JP4421131B2 - スプール型流量制御弁及びその制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流体の流量制御弁として用いられるスプール型流量制御弁及びその制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4を参照して、この種のスプール型流量制御弁の使用例について説明する。図4は、本発明者らにより提案(特願2000年第154151号)されている空気圧アクチュエータ及びその制御系を示している。
【0003】
図4において、空気圧アクチュエータは、両端部を支持体により固定されて一軸方向に延びるガイド軸14と、これに沿って移動可能なスライダ13とを含む。スライダ13は、ガイド軸13の周囲を囲むことができるような筒状体であり、ガイド軸14の外周との間にシリンダ空間ができるようにされている。このシリンダ空間は、圧力室として使用されるものであり、このシリンダ空間を軸方向に関して2つの圧力室16A、16Bに区画する受圧板(隔壁)17をスライダ13の内壁に固定している。受圧板17もスライダ13と共にガイド軸14に沿ってスライド可能である。ガイド軸14の両側にはそれぞれ、周方向に間隔をおいて複数の静圧空気軸受12を設け、これらの静圧空気軸受12にはレギュレータ11Aを介して空気圧源10を接続している。このために、ガイド軸14には静圧空気軸受12に至る空気通路が形成されている。静圧空気軸受自体は良く知られているので、詳細な構造については説明を省略する。ガイド軸14の両側にはまた、2つに区画された圧力室16A、16Bにそれぞれ、圧縮空気を出入り可能にするための給気系を接続している。このために、上記の静圧空気軸受用の空気通路とは別に、ガイド軸14にはその両端から圧力室16A、16Bに至る空気通路が形成されている。これらの給気系はそれぞれ、サーボ弁22A、22Bを備え、これらのサーボ弁22A、22Bもレギュレータ11Bを介して空気圧源10に接続されている。
【0004】
空気圧源10からレギュレータ11Aで適当な圧力に調節された空気が静圧空気軸受12に供給される。この静圧空気軸受12の空気によりスライダ13がガイド軸14から浮上し、スライダ13はガイド軸14に対して非接触で移動が可能となる。したがって、移動に際しての摺動抵抗をもたない。また、リニアスケール等による位置センサ15によりスライダ13の位置を検出しその位置情報を電気信号により出力する。位置センサ15からの位置検出信号は制御演算装置20に入力される。
【0005】
演算装置20では入力された位置情報をもとに制御演算を行い、サーボアンプ21A、21Bにスプール位置指令信号(電気信号)を出力する。この際、サーボアンプ21A、21Bへの指令値は、絶対値が同じで符号を反転させた値を用いる。
【0006】
サーボアンプ21A、21Bは、この指令値に従いサーボ弁22A、22Bのスプール位置をそれぞれ制御する。なお、サーボ弁22A、22Bの2つのサーボ弁は、3位置3ポート直動型サーボ弁である。
【0007】
サーボ弁22A、22Bはレギュレータ11Bにより適当な圧力に調節された圧縮空気が供給されており、サーボ弁22A、22B内のスプール位置により通過する流量が変動する。サーボ弁22A、22Bを通過した空気はスライダ13内に設けられた2つの圧力室16A、16Bに供給される。圧力室16A、16Bの差圧がスライダ13の内壁に取り付けられた受圧板(隔壁)17に作用し、スライダ13を移動させる。
【0008】
上記のように、サーボ弁22A、22Bは圧縮空気の流量制御弁として使用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スプール型の流量制御弁は、三方弁の場合、図5に示されるように、スリーブ31には3つのポートP、C、Rが設けられ、内部には3つの弁体32−1、32−2、32−3を持つスプール32が軸方向に移動可能に設けられている。スプール32はアクチュエータ33で駆動される。スプール32の位置は、図示しない位置センサで検出される。
【0010】
図4で言えば、ポートPは空気圧源10に接続され、ポートCは圧力室16Aあるいは16Bに、ポートRは大気開放側にそれぞれ接続される。この場合、アクチュエータ33によりスプール32が図中右方向に移動すると、ポートP−Cの経路で空気圧源10からの圧縮空気が圧力室に供給される。一方、アクチュエータ33によりスプール32が図中左方向に移動すると、ポートC−Rの経路で圧力室内の圧縮空気が大気に開放される。
【0011】
また、この種の流量制御弁では、動作流体が例えば作動油である場合にはこの作動油による流体膜潤滑、あるいはグリースにより可動部である弁体32−1〜32−3とスリーブ31間を接触案内している。
【0012】
しかし、このような接触式の流量制御弁においては、摺動部における摩擦特性により高精度なスプール位置決めが行えず、高精度な流量制御には向いていない。
【0013】
従来、このような摺動部における摩擦特性に対しては、流量制御弁への指令値に高周波成分を加えるディザーにより、スプールに微小振動を与えることでみかけ上の摩擦を無くして高精度化を図ることが試みられていた。しかし、摺動部における摩擦特性により、流量制御弁入力と制御流量との間には、図6に示すようなヒステリシスが存在する結果、流量制御精度の向上には制約があった。
【0014】
一方、流量制御精度はポートの幅とスプール(弁体)の位置決め精度により決まる。このことから、図7に示すように、ポート幅b(軸方向に直角な方向の開口サイズ)を小さくするなどの手法で高精度化に対応していた。これは、弁体によりポートが全閉となる位置から距離Lだけ手前の位置からのストローク量Lで考えると、定格流量はb×Lに比例し、流量分解能はb×xres (但し、xres はスプール位置分解能である)に比例するからである。しかしながら、同じ定格流量で高精度化を行うとストロークが長くなることになり、応答速度が遅くなるというデメリットがあった。
【0015】
そこで、本発明の課題は、高速化、高精度化の可能なスプール型流量制御弁を提供することにある。
【0016】
本発明の他の課題は、上記の課題達成に適したスプール型流量制御弁の制御装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のポートを持つスリーブ内に複数の弁体を持つスプールを摺動可能に収容し、該スプールをアクチュエータで軸方向に移動させるようにして流量の制御を行うスプール型流量制御弁において、前記スリーブと前記弁体との間を非接触で支持する静圧空気軸受と、前記スプールの位置を非接触で検出する位置検出器を備え、該位置検出器の検出値を前記アクチュエータにフィードバックして位置制御を行うようにしたスプール型流量制御弁であって、前記スプールの内部に、前記静圧空気軸受に空気を供給する空気通路を設けたことを特徴とする。
【0018】
なお、前記スプールの内部に、静圧空気軸受からの空気を外部に排出する排気手段を更に設けることが好ましい。
【0019】
本発明によればまた、上記のスプール型流量制御弁に組合わされる制御装置であって、前記位置検出器からの検出値をフィードバックして位置指令値との差を算出する位置フィードバック系と、該位置フィードバック系からの差信号に基づいて速度目標値を算出する手段と、前記位置検出器からの検出値から速度を算出してフィードバックし、前記速度目標値との差を算出する速度フィードバック系と、該速度フィードバック系からの差信号に対して外乱力を打ち消すための信号を与える外乱オブザーバと、を含むことを特徴とするスプール型流量制御弁用の制御装置が提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明の好ましい実施の形態によるスプール型流量制御弁について説明する。ここでも、図5に示したような三方弁の場合について説明する。図1において、スリーブ1には3つのポートP、C、Rが設けられ、内部には3つの弁体2−1、2−2、2−3を持つスプール2が軸方向に移動可能に設けられている。スプール2はアクチュエータ3で駆動される。アクチュエータとしては、例えばボイスコイルモータが使用される。
【0021】
本形態は、流量制御弁の可動部であるスプール−スリーブ間を非接触支持することで摩擦のほとんどない滑らかな運動、高精度な位置決めを可能とした点に特徴を有する。つまり、弁体2−1〜2−3のうち、両側の弁体2−1、2−3を、例えば静圧空気軸受によりスリーブの内壁から浮上させるようにして非接触支持を実現している。具体的には、スプール2の軸部に静圧空気軸受用の空気通路4を設け、弁体2−1、2−3の外周部にはこの空気通路4と接続した空気吹き出し用の軸受部5を設けている。軸受部5は、ポートとは重ならないようにして弁体の周方向に間隔をおいて複数個設けられる。空気通路4の入り口には、図示しない圧縮空気供給源よりフレキシブル配管を通して圧縮空気が供給される。
【0022】
なお、軸受部5は弁体2−2にも設けるようにしても良い。また、本形態では、圧縮空気の流量を制御するので、静圧空気軸受からの空気が流量制御に影響を及ぼさないようにするために、軸受パッド5の両側(軸方向に関して両側)には静圧空気軸受からの空気を取り入れて外部に排出する排気手段を設けることが望ましい。このような排気手段は、弁体2−1、2−3に空気取入れ口を設け、これをスプール2の軸部に空気通路4と同様の排気通路を設けて接続し、この排気通路の出口にフレキシブル配管を介して排気手段を接続すれば良い。
【0023】
本形態ではまた、スプール2の位置を非接触で検出するための位置検出器6が備えられる。位置検出器6には、高分解能の検出器、例えばレーザセンサが使用され、非接触式とすることで可動部を完全非接触としている。位置検出器6は、スプール位置を検出し、位置決め用のアクチュエータ3にフィードバックしてフィードバック制御を行うためのものである。
【0024】
ところで、この種のスプール型流量制御弁には外乱の作用することが避けられない。流量制御弁に働く外乱要素としては、図2に示すように、取付向きの傾きによる重力の影響がある。また、弁体が開くと閉じようとする方向に働く流体力(空気圧力)がある。
【0025】
これらの影響を補償するために、本形態ではアクチュエータ3の制御系として、外乱オブザーバを使用したフィードバック制御系を採用することでスプール2の高精度な位置決めを可能としている。
【0026】
図3は流量制御弁のブロック線図と流量制御弁に付随する上記のフィードバック制御系のブロック線図である。流量制御弁のブロック7−1においては、上記の取付向きの傾きによる外乱力と流体力による外乱力とが作用することを示している。このような外乱力を打ち消すことのできるフィードバック制御系を実現するために、位置検出器5からの位置検出値をフィードバックする位置フィードバック系7−2と、位置検出値を微分して速度を算出しこれをフィードバックする速度フィードバック系7−3に対して、外乱オブザーバ7−4を付加するようにしている。
【0027】
外乱オブザーバ7−4は、ゲインKi のパワーアンプ7−5の入力である速度目標値を入力とするローパスフィルタ7−41と、位置検出値を入力とする推力推定フィルタ7−42と、ローパスフィルタ7−41の出力と推力推定フィルタ7−42の出力とから推定外乱力を算出する減算器7−43とを含む。
【0028】
このブロック線図では、与えられた位置指令値Xref (スプールの位置指令値)と、位置検出器6(図1)で検出されたスプールの現在位置Xの検出値との差が減算器7−6で算出され、比例ゲインKp の補償器7−7に入力される。この入力に基づいて補償器7−7は速度目標値を出力する。減算器7−8では、速度目標値と速度フィードバック系7−3からの速度値との差を出力する。そして、減算器7−9によりこの差信号に対して減算器7−43からの信号が外乱力を打ち消すように与えられる。パワーアンプ7−5は減算器7−9からの信号によりアクチュエータであるボイスコイルモータの電流目標値Iを与える。
【0029】
このような制御系は、図4で言えば、例えば演算装置20とサーボアンプ21A、21Bとの間に設けられる。
【0030】
以上の説明で明らかなように、本発明による流量制御弁は、その可動部における摩擦抵抗を無くすことにより滑らかな運動が可能となる。加えて、このような流量制御弁に対して高分解能な位置検出器を使用することで高精度な位置決めが可能となる。そして、流量はスプール位置により制御されるため、流量制御弁の高精度な流量制御が可能となる。
【0031】
しかしながら、これだけでは流量制御弁の取付方向の傾きによる重力、流体力などの外乱を受けるため問題がある。これに対しては、外乱オブザーバのような外乱抑圧性能を有するフィードバック制御系を制御装置として備えることにより高速、高精度のスプール型流量制御弁が実現される。
【0032】
【発明の効果】
本発明によるスプール型流量制御弁では、高精度化のためにポート幅を小さく、ストロークを長くする必要がないため、高速応答を維持したまま、位置検出器の分解能を上げることで高精度を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流量制御弁の主要部の構成を示した図である。
【図2】図1に示した流量制御弁が傾いて設置された場合の問題点を説明するための図である。
【図3】図1に示した流量制御弁のブロック線図とこれに組合わされるフィードバック制御系のブロック線図を示す。
【図4】本発明者らにより提案されている、本発明が適用される空気圧アクチュエータの構成を示した図である。
【図5】図4の空気圧アクチュエータに使用されている流量制御弁の構成を示した図である。
【図6】図5に示した流量制御弁を高精度化する一例を説明するための図である。
【図7】図5に示された流量制御弁における可動部の摩擦に起因して、流量制御弁入力と制御流量との間に生じるヒステリシスを説明するための特性図である。
【符号の説明】
1、31 スリーブ
2、32 スプール
2−1〜2−3、32−1〜32−3 弁体
3、33 アクチュエータ
4 空気通路
5 静圧空気軸受の軸受部
6 非接触式の位置検出器
10 空気圧源
11A、11B レギュレータ
12 静圧空気軸受
13 スライダ
14 ガイド軸
15 位置センサ
16A、16B 圧力室
17 受圧板
Claims (3)
- 複数のポートを持つスリーブ内に複数の弁体を持つスプールを摺動可能に収容し、該スプールをアクチュエータで軸方向に移動させるようにして流量の制御を行うスプール型流量制御弁において、
前記スリーブと前記弁体との間を非接触で支持する静圧空気軸受と、
前記スプールの位置を非接触で検出する位置検出器を備え、
該位置検出器の検出値を前記アクチュエータにフィードバックして位置制御を行うようにしたスプール型流量制御弁であって、
前記スプールの内部に、前記静圧空気軸受に空気を供給する空気通路を設けたことを特徴とするスプール型流量制御弁。 - 請求項1記載のスプール型流量制御弁において、前記スプールの内部に、静圧空気軸受からの空気を外部に排出する排気手段を更に設けたことを特徴とするスプール型流量制御弁。
- 請求項1又は2に記載のスプール型流量制御弁に組合わされる制御装置であって、前記位置検出器からの検出値をフィードバックして位置指令値との差を算出する位置フィードバック系と、該位置フィードバック系からの差信号に基づいて速度目標値を算出する手段と、前記位置検出器からの検出値から速度を算出してフィードバックし、前記速度目標値との差を算出する速度フィードバック系と、該速度フィードバック系からの差信号に対して外乱力を打ち消すための信号を与える外乱オブザーバと、を含むことを特徴とするスプール型流量制御弁用の制御装置。
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