の上方部分はまだ濡れていないと判断することができる。このおむつ１で、再び尿が排泄されてコア４が広い範囲で濡れると、図１で顕在化していなかった表示要素１９のうちのいくつかが視認できるように顕在化する。インジケータ１８はこのように作用するものであるから、図１のようにおむつ１の上下方向ヘ延ばす他に、左右方向ヘ延ばしたり、前胴周り域６および／または後胴周り域７を広く覆うように上下方向と左右方向とに延ばしたりすることも可能である。
【００１７】
この発明において、マスキングシート２１は、コア４に接触している内面３１の側から尿を吸収して濡れることが好ましいものである。その内面３１に対して表示要素１９として形成される印刷インクの層や塗料の層は、マスキングシート２１における尿の吸収を妨げるように作用することがあるから、その内面３１の一部分だけを占めるように、即ち間欠的に分布していることが好ましい。例えば、一つずつの星をグラビア印刷によって互いに離間した多数のドットの集合体として形成したり、星と星とを互いに離間させたりしてマスキングシート２１に印刷インクが塗布されていない部分を積極的に設けることが好ましい。またこの発明において、表示要素１９とはマスキングシート２１の全光線透過率が高くなったときに透視可能になればよいものであり、マスキングシート２１とは表示要素１９を一時的に隠蔽しているものであって吸水して全光線透過率が高くなったときにその表示要素１９を顕在化させればよいものであるから、星の形をマスキングシート２１に印刷することに代えてマスキングシート２１をコア４に密着させ、コア４が濡れるとマスキングシート２１も濡れて全光線透過率が高くなり、マスキングシート２１にはコア４を透視可能な全光線透過率の高い部位とコア４を透視不能な全光線透過率の低い部位とが現れて、これら両部位の境界がコア４の濡れている範囲を示すようにしてもよい。そのようなマスキングシート２１を有するおむつ１では、そのコア４が表示要素１９となる。使い捨てのパンツ型おむつを例にとって説明したこの発明は、開放型のおむつや失禁患者用おむつ、体液吸収性パッド等の体液吸収性物品におけるインジケータとして実施することができる。
【００１８】
【発明の効果】
この発明に係る体液吸収性物品のインジケータは、マスキングシートと表示要素とからなり、マスキングシートが柔軟な熱可塑性プラスチックフィルムで形成可能なので、体液吸収性物品の柔軟な肌触りを損なうということがない。また、このマスキングシートでは、それに吸収した尿の拡散が殆どないから、表示要素によって表示した範囲とコアの濡れている範囲とが一致し易い。
【図面の簡単な説明】
【図１】使い捨てのパンツ型おむつの部分破断斜視図。
【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線切断面を示す図。
【符号の説明】
１ 体液吸収性物品（おむつ）
２ 透液性シート
３ 不透液性シート
４ コア
１８ インジケータ
１９ 表示要素
２１ 吸水性シート（マスキングシート）
３１ 内面
３２ 外面

Claims (7)

1. 透液性のシートと不透液性シートとの間に体液吸収性のコアが介在してなる体液吸収性物品の前記不透液性シートとコアとの間に設けられて前記不透液性シートの外側から前記コアが湿潤状態にあることの視認を可能ならしめる吸水性シートと、前記吸水性シートによって一時的に隠蔽されている表示要素とからなるインジケータにおいて、
   前記吸水性シートは、前記コアに対向する内面と前記不透液性シートに対向する外面とを有する多孔質の熱可塑性プラスチックフィルムであり、前記フィルムの全光線透過率が乾燥状態において４０％以下であって吸水状態において６０％以上であり、前記表示要素が前記内面に密着した状態で形成され、前記熱可塑性プラスチックフィルムが、粒径０．１〜１０μの無機粒子を２０〜８０重量％含むとともに、０．５〜５重量％の親水化剤を含み、１〜１０ｍｍのクレム吸水度を有するものであり、前記表示要素が、光散乱性の無機粒子を含むことを特徴とする前記インジケータ。
2. 前記吸水性シートは、前記表示要素の両外側縁よりも外側で前記不透液性シートに間欠的に接合される請求項１記載のインジケータ。
3. 前記親水化剤の少なくとも一部が前記無機粒子表面を被覆している請求項１または２記載のインジケータ。
4. 前記熱可塑性プラスチックフィルムは、前記無機粒子を含有する熱可塑性プラスチックをフィルム状に押出し成形した後に１軸および２軸のいずれかに１００〜３００％延伸することにより得られたものである請求項１〜３のいずれかに記載のインジケータ。
5. 前記表示要素が前記吸水性シートの内面に間欠的に形成された印刷インク層および塗料層のいずれかである請求項１〜４のいずれかに記載のインジケータ。
6. 前記表示要素が前記コアである請求項１〜４のいずれかに記載のインジケータ。
7. 前記熱可塑性プラスチックフィルムは、吸水率が５〜１００重量％のものである請求項１〜６のいずれかに記載のインジケータ。

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