JP4419667B2 - アキュムレーターブラダ用ゴム組成物 - Google Patents

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本発明は、アキュムレーターブラダ用ゴム組成物に関するものである。さらに詳しくは、耐塩素水性に優れ、水道水用途に好適に用いられるアキュムレーターブラダ用ゴム組成物に関するものである。
近年の環境・水質悪化への対策の結果、水道水中の残留塩素濃度が増加したことにより、ブラダやパッキンが短期間で軟化により劣化し、これらの表面から黒い粉が流出することによる黒水が発生している。この現象は、残留塩素濃度上昇と生活向上に伴う温水使用機会の増加との相乗効果によるものでもある。
アキュムレーターブラダは、アキュムレーターに配管されて用いられ、特に水道水(飲料水)用途に用いられるため、耐塩素水性の悪さや黒水の発生は、各種の不具合を誘発させ、その機能を果たさなくなる。従って、アキュムレーターブラダは、従来の耐塩素水性のレベルでは対応しきれないのが現状である。
特公平8−19304号公報 特開平9−317701号公報
水道水中には、塩素(Cl2)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)などの塩素系物質が含まれるため、アキュムレーターブラダ材としては、これらに対して安定なゴム組成物が求められる。特に、塩素系殺菌剤を含む上水道に接して用いられる機器には、耐塩素性に優れるゴム組成物が求められる。
さらに、アキュムレーターブラダは、伸長・屈曲稼動によりゴム同士のこすれが発生するため、塩素系物質によって劣化が促進されたゴム加硫物は剥がれ落ち、あるいは分解され、そこに配合されたカーボン分が脱落し、黒水となる。
本発明の目的は、耐塩素水性に優れ、かつ伸長・屈曲稼働によっても黒水を発生せず、従って水道水用途に好適に用いられるアキュムレーターブラダとして有効に用いられるゴム組成物を提供することにある。
かかる本発明の目的は、塩素含有量が20〜50重量%の塩素化ポリエチレン100重量部当り、フェノールアルキルスルフォン酸エステル1〜25重量部を配合してなるアキュムレーターブラダ用ゴム組成物によって達成され、好ましくはさらに脂肪酸油25重量部以下がそこに配合されて用いられる。
本発明のアキュムレーターブラダ用ゴム組成物から加硫成形されたアキュムレーターブラダは、耐塩素水性にすぐれていると共に、耐疲労性、耐こすれ摩耗性にも優れているので、残留塩素濃度が高く、また高温状態における使用にあっても黒水を発生しにくいといった特徴を有するので、水道水用途に好適に用いることができる。
ブラダ成形用の主成分として用いられる塩素化ポリエチレンは、高密度ポリエチレンの粉末または粒子を水性けん濁液中で塩素化する方法あるいは塩素化反応に不活性な有機溶媒中に溶解させた高密度ポリエチレンを塩素化する方法等によって製造され、一般にはその塩素含有量が約20〜50重量%の塩素化ポリエチレン、好ましくは約35〜45重量%の非晶性塩素化ポリエチレンが用いられる。実際には、このような塩素含有量を有する市販品、例えば東ソー製品CN-5020(Cl:40%)をそのまま用いることができる。
このような塩素化ポリエチレンは、塩素化ブチルゴムと同様にポリマー中の塩素含有率が高いほど塩素に対して耐性を有し、その一方で塩素化ブチルゴムの如くポリマー中に塩素のアタックを受けやすいイソブチレン構造のような不飽和結合を有してはおらず、また耐鉱物油性、耐水性に優れ、熱老化による硬度変化も小さいので、ブラダ成形用の材料として適しているといえる。ただし、50重量%をこえる塩素含有率のものは、塩素をポリマー中に保持することが難しく、塩素が一部でも脱離した場合には連鎖して脱離が進むため、安定性の点で好ましくない。
フェノール系アルキルスルフォン酸エステルは、一般式 R-SO2-O-Ph(ここで、Rは炭素数1〜21のアルキル基である。)で表わされ、具体的にはブチルフェニルスルフォン酸エステル、ノニルフェニルスルフォン酸エステル、ドデシルフェニルスルフォン酸エステル、オクタデシルフェニルスルフォン酸エステルなどが挙げられる。これは加工性を良好に保つために用いられ、実際には、例えば独食品衛生法に合格している市販品であるバイエル社製品mesamollなどをそのまま用いることができる。
以上の成分に加えて、フェノール系アルキルスルフォン酸エステル以外に、脂肪酸油(例えば、日清製油製品A304LR)、植物油、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの他の軟化剤が1〜25重量部、好ましくは1〜15重量部の割合で添加されて用いられる。これらは、フェノール系アルキルスルフォン酸エステルと併用した場合には、屈曲亀裂成長性が向上し、さらに高い加工性を得ることができるようになる。
これらの他、補強剤としてカーボンブラックを配合することもできる。その際カーボンブラックの粒径が小さ過ぎたり、pHが酸性側であると加工性が損なわれるため、好ましくは粒径が150nm以上と比較的大きく、かつアルカリ性を呈するサーマル系に代表されるMTカーボンブラックなどが、塩素化ポリエチレン100重量部当り1〜60重量部、好ましくは5〜40重量部の割合で用いられる。
加硫剤としては、有機過酸化物架橋剤、トリアジン系−アミン塩併用加硫剤などが挙げられるが、好ましくは有機過酸化物架橋剤が用いられる。有機過酸化物架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等が挙げられ、これらは市販品、例えば日本油脂製品パークミルDをそのまま用いることができる。有機過酸化物架橋に際してはさらに、トリアリルイソシアヌレート(例えば、日本化成製品TAIC)等に代表される多官能性不飽和化合物共架橋剤を添加することにより、加工性、耐熱性向上が図られるようになる。また、トリアジン系架橋剤としては、1,3,5-トリメルカプトトリアジン(例えば、大内新興化学工業製品ノクセラーTCA)等が挙げられ、これと併用されるアミン塩としてはジシクロヘキシルアミン、2-メルカプトベンゾチアジルスルフェンアミド(例えば、ダイソー製品M181)等が挙げられる。
ブラダの加硫成形に用いられる塩素化ポリエチレン組成物中には、以上の各必須成分以外に、さらに各種の受酸剤、充填剤、カーボンブラック以外の補強剤、加工助剤、顔料、難燃剤等が必要に応じて適宜配合される。受酸剤としては、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどが挙げられ、好ましくは塩素系物質による劣化の遅延効果の観点からハイドロタルサイトが用いられる。
組成物の調製は、例えば一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサ、ニーダ、高剪断型ミキサ等の混練機を用いて、加硫剤、加硫助剤以外の成分を混練した後、さらに加硫剤、加硫助剤などを添加し、混練りすることによって行われる。調製された組成物の加硫は、一般に約100〜250℃の温度に約0.5〜120分間程度加熱しながら、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などによって行われる。また、必要に応じて、約100〜200℃で約0.5〜20時間程度の二次加硫も行われる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1〜6、比較例1〜3
表1
実施例 比較例
1 2 3 4 5 6 1 2 3
塩素化ポリエチレン(CN-5020) 100 100 100 100 100 100 100 100 100
フェノール系アルキル 2 3 5 20 2 3 30
スルフォン酸エステル(mesamoll)
脂肪酸油(A304LR) 3 2 3 2 5
ジクミルパーオキサイド(パークミルD) 3 3 3 3 3 3 3
トリアリルイソシアヌレート(TAIC) 3 3 3 3 3 3 3
1,3,5-トリメルカプトトリアジン 1.5 1.5
(ノクセラーTCA)
2-メルカプトベンゾチアジル 2.5 2.5
スルフェンアミド(M181)
MTカーボンブラック 30 30 30 30 30 30 30 30 30
(HUBER社製品Thermax N990:粒径450〜556nm)
ハイドロタルサイト(KW2100) 5 5 5 5 5 5 5 5 5
シラン系カップリング剤 1 1 1 1 1 1 1 1 1
(日本ユニカー製品A172)
以上の各配合成分をモリヤマ製ニーダで混練し、未加硫生地サンプルを得た後、圧縮成形機を用いて、180〜220℃、4〜20分間の条件下で架橋を行い、厚さ2mmのテストシートを成形し、加工性および加硫後表面状態の評価を行った。その後、100〜175℃、0.5〜15時間の二次加硫を実施し、得られた加硫物について耐塩素水性評価および屈曲亀裂発生試験を行った。
加工性:圧縮成形後の金型表面の状態を目視により観察し、問題がないものを○、若干の金型粘着または型汚染がみられるものを△、金型粘着または型汚染がみられるものを×として評価
加硫後表面状態:圧縮成形後のテストシート表面の状態を目視により観察し、問題がないものを○、若干エアが入っているものを△、発砲しているものを×として評価
耐塩素水性:JIS K6258準拠
次亜塩素酸水溶液(関東科学試薬;原液濃度60000ppm)を200ppmに希釈した溶液中に、体積変化率測定用ダンベル形状に打ち抜いたテストピースを浸し、70℃、70時間浸せきした後、硬さ変化、体積変化率(%)および表面外観を以下の基準により評価
硬さ変化(IRHD):±5以内のものを◎、±5〜10のものを○、±10〜15のものを△、これら以外のものを×とした
体積変化率:±10(%)以内のものを◎、±10〜15(%)のものを○、±15〜25(%)のものを△、これら以外のものを×とした
表面外観:成形品を目視により観察し、問題がないものを○、若干のべたつきおよび表面の荒れがみられるものを△、べたつきおよび表面の荒れがみられるものを×とした
屈曲亀裂発生試験:ASTM D-1434準拠(25℃、5Hz)
60万回以上の屈曲においても亀裂が発生せず、アキュムレーターブラダ材として問題がないものを○、10〜60万回の屈曲において亀裂が発生するものを△、10万回以下で亀裂が発生してしまいアキュムレーターブラダ材として問題があるものを×、デマッチャテストピース成形不可のものを−として評価
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表2に示される。
表2
実施例 比較例
評価項目
加工性 ○ ○〜△ ○ △ ○ ○ △ × ×
加硫後表面状態 ○ △ ○ △ ○ ○ △〜× × ×
耐NaClO水性
硬さ変化 ○ ○ ○ ○ △ △ ○ − −
体積変化率 ○ ○ ○ ○ △ △ ○ − −
試験後液外観 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ − −
屈曲亀裂成長試験 ○ ○ △ △ △ △ ○ − −
これらの結果より、次のようなことがいえる。
(1) 各実施例で用いられた組成物、特に実施例1で用いられた組成物は、加工性、耐塩素水性および屈曲稼働によっても劣化がみられず、水道用アキュムレーターブラダとしてバランスのよい性能を有している。
(2) 軟化剤として、フェノール系アルキルスルフォン酸エステルを用いない場合には、耐塩素水性および屈曲亀裂成長試験は良好であるものの、加工性および加硫後表面状態に劣る(比較例1)。
(3) 軟化剤を配合しない場合およびフェノール系アルキルスルフォン酸エステルを多量に配合した場合には、混練時に発泡してしまい、加硫成形ができなかった(比較例2、3)。

Claims (6)

  1. 塩素含有量が20〜50重量%の塩素化ポリエチレン100重量部当り、フェノールアルキルスルフォン酸エステル1〜25重量部を配合してなるアキュムレーターブラダ用ゴム組成物。
  2. さらに脂肪酸油1〜25重量部を配合してなる請求項1記載のアキュムレーターブラダ用ゴム組成物。
  3. 粒径150nm以上のカーボンブラック1〜60重量部をさらに配合した請求項1または2記載のアキュムレーターブラダ用ゴム組成物。
  4. 加硫剤として有機過酸化物が用いられる請求項1、2または3記載のアキュムレーターブラダ用ゴム組成物。
  5. 請求項1、2、3または4記載のアキュムレーターブラダ用ゴム組成物から加硫成形されたアキュムレーターブラダ。
  6. 水道水用途に用いられる請求項5記載のアキュムレーターブラダ。
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