JP4423750B2 - スルホン化ポリスチレンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスチレン系樹脂にスルホン化処理とオゾン処理を施すことにより得られる、低分子量スルホン化ポリスチレンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン系樹脂は、安価であり、電気的特性や剛性、耐水性等の特性に優れるため、単独体や共重合体の形で、緩衝材(発泡スチロール)や包装材、各種工業製品の匡体や部品材料等の樹脂材料として多用されている。そのため、同樹脂の需要は年々の増加傾向を示しているが、反面、使用済みの廃材としての発生量も増加するところとなり、近年地球環境保全の関心の高まりから、同廃材の有効利用についてのニーズが高まってきている。
【0003】
ポリスチレン系廃材の有効利用方法としては、加熱溶融し再成形する(ただし熱可塑性樹脂のみ)、焼却し熱回収する、熱分解して油化及び原料(モノマー)に還元する、骨材として土建材料に混合するといった、一般のプラスチック廃材に対して行われているものと同様な方法が挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの方法ではいずれも元のポリスチレン系材料より付加価値の低いものにしか成り得ず、限りある資源の有効利用方法とは言えない。
【0005】
この様な状況の中で、同廃材を化学的に修飾してより付加価値の高いものに改質する技術を本発明者らが既に提案した。これは、ポリスチレン系廃材をスルホン化することで水溶性高分子化合物に改質し廃水処理用の高分子凝集剤として利用するというもので、その付加価値は元のバージン材に比べて10倍以上向上することになる。しかしながら、同技術により得られる水溶性のスルホン化ポリスチレンの分子量(Mw)は15〜60万と高い。
【0006】
水溶性のスルホン化ポリスチレンが多量に使用されている用途としては、各種分散剤、導電剤、糊を含む接着剤等が挙げられるが、これらのものは2千〜5万の低い分子量のものが一般に利用されている。このため、ポリスチレン樹脂廃材をスルホン化した場合、分子量が高くなるため凝集剤以外の用途に用いることは難しい。
【0007】
この問題点を解決するために、本発明者らは更なる提案をした(特開平10−101732)。すなわち、ポリスチレン系樹脂をスルホン化して水溶性のスルホン化ポリスチレンに改質するに際して、過酸化物を添加するというものである。これによりポリスチレン系樹脂(廃材)を、低分子量の水溶性スルホン化ポリスチレンに改質することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、過酸化物は、比較的に不安定で反応の化学当量を取ることが困難であり、反応生成物の特性の均一性を確保するのが困難である。すなわち、この過酸化物を用いる方法は、水溶性スルホン化ポリスチレンの分子量の制御が困難である。
【0009】
以上の様に、ポリスチレン系廃材をスルホン化してより付加価値の高い水溶性のスルホン化ポリスチレンに改質する上で、同改質物の分子量を低くする技術が望まれている。特に、分子量の制御が容易であり、低分子量のスルホン化ポリスチレンを得ることができる技術が望まれている。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、各種用途に利用可能なスルホン化ポリスチレンの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のスルホン化ポリスチレンの製造方法は、スチレンユニットを20〜100モル%含有し、分子量(重量平均分子量:Mw)10〜40万のポリスチレン系樹脂を、C1〜C2の脂肪族ハロゲン化炭化水素、又は、脂肪族環状炭化水素溶媒中でスルホン化剤と反応させる工程と、スルホン化剤と反応させる工程の後、アルカリ化合物により中和してポリスチレン系樹脂をスルホン化ポリスチレンに改質する工程と、スルホン化ポリスチレンをオゾン処理し、分子量(Mw)を2000〜50000に低分子量化する工程と、
を備える。また、上述の製造方法により得られるスルホン化ポリスチレンは、スルホン基がスチレンユニットに対して40〜200モル%含有されている。また、上述の製造方法により得られるスルホン化ポリスチレンは、分子量(Mw)が2000〜50000である。
【0017】
本発明のスルホン化ポリスチレンの製造方法によれば、ポリスチレン系樹脂をスルホン化しオゾン処理することにより、スルホン化ポリスチレンの主鎖が酸化切断され、分子量低下が達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、のスルホン化ポリスチレンの製造方法に係る発明の実施の形態について説明する。本発明者は、上記の課題を克服せんものと鋭意研究を重ねた結果、所定の組成を有するポリスチレン系樹脂をスルホン化し、オゾン処理を行うことにより、低分子量のスルホン化ポリスチレンを製造できることを見い出し本発明を完成させるに至った。さらに、この方法により、分子量の制御が容易であるとともに、環境負荷の少ない、いわゆるグリーンケミストリーの思想に基づき、低分子量のスルホン化ポリスチレンを得ることができる。
【0019】
すなわち、本発明は、所定組成のポリスチレン系樹脂をスルホン化し、オゾン処理を行うことにより、各種分散剤、導電剤、糊を含む接着剤に利用可能なスルホン化ポリスチレンへと改質することができる。
【0020】
ここで、本発明の出発原料に用いられる所定組成のポリスチレン樹脂としては、スチレンユニットを20〜100モル%、好ましくは、50〜100モル%含有し、然も、分子量(Mw)が10〜40万、好ましくは15〜30万のものが望ましい。
【0021】
スチレンユニット含有量がこれより低いと、スルホン基の導入が難しくなり水溶性のポリマーが得られなくなったり、スルホン化ポリスチレン本来の特性が損なわれる。
【0022】
また、分子量がこれより高いものや低いものを使用すると、各種分散剤としてスルホン化ポリスチレンを利用する際に狙いとなる分子量に改質することが困難となる。
【0023】
上記ポリスチレン樹脂はスチレンユニットのみのポリマーでも良く、またはスチレンと他のモノマーユニットとの共重合体であっても良い。前記スチレン以外のユニットとしては、ブタジエン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(炭素数:1〜4の脂肪族炭化水素)、無水マレイン酸、無水イタコン酸が挙げられる。この中で好ましいものは、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マイレン酸である。これらスチレン以外の他のユニットは、1種類もしくは2種類以上含まれていても良いが、好ましくは2種類以内である。
【0024】
なお、該ポリスチレン系樹脂は使用済みのものであっても良く、同樹脂中に顔染料、安定剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、その他各種補助添加剤等等を含んでいても特に問題はない。
【0025】
上記ポリスチレン系樹脂を溶媒中でスルホン化剤と反応させ、次にアルカリ化合物で中和することにより水溶性のスルホン化ポリスチレンへと改質を行うが、本発明では同反応にオゾン処理を併用することを特徴とし、これにより得られる水溶性の高分子が各種分散剤として利用可能となる。
【0026】
スルホン化剤としては、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、濃硫酸が挙げられる。これらスルホン化剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、複数種併用しても良い。
【0027】
また、スルホン化率としては、後述するオゾン処理後のスルホン化ポリスチレン中のスチレンユニットに対して、40〜200モル%であることが好適であり、さらに好ましくは、50〜100モル%の範囲である。スルホン化率がこの範囲よりも低いと水溶性のポリマーは得られなくなる。また、この範囲よりも高い場合は、スルホン架橋し易くなり非水溶性ポリマーとなったり、反応系中に硫酸塩の副生成物が多量に残留してしまうことになる。
【0028】
上記スルホン化剤はルイス塩基とを併用しても良い。ルイス塩基としては、アルキルフォスフェート(トリエチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート)、ジオキサン、無水酢酸、酢酸エチル、パルチミン酸エチル、ジエチルエーテル、チオキサン等が挙げられる。
【0029】
これらルイス塩基の添加量は、ポリスチレン系樹脂廃材中のスチレンユニットに対して、1〜200モル%、好ましくは、2〜100モル%である。なお、同ルイス塩基の添加量が少ないとスルホン化反応中にゲル化物が発生し易くなり、多いとスルホン化反応自体が進行し難くなり収率が低下する。
【0030】
反応溶媒としては、C1〜2の脂肪族ハロゲン化炭化水素(好ましくは1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン)、脂肪族環状炭化水素(好ましくは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン)である。
【0031】
なお、これら溶媒はそのもの単体で用いても良いし複数混合して用いても良い。上記溶媒内での混合においては、その混合比率は特に制限は無い。
【0032】
または他の溶媒と複数混合しても良い。混合して用いることが可能な溶媒としては、パラフィン系炭化水素(炭素数:1〜7)、アセトニトリル、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、チオフェン等が挙げられる。これらのものの中で好ましくは、パラフィン系炭化水素(炭素数:1〜7)、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルである。これら他の溶媒との混合比率は、特に限定しないが、好ましくは、体積当たり1〜100%の範囲である。
【0033】
なお、スルホン化反応に一度使用した溶媒は、反応終了後、抜き取りや蒸留等の方法により回収して再度スルホン化反応に使用しても良い。
【0034】
上記スルホン化反応系における該ポリマー濃度は、0.1〜30重量%で、好ましくは、0.5〜20重量%である。濃度がこの範囲より低いと生産効率やポリマーへのスルホン基の導入率が低下する。また、濃度が高いとゲル化物や未反応物が多く発生することになる。
【0035】
スルホン化反応の温度は、0〜100℃、好ましくは、15〜80℃である。温度がこの範囲より低いとスルホン化反応が進行しにくくなり収率が低下する。
【0036】
スルホン化反応の時間(ただしスルホン化剤の滴下時間は含まない)は、10分〜10時間、好ましくは、30分〜5時間である。
【0037】
以上の様にポリスチレン系樹脂廃材をスルホン化した後は、塩基性化合物と中和反応を行いポリスチレンスルホン酸塩とすることができる。
【0038】
上記塩基性化合物としては、アルカリ金属(ナトリウム、リチウム、カリウム等)やアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の化合物や、アンモニアや各種(1〜3級アルキル)アミン化合物等を、そのまま、もしくは水溶液の状態で反応系中に徐々に添加してゆき中和処理を完結させる。
【0039】
添加量は分子量により異なるが、ポリマー1重量部に対して、0.5〜100重量部で、好ましくは1〜50重量部である。
【0040】
以上の中和処理の後、分液及び/または蒸留等で除去する。なお、溶媒の残留量を少なくするには、分液後に蒸留することが好ましい。なお、上記中和反応時の反応温度は、0〜80℃であることが好ましい。
【0041】
以上に示した原料を用いてスルホン化を行うことにより、ポリスチレン系樹脂を水溶性のポリスチレンスルホン酸あるいはポリスチレンスルホン酸塩へと改質できるが、本発明では、さらに同系にオゾン処理を加えることにより、各種分散剤、導電剤、糊を含む接着剤に利用可能なレベルの低分子量にまでスルホン化ポリスチレンを改質する。
【0042】
上記オゾン処理によりスルホン化ポリスチレンのポリスチレンの主鎖が酸化切断され、分子量低下が達成されるもので、このオゾン処理は、各種金属イオン等と併用しても良く、また、上記スルホン化剤や塩基性化合物と混合した状態で反応系に添加しても良い。
【0043】
以上のオゾン処理は、スルホン化剤添加後または同時に施すか、もしくは塩基性化合物の添加後または同時に施す。好ましくは、スルホン化剤添加後、もしくは塩基性化合物の添加後である。これは、スルホン化剤添加前に該樹脂にオゾン処理を施すと、架橋もしくは重合反応を生じる場合があり(例えば、ブタジエンユニットを含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)系廃材等)、これにより改質物の分子量が増加してしまう為である。
【0044】
なお、上記のオゾン処理は、前記反応系へガス状のオゾンあるいはオゾン含有ガスの導入により行われ、この反応系の温度としては、0〜80℃、好ましくは5〜60℃である。
【0045】
このオゾン処理の効果は、下記に述べるような過酸化物により、達成できる場合もあるが、下記過酸化物は、比較的に不安定で反応の化学当量を取ることが困難であり、反応生成物の特性の均一性を確保するのが困難であり、且つ、場合によっては、急速な反応を生じることがある。これに対し、本オゾン処理では、処理中の溶液物性、例えば、溶液粘度を探知しながら反応を制御し、その終点を決定することが容易である。また、これら過酸化物の合成には、多量の資源とエネルギーを要する。近年提唱されている、いわゆるグリーンケミストリーの思想と相容れないものである。
【0046】
このように得られるスルホン化ポリスチレンの分子量(Mw)は、2000から50000、好ましくは、5000から30000であることが望ましい。上記上限を越える分子量では、分散剤の用途において凝集効果が顕在化する可能性があり、上記下限未満の分子量では、十分な分散効果が得られなくなる。
【0047】
上記のオゾン処理は、極めて安価で制御しやすく、スルホン化ポリスチレンを低分子化でき、工業的に優れた手法であるが、本発明においては、格別の必要性のある場合は、上記のオゾン処理に、さらに、過酸化物の処理を併用することができる。
【0048】
この目的のために用いられる過酸化物として無機物系のものとしては、過酸化水素水、ペルオキソ硫酸及びその塩化合物、ペルオキソ炭酸塩、ペルオキソ燐酸、及びその塩化合物、ペルオキソ硝酸およびその塩化合物、過塩素酸、過マンガン酸、及びその塩が挙げられる。これらの中で、好ましくは過酸化水素水、ペルオキソ硫酸、及びその塩化合物、等である。
【0049】
また有機物系のものとしては、ヒドロペルオキシド系の、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、P−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキシン−3、ピネンヒドロペルオキシド、等、ならびに、ジアルキルペルオキシド系の、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4ビス(t−ブチルペルオキシ)ヴァレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、等、ならびに、ジアシルペルオキシド系;カプリライドペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシン酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、等、ならびに、ペルオキシドエステル系の、t−ブチルペルオキシ酢酸、t−ブチルペルオキシ−2エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジペルオキシフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベイゾイルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、等、ならびに、ケトンペルオキシド系;メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、等が挙げられる。
【0050】
これらの過酸化物は金属イオン等と併用しても良く、また、上記スルホン化剤や塩基性化合物と混合した状態で反応系に添加しても良い。この過酸化物は、スルホン化剤添加の後または同時に添加するか、もしくは塩基性化合物の添加後または同時に添加する。好ましくは、スルホン化剤添加後、もしくは塩基性化合物の添加後である。これは、スルホン化剤添加前に該樹脂に過酸化物を添加すると、前記オゾン処理において述べたように、架橋もしくは重合反応を生じる場合があり、これにより改質物の分子量が増加してしまう懸念がある為である。同過酸化物の添加量としては、ポリスチレン系樹脂中のモノマーユニットトータルに対して、0.01〜50モル%、好ましくは0.1〜10モル%である。なお、過酸化物添加時の反応系の温度としては、0〜80℃、好ましくは5〜60℃である。
【0051】
上述のようにポリスチレン系樹脂をスルホン化改質するに際し、上記過酸化物を添加することで、ポリスチレンの主鎖の酸化・切断が生じ、これにより低分子量のスルホン化ポリスチレンが生成されることになる。
【0052】
本発明により、ポリスチレン系樹脂を低分子量の水溶性スルホン化ポリスチレンに改質することが可能になり、これにより同改質物を、セメント用添加剤、無機顔料分散剤、紙力増強剤、紙用表面サイズ剤、電子複写用導電剤、帯電防止剤、スケール防止剤、乳化重合用分散剤、接着剤(水溶性糊を含む)に利用することが可能となる。
【0053】
また、同技術は、使用済みのポリスチレン系樹脂についても適応できるため、地球環境保全に貢献することができる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0055】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0056】
〔実施例1〕
70重量部の1,2−ジクロロエタンに、2.44重量部のリン酸トリエチルを加えた溶液に、発泡スチロール粉砕物(分子量;Mw=20万)6.93重量部を1,2−ジクロロエタン63重量部に溶解したものと、60%発煙硫酸9.33重量部を60分かけて同時滴下した。滴下中は反応系の温度は20〜25℃の範囲にコントロールした。滴下終了後、30分間の熟成の後、反応系に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和を行った。その後、中和混合物を常温下で加熱し、同反応系から1,2−ジクロロエタンを留出除去した。得られた水溶性ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのMwは430000であった。無声放電方式のオゾン発生装置に酸素を流通させることにより約3%のオゾンを含有させた酸素を、上記で得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウムの5重量%の水溶液100mlに30℃にてバブルさせた。この反応により得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウムのMwは25000であった。また、スルホン化率は95モル%であった。
【0057】
〔実施例2〕
シクロヘキサン50重量部にリン酸トリエチル0.92重量部を加えた溶液に、50℃に保った状態で発煙硫酸(SO3 :60重量%含有)0.17重量部を加えた。次にTV用ハウジング廃材粉砕物(ハイインパクトポリスチレン、分子量:22万、スチレンユニット95モル%とブタジエン5モル%の共重合体)2.4重量部をシクロヘキサン120重量部に溶解したものと、発煙硫酸3.3重量部を、同温度に保ち30分かけて同時滴下した。その後、50±2℃の温度に保ち1時間反応を行った。次に、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら反応系中に徐々に加えて中和を行った。その後、加熱により、反応系中のシクロヘキサンの溶媒留去を行った。得られた水溶性ポリスチレンスルホン酸ソーダのMwは450000であった。無声放電方式のオゾン発生装置に酸素を流通させることにより約3%のオゾンを含有させた酸素を、上記で得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウムの5重量%の水溶液100mlに30℃にてバブルさせた。これの反応により得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウムのMwは12000であった。また、スルホン化率は87モル%であった。
【0058】
なお、得られた改質物の分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析により測定した。GPC分析では、カラムにウルトラヒドロゲルリニィアー(Ultrahydrogelinear)を用い、溶媒にH2 O/アセトニトリル=80/20の混合溶媒を用いた。
【0059】
また、スルホン化率は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により測定した。ここで、スルホン化率とは、スチレンユニットに対するスルホン基の割合をモル%で表示したものである。
【0060】
以上の結果より、本発明の手法を用いることにより、低分子量のポリスチレンスルホン酸塩が得られることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、ポリスチレン系樹脂から、各種用途に利用可能な低分子量の水溶性のポリスチレンスルホン酸塩が製造することができる。また、分子量の制御が容易である方法により、スルホン化ポリスチレンを製造することができる。また、本発明の手法は、使用済みとなった廃プラスチックに対して適用することができるため、資源の有効利用につながり、地球の環境保全に貢献することができる。
Claims (3)
- スチレンユニットを20〜100モル%含有し、分子量(重量平均分子量:Mw)10〜40万のポリスチレン系樹脂を、C1〜C2の脂肪族ハロゲン化炭化水素、又は、脂肪族環状炭化水素溶媒中でスルホン化剤と反応させる工程と、
前記スルホン化剤と反応させる工程の後、アルカリ化合物により中和して前記ポリスチレン系樹脂をスルホン化ポリスチレンに改質する工程と、
前記スルホン化ポリスチレンをオゾン処理し、分子量(Mw)を2000〜50000に低分子量化する工程と、
を備えるスルホン化ポリスチレンの製造方法。 - 前記スルホン化剤が、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、及び、濃硫酸から選ばれる少なくとも1つ以上を含む請求項1に記載のスルホン化ポリスチレンの製造方法。
- 前記スルホン化剤との反応における前記ポリスチレン系樹脂のスルホン化率が、オゾン処理後のスルホン化ポリスチレン中のスチレンユニットに対して、40〜200モル%である請求項1に記載のスルホン化ポリスチレンの製造方法。
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