JP4418041B2 - 磁気センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気インピーダンス効果素子(以下、MI素子と略称する)を使用した磁気センサに係り、特に第1のMI素子と第2のMI素子を互いに平行に配置して、その第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれバイアス磁界を印加する第1の励磁コイルと第2の励磁コイルを備えた磁気センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気インピーダンス効果(以下、MI効果と略称する)は、高透磁率を有する磁性体に高周波電流を流した際の表皮効果により、その磁性体のインピーダンスが外部磁界によって変化する現象である。
【0003】
図3はこのMI効果を利用したMI素子の原理図で、例えばアモルファスワイヤなどからなる高透磁率の線状磁性体100に励磁コイル101を巻回して直列に接続し、これにパルス発振器102から発生したパルス列電流を流す。すると線状磁性体100の両端部に接続されている端子103,103間のパルス電圧は外部磁界Hexによって変化するから、前記電圧を測定することにより外部磁界Hexの変化を検出することができ、この原理を例えば磁気センサなどに適用できる。
【0004】
ところで線状磁性体100を用いるとMI効果は一般に外部磁界Hexに対して対称の特性を有するから、磁気センサなどに適用する場合には直流バイアス磁界を印加する必要があり、そのために励磁コイル101が用いられる。この励磁コイル101に流すコイル電流が線状磁性体100に流すワイヤ電流に対して左回りの場合と右回りの場合とでは互いに非対称のMI効果として現れて(図4参照)、磁気センサへの適用が可能となる。
【0005】
なお図4は非対称MI素子を説明するための図で、外部磁界とワイヤ両端パルス電圧との関係を示す特性図であって、図中の曲線は線状磁性体100に流すワイヤ電流に対して励磁コイル101に流すコイル電流を左回りにした場合と右回りにした場合の特性曲線である。
【0006】
図5は、従来の非対称MI素子の駆動回路図である。同図に示すように第1の線状磁性体100aと第2の線状磁性体100bが互いに平行に配置され、第1の線状磁性体100aに対して直流バイアス磁界付加用の第1の励磁コイル101aが巻回され、第2の線状磁性体100bに対して第2の励磁コイル101bが巻回されている。第1の励磁コイル101aと第2の励磁コイル101bに流すコイル電流の方向は、線状磁性体100に流すワイヤ電流に対して一方が左回り、他方が右回りになるように、図に示すようにコイルの巻き方が互いに逆になっている。
【0007】
図中の105はクロック発生器、106はクロック発生器105からのクロック信号に基づいて前記第1の線状磁性体100aと第2の線状磁性体100bに対してそれぞれパルス電流を流す素子駆動回路、107は第1の線状磁性体100aと第2の線状磁性体100bのそれぞれの端子出力をオペアンプ108により差動増幅して外部磁界Hexに対して線形な出力を得るための検出回路である。
【0008】
同図に示すように従来の駆動回路は、励磁コイル101a,101bを駆動するコイル駆動回路がクロック発生器105ならびに素子駆動回路106とは別個に独立して設けられ、常に励磁コイル101a,101bに通電して励磁状態を維持していた。
【0009】
なおこれらの関連技術として、例えば応用磁気学会誌Vol.21,No.4−2,1997「アモルファスワイヤの非対称磁気−インピーダンス効果」、特開平7−181239号公報、特開平7−248365号公報などがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの従来の駆動回路は、MI素子(第1の線状磁性体100aと第2の線状磁性体100b)にバイアス磁界を印加するための第1の励磁コイル101aと第2の励磁コイル101bに常に電流を流していたため、消費電力が大きく、ランニングコストが高くつくという欠点を有していた。
【0011】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、消費電力が少なく、ランニングコストの低い磁気センサを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、互いに平行に配置された例えばアモルファスワイヤなどの線状磁性体からなる第1のMI素子と第2のMI素子と、その第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれバイアス磁界を印加する第1の励磁コイルと第2の励磁コイルと、前記第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれパルス電流を供給する第1の素子駆動回路と第2の素子駆動回路と、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルにそれぞれ電流を供給する例えばスイッチング素子を有する第1のコイル駆動回路と第2のコイル駆動回路と、前記第1のMI素子と第2のMI素子のそれぞれの両端パルス電圧を検出する例えばオペアンプなどを有する検出回路と、クロック信号を発生するクロック発生器を備えている。
【0013】
そして前記第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれ供給されるパルス電流と、前記前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルにそれぞれ供給される電流が、前記クロック発生器からのクロック信号に基づいて同期して断続的に通電されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は前述のような構成になっており、第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれパルス電流を供給する度毎に、第1のコイル駆動回路と第2のコイル駆動回路による第1の励磁コイルと第2の励磁コイルへの電流の供給をオンオフするように構成されているため、消費電力が少なくなり、ランニングコストの低減が図れる。
【0015】
次に本発明の実施の形態を図とともに説明する。図1は実施の形態にMI素子の駆動回路図、図2はその駆動回路のタイミングチャートである。
【0016】
図1に示すように第1の線状磁性体1aと第2の線状磁性体1bが互いに平行にかつ一体に配置され、この線状磁性体1としては例えばFe−Co−Si−B系の合金組成からなる零磁歪アモルファスワイヤが好適である。
【0017】
前記第1の線状磁性体1aに対して直流バイアス磁界印加用の第1の励磁コイル2aが数十ターン巻回され、第2の線状磁性体1bに対して第2の励磁コイル2bが同様に数十ターン巻回されている。第1の励磁コイル2aと第2の励磁コイル2bに流すコイル電流の方向は、線状磁性体1a,1bに流すワイヤ電流に対して一方が左回り、他方が右回りになるように構成されている。
【0018】
図中の3はクロック発生器、4は分周器、5はアンドゲート、6aはパルス列電流を前記第1の線状磁性体1aへ流す第1の素子駆動回路、6bはパルス列電流を前記第2の線状磁性体1bへ流す第2の素子駆動回路である。
【0019】
この素子駆動回路6は電流値が10mA以上に設定された電流出力型のもので、その具体的手段として素子駆動回路6はデジタル回路のゲートに少なくとも線状磁性体1のインピーダンスの10倍以上の抵抗Rを接続している。このように素子駆動回路6を電流出力型にした理由は、MI素子のインピーダンスが数Ωしかなく、通常の電圧出力型ではMI素子の駆動が困難なためである。
【0020】
7aは前記第1の励磁コイル2aへの通電をオンオフ制御するスイッチング素子を備えた第1のコイル駆動回路、7bは前記第2の励磁コイル2bへの通電をオンオフ制御するスイッチング素子を備えた第2のコイル駆動回路で、両方のコイル駆動回路7a,7bは前記分周器4の出力端に接続されている。8は第1の線状磁性体1aと第2の線状磁性体1bのそれぞれの両端パルス電圧をオペアンプ9により差動増幅して、外部磁界Hexに対して線形な出力を得るための検出回路である。
【0021】
図2は、この非対称MI素子駆動回路図のタイミングチャートである。図中のCKは前記クロック発生器3によって発生されるクロックパルス波形、Qは分周器4の出力波形、ANDはアンドゲート5の出力波形、微分は素子駆動回路6中のコンデンサCと抵抗Rによる微分波形、駆動パルスは素子駆動回路6により線状磁性体1に供給される駆動パルス波形、iはコイル駆動回路7により励磁コイルへ流れるコイル電流波形である。
【0022】
図1に示されているように素子駆動回路6とコイル駆動回路7は、同一のクロック発生器3から供給されるクロック信号に基づいて駆動される回路構成になっている。そして図2に示されているように、コイル駆動回路7は常時励磁コイル2へ通電するのではなく、出力されるMI素子駆動用の駆動パルスに対応して励磁コイル2へ断続的に通電するようにオンオフ制御されている。なお、励磁コイル2への通電が開始されて所定の遅れ時間ΔTをもって駆動パルスが線状磁性体1(MI素子)に供給される。この遅れ時間ΔTは10nsから100nsの間が適当で、この遅れ時間ΔTは各素子駆動回路6a,6bのコンデンサCと抵抗Rの時定数CRによて個別に調整可能である。
【0023】
励磁コイル2に電流を流すと図2のiのように電流波形が徐々に立ち上がり、一定の磁場を発生するまでに若干時間がかかる。そのため前述の遅れ時間ΔTが無いかあるいは短かすぎると、検出回路8は本来要求されているバアイス磁界強度に達しない時の値を含み、そのために検出精度が低下する。これを回避するため本実施の形態では、所定の遅れ時間ΔTを設定し、励磁コイル2によるバアイス磁界強度が一定になった時点でMI素子駆動用の駆動パルスを供給する構成になっている。
【0024】
本発明のMI素子駆動回路は、例えば磁界の強さ、向き、分布などを検出、測定する磁気センサや磁気方位センサなどの駆動回路に適用することができる。
【0025】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明は前述のような構成になっており、第1のMI素子と第2のMI素子にそれぞれ供給されるパルス電流と、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルにそれぞれ供給される電流が、断続的に通電されるため、消費電力が少なく、ランニングコストの低減が図れる。
【0026】
請求項2〜7記載の本発明は前述のような構成になっており、所定のバイアス磁界発生後に素子駆動パルスが印加されるので、測定精度の向上が図れ、信頼性の高い磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気インピーダンス効果素子の駆動回路図である。
【図2】その駆動回路のタイミングチャートである。
【図3】磁気インピーダンス効果素子の原理図である。
【図4】非対称磁気インピーダンス効果素子を説明するため外部磁界とワイヤ両端パルス電圧との関係を示す特性図である。
【図5】従来の磁気インピーダンス効果素子の駆動回路図である。
【符号の説明】
1a 第1の線状磁性体
1b 第2の線状磁性体
2a 第1の励磁コイル
2b 第2の励磁コイル
3 クロック発生器
4 分周器
5 アンドゲート
6a 第1の素子駆動回路
6b 第2の素子駆動回路
7a 第1のコイル駆動回路
7b 第2のコイル駆動回路
8 検出回路
9 オペアンプ
ΔT 遅れ時間
C コンデンサ
R 抵抗

Claims (9)

  1. 互いに平行に配置された第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子と、
    その第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子にそれぞれバイアス磁界を印加する第1の励磁コイルと第2の励磁コイルと、
    前記第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子にそれぞれパルス電流を供給する第1の素子駆動回路と第2の素子駆動回路と、
    前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルにそれぞれ電流を供給する第1のコイル駆動回路と第2のコイル駆動回路と、
    前記第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子のそれぞれの両端パルス電圧を検出する検出回路と、
    クロック信号を発生するクロック発生器を備え、
    前記第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子にそれぞれ供給されるパルス電流と、前記前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルにそれぞれ供給される電流が、前記クロック発生器からのクロック信号に基づいて同期して断続的に通電されるように構成されていることを特徴とする磁気センサ
  2. 請求項1記載において、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルへの電流供給を開始してから所定の遅れ時間をもって前記第1の磁気インピーダンス効果素子と第2の磁気インピーダンス効果素子へのパルス電流の供給を開始するように遅延手段が設けられていることを特徴とする磁気センサ
  3. 請求項2記載において、前記遅延手段が前記第1の素子駆動回路と第2の素子駆動回路にそれぞれ設けられ、個別に遅れ時間が調整可能になっていることを特徴とする磁気センサ
  4. 請求項3記載において、前記遅延手段が前記素子駆動回路のコンデンサと抵抗で構成されていることを特徴とする磁気センサ
  5. 請求項2ないし4のいずれか1項記載において、前記第1ならびに第2の素子駆動回路と前記第1ならびに第2のコイル駆動回路が同一のクロック発生器から供給されるクロック信号に基づいて駆動され、前記遅れ時間が調整可能になっていることを特徴とする磁気センサ
  6. 請求項2ないし5のいずれか1項記載において、前記遅れ時間が、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルへの電流供給を開始してからバイアス磁界強度がほぼ一定になるまでの時間であることを特徴とする磁気センサ
  7. 請求項6記載において、前記遅れ時間が10nsから100nsの範囲であることを特徴とする磁気センサ
  8. 請求項1記載において、前記第1ならびに第2の素子駆動回路の出力が電流出力型であることを特徴とする磁気センサ
  9. 請求項1記載において、前記第1ならびに第2の磁気インピーダンス効果素子がともにアモルファスワイヤであることを特徴とする磁気センサ
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