JP4420766B2 - 医療用複室容器 - Google Patents

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Description

本発明は、薬剤が複数室に分離して保存され、これらの薬剤を用時混合できる医療用複室容器および該複室容器にアミノ酸溶液等の薬剤が収納されている輸液製剤に関する。
経口・経腸管栄養補給が不能または不十分な患者には、静脈を経て、高カロリー輸液の投与がおこなわれている。この際に使用される輸液製剤としては、糖製剤、アミノ酸製剤、電解質製剤、混合ビタミン製剤、脂肪乳剤などが市販されており、病態などに応じて用時に病院で適宜混合して使用されていた。しかし、病院におけるこのような混注操作は煩雑なうえに、混注操作時の細菌汚染の可能性が高く、不衛生であるという問題があった。そのため、例えば連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する医療用複室容器が開発され、病院で使用されるようになった。
また、静脈注射により患者に投与される薬剤には、予め混合、溶解されると望ましくない経時変化が生じる不安定なものがある。例えば、アミノ酸含有溶液とブドウ糖含有溶液とを同じ室に収納して保存しておくと、いわゆるメイラード反応によって混合液が褐変する。また、脂肪乳剤と電解質溶液とを同じ室に収納して保存しておくと脂肪分が凝集したり、炭酸塩含有溶液とカルシウム塩含有溶液あるいはマグネシウム塩含有溶液とが同じ室に収納され、保存されると、炭酸カルシウムあるいは炭酸マグネシウムの沈殿が生じたりする。
このような問題も薬剤を複数室に分離して保存し、投与直前に薬剤を混合して患者に投与することによって解決することができる。例えば、予め混合されると望ましくない薬剤を、異なる室に収納し、保存できる複数室からなる医療用複室容器が開発されている。このような医療用複室容器を用いた輸液製剤としては、例えば、隔壁で区画された複数の室を有するプラスチック容器の異なる室にアミノ酸および糖液を分離し、収納したアミノトリパ(商品名、株式会社大塚製薬工場製)などが挙げられる。
このような輸液製剤を用いることにより、予め混合されると望ましくない薬剤を互いに異なる室に分離して保存し、投与直前にこれらの薬剤が混合されて患者に投与される。この種の投与に用いられる輸液製剤には、例えば合成樹脂フィルムで形成した容器本体内に薬剤を分配し、収納するための複数の室を形成したものがある(例えば、特許文献1)。上記輸液製剤は、複数の薬剤を互いに隔離して保存でき、使用の際には隔壁を連通して無菌状態で容易に混合・溶解できる利点がある。しかしながら、この連通操作をし忘れて、一方の薬剤のみを患者に投与してしまうというミスが生じることがある。互いに異なる室に分離され保存されている薬剤が適切に混合されて患者に投与される場合には、例えば混合された薬剤含有溶液のカリウムイオン濃度や浸透圧比などが投与に適した範囲に設定されているが、ミスにより一方の液のみが患者に投与されてしまうと、患者が生命の危機に曝される場合がある。その際、例えば従来の輸液製剤では、電解質としてのカリウムイオンを高濃度で含有する薬剤が一室に収納されている場合があり、連通操作のし忘れのミスにより、一室の薬剤(高濃度のカリウムイオン)のみが投与されることになる。カリウムイオン濃度が過度に高いと、患者が高カリウム血症をきたし、最悪の場合には心停止により、死に至る恐れもある。また、1つの室に分配され、収納されている薬剤含有溶液の浸透圧比が過度に大きいか、あるいは小さい場合、室の連通操作をし忘れて混合することなく、その薬剤含有溶液のみを患者に投与してしまうというミスが発生する恐れがある。このような場合、患者に甚大な血管痛を起こさせたり、患者の血液中の赤血球の破壊等が起こったりして、患者が重篤な事態に陥る。そのため、医療現場では上記問題点を解消し、医療過誤による危険性を排除できる医療用複室容器および輸液製剤が求められている。
特開2002−136570号公報
本発明は、医療過誤による危険性を排除でき、安全性に優れている新規な医療用複室容器および輸液製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、薬剤が収納された複数の収納室および各収納室間を仕切る仕切り用封止部を有し、少なくともひとつの前記収納室に排出路を介して連通する排出口を備え、前記仕切り用封止部が、使用に際して前記各収納室を連通させるように開封可能に構成された医療用複室容器であって、
前記排出路に、pH応答性多孔質フィルターが設けられており、
このpH応答性多孔質フィルターは、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の薬剤の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されていることを特徴とする医療用複室容器が、連通前の薬剤を通過させず、連通後の薬剤の混合薬液が通過させることができることを知見し、用時混合のし忘れといった医療過誤による危険性を排除できることを見出した。
また、本発明者らは、上記種々の知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 薬剤を収納する複数の収納室および各収納室間を仕切る仕切り用封止部を有し、少なくともひとつの前記収納室に排出路を介して連通する排出口を備え、前記仕切り用封止部が、使用に際して前記各収納室を連通させるように開封可能に構成された医療用複室容器であって、
前記排出路に、pH応答性多孔質フィルターが設けられており、
このpH応答性多孔質フィルターは、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されていることを特徴とする医療用複室容器、
[2] pH応答性多孔質フィルターが、pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体である前記[1]記載の医療用複室容器、
[3] pH応答性多孔質フィルターが、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物の架橋体と、デプスフィルター、メンブレンフィルターまたは筒状の不織布との複合体である前記[2]記載の医療用複室容器、
[4] pH応答性多孔質フィルターが、塩基性基を有する高分子化合物の架橋体とデプスフィルターとの複合体である前記[2]記載の医療用複室容器、
[5] pH応答性多孔質フィルターが、キトサンの架橋体とデプスフィルターとの複合体である前記[2]記載の医療用複室容器、
[6] 多孔質支持体の構成材料が、セルロース、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフロライド、ポリ四フッ化エチレン、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンまたはステンレスであることを特徴とする前記[2]記載の医療用複室容器、
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の医療用複室容器の複数室の一室にアミノ酸溶液が収納され、他の少なくとも一室に糖溶液が収納されていることを特徴とする輸液製剤、
[8] 排出路を介して排出口に連通する収納室に糖溶液が収納されている前記[7]記載の輸液製剤、
[9] 糖溶液がpH4〜6であり、混合薬液がpH6〜8である前記[8]記載の輸液製剤、および
[10] 多孔質支持体の存在下に、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物と架橋剤とを架橋反応させることを特徴とするpH応答性多孔質フィルターの製造方法、
に関する。
本発明の医療用複室容器は、用時混合のし忘れといった医療過誤による危険性を排除でき、安全性に優れている。より具体的には、薬剤を混合する前に点滴具を連結しても、未混合状態の液剤や混合・溶解が不十分な薬液が排出路から取り出されることを防ぐことができ、そのため、所定の配合に混合・溶解されていない薬液を患者に投与することが確実に防止される。しかも、薬剤を所定の配合に混合・溶解したのちは、薬液を確実に且つ容易に取り出すことができ、患者への投与を保証することができる。
本発明の医療用複室容器は、薬剤を収納する複数の収納室および各収納室間を仕切る仕切り用封止部を有し、少なくともひとつの前記収納室に排出路を介して連通する排出口を備え、前記仕切り用封止部が、使用に際して前記各収納室を連通させるように開封可能に構成された医療用複室容器であって、
前記排出路に、pH応答性多孔質フィルターが設けられており、
このpH応答性多孔質フィルターは、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の薬剤の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されていることを特徴とする。
以下、本発明の主要部である上記pH応答性多孔質フィルターについて説明する。
上記pH応答性多孔質フィルターは、上記排出路に設けられており、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の薬剤の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されている。
上記pH応答性多孔質フィルターの材質としては、pH応答性高分子化合物が挙げられる。上記pH応答性高分子化合物としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のものが挙げられ、例えば、塩基性基および/または酸性基を有するpH応答性高分子化合物が挙げられる。上記塩基性基としては、例えば、アミノ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第4級アンモニウム基などが挙げられ、酸性基としては、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
塩基性基を有する高分子化合物の例としては、ジアルキルアミノアルキルアクリレート(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート)を主モノマーとするポリアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート)を主モノマーとするポリアクリレート、アルキルジアリルアミン(例えば、メチルジアリルアミン)を主モノマーとするポリアクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド(例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を主モノマーとするポリアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリルルアミド(例えば、ジメチルアミノプロピルメタクリルルアミド)を主モノマーとするポリアクリレートなど、少なくとも1種のモノマーが、不飽和第一級アミン、第二級アミンまたは第三級アミンである、不飽和モノマーを主モノマーとするポリマー挙げられるが、これに限定されるものではない。塩基性基を有するその他の適した高分子化合物としては、遊離の第一級アミン基、第二級アミン基または第三級アミン基を放出する適当な試薬の反応によって調製されるポリマー、アジリジン変性ポリマーやポリエチレンイミンなどのアジリジンを主モノマーとするポリマー、アミノ官能性ポリペプチド(例えば、ポリリジン)、ならびにアミノ基を有する多糖類(例えば、キトサンおよび変性キトサン)やタンパク質などの天然の高分子化合物が挙げられる。これらの高分子化合物の組み合わせも使用可能である。
酸性基を有する高分子化合物の例としては、不飽和モノマーを主モノマーとするポリマーであって、その少なくとも1種の不飽和モノマーが不飽和酸であるポリマーや、カルボキシル基変性セルロースなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、2−メチル−2−(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ−1−プロパンスルホン酸などが挙げられる。これらのポリマーの組み合わせも使用可能である。
塩基性基および酸性基を有する高分子化合物の例としては、上記塩基性基を有する高分子化合物の1種または2種以上のモノマーと上記酸性基を有する高分子化合物の1種または2種以上のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
上記pH応答性多孔質フィルターとして上記pH応答性高分子化合物を用いる場合であって、上記pH応答性高分子化合物が多孔質状でない場合には、上記pH応答性高分子化合物は常法に従い多孔質状に成形されてから用いられてよいが、多孔質状でない上記pH応答性高分子化合物を架橋することによって、上記pH応答性高分子化合物をゲル化し、多孔質状にすることができる。いうまでもないが、本発明においては、このような架橋体も上記pH応答性高分子化合物に含まれる。
本発明においては、上記pH応答性高分子化合物が、上記塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物(以下、「官能性高分子化合物」ともいう)の架橋体であるのが好ましい。
上記架橋体は、官能性高分子化合物と、架橋剤とを、常法により、縮合反応や付加反応させることにより製造される。上記架橋剤は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、活性水素基を2個以上含有する化合物などが挙げられ、より具体的には、例えば、ジアルデヒド類(例えばグルタルアルデヒド等)、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、ジイソシアネート類(例えばヘキサメチレンジイソシアネート等)、ジオール、ポリオールなどが挙げられる。また、架橋の程度は、官能性高分子化合物の種類等に応じて適宜選択することができる。
上記架橋体の製造方法をより具体的に説明する。
例えば上記官能性高分子化合物がアミノ基を有している場合、上記官能性高分子化合物の架橋体は、常法に従い、過酸化水素等を用いてグルタルアルデヒド等のジアルデヒド類を酸化し、得られたジカルボン酸と官能性高分子化合物とを脱水縮合させるか、架橋剤としてイソシアネート基を2個以上含有するポリイソシアネート化合物を用いて付加反応させるか、または酸の存在下にジアルデヒド類と脱水縮合させてシッフ塩基を形成させることにより製造される。
上記官能性高分子化合物がカルボン酸基を有している場合、常法に従い、ジオールやポリオールなどの活性水素を2個以上含有する架橋剤を用いて脱水縮合させるか、架橋剤としてポリイソシアネートを用いて付加反応させるか、または遷移金属を含有するイオン架橋剤を用いてイオン架橋させることにより製造される。
上記官能性高分子化合物がアミノ基、およびカルボン酸基、スルホン酸基もしくはリン酸基を有している場合、常法に従い、過酸化水素でグルタルアルデヒド等のジアルデヒド類を酸化分解させ、得られたカルボン酸と官能性高分子化合物とを脱水縮合させるか、ジオールやポリオールなどの活性水素を2個以上含有する架橋剤を用いて脱水縮合させるか、架橋剤としてポリイソシアネートを用いて付加反応させるか、シッフ塩基を形成させて、アミノ基を保護した後、ジオールやポリオールなどの活性水素を2個以上含有する架橋剤を用いて脱水縮合させ、ついで保護基を除去するか、または遷移金属を含有するイオン架橋剤を用いてイオン架橋させることにより製造される。
上記官能性高分子化合物がアミノ基の他にさらに水酸基を有している場合、常法に従い、シッフ塩基を形成させて、アミノ基を保護した後、ジオールやポリオールなどの活性水素を2個以上含有する架橋剤を用いて脱水縮合させ、ついで保護基を除去することにより製造される。
上記官能性高分子化合物がカルボン酸基の他にさらに水酸基を有している場合、常法に従い、活性水素基をジオールやポリオールなどの活性水素を2個以上含有する架橋剤を用いて脱水縮合させるか、架橋剤としてポリイソシアネートを用いて付加反応させるか、または遷移金属を含有するイオン架橋剤を用いてイオン架橋させることにより製造される。
本発明においては、上記官能性高分子化合物の架橋体が、塩基性基または/および酸性基を有する高分子化合物の架橋体であるのが好ましく、塩基性基を有する高分子化合物の架橋体であるのがより好ましく、キトサンの架橋体であるのが最も好ましい。上記キトサンの架橋体は、常法に従い製造され、例えば、酸の存在下、キトサンと、例えばグルタルアルデヒド等のジアルデヒド類などとを縮合させることにより製造される。
上記pH応答性高分子化合物は、その官能基等によってpHに対する膨潤性が異なり、一般的に、酸性基によってアルカリ性(pH7以上)下での膨潤性が付与され、あるいは塩基性基によって酸性(pH7以下)下での膨潤性が付与される。そのため、上記pH応答性高分子化合物の膨潤性は、官能基の種類やその数等によって適宜に設定され得る。また、上記pH応答性高分子化合物の膨潤性を、変性等の公知の手段によって適宜に変化させることができる。
本発明においては、上記pH応答性多孔質フィルターが、上記pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であるのが、pHに対する孔径を簡便に制御でき、工業的有利に本発明の目的を達成できるので好ましい。
上記多孔質支持体は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、デプスフィルター、サーフェスフィルター、メンブレンフィルター、蛇腹状、メッシュ状、筒状あるいは中空糸状の不織布などが挙げられるが、これらの中でも、デプスフィルター、メンブレンフィルターまたは筒状の不織布が好ましく、デプスフィルターがより好ましい。多孔質支持体の構成材料としては、例えば、セルロース、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフロライド、ポリ四フッ化エチレン、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレン、ステンレスなどが挙げられる。
上記複合体は、上記pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であれば特に限定されないが、好ましくは、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物の架橋体と、デプスフィルター、メンブレンフィルターまたは筒状の不織布との複合体であり、より好ましくは、塩基性基を有する高分子化合物の架橋体とデプスフィルターとの複合体であり、最も好ましくは、キトサンの架橋体とデプスフィルターとの複合体である。
上記複合体は、本発明の目的を阻害しない限り、その製造方法などは特に限定されず、公知の手段を用いて製造され得る。上記pH応答性高分子化合物の形成時に、多孔質支持体と一体化して上記複合体を製造してもよいし、上記pH応答性高分子化合物の形成後に、多孔質支持体と一体化して製造してもよい。例えば、上記多孔質支持体の存在下に、上記pH応答性高分子化合物を形成させることにより、上記多孔質支持体と上記pH応答性高分子化合物とを一体化して上記複合体を製造する方法などが挙げられる。好ましい上記複合体の製造方法としては、例えば、多孔質支持体の存在下に、上記官能性高分子化合物と架橋剤とを縮合反応させて、上記複合体を製造する方法が挙げられ、より好ましい上記複合体の製造方法としては、多孔質支持体の存在下に、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物と架橋剤とを縮合させて、上記複合体を製造する方法が挙げられ、最も好ましい上記複合体の製造方法としては、デプスフィルターの存在下に、キトサンと架橋剤とを架橋反応させて、pH応答性高分子化合物を得るとともに、上記複合体を製造する方法などが挙げられる。
この際の反応条件は、架橋剤の種類などにより適宜に設定され得るので、一概にはいえないが、例えば架橋剤としてグルタルアルデヒドを用いた場合、反応温度が通常5〜80℃であり、好ましくは25〜35℃であり、反応時間が通常0.5時間以上、好ましくは1.0時間以上である。上記架橋反応における架橋剤の使用量は、上記高分子化合物に対して、通常0.05〜0.5質量%であり、好ましくは0.1〜0.3質量%である。
上記pH応答性多孔質フィルターは、医療用複室容器の排出路に設置されれば、特に限定されず、設置手段などは公知の手段であってよい。
本発明の医療用複室容器の上記pH応答性多孔質フィルター以外の他の構成は、公知の医療用複室容器の構成を適宜に採用できる。そのため、本発明の医療用複室容器は、上記pH応答性多孔質フィルターを用いて常法に従い製造され得る。
上記医療用複室容器は、前記の背景技術欄で説明したような、合成樹脂フィルムで形成した容器本体内に、弱シール部で互いに区画された複数の収納室を形成した形式のものであるのが、複数の薬剤を無菌状態で容易に混合等できる点で好適である。具体的には、例えば、複数の室が弱シール部により区画され、医療用複室容器の一室を外部より押圧することにより当該室が隣接する他の室と連通する医療用複室容器が、好適な例として挙げられる。また、医療用複室容器を複数の室に区画する隔壁に破断可能な流路閉塞体が設けられている構造のものなども挙げられる。また、本発明の医療用複室容器は収納室内で複数の薬剤が混合等されるものであればよく、例えば、上記弱シール部に変えて着脱可能なクリップを備えたものや、収納室間の連通路を開封可能な封止手段で封止したものなど、仕切り用封止部の種類が異なる他の形式の医療用複室容器であってもよい。
本発明の医療用複室容器の各収納室に収納される薬剤は、少なくとも一種が液剤であればよく、他の薬剤は粉末など固形の薬剤であってもよい。
本発明の医療用複室容器において、複数室が2容器以上に分かれて連結されていてもよく、その場合には、薬剤を収納する複数容器のうち、少なくとも1容器がガラス製容器であってよい。
また、本発明の医療用複室容器において、複数室が1容器に設置されている場合、容器が、例えば薬剤を収納する室が連通可能で、容器の複数室の隔壁を用時開通でき、薬剤を無菌的に混合できるプラスチック製容器であるのが好ましい。
連通可能な複数室を有するプラスチック製容器における各室の形成材料としては、貯蔵する薬剤の安定性上問題のない樹脂であればよく、比較的大容量の室を形成する部分は、柔軟な熱可塑性樹脂、例えば軟質ポリプロピレンやそのコポリマー、ポリエチレンおよび/またはそのコポリマー、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類もしくは軟質塩化ビニル樹脂等、またはそれらのうち適当な樹脂を混合した素材、またはナイロンなど他の素材も含めて前記素材を多層に成型したシートなどが利用可能である。
さらに、1容器に複数室が設置されている場合または2以上の容器に複数室が分かれて設置されている場合のいずれの医療用複室容器においても、上記容器の室に分配され収納されている、例えば薬剤を、変質、酸化等から確実に防止するために、容器を脱酸素剤と共にバリア性外装袋で包装することができる。とりわけ、1容器に複数室が設置されている場合で、例えば容器が有する複数室の隔壁が易剥離シールにより形成されたものを採用した場合には、この容器は、外圧により隔壁が連通しないように易剥離シール部分を二つ折りにした状態(折りたたまれた状態)でバリア性外装袋に封入されるのが好ましい。また、必要に応じて上記した不活性ガス充填包装等を行うこともできる。
バリア性外装袋の材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルム、シート等を使用できる。その具体例としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等、またはこれらの少なくとも1種を含む材質からなるフィルム、シート等が挙げられる。
上記外装袋と容器とのあいだの空間部に封入される脱酸素剤を使用してもよく、そのような脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性炭と水、結晶水を有する化合物の無水物、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用いることができる。本発明においては、これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えば「エージレス」(三菱ガス化学社製)、「モデュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)、「タモツ」(王子化工社製)等が挙げられる。上記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋にいれて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
本発明の輸液製剤は、上記医療用複室容器の各収容室に、それぞれアミノ酸溶液や糖溶液などの薬剤を収容することにより製造される。
前記アミノ酸溶液としては、公知のアミノ酸輸液を用いてよい。例えば、アミノ酸溶液中に含有されるアミノ酸としては、必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。より具体的には、例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシンまたはグリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩等の無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオニンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でもよい。
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されていることが好ましい。
すなわち、L−ロイシン約0.8〜10.0g/L、好ましくは約2.0〜5.0g/L、L−イソロイシン約0〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−バリン約0.3〜8.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−リジン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜4.5g/L、L−スレオニン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−トリプトファン約0.08〜1.5g/L、好ましくは約0.2〜1.0g/L、L−メチオニン約0.2〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、L−フェニルアラニン約0.4〜6.0g/L、好ましくは約1.0〜2.5g/L、L−システイン約0.03〜1.0g/L、好ましくは約0.15〜0.5g/L、L−チロシン約0.02〜1.0g/L、好ましくは約0.05〜0.20g/L、L−アルギニン約0.5〜7.0g/L、好ましくは約1.5〜3.5g/L、L−ヒスチジン約0.3〜4.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アラニン約0.4〜7.0g/L、好ましくは約1.0〜3.0g/L、L−プロリン約0.2〜5.0g/L、好ましくは約0.5〜2.0g/L、L−セリン約0〜3.0g/L、好ましくは約0.5〜1.5g/L、グリシン約0.3〜6.0g/L、好ましくは約0.5〜2.5g/L、L−アスパラギン酸約0〜2.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/L、L−グルタミン酸約0〜3.0g/L、好ましくは約0.1〜1.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
前記アミノ酸輸液のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約6〜8、好ましくは約6.5〜7.5に調整するのが好ましい。
前記糖溶液は、公知のものを用いてよい。かかる糖溶液中に含有される糖としては、従来から各種輸液に慣用されるものでよく、例えばブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示される。その中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースなどの還元糖が好ましく、特に血糖管理などの点で、ブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
前記糖溶液は、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約4〜6、好ましくは約4.5〜5.0に調整されていることが好ましい。
また、本発明の輸液製剤において全ての溶液を混合した溶液中にこれらの糖は、約50〜400g/L、好ましくは約100〜200g/Lとなるように配合するのが好ましい。
さらに、前記糖溶液は、ビタミンBが配合されていてもよい。ビタミンBの配合量は、全ての溶液を混合した溶液中に、0.1〜30mg/Lとなるようにするのが好ましい。
さらにまた、前記糖溶液は、下記する電解質が、下記する濃度で含有されていてもよい。
前記電解質は、公知のものを用いてよい。かかる電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、リンなど無機成分の水溶性塩、例えば塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリセロリン酸塩などが挙げられる。
ナトリウムイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは乳酸ナトリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カリウムイオン供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウムまたは乳酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/L、さらに好ましくは約15〜30mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウムまたは酢酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/L、さらに好ましくは約2〜10mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
リン供給源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはグリセロリン酸カリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/L、さらに好ましくは約3〜10mmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
クロルイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/L、さらに好ましくは約30〜60mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
前記アミノ酸溶液および糖溶液の少なくともいずれかに鉄が配合されてもよい。
配合される鉄の供給源としては、塩化鉄、硫酸鉄などの鉄の無機酸塩、またはグルコン酸鉄、クエン酸鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄などの鉄の有機酸塩が挙げられ、とりわけ塩化鉄(たとえば、塩化第二鉄)が好ましい。また、鉄は、鉄コロイド溶液の形で配合するのが好ましい。鉄コロイド溶液は、公知のものでよい。かかる鉄コロイド溶液は、たとえば、コンドロイチン硫酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、これに塩化第二鉄溶液および水酸化ナトリウム溶液を交互に加え、さらに蒸留水を加えることにより調製できる。
鉄の配合量は、複数のすべての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の鉄濃度として、1〜200μmol/L、好ましくは10〜70μmol/Lである。
また、鉄以外に銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素などの微量金属元素が下記する濃度で配合されていてもよい。これら微量金属元素の配合量は、複数のすべての室を外部からの押圧によって連通させて得られる薬液混合物の銅濃度として0〜40μmol/L、マンガン濃度として0〜10μmol/L、亜鉛濃度として0〜300μmol/L、ヨウ素濃度として0〜5μmol/Lであるのが好ましい。なお、鉄およびヨウ素を配合する場合は、鉄が配合されていない方の糖溶液またはアミノ酸溶液に含有させるのが好ましい。
本発明の輸液製剤において、上記医療用複室容器が有する各収納室への薬剤の充填、収納は、常法に従って行うことができ、例えば不活性ガス雰囲気下で薬剤を各室へ充填後、施栓し、加熱滅菌する方法が挙げられる。ここで、加熱滅菌は、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の公知の方法を採用することができ、必要に応じて二酸化炭素、窒素、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
上記輸液製剤において、薬剤を混合する前に点滴具を上記排出口に連結しても、上記pH応答性多孔質フィルターは、収納室内から排出路に流入する未混合状態の薬剤のpHに対しては薬剤が通過不能な孔径にまで縮小するので、未混合状態の薬剤は排出路から取り出されることがない。一方、薬剤を所定の配合に混合・溶解した後は、排出路に流入する混合薬液のpHが変化しており、この変化したpHに対しては、上記pH応答性多孔質フィルターは該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するので、この混合薬液が排出路から容易に取り出される。
上記pH応答性多孔質フィルターは、排出路に連通している収納室内の薬剤のpHと、混合後の混合薬液のpHとの関係で作動がやや異なる。
即ち、混合等した後の混合薬液のpHが高くなる場合は、上記pH応答性多孔質フィルターは、上記排出路へ流入する液体のpHが設定値よりも低いと孔径が縮小し、上記液体のpHが設定値よりも高いと孔径が拡大するように構成される。
具体的には例えば次のように構成される。上記pH応答性多孔質フィルターは、未混合の薬剤のpH下では、図4(a)や図5(a)で示されるように、薬剤5を通過不能になるまで孔径が縮小し、混合後の薬剤の混合薬液のpH下では、図4(b)や図5(b)で示されるように、薬剤を通過可能になるまで孔径が拡大する。
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
図1は本発明の実施例を示し、図1は輸液製剤の一部破断図である。
図1に示すように、輸液製剤(1)は、容器本体(2)が2枚の合成樹脂製フィルムの周縁部を互いに融着させて形成される。この合成樹脂製フィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂等、種々の合成樹脂を単独で或いは2種以上を組み合わせて採用することができる。
上記容器本体(2)の内部には、弱シール部(3)で互いに区画された2つの収納室(4)が設けられている。図において上側の第1収納室(4a)には第1薬剤(5a)が、下側の第2収納室(4b)には第2薬剤(5b)がそれぞれ収納されている。具体的には、例えば上記第1薬剤(5a)として、pHが7のアミノ酸液が用いられ、第2薬剤(5b)として、pHが5の糖・電解質液が用いられる。
上記両収納室(4a・4b)を互いに区画する弱シール部(3)の融着強度は、容器本体(2)の周縁部(6)の融着強度よりも小さく設定されている。なお、この弱シール部(3)は、容器本体(2)内を複数の収納室に区画できるものであればよく、形状や形成位置はこの実施例のものに限定されない。また、この実施例では容器本体(2)内を2つの収納室(4)に区画しているが、本発明では3つ以上の収納室に区画してあってもよい。
上記容器本体(2)には、図1における上端部に掛吊穴(7)が形成してあり、下端部に排出部(8)が溶着固定してある。この排出部(8)内には排出路(9)が形成されており、この排出路(9)は上端が上記第2収納室(4b)に連通され、下端が排出口(10)に連通され、この排出口(10)がゴム栓(11)で封止してある。
上記排出路(9)には、この排出路(9)へ流入する液体のpHに応じて孔径が開閉するpH応答性多孔質フィルター(12)が設けてある。即ち、図1に示すように、上記排出路(9)にpH応答性多孔質フィルター(12)が設けてある。
上記pH応答性多孔質フィルター(12)は、排出路(9)内へ流入する液体のpHに応じて孔径が開閉するように構成してある。即ち図5(a)に示すように、上記pH応答性多孔質フィルター(12)は、デプスフィルターの存在下に、キトサンとグルタルアルデヒドとを架橋反応させて得られた複合体であり、pHが6〜8のときには孔径が広がり、pHが6以下のときは孔径が縮小するように調整してある。従って、上記排出路(9)へ流入する液体のpHが6以下のときは、pH応答性多孔質フィルター(12)の孔径が閉じる。逆に、排出路(9)へ流入する液体のpHが6〜8のときには、pH応答性多孔質フィルター(12)の孔径が開く。
次に、上記輸液製剤の使用手順等について説明する。
保管中は前記の両収納室(4a・4b)が前記の弱シール部(3)で区画されているので、各収納室(4a・4b)に収納された両薬剤(5a・5b)は互いに混合されることがなく、混合による経時変化が防止される。このとき、上記排出路(9)には第2薬剤(5b)が流入し、この第2薬剤(5b)のpHは6以下であるので、pH応答性多孔質フィルター(12)の孔径は第2薬剤(5b)が通過不能にまで縮小している。
上記輸液製剤(1)を使用する際には、最初に、容器本体(2)を外方から押圧し、両収納室(4a・4b)の少なくとも一方の内圧を高めて上記弱シール部(3)を剥離させる。これにより両収納室(4a・4b)が互いに連通するので、上記第1薬剤(5a)と第2薬剤(5b)とを所定の配合に混合する。両薬剤(5a・5b)を充分に混合すると、例えばpHが7の混合薬液となる。この薬液を患者に投与する際には、輸液製剤(1)を上記掛吊穴(7)で支柱等に吊下げて、上記排出部(8)を下方に位置させる。これにより上記薬液が上記排出路(9)内に流入するが、この薬液のpHは6〜8の範囲内であるので、pH応答性多孔質フィルター(12)の孔径は、図5(b)に示すように、薬液を通過可能になるまで拡大する。薬液はpH応答性多孔質フィルター(12)を通過しているので、点滴具先端の注射針でゴム栓(11)を貫通させることにより、薬液が排出路(9)を介して取り出され、患者に投与される。
上記の使用の際に、誤って両薬剤(5a・5b)を混合せずに輸液製剤(1)を吊下げてゴム栓(11)に刺栓針を刺通すると、上記排出路(9)内には第2薬剤(5b)が流入するので、上記pH応答性多孔質フィルター(12)の孔径は第2薬剤(5b)が通過不能になるまで縮小する。この結果、未混合状態の第2薬剤(5b)が取り出されることがない。
なお、参考までに、pH応答性多孔質フィルターがデプスフィルター状ではない例を、図2および図3に示す。図2は図1の排出部(8)の他の態様を示し、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がメンブレンフィルターである場合の例を示す。図3は、図1の排出部(8)の他の態様を示し、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体が筒状の不織布である場合の例を示す。図2および図3のその他の構成は上記実施例と同様であるので、説明を省略する。
なお、上記実施例では、いずれも排出路に連通する収納室へ液剤を収納したが、本発明ではこの収納室に粉末などの固形剤を収納したものであってもよく、さらに排出路は必ずしも収納室と直接連通している必要はなく、例えば弱シール部で遮断しておいて、使用の際にこの弱シール部を剥離させることで連通するように構成してもよい。
また、上記実施例ではそれぞれ1個のpH応答性多孔質フィルターを用いる場合について説明したが、本発明では2種類のpH応答性多孔質フィルターを組み合わせて用いてもよい。
(試験例)
カチオン性高分子化合物(和光純薬工業、製品名「キトサン100」)2質量部に1mol/L塩酸を加え、全量を100質量部とした。この液125質量部に架橋剤(和光純薬工業、20%グルタルアルデヒド溶液)1部を加え、2%キトサン溶液とした。この液に支持体(ミリポア、プレフィルターAP)を浸漬し、充分に液をなじませた後取り出し、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に1時間静置した。その後、支持体を取り出し、80℃で30分間加熱した後、室温で乾燥させた。これを0.1mol/L塩酸及び水で洗浄液のpHが8以下となるまで充分洗浄した後、室温で乾燥させて検体とした。
検体をホルダーに装着し、糖・電解質液(pH約5、表1)を接触させると、糖・電解質液は検体を、通常の輸液投与時の静水圧では通過しなかった。次に検体を、糖・電解質液350質量部にアミノ酸・電解質液(表2)150質量部を添加した混合液(pH約7、表3)に接触させると、混合液は検体を通過し、その流速は20ml/分であった。
Figure 0004420766
Figure 0004420766
Figure 0004420766
本発明により、用時混合のし忘れといった医療過誤による危険性を排除できる医療用複室容器および輸液製剤を提供できる。
本発明の一態様を示す図であり、輸液製剤の一部破断図である。 図1の排出部の他の態様を示し、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がメンブレンフィルターである場合の例を示す。 図1の排出部の他の態様を示し、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体が筒状の不織布である場合の例を示す。 本発明に用いられるpH応答性多孔質フィルターのメカニズムを説明する図であり、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がメンブレンフィルターである場合の例を示す。 本発明に用いられるpH応答性多孔質フィルターのメカニズムを説明する図であり、pH応答性多孔質フィルターがpH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がデプスフィルターである場合の例を示す。
符号の説明
1 輸液製剤
2 容器本体
3 仕切り用封止部(弱シール部)
4 収納室
4a 第一収納室
4b 第二収納室
5 薬剤
5a 第一薬剤
5b 第二薬剤
6 周縁部
7 掛吊穴
8 排出部
9 排出路
10 排出口
11 ゴム栓
12 pH応答性多孔質フィルター
12a pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がデプスフィルターであるpH応答性多孔質フィルター
12b pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体がメンブレンフィルターであるpH応答性多孔質フィルター
12c pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体であって、多孔質支持体が筒状の不織布であるpH応答性多孔質フィルター

Claims (11)

  1. 薬剤を収納する複数の収納室および各収納室間を仕切る仕切り用封止部を有し、少なくともひとつの前記収納室に排出路を介して連通する排出口を備え、前記仕切り用封止部が、使用に際して前記各収納室を連通させるように開封可能に構成された医療用複室容器であって、前記排出路に、pH応答性多孔質フィルターが設けられており、このpH応答性多孔質フィルターは、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されていることを特徴とする医療用複室容器。
  2. pH応答性多孔質フィルターが、pH応答性高分子化合物と多孔質支持体との複合体である請求項1記載の医療用複室容器。
  3. pH応答性多孔質フィルターが、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物の架橋体と、デプスフィルター、メンブレンフィルターまたは筒状の不織布との複合体である請求項2記載の医療用複室容器。
  4. pH応答性多孔質フィルターが、塩基性基を有する高分子化合物の架橋体とデプスフィルターとの複合体である請求項2記載の医療用複室容器。
  5. pH応答性多孔質フィルターが、キトサンの架橋体とデプスフィルターとの複合体である請求項2記載の医療用複室容器。
  6. 多孔質支持体の構成材料が、セルロース、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフロライド、ポリ四フッ化エチレン、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンまたはステンレスであることを特徴とする請求項2記載の医療用複室容器。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の医療用複室容器の複数室の一室にアミノ酸溶液が収納され、他の少なくとも一室に糖溶液が収納されていることを特徴とする輸液製剤。
  8. 排出路を介して排出口に連通する収納室に糖溶液が収納されている請求項7記載の輸液製剤。
  9. 糖溶液がpH4〜6であり、混合薬液がpH6〜8である請求項8記載の輸液製剤。
  10. 多孔質支持体の存在下に、塩基性基および/または酸性基を有する高分子化合物と架橋剤とを縮合させてpH応答性多孔質フィルターを製造する工程、該pH応答性多孔質フィルターを医療用複室容器の排出路に設置する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの医療用複室容器の製造方法。
  11. 薬剤を収納する複数の収納室および各収納室間を仕切る仕切り用封止部を有し、少なくともひとつの前記収納室に排出路を介して連通する排出口を備え、前記仕切り用封止部が、使用に際して前記各収納室を連通させるように開封可能に構成された医療用複室容器用排出口部品であって、前記排出路に、pH応答性多孔質フィルターが設けられており、このpH応答性多孔質フィルターは、連通前の薬剤のpHに対しては、該薬剤が通過不能な孔径にまで縮小し、連通後の混合薬液のpHに対しては、該混合薬液が通過可能な孔径にまで拡大するように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの医療用複室容器用排出口部品
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