JP2009227820A - 電着塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】分散安定性に優れ、かつ再分散性にも優れる、電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤(a)、顔料(b)、およびバインダー樹脂(c)、を含む電着塗料組成物であって、顔料(b)が吸油量70ml/100g以下である体質顔料を含む、電着塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、分散安定性および再分散性に優れる電着塗料組成物に関する。
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を電極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である、この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
一般に電着塗料組成物には、防錆顔料および体質顔料が、防錆効果および塗膜物性の向上を目的として加えられており、チタンホワイト(酸化チタン)などの着色顔料、隠蔽力の高いカーボンブラックなどが、必要に応じて加えられている。これらの顔料は、塗料組成物中において溶媒中に分散した状態にある。これらの顔料は一般に比重が高いものが多く、そのため電着塗料組成物中において沈降が生じやすい。例えば無機顔料を含む従来の電着塗料組成物は、ほんの数時間の静置によって無機顔料が沈降する。そして沈降した顔料は強固に凝集するため、再び撹拌を行っても元の分散状態に戻すことは非常に困難である。このような凝集を防ぐため、電着塗料組成物を含む電着槽および補給タンクは常時撹拌が必要となり、これが塗装業者の設備およびエネルギー費用における負担となっている。さらに、電着塗装中に顔料が沈降することによって、沈降した顔料が被塗物の水平面に降り積もることとなり、得られる塗膜に凹凸が生じてしまうという問題がある。そのため、分散安定性に優れる電着塗料組成物の開発が望まれている。
顔料などの沈降を防止する方法として、この顔料などの成分を省くことが考えられる。例えば特開平9−328641号公報(特許文献1)には、沈降量が5.0mg/時間以下であるカチオン電着塗料組成物が開示されている。このカチオン電着塗料組成物は、前述のように沈降する成分を省くことにより達成している。しかしながらこのような方法においては、顔料などの成分を省くことによって、耐食性低下などといった塗膜物性の低下が生じるおそれがある。
特開2005−41951号公報(特許文献2)には、吸油量が60〜100ml/100gである体質顔料を顔料中に40〜50質量%含むカチオン電着塗料組成物が記載されている。そしてこの特許文献の第0023段落には、体質顔料の吸油量が100ml/100gを超える場合は、体質顔料による顔料分散用樹脂の吸着量が不足するため、顔料分散ペーストが増粘して安定性が問題となったりすることが記載されている。しかしながらこの特許文献は顔料分散ペーストの安定性については記載しているものの、希釈された状態であるため、顔料分散ペーストと比較してより沈降が生じやすい電着塗料組成物における顔料分散安定性について記載していない。また一旦沈降し凝集した顔料を再分散させる再分散性についても記載していない。
本出願人によって出願された特開2005−247892号公報(特許文献3)には、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物およびそれらの1種または2種以上の混合物からなる群から選択される顔料沈降防止剤、および(b)顔料を含有する電着塗料組成物が記載されている。ここに記載される電着塗料組成物は、顔料の分散安定性に非常に優れているという特徴を有している。しかしながら様々な被塗物の塗装に用いられる電着塗料組成物においては、より顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れる電着塗料組成物を開発する余地がでてきた。
特開平9−328641号公報 特開2005−41951号公報 特開2005−247892号公報
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、分散安定性に優れ、かつ再分散性にも優れる、電着塗料組成物を提供することにある。
本発明は、
脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤(a)、顔料(b)、およびバインダー樹脂(c)、を含む電着塗料組成物であって、
顔料(b)が吸油量70ml/100g以下である体質顔料を含む、
電着塗料組成物、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記体質顔料はクレーを含むのが好ましい。
また、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)が1/2〜1/50であるのが好ましい。
さらに、上記脂肪酸の誘導体が、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド化合物、あるいは脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド化合物のエチレンオキサイド開環付加物であるのが好ましい。
本発明の電着塗料組成物は、長時間静置させた場合であっても沈殿物が少ない。そのため、電着塗料組成物の貯蔵における常時撹拌、および電着塗装における電着槽の常時撹拌を必要とせず、撹拌を省略したり断続的に撹拌させたりすることができる。これにより、電着塗装における塗装コストを削減することができる。本発明の電着塗料組成物はさらに、一旦沈降した顔料が強固に凝集しないという特徴がある。そのため、何らかの事情により顔料が一旦沈降した場合であっても、沈降した顔料を容易に再分散させることができることとなる。本発明の電着塗料組成物はさらに、顔料濃度が高い場合であっても分散安定性に優れるという特徴も有している。
電着塗料組成物
本発明の電着塗料組成物は、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤(a)、顔料(b)、およびバインダー樹脂(c)、を含んでいる。そしてこの顔料(b)として、吸油量70ml/100g以下である体質顔料が含まれる。このような本発明の電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂を主樹脂として用いるカチオン電着塗料組成物と、アニオン性樹脂を主樹脂として用いるアニオン電着塗料組成物の2種類に分類することができる。本発明の電着塗料組成物はいずれも包含する概念で用いている。まずは、カチオン電着塗料組成物に関して説明する。アニオン電着塗料組成物については後述する。
カチオン電着塗料組成物
本発明のカチオン電着塗料組成物は、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤(a)、顔料(b)、バインダー樹脂(c)、そして硬化触媒を含有する。カチオン電着塗料組成物においては、バインダー樹脂(c)には、カチオン性エポキシ樹脂と、ブロックポリイソシアネート硬化剤とが含まれる。本明細書中、「脂肪酸」と「脂肪酸の誘導体」をまとめて「脂肪酸類」と記載することもある。
バインダー樹脂(c)
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィドおよび酸混合物がある。本発明において1級、2級または/および3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
カチオン性アクリル樹脂
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、必要に応じてカチオン性アクリル樹脂を含んでもよい。カチオン性アクリル樹脂は、分子内に複数のオキシラン環を含むアクリル共重合体とアミンとの開環付加反応によってつくることができる。このようなアクリル重合体は、(i)グリシジル(メタ)アクリレートと、(ii)ヒドロキシル基含有アクリルモノマー、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プラクセルFAおよびFMシリーズとして知られる2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応生成物と、(iii)その他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーを共重合することによって得られる。その他のアクリル系および非アクリル系モノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
このオキシラン環を含むアクリル共重合体は、エポキシ樹脂のオキシラン環をアミンで開環してカチオン性基を導入するのと同様に、そのオキシラン環の全部を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環することにより、カチオン性アクリル樹脂とすることができる。
他の方法として、アミノ基を有するアクリルモノマーを他のモノマーと共重合することによってカチオン性アクリル樹脂を得ることもできる。この場合、前述の(i)グリシジル(メタ)アクリレートの代わりにアミノ基含有アクリルモノマーを用いる。アミノ基含有アクリルモノマーは、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有アクリルモノマーなどである。
カチオン性アクリル樹脂は、重合体の数平均分子量が1,000〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、より好ましくは5,000〜10,000の範囲内になるように常法によって前記モノマーを共重合することによって得られる。
カチオン性アクリル樹脂を用いる場合の配合量は、例えば、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し10〜100質量部などが挙げられる。
ブロックポリイソシアネート硬化剤
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、および1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比を2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックポリイソシアネート硬化剤として使用してよい。
脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、およびホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
顔料(b)
本発明のカチオン電着塗料組成物は顔料(b)を含有する。そして本発明においては、顔料(b)として、吸油量が70ml/100g以下である体質顔料が含まれる。なお体質顔料とは一般に、使用するビヒクルに不溶である、粒状または粉状形状の、塗料・塗膜のある種の改質を目的として配合される顔料を意味する(JIS K5500に準拠。)。体質顔料を電着塗料組成物に用いることによって改質される性能として、例えばハジキ防止、耐チッピング性、塗膜硬度、耐候性、付着性などが挙げられる。そしてこのような体質顔料として、例えば、クレー(カオリンなど)、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウムおよびシリカなどが挙げられる。なおここでいう体質顔料には、下記する着色顔料および防錆顔料のいずれも含まれない。
このようなハジキ防止、耐チッピング性、塗膜硬度、耐候性、付着性などの性能を改質することができる、クレー(カオリンなど)、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウムおよびシリカといった体質顔料は、着色顔料と比較して一般に、比重が高い傾向がある。そしてこのような比重が高い顔料は、低固形分濃度水分散型塗料である電着塗料組成物においては特に、沈降が生じやすいという問題がある。そのため、分散安定性に優れる電着塗料組成物を設計する場合においては特に、これらの体質顔料の使用は控えざるを得なかった。これに対して本発明は、吸油量が特定の範囲である体質顔料を用いることによって、このような問題の解決を図ることができることを、実験によって見いだしたことに基づく発明である。
なお本発明においては、顔料(b)の総質量に対して、体質顔料が1〜100質量%含まれるのが好ましく、35〜95質量%含まれるのがより好ましい。
体質顔料の吸油量が70ml/100gを超える場合は、電着塗料組成物における顔料分散安定性が劣ることとなり、さらに沈降した顔料の再分散性もまた劣ることとなる。体質顔料の吸油量は4〜70ml/100gであるのがより好ましく、4〜50ml/100gであるのがさらに好ましく、4〜40ml/100gであるのが特に好ましい。なお本明細書における「再分散性」とは、一旦沈降した顔料を再分散させることが容易であるか否かを示す性質を意味する。本発明の電着塗料組成物においては、一旦沈降した顔料が強固に凝集しないという特徴がある。そのため、一旦沈降した顔料を容易に再分散させることができることとなる。
本発明において吸油量が特定の範囲である体質顔料を用いることによって分散安定性そして再分散性が向上する作用機構は明確ではないが、特に沈降し易い傾向にある体質顔料の吸油量を特定範囲とすることによって、顔料沈降防止剤(a)の沈降防止作用が確保されることとなることが考えられる。
本発明における吸油量は、練り合わせ法(Rub−out Method または、JIS K5101に準拠)により測定され、一定の条件下で顔料に吸収される煮あまに油(JIS K 5421に規定するもの。ただし、JIS K5101の規定に準じて精製あまに油(酸価5.0〜7.0)を用いることができる。)の量を測定して求められるものである。操作としては次の通りである。
(i)10mgの桁まで量れる化学はかりで量った試料1〜5gを測定板(300mm×400mm×5mmより大きい平滑なガラス板)上の中央部に取り、煮あまに油をビュレット(JIS R 3505に規定するもので10mlまでのもの)から1回に4、5滴ずつ、徐々に試料の中央に滴下し、その都度全体をへら(鋼製又はステンレス鋼製の刃をもった柄付きのもの)で十分練り合わせる。
(ii)滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴で、へらを用いてらせん形に巻くことのできる状態になったときを終点とする。ただし、らせん状に巻くことができない場合は、煮あまに油の1滴で急激に軟らかくなる直前を終点とする。
(iii)終点に達するまでの操作時間が7〜15分間になるように、(i)及び(ii)の操作を調節する。
(iv)終点に達したときのビュレット内の煮あまに油滴下量を読み取る。
(v)見本品との比較を行うときは、見本品についても(i)〜(iv)の操作を行う。
本発明においては、上記体質顔料以外の顔料を併用することができる。このような顔料として、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料、;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料、などが挙げられる。必要に応じて、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、またはベリレンレッドなどの有機顔料を用いてもよい。例えば着色顔料である酸化チタンを用いることによって、白色性が高く隠蔽力の高い電着塗膜を得ることができる。さらに、例えば、防錆顔料であるリン酸アルミニウムまたはモリブデン酸カルシウムなどを用いることによって、塗膜の防錆性を向上させた塗膜物性に優れる電着塗膜を得ることができる。なお防錆顔料については、一般に、含有量が体質顔料の含有量の1/10程度であるため、沈殿形成にはほとんど関与しないと考えられる。但し、上記着色顔料および防錆顔料は、吸油量が4〜70の範囲内であることが好ましい。
電着塗料組成物において顔料は一般に、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)は1/10ほどの割合でカチオン電着塗料組成物に含有される。これに対して本発明のカチオン電着塗料組成物においては、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)が1/2〜1/50、さらには1/2〜1/12、特に1/3〜1/5と、顔料濃度が非常に高い電着塗料組成物においても、良好な分散安定性そして再分散性を確保することができるという特徴を有している。そしてこのように顔料濃度が高い電着塗料組成物を用いることによって、極めて高い耐食性を有する、顔料分散安定性に優れた電着塗料組成物を調製できるという利点がある。なお、顔料成分が少ないほど沈降量が減少するため高い再分散性が得られる傾向にあるが、耐食性や塗装作業性も低下してしまう傾向にある。このため、再分散性と耐食性、塗装作業性とを両立させるために、質量比(b)/(c)を上記範囲とすることが好ましい。
顔料沈降防止剤(a)
本発明のカチオン電着塗料組成物は、脂肪酸、脂肪酸の誘導体(両方あわせて脂肪酸類と呼ぶ。)、アミン化合物、またはこれら3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤を含有する。本発明においては、顔料沈降防止剤(a)を電着塗料組成物に加えることによって、塗料組成物中に含まれる顔料の分散安定性が向上する。そして、無機顔料を含む電着塗料組成物であるにも関わらず、電着塗料組成物を撹拌せずに静置しておいた場合であっても顔料沈降物が少ない塗料組成物を製造することができる。
脂肪酸類とは、上記の通り、脂肪酸またはその誘導体である。脂肪酸として、例えば、直鎖飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が含まれる。また脂肪酸の誘導体として、例えば、上記脂肪酸を、アルコール、多価アルコール(グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等)で変性した脂肪酸エステル、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性した脂肪酸エチレンオキサイド付加物または脂肪酸プロピレンオキサイド付加物、アミン化合物で変性した脂肪酸アミド化合物、および多官能脂肪酸が含まれる。これらの脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド化合物には、エチレンオキサイドが開環付加したもの(エチレンオキサイド開環付加物)も含まれる。これらの脂肪酸類は、分子の骨格中に不飽和結合、エーテル結合、エステル結合等の化学結合、水酸基、アミノ基、カルボニル基等の官能基、酸素、窒素、イオウ、ハロゲンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。また多官能カルボン酸なども、脂肪酸の誘導体に含まれる。脂肪酸の誘導体として、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド化合物およびこれらのエチレンオキサイド開環付加物を用いるのがより好ましい。
本発明で使用される脂肪酸類において、好ましくは炭素数4〜22の脂肪酸およびその誘導体であり、より好ましくは炭素数7〜20の脂肪酸およびその誘導体である。
具体的な脂肪酸類として、例えば以下の化合物が挙げられる:
(1)直鎖飽和脂肪酸
アラキジン酸、トリコサン酸、ベヘニン酸、ヘンエイコサン酸、エイコサン酸、ノナデカン酸、ステアリン酸、ヘプタデカン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ミリスチン酸、トリデカン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、オクタン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、吉草酸、酪酸等、花王社製精製ステアリン酸(450V、550V、700V)等;
(2)分岐飽和脂肪酸
イソステアリン酸、メチルテトラデカン酸、メチルヘプタデカン酸、メチルオクタデカン酸、イソ吉草酸等;
(3)不飽和脂肪酸
オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ウンデセン酸、ソルビン酸、クロトン酸等;
(4)多官能カルボン酸
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、フタル酸、ドデカン二酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、3−tert−ブチルアジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等;
(5)ヘテロ原子含有脂肪酸
ヘキシロキシ酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、サリチル酸、安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、N−アセチルグリシン、N−アセチル−β−アラニン、チオクト酸等;
(6)脂肪酸エステル(アルコールエステル系)
ライオン社製カデナックス(GS-90,SO-80C)、花王社製レオドール(SP-L10、SP-P10,SP-S10V,SP-S30V、AS-10、AO-10、AO-15V)、花王社製レオドールスーパーSP-L10、花王社製エマゾール(L-10(F)、P-10(F)、S-10V、O-10V)等;
(7)脂肪酸エステル(エチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル系)
ライオン社製リオノン(DT-600S,DEH-40)、旭電化工業社製アデカエストール(OEG-102,OEG-106)等;
(8)脂肪酸メチルエステル(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加系)
ライオン社製レオファット(LA-110M-95,OC-0503M)、花王社製エマノーン(1112,3199,3299,4110,CH-25, CH-40, CH-60(K), CH-80)等
(9)脂肪酸エチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソファット(O/15,O/20,60/15)、旭電化工業社製アデカエストール(TL-144,TL-161,TL-162,S-60,S-80,T-81,T-82)、花王社製レオドール(TW-L120, TW-L106, TW-P120, TW-S120V, TW-S106, TW-S320V, TW-O120V, TW-O106V, TW-O320V, TW-IS399C, 430,440,460)、花王社製レオドールスーパー TW-L120等;
(10)脂肪酸エステル(グリセリンエステル系)
花王社製エキセルT-95,VS-95,O-95R,200,300,122V,P-40S)、花王社製レオドール(MS-50,MS-60,MO-60,MS165V)等
(11)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸モノアミド化合物
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等;
(12)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸モノアミド
オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エシル酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等、これらの工業製品として、例えば、花王社製カオーワックス(EB-G、EB-P、EB-FF、85-P、220、230-2)、花王社製脂肪酸アマイドS, T, O-N, E)、旭電化工業社製アデカソールYAなどが含まれる;
(13)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸ビスアミド類
メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N'−ジステアリルセバシン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド等;
(14)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸ビスアミド類
エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミド等;
(15)脂肪酸アミド化合物である置換アミド類
N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等;
(16)脂肪酸アミド化合物である芳香族ビスアミド類
メチロールステアリン酸アミド類;メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、N,N−ジステアリルイソフタール酸アミド、メタキシリレンビスステアリン酸アミド等;
(17)脂肪酸アミド化合物である分岐型アミド類
N,N’−2−ヒドロキシエチルステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等;
(18)脂肪酸アミド化合物であるアルカノールアミド類
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノ−ルアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ミリスチン酸モノプロパノールアミド、オレイン酸モノプロパノールアミド、ポリオキシアルキレンアルカノールアミドなど、工業製品としてライオン社製アーマイド(O,HT)、ライオン社製アーモスリップ(CP,E,E-Y)など;
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
アミン化合物とは、窒素原子に炭素数4以上のアルキル鎖が結合したアミン化合物であるのが好ましい。窒素原子に結合するアルキル鎖は1つであってもよく、または2以上のアルキル鎖が結合していてもよい。これらのアミン化合物として、1級、2級および3級アミンの何れを用いてもよい。これらのアミン化合物はその骨格中に複数個のアミノ基を有していてもよく、また、骨格自体がエチレンオキサイド等で変性されていてもよい。本発明で使用されるアミン化合物は、好ましくはアルキル鎖の炭素数4〜22であり、より好ましくはアルキル鎖の炭素数7〜20である。
具体的なアミン化合物として、例えば以下のものが挙げられる:
(1)1級アミン化合物
(1−1)脂肪族モノ及びポリアミン化合物
n-ブチルアミン、アミルアミン、n-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ノニルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、2,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン等の脂肪族1級アミン化合物類、
(1−2)脂環族モノ及びポリアミン化合物
シクロヘキシルアミン、1,3-及び1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,5- トリメチル-1- アミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1-メチル-2,4- ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン等の脂環族1級アミン化合物類、
(1−3)芳香族モノ及びポリアミン化合物
アニリン、メタ及びパラトルイジン、ナフチルアミン、1,3-及び1,4-フェニレンジアミン、1-メチル-2,4- ジアミノベンゼン、1-メチル-2,6- ジアミノベンゼン、2,4,- 及び 4,4,-ジアミノジフェニルメタン、 4,4,-ジアミノビフェニル、1,5-及び2,6-ナフタレンジアミン等の芳香族1級アミン化合物類、
(1−4)アラルキルモノ及びポリアミン化合物
1,3-及び1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,5-及び2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレン等のアラルキル1級アミン化合物類、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミン(CD,OD,TD,HT,8D,12D,14D,16D,18D)、花王社製ファーミン(CS,08D,20D,80,86T,O,T)等が挙げられる;
(2)2級アミン化合物
ジ-n-ブチルアミン、ジイソアミルアミン、ジベンジルアミン、メチルジエチルエチレンジアミン、メチルアニリン、ピペリジン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、モルホリン、N-メチル-グルカミン、グルコサミン、t-ブチルアミン等の2級アミン、
これらの工業製品として、花王社製ファーミン(D86)等が挙げられる;
(3)3級アミン化合物
トリ(n-ブチル)アミン、テトラメチルエチレンジアミン、1-メチルピペリジン、1-メチルピロリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、トリイソプロパノールアミン等の3級アミン、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミン(DMMCD,DMTD,DMMHTD,DM12D,DM14D,DM16D,DM18D,DM22D, M2HT, M2O,M210D)、花王社製ファーミン(DM24C,DM0898,DM1098,DM2098,DM2465,DM2463,DM2458,DM4098,DM4662, DM6098, DM6875,DM8680,DM8098,DM2285,M2-2095,T-08)等が挙げられる;
(4)アルカノールアミン
花王社製アミノーン(PK-02S,L-02)等;
(5)変性アミン
(5−1)アルキルアミンエチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソミン(C/12,C/15,C/25,T/12,T/15,T/25,S/15,S/25,O/12,O/17,O/20,HT/12, HT/14, HT/17)、ライオン社製エソマイド(HT/15,HT/60,O/15)、旭電化工業社製アデカソール(CO,COA,CMA,YA-6)、花王社製アミート(105,320);
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
これらの脂肪酸類とアミン化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。顔料沈降防止剤としてより好ましくは、炭素数4〜22の脂肪酸、炭素数4〜22の脂肪酸の誘導体、またはこれら2種類の混合物が挙げられる。
脂肪酸類またはアミン化合物を加えることによって顔料(b)の分散性が向上する作用機構は明確ではないが、例えば、脂肪酸が顔料(b)に対して単分子膜のような構造または2分子膜のような構造の配置をとり、これによって顔料(b)の水に対する抵抗等が大きくなり、顔料(b)の沈降が防止されると考えられる。本発明において顔料沈降防止剤として使用される脂肪酸類またはアミン化合物は、分子膜のような構造に配置する能力が高いため、顔料(b)の沈降を防止する性能に優れると考えられる。
顔料沈降防止剤(a)は、電着塗料組成物中に含まれる顔料100質量部に対して下限0.1質量部、上限20質量部を占める量で電着塗料組成物に含有される。上記下限は0.5質量部であるのが好ましく、1質量部であるのがより好ましい。また、上記上限は15質量部であるのが好ましく、10質量部であるのがより好ましい。
他の成分
カチオン顔料分散ペースト
顔料(b)を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料(b)を顔料分散用樹脂とよばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料(b)は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。固体状硬化触媒を用いる場合、この顔料分散ペーストを作成する際に加えてもよいし、他の塗料製造工程で加えてもよい。
カチオン性顔料分散用樹脂としては、一般に、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散用樹脂は顔料分散ペーストの固形分中で20〜40質量%、顔料および固体状硬化触媒は60〜80質量%の比率で用いる。カチオン顔料分散ペーストは、カチオン性顔料分散用樹脂、および顔料、必要に応じて酸などの中和剤および水性媒体を、混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて得ることができる。
硬化触媒
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒を加えて、ブロックポリイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離を促進させることができる。本発明で使用する硬化触媒としては、硬化剤のブロック剤の解離を促進させるものであれば特に限定されないが、代表的な硬化触媒としては、錫触媒が挙げられる。錫触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、モノブチル錫オキサイドおよびそれらの混合物等の固体触媒、ジブチル錫ジラウレート等の液状錫触媒、およびそれらの混合物などが挙げられる。
上記硬化触媒は、電着塗料組成物中の樹脂固形分に対し0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で配合する。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックポリイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(カチオン性メインエマルション)、必要に応じて用いられる、カチオン性アクリル樹脂およびブロックポリイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(サブエマルション)、顔料分散ペースト、脱イオン水を所定の割合で混合することによって調製される。
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物の調製において、顔料沈降防止剤(a)は、何れの分散・混合段階においても加えることができる。顔料沈降防止剤(a)は、好ましくは、上記のカチオン性顔料分散ペーストに加えられ、その後、カチオン性メインエマルション等の他の成分と混合される。この場合は、顔料の沈降を防止する性能により優れるからである。
水性媒体としては、例えばイオン交換水を用いることができ、少量のアルコール類を含んでいてもよい。そして水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
ブロックポリイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂のブロックポリイソシアネート硬化剤に対する質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
電着塗料組成物は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
本発明の電着塗料組成物を用いた被塗物への電着塗装は、当業者に周知の方法によって実施することができる。被塗物は、予めリン酸亜鉛処理等の表面処理が施された導体であることが好ましい。導体は、電着塗装に際し陰極になり得るものであれば特に制限はないが、金属基材であることが好ましい。
電着塗装の際の印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
電着塗装後、被塗物の表面に形成された被膜を焼き付けにより硬化させる。焼き付けには、例えば焼付炉やオーブン、赤外ヒートランプを用いることができる。焼き付け温度は、通常140℃〜180℃である。
アニオン電着塗料組成物
本発明のアニオン電着塗料組成物は、前述のカチオン電着塗料組成物と比較すると、アニオン性樹脂と硬化剤とを含むバインダー樹脂および顔料分散用樹脂などが相違する。その他の成分は共通であるため、以下、相違点についてのみ説明する。
バインダー樹脂(c)
アニオン性樹脂
アニオン電着塗料組成物では、カチオン性エポキシ樹脂の代わりにアニオン性樹脂を用いる。本発明で用いるアニオン性樹脂として、電着塗料組成物の分野では周知のカルボキシル基および場合によりさらに水酸基を有する樹脂を用いることができる。アニオン性樹脂として、例えば、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いるのが好ましく、カルボキシル基および水酸基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基および水酸基を有するポリウレタン樹脂を用いるのが特に好ましい。塗膜の耐候性、平滑性に優れるからである。
上記のカルボキシル基および水酸基を有するアクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和モノマー、水酸基含有アクリル系モノマー、さらに必要に応じてその他の重合性モノマーを用い、これらのモノマーをラジカル重合させてなる共重合体が使用できる。
カルボキシル基含有不飽和モノマーは、1分子中にカルボキシル基と重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カプロラクトン変性カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーなどがあげられる。
水酸基含有アクリル系モノマーは、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;これらの水酸基含有アクリル系モノマーと、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどのラクトン類化合物との反応物などがあげられ、市販品としては、プラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)などがあげられる。
その他の重合性モノマーは、上記のカルボキシル基含有不飽和モノマーおよび水酸基含有アクリル系モノマー以外であって、1分子中に重合性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C18のアルキルまたはシクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族重合性モノマー;(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリアミド、N−メチロール(メタ)アクリアミドなどの(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;(メタ)アクリロニトリル化合物類;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性モノマーなどがあげられる。
これらのモノマーの配合割合として、カルボキシル基含有不飽和モノマーを、モノマーの合計質量に対して3〜30質量%、特に4〜20質量%の範囲内で用いることが好ましい。水酸基含有アクリル系モノマーを、モノマーの合計質量に対して3〜40質量%、特に5〜30質量%の範囲内で用いることが好ましい。
これらのモノマーをラジカル共重合反応させる方法は従来から既知の溶液重合方法などを用いることができる。
カルボキシル基および水酸基を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール類およびジヒドロキシカルボン酸を、水酸基が過剰となる当量比で、ワンショット法または多段法によりウレタン化反応させることにより得られるものがあげられる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが好適に使用される。
ポリオール類は、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフラン)を重合または共重合(ブロックまたはランダム)させて得られるポリエーテルジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコールなど;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸など)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合させて得られるポリエステルジオール、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリネオペンチル−ヘキシルアジペートなど;ポリラクトンジオール、例えば、ポリカプロラクトンジオール、ポリ3−メチルバレロラクトンジオールなど;ポリカーボネートジオール;これらから選ばれる2種以上からなる混合物などがあげられる。これらのポリオール類の数平均分子量は、一般に500以上、好ましくは500〜5000、より好ましくは1000〜3000である。
また、ポリオール類として、1分子中に2個以上の水酸基を有し、かつ数平均分子量が500未満の低分子量のポリオールも使用することができる。具体的には、上記のポリエステルジオールの原料としてあげたグリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(分子量500未満);3価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロルエタン、トリメチロールプロパンなどおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(分子量500未満);これらから選ばれた2種以上からなる混合物などがあげられる。
数平均分子量が500以上のポリオール類と数平均分子量が500未満の低分子量のポリオール類とを併用する系において、これら両ポリオールの構成比率は、両ポリオールの合計量を基準にして、前者は80〜99.9質量%、特に90〜99.5質量%、後者は20〜0.1質量%、特に10〜0.5質量%の範囲内にあることが好ましい。
ジヒドロキシカルボン酸は、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールブタン酸などがあげられる。
以上に述べたポリイソシアネート化合物、ポリオール類およびジヒドロキシカルボン酸によるウレタン化反応はそれ自体既知の方法で行なうことができる。
硬化剤
アニオン電着塗料組成物において、アニオン性樹脂に対する硬化剤として、例えばメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
メラミン樹脂としては、メラミンにホルムアルデヒドなどを反応させてなるメチロールメラミンのメチロール基の一部もしくは全部がC1〜C10のモノアルコールから選ばれた1種もしくは2種以上のアルコールで変性されたエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。また、メラミン樹脂中にはイミノ基、メチロール基、その他の官能基が含まれていてもよい。
ブロックポリイソシアネートは、前記のカチオン電着塗料組成物で例示したブロックポリイソシアネート硬化剤を使用することができる。
アニオン性顔料分散ペースト
アニオン電着塗料組成物に顔料(b)を含有させる場合、顔料(b)の分散容易性の観点から、顔料(b)を予め顔料分散ペーストの形態に調製するのが好ましい。アニオン性顔料分散ペーストは、顔料(b)をアニオン性顔料分散用樹脂に分散させて調製することができる。顔料(b)として、前記のカチオン電着塗料組成物で例示した顔料を使用することができる。
アニオン性顔料分散用樹脂として例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸およびアゾニトリル化合物を有する変性アクリル樹脂を用いることができる。
アニオン性顔料分散ペーストは、上記のアニオン性顔料分散用樹脂と顔料と中和剤を加え、これを分散させるか溶解させることにより調製することができる。
一般に、アニオン性顔料分散ペーストは、固形分35〜70質量%、好ましくは40〜65質量%に調製される。
アニオン性顔料分散ペーストは、アニオン性顔料分散用樹脂、および顔料、必要に応じてトリエチルアミンなどの中和剤および水性媒体を、混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、通常の分散装置を用いて分散させて得ることができる。
アニオン電着塗料組成物の調製
本発明において用いられるアニオン電着塗料組成物は、上に述べたアニオン性樹脂、アニオン性顔料分散ペーストを水性媒体中に分散させることによって調製される。また、通常、水性媒体にはアニオン性樹脂を中和して分散性を向上させるために中和塩基(アミンまたはアルカリ化合物)を含有させる。この中和塩基として用いるアミンは具体的には炭素数が3以下の低い分子量のものであり、前述の顔料沈降防止剤とは異なるものである。このような炭素数であると、顔料との相互作用よりも樹脂との相互作用が大きくなるので、顔料の沈降防止剤としての効果は無くなる。中和塩基の例としては、アンモニア;ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの塩基性化合物である。
本発明において用いられるアニオン性電着塗料組成物の調製において、顔料沈降防止剤(a)は、何れの分散・混合段階においても加えることができる。顔料沈降防止剤(a)は、好ましくは、上記のアニオン性顔料分散ペーストに加えられ、その後、アニオン性メインエマルション等の他の成分と混合される。この場合は、顔料の沈降を防止する性能により優れるからである。なお、脂肪酸またはアミン化合物の配合量は、カチオン電着塗料組成物の場合と同じである。
硬化剤の量は、アニオン性樹脂と硬化剤との固形分質量比(アニオン性樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜50/50の範囲である。中和塩基の量は、アニオン性樹脂のアニオン性基の少なくとも30%、好ましくは50〜120%を中和するのに足りる量である。
アニオン電着塗料組成物の電着塗装は、被塗物を陽極として陰極との間に、通常1〜400Vの電圧を印加して行なう。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は10〜45℃、好ましくは15〜30℃に、pHは6.0〜9.0、好ましくは7.0〜8.0に調節される。
電着過程は、アニオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陽極として陰極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる工程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、30秒〜5分とすることができる。電着過程の終了後、そのまままたは水洗した後、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、10〜60分間焼き付けることにより硬化塗膜が得られる。
得られる膜厚は硬化塗膜で5〜30μm、特に7〜20μmの範囲内にあることが好ましい。
本発明の電着塗料組成物(カチオン電着塗料組成物およびアニオン電着塗料組成物)は、電着槽の攪拌を停止しても顔料成分の沈降が非常に少ないので、非塗装時には電着槽の攪拌を停止しても問題がない。ただし、電着塗装時には塗膜析出中に発生する反応ガスを除去したり、塗膜析出時に発生する反応熱を拡散させる意味から槽内攪拌をすることが好ましい。従来の電着塗料組成物においては、顔料の沈降を防ぐために非塗装時においても電着槽の攪拌を実施することが必要である。これに対して本発明の電着塗料組成物は、夜間、休日等の非塗装時に攪拌を停止することが可能なため、電着槽の攪拌に要する電気エネルギーコストを大幅に減少させることが可能となる。
本発明の電着塗料組成物はまた、一旦沈降した顔料が強固に凝集しないという特徴がある。そのため、何らかの事情により顔料が一旦沈降した場合であっても、沈降した顔料を容易に再分散させることができることとなる。本発明の電着塗料組成物はさらに、顔料濃度が高い場合であっても分散安定性に優れるという特徴も有している。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1 カチオン性エポキシ樹脂の調製
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を備え付けた反応容器に、エピコート1001(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂)99.8部、エピコート1004(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量950のビスフェノールA型エポキシ樹脂)850.2部、ノニルフェノール55部、メチルイソブチルケトン(MIBK)193.3部およびベンジルジメチルアミン4.5gを加え、140℃で4時間反応し、エポキシ当量1175を有する樹脂を得た。ここにエチレングリコールn−ヘキシルエーテル69.1部、2−アミノエチルエタノールアミンのMIBKケチミン化物のMIBK溶液(固形分78質量%)35.4部、N−メチルエタノールアミン26.5部およびジエタノールアミン37.1部を加えた。これを120℃で2時間反応させ、目的とする樹脂を得た。
製造例2 ブロックポリイソシアネート硬化剤の調製
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(コロネートEH)199.1部とメチルイソブチルケトン31.6部を仕込み、窒素雰囲気下40℃に加熱保持した。これへジブチル錫ジラウレート0.2部を加え、さらにメチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより2時間かけて滴下し、滴下終了後、IRスペクトルによりイソシアネート基のピークが消失するまで70℃で反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン38.1部およびブタノール1.6部を加え冷却し、固形分80%のブロックポリイソシアネート硬化剤を得た。
製造例3 エポキシ樹脂系顔料分散用樹脂の調製
エピコート828 382部、ビスフェノールA118部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下150〜160℃へ加熱した。反応混合物を150〜160℃でエポキシ当量が500に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を140〜145℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化トルエンジイソシアネート203部を加えた。反応混合物を140〜145℃に約1時間保ち、次いで、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル209部を加えた。次に、反応混合物を90℃以下に冷却し、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン−2−オール272部、ジメチロールプロピオン酸134部、脱イオン水144部を加えた。この混合物を約8の酸価が得られるまで65〜75℃で反応させた。これを冷却し、30%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用樹脂を得た。
製造例4 カチオン性メインエマルションの調製
製造例1のカチオン性エポキシ樹脂と製造例2のポリイソシアネート硬化剤を固形分として70:30の割合で混合し、酢酸で中和率40%に中和し、脱イオン水を加え、ゆっくり希釈し、ついで不揮発分が37質量%になるようにメチルイソブチルケトン及び脱イオン水を除去し、バインダー樹脂エマルションであるカチオン性メインエマルションを得た。
実施例1 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの調製
下記配合量のものを分散することによりカチオン性顔料分散ペーストを調製した。
Figure 2009227820
*1:C−300、竹原化学工業株式会社製、吸油量4ml/100g、平均粒径1.2μm
*2:ライオン株式会社製、アルコール系脂肪酸エステル
なお上記表中、カーボンブラック:三菱化学株式会社製、MA−100、酸化チタン:石原産業株式会社製、タイペークCR−97である。
カチオン電着塗料組成物の調製
製造例4のカチオン性メインエマルション38.7質量部、上記より得られたカチオン性顔料分散ペースト13.3質量部、および脱イオン水48.0質量部を混合して、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物における、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)は1/4.2であった。
実施例2〜12および比較例1〜7
体質顔料および顔料沈降防止剤を表5〜8記載のものに変更して、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料組成物を調製した。但し、実施例5〜8および比較例4、5における顔料沈降防止剤「カオーワックス EB−G」は、10質量部用いており、実施例9〜12および比較例6、7における顔料沈降防止剤「エソミン C/12」は、5質量部用いている。
表5〜8に記載される体質顔料および顔料沈降防止剤の詳細を記載する。
Figure 2009227820
なお、体質顔料の吸油量は、JIS K5101の規定に準拠した煮あまに油法によって実際に測定した値である。
実施例13 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの調製
下記配合量のものを分散することによりカチオン性顔料分散ペーストを調製した。
Figure 2009227820
なお上記表中、カーボンブラック:三菱化学株式会社製である。
カチオン電着塗料組成物の調製
製造例4のカチオン性メインエマルション25.8質量部、上記より得られたカチオン性顔料分散ペースト20.9質量部、および脱イオン水53.3質量部を混合して、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物における、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)は1/2.0であった。
実施例14
体質顔料を焼成カオリン2に変更したこと以外は実施例13と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
実施例15 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの調製
下記配合量のものを分散することによりカチオン性顔料分散ペーストを調製した。
Figure 2009227820
なお上記表中、カーボンブラック:三菱化学株式会社製である。
カチオン電着塗料組成物の調製
製造例4のカチオン性メインエマルション52.4質量部、上記より得られたカチオン性顔料分散ペースト1.3質量部、および脱イオン水46.4質量部を混合して、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物における、顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)は1/50であった。
実施例15
体質顔料を焼成カオリン2に変更したこと以外は実施例14と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物について、沈降性および再分散性の評価を行った。
沈降性
200mlのメスシリンダーに、上記実施例または比較例によって調製された電着塗料組成物200mlを入れ、室温で3日間静置した。次いで、生じた沈殿物の沈降量を目視にて測定した。
沈降状態の確認
上記沈降性試験によって形成した沈殿物に対して、直径5mmのガラス棒をメスシリンダーの上方から入れて沈殿物をつつき、沈殿物が陥没するか否かを目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
A:非常にソフト、メスシリンダーの上方からガラス棒を入れた際、沈殿物が大きく舞い上がる
B:ソフト、メスシリンダーの上方からガラス棒を入れた際、ガラス棒の自重で沈殿物の陥没が確認される
C:ハード、メスシリンダーの上方からガラス棒を入れた際、ガラス棒の自重では沈殿物の状態に変化はみられない
再分散性
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物85gを、100ml試験管に入れて一週間静置し、沈殿を生成させた。次いで、沈殿物が完全に分散するまで、試験管を上下方向に180度回転させた。この回転させた回数を測定し、以下の基準で評価した。評価基準は以下の通りである。
A:回転数1〜10
B:回転数11〜20
C:回転数21〜60
D:回転数61以上
Figure 2009227820
Figure 2009227820
Figure 2009227820
Figure 2009227820
*表6および表7中、「比較例3」は参考用として表5と重複して記載している。
上記表5〜8に示されるとおり、実施例の電着塗料組成物はいずれも沈殿の沈降量が少なく、また沈殿物はソフトな状態であり、再分散性にも優れることが確認できた。一方、比較例の電着塗料組成物は、実施例のものと比較して沈降量が多く、また沈殿物もハードな状態であり再分散性に劣ることが確認できた。
また実施例13、14に示されるように、本発明においては、顔料(b)/バインダー樹脂(c)において顔料の含有量がより高い場合であっても、顔料の沈降量が低く、また再分散性も良好であることが確認できた。
本発明の電着塗料組成物は、このように顔料(b)の含有量が高く、さらに顔料(b)中における体質顔料の割合が高い場合であっても、顔料の沈降量が低く、また再分散性も良好であるという特徴を有している。
本発明の電着塗料組成物は、長時間静置させた場合であっても沈殿物が少ない。そのため、電着塗料組成物の貯蔵における常時撹拌、および電着塗装における電着槽の常時撹拌を必要とせず、撹拌を省略したり断続的に撹拌させたりすることができる。これにより、電着塗装における電気使用量などの塗装コストそして電気使用に基づくCO排出量を大幅に削減することができる。本発明の電着塗料組成物はさらに、一旦沈降した顔料が強固に凝集しないという特徴がある。そのため、何らかの事情により顔料が一旦沈降した場合であっても、沈降した顔料を容易に再分散させることができることとなる。本発明の電着塗料組成物はさらに、顔料濃度が高い場合であっても分散安定性に優れるという特徴も有している。

Claims (4)

  1. 脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤(a)、顔料(b)、およびバインダー樹脂(c)、を含む電着塗料組成物であって、
    顔料(b)が吸油量70ml/100g以下である体質顔料を含む、
    電着塗料組成物。
  2. 前記体質顔料がクレーを含む、請求項1記載の電着塗料組成物。
  3. 顔料(b)とバインダー樹脂(c)の樹脂固形分との質量比(b)/(c)が1/2〜1/50である、請求項1または2記載の電着塗料組成物。
  4. 前記脂肪酸の誘導体が、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド化合物、あるいは脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド化合物のエチレンオキサイド開環付加物である、請求項1〜3いずれかに記載の電着塗料組成物。
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