JP2009174005A - 電着塗装方法、電着塗装装置および電着塗装システム - Google Patents

電着塗装方法、電着塗装装置および電着塗装システム Download PDF

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Abstract

【課題】電着塗料組成物に混在する異物を除去しつつ電着塗装を行うことができる電着塗装方法を提供すること。
【解決手段】電着塗料組成物に混在する異物を除去しつつ電着塗装を行う電着塗装方法であって、この電着塗料組成物が(a)顔料沈降防止剤および(b)顔料を含み、そしてこの電着塗装において用いられる電着塗装装置が、電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する油分除去部またはこの電着槽の底部に設けられた金属除去部の少なくとも一方を備えており、そして電着槽の底部の形状は、1またはそれ以上の下方傾斜構造を有し、電着塗料組成物に混在する異物の除去が、電着塗料組成物の撹拌を停止した状態において行われる、電着塗装方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、電着塗料組成物に混在する異物を除去しつつ電着塗装を行う電着塗装方法、およびこの塗装方法に用いられる電着塗装装置および電着塗装システムに関する。
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を電極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
電着塗装される被塗物は一般に、電着塗装前に切削等の形状加工などが行われる。次いで、被塗物に付着した防錆油、潤滑剤、切削剤などの油分を取り除く脱脂処理、そして形状加工の際に付着した金属粉などのゴミを取り除く洗浄処理などを経て、電着塗装が行われる。しかしながら、自動車車体などの複雑な形状を有する被塗物においては、上記脱脂処理および洗浄処理を行う場合であっても、油分や金属粉などの異物(ゴミ)を完全に取り除くことは非常に困難である。実際のところ、電着塗装工程に搬送されてくる被塗物にはこのような油分や金属粉などのゴミが付着しており、そして被塗物を電着塗料組成物中に浸漬することによって、これらのゴミが電着塗料組成物中に混在することとなる。このように電着塗料組成物中に混在した油分は、ハジキ(cratering)と呼ばれる窪みまたは凹み等の塗膜外観欠陥をもたらすという不具合がある。また電着塗料組成物中に混在した金属粉などのゴミは、形成される電着塗膜上に付着することによって塗膜外観欠陥をもたらすという不具合がある。
電着塗料組成物中に混在する金属粉を取り除く方法として、例えば電着槽の排水口にフィルタを設ける方法が挙げられる。しかしながらこの方法においては、電着槽の排水口から離れた場所に沈殿した金属粉を取り除くことは困難であった。一方、電着塗料組成物中に混在する油分を除去する方法として、電着塗料組成物をポンプでフィルタに導き濾過する方法が挙げられる。しかしながらこの方法においては、ポンプを用いることによって溶液をフィルタに強制的に通過させるために、粗大粒子混入により膜破れが生じたりするなどの不具合が発生することがあった。
特開2004−18957号公報(特許文献1)には、電着塗装装置の電着槽において、媒体(電着塗料組成物)の大部分をワーク(被塗物)の出槽側壁からワークの入槽側壁へ流すために噴射管を左右壁に添わせて配置し、および電着槽の底は、電着槽の左右壁から電着槽の中央へ下がる左右傾斜底部にて構成し、これらの谷部に媒体を取出す排出孔を設けたことを特徴とする電着塗装装置が記載されている(請求項1)。そしてこの方法によって、電着槽に沈降する鉄系ゴミを容易に除去できると記載されている。しかしながら電着塗料組成物中には、この方法によって除去することができる鉄系ゴミ以外にも、油分など、塗膜外観に悪影響を及ぼす成分が含まれる。この方法においては噴射管を用いて電着塗料組成物を常に流しているため、このような油分は電着塗料組成物中に拡散してしまい、取り除くことが困難であるという問題がある。また、金属粉は泥状になって蓄積することが多いため、このような噴射管による噴流のみでは金属粉を除去しきれない可能性がある。
特開平11−12798号公報(特許文献2)には、電着塗装装置において、電着塗料組成物液の撹拌を完全に停止または低速運転させることにより、電着塗料組成物中に含まれるゴミを沈降させ、沈降させたゴミを磁石にて捕捉し、その後再撹拌することを特徴とする電着塗料組成物清浄化方法が記載されている(請求項1)。この方法は、沈降させた鉄くずなどのゴミを磁石によって捕捉することを特徴としている。しかしながら電着塗装される被塗物としては、磁石につき難い鋼板(例えばSUS304などのいわゆるステンレス鋼板)なども含まれる。そのためこのような磁石につき難い金属から構成される金属不溶分は、この方法では除去することが困難であるという問題がある。またこのように磁石を用いる方法によっては、混在する油分を取り除くことはできない。さらに、低濃度水分散型塗料である電着塗料組成物においては、撹拌の停止によって一旦顔料の沈降が生じると、沈殿した顔料が凝集し固化する傾向が高いため、その沈殿を再分散させることは困難であるという問題がある。
特開2004−18957号公報 特開平11−12798号公報
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、電着塗料組成物に混在する油分や金属不溶分両方を除去しつつ電着塗装を行う電着塗装方法、そしてこの塗装方法に用いられる電着塗装装置および電着塗装システムを提供することにある。
本発明は、
電着塗料組成物に混在する異物を除去しつつ電着塗装を行う電着塗装方法であって、
この電着塗料組成物が、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含む電着塗料組成物であり、
この電着塗装において用いられる電着塗装装置が;
電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽;を備え、
この電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、この電着槽に隣接して設けられた油分除去部;またはこの電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部;の少なくとも一方を備えており、
この電着槽の底部の形状は、この金属除去部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状であり、かつ
この油分除去部および/または金属除去部における、電着塗料組成物に混在する油分および/または金属不溶分の除去が、この電着塗装装置における電着塗料組成物の撹拌を停止した状態において行われる、
電着塗装方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記電着塗装装置は、油分除去部および金属除去部の双方を備えるのが好ましい。
また、上記油分および/または金属不溶分の除去が、上記電着塗装装置における電着塗料組成物の撹拌を停止した状態において停止開始から5分〜48時間の間に行われるのが好ましい。
また、上記油分除去部が油吸着用フィルタを有するのが好ましい。
また、上記金属除去部が金属フィルタを有するのが好ましい。
また、上記電着塗装装置が、電着槽の底部を振動させる振動付加部をさらに備えるのが好ましい。
上記金属除去部が精密フィルタをさらに有し、この精密フィルタは上記金属フィルタを通過した金属不溶分を除去するフィルタであるのが好ましい。
本発明はさらに、上記電着塗装方法において用いられる電着塗装装置であって、この電着塗装装置は;電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽;を備え、かつ
この電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、この電着槽に隣接して設けられた油分除去部;またはこの電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部;の少なくとも一方を備えており、
この電着槽の底部の形状は、この金属除去部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状である、
電着塗装装置、も提供する。
本発明はまた、上記電着塗装装置;およびこの電着塗装装置によって電着塗装された被塗物を洗浄する水洗装置;を少なくとも備える電着塗装システムであって、
この水洗装置は水洗液を保持する槽である水洗槽を有し、およびこの水洗槽の底部の形状は、水洗液を排水する排水部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状である、
電着塗装システム、も提供する。
本発明は、沈降安定性に優れる電着塗料組成物を用いるため、顔料の沈降防止を目的とする攪拌を停止することができる。これにより、電着塗料組成物に混入する油分や金属不溶分を効果的に分離除去することができるため、塗膜の外観不良の発生を防ぐことができる。
また、本発明において用いる電着塗料組成物は再分散性に優れるため、攪拌の停止により顔料が沈降した場合であっても、電着槽底部で凝集・固化することがない。これにより、再び攪拌することにより顔料を再分散させ、攪拌停止前の状態に戻すことができる。
本発明の電着塗装方法においては、顔料沈降防止剤を含む電着塗料組成物を用いること、そして特定の底部形状を有する電着槽と、油分除去部および金属除去部の少なくとも一方を備える電着塗装装置を用いることを特徴とする。以下、電着塗料組成物そして電着塗装装置について順次説明する。
なお本明細書において、「異物」とは油分および金属不溶分の少なくとも一方を含むことを意味する。また電着塗料組成物中に混在する「油分」とは、電着塗料組成物の組成に由来しない油分を意味する。そしてこの「油分」には、顔料沈降防止剤は含まれない。この顔料沈降防止剤は、電着塗料組成物中において顔料の分散を安定させるために顔料周辺に付着等しているため、電着塗料組成物から油分として遊離しないためである。また本明細書において、電着塗料組成物に混在する「金属不溶分」には、顔料は含まれない。本明細書における「金属不溶分」は、被塗物の切削等によって生じた金属粉などのゴミといった、電着塗料組成物の組成に由来しない金属成分を意味する。
電着塗料組成物
本発明の電着塗装方法においては、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含む電着塗料組成物が用いられることを特徴とする。本発明において用いられる電着塗料組成物は、カチオン性樹脂を主樹脂として用いるカチオン電着塗料組成物と、アニオン性樹脂を主樹脂として用いるアニオン電着塗料組成物の2種類に分類することができる。本発明において用いられる電着塗料組成物はいずれも包含する概念で用いている。まずは、カチオン電着塗料組成物に関して説明する。アニオン電着塗料組成物については、後述する。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料を含み、さらにカチオン性樹脂とブロックポリイソシアネート硬化剤とを含むバインダー樹脂、硬化触媒を含有する。本明細書中、「脂肪酸」と「脂肪酸の誘導体」をまとめて「脂肪酸類」と記載することもある。
カチオン性樹脂
本発明で用いるカチオン性樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環することにより製造することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィドおよび酸混合物がある。本発明において1級、2級または/および3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
ブロックポリイソシアネート硬化剤
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、および1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックポリイソシアネート硬化剤として使用してよい。
脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、およびホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
顔料(b)
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、一般的に用いられる顔料を含有する。顔料(b)として、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックまたはそれらの組合せを含有させる。無機顔料として、例えば、チタンホワイトおよびベンガラのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレーおよびシリカのような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げられる。本明細書中で「有機顔料」とは、無機顔料と対比する概念で用いる。有機顔料の例としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、またはベリレンレッド等が挙げられる。
本発明において、上記いずれの顔料も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
顔料(b)は、一般に、カチオン電着塗料組成物の全固形分に対して下限1質量%、上限60質量%を占める量でカチオン電着塗料組成物に含有される。上記上限は30質量%であるのが好ましい。
硬化触媒
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒を加えて、ブロックポリイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離を促進させることができる。本発明で使用する硬化触媒としては、硬化剤のブロック剤の解離を促進させるものであれば特に限定されないが、代表的な硬化触媒としては、錫触媒が挙げられる。錫触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、モノブチル錫オキサイドおよびそれらの混合物等の固体触媒、ジブチル錫ジラウレート等の液状錫触媒、およびそれらの混合物などが挙げられる。
上記硬化触媒は、電着塗料組成物中の樹脂固形分に対し0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で配合する。
カチオン性アクリル樹脂
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性アクリル樹脂を含むのが好ましい。これにより、無機顔料の含有量が少ない場合に生じうる油ハジキ性の低下を防止することができるからである。カチオン性アクリル樹脂は、分子内に複数のオキシラン環を含むアクリル共重合体とアミンとの開環付加反応によってつくることができる。このようなアクリル重合体は、(i)グリシジル(メタ)アクリレートと、(ii)ヒドロキシル基含有アクリルモノマー、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プラクセルFAおよびFMシリーズとして知られる2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応生成物と、(iii)その他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーを共重合することによって得られる。その他のアクリル系および非アクリル系モノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
このオキシラン環を含むアクリル共重合体は、エポキシ樹脂のオキシラン環をアミンで開環してカチオン性基を導入するのと同様に、そのオキシラン環の全部を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環することにより、カチオン性アクリル樹脂とすることができる。
他の方法として、アミノ基を有するアクリルモノマーを他のモノマーと共重合することによってカチオン性アクリル樹脂を得ることもできる。この場合、前述の(i)グリシジル(メタ)アクリレートの代わりにアミノ基含有アクリルモノマーを用いる。アミノ基含有アクリルモノマーは、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有アクリルモノマーなどである。
カチオン性アクリル樹脂は、重合体の数平均分子量が1,000〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、より好ましくは5,000〜10,000の範囲内になるように常法によって前記モノマーを共重合することによって得られる。
カチオン性アクリル樹脂の配合量は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し10〜100質量部であるのが好ましい。
顔料沈降防止剤(a)
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、脂肪酸、脂肪酸の誘導体(両方あわせて脂肪酸類と呼ぶ。)、アミン化合物、またはこれら3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤を含有する。本発明においては、顔料沈降防止剤(a)を電着塗料組成物に加えることによって、塗料組成物中に含まれる顔料の分散安定性が向上する。そして、無機顔料を含む電着塗料組成物であるにも関わらず、電着塗料組成物を撹拌せずに静置しておいた場合であっても顔料沈降物が少ない塗料組成物を製造することができる。
脂肪酸類とは、上記の通り、脂肪酸またはその誘導体である。脂肪酸として、例えば、直鎖飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が含まれる。また脂肪酸の誘導体として、例えば、上記脂肪酸を、アルコール、多価アルコール(グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等)で変性した脂肪酸エステル、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性した脂肪酸エチレンオキサイド付加物または脂肪酸プロピレンオキサイド付加物、アミン化合物で変性した脂肪酸アミド化合物、および多官能脂肪酸が含まれる。これらの脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド化合物には、エチレンオキサイドが開環付加したもの(エチレンオキサイド開環付加物)も含まれる。これらの脂肪酸類は、分子の骨格中に不飽和結合、エーテル結合、エステル結合等の化学結合、水酸基、アミノ基、カルボニル基等の官能基、酸素、窒素、イオウ、ハロゲンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。また多官能カルボン酸なども、脂肪酸の誘導体に含まれる。脂肪酸の誘導体として、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド化合物およびこれらのエチレンオキサイド開環付加物を用いるのがより好ましい。
本発明で使用される脂肪酸類において、好ましくは炭素数4〜22の脂肪酸およびその誘導体であり、より好ましくは炭素数7〜20の脂肪酸およびその誘導体である。
具体的な脂肪酸類として、例えば以下の化合物が挙げられる:
(1)直鎖飽和脂肪酸
アラキジン酸、トリコサン酸、ベヘニン酸、ヘンエイコサン酸、エイコサン酸、ノナデカン酸、ステアリン酸、ヘプタデカン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ミリスチン酸、トリデカン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、オクタン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、吉草酸、酪酸等、花王社製精製ステアリン酸(450V、550V、700V)等;
(2)分岐飽和脂肪酸
イソステアリン酸、メチルテトラデカン酸、メチルヘプタデカン酸、メチルオクタデカン酸、イソ吉草酸等;
(3)不飽和脂肪酸
オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ウンデセン酸、ソルビン酸、クロトン酸等;
(4)多官能カルボン酸
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、フタル酸、ドデカン二酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、3−tert−ブチルアジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等;
(5)ヘテロ原子含有脂肪酸
ヘキシロキシ酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、サリチル酸、安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、N−アセチルグリシン、N−アセチル−β−アラニン、チオクト酸等;
(6)脂肪酸エステル(アルコールエステル系)
ライオン社製カデナックス(GS-90,SO-80C)、花王社製レオドール(SP-L10、SP-P10,SP-S10V,SP-S30V、AS-10、AO-10、AO-15V)、花王社製レオドールスーパーSP-L10、花王社製エマゾール(L-10(F)、P-10(F)、S-10V、O-10V)等;
(7)脂肪酸エステル(エチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル系)
ライオン社製リオノン(DT-600S,DEH-40)、旭電化工業社製アデカエストール(OEG-102,OEG-106)等;
(8)脂肪酸メチルエステル(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加系)
ライオン社製レオファット(LA-110M-95,OC-0503M)、花王社製エマノーン(1112,3199,3299,4110,CH-25, CH-40, CH-60(K), CH-80)等
(9)脂肪酸エチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソファット(O/15,O/20,60/15)、旭電化工業社製アデカエストール(TL-144,TL-161,TL-162,S-60,S-80,T-81,T-82)、花王社製レオドール(TW-L120, TW-L106, TW-P120, TW-S120V, TW-S106, TW-S320V, TW-O120V, TW-O106V, TW-O320V, TW-IS399C, 430,440,460)、花王社製レオドールスーパー TW-L120等;
(10)脂肪酸エステル(グリセリンエステル系)
花王社製エキセルT-95,VS-95,O-95R,200,300,122V,P-40S)、花王社製レオドール(MS-50,MS-60,MO-60,MS165V)等
(11)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸モノアミド化合物
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等;
(12)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸モノアミド
オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エシル酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等、これらの工業製品として、例えば、花王社製カオーワックス(EB-G、EB-P、EB-FF、85-P、220、230-2)、花王社製脂肪酸アマイドS, T, O-N, E)、旭電化工業社製アデカソールYAなどが含まれる;
(13)脂肪酸アミド化合物である飽和脂肪酸ビスアミド類
メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N'−ジステアリルセバシン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド等;
(14)脂肪酸アミド化合物である不飽和脂肪酸ビスアミド類
エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミド等;
(15)脂肪酸アミド化合物である置換アミド類
N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等;
(16)脂肪酸アミド化合物である芳香族ビスアミド類
メチロールステアリン酸アミド類;メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、N,N−ジステアリルイソフタール酸アミド、メタキシリレンビスステアリン酸アミド等;
(17)脂肪酸アミド化合物である分岐型アミド類
N.N’−2−ヒドロキシエチルステアリン酸アミド、N.N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N.N’−キシレンビスステアリン酸アミド、N.N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N.N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N.N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等;
(18)脂肪酸アミド化合物であるアルカノールアミド類
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノ−ルアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ミリスチン酸モノプロパノールアミド、オレイン酸モノプロパノールアミド、ポリオキシアルキレンアルカノールアミドなど、工業製品としてライオン社製アーマイド(O,HT)、ライオン社製アーモスリップ(CP,E,E-Y)など;
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
アミン化合物は、窒素原子に炭素数4以上のアルキル鎖が結合したアミン化合物であるのが好ましい。窒素原子に結合するアルキル鎖は1つであってもよく、または2以上のアルキル鎖が結合していてもよい。これらのアミン化合物として、1級、2級および3級アミンの何れを用いてもよい。これらのアミン化合物はその骨格中に複数個のアミノ基を有していてもよく、また、骨格自体がエチレンオキサイド等で変性されていてもよい。本発明で使用されるアミン化合物は、好ましくはアルキル鎖の炭素数4〜22であり、より好ましくはアルキル鎖の炭素数7〜20である。
具体的なアミン化合物として、例えば以下のものが挙げられる:
(1)1級アミン化合物
(1−1)脂肪族モノおよびポリアミン化合物
n-ブチルアミン、アミルアミン、n-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ノニルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、2,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン等の脂肪族1級アミン化合物類、
(1−2)脂環族モノおよびポリアミン化合物
シクロヘキシルアミン、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,5- トリメチル-1- アミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1-メチル-2,4- ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン等の脂環族1級アミン化合物類、
(1−3)芳香族モノおよびポリアミン化合物
アニリン、メタおよびパラトルイジン、ナフチルアミン、1,3-および1,4-フェニレンジアミン、1-メチル-2,4- ジアミノベンゼン、1-メチル-2,6- ジアミノベンゼン、2,4,- および 4,4,-ジアミノジフェニルメタン、 4,4,-ジアミノビフェニル、1,5-および2,6-ナフタレンジアミン等の芳香族1級アミン化合物類、
(1−4)アラルキルモノおよびポリアミン化合物
1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,5-および2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレン等のアラルキル1級アミン化合物類、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミンCD,OD,TD,HT,8D,12D,14D,16D,18D)、花王社製ファーミン(CS,08D,20D,80,86T,O,T)等が挙げられる;
(2)2級アミン化合物
ジ-n-ブチルアミン、ジイソアミルアミン、ジベンジルアミン、メチルジエチルエチレンジアミン、メチルアニリン、ピペリジン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、モルホリン、N-メチル-グルカミン、グルコサミン、t-ブチルアミン等の2級アミン、
これらの工業製品として、花王社製ファーミン(D86)等が挙げられる;
(3)3級アミン化合物
トリ(n-ブチル)アミン、テトラメチルエチレンジアミン、1-メチルピペリジン、1-メチルピロリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、トリイソプロパノールアミン等の3級アミン、
これらの工業製品として、ライオン社製アーミン(DMMCD,DMTD,DMMHTD,DM12D,DM14D,DM16D,DM18D,DM22D, M2HT, M2O,M210D)、花王社製ファーミン(DM24C,DM0898,DM1098,DM2098,DM2465,DM2463,DM2458,DM4098,DM4662, DM6098, DM6875,DM8680,DM8098,DM2285,M2-2095,T-08)等が挙げられる;
(4)アルカノールアミン
花王社製アミノーン(PK-02S,L-02)等;
(5)変性アミン
(5−1)アルキルアミンエチレンオキサイド付加物
ライオン社製エソミン(C/12,C/15,C/25,T/12,T/15,T/25,S/15,S/25,O/12,O/17,O/20,HT/12, HT/14, HT/17)、ライオン社製エソマイド(HT/15,HT/60,O/15)、旭電化工業社製アデカソール(CO,COA,CMA,YA-6)、花王社製アミート(105,320);
等が挙げられるが、これらに限るものではない。
これらの脂肪酸類とアミン化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。顔料沈降防止剤としてより好ましくは、炭素数4〜22の脂肪酸、炭素数4〜22の脂肪酸の誘導体、またはこれら2種類の混合物が挙げられる。
脂肪酸類またはアミン化合物を加えることによって顔料(b)の分散性が向上する作用機構は明確ではないが、例えば、脂肪酸が顔料(b)に対して単分子膜のような構造または2分子膜のような構造の配置をとり、これによって顔料(b)の水に対する抵抗等が大きくなり、顔料(b)の沈降が防止されると考えられる。本発明において顔料沈降防止剤として使用される脂肪酸類またはアミン化合物は、分子膜のような構造に配置する能力が高いため、顔料(b)の沈降を防止する性能に優れると考えられる。
顔料沈降防止剤(a)は、電着塗料組成物中に含まれる顔料100質量部に対して下限0.1質量部、上限20質量部を占める量で電着塗料組成物に含有される。上記下限は0.5質量部であるのが好ましく、1質量部であるのがより好ましい。また、上記上限は15質量部であるのが好ましく、10質量部であるのがより好ましい。
カチオン顔料分散ペースト
顔料(b)を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料(b)を顔料分散樹脂とよばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料(b)は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。固体状硬化触媒を用いる場合、この顔料分散ペーストを作成する際に加えてもよいし、他の塗料製造工程で加えてもよい。
カチオン性顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は顔料分散ペーストの固形分中で20〜40質量%、顔料および固体状硬化触媒は60〜80質量%の比率で用いる。カチオン顔料分散ペーストは、カチオン性顔料分散樹脂、および顔料、必要に応じて酸などの中和剤および水性媒体を、混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて得ることができる。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性樹脂およびブロックポリイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(カチオン性メインエマルション)、カチオン性アクリル樹脂およびブロックポリイソシアネート硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(サブエマルション)、顔料分散ペースト、脱イオン水を所定の割合で混合することによって調製される。
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物の調製において、顔料沈降防止剤(a)は、何れの分散・混合段階においても加えることができる。顔料沈降防止剤(a)は、好ましくは、上記のカチオン性顔料分散ペーストに加えられ、その後、カチオン性メインエマルション等の他の成分と混合される。この場合は、顔料の沈降を防止する性能により優れるからである。
水性媒体としては、例えばイオン交換水を用いることができ、少量のアルコール類を含んでいてもよい。そして水性媒体にはカチオン性樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
ブロックポリイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性樹脂中の1級、2級および/または3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性樹脂のブロックポリイソシアネート硬化剤に対する質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
電着塗料組成物は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
本発明の電着塗料組成物を用いた被塗物への電着塗装は、当業者に周知の方法によって実施することができる。被塗物は、予めリン酸亜鉛処理等の表面処理が施された導体であることが好ましい。導体は、電着塗装に際し陰極になり得るものであれば特に制限はないが、金属基材であることが好ましい。
電着塗装の際の印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
電着塗装後、被塗物の表面に形成された被膜を焼き付けにより硬化させる。焼き付けには、例えば焼付炉やオーブン、赤外ヒートランプを用いることができる。焼き付け温度は、通常140℃〜180℃である。
アニオン電着塗料組成物
本発明において用いられるアニオン電着塗料組成物は、前述のカチオン電着塗料組成物と比較すると、カアニオン性樹脂と硬化剤とを含むバインダー樹脂および顔料分散樹脂などが相違する。その他の成分は共通であるため、以下、相違点についてのみ説明する。
アニオン性樹脂
アニオン電着塗料組成物では、カチオン性樹脂の代わりにアニオン性樹脂を用いる。本発明で用いるアニオン性樹脂として、電着塗料組成物の分野では周知のカルボキシル基および場合によりさらに水酸基を有する樹脂を用いることができる。アニオン性樹脂として、例えば、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を用いるのが好ましく、カルボキシル基および水酸基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基および水酸基を有するポリウレタン樹脂を用いるのが特に好ましい。塗膜の耐候性、平滑性に優れるからである。
上記のカルボキシル基および水酸基を有するアクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和モノマー、水酸基含有アクリル系モノマー、さらに必要に応じてその他の重合性モノマーを用い、これらのモノマーをラジカル重合させてなる共重合体が使用できる。
カルボキシル基含有不飽和モノマーは、1分子中にカルボキシル基と重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カプロラクトン変性カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーなどがあげられる。
水酸基含有アクリル系モノマーは、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;これらの水酸基含有アクリル系モノマーと、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどのラクトン類化合物との反応物などがあげられ、市販品としては、プラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)などがあげられる。
その他の重合性モノマーは、上記のカルボキシル基含有不飽和モノマーおよび水酸基含有アクリル系モノマー以外であって、1分子中に重合性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C18のアルキルまたはシクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族重合性モノマー;(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリアミド、N−メチロール(メタ)アクリアミドなどの(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;(メタ)アクリロニトリル化合物類;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性モノマーなどがあげられる。
これらのモノマーの配合割合として、カルボキシル基含有不飽和モノマーを、モノマーの合計質量に対して3〜30質量%、特に4〜20質量%の範囲内で用いることが好ましい。水酸基含有アクリル系モノマーを、モノマーの合計質量に対して3〜40質量%、特に5〜30質量%の範囲内で用いることが好ましい。
これらのモノマーをラジカル共重合反応させる方法は従来から既知の溶液重合方法などを用いることができる。
カルボキシル基および水酸基を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール類およびジヒドロキシカルボン酸を、水酸基が過剰となる当量比で、ワンショット法または多段法によりウレタン化反応させることにより得られるものがあげられる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが好適に使用される。
ポリオール類は、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフラン)を重合または共重合(ブロックまたはランダム)させて得られるポリエーテルジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコールなど;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸など)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合させて得られるポリエステルジオール、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリネオペンチル−ヘキシルアジペートなど;ポリラクトンジオール、例えば、ポリカプロラクトンジオール、ポリ3−メチルバレロラクトンジオールなど;ポリカーボネートジオール;これらから選ばれる2種以上からなる混合物などがあげられる。これらのポリオール類の数平均分子量は、一般に500以上、好ましくは500〜5000、より好ましくは1000〜3000である。
また、ポリオール類として、1分子中に2個以上の水酸基を有し、かつ数平均分子量が500未満の低分子量のポリオールも使用することができる。具体的には、上記のポリエステルジオールの原料としてあげたグリコールおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(分子量500未満);3価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロルエタン、トリメチロールプロパンなどおよびそのアルキレンオキシド低モル付加物(分子量500未満);これらから選ばれた2種以上からなる混合物などがあげられる。
数平均分子量が500以上のポリオール類と数平均分子量が500未満の低分子量のポリオール類とを併用する系において、これら両ポリオールの構成比率は、両ポリオールの合計量を基準にして、前者は80〜99.9質量%、特に90〜99.5質量%、後者は20〜0.1質量%、特に10〜0.5質量%の範囲内にあることが好ましい。
ジヒドロキシカルボン酸は、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールブタン酸などがあげられる。
以上に述べたポリイソシアネート化合物、ポリオール類およびジヒドロキシカルボン酸によるウレタン化反応はそれ自体既知の方法で行なうことができる。
硬化剤
アニオン電着塗料組成物において、アニオン性樹脂に対する硬化剤として、例えばメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
メラミン樹脂としては、メラミンにホルムアルデヒドなどを反応させてなるメチロールメラミンのメチロール基の一部もしくは全部がC1〜C10のモノアルコールから選ばれた1種もしくは2種以上のアルコールで変性されたエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。また、メラミン樹脂中にはイミノ基、メチロール基、その他の官能基が含まれていてもよい。
ブロックポリイソシアネートは、前記のカチオン電着塗料組成物で例示したブロックポリイソシアネート硬化剤を使用することができる。
アニオン性顔料分散ペースト
アニオン電着塗料組成物に顔料(b)を含有させる場合、顔料(b)の分散容易性の観点から、顔料(b)を予め顔料分散ペーストの形態に調製するのが好ましい。アニオン性顔料分散ペーストは、顔料(b)をアニオン性顔料分散樹脂に分散させて調製することができる。顔料(b)として、前記のカチオン電着塗料組成物で例示した顔料を使用することができる。
アニオン性顔料分散樹脂として例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸およびアゾニトリル化合物を有する変性アクリル樹脂を用いることができる。
アニオン性顔料分散ペーストは、上記のアニオン性顔料分散樹脂と顔料と中和剤を加え、これを分散させるか溶解させることにより調製することができる。
一般に、アニオン性顔料分散ペーストは、固形分35〜70質量%、好ましくは40〜65質量%に調製される。
アニオン性顔料分散ペーストは、アニオン性顔料分散樹脂、および顔料、必要に応じてトリエチルアミンなどの中和剤および水性媒体を、混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、通常の分散装置を用いて分散させて得ることができる。
アニオン電着塗料組成物の調製
本発明において用いられるアニオン電着塗料組成物は、上に述べたアニオン性樹脂、アニオン性顔料分散ペーストを水性媒体中に分散させることによって調製される。また、通常、水性媒体にはアニオン性樹脂を中和して分散性を向上させるために中和塩基(アミンまたはアルカリ化合物)を含有させる。この中和塩基として用いるアミンは具体的には炭素数が3以下の低い分子量のものであり、前述の顔料沈降防止剤とは異なるものである。このような炭素数であると、顔料との相互作用よりも樹脂との相互作用が大きくなるので、顔料の沈降防止剤としての効果は無くなる。中和塩基の例としては、アンモニア;ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの塩基性化合物である。
本発明において用いられるアニオン性電着塗料組成物の調製において、顔料沈降防止剤(a)は、何れの分散・混合段階においても加えることができる。顔料沈降防止剤(a)は、好ましくは、上記のアニオン性顔料分散ペーストに加えられ、その後、アニオン性メインエマルション等の他の成分と混合される。この場合は、顔料の沈降を防止する性能により優れるからである。なお、脂肪酸またはアミン化合物の配合量は、カチオン電着塗料組成物の場合と同じである。
硬化剤の量は、アニオン性樹脂と硬化剤との固形分質量比(アニオン性樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜50/50の範囲である。中和塩基の量は、アニオン性樹脂のアニオン性基の少なくとも30%、好ましくは50〜120%を中和するのに足りる量である。
アニオン電着塗料組成物の電着塗装は、被塗物を陽極として陰極との間に、通常1〜400Vの電圧を印加して行なう。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は10〜45℃、好ましくは15〜30℃に、pHは6.0〜9.0、好ましくは7.0〜8.0に調節される。
電着過程は、アニオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陽極として陰極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる工程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、30秒〜5分とすることができる。電着過程の終了後、そのまままたは水洗した後、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、10〜60分間焼き付けることにより硬化塗膜が得られる。
得られる膜厚は硬化塗膜で5〜30μm、特に7〜20μmの範囲内にあることが好ましい。
電着塗装方法
本発明の電着塗装方法においては、上記電着塗料組成物、そして後述する電着塗装装置を用いることによって、電着塗料組成物中に混在する油分や金属不溶分を効果的に除去しつつ、電着塗装を行うことが可能となる。本発明において用いられる電着塗料組成物は、電着槽の攪拌を停止しても顔料成分の沈降が非常に少ないので、非塗装・塗装時に関わらず電着槽の攪拌を停止することができる。ただし電着塗装時においては、塗膜析出中に発生する反応ガスを除去したり、塗膜析出時に発生する反応熱を拡散させる意味から槽内攪拌をすることが好ましい。従来の塗料では、非塗装時にも電着槽の攪拌を実施することが必要であるが、本発明において用いられる電着塗料組成物は夜間、休日等の非塗装時に攪拌を停止することが可能なため、電着槽の攪拌に要する電気エネルギーコストを大幅に減少させることが可能となる。
そして本発明においては、このように撹拌停止可能な電着塗料組成物を用いることによって、油分や金属不溶分を効果的に除去することができる。本発明において用いられる電着塗料組成物は、電着塗料組成物の撹拌を例えば5分〜48時間ほど停止した場合であっても、顔料の沈降および沈降した顔料の固化などの不具合が生じないという特徴がある。一方で、電着塗料組成物の撹拌を5分〜48時間ほど停止することによって、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分は沈殿し、そして電着塗料組成物中に混在する油分は上昇し分離することとなる。これにより、油分や金属不溶分のより効果的な除去が可能となる。電着塗料組成物の撹拌停止時間は、2時間〜48時間であるのがより好ましい。
なお従来の電着塗料組成物を用いる場合においては一般に、電着塗料組成物の撹拌の停止によって顔料の沈降が生じ、さらにこの沈殿した顔料が凝集し固化してしまい再分散させることは非常に困難であるため、電着塗料組成物の撹拌を停止することはできない。そして電着塗料組成物を撹拌し続けることによって、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分および油分もまた撹拌によって拡散することとなり、金属不溶分を沈殿させることおよび油分を塗料表面に浮かせることが困難となる。これに対して本発明においては、下記する電着塗装装置において、顔料沈降安定性に非常に優れたこのような電着塗料組成物を用いることによって、電着塗料組成物の撹拌を停止することが可能となり、これにより油分や金属不溶分のより効果的な除去が可能となる。
電着塗装装置
本発明における電着塗装装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明における電着塗装装置の1態様を示す概略図である。
図2は、本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。
図3は、本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。
図4は、本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。
図5は、上記電着塗装装置の油分分離部の1態様を示す概略図である。
図6は、上記電着塗装装置の油分分離部の他の1態様を示す概略図である。
図7は、さらに置換槽を有する態様を示す概略図である。
本発明における電着塗装装置は、電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽;を備え、かつ
この電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、該電着槽に隣接して設けられた油分除去部;または該電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部;の少なくとも一方を備える装置である。
図1〜図4に概略的に示される電着塗装装置10は、電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽1と、この電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、電着槽1に隣接して設けられた油分除去部4と、この電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部13と、を少なくとも備えた電着塗装装置が記載されている。
そしてこの電着塗装装置10の電着槽1の底部の形状は、金属除去部13に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状である。図1、図3および図4は、電着槽1の底部の形状が、金属除去部13に向かって下方傾斜する構造を1つ有する形状である例を概略的に示している。また図2は、電着槽1の底部の形状が、金属除去部13に向かって下方傾斜する構造を2以上(ここでは4つ)有する形状である例を概略的に示している。図1〜図4において、1は電着塗料組成物を収容した状態の電着槽を示す。2は被塗物であり矢印方向に移動される。被塗物2は電着槽1に浸漬され電着塗装された後、次の水洗装置(図示せず)に移動される。以下、図1〜図4に示される電着塗装装置が有する金属除去部および油分除去部について詳細に説明する。
なお本明細書における「電着塗料組成物中に混在する油分」および「電着塗料組成物中に混在する金属不溶分」とは、電着塗料組成物中に混入することによって電着塗料組成物中に存在することとなった「油分」および「金属不溶分」を意味する。
金属除去部
本発明における電着塗装装置は、電着槽1の底部に、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部13が設けられている。この金属除去部は、電着槽の底部の水平位置と比較して低い水平位置に設けられている。そしてこの金属除去部13と電着槽1の底面部との間には、バルブが設けられている。このバルブ14によって、金属除去部13に入る電着塗料組成物の量を調節することができる。
金属除去部13は、電着塗料組成物から金属不溶分を取り除く性能を有していれば特に限定されることはない。金属除去部13として、例えばストレーナ、金属フィルタ、マグネットフィルタなどが挙げられる。
ここでいうストレーナとは、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去するためのスクリーン(多孔孔版スクリーンまたは金網型スクリーン)を内蔵する濾過装置を意味する。ストレーナを用いることによって、金属不溶分そして塗料スラッジなどを電着塗料組成物から分離し除去することができることとなる。
金属除去部13として用いることができる金属フィルタとして、例えば50〜300メッシュの格子金属フィルタなどが挙げられる。金属フィルタを用いる場合は、異なるメッシュを有する金属フィルタを2またはそれ以上併用するのがより好ましい。例えば、金属除去部13として、上方部から下方部へ向かって、50メッシュの金属フィルタ、100メッシュの金属フィルタおよび300メッシュの金属フィルタを順に並べた態様などが挙げられる。このように複数の金属フィルタを用いることによって、金属不溶分をより効率よく除去することが可能となる。なお複数の金属フィルタを用いる場合は、清掃などの作業性向上などの点から、それぞれが独立して取り付けおよび取り外し可能であることがより好ましい。
金属除去部として金属フィルタを用いる場合は、金属フィルタを振動させる振動付加部をさらに有するのが好ましい。これにより、金属フィルタを振動させることができ、金属除去効率をさらに向上させることができる。この振動付加部としては、後述する振動付加部が好ましく用いられる。
また金属除去部13として用いることができるマグネットフィルタとして、例えば高磁力線を用いた自動鉄粉除去装置(日本ペイント株式会社製)などを使用することができる。
金属除去部13は、必要に応じてさらに精密フィルタを備えてもよい。この態様において精密フィルタは、上記したストレーナ、金属フィルタ、マグネットフィルタなどによって濾過された電着塗料組成物をさらに濾過するように設置される。精密フィルタとして、例えば、不織布フィルタ、多孔質フィルタ、メンブレンフィルタ、マイクロフィルタ、ウルトラフィルターなどが挙げられる。精密フィルタを用いることによって、より微細な金属不溶分を除去することができることとなる。
電着槽の底部
本発明における電着塗装装置は、電着槽の底部に、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する、上記金属除去部が設けられていること、そしてこの電着槽の底部の形状は、該金属除去部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状であること、を特徴とする。
図1、図3および図4は、電着槽1の底部の形状が、金属除去部13に向かって下方傾斜する構造を1つ有する形状である例を概略的に示している。このように底部の形状が金属除去部13に向かって下方傾斜する構造であることによって、金属切削くずなどの比重の高い金属不溶分が、容易に金属除去部13へ移動するという利点がある。そして電着槽1の底部に金属不溶分が堆積し難くなり、金属不溶分を効率的に収集することが可能となる。上記下方傾斜の角度は、金属不溶分が容易に金属除去部13へ移動する角度であれば特に制限されることはないが、例えば平坦な水平底部形状を有する電着槽の角度を0度とした場合に、30度以上90度未満の角度で金属除去部13に向かって下方傾斜する構造などが挙げられる。
本発明においては、図2に示されるように、電着槽1は金属除去部13に向かって下方傾斜する構造を、2またはそれ以上有していてもよい。下方傾斜する構造を複数有することによって、限られた水平高さ内において、それぞれの構造における傾斜角をより大きくすることができ、これにより金属不溶分の除去効率をより高めることが可能となる。例えば自動車車体などといった大型の被塗物を電着塗装する電着塗装装置においては、下方傾斜する上記構造を2またはそれ以上有するのが好ましい場合がある。
本発明における電着塗装装置は、必要に応じて、電着槽の底部を振動させる振動付加部(図示せず)を備えていてもよい。振動付加部を備えることによって、電着槽の底部を振動させることが可能となり、これにより金属不溶分を金属除去部13へより容易に移動させることが可能となるからである。振動付加部は、電着槽の底部を振動させる構造であれば特に限定されないが、例えば、圧縮空気によって振動を生じさせるエアノッキング、超音波振動、音波振動、超振動などによるものが挙げられる。振動付加部は、好ましくは、超振動によるものが好ましい。ここで「超振動」とは、超音波の周波数の約1/1000である低い周波数での振動である。具体的には超振動の周波数は、10〜80Hzであり、好ましくは、30〜50Hzである。超振動による振動付加部としては、振動発生源である振動モーターと、振動板と、モーターで発生した振動を振動板に伝える伝導部材とが存在するものであれば特に限定されず、通常市販されている超振動装置等を用いることができる。そして電着塗装装置がこのような振動付加部を有することによって、電着塗装装置において一般的に用いられる噴流器または撹拌器などにおいて除去困難である塗料滞留部の金属不溶分を、より効果的に取り除くことができる。
油分除去部
本発明においては、油分除去部4が、この電着槽1の少なくとも一部に隣接した状態で設けられている。この油分除去部4は、電着槽1の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する機能を果たす。油分は水と比べて比重が軽いため、電着塗料組成物の上面に集まる。そのため電着槽1中の電着塗料組成物を、電着槽の上方部から回収することによって、油分を効率良く取り除くことができる。
図1〜図4に示される態様においては、油分除去部4は、電着槽1の被塗物出口側に設けられている。しかしながら本発明においてはこのような態様に限定されず、油分除去部4は、電着槽1の被塗物入口側に設けてもよく、または被塗物入口側および被塗物出口側以外の何れの箇所に設けてもよい。
図1、図2および図3に示される態様において、油分除去部4は、オーバーフロー槽3を有している。このような態様においては、油分除去部4は、電着槽1の上端を超えてオーバーフローした電着塗料組成物を受けて回収することとなる。ここで油分除去部4を構成するオーバーフロー槽3は、電着槽1の一部に隣接して設けられていてもよく、または電着槽1の全周にわたって設けられていてもよい。
図1および図2に示される態様において、油分除去部4は、オーバーフロー層3により回収した電着塗料組成物から油分を分離し(油分分離部12)、再び電着槽1へと戻す。これにより、油分を除去することができる。
なお、オーバーフロー層3と油分分離部12とは配管5を介して接続されており、電着塗料組成物は配管5を経由して油分分離部12へと導かれる。油分は液面に浮きやすいため、配管5はオーバーフロー層3の上方に取り付けられることが好ましい。これにより、油分を効率よく除去することができる。
この油分分離部12が電着塗料組成物と油分とに分離する態様として、電着塗料組成物中に混在する油分を吸着しつつ電着塗料組成物を通過させるフィルタを用いる態様が挙げられる。このようなフィルタの好適な例としてとして、油吸着用フィルタが挙げられる。油吸着用フィルタは油分の吸着を目的としたものであれば特に限定されないが、例えばポリプロピレン材またはこれらの同様の化学的性質もしくは適合性を有するものなどから成り得る。油吸着用フィルタは、電着塗料組成物を通過させる孔を有しているものが好ましく、この孔の直径が下限5μm上限100μmであるものを使用するのが好ましい。上記下限は20μmであるのがより好ましく、また上記上限は50μmであるのがより好ましい。このような範囲の直径の孔を有するフィルタを用いることによって、電着塗料組成物中に含まれる顔料を孔から通過させ、かつ油分を効率的に除去することができる。具体的な油吸着用フィルタとしては、例えばUNIVERSAL FILTER,INC.社の品番OS−29、WOSEP(商品名)(東レ株式会社製)などが挙げられる。
油分分離部の概略構成について図5および図6を用いて説明する。図5は、油吸着用フィルタ9と、必要に応じて設けられるバルブ7とから構成される油分分離部を示す。図6は、油吸着用フィルタ9と、必要に応じて設けられるバルブ7と、必要に応じて設けられる一般的なフィルタから構成される油分分離部を示す。油分分離部がバルブ7を備えることによって、オーバーフロー槽3における液面表面部から油吸着用フィルタへ供給される電着塗料組成物の量を調節することが可能となり、より好ましい。なおこれらの図においては、油吸着用フィルタ9に近接してバルブが備えられている状態を例示説明しているが、オーバーフロー槽3に近接してバルブが備えられていてもよい。このような場合においても、供給される電着塗料組成物の量を調節することができるからである。
図7に示すように、油分分離部は必要に応じて一般的なフィルタ15を備えていてもよい。油吸着用フィルタ自体も電着塗料組成物中のゴミ等を除去する機能も有しているものの、油吸着用フィルタに通す前に一般的なフィルタを備えることによって、油吸着用フィルタによる濾過の前にゴミ等を予め除去することができ、これにより油吸着用フィルタの油分の除去効率をさらに向上させることができる。なお本明細書において「一般的なフィルタ」とは、油吸着用フィルタ以外のフィルタを意味する。
油分分離部において、油吸着用フィルタを1つのみ設けてもよく、また図5、6に示されるように2以上設けてもよい。油吸着用フィルタの数は、電着塗装装置の大きさなどに応じて適時選択することができる。
図4は、オーバーフロー槽3を有さない油分除去部4の態様を示す概略図である。このようなオーバーフロー槽3を有さない態様においては、油分が混在する電着塗料組成物を、電着槽の上方部からポンプなどを用いて吸引することにより、油分分離部12に導くことができる。油分分離部12においては上記と同様にして油分を除去することができる。なおこのような態様においては、電着塗料組成物を吸引する箇所は、図4に示すような電着塗料組成物の液表面(最上面)のみに限られるものではない。例えば、電着塗料組成物の液表面から下方1m以内の箇所から、電着塗料組成物を吸引してもよい。
図3は、油分分離部12を有さない油分除去部4の態様を示す概略図である。このような油分分離部12を有さない態様においては、マットのような吸油材などを電着塗料組成物の液面上に浮かせることによって、オーバーフロー槽3において電着塗料組成物の上面に浮いた油分を除去することができる。
こうして油分除去部4によって油分が取り除かれた電着塗料組成物は、配管11によって再び電着槽1へと戻されることとなる。配管11は、油分が除去された電着塗料組成物を電着槽1へ戻す推進力となるポンプ17を有するのが好ましい。
本発明の電着塗装装置は、さらに置換槽を有してもよい。図7は、電着塗装装置が置換槽を有する態様の概略図である。この態様において、電着槽1には、上述の油分除去部4および金属除去部13などが備えられている。そして、置換槽25もまた、電着槽1と同様に油分除去部4および金属除去部13などが備えられている。この態様においては、電着槽1において混在する油分が除去された電着塗料組成物および混在する金属不溶分が除去された電着塗料組成物が、置換槽25へ導かれることとなる。このように油分または金属不溶分が除去された電着塗料組成物が一旦置換槽25へ導かれることによって、除去された電着塗料組成物の電着槽1への導入に伴う、電着槽1の撹拌停止によって浮遊した油分または沈降した金属不溶分の再度混在を有効に防ぐことができるため、より好ましい。
このような態様において、置換槽25は、金属除去部13の下方にさらに油分除去部4を備えているのがより好ましい。金属除去部13の下方にさらに油分除去部4を備えることによって、電着塗料組成物中に混在する油分を実質的に全て除去されることとなるためである。
電着塗装システム
本発明における電着塗装システムは、上記の電着塗装装置と、およびこの電着塗装装置によって電着塗装された被塗物を洗浄する水洗装置と、を有する。電着塗装された被塗物は一般に水洗液によって洗浄される。この洗浄によって、被塗物に付着していた余分な電着塗料組成物が除去されることなり、焼き付け硬化により得られる硬化電着塗膜の塗膜外観を向上させることができる。一般にこの水洗液による洗浄は、水洗液を収容する水洗槽中に被塗物を浸漬する水洗処理が含まれる。そして本発明においては、この水洗槽もまた、上記電着槽と同様の底部形状を有するのが好ましい。すなわちこの水洗槽の底部の形状は、水洗液を排水する排水部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有している形状であるのが好ましい。水洗槽における下方傾斜する構造は、上記電着槽における構造と同様である。水洗槽がこのような底部形状を有することによって、水洗処理によって生じる沈殿物を、電着槽における場合と同様に、良好に除去することが可能となる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1
カチオン性樹脂の調製
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を備え付けた反応容器に、エピコート1001(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂)99.8部、エピコート1004(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量950のビスフェノールA型エポキシ樹脂)850.2部、ノニルフェノール55部、メチルイソブチルケトン(MIBK)193.3部およびベンジルジメチルアミン4.5gを加え、140℃で4時間反応し、エポキシ当量1175を有する樹脂を得た。ここにエチレングリコールn−ヘキシルエーテル69.1部、2−アミノエチルエタノールアミンのMIBKケチミン化物のMIBK溶液(固形分78質量%)35.4部、N−メチルエタノールアミン26.5部およびジエタノールアミン37.1部を加えた。これを120℃で2時間反応させ、目的とする樹脂を得た。
製造例2
カチオン性アクリル樹脂の調製
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたフラスコに、スチレン50.7部、メチルメタクリレート10.0部、n−ブチルアクリレート20.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.2部、グリシジルメタクリレート9.2部、およびt−ブチルパーオクトエート4.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後115℃で約1時間保持し、t−ブチルパーオクトエート0.5部を滴下し、115℃で約30分間保持し、固形分65%の樹脂溶液を得た。数平均分子量(Mn)5000の樹脂溶液を得た。冷却後これへN−メチルエタノールアミン5.1部を加え、窒素雰囲気下120℃で2時間反応させ固形分約66%のカチオン性アクリル樹脂溶液を得た。
製造例3
ブロックポリイソシアネート硬化剤の調製
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(コロネートEH)199.1部とメチルイソブチルケトン31.6部を仕込み、窒素雰囲気下40℃に加熱保持した。これへジブチル錫ジラウレート0.2部を加え、さらにメチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより2時間かけて滴下し、滴下終了後、IRスペクトルによりイソシアネート基のピークが消失するまで70℃で反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン38.1部およびブタノール1.6部を加え冷却し、固形分80%のブロックポリイソシアネート架橋剤を得た。
製造例4
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂の調製
エピコート828 382部、ビスフェノールA118部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下150〜160℃へ加熱した。反応混合物を150〜160℃でエポキシ当量が500に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を140〜145℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化トルエンジイソシアネート203部を加えた。反応混合物を140〜145℃に約1時間保ち、次いで、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル209部を加えた。次に、反応混合物を90℃以下に冷却し、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン−2−オール272部、ジメチロールプロピオン酸134部、脱イオン水144部を加えた。この混合物を約8の酸価が得られるまで65〜75℃で反応させて顔料分散用樹脂を得た。これを冷却し、30%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用樹脂を得た。
製造例5
カチオン性メインエマルションの調製
製造例1のカチオン性樹脂と製造例3のポリイソシアネート架橋剤を固形分として70:30の割合で混合し、酢酸で中和率40%に中和し、脱イオン水を加え、ゆっくり希釈し、ついで不揮発分が37質量%になるようにメチルイソブチルケトンおよび脱イオン水を除去し、カチオン性メインエマルションを得た。
製造例6
カチオン性アクリル樹脂エマルションの調製
上記製造例5と同様に、製造例2のカチオン性アクリル樹脂と製造例3の架橋剤を固形分として70:30の割合で含む不揮発分33%のエマルションを作成した。
製造例7
カチオン性顔料ペーストの調製
下記配合量のものを分散することによりカチオン性顔料ペーストを調製した。
Figure 2009174005
上記表中、カーボンブラック:三菱化学株式会社製、MA−100、酸化チタン:石原産業株式会社製、タイペークCR−97である。
製造例8
カチオン電着塗料組成物(1)の調製
製造例5のカチオン性メインエマルション35質量部、製造例6のカチオン性アクリル樹脂エマルション4質量部、製造例7のカチオン性顔料分散ペースト13.3質量部、および脱イオン水47.4質量部を混合して、カチオン電着塗料組成物(1)を得た。
比較製造例1
カチオン電着塗料組成物(2)の調製
製造例7において、ヘプタン酸(脂肪酸類)を用いないこと以外は製造例7と同様にして、カチオン性顔料分散ペーストを調製した。
得られたカチオン性顔料分散ペースト13.3質量部、製造例5のカチオン性メインエマルション35質量部、製造例6のカチオン性アクリル樹脂エマルション4質量部、および脱イオン水47.4質量部を混合して、カチオン電着塗料組成物(2)を得た。
実施例1
製造例8によって得られたカチオン電着塗料組成物(1)60Lを、槽上方部にバルブを有する電着槽中に入れ、次いで防錆油であるノックスラスト550HNを40ppmの濃度となるように加えた。スリーワンモーターを用いて300rpmで8時間撹拌を行い、カチオン電着塗料組成物中に防錆油を混在させた。
防錆油が混在したカチオン電着塗料組成物を、撹拌を続けながら、撹拌を停止してから1時間後に、または撹拌を停止してから2時間後に、電着槽上方部のバルブから20Lのカチオン電着塗料組成物を抜き取った。これらの抜き取ったカチオン電着塗料組成物を、UNIVERSAL FILTER,INC.のオイルマグネット(商標)フィルタ(品番OS−29)に導入し、加圧を伴わない濾過を行った。濾過されたカチオン電着塗料組成物を再び電着槽に戻し、30分間撹拌した。得られたカチオン電着塗料組成物を用いて、リン酸亜鉛処理した4枚の冷延鋼板(7cm×15cm)に膜厚20μmとなるように電着塗装し、水洗した後、140℃で20分間焼き付けた。硬化電着塗膜上に存在するハジキの数を数えたところ以下の通りであった。
また、防錆油40ppm添加後8時間撹拌した、オイルマグネットフィルタで濾過していないカチオン電着塗料組成物についても、上記と同様に電着塗装を行い、硬化電着塗膜上に存在するハジキの数を数えた。
Figure 2009174005
上記結果から、撹拌を停止することなくカチオン電着塗料組成物を濾過した場合においては、混在する油分を充分に除去することができず、ハジキが多く発生したことがわかる。なお、撹拌を停止2時間後において、電着塗料組成物の顔料成分の沈降は確認されなかった。
実施例2
底部が一方に下方傾斜した形状のバットに、製造例8によって得られたカチオン電着塗料組成物(1)60Lを入れた。次いで、平均粒径100μmの磁性鉄粉6g(100ppm相当量。なお実際の電着槽における鉄粉含有量は、ラインおよび採取口によって変化するものの、一般に5〜50ppm程と考えられる。)を電着槽に投入し、スリーワンモーターを用いて300rpmで1時間撹拌を行った。
その後、撹拌を止めてカチオン電着塗料組成物を2時間静置した。
次いで、以下の3種類の手法で、バットからカチオン電着塗料組成物を抜き取った。
(1)そのまま、バット最下部のバルブからカチオン電着塗料組成物を抜き取る。
(2)バット下部の傾斜部に対して、バイブレータを用いて20秒間振動を与え、その後、バット最下部のバルブからカチオン電着塗料組成物を抜き取る。
(3)バット下部の傾斜部に対して、バイブレータを用いて20秒間振動を与え、その後、バット最下部のバルブからカチオン電着塗料組成物を抜き取り、次いで純水1Lを用いてバットの壁面を洗浄し、この洗浄水も同様に抜き取る。
上記(1)〜(3)の方法によって抜き取ったカチオン電着塗料組成物(および洗浄水(方法(3)のみ))を、300メッシュの濾布を用いて濾過した。得られた残渣を洗浄して鉄粉を取り出し、回収した鉄粉の質量を測定した。なお実施例2において、撹拌停止時における電着塗料組成物の顔料成分の沈降は確認されなかった。
回収した鉄粉の質量は以下の通りであった。
Figure 2009174005
比較例1
製造例8によって得られたカチオン電着塗料組成物(1)の代わりに、比較製造例1によって得られたカチオン電着塗料組成物(2)を用いたこと以外は、実施例2と同様の手順を行った。回収した鉄粉の質量は以下の通りであった。
Figure 2009174005
上記の通り、比較例1においては、バットの傾斜部を振動させ、さらに純水で洗浄する方法(3)を用いることによって、ようやく、実施例2の方法(1)と同量の鉄粉を回収することができた。
このように比較例1において鉄粉の回収が困難であった理由として、比較例1においてはバットの傾斜部に電着塗料組成物が鉄粉と一緒に沈殿していたことが挙げられる。この傾斜部に電着塗料組成物が沈殿することにより、沈殿した電着塗料組成物と一緒に鉄粉が固着してしまい、これにより鉄粉の回収が困難となった。
比較例1においてはさらに、撹拌停止による電着塗料組成物の顔料成分の沈降が確認された。この沈降は、電着塗装時における塗膜欠陥(ブツの発生)をもたらす要因となるものである。
本発明は、電着塗料組成物に混入する油分や金属不溶分を除去しつつ電着塗装することができる電着塗装方法及び電着塗装装置等として好適に利用され得る。
本発明における電着塗装装置の1態様を示す概略図である。 本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。 本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。 本発明における電着塗装装置の他の1態様を示す概略図である。 上記電着塗装装置の油分分離部の1態様を示す概略図である。 上記電着塗装装置の油分分離部の他の1態様を示す概略図である。 置換槽を有する、本発明における電着塗装装置の1態様を示す概略図である。
符号の説明
1:電着槽、
1a:電着槽の上端、
2:被塗物、
3:オーバーフロー槽、
4:油分除去部、
5:配管、
7:バルブ、
9:油吸着用フィルタ、
10:電着塗装装置、
11:配管、
12:油分分離部、
13:金属除去部、
14:バルブ、
15:一般的なフィルタ、
17:ポンプ、
19:配管、
21:ポンプ、
25:置換槽。

Claims (9)

  1. 電着塗料組成物に混在する異物を除去しつつ電着塗装を行う電着塗装方法であって、
    該電着塗料組成物が、(a)脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物、またはこれらの3種から選択される少なくとも2種の混合物である顔料沈降防止剤、および(b)顔料、を含む電着塗料組成物であり、
    該電着塗装において用いられる電着塗装装置が;
    電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽;を備え、
    該電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、該電着槽に隣接して設けられた油分除去部;または該電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部;の少なくとも一方を備えており、
    該電着槽の底部の形状は、該金属除去部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状であり、かつ
    該油分除去部および/または金属除去部における、電着塗料組成物に混在する油分および/または金属不溶分の除去が、該電着塗装装置における電着塗料組成物の撹拌を停止した状態において行われる、
    電着塗装方法。
  2. 前記電着塗装装置が、油分除去部および金属除去部の双方を備える、請求項1記載の電着塗装方法。
  3. 前記油分および/または金属不溶分の除去が、前記電着塗装装置における電着塗料組成物の撹拌を停止した状態において停止開始から5分〜48時間の間に行われる、請求項1または2記載の電着塗装方法。
  4. 前記油分除去部が油吸着用フィルタを有する、請求項1〜3いずれかに記載の電着塗装方法。
  5. 前記金属除去部が金属フィルタを有する、請求項1〜4いずれかに記載の電着塗装方法。
  6. 前記電着塗装装置が、電着槽の底部を振動させる振動付加部をさらに備える、請求項1〜5いずれかに記載の電着塗装方法。
  7. 前記金属除去部が精密フィルタをさらに有し、該精密フィルタは前記金属フィルタを通過した金属不溶分を除去するフィルタである、請求項5記載の電着塗装方法。
  8. 請求項1〜7いずれかに記載の電着塗装方法において用いられる電着塗装装置であって、該電着塗装装置は;電着塗料組成物を収容する槽であり被塗物が浸漬され電着塗装が行われる電着槽;を備え、かつ
    該電着槽の上方部から回収した電着塗料組成物中に混在する油分を除去する、該電着槽に隣接して設けられた油分除去部;または該電着槽の底部に設けられた、電着塗料組成物中に混在する金属不溶分を除去する金属除去部;の少なくとも一方を備えており、
    該電着槽の底部の形状は、該金属除去部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状である、
    電着塗装装置。
  9. 請求項8記載の電着塗装装置;および該電着塗装装置によって電着塗装された被塗物を洗浄する水洗装置;を少なくとも備える電着塗装システムであって、
    該水洗装置は水洗液を保持する槽である水洗槽を有し、および該水洗槽の底部の形状は、水洗液を排水する排水部に向かって下方傾斜する構造を1またはそれ以上有する形状である、
    電着塗装システム。
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