JP4417046B2 - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電着塗装後、塗膜焼付け時のタレやワキを低減し、さらに塗膜面の耐油ハジキ性を改善することにより、優秀な塗膜外観を呈することのできるカチオン電着塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カチオン電着塗装は、一般にカチオン性樹脂および硬化剤を含むバインダー成分を、有機酸等の中和剤を含む水性媒体中に分散させてなるカチオン電着塗料組成物中に、被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる。塗装の過程において電極間に電圧を印加すると、電気化学反応により陰極(被塗物)表面で電着塗膜が析出する。こうして形成された電着塗膜にはカチオン性樹脂とともに硬化剤が含まれるので、電着塗装終了後、当該塗膜を焼き付けることによって、塗膜が硬化し、所望の硬化塗膜が形成される。カチオン電着塗料に使用されるカチオン性樹脂としては、耐食性の観点から、一般的にアミン変性エポキシ樹脂が使用されている。
【0003】
電着塗装は、一般的に次のような工程で行なわれる。先ず、防錆油や鉄粉が付着した被塗物を湯洗、脱脂、化成処理後、電着塗装により被塗物上にウエット塗膜を形成させる。次に、このウエット塗膜付き被塗物を水洗、水切りし、焼付硬化させて硬化塗膜を形成する。しかし、被塗物の中には形状が複雑なもの、あるいは鋼板同士の合わせ目が多いものといった均一な塗膜を得にくいものがある。このような被塗物は脱脂が不十分であった場合、塗膜の焼付硬化時に鋼板の合わせ目のすき間に入っていた防錆油が突沸し、塗膜上に飛散して油ハジキ(クレータリング)という不具合を発生させる。一方、電着塗装後の水洗や水切り等が不十分な場合には、塗料成分が合わせ部の隙間に残り、焼付け硬化時に熱膨張し、塗膜上に流れ出してタレ(塗膜表面に線状あるいは波状の跡ができる)やワキ(塗膜表面に針で刺したような小さな穴や突起ができる)の不具合が発生する。このような不具合が被塗物外板部の塗膜面に発生した場合、修正のための工程が必要となる。
【0004】
従来は、かかる不具合を解消する対策として油ハジキやワキに対しては焼付け時の塗膜粘性をあげるために、塗料中の顔料含有量を増したり粘度調節剤(例えば、特許文献1参照)を配合し、タレに対しては塗料中の有機酸の濃度を上げたりして対応してきた。しかし、これらの対応手段はいずれも硬化塗膜の外観を低下させたり、亜鉛メッキ鋼鈑上でのガスピンホール性を低下させたり(例えば、非特許文献1参照)、電着塗料の析出性を低下させ、つきまわり性能が低下したりする(例えば、特許文献2参照)要因となっていた。
【0005】
【特許文献1】
特公平2−55466号公報
【特許文献2】
特開2002−60680号公報
【非特許文献1】
日本ペイント株式会社著「塗料の性格と機能」日本塗料新聞社出版、p.491−492
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、粘度調節剤の添加や有機酸の濃度上昇といった、塗膜外観や電着塗料の析出性を低下させる組成変更を行なうことなく、塗膜焼付け時のタレやワキを低減し、塗膜面の耐油ハジキ性を改善して優秀な塗膜外観を呈することのできるカチオン電着塗料組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) アミン変性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネートおよび顔料分散ペーストを含むカチオン電着塗料組成物であって、該ブロックイソシアネートは、芳香族系ブロックイソシアネートを70〜90質量%含むものであって、この芳香族系ブロックイソシアネートのブロック剤は炭素数が4〜10のエチレングリコールエーテル系化合物であり、該顔料分散ペーストは、顔料を含有し、該顔料は吸油量が60〜100ml/100gである体質顔料を該顔料中に40〜50質量%含み、かつ、該顔料分散ペーストの固形分濃度が55〜58質量%であり、該カチオン電着塗料組成物中の亜鉛イオン濃度は、450〜500ppmのものであることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【0008】
(2) 前記アミン変性エポキシ樹脂と前記ブロックイソシアネートとの固形分質量比が90/10〜50/50であることを特徴とする(1)記載のカチオン電着塗料組成物。
【0009】
(3) 前記顔料の総量が前記カチオン電着塗料組成物中の全固形分に対し10〜30質量%であることを特徴とする(1)又は(2)記載のカチオン電着塗料組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[カチオン電着塗料組成物の組成]
<アミン変性エポキシ樹脂>
本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれるアミン変性エポキシ樹脂は、原料エポキシ樹脂中のエポキシ基の全部をアミンで開環するか、または一部のエポキシ基をアミン以外の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ基をアミンで開環して製造することができる。原料エポキシ樹脂としては、数平均分子量600〜8000、さらには700〜6000、エポキシ当量300〜4000、さらには350〜3000のものを用いることが好ましい。原料エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックのようなポリフェノールを用いたポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0012】
その他、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を使用することも好ましい。このようなオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の例としては、トリレンジイソシアネートのような芳香族系ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基の一部をモノアルコール(例えば、メタノール等)で可逆的にブロックし、さらに残るイソシアネート基の一部をヒドロキシル基含有化合物(例えばエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等)で非可逆的にブロックし、残余のイソシアネート基はビスフェノールAアルキレンオキシド(例えば、ビスフェノールA−プロピレンオキシド付加体等)等のジヒドロキシ化合物でブロックして変性非対称ビスウレタン化合物とし、この変性非対称ビスウレタンをジエポキシド(例えばビスフェノールAとエピクロリンから得られるエポキシ樹脂等)と反応させて得たものを挙げることができる。具体的には特開平5−306327号公報の段落番号[0004]に記載される式[化3]のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、特開2000−128959号の段落番号[0012]〜[0047]に記載の方法で製造されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂が挙げられる。
【0013】
上記のエポキシ基を開環させるアミンとしては、この目的を達成できるものであれば制限はないが、その例として、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、あるいはアミノエチルエタノールアミンのケチミンやジエチレントリアミンのジケチミン等の1級アミンをブロックした2級アミンを挙げることができる。このようなアミン類は、一種類を使用することも複数種を併用することもできる。
【0014】
<ブロックイソシアネート>
本発明のカチオン電着塗料組成物に含有させるブロックイソシアネートは、上記アミン変性エポキシ樹脂を架橋させることによって電着塗料組成物の被膜を硬化させる硬化剤の役割を受け持つ。このブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基をブロック剤でキャップすることによって、塗料貯蔵時または塗装中はイソシアネート基の反応を防止し、塗装後の焼付け工程等、昇温時にはブロック剤が解離してウレタン反応による架橋・硬化を行なわせるものである。ここで、ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ブロックイソシアネートの量は、硬化時にアミン変性エポキシ樹脂中のアミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるように調節する。
【0015】
アミン変性エポキシ樹脂とブロックイソシアネートとの固形分質量比は90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。なお、本発明でいう固形分とは、塗料を加熱して揮発成分を除去した後の加熱残分をいう。
【0016】
本発明においてはブロックイソシアネート硬化剤中、70〜90質量%が芳香族系ブロックイソシアネートである。この芳香族系ブロックイソシアネートが70質量%未満であると塗膜の目視外観が低下し、また経済性にも問題がある。一方、90質量%を超えるとタレ・ワキおよび耐油ハジキ性ともに悪化する。なお、残りの10〜30質量%は非芳香族系ブロックイソシアネートである。
【0017】
使用できる芳香族系イソシアネートの例としては4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネートまたはそれらの混合物、m−またはp−キシリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、またはそれらの混合物、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0018】
また、この芳香族系イソシアネートのブロック剤として好適なものは、炭素数が4〜10(以下、C4〜C10と略す。)の鎖を持つエチレングリコールエーテル系化合物である。炭素数が11以上の化合物をブロック剤として使用した場合、充分な硬化性を得られず、硬化時の加熱減量が大きくヤニの量も増加する。一方、炭素数3以下のブロック剤では塗料化した際に充分な安定性を得ることができない。C4〜C10のエチレングリコールエーテル系化合物の好ましい例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル(C4)、エチレングリコールモノブチルエーテル(C6)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(C8)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(C10)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(C5)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(C6)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(C8)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(C10)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(C7)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(C8)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(C10)、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(C9)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(C9)等のポリオキシエチレングリコールモノアルキルエール類を挙げることができる。
【0019】
ブロックイソシアネート硬化剤中、10〜30質量%は非芳香族系ブロックイソシアネートを使用する。非芳香族系イソシアネートの例としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、および、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,5−もしくは2,6−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビス(イソシアネートメチル)等の脂肪族環式ジイソシアネートであり、中でも好ましいのはヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートである。
【0020】
上記非芳香族系イソシアネートに用いるブロック剤としてはε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル系ブロック剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル系ブロック剤、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール、エチルフェノール等のフェノール系ブロック剤、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トリメチロールプロパン、アミルアルコール、ベンジルアルコール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤、酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤、およびトリアゾール系ブロック剤等を挙げることができるが、中でも好ましいのはメチルエチルケトオキシムである。
【0021】
<顔料分散ペースト>
次に顔料分散ペーストの製造法を説明する。なお電着塗料組成物は、通常、上記アミン変性エポキシ樹脂エマルションと顔料分散ペーストとを電着浴内で混合して調製するものであり、本発明においては、顔料の総量がカチオン電着塗料組成物中の全固形分に対し10〜30質量%である。顔料の総量が10質量%より少ない場合には、塗膜に十分な着色力、隠蔽性、耐油ハジキ性を付与することができず、また、30質量%より多い場合には塗膜の外観不良の原因となる。さらには18〜27質量%となるように配合することが好ましい。
【0022】
上記顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製するものであり、電着塗膜に着色、隠蔽性、必要な塗膜物性、防食性能を与え、さらに、塗膜焼付け時には適切な粘性を与える。
【0023】
本発明に係る顔料分散ペーストは、吸油量が60〜100ml/100gの範囲にある体質顔料が全顔料中の固形分質量として40〜50%質量含まれることを特徴とする。使用する体質顔料の吸油量が100ml/100gを超えたり、全顔料中の体質顔料の固形分比が50質量%を超えた場合は、体質顔料による顔料分散樹脂の吸着量が不足するため、顔料分散ペーストが増粘して安定性が問題となったり、形成する塗膜の外観に悪影響を及ぼす。また、使用する体質顔料の吸油量が60ml/100g未満であったり、全顔料中の体質顔料の固形分比が40質量%未満の場合には、タレ・ワキ性や耐油ハジキ性を充分に抑制する機能が発現されない。上記の吸油量が60〜100ml/100gの範囲にある体質顔料の例としてはカオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、シリカ等の体質顔料の中から本発明の吸油量の条件に合うものを選択することができる。
【0024】
本発明における吸油量は、練り合わせ法(Rub−out Method または、JIS K5101に準拠)により測定され、一定の条件下で顔料に吸収される煮あまに油(JIS K 5421に規定するもの。ただし、当事者間の合意によって、精製あまに油(酸価5.0〜7.0)を用いることができる。)の量を測定して求められるものである。操作としては次の通りである。(a)10mgのけたまで量れる化学はかりで量った試料1〜5gを測定板(300mm×400mm×5mmより大きい平滑なガラス板)上の中央部に取り、煮あまに油をビュレット(JIS R 3505に規定するもので10mlまでのもの)から1回に4、5滴ずつ、徐々に試料の中央に滴下し、その都度全体をへら(鋼製又はステンレス鋼製の刃をもった柄付きのもの)で十分練り合わせる。(b)滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴で、へらを用いてらせん形に巻くことのできる状態になったときを終点とする。ただし、らせん状に巻くことができない場合は、煮あまに油の1滴で急激に軟らかくなる直前を終点とする。(c)終点に達するまでの操作時間が7〜15分間になるように、(a)及び(b)の操作を調節する。(d)終点に達したときのビュレット内の煮あまに油滴下量を読み取る。(e)見本品との比較を行うときは、見本品についても(a)〜(d)の操作を行う。
【0025】
本発明に係る顔料分散ペーストには、上記体質顔料の機能を阻害しない範囲で他の顔料を併用することができる。その例としては、酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、銅鉄マンガンブラックおよびベンガラのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレーおよびシリカのような体質顔料で本発明の範囲外のもの、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウムのような防錆顔料等が挙げられる。
【0026】
上記顔料分散ペーストは、顔料分散用樹脂および顔料を所定量混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散することにより得られる。顔料分散ペーストに使用する顔料分散樹脂としては、一般にカチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基、アミノ基または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等が用いられる。本発明で使用する顔料分散ペーストの固形分濃度は55〜58質量%であり、この固形分濃度が55質量%未満であると貯蔵時に顔料粒子の沈降が発生し、固形分濃度が58%を超えると顔料分散ペーストが増粘したり、顔料粒子が凝集し所定の均一な粒径を維持することが困難となる。
【0027】
<亜鉛イオン>
本発明のカチオン電着塗料組成物中には、防錆性能を高めるため塗料質量に対して450〜500ppm濃度の亜鉛イオンを存在させる。亜鉛イオン濃度が450ppm未満であるとタレ・ワキ性の防止、および耐油ハジキ性の機能が発現せず、500ppmを超えると塗料液の導電性が高くなり亜鉛鋼板への塗装適性や被塗物の塗膜外観が低下する。
【0028】
上記亜鉛イオンの供給源の例としては酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、蟻酸亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム亜鉛、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛およびリンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等の亜鉛化合物が挙げられる。これらの亜鉛化合物は上記アミン変性エポキシ樹脂エマルションに添加するか、または顔料分散ペーストに分散することによりカチオン電着塗料組成物中に導入する。あるいは、亜鉛化合物が水溶性であれば、それら亜鉛化合物の水溶液を電着塗料組成物に直接添加することも可能である。
【0029】
<添加剤>
本発明のカチオン電着塗料組成物中には、その他必要に応じて、錫系等の触媒、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の塗料用添加剤を加えることができる。
【0030】
[カチオン電着塗料組成物の調製]
本発明のカチオン電着塗料組成物の調製は、例えば以下のようにして行われる。先ず、上記アミン変性エポキシ樹脂と上記芳香族系ブロックイソシアネートと上記非芳香族系ブロックイソシアネートを予め所定の配合量で混合し、得られた混合物を、中和剤を含む水性媒体中に分散させてエマルション化させ、アミン変性エポキシ樹脂エマルションを得る。ここで使用する中和剤としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、乳酸のような無機酸または酢酸その他の有機酸等が挙げられる。次いで、得られたアミン変性エポキシ樹脂エマルションに、上記顔料分散ペーストおよびイオン交換水を所定量配合・混合してカチオン電着塗料組成物を調製する。
【0031】
なお、本発明のカチオン電着塗料組成物の固形分濃度は10〜30質量%である。固形分濃度が10質量%より少ない場合には、所望の塗膜厚や、つきまわり性を確保できないなどの問題が生じる。30質量%より多い場合には、タレ、ワキ品質が劣り、また、電着槽からの持ち出し量が増えて経済的に好ましくない。さらには15〜25質量%に調製することが好ましい。固形分濃度の調節には、水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物である水性媒体を使用することができる。
【0032】
[被塗物]
また、被塗物として使用できる材料の例としては冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ−亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム材、アルミニウム合金材、マグネシウム材、マグネシウム合金材等の金属類、導電性微粒子を混入した導電性プラスチックや導電性セラミックス等の導電性非金属素材、非導電性プラスチックや非導電性セラミックスと金属類とからなる導電性複合材等も含まれる。
【0033】
[電着塗装]
本発明のカチオン電着塗料組成物により被塗物の塗装を行なうには、従来公知の一般的な電着塗装方法を採用することができる。例えば、塗料浴温20〜40℃、印加電圧50〜500V、通電時間は被塗物が塗料浴中に完全に浸漬している状態で1〜7分という条件で被塗物を電着塗装し、水洗後、被塗物温度140〜200℃、焼付け時間5分〜50分間で電着塗膜を焼き付ける。電着塗膜の厚さは、焼付け塗膜として5〜50μm、さらには15〜25μmとするのが一般的である。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例中の「部」は、特に断りのない限り、質量部を表す。
【0035】
[製造例1 アミン変性エポキシ樹脂の製造]
反応容器中に、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を入れ、メタノール21部およびエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル50部を加えて反応させた。次に、この反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体53部を添加し、NCO基の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を継続した。そこへ、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部とベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、さらにビスフェノールA61部およびオクチル酸33部を加えてエポキシ当量1190の反応混合物を得た。続いて、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79質量%MIBK溶液25部を加えて反応させた後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、本発明で使用するアミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0036】
[製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤の製造]
<芳香族系ブロックイソシアネートA>
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器に4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す。)を1251.0部およびジブチルスズジラウレートを2.0部加えた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル(C6)1181.7部を加え反応させた後、MIBK361.5部を仕込み、本発明に使用する芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aを得た(樹脂固形分87%)。使用したポリイソシアネートとブロック剤とを表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
<芳香族系ブロックイソシアネートB>
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器にMDIを1251.0部およびジブチルスズジラウレートを2.0部加えた。次にエチレングリコールモノヘキシルエーテル(C8)1462.3部を加え反応させた後、MIBK403.4部を仕込み、本発明に使用する芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Bを得た(樹脂固形分87%)。使用したポリイソシアネートとブロック剤とを表1に示す。
【0039】
<芳香族系ブロックイソシアネートC>
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器にMDIを1251.0部およびジブチルスズジラウレート2.0部を加えた。次にヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(C13)2963.4部を徐々に加え反応させた後、MIBK627.7部を仕込み、本発明に使用する芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Cを得た(樹脂固形分87%)。使用したポリイソシアネートとブロック剤とを表1に示す。
【0040】
<非芳香族系ブロックイソシアネートD>
攪拌装置、窒素導入管、冷却管および温度計を備えた反応容器にヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す。)を1680.0部、MIBKを732.0部、ジブチルスズジラウレートを2.0部加えた後、トリメチロールプロパン346.0部を加えた。次いで、メチルエチルケトオキシム1067.0を加え反応させた後、MIBK39部を仕込み、本発明に使用する非芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Dを得た(樹脂固形分80%)。使用したポリイソシアネートとブロック剤とを表1に示す。
【0041】
[製造例3 アミン変性エポキシ樹脂エマルションの製造]
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(イ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/24/6の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmとなるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35となるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(イ)を得た。
【0042】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ロ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Bおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/24/6の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmとなるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。次にイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ロ)を得た。
【0043】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ハ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/24/6の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中亜鉛質量濃度が1070ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ハ)を得た。
【0044】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ニ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Cおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/24/6の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。次にイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ニ)を得た。
【0045】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ホ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aを固形分質量比70/30の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ホ)を得た。
【0046】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ヘ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた非芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Dを固形分質量比70/30の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ヘ)を得た。
【0047】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(ト)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/18/12の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中の亜鉛質量濃度が1260ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(ト)を得た。
【0048】
<アミン変性エポキシ樹脂エマルション(チ)>
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られた芳香族系ブロックイソシアネート硬化剤Aおよび非芳香族系ブロックイソシアネートDを固形分質量比70/24/6の割合で均一になるよう混合した。これにエマルション中亜鉛質量濃度が1470ppmになるように10%酢酸亜鉛水溶液を加え、さらに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加した。そしてイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した後、減圧下でMIBKを除去して固形分が36%のアミン変性エポキシ樹脂エマルション(チ)を得た。
【0049】
[製造例4 顔料分散樹脂の製造]
まず、撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後2−エチルヘキサノール131.5部を滴下しながら加えた結果、2−エチルヘキサノール・ハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。次いで、他の反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、アミノ基の4級化剤を調製した。次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「エポン829」、シェル・ケミカル社製。エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを別の反応容器に仕込み、先に調製した2−エチルヘキサノール・ハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。そして、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。そして、酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水879.1部を加えて、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
【0050】
[製造例5 顔料分散ペーストの製造]
<顔料分散ペースト(a)>
サンドグラインドミル中に、製造例4で製造した顔料分散樹脂64.0部、イオン交換水67.6部、カーボンブラック(「ブラックパール280」、キャボット社製)1.7部、体質顔料(「サテントン#5」、エンゲルハード社製。吸油量90ml/100g。)45.0部および、酸化チタン(「R−900」、デュポン社製)53.3部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して顔料分散ペースト(a)を得た(固形分57%)。
【0051】
<顔料分散ペースト(b)>
上記顔料分散ペースト(a)の体質顔料を「サイリシア#730」(富士シリアル化学社製。吸油量95ml/100g。)に置き換えた他は、顔料分散ペースト(a)と同じ方法で分散ペースト(b)を調製した(固形分57%)。
【0052】
<顔料分散ペースト(c)>
サンドグラインドミル中、製造例4で製造した顔料分散樹脂64.0部、イオン交換水67.6部、ブラックパール280を1.6部、サテントン#5を45.0部、R−900を50.4部、リンモリブテン酸アルミニウム亜鉛系防錆顔料PM303W(キクチカラー社製)を3.0部入れ、粒度10μm以下になるまで分散して顔料分散ペースト(c)を得た(固形分57%)。
【0053】
<顔料分散ペースト(d)>
上記顔料分散ペースト(a)の体質顔料を「ASP200」(エンゲルハード社製。吸油量39ml/100g。)に置き換えた他は、顔料分散ペースト(a)と同じ方法で分散ペースト(d)を得た(固形分57%)。
【0054】
<顔料分散ペースト(e)>
上記顔料分散ペースト(a)の体質顔料を「マイクロイドML−367」(株式会社東海化学工業所製。吸油量215ml/100g。)に置き換えた他は、顔料分散ペースト(a)と同じ方法で分散ペースト(e)を得た(固形分57%)。
【0055】
<顔料分散ペースト(f)>
顔料分散ペースト調製用のサンドグラインドミル中に、製造例4で製造した顔料分散樹脂64.0部、イオン交換水67.6部、ブラックパール280を2.0部、サテントン#5を35.0部、R−900を63.0部入れ、粒度10μm以下になるまで分散して顔料分散ペースト(f)を得た(固形分57%)。
【0056】
<顔料分散ペースト(g)>
顔料分散ペースト調製用のサンドグラインドミル中に、製造例4で製造した顔料分散樹脂64.0部、イオン交換水67.6部、ブラックパール280を1.4部、サテントン#5を55.0部、R−900を43.6部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して顔料分散ペースト(g)を得た(固形分57%)。
【0057】
[実施例1〜4、比較例1〜10]
電着浴として、イオン交換水2011.1部を入れた3.8Lのステンレス容器を用意し、ここにアミン変性エポキシ樹脂エマルション(イ)〜(チ)のいずれか1417.3部と顔料分散ペースト(a)〜(g)のいずれか371.6部を、表2に示した組み合わせとなるように仕込み、その後40℃に加温しながら12時間攪拌させ、電着塗料(実施例1〜4、比較例1〜10)を得た。
【0058】
【表2】
【0059】
<電着塗装方法>
上記3.8Lの容器に入った電着塗料をマグネチックスターラーで攪拌させ、塗料温度が30℃となるように調製した。そして、後述の評価試験用に合わせて作成した0.8mm厚×70mm×150mmの冷延鋼鈑(「サーフダインSD−5000」、日本ペイント社製。前処理済。)(以下、テストパネルと略す。)を被塗物とし、30秒かけて電圧を230Vまで昇圧させ150秒間その電圧を維持させた。その後、水洗し170℃で25分間焼付けを行った。乾燥膜厚は20μmであった。こうして各種作成した塗装済テストパネルを以下の方法で評価した。
【0060】
<タレ・ワキ試験>
図1は、本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、タレ・ワキ評価板組立図である。図2は、本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、タレ・ワキ評価板組立完成図である。図3は、本発明のカチオン電着塗料組成物を、タレ・ワキ評価板に塗装した様子を表すタレ・ワキ評価板電着塗装外観図である。図1及び図2に示すように、2枚のテストパネル1を間にスペーサー2(0.1mm×10mm×50mm)を介在させた状態で固定具3を用いて接合し、タレ・ワキ評価用のテストピースを作成した。これを被塗物として、上記の塗装条件によって平面の乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装を行った。その後、水道水で軽く水洗を行い、5分間の水切り後、塗装済テストパネルを垂直に立てた状態で170℃、25分間焼付けを行った。そして、図3に示す一般部4(平面部)の塗装外観とタレ・ワキ発生部5の状態とを目視で評価し、その結果を表3にまとめた。
【0061】
<耐油はじき試験方法>
図4は、本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、耐油はじき評価板斜視図である。上記の方法で電着塗装後、水洗した塗装済テストパネルを垂直に立てた状態で室温中に20分間放置させ水切りを行った。その後、図4に示す通り、あらかじめ用意した直径16mm、深さ5mmのアルミニウム製カップ6に、油(「アンチラストP1400」、日石三菱社製。)100μlとイオン交換水100μlとを入れ、水平に設置した焼付け前の塗装済テストパネル7上に置いたまま170℃、25分焼付けを行った。そして、カップから突沸した油により発生した塗膜のヘコミの数と大きさを目視で評価し、その結果を表3にまとめた。
【0062】
【表3】
【0063】
これらの評価結果から明らかな通り、実施例の焼付け後テストパネルはいずれもタレ・ワキが少なく、外観も良好であり、さらに油ハジキによるクレータリングも少なかった。
【0064】
【発明の効果】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、芳香族系ブロックイソシアネートを特定量含むため、形成される電着塗膜の外観が良好となり、また、タレ・ワキおよび油ハジキによるクレータリングも抑制することができる。また、芳香族系ブロックイソシアネートのブロック剤として炭素数4〜10のエチレングリコールエーテル系化合物を使用したため十分な硬化性と焼付け時のヤニ防止、さらに塗料安定性を得ることができる。
【0065】
また、顔料分散ペースト中に特定範囲の吸油量を有する体質顔料を特定量配合したため、形成される電着塗膜の外観が良好となり塗料安定性にも良い影響を与えている。さらに、塗料組成物中の亜鉛イオン濃度を特定範囲に限定することにより、防錆性能を維持しながら塗料液の導電性をコントロールしているため被塗物への塗装性が良好であり、得られる塗膜外観も良好となる。
【0066】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記の優れた特徴を有するため、特に自動車外板用および自動車部品用の塗装に好適であるが、その他自動販売機等の屋外設置塗装物、家電製品等、多種の分野における塗装に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、タレ・ワキ評価板組立図である。
【図2】 本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、タレ・ワキ評価板組立完成図である。
【図3】 本発明のカチオン電着塗料組成物を、タレ・ワキ評価板に塗装した様子を表す正面図である。
【図4】 本発明のカチオン電着塗料組成物の評価を行なうための、耐油はじき評価板の斜視図である。
【符号の説明】
1 テストパネル
2 スペーサー
3 固定具
4 一般部
5 タレ・ワキ発生部
6 アルミニウム製カップ
7 焼付け前の塗装済テストパネル
Claims (3)
- アミン変性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネートおよび顔料分散ペーストを含むカチオン電着塗料組成物であって、
(1)該ブロックイソシアネートは、芳香族系ブロックイソシアネートを70〜90質量%含むものであって、芳香族系ブロックイソシアネートのブロック剤は炭素数が4〜10のエチレングリコールエーテル系化合物であり、
(2)該顔料分散ペーストは、顔料を含有し、該顔料は吸油量が60〜100ml/100gである体質顔料を該顔料中に40〜50質量%含み、かつ、該顔料分散ペーストの固形分濃度が55〜58質量%であり、
(3)該カチオン電着塗料組成物中の亜鉛イオン濃度は、450〜500ppmである、
ことを特徴とするカチオン電着塗料組成物。 - 前記アミン変性エポキシ樹脂と前記ブロックイソシアネートとの固形分質量比が90/10〜50/50であることを特徴とする請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
- 前記顔料の総量が前記カチオン電着塗料組成物中の全固形分に対し10〜30質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のカチオン電着塗料組成物。
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