JP4425773B2 - ポリアミド樹脂の改質方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂の改質方法に関する。
ポリアミド樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の縮合等により製造される。しかしながら、このようにして製造されるポリアミド樹脂は必ずしも所望する物性や特性を備えているわけではない。そこで、ポリアミド樹脂を所望の物性又は特性を有する樹脂に改質する方法が種々検討されている。
特許第3453363号の明細書には、少なくとも2つのカーボネート単位を有する少なくとも1つの化合物を添加剤として用いてポリアミドとポリアミドとを縮合させる方法が開示されている。しかし、この方法では機械的物性等の点において必ずしも十分満足できる改質効果は得られない。
特許第3453363号
本発明の目的は、ポリアミド樹脂の物性を大幅に改質できるポリアミド樹脂の改質方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリアミド樹脂の物性を簡易に改質可能なポリアミド樹脂の改質方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、相溶性のない複数のポリアミド樹脂から相溶性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることのできるポリアミド樹脂の改質方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ポリアミド樹脂に特定の樹脂及び特定の添加剤を添加して縮合反応に付すと、ポリアミド樹脂を所望の物性を有するように簡易に改質できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、全末端基の50%以上がアミノ基であるポリアミド樹脂であって、互いに相溶しないポリアミド樹脂を2以上組み合わせて用いるポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ポリカーボネート(B)0.01〜10重量部と、脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)0.001〜2重量部とを添加して縮合させることによりポリアミド樹脂を改質させることを特徴とするポリアミド樹脂の改質方法を提供する。
リアミド樹脂(A)とポリカーボネート(B)と脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)とを溶融混合して縮合させるのが好ましい。ポリアミド樹脂(A)が少なくとも1種の脂肪族ポリアミド樹脂を含んでいてもよい。ポリアミド樹脂(A)がポリアミド12とポリアミド6、ポリアミド12とポリアミド66、ポリアミド11とポリアミド6、ポリアミド11とポリアミド66との組み合わせから選択される少なくとも1つでもよい。
本発明によれば、ポリアミド樹脂の物性を大幅に改質することができる。また、一般的で入手容易な化合物を用いても、ポリアミド樹脂の改質が可能である。さらに、相溶性のない複数のポリアミド樹脂から相溶性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることもできる。
本発明では、全末端基の50%以上がアミノ基であるポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ポリカーボネート(B)0.01〜10重量部と、脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)0.001〜2重量部とを添加して縮合させる。
ポリアミド樹脂(A)には、ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクタムをモノマー成分として縮合させて得られる広範囲のポリアミド(脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド等)が含まれる。ポリアミドには共重合ポリアミドも含まれる。モノマー成分は分岐又は環状構造を有していてもよく、二重結合や芳香族性基を有していてもよい。ポリアミド樹脂(A)としては、少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含んでいるのが好ましい。モノマー成分の炭素数は1〜50程度の範囲から適宜選択できる。
前記ジアミンとして、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルプロパンジアミン、3−メチルプロパンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジアミン;1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼンなどの芳香族ジアミン;イソホロンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシレンメタン、1,3−ジ(4−ピペリジル)−プロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、N−アミノプロピルピペラジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシレンプロパン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンなどの非芳香族性環式基(非芳香族性炭素環式基、非芳香族性複素環式基)を有するジアミンなどが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸などの非芳香族性環式基(非芳香族性炭素環式基、非芳香族性複素環式基)を有するジカルボン酸などが挙げられる。
前記アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノヘキサン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、4−ピペリジンカルボン酸、3−ピペリジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸などが挙げられる。また、前記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウリルラクタムなどがあげられる。
このようなモノマー成分から形成されるポリアミドの代表的な例として、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド1212、ポリアミド1012、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9T、これらの共重合体などが例示できる。これらの中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12が特に好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)には、上記ポリアミドユニットのみからなるポリアミド樹脂のほか、ポリアミドユニットと、ポリエーテルユニット及びポリエステルユニットからなる群より選択された少なくとも1つのポリマーユニットとを有するブロックコポリマーも含まれる。
本発明では、ポリアミド樹脂(A)として全末端基の50%以上(好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上)がアミノ基であるポリアミド樹脂を用いる。末端基の総数に占めるアミノ基の数の割合が50%未満のポリアミドを用いた場合には、ポリアミドの改質効果が極めて小さい。
本発明で使用するポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度(アミン末端基濃度)は、例えば5〜200mmol/kg、好ましくは15〜100mmol/kgである。また、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度(カルボン酸末端基濃度)は、例えば0〜100mmol/kg、好ましくは0〜40mmol/kgである。本発明の方法に適したポリアミド樹脂(A)として、例えば、溶液粘度(メタクレゾール液中で測定した相対粘度)として1.3〜2.5のポリアミド12等を挙げることができる。
本発明では同種又は異種のポリアミド樹脂を2以上組み合わせて用いる。例えば、分子量分布や平均分子量の異なる同種のポリアミド樹脂を組み合わせて用いたり、モノマーの種類の異なる異種のポリアミド樹脂を組み合わせることができ、この場合にもポリアミド樹脂を改質することができる。また、本発明では、ポリアミド樹脂として互いに相溶しない2以上のポリアミド樹脂を用いるので、各ポリアミド樹脂の特性を保持しながら相溶性を高めることが可能であり、通常の方法を用いた単純な混合の場合に見られる衝撃強度の著しい低下を抑制できる。互いに相溶しないポリアミド樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリアミド12とポリアミド6、ポリアミド12とポリアミド66、ポリアミド11とポリアミド6、ポリアミド11とポリアミド66との組み合わせなど、繰り返し単位の炭素数が互いに異なる樹脂同士の組み合わせ等が挙げられる。なお、ポリアミド樹脂(A)としてポリアミド12又はポリアミド11とポリアミド6やポリアミド66等のポリアミド12及び11以外のポリアミドとを用いる場合、両者の割合は、例えば、前者/後者=2/98〜98/2、好ましくは10/90〜97/3、さらに好ましくは40/60〜95/5の範囲である。このようにポリアミド樹脂(A)としてポリアミド12又はポリアミド11とポリアミド6やポリアミド66等とを用いて得られる改質されたポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物は、特に衝撃強度に優れる。
ポリカーボネート(B)としては、少なくとも2つのカーボネート単位を有する化合物であればよい。ポリカーボネート(B)は、公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル又はホスゲンとの反応により製造できる。なお、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応は、通常エステル交換触媒の存在下で行われる。エステル交換触媒としては公知乃至慣用のものを使用できる。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、芳香環を有し且つ芳香環にヒドロキシル基が2個結合している化合物であればよく、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004425773
(式中、Aは、単結合、フェニル基で置換されていてもよく、また炭素原子間にフェニレン基を介していてもよい炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、2価の環状炭化水素基、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−SO2−を示し、X及びYは、ベンゼン環上の置換基であり、同一又は異なって、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、m及びnは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す)
上記式(1)で表される化合物の代表的な例として、例えば、4,4′−ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシビフェニル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−s−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどのビス(ヒドロキシアリール)ジアルキルベンゼン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどのビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(ヒドロキシアリール)スルホン類などが挙げられる。
また、芳香族ジヒドロキシ化合物として、前記式(1)で表される化合物のほか、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレンなどを使用することもできる。芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよく、また、共重合体を得るため2種以上を併用してもよい。
前記炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(3−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ジ(m−クレジル)カーボネート、ジナフチルカーボネートなどのジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジシクロヘキシルカーボネートなどのジシクロアルキルカーボネートなどが挙げられる。
ポリカーボネート(B)には、上記方法により得られるポリカーボネートユニットのみからなる樹脂のほか、ポリカーボネートユニットと、ポリカーボネートユニット以外のポリマーユニットとを有するブロックコポリマーも含まれる。前記ポリカーボネート以外のポリマーユニットとしては、例えば、ポリエーテルユニット、ポリエステルユニット、ポリアミドユニットなどが挙げられる。なお、本発明では、ポリカーボネート(B)としてポリカーボネートユニットのみからなる一般的で入手容易なポリカーボネートを用いた場合でも、ポリアミド樹脂の物性や特性を大きく改質できる。
使用するポリカーボネート(B)の分子量については特に制限されないが、一般に数平均分子量として5,000〜100,000、好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜60,000であると改質反応に都合がよい。
ポリカーボネート(B)の使用量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度である。ポリカーボネート(B)の使用量が0.01重量部未満の場合には、ポリアミド樹脂の改質効果が小さく、10重量部を超えると、混合時に強い発泡が見られ、耐薬品性、耐熱性、機械物性等は著しく低下し、ポリアミド樹脂の持つ特徴的な性質が著しく損なわれる。
脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)において、脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などの炭素数1〜20の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸等の炭素数10〜18程度の脂肪族カルボン酸(特に、飽和脂肪族カルボン酸)が好ましい。脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。これらの中でも、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩が好ましい。脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)としては、特に炭素数10〜18の脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。
脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)の使用量(2種以上併用した場合はその総量)は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.001〜2重量部であり、好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部程度である。脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)の使用量が0.001重量部未満の場合には、ポリアミド樹脂の改質効果が見られないか又は著しく低く、2重量部を超える場合には、縮合反応が起きにくくなり、ポリアミド樹脂の改質度が極めて低くなると共に、ブリードの問題が生じたり樹脂の耐熱性が低下する。
縮合(改質反応)は溶媒中で行ってもよいが、工業的な観点及び反応操作の容易さの点からは溶融混合下で行うのが望ましい。縮合温度は、ポリアミド樹脂の種類に応じて反応速度及び反応の選択性等を考慮して適宜選択できるが、一般には、170〜300℃程度、好ましくは200〜280℃程度である。縮合は、常圧下、減圧下、加圧下の何れの条件下で行ってもよい。縮合(改質反応)の時間は、通常の2軸押出機での混練時間、例えば20秒〜3分程度で充分であるが、これに限定されない。縮合は、一般的な重合反応器で行うことができるほか、混練機、押出機等を用いて行うこともできる。縮合においては、必要に応じて適宜な添加剤を添加して行ってもよい。
改質されたポリアミド樹脂は、例えば、沈殿、再沈殿、濾過等の慣用の分離精製手段を用いて分離精製できる。また、縮合を溶融混合下で行った場合には、溶融混合物を押出機で押し出すことにより、改質されたポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物を、例えば、ペレット状、シート又はフィルム状、ストランド状等の形状で得ることができる。また、前記ポリアミド樹脂組成物を、必要に応じて適宜な添加剤を添加した後、射出成形、押出成形、圧縮成形等の慣用の成形手段に付すことにより、種々の成形品を作製することができる。
本発明の改質方法によれば、ポリアミド樹脂の物性、特性を簡単に改質することができる。より具体的には、ポリアミド樹脂の分子量、溶融粘度を増大させたり、衝撃強度等の機械的強度を高めることができる。また、相溶性のない複数のポリアミド樹脂から、各ポリアミド樹脂の特性を保持しつつ、相分離しない均一なポリアミド樹脂組成物を得ることができる。本発明の改質方法により得られたポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物は、例えば、自動車用成形材料、機械部品、押出し成形用部品などに使用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、ポリアミド樹脂のアミン末端基濃度及びカルボン酸末端基濃度は滴定法により求めた。また、ポリアミド樹脂の相対粘度は、メタクレゾールを用いた粘度測定法(ISO307)により測定し、溶融粘度は、キャピログラフを用いて、260℃、シェアレート24.32(秒-1)の条件で測定した。
実施例1(参考例とする)
ω−ラウリルラクタム100kgに対してデカメチレンジアミン6.5kgを、約10gのリン酸とともに、窒素置換したオートクレーブ中で250〜260℃に4時間加熱し、系内の水分を窒素と共に排出した。その後、1時間を要してさらに275℃まで昇温し、系内に残存する水分を完全に排除した。オートクレーブを冷却した後、アミン末端基濃度50mmol/kg、カルボン酸末端基濃度3mmol/kgのポリアミド12を得た。メタクレゾール溶液で測定した相対粘度は2.1であった。
上記で得られたポリアミド12(PA-1)100重量部に、ポリカーボネート[三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名「ユーピロンS−3000」]0.5重量部と、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を添加し、2軸押出機を用いて250℃で溶融混合し、ペレット状に押し出した。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例2(参考例とする)
ω−ラウリルラクタム100kgに対してデカメチレンジアミン10.5kgを、約10gのリン酸とともに、窒素置換したオートクレーブ中で250〜260℃に4時間加熱し、系内の水分を窒素と共に排出した。その後、1時間を要してさらに275℃まで昇温し、系内に残存する水分を完全に排除した。オートクレーブを冷却した後、アミン末端基濃度60mmol/kg、カルボン酸末端基濃度27mmol/kgのポリアミド12を得た。メタクレゾール溶液で測定した相対粘度は1.9であった。
上記で得られたポリアミド12(PA-2)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ペレットを得た。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例3(参考例とする)
ヘキサメチレンジアミン・ドデカンジカルボン酸塩100kgに対してデカメチレンジアミン17.2kgを、約10gのリン酸とともに、窒素置換したオートクレーブ中で250〜260℃に4時間加熱し、系内の水分を窒素と共に排出した。その後、1時間を要してさらに275℃まで昇温し、系内に残存する水分を完全に排除した。オートクレーブを冷却した後、アミン末端基濃度50mmol/kg、カルボン酸末端基濃度3mmol/kgのポリアミド612を得た。メタクレゾール溶液で測定した相対粘度は1.8であった。
上記で得られたポリアミド612(PA-3)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ペレットを得た。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例4(参考例とする)
実施例1において、ステアリン酸カルシウムの使用量を0.2重量部とした点以外は実施例1と同様の操作を行い、ペレットを得た。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例5(参考例とする)
実施例1において、ステアリン酸カルシウムの使用量を0.05重量部とした点以外は実施例1と同様の操作を行い、ペレットを得た。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった点以外は実施例1と同様の操作を行い、ペレットを得た。得られたペレットの相対粘度及び溶融粘度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例6
実施例1と同様にして得たポリアミド12(PA-1)90重量部と、相対粘度2.31、アミン末端基濃度34mmol/kg、カルボン酸末端基濃度28mmol/kgのポリアミド6[三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名「ノバミッド1030J」](PA-4)10重量部に、ポリカーボネート[三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名「ユーピロンS−3000」]0.5重量部と、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を添加し、2軸押出機を用いて260℃で溶融混合し、ペレット状に押し出した。得られたペレットをISOに準じて射出成形に付し、ISOダンベル片を得た。このダンベル片を用いて、機械物性値[引張り破断強度、引張り破断伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度(23℃)及びシャルピー衝撃強度(−40℃)]を測定した。その結果を表2に示す。
実施例7
実施例6において、ポリアミド12とポリアミド6の配合割合を90:10から80:20に変更した以外は実施例6と同様の操作を行いダンベル片を得た。このダンベル片を用いて、実施例6と同様にして機械物性値を測定した。その結果を表2に示す。
実施例8
実施例6において、ポリアミド12とポリアミド6の配合割合を90:10から70:30に変更した以外は実施例6と同様の操作を行いダンベル片を得た。このダンベル片を用いて、実施例6と同様にして機械物性値を測定した。その結果を表2に示す。
比較例2
実施例6において、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった以外は実施例6と同様の操作を行いダンベル片を得た。このダンベル片を用いて、実施例6と同様にして機械物性値を測定した。その結果を表2に示す。
比較例3
実施例7において、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった以外は実施例7と同様の操作を行いダンベル片を得た。このダンベル片を用いて、実施例7と同様にして機械物性値を測定した。その結果を表2に示す。
比較例4
実施例8において、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった以外は実施例8と同様の操作を行ったところ、2軸押出機で押し出す際、ダイスウェルが激しく、押出しできなかった。
Figure 0004425773
Figure 0004425773

Claims (4)

  1. 全末端基の50%以上がアミノ基であるポリアミド樹脂であって、互いに相溶しないポリアミド樹脂を2以上組み合わせて用いるポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ポリカーボネート(B)0.01〜10重量部と、脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)0.001〜2重量部とを添加して縮合させることによりポリアミド樹脂を改質させることを特徴とするポリアミド樹脂の改質方法。
  2. ポリアミド樹脂(A)とポリカーボネート(B)と脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩(C)とを溶融混合して縮合させる請求項記載のポリアミド樹脂の改質方法。
  3. ポリアミド樹脂(A)が少なくとも1種の脂肪族ポリアミド樹脂を含む請求項1又は2記載のポリアミド樹脂の改質方法。
  4. ポリアミド樹脂(A)がポリアミド12とポリアミド6、ポリアミド12とポリアミド66、ポリアミド11とポリアミド6、ポリアミド11とポリアミド66との組み合わせから選択される少なくとも1つである請求項1〜3の何れかの項に記載のポリアミド樹脂の改質方法。
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