JP2009249709A - 小物品を電着塗装する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】小物品の電着塗装において、被塗物の浮きを防ぎ、浮きに伴う通電不良および電着塗装不良を改善する方法の提供。
【解決手段】搬送手段5によって搬送される小物品3にカチオン電着塗料組成物2を電着塗装する方法であって;電着槽1におけるカチオン電着塗料組成物2の撹拌は、小物品3を電着槽1に入槽する部分のカチオン電着塗料組成物2の水平流速が1〜7cm/秒となる範囲における撹拌であり;カチオン電着塗料組成物2は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物からなる顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含み、(b)顔料の含有量は塗料固形分100重量部に対して12〜20重量部であり、(a)顔料沈降防止剤の含有量は、(b)顔料100重量部に対して5〜20重量部である;小物品を電着塗装する方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、小物品を電着塗装する場合に生じうる通電不良およびこれに伴う電着塗装不良を改善する、小物品を電着塗装する方法に関する。
カチオン電着塗装は、導電性を有する被塗物をカチオン電着塗料組成物中に陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるという優れた利点を有する。そのため、自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装としてのみならず、自動車構成部品または家電製品構成部品等の各種部品のような、その大きさおよび重量が比較的小さい小部品の防錆性下塗り塗装としても広く用いられている。
カチオン電着塗料組成物には一般に、防錆顔料および体質顔料が、防錆効果および塗膜物性の向上を目的として加えられており、隠蔽力の高いカーボンブラックなどが必要に応じて加えられている。これらの顔料は、塗料組成物中において溶媒中に分散した状態にある。しかしながらこれらの顔料は一般に比重が高いものが多く、そのため電着塗料組成物中において沈降が生じやすい。例えば無機顔料を含む従来の電着塗料組成物は、ほんの数時間の静置によって無機顔料が沈降する。そして沈降した顔料は強固に凝集するため、再び撹拌を行っても元の分散状態に戻すことは非常に困難である。このような顔料の沈降および凝集を防ぐため、電着塗料組成物を含む電着槽においては常時撹拌が行われ、これにより顔料の沈降および凝集発生を防いでいる。
ところで、小部品を被塗物として電着塗装する場合には、図1に模式的に示すように、塗装される小物品(被塗物)3がハンガー4と呼ばれる吊り掛け手段に吊り下げられて、搬送手段5により移動される。これにより、被塗物3は電着槽1に入槽されて電着槽1に満たされている電着塗料組成物2に浸漬され、その浸漬中に小物品3が陰極として陽極との間で電圧が印加されて電着塗装され、被塗物に電着塗膜が析出することとなる。
このように小物品を被塗物として電着塗装する場合においては、自動車車体などの大型被塗物を電着塗装する際には生じない、被塗物の浮きの問題がある。この問題は、重量が軽く自重が小さい小物品を電着槽1に入槽させる際に、浮力および特に電着塗料組成物2の水平流速の影響を受けて、吊り掛け手段であるハンガー4に吊り下げられた小物品3の吊り下げ方向が変化し、これにより小物品の一部がカチオン電着塗料組成物中に浸漬されなくなるという問題である。図2は、電着塗装ラインにおけるこのような被塗物の浮きを模式的に示す説明図である。
図2に例示されるような、電着塗料組成物中に完全に浸漬されていない小物品(被塗物)は、電圧を印加しても電着塗料組成物へ電気が良好に流れず、通電不良となる。さらにこのように一旦通電不良が生じた被塗物は、例えその後に電着塗料組成物中に完全に浸漬されたとしても、干渉現象(バイポーラ現象)によって、電着塗膜が不均一な状態で析出するという問題がある。
電着塗装における干渉現象とは、電着塗装される被塗物に通電不良が生じることにより、通電不良が生じた被塗物が電着塗装ラインにおける通常の電流回路から独立した導電体となった場合に生じる、被塗物上において電着塗膜電着塗膜が不均一な状態で析出するという現象である。詳しくは、複数の被塗物が順次搬送され電着塗料組成物中に浸漬される電着塗装において、ある1つの被塗物が浮きなどにより通電不良が発生すると、この通電不良が発生した無通電状態にある被塗物は、これと近接した正常な通電状態にある被塗物が有する負電荷の影響を受けて静電気的引力により被塗物内で分極が生じ、正電荷および負電荷の両方を有することとなる(電気的中性の法則)。この分極が生じた被塗物は、負電荷を帯びた部分は通常の電着塗装と同様に電着塗膜が析出する一方で、正電荷を帯びた部分は陽極電極と同様の挙動を示し、電着塗膜が析出することなく、かつ、水の電気分解により酸素および酸が発生することとなる。そして一旦このような干渉現象が生じた被塗物は、例えその後に通電状態が回復したとしても、電着塗膜析出に必要とされる所定通電時間に満たないために電着塗膜が薄くなるという問題、さらには、正電荷を帯びた、陽極電極と同様の挙動を示した部分は、その表面に残存する酸素ガスが電着塗膜の析出を阻害し、析出する電着塗膜にピンホール状の塗膜不良を残すという問題をもたらすことがある。小物品の電着塗装においては特に、このような干渉現象および電着塗膜不良の発生をもたらす、電着槽入槽時における被塗物の浮きを防止することが必要とされている。
特開平8−20896号公報(特許文献1)には、電着塗装用吊り治具への被塗物の懸吊方法および吊り治具が記載されている。この特許文献1に記載される発明は、電着塗装における吊り治具への電着塗膜析出およびこれに伴う通電性悪化を防止し、吊り治具への被塗物の懸吊が安定していて被塗物が外れにくい、吊り治具への被塗物の懸吊方法を提供するものである。
登録実用新案3074907号公報(特許文献2)には、電着塗装用吊り治具が記載されている。この吊り治具は、特に軽量および浮き易い形状の被塗物について、塗料浴槽内における浮力および塗料撹拌流による脱落を防止し、通電不良の発生を防ぐことを目的としたものである。また特開平9−217198号公報(特許文献3)には、被塗物懸吊部材と被塗物とを相互に確実に食い込ませて電着塗装時の通電不良をなくし、被塗物を確実に支持することを目的とした、電着塗装用吊り治具が記載されている。このようにこれらの特許文献1〜3に記載される電着塗装用吊り治具に関する発明および考案はいずれも、治具の形状の面から電着塗装時の通電不良の問題を解決することを目的としたものである。一方で本発明は、電着塗装用吊り治具の形状は特に制限されることはなく、これらの特許文献1〜3に記載される発明とは発明の構成が異なるものである。
実開平6−42965号公報(特許文献4)には、電着槽内の塗料液中に浸漬された各被塗物間において、これらの各被塗物が干渉現象(バイポーラ現象)を生じないようにするシールド部材を設けたことを特徴とする電着塗装装置が記載されている。一方で本発明は、電着塗装装置に新たなシールド部材を設けるものではなく、特許文献4に記載される発明とは発明の構成が異なるものである。
特開2008−24893号公報(特許文献5)には、(a)主鎖中にポリアルキレンオキシド鎖を10〜26重量%の量で含み、その末端には長鎖脂肪酸基を0.5〜3.0重量%の量で含む数平均分子量2000〜3500を有するカチオン性エポキシ樹脂組成物および(b)硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物が記載されている。この発明は、特定のカチオン性エポキシ樹脂組成物をメインバインダーとしてカチオン電着塗料組成物に用いることによって、耐ジャンプアップ性、耐油ハジキ性および干渉修復性を改善し、小さな部品などの電着塗装に適した塗料組成物を提供するものである。一方で本願発明は、特定のメインバインダーを用いるものではなく、特許文献5に記載される発明とは発明の構成が異なるものである。
特開平8−20896号公報 登録実用新案3074907号公報 特開平9−217198号公報 実開平6−42965号公報 特開2008−24893号公報
本発明は上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、小物品を電着塗装する場合において、被塗物の浮きを有意に防ぎ、浮きに伴う通電不良および電着塗装不良を改善することを課題とする。
小物品の電着塗装時における浮きの問題およびこれに伴う通電不良の解決手段について、電着塗装用吊り治具に関する手段は上記の通り幾つか提案されている。一方、本発明においては、電着塗装ラインにおける被塗物の搬送状態そして電着塗料組成物の撹拌状態に着目することによって、上記課題の解決を図ることとした。
そして本発明は、
搬送手段によって搬送される小物品を被塗物としてカチオン電着塗料組成物を電着塗装する方法であって、
このカチオン電着塗料組成物を収容する電着槽におけるカチオン電着塗料組成物の撹拌は、この小物品が電着槽に入槽する部分のカチオン電着塗料組成物の水平流速が1〜7cm/秒となる範囲における撹拌であり、
このカチオン電着塗料組成物は、
カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含む、カチオン電着塗料組成物であり、
(b)顔料の含有量はカチオン電着塗料組成物の塗料固形分100重量部に対して12〜20重量部であり、
(a)顔料沈降防止剤の含有量は、(b)顔料100重量部に対して5〜20重量部である、
小物品を電着塗装する方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記小物品の大きさは、縦140〜180mm、横220〜300mm、厚み0.5〜10mmである直方体に収まる大きさであって、かつこの小物品の重量は100〜300g/個であるのが好ましい。
また、上記小物品の電着槽への入槽速度は1〜5m/秒であるのが好ましい。
従来の電着塗装方法においては、自重が軽いため電着槽入槽時に浮きが生じやすい小物品を電着塗装する場合であっても、本発明の方法により電着塗装を行うことによって、浮きが生じることなく、これにより通電不良および干渉現象の発生を伴うことなく電着塗装することができる。本発明の方法は、搬送手段によって被塗物(小物品)を連続的に運搬する電着塗装ラインによる小物品の電着塗装に非常に有用である。
本発明に至るまでの過程
重量が軽く自重が小さい小物品を電着塗装する際に生じうる、図2に示されるような、小物品を電着槽1に入槽させる際に、浮力および特に電着塗料組成物2の水平流速の影響を受けて、吊り掛け手段であるハンガー4に吊り下げられた小物品3の吊り下げ方向が変化し、これにより小物品の一部においてハンガーの接点がずれてしまい通電不良が生じることとなる。このような被塗物の浮きの問題を解決する1手段として、カチオン電着塗料組成物の撹拌を止めるまたは弱める手段がある。そこで小物品の塗装に一般的に用いられる、顔料濃度15重量%であるカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗装において、カチオン電着塗料組成物の撹拌を弱めたところ、カチオン電着塗料組成物の水平流速が低くなり、小物品の浮きの問題を解決することができた。その一方で、カチオン電着塗料組成物の撹拌を弱めたことによって顔料の沈降が発生し、被塗物の水平面に沈降した顔料の降り積もりが生じた。このため、特に被塗物の水平面における電着塗膜の外観が劣ることとなった。
このような知見に基づき、本発明においては、小物品の電着塗装において浮きの発生を防止することができる最適撹拌状態を実現でき、かつ、このような撹拌状態であっても顔料沈降などが発生せず、さらに、防錆性下塗り塗装において必要とされる機能(耐油ハジキ性、良好な塗膜硬度など)を満たすカチオン電着塗料組成物について検討したところ、以下に示すカチオン電着塗料組成物を用いることによって本発明の課題を解決することができることを見いだした。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料を含み、さらにカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含むバインダー樹脂、硬化触媒を含有する。本明細書中、「脂肪酸」と「脂肪酸の誘導体」をまとめて「脂肪酸類」と記載することもある。
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環することにより製造することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィドおよび酸混合物がある。本発明において1級、2級または/および3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用してもよい。
ブロックイソシアネート硬化剤
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、および1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤として使用してよい。
脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、およびホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのがよい。
顔料(b)
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、一般的に用いられる顔料を含有する。顔料(b)として、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックまたはそれらの組合せを含有させる。無機顔料として、例えば、チタンホワイトおよびベンガラのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレーおよびシリカのような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げられる。本明細書中で「有機顔料」とは、無機顔料と対比する概念で用いる。有機顔料の例としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、またはベリレンレッド等が挙げられる。
本発明において、上記いずれの顔料も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
本発明において、顔料(b)は、カチオン電着塗料組成物の全固形分100重量部に対して12〜20重量部を占める量でカチオン電着塗料組成物に含有される。上記下限は14重量部であるのが好ましく、上記上限は18重量部であるのがさらに好ましい。顔料の含有量が12重量部未満である場合は、塗膜硬度が軟らかくなり、油ハジキ性が劣ることとなる。一方、顔料の含有量が20重量部を超える場合は、塗膜平滑性が低下するおそれがある。ここで油ハジキ性とは、一般に、被塗物に付着していた油が、塗装後の加熱硬化工程で突沸することにより生じる塗膜の欠陥である。被塗物が金属基材である場合、特に鉄などの錆びやすい金属基材には、酸化を防止するために油が塗布されている。油ハジキの発生を防ぐためには、汚染源である油を完全に除去すれば解決するのであるが、工業的規模での完全除去は非常に困難である。そのため、下塗り塗装として用いられる電着塗料組成物においては特に、耐油ハジキ性に優れることが必要とされる。
硬化触媒
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒を加えて、ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離を促進させることができる。本発明で使用する硬化触媒としては、硬化剤のブロック剤の解離を促進させるものであれば特に限定されないが、代表的な硬化触媒としては、錫触媒が挙げられる。錫触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、モノブチル錫オキサイドおよびそれらの混合物等の固体触媒、ジブチル錫ジラウレート等の液状錫触媒、およびそれらの混合物などが挙げられる。
上記硬化触媒は、電着塗料組成物中の樹脂固形分に対し0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で配合する。
カチオン性アクリル樹脂
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、必要に応じてカチオン性アクリル樹脂を含んでもよい。カチオン性アクリル樹脂は、分子内に複数のオキシラン環を含むアクリル共重合体とアミンとの開環付加反応によってつくることができる。このようなアクリル重合体は、(i)グリシジル(メタ)アクリレートと、(ii)ヒドロキシル基含有アクリルモノマー、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プラクセルFAおよびFMシリーズとして知られる2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応生成物と、(iii)その他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーを共重合することによって得られる。その他のアクリル系および非アクリル系モノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
このオキシラン環を含むアクリル共重合体は、エポキシ樹脂のオキシラン環をアミンで開環してカチオン性基を導入するのと同様に、そのオキシラン環の全部を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環することにより、カチオン性アクリル樹脂とすることができる。
他の方法として、アミノ基を有するアクリルモノマーを他のモノマーと共重合することによってカチオン性アクリル樹脂を得ることもできる。この場合、前述の(i)グリシジル(メタ)アクリレートの代わりにアミノ基含有アクリルモノマーを用いる。アミノ基含有アクリルモノマーは、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有アクリルモノマーなどである。
カチオン性アクリル樹脂は、重合体の数平均分子量が1,000〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、より好ましくは5,000〜10,000の範囲内になるように常法によって前記モノマーを共重合することによって得られる。
カチオン性アクリル樹脂を用いる場合の配合量は、例えば、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分100重量部に対して10〜100重量部などが挙げられる。
顔料沈降防止剤(a)
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、脂肪酸、脂肪酸の誘導体(両方あわせて脂肪酸類と呼ぶ。)、アミン化合物、またはこれら3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤を含有する。本発明においては、顔料沈降防止剤(a)を電着塗料組成物に加えることによって、塗料組成物中に含まれる顔料の分散安定性が向上する。そして、無機顔料を含む電着塗料組成物であるにも関わらず、電着塗料組成物を撹拌せずに静置しておいた場合であっても顔料沈降物が少ない塗料組成物を製造することができる。
脂肪酸類とは、上記の通り、脂肪酸またはその誘導体である。脂肪酸として、例えば、直鎖飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が含まれる。また脂肪酸の誘導体として、例えば、上記脂肪酸を、アルコール、多価アルコール(グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等)で変性した脂肪酸エステル、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性した脂肪酸エチレンオキサイド付加物または脂肪酸プロピレンオキサイド付加物、アミン化合物で変性した脂肪酸アミド化合物、および多官能脂肪酸が含まれる。これらの脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド化合物には、エチレンオキサイドが開環付加したもの(エチレンオキサイド開環付加物)も含まれる。これらの脂肪酸類は、分子の骨格中に不飽和結合、エーテル結合、エステル結合等の化学結合、水酸基、アミノ基、カルボニル基等の官能基、酸素、窒素、イオウ、ハロゲンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。また多官能カルボン酸なども、脂肪酸の誘導体に含まれる。脂肪酸の誘導体として、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド化合物およびこれらのエチレンオキサイド開環付加物を用いるのがより好ましい。
本発明で使用される脂肪酸類において、好ましくは炭素数4〜22の脂肪酸およびその誘導体であり、より好ましくは炭素数7〜20の脂肪酸およびその誘導体である。
具体的な脂肪酸類として、例えば以下の化合物が挙げられる:
(1)直鎖飽和脂肪酸
アラキジン酸、トリコサン酸、ベヘニン酸、ヘンエイコサン酸、エイコサン酸、ノナデカン酸、ステアリン酸、ヘプタデカン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ミリスチン酸、トリデカン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、オクタン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、吉草酸、酪酸等、花王社製精製ステアリン酸(450V、550V、700V)等;
(2)分岐飽和脂肪酸
イソステアリン酸、メチルテトラデカン酸、メチルヘプタデカン酸、メチルオクタデカン酸、イソ吉草酸等;
(3)不飽和脂肪酸
オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ウンデセン酸、ソルビン酸、クロトン酸等;
(4)多官能カルボン酸
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、フタル酸、ドデカン二酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、3−tert−ブチルアジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等;
(5)ヘテロ原子含有脂肪酸
ヘキシロキシ酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、サリチル酸、安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、N−アセチルグリシン、N−アセチル−β−アラニン、チオクト酸等;
(6)脂肪酸エステル(アルコールエステル系)
ライオン社製カデナックス(GS-90,SO-80C)、花王社製レオドール(SP-L10、SP-P10,SP-S10V,SP-S30V、AS-10、AO-10、AO-15V)、花王社製レオドールスーパーSP-L10、花王社製エマゾール(L-10(F)、P-10(F)、S-10V、O-10V)等;
(7)脂肪酸エステル(エチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル系)
ライオン社製リオノン(DT-600S,DEH-40)、旭電化工業社製アデカエストール(OEG-102,OEG-106)等;
(8)脂肪酸メチルエステル(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加系)
ライオン社製レオファット(LA-110M-95,OC-0503M)、花王社製エマノーン(1112,3199,3299,4110,CH-25, CH-40, CH-60(K), CH-80)等
(9)脂肪酸エチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソファット(O/15,O/20,60/15)、旭電化工業社製アデカエストール(TL-144,TL-161,TL-162,S-60,S-80,T-81,T-82)、花王社製レオドール(TW-L120, TW-L106, TW-P120, TW-S120V, TW-S106, TW-S320V, TW-O120V, TW-O106V, TW-O320V, TW-IS399C, 430,440,460)、花王社製レオドールスーパー TW-L120等;
(10)脂肪酸エステル(グリセリンエステル系)
花王社製エキセルT-95,VS-95,O-95R,200,300,122V,P-40S)、花王社製レオドール(MS-50,MS-60,MO-60,MS165V)等
(11)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸モノアミド化合物
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等;
(12)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸モノアミド
オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エシル酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等、これらの工業製品として、例えば、花王社製カオーワックス(EB-G、EB-P、EB-FF、85-P、220、230-2)、花王社製脂肪酸アマイドS, T, O-N, E)、旭電化工業社製アデカソールYAなどが含まれる;
(13)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸ビスアミド類
メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N'−ジステアリルセバシン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド等;
(14)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸ビスアミド類
エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミド等;
(15)脂肪酸アミド化合物である置換アミド類
N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等;
(16)脂肪酸アミド化合物である芳香族ビスアミド類
メチロールステアリン酸アミド類;メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、N,N−ジステアリルイソフタール酸アミド、メタキシリレンビスステアリン酸アミド等;
(17)脂肪酸アミド化合物である分岐型アミド類
N,N’−2−ヒドロキシエチルステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等;
(18)脂肪酸アミド化合物であるアルカノールアミド類
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノ−ルアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ミリスチン酸モノプロパノールアミド、オレイン酸モノプロパノールアミド、ポリオキシアルキレンアルカノールアミドなど、工業製品としてライオン社製アーマイド(O,HT)、ライオン社製アーモスリップ(CP,E,E-Y)など;
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
アミン化合物は、窒素原子に炭素数4以上のアルキル鎖が結合したアミン化合物であるのが好ましい。窒素原子に結合するアルキル鎖は1つであってもよく、または2以上のアルキル鎖が結合していてもよい。これらのアミン化合物として、1級、2級および3級アミンの何れを用いてもよい。これらのアミン化合物はその骨格中に複数個のアミノ基を有していてもよく、また、骨格自体がエチレンオキサイド等で変性されていてもよい。本発明で使用されるアミン化合物は、好ましくはアルキル鎖の炭素数4〜22であり、より好ましくはアルキル鎖の炭素数7〜20である。
具体的なアミン化合物として、例えば以下のものが挙げられる:
(1)1級アミン化合物
(1−1)脂肪族モノおよびポリアミン化合物
n-ブチルアミン、アミルアミン、n-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ノニルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、2,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン等の脂肪族1級アミン化合物類、
(1−2)脂環族モノおよびポリアミン化合物
シクロヘキシルアミン、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,5- トリメチル-1- アミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1-メチル-2,4- ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン等の脂環族1級アミン化合物類、
(1−3)芳香族モノおよびポリアミン化合物
アニリン、メタおよびパラトルイジン、ナフチルアミン、1,3-および1,4-フェニレンジアミン、1-メチル-2,4- ジアミノベンゼン、1-メチル-2,6- ジアミノベンゼン、2,4,- および 4,4,-ジアミノジフェニルメタン、 4,4,-ジアミノビフェニル、1,5-および2,6-ナフタレンジアミン等の芳香族1級アミン化合物類、
(1−4)アラルキルモノおよびポリアミン化合物
1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,5-および2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレン等のアラルキル1級アミン化合物類、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミンCD,OD,TD,HT,8D,12D,14D,16D,18D)、花王社製ファーミン(CS,08D,20D,80,86T,O,T)等が挙げられる;
(2)2級アミン化合物
ジ-n-ブチルアミン、ジイソアミルアミン、ジベンジルアミン、メチルジエチルエチレンジアミン、メチルアニリン、ピペリジン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、モルホリン、N-メチル-グルカミン、グルコサミン、t-ブチルアミン等の2級アミン、
これらの工業製品として、花王社製ファーミン(D86)等が挙げられる;
(3)3級アミン化合物
トリ(n-ブチル)アミン、テトラメチルエチレンジアミン、1-メチルピペリジン、1-メチルピロリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、トリイソプロパノールアミン等の3級アミン、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミン(DMMCD,DMTD,DMMHTD,DM12D,DM14D,DM16D,DM18D,DM22D, M2HT, M2O,M210D)、花王社製ファーミン(DM24C,DM0898,DM1098,DM2098,DM2465,DM2463,DM2458,DM4098,DM4662, DM6098, DM6875,DM8680,DM8098,DM2285,M2-2095,T-08)等が挙げられる;
(4)アルカノールアミン
花王社製アミノーン(PK-02S,L-02)等;
(5)変性アミン
(5−1)アルキルアミンエチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソミン(C/12,C/15,C/25,T/12,T/15,T/25,S/15,S/25,O/12,O/17,O/20,HT/12, HT/14, HT/17)、ライオン社製エソマイド(HT/15,HT/60,O/15)、旭電化工業社製アデカソール(CO,COA,CMA,YA-6)、花王社製アミート(105,320);
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
これらの脂肪酸類とアミン化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。顔料沈降防止剤としてより好ましくは、炭素数4〜22の脂肪酸、炭素数4〜22の脂肪酸の誘導体、またはこれら2種類の混合物が挙げられる。
脂肪酸類またはアミン化合物を加えることによって顔料(b)の分散性が向上する作用機構は明確ではないが、例えば、脂肪酸が顔料(b)に対して単分子膜のような構造または2分子膜のような構造の配置をとり、これによって顔料(b)の水に対する抵抗等が大きくなり、顔料(b)の沈降が防止されると考えられる。本発明において顔料沈降防止剤として使用される脂肪酸類またはアミン化合物は、分子膜のような構造に配置する能力が高いため、顔料(b)の沈降を防止する性能に優れると考えられる。
顔料沈降防止剤(a)は、電着塗料組成物中に含まれる顔料100重量部に対して下限5重量部、上限20重量部を占める量で電着塗料組成物に含有される。上記上限は15重量部であるのが好ましい。顔料沈降防止剤(a)の含有量が20重量部を超える場合は、得られる塗膜の硬度が軟らかくなるという不具合がある。一方で顔料沈降防止剤(a)の含有量が5重量部未満である場合は、有意な顔料沈降防止効果を得ることができず、沈降した顔料が被塗物の水平面に降り積もることとなる。
カチオン顔料分散ペースト
顔料(b)を電着塗料組成物の成分として用いる場合は一般に、顔料(b)を顔料分散樹脂とよばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料(b)は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。固体状硬化触媒を用いる場合、この顔料分散ペーストを作成する際に加えてもよいし、他の塗料製造工程で加えてもよい。
カチオン性顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は顔料分散ペーストの固形分中で20〜40重量%、顔料および固体状硬化触媒は60〜80重量%の比率で用いる。カチオン顔料分散ペーストは、カチオン性顔料分散樹脂、および顔料、必要に応じて酸などの中和剤および水性媒体を、混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて得ることができる。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(カチオン性メインエマルション)、必要に応じて用いられる、カチオン性アクリル樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(サブエマルション)、顔料分散ペースト、脱イオン水を所定の割合で混合することによって調製される。
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物の調製において、顔料沈降防止剤(a)は、何れの分散・混合段階においても加えることができる。顔料沈降防止剤(a)は、好ましくは、上記のカチオン性顔料分散ペーストに加えられ、その後、カチオン性メインエマルション等の他の成分と混合される。この場合は、顔料の沈降を防止する性能により優れるからである。
水性媒体としては、例えばイオン交換水を用いることができ、少量のアルコール類を含んでいてもよい。そして水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級および/または3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂のブロックイソシアネート硬化剤に対する重量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
電着塗料組成物は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
電着塗装
本発明の方法においては、カチオン電着塗料組成物を収容する電着槽に、小物品である被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して、電着塗装する。被塗物である小物品は、図1に模式的に示すように、小物品(被塗物)3がハンガー4と呼ばれる吊り掛け手段に吊り下げられて、搬送手段5により移動し、電着槽1中に満たされているカチオン電着塗料組成物2に浸漬され、その間に小物品3および陽極に電圧が印加されて電着塗装される。上記搬送手段として、例えばコンベア方式またはタクト方式などが挙げられる。
本発明においては、電着塗装におけるカチオン電着塗料組成物の撹拌は、小物品が電着槽に入槽する部分のカチオン電着塗料組成物の水平流速が1〜7cm/秒となる範囲における撹拌であることを条件とする。ここで「小物品が電着槽に入槽する部分」とは、カチオン電着塗料組成物の液表面部を意味し、より詳しくはカチオン電着塗料組成物の液表面から水深15cmまでの部分を意味する。
現状用いられる一般的な電着塗装システムにおけるカチオン電着塗料組成物の水平流速は、一般に10〜15cm/秒である。このように、本発明におけるカチオン電着塗料組成物の水平流速は、一般的な電着塗装システムにおける水平流速と比較してより低く設定されている。そしてこの水平流速の低さによって、被塗物が小物品であってもカチオン電着塗料組成物浸漬時における浮きの発生が防止され、これにより干渉現象発生による不均一な電着塗膜析出を防ぐことができる。そして本発明においては、カチオン電着塗料組成物の水平流速がこのように低くても、顔料の沈降が生じず、水平塗膜外観が良好な電着塗膜を形成することができる。
また、搬送手段によって搬送される小物品の電着槽への入槽速度は1〜5m/秒であるのがより好ましく、3〜5m/秒であるのがさらに好ましい。この入槽速度が上記範囲であることによって、カチオン電着塗料組成物浸漬時における浮きの発生をより有効に防止することができる。
被塗物
本発明の方法においては、電着塗装される被塗物としていわゆる小物品が用いられる。ここで小物品とは、自動車構成部品または家電製品構成部品等の各種部品のような、その大きさおよび重量が比較的小さい物品を意味し、具体的には縦140〜180mm、横220〜300mm、高さ100〜200mmである直方体に収まる大きさ、より具体的には縦140〜180mm、横220〜300mmの大きさであり、厚みが0.5〜10mmであり、かつ重量は100〜300g/個であるような物品をいう。なお小物品の材質は導電性があれば特に限定されるものではなく、例えば各種金属基材が挙げられる。これらの小物品は、必要に応じて予め、浸漬、スプレー方法等によりリン酸亜鉛処理またはジルコニウム処理などの表面処理の施されていてもよい。
電着塗装
電着過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物である小物品を浸漬する過程、および、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、電着塗膜を析出させる工程、から構成される。電着塗装の際の印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
電着塗装後、被塗物の表面に形成された被膜を焼き付けにより硬化させる。焼き付けには、例えば焼付炉やオーブン、赤外ヒートランプを用いることができる。焼き付け温度は、通常140℃〜180℃である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
製造例1 カチオン性エポキシ樹脂の調製
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を備え付けた反応容器に、エピコート1001(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂)99.8部、エピコート1004(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量950のビスフェノールA型エポキシ樹脂)850.2部、ノニルフェノール55部、メチルイソブチルケトン(MIBK)193.3部およびベンジルジメチルアミン4.5gを加え、140℃で4時間反応し、エポキシ当量1175を有する樹脂を得た。ここにエチレングリコールn−ヘキシルエーテル69.1部、2−アミノエチルエタノールアミンのMIBKケチミン化物のMIBK溶液(固形分78重量%)35.4部、N−メチルエタノールアミン26.5部およびジエタノールアミン37.1部を加えた。これを120℃で2時間反応させ、目的とする樹脂を得た。
製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤の調製
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(コロネートEH)199.1部とメチルイソブチルケトン31.6部を仕込み、窒素雰囲気下40℃に加熱保持した。これへジブチル錫ジラウレート0.2部を加え、さらにメチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより2時間かけて滴下し、滴下終了後、IRスペクトルによりイソシアネート基のピークが消失するまで70℃で反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン38.1部およびブタノール1.6部を加え冷却し、固形分80%のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例3 エポキシ樹脂系顔料分散用樹脂の調製
エピコート828 382部、ビスフェノールA118部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下150〜160℃へ加熱した。反応混合物を150〜160℃でエポキシ当量が500に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を140〜145℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化トルエンジイソシアネート203部を加えた。反応混合物を140〜145℃に約1時間保ち、次いで、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル209部を加えた。次に、反応混合物を90℃以下に冷却し、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン−2−オール272部、ジメチロールプロピオン酸134部、脱イオン水144部を加えた。この混合物を約8の酸価が得られるまで65〜75℃で反応させた。これを冷却し、30%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用樹脂を得た。
製造例4 カチオン性エマルションの調製
製造例1のカチオン性エポキシ樹脂と製造例2のポリイソシアネート硬化剤を固形分として70:30の割合で混合し、酢酸で中和率40%に中和し、脱イオン水を加え、ゆっくり希釈し、ついで不揮発分が37重量%になるようにメチルイソブチルケトン及び脱イオン水を除去し、バインダー樹脂エマルションであるカチオン性エマルションを得た。
実施例1 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの調製
下記成分を下記配合量で用いて分散させることにより、カチオン性顔料分散ペーストを調製した。
Figure 2009249709
*1:ライオン株式会社製、アルコール系脂肪酸エステル
なお上記表中、カーボンブラック:三菱化学株式会社製、MA−100である。
カチオン電着塗料組成物の調製
製造例4のカチオン性エマルション38.5重量部、上記より得られたカチオン性顔料分散ペースト12.5重量部、および脱イオン水49.0重量部を混合して、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は5重量部であった。
得られたカチオン電着塗料組成物4リットルおよび撹拌子をステンレスビーカーに入れ、塗料温度を30±1℃に調整し、マグネチックスターラーを用いて回転数600rpmで数分間撹拌した。次いで、マグネチックスターラーの回転数を100rpmまで低くした。この状態におけるカチオン電着塗料組成物の水平流速は2cm/秒であった。
この撹拌状態を保ちつつ、リン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板(JIS G3141SPCC−SD、日本ペイント社製のリン酸亜鉛処理剤サーフダインSD−5000で処理)が陰極となるようにして、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装を行った。電着塗装後、被塗装物をステンレス容器内の電着槽から引き上げ、水洗し、カチオン電着未硬化塗膜を形成し、160℃で20分焼き付けることにより、硬化電着塗膜が形成された被塗装物を得た。
実施例2 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90の量を2.9重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は10重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
実施例3 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90の量を4.2重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は15重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
実施例4 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90の量を5.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は20重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
実施例5 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの量を16.9重量部に、カチオン性エマルションの量を32.7重量部に、イオン交換水の量を50.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は20重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は5重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
実施例6 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの量を9.9重量部に、カチオン性エマルションの量を41.9重量部に、イオン交換水の量を48.2重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は12重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は5重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
比較例1 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90の量を0.9重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は3重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
比較例2 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90を用いないこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は0重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
比較例3 カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン性顔料分散ペーストの量を8.3重量部に、カチオン性エマルションの量を44.0重量部に、イオン交換水の量を47.7重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は10重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は5重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
比較例4 カチオン電着塗料組成物の調製
顔料沈降防止剤であるガテナックス GS−90の量を6.6重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を調製した。得られたカチオン電着塗料組成物における、塗料固形分100重量部に対する顔料の含有量は15重量部であり、顔料100重量部に対する顔料沈降防止剤の含有量は25重量部であった。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物を、実施例1と同様にして電着塗装を行った。
比較参考例
比較例2で調製した電着塗料組成物を用いて、マグネチックスターラーの回転数を600rpmで維持した。この状態におけるカチオン電着塗料組成物の水平流速は12cm/秒であった。
この撹拌状態を保ちつつ、リン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板(JIS G3141SPCC−SD、日本ペイント社製のリン酸亜鉛処理剤サーフダインSD−5000で処理)が陰極となるようにして、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装を行った。電着塗装後、被塗装物をステンレス容器内の電着槽から引き上げ、水洗し、未硬化のカチオン電着塗膜を形成した。次いでこの未硬化の塗膜を160℃で20分焼き付けることにより、硬化電着塗膜が形成された被塗装物を得た。なおこの比較参考例における下記評価は全て、マグネチックスターラーの回転数を600rpmに維持した、水平流速12cm/秒における評価である。
一方で、このカチオン電着塗料組成物を用いて、横260mm、縦170mm、重さ138g/枚の小物品である被塗物を、既存の電着塗装システムを用いて、カチオン電着塗料組成物の水平流速12cm/秒の状態でライン塗装を行ったところ、電着槽入槽時に400枚中ほぼ40の割合で、被塗物の浮きが生じた。これらの浮きが生じた被塗物は、干渉現象により、電着塗膜が析出した箇所と析出していない箇所を有する、不均一な電着塗膜が形成された。
なお、カチオン電着塗料組成物の水平流速2cm/秒の状態でライン塗装を行った場合においては、電着槽入槽時における被塗物の浮きの発生は確認されなかった。
上記実施例および比較例について、下記基準により評価を行った。
L字塗装評価
カチオン電着塗料組成物4リットルおよび撹拌子をステンレスビーカーに入れ、塗料温度を30±1℃に調整し、マグネチックスターラーを用いて回転数600rpmで数分間撹拌した。次いで、マグネチックスターラーの回転数を100rpmまで低くした。この状態におけるカチオン電着塗料組成物の水平流速は2cm/秒であった。
リン酸亜鉛処理した、図3に示す立体形状を有する冷延鋼板(L字板、鋼板の厚さ0.8mm)を、図3の点線部分まで、カチオン電着塗料組成物中に浸漬した。この状態で鋼板を3分間静置し、その後、撹拌を停止した状態で通電し、電着塗装を行った。次いで水洗した後、160℃で20分間焼き付けた。得られた電着塗膜について、図3の(A)、(C)の箇所に形成された電着塗膜の膜厚およびRa値を測定し、下記基準により評価した。測定結果を下記表に示す。なお塗膜のRa値の測定は、JIS−B0601−2001に準拠し、評価型表面粗さ測定機(Mitsutoyo社製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。2.5mm幅カットオフ(区画数5)として7回測定し、上下消去平均によりRa値を得た。Ra値は、値が小さいほど表面上の凹凸が少なく、塗膜外観が良好であることを示す。
水平/垂直(膜厚差)
○:(A)および(C)に形成された電着塗膜の膜厚差が2μm未満である
△:(A)および(C)に形成された電着塗膜の膜厚差が2〜5μmである
×:(A)および(C)に形成された電着塗膜の膜厚差が5μmを超える
水平/垂直(Ra差)
○:(A)および(C)に形成された電着塗膜のRa値の差が0.1未満である
△:(A)および(C)に形成された電着塗膜のRa値の差が0.1〜0.2である
×:(A)および(C)に形成された電着塗膜のRa値の差が0.2を超える
水平部外観評価
上記水平面(A)の電着塗膜の外観を、下記基準に基づき目視評価した。
○:ブツの発生は確認されない
△:ブツの発生が僅かに確認される
×:数カ所でブツの発生が確認される
塗料沈降安定性
200mlのメスシリンダーに、上記実施例または比較例によって調製されたカチオン電着塗料組成物200mlを入れ、室温で96時間静置した。その後、静置状態を保ちつつ、上澄み液を採取し、この液中の固形分を測定した。そして、静置前の電着塗料組成物の固形分に対する固形分の減少率を算出し、塗料沈降性評価を行った。評価は下記基準で行った。
○:固形分減少率が0.5%未満である
△:固形分減少率が0.5〜2.0%である
×:固形分減少率が2.0%を超える
塗膜の鉛筆硬度
実施例および比較例によって得られた硬化電着塗膜を用いて、JIS K5600−5−4(1999)、ひっかき硬度(鉛筆法)に従ってハードコート層の鉛筆硬度を測定した。こうして測定した鉛筆硬度の評価を下記基準で行った。
○:鉛筆硬度HまたはHより硬い
△:鉛筆硬度F
×:鉛筆硬度HBまたはHBより軟らかい
耐油ハジキ性(突沸油ハジキ)
実施例および比較例によって電着塗装した加熱硬化前の電着塗膜を、水洗した後、30分間自然乾燥を行って水分除去を行った。水分除去した未硬化電着塗膜を有する塗装物を、網の上に水平に置き、その中央にφ14mm×高さ5mmのアルミカップを固定した。スポイトを用いてアルミカップ中に水を1滴落とした後、さらに油を1滴落とした。塗装物の水平状態を保ったまま、160℃で20分間焼き付けた。この焼き付け時においてアルミカップ中の油が電着塗膜上に飛散する。そしてこの油飛散がハジキの原因となる(突沸油ハジキ)。こうして焼き付け硬化された硬化電着塗膜の状態を目視評価した。
◎:ハジキの発生はほとんど見られない
○:径の小さいハジキがわずかに確認される
△:ハジキの発生が部分的に確認される、または径の大きいハジキが僅かに確認される
×:該当部分全面にハジキの発生が確認される、またはハジキの径が大きい
Figure 2009249709
Figure 2009249709
上記表に示されるように、実施例においては、回転数100rpm(水平流速2cm/秒)というごく弱い撹拌であっても、カチオン電着塗料組成物中における顔料沈降は確認されなかった。そのためL字塗装評価は何れも良好であった。また顔料を12〜20重量%の範囲で含んでいることから、耐油ハジキ性が良好であり、また得られた硬化電着塗膜の硬度も良好であった。一方、顔料沈降防止剤の含有量が少ないまたは含有しない比較例1および2においては、顔料の沈降が発生し、L字塗装評価が劣るものであった。顔料含有量が少ない比較例3は、耐油ハジキ性および鉛筆硬度が劣ることが確認された。また顔料沈降防止剤の量が多い比較例4もまた、耐油ハジキ性および鉛筆硬度が劣ることが確認された。
従来の電着塗装方法においては自重が軽いため電着槽入槽時に浮きが生じやすい小物品を電着塗装する場合であっても、本発明の方法により電着塗装を行うことによって、浮きが生じることなく、これにより干渉現象の発生を伴うことなく電着塗装することができる。本発明の方法は、搬送手段によって被塗物(小物品)を連続的に運搬する電着塗装ラインによる小物品の電着塗装に非常に有用である。
小物品の電着塗装ラインの電着槽部分の模式図である。 電着塗装ラインにおける被塗物の浮きを模式的に示す説明図である。 実験例で電着塗装したL字板の立体形状を示す概略図である。
符号の説明
1…電着槽、
2…電着塗料組成物、
3…部品、
4…ハンガー、
5…搬送手段、
6…矢印。

Claims (3)

  1. 搬送手段によって搬送される小物品を被塗物としてカチオン電着塗料組成物を電着塗装する方法であって、
    該カチオン電着塗料組成物を収容する電着槽におけるカチオン電着塗料組成物の撹拌は、該小物品が電着槽に入槽する部分のカチオン電着塗料組成物の水平流速が1〜7cm/秒となる範囲における撹拌であり、
    該カチオン電着塗料組成物は、
    カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含む、カチオン電着塗料組成物であり、
    (b)顔料の含有量はカチオン電着塗料組成物の塗料固形分100重量部に対して12〜20重量部であり、
    (a)顔料沈降防止剤の含有量は、(b)顔料100重量部に対して5〜20重量部である、
    小物品を電着塗装する方法。
  2. 前記小物品の大きさは、縦140〜180mm、横220〜300mm、高さ100〜200mmである直方体に収まる大きさであって、かつ該小物品の重量は100〜300g/個である、請求項1記載の小物品を電着塗装する方法。
  3. 前記小物品の電着槽への入槽速度は1〜5m/秒である、請求項1または2記載の小物品を電着塗装する方法。
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