JP4413298B2 - フタロシアニン化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フタロシアニン化合物の新規な製造方法に関するものである。特に、溶媒への溶解性が高いフタロシアニン化合物の製造方法に関するものである。本発明の製造方法で得られるフタロシアニン化合物は、600〜1000nmの近赤外域に吸収を有しているので、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、光学文字読み取り機などにおける書き込みあるいは読み込みのための近赤外吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写、感熱紙・感熱孔版などの光熱変換剤、プラズマディスプレー(PDP)用などの近赤外線吸収フィルター、眼精疲労防止剤、光導電材料などとして用いる近赤外吸収材料として、あるいは撮像管に用いる色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、フラッシュ定着用トナー用色素、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用バーコードインク、さらに微生物不活性化剤、腫瘍治療用感光性色素、さらに自動車あるいは建材の熱線遮光剤、さらに樹脂区分け判別剤として用いる際に優れた効果を発揮するものである。
【0002】
【従来の技術】
近赤外吸収色素に対するニーズは、その利用分野の広がりにつれて高いものとなっており、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、光学文字読み取り機などにおける書き込みあるいは読み込みのための近赤外吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写、感熱紙・感熱孔版などの光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター、眼精疲労防止剤、光導電材料などとして用いる近赤外吸収材料として、あるいは撮像管に用いる色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用バーコードインク、さらに微生物不活性化剤、腫瘍治療用感光性色素、さらに自動車あるいは建材の熱線遮光剤に用いられる近赤外吸収色素においては、耐光性、耐熱性、溶解性(または樹脂との相溶性)などの諸特性をすべて満たす材料が求められているが、こうした耐光性、耐熱性、溶解性(または樹脂との相溶性)などの諸特性をすべて満たす材料は、存在ないし開発されていなかった。
【0003】
例えば、フタロシアニン色素では、耐光性、耐熱性に優れるが溶解性が低く、また吸収波長も短波長的であった。
【0004】
しかしながら、フタロシアニン化合物は、耐熱性、耐光性が高い為に種々のものが提案されており、その製造方法についても多数提案されている。それらの内では、フタロニトリル化合物と金属源を有機溶媒中で反応させる方法が一般的である。
【0005】
これらに用いる原料の金属源としては、一般的にはハロゲン化物、酸化物、有機酸塩、金属粉等が挙げられる。これらの中でも反応性が高いことから、ハロゲン化物を使う例が最も一般的である。しかしながら、ハロゲン化物を使う合成法にはフタロシアニン骨格にハロゲン原子が混入したり、合成の工程でハロゲンガスが発生するため特殊な材質の製造設備が必要になるといった問題点を有していた。そのため金属源に酸化物を用いる方法も提案されている。このうち特開平6−256680号公報、特開平7−36205号公報では、五酸化バナジウムとα−クロロナフタレンを用いる合成方法が開示されているが、この方法では五酸化バナジウムのα−クロロナフタレンに対する溶解性がほとんど無いため反応性が悪く収率も上がらないという問題点を有していた。一方、特開昭63−210166号公報、特開平3−269063号公報、特公平7−17851号公報、特開平6−41137号公報では、五酸化バナジウムとエチレングリコールを用いる合成方法が開示されているが、この方法ではフタロニトリルとエチレングリコールからの中間体を経由して反応させている。確かにその中間体を経由させることにより反応性を向上させているが、生成するフタロシアニン化合物の選択率が悪く精製工程が煩雑になるという問題点を有していた。
【0006】
近年、溶媒溶解性の高いフタロシアニン化合物に対する要求が高まっているが、溶媒溶解性を高める一般的な方法はフタロシアニン骨格のベンゼン環上にある程度嵩高い置換基を導入することである。比較的嵩高い置換基を有するフタロシアニン化合物の合成例には、金属源に金属酸化物を用いる例は皆無である。この原因は嵩高い置換基を持つオルソフタロニトリル化合物は無置換や小さい置換基を有するオルソフタロニトリル化合物に比べて立体障害等により反応性が劣るためである。このため、比較的嵩高い置換基を有するフタロシアニン化合物の合成は、反応性の高いハロゲン化物を用いて行われてきた。しかし、ハロゲン化物を用いることによって、置換基自体がハロゲン原子と反応したり、フタロシアニン骨格にハロゲン原子が混入したりすることによってフタロシアニン化合物本来の特性が損なわれるという問題点を有していた。こうしたことから金属源に金属酸化物を用いた効率のよい合成方法の開発に対する要求が高まっている。しかし、ハロゲン原子を含有するフタロニトリル化合物を原料とする場合、反応中にハロゲン原子が一部脱離し反応装置を腐食させるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点に鑑み、本発明の目的は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物からフタロシアニン化合物、特に近赤外吸収色素あるいはその前駆体、高級染料などとして幅広い分野、例えば、近赤外域に吸収を有し、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、近赤外線吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写等の光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター等の近赤外線吸収材料、色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、光学用カラーフィルター、プラズマディスプレイ表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク等に利用することができる有用なフタロシアニン化合物を工業的に製造する上で、フタロシアニン化反応の際に副生するフッ酸などのハロゲン化水素酸による反応器腐食を防止ないし極めて低いレベルに低減することのできるフタロシアニン化合物の製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明の目的は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物からフタロシアニン化合物を工業的に製造する際に、近赤外吸収色素あるいはその前駆体、高級染料などとして幅広い分野、例えば、近赤外域に吸収を有し、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、近赤外線吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写等の光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター等の近赤外線吸収材料、色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、光学用カラーフィルター、プラズマディスプレイ表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク等に利用することができる有用なフタロシアニン化合物を工業的規模においても実験室規模と変わらぬ収率で製造し得る方法を提供するものである。
【0009】
本発明の目的は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属源から置換基を有していてもよいフタロシアニン化合物を製造する方法において、金属源として金属酸化物を原料として用い、ハロゲン含有フタロニトリル化合物との反応性を高めることができ、従来法に比して実用上十分であるだけでなく、フタロシアニン骨格上に嵩高い置換基を導入することができる新規な製造方法を提供するものである。特に、溶解性を付与する置換基を有しているフタロシアニン化合物の製造に有用な方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、収率、純度に優れた置換基を有していてもよいフタロシアニン化合物の製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、金属源として単に金属酸化物や金属ハロゲン化物を用いる従来の方法では、反応器の腐食を防止した上で、高純度、高性能かつ実用上有意な溶媒溶解性を有するフタロシアニン化合物を製造することはできないことがわかり、上記諸目的を達成すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、(1) ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物からフタロシアニン化合物を製造する際に、
アルカリ土類金属の炭酸塩の共存下、反応を水と共沸するかまたは水以上の沸点を有している有機溶媒中で、該反応で副生する水を該有機溶媒と共沸留去して行うことを特徴とするフタロシアニン化合物の製造方法により達成することができる。
【0013】
また、本発明の目的は、(2) ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物から、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物の存在下においてフタロシアニン化合物を製造する際に、
アルカリ土類金属の炭酸塩を共存させ反応することを特徴とする、フタロシアニン化合物の製造方法によっても達成することができる。
【0014】
さらに、本発明の目的は、(3) 反応時に撹拌動力0.03kW/m3 以上で撹拌を行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のフタロシアニン化合物の製造方法によっても達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物からフタロシアニン化合物を製造する際に、アルカリ土類金属化合物を共存させ反応することを特徴とするものである。これにより、各種用途に利用することができる有用なフタロシアニン化合物の工業的な製造において、フタロシアニン化反応の際に副生するフッ酸などのハロゲン化水素酸による反応器腐食を防止ないし極めて低いレベルに低減することのでき、反応器の腐食を抑制することができるものである。
【0017】
さらに、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法では、金属源として金属酸化物を用いるが、従来の金属酸化物を用いた製造方法(特開平6−256680号公報、特開平7−36205号公報、特開昭63−210166号公報、特開平3−269063号公報、特公平7−17851号公報)では、実用上不十分であるだけでなく、フタロシアニン骨格上に嵩高い置換基を導入した製造例がないことが判明し、新規な製造方法を見出したものである。
【0018】
すなわち、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物から、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物の存在下においてフタロシアニン化合物を製造する際に、アルカリ土類金属化合物を共存させ反応することを特徴とするものである。
【0019】
本製造方法においては、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物が触媒として働き、金属酸化物との間で活性種を発生させることにより、ハロゲン含有フタロニトリル化合物との反応性を高めることができ、従来法に比して実用上十分であるだけでなく、フタロシアニン骨格上に嵩高い置換基を導入することができる点で極めて優れているといえる。
【0020】
本発明では、フタロシアニン化合物を製造する際に、反応器等の腐食を防ぐために反応系にアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩等のアルカリ土類金属化合物を加えて反応することにその特徴を有するものである。これにより、求核置換により発生する反応性に富むフッ酸などのハロゲン化水素酸を速やかにアルカリ土類金属化合物と反応させることにより腐食性のないフッ化物などのハロゲン化物としてトラップすることにより反応系から除去することが可能である。
【0021】
さらに、アルカリ土類金属化合物を添加して反応すると、副反応により発生するフッ酸などのハロゲン化水素酸が速やかにトラップされるため、副生成物の生成や、目的物の分解などの副反応が抑えられ収率や選択率が向上するほか、洗浄などの精製工程を簡略化できる。
【0022】
なお、アルカリ金属化合物もフッ酸などのハロゲン化水素酸のトラップに有効ではあるが、該アルカリ金属は、塩基性が強すぎるためヒドロキシル化などの副反応を起こすため、反応系に添加することは適当でない。
【0023】
上記アルカリ土類金属化合物としては、反応溶媒中で有効にフッ酸などのハロゲン化水素酸をトラップし得るものであれば特に制限されるものではなく、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、有機塩、無機塩等のアルカリ土類金属化合物が挙げられ、具体的には、酢酸カルシウム、カルシウムアセチルアセトネート、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ぎ酸カルシウム、水酸化カルシウム、シュウ酸カルシウム、酸化カルシウムおよびステアリン酸カルシウム等のカルシウム化合物、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトネート、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ぎ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酸化マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、酢酸バリウム、バリウムアセチルアセトネート、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、クエン酸バリウム、ぎ酸バリウム、水酸化バリウム、シュウ酸バリウム、酸化バリウムおよびステアリン酸バリウム等のバリウム化合物、酢酸ストロンチウム、ストロンチウムアセチルアセトネート、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、クエン酸ストロンチウム、ぎ酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム、酸化ストロンチウムおよびステアリン酸ストロンチウム等のストロンチウム化合物等が例示できる。これらは1種類若しくは互いに影響しない組み合わせであれば2種以上を適当に混合して用いてもよい。
【0024】
上記アルカリ土類金属化合物のなかでも、(1)カルシウム化合物の中のカルシウム塩が、HFなどのハロゲン化水素酸をトラップして安定なCaF2 等のハロゲン化カルシウムとなるため有用である。また、(2)アルカリ土類金属の炭酸塩を用いると酸が残留せず有利である。この場合、副生する水は、悪影響が考えられるので、反応溶媒と共沸留去することが望ましい。従って、本発明に用いることのできる反応溶媒は、水と共沸するかまたは水以上の沸点を有していることが望ましい。上記(1)および(2)の観点より、アルカリ土類金属化合物のなかでも、特に炭酸カルシウムが極めて好ましいものである。
【0025】
また、上記アルカリ土類金属化合物の反応系への添加量は、副反応により発生するフッ酸などのハロゲン化水素酸を速やかに該アルカリ土類金属化合物と反応させてトラップすることができるように添加すればよいが、工業的に安定してフッ酸などのハロゲン化水素酸を速やかにトラップするには、反応系中の化合物が含有するハロゲン原子1モルに対して、通常0.05〜50モル倍、好ましくは0.1〜10モル倍、特に好ましくは1.1〜1.5モル倍の範囲とすることが望ましい。反応系中のハロゲン原子1モルに対して0.05モル倍未満の場合には、アルカリ土類金属化合物によるHFなどのハロゲン化水素酸のトラップが十分でなく、反応器等の腐食を充分に防止することができない。また、反応系中のハロゲン原子1モルに対して50モル倍を超える場合には、過剰な添加に見合うだけの更なる効果が得られず、工業的にみても不経済であるほか、過剰量の炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物が求核置換反応を阻害するため好ましくない。
【0026】
本発明の製造方法には、ハロゲン原子のみを有するフタロニトリル化合物およびハロゲン原子と共に他の置換基の双方を有するフタロニトリル化合物のいずれも用いることができる。ここで、「ハロゲン含有」とは、フタロニトリルのベンゼン環上にハロゲン原子を有するもの、あるいはフタロニトリルのベンゼン環上に置換した置換基の一部にハロゲン原子を有するもののいずれであってもよい。
【0027】
上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物において、フタロニトリルのベンゼン環上に置換し得る置換基(ハロゲン原子および他の置換基(一部にハロゲン原子が置換したものを含む))としては、特に制限されるものではなく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコシキカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基等を用いることができる。当該置換基の種類は、1種類でも2種類以上でもよく、当該置換基の数も1〜4の範囲のいずれかの整数であればよいが、少なくとも1つはハロゲン原子を有するものでなければならない。以下に、上記置換基のうち、代表的なものにつき、より詳しく説明するが、本発明がこれらに限定されるものでないことは言うまでもいない。
【0028】
まず、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を示す。このなかでも好ましくは塩素原子もしくはフッ素原子であり、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、塩素原子もしくはフッ素原子、特にフッ素原子が置換したフタロニトリル化合物を用いるこいとで、原料中のフッ素原子の一部がより腐食性の高いフッ酸を生成するのに対して特に本発明が有効に働き、反応器の腐食を防止でき、さらに、塩素もしくはフッ素、とりわけフッ素含有のフタロシアニン化合物では、耐光性、耐熱性、溶解性(または樹脂との相溶性)などの諸特性をすべて満足する材料を得る上で有利である。
【0029】
アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基およびハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリール基などの置換基を有してなるそれらのアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基およびハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリール基などの置換基を有してなるそれらのアルキル基である。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、ラウリル基、ステアリル基、およびハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリール基などの置換基を有してなるそれらのアルキル基などを示す。
【0030】
アリール基としては、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基およびハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリール基などの置換基を有してなるそれらのアリール基が挙げられるが、好ましくはハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基などの置換基を有してなるアリール基およびアルコキシカルボニル基、アリール基などの置換基を有してなるそれらのアリール基である。
【0031】
ここで、上記アルキル基またはアリール基に置換し得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を示す。
【0032】
同様に、上記アリール基に置換し得るアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基である。
【0033】
また、上記アルキル基またはアリール基に置換し得るアルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分枝鎖または環状のアルコキシ基である。
【0034】
さらに、上記アルキル基またはアリール基に置換し得るハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基あるいはアルコキシ基の一部がハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基あるいはアルコキシ基の一部がハロゲン化されたものである。
【0035】
上記アリール基に置換し得るアルキルアミノ基としては、炭素数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルキルアミノ基であり、好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分枝鎖または環状のアルキルアミノ基である。
【0036】
上記アルキル基またはアリール基に置換し得るアルコキシカルボニル基あるいはハロゲン化アルコキシカルボニル基としては、アルコキシ基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基あるいはハロゲン化アルコキシカルボニル基、またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜8の環状アルコキシカルボニル基あるいはハロゲン化アルコキシカルボニル基である。
【0037】
上記アルキル基またはアリール基に置換し得るアリール基としては、置換基を有していてもよいアリール基である。
【0038】
なお、上述アルキル基またはアリール基の置換基の種類は1種類でも2種類以上でもよい。
【0039】
さらに、ハロゲン含有フタロニトリル化合物のベンゼン環上に置換し得るアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびハロゲン化アルコキシカルボニル基に関しては、上記アルキル基またはアリール基に置換し得るアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびハロゲン化アルコキシカルボニル基として、説明したと同様のものであればよく、ここではその説明を省略する。
【0040】
また、ハロゲン含有フタロニトリル化合物のベンゼン環上が、上記ハロゲン原子が置換した以外の置換基(例えば、アルキル基、アミノ基(置換アミノ基であるアルキルアミノ基などを含む)、アルコキシ基およびアルキルチオ基などで表される置換基1〜3個で置換されている場合、その残位はすべてハロゲン原子であることが好ましい。なかでも好ましくはフッ素原子あるいは塩素原子であり、特に好ましくはフッ素原子である。
【0041】
本発明のハロゲン含有フタロニトリル化合物としては、具体的に、例えば、3−トリフルオロメチルフタロニトリル、テトラフルオロフタロニトリル、3,4,5−トリフルオロフタロニトリル、3,4,6−トリフルオロフタロニトリル、3,5−ジフルオロフタロニトリル、3,6−ジフルオロフタロニトリル、4,5−ジフルオロフタロニトリル、3−フルオロフタロニトリル、4−フルオロフタロニトリル、テトラクロロフタロニトリル、3,4,5−トリクロロフタロニトリル、3−クロロ−4−フルオロフタロニトリル、4−エチルアミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−ブチルアミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−アニリノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(o−トルイジノ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(p−トルイジノ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2,4−キシリジノ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2,6−キシリジノ)フタロニトリル、4−(o−クロロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2,4−ジクロロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2,6−ジクロロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(p−フルオロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2,3,5,6−テトラフルオロアニリノ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−メトキシフタロニトリル、4−ブトキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−フェノキシフタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(o−メチルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリクロロ−4−(p−メチルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2,4−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル、4−(o−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2,6−ジクロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(o−フルオロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2,6−ジメトキシフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−メチル−6−メトキシエトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−エトキシ−6−メトキシエトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−メチル−6−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−メトキシエトキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−(2−プロポキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)フタロニトリル、3,5,6−トリフルオロ−4−(2−(2,4−ジメチル−3−ペントキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)フタロニトリル、4−(2−(1,3−ジブロモ−2−プロポキシカルボニル)−6−フェニル)フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2−(1,4−ジブロモ−2−ブトキシカルボニル)−6−フェニル)フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビスブチルチオフタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(tert−ブチルチオ)フタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビスフェニルチオフタロニトリル、4,5−ビスエチルフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビスプロピルフェニルチオフタロニトリル、4,5−ビスブチルフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(p−トリルチオ)フタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(m−トリルチオ)フタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,4−キシリルチオ)フタロニトリル、4,5−ビス(o−クロロフェニルチオ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル、4,5−ビス(2,6−ジクロロフェニルチオ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル、3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(o−フルオロフェニルチオ)フタロニトリル、4−アニリノ−5−フェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、4−アニリノ−5−ブトキシ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、4−ブチルチオ−5−フェノキシ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、4−ブトキシ−5−フェノキシ−3,6−ジフルオロフタロニトリル、4−アニリノ−5−(o−トルイジノ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル、3−フルオロ−4,5,6−トリフェノキシフタロニトリル、4−フェニルチオ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2−エトキシカルボニル−6−メチル)フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4−(2−フェニル)フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル、4,5−ジフェノキシ−3,6−ジフルオロフタロニトリルなどが挙げられる。
【0042】
次に、本発明に用いられる金属酸化物としては、特に制限されるものでなく、バナジウム、チタン、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、銀、パラジウム、亜鉛、ゲルマニウム、錫、ニオブ、モリブデン、タングステン、珪素、リチウムなどの酸化物が挙げられる。具体的には、一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、酸化第一錫、酸化第二錫、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化リチウム、三酸化モリブデン、酸化ニオブ、五酸化ニオブなどの酸化物が挙げられる。好ましくは鉄、亜鉛、銅、コバルト、バナジウム、モリブデン、チタニウムの酸化物、さらに好ましくはチタニウム、モチブデンおよびバナジウム酸化物等の三価以上の金属酸化物、特に好ましくはバナジウム酸化物である。バナジウム酸化物としては、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウムなどを挙げることができる。なかでも低級酸化物が好ましく、特に好ましくは三酸化バナジウムである。金属酸化物を用いることにより、従来の金属塩として塩化物を用いるフタロシアニンの製造方法の場合に比して、フタロシアニン骨格に塩素原子が混入しないというメリットがある。
【0043】
上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物に対する上記金属酸化物の配合量は、化学量論量以上であればよいが、該金属酸化物を上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物4当量に対して1〜2当量、好ましくは1.0〜1.5当量の範囲で配合するのが望ましい。金属酸化物がハロゲン含有フタロニトリル化合物4当量に対して1当量未満の場合には、化学量論的にみて金属酸化物が不足するため無金属フタロシアニン化合物が副生されるなど好ましくなく、一方、金属酸化物がハロゲン含有フタロニトリル化合物4当量に対して2当量を超える場合には、未反応の金属酸化物が多く残存するため、不経済であり、これらを精製段階で回収ないし除去するのに手間がかかるなど好ましくない。
【0044】
また、本発明の製造方法では、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物の存在下にて行うのが好ましいが、pKa7.0以下という場合、多段階解離を行い、2段目以降の解離段においてpKaが7.0を超えていても1段目の解離段のpKaが7.0以下である化合物も含める。好ましくは全解離段においてpKaが7.0以下である化合物である。より好ましくはpKaが−5.0〜5.0の範囲の化合物の存在下にて行うものである。すなわち、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物を反応させてフタロシアニン化合物を合成する際に、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下の化合物を存在せしめることで、極めて有用な触媒として作用することを見出したものである。当該化合物のpKaが7.0を超える場合には、触媒としての活性が不十分なため、フタロシアニン化反応が進行しにくく好ましくない。
【0045】
本発明に用いられる25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKaが7.0以下の化合物としては、特に制限されるものではなく、pKaが7.0以下のものであれば有機化合物および無機化合物のいずれでもよく、例えば、アジピン酸、N−アセチルアラニン、N−アセチルグリシン、アゼライン酸、5′−アデノシン三リン酸、2′−アデノシンリン酸、3′−アデノシンリン酸、5′−アデノシンリン酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、安息香酸、イソ吉草酸、イソニコチン酸、イソニコチン酸メチル、イソ酪酸、5′−イノシンリン酸、オキサロ酢酸、オクタン酸、ギ酸、吉草酸、キナルジン酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、2−グリセリンリン酸、D−グルコース1−リン酸、グルタル酸、クロトン酸、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、クロロ酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、cis−ケイ皮酸、trans−ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、m−シアノ安息香酸、p−シアノ安息香酸、シアノ酢酸、o−シアノフェノール、シクロヘキサンカルボン酸、ジクロロ酢酸、2,6−ジメチルピリジン、シュウ酸、d−酒石酸、(R,R)−酒石酸、テノイルトリフルオロアセチルアセトン、トリクロロ酢酸、トリフルオロアセチルアセトン、p−トルエンスルホン酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、ニトロ酢酸、p−ニトロフェノール、乳酸、尿酸、バルビツル酸、ピクリン酸、ピコリン酸、2,2′−ビピリジン、4,4′−ビピリジン、ピメリン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、フマル酸、o−フルオロ安息香酸、m−フルオロ安息香酸、p−フルオロ安息香酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、ブロモ酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘキサン酸、ヘプタン酸、o−ベンゼンジカルボン酸、m−ベンゼンジカルボン酸、p−ベンゼンジカルボン酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、o−ヨード安息香酸、m−ヨード安息香酸、p−ヨード安息香酸、ヨード酢酸、酪酸、リンゴ酸、レブリン酸、L−アスコルビン酸、アスパラギン酸、アデニン、アデノシン、5′−アデノシン二リン酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸、4−ニトロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸、4−スルホフタル酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、メシチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ピリジン−3−スルホン酸、2,5−ジクロロスルファニル酸、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、3−ニトロアニリン−4−スルホン酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸などを用いることができるが、有機化合物であることが好ましい。有機化合物であることによって、フタロシアニン化合物を製造する際に、反応溶媒として有機溶媒を用いる場合には、用いる有機溶媒に対する溶解性が無機化合物よりも高くなり、反応の促進効果が向上するので好ましい。有機化合物のなかでも有機酸が好ましく、より好ましくは有機スルホン酸化合物である。有機スルホン酸化合物のなかでも、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸、4−ニトロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸、4−スルホフタル酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、メシチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸などが好ましく、特に工業化させる際に手に入れ易いという点からp−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0046】
当該pKaが7.0以下の化合物の使用量は、触媒として用いることから反応系についての化学量論的な反応式の中に含まれないため反応の前後で存在量は変わらず、例えば、反応をバッチ式で行う場合、ハロゲン含有フタロニトリル化合物の使用量に対して0.05〜5モル%、好ましくは0.05〜2モル%を仕込むことで十分な触媒作用が得られる。pKaが7.0以下の化合物の使用量が、ハロゲン含有フタロニトリル化合物の使用量に対して0.05モル%未満の場合には、金属酸化物との間で活性種を発生させることが不十分となり、ハロゲン含有フタロニトリル化合物との反応性を十分に高めることができず、フタロシアニン骨格上に嵩高い置換基を導入することができにくくなるおそれがあるため好ましくない。一方、pKaが7.0以下の化合物の使用量が、ハロゲン含有フタロニトリル化合物の使用量に対して5モル%を超える場合には、過剰のpKaが7.0以下の化合物が反応系中で副反応を起こし収率を低下させる可能性があるほか、既に十分な触媒効果が得られており、更なる添加に見合うだけのより顕著な効果が得られず好ましくない。
【0047】
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法では、上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物と上記金属酸化物を上記pKaが7.0以下の化合物の存在下で反応させるのが望ましいものであるが、この際の反応条件としては、反応温度30〜250℃、好ましくは80〜200℃である。上記反応温度が30℃未満の場合には、触媒活性が低下するなどにより反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また250℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0048】
さらに、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法では、上記反応時に撹拌動力0.03kW/m3 以上、好ましくは0.05kW/m3 以上、さらに好ましくは0.1kW/m3 以上で撹拌を行うことが望ましい。上記撹拌動力が0.03kW/m3 未満の場合には、共存するアルカリ土類金属を反応系中に均一に分散させることが困難となり、反応系内の一部にフタロシアニン化反応の際に副生するフッ酸等がアルカリ土類金属化合物と反応せずに滞留する時間および量が増え、反応器の腐食が進むこととなり好ましくない。
【0049】
なお、こうした撹拌動力を与えるための撹拌装置としては、特に制限されるものではなく、従来既知の撹拌装置を適宜選択して使用すればよい。
【0050】
また、本発明の製造方法では、上記金属酸化物とpKaが7.0以下の化合物をあらかじめ混合し、一定時間経過後上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物を添加して反応を開始する方法を用いてもよい。この方法を用いると、ハロゲン含有フタロニトリル化合物の添加前に反応の活性種が生成するので反応の進行が速くなることがある。
【0051】
また、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法においては、上記pKaが7.0以下の化合物の存在下または不存在下、上記ハロゲン含有フタロニトリル化合物と上記金属酸化物との反応は、無溶媒中でも行える(すなわち、反応原料(置換試薬)であるハロゲン含有フタロニトリル化合物自身を溶媒として用いることができる)が、有機溶媒を使用して行うのが好ましい。有機溶媒は、出発原料や合成製品などのほか反応器などの材料等と反応性のない不活性な溶媒であればいずれもよいが、上述したように好適なアルカリ土類金属化合物の1種である炭酸塩を用いる場合に副生する水が悪影響を及ぼすことが考えらるので、こうした水を共沸留去することが好ましいことから、使用される有機溶媒においても、水と共沸するかまたは水以上の沸点を有しているものがより望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの窒素化合物系溶媒、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、1−エチルナフタレン、ジメチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、n−オクタノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒などを用いることができ、好ましくは、窒素化合物系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒であり、特に上記pKaが7.0以下の化合物の触媒能を高め、活性種の生成を速める効果を有することから窒素化合物系溶媒が好ましく、とりわけベンゾニトリルが好ましい。これらは1種類若しくは互いに影響しない組み合わせであれば2種以上を適当に混合して用いてもよい。
【0052】
上記有機溶媒の使用量は、有機溶媒100重量部に対しハロゲン含有フタロニトリル化合物10〜75重量部、好ましくは20〜60重量部の範囲である。有機溶媒100重量部に対しハロゲン含有フタロニトリル化合物が10重量部未満の場合には生産性が低く、また反応速度が遅いため余分な時間を要するため経済的に好ましくない。一方、有機溶媒100重量部に対しハロゲン含有フタロニトリル化合物が75重量部を超える場合には、スラリー濃度が高くなるため攪拌が困難になり大型の攪拌機が必要となる上に、攪拌効率が悪くなり均一な反応を行えないために好ましくない。
【0053】
本発明の製造方法により合成されるフタロシアニン化合物としては、具体的に例えば下記の化合物が挙げられる。
【0054】
こうしたフタロシアニン化合物としては、例えば、ヘキサデカフルオロバナジルフタロシアニン、ヘキサデカクロロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−フェニル−6−(2−プロピル)フェノキシ)ドデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラキス(2,6−ジフェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジフェニルフェノキシ)ドデカフルオロチタニルフタロシアニン、テトラキス(2,4,6−トリフェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(4−(2−(2−メトキシエトキシ)カルボニル−6−メチルフェノキシ))ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−イソプロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(3−ペントキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(3−ペントキシ)カルボニル−4−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロ銅フタロシアニン、テトラキス(2−tertブトキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジイソプロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロ鉄フタロシアニン、テトラキス(2−(2−ブトキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(2−ペントキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(3−メトキシプロポキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジ(2−メトキシエトキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロニッケルフタロシアニン、テトラキス(2−エトキシ−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジエトキシ−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロパラジウムフタロシアニン、テトラキス(2−ベンジルオキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロチタニルフタロシアニン、テトラキス(2−フェネチルオキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラキス(2−(2−テトラヒドロフルフリルオキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロチタニルフタロシアニン、テトラキス(4−(2−テトラヒドロフルフリルオキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロパラジウムフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジ(2−テトラヒドロフルフリルオキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロコバルトフタロシアニン、テトラキス(6−(ブロモフェニル)−2−イソプロポキシカルボニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(ブロモ−2−イソプロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(6−(4−ブロモメチルフェニル)−2−(2−テトラヒドロフルフリルオキシ)カルボニルフェノキシ)ドデカフルオロチタニルフタロシアニン、テトラキス(6−(4−ブロモメトキシフェニル)−2−(2−イソプロポキシカルボニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(1,3−ジブロモ−2−プロポキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2,4−ジ(6−ブロモヘキシルオキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロ銅フタロシアニン、テトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(4−(2−ブロモエトキシ)−2−イソプロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロ鉄フタロシアニン、テトラキス(2−(2−ブロモエトキシ)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(2−ブロモエトキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(2−(1−ブロモ−2−プロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキスアニリノドデカフルオロ鉄フタロシアニン、オクタキスフェニルチオオクタフルオロバナジルフタロシアニン、テトラキス(p−メチルフェノキシ)ドデカフルオロ銅フタロシアニン、オクタキス(2,4−キシリルチオ)オクタフルオロニッケルフタロシアニン、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)ドデカフルオロ鉄フタロシアニン、テトラキス(2,6−ジクロロアニリノ)チタニルフタロシアニン、オクタフェノキシオクタフルオロバナジルフタロシアニン、およびテトラキス(4−(p−メチルフェノキシ))−ドデカクロロバナジルフタロシアニンなどが挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
【0056】
実施例1
300mlのガラス製セパラブルフラスコに撹拌機(スリーワンモーター600G、ヘイドン)と直径50mmの十字型傾斜翼、および幅8mmのバッフル4本をセットした。この反応器にテトラフルオロフタロニトリル(TFPN)125.8gと三酸化バナジウム12.02g、パラトルエンスルホン酸8.37g、炭酸カルシウム1.42gと溶媒としてベンゾニトリル251.6gを仕込み、150℃で20時間反応した。反応中、撹拌翼は502rpmの速度で回転させた(この場合、撹拌動力1.0kW/m3 に相当する)。反応終了後、生成した固形分をろ過しベンゾニトリルで一回洗浄した後、乾燥することにより目的物の紫色ケーキ114.15gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ93.5%であったので、この値より換算すると収率78.3モル%(対TFPN)であった。
【0057】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度を算出したところ0.33mm/年であった。
【0058】
実施例2
実施例1において炭酸カルシウムの量を8.00gとした以外は全く同様に操作を行ったところ、目的物の紫色ケーキ116.88gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ92.6%であったので、この値より換算すると収率79.4モル%(対TFPN)であった。
【0059】
反応終了後、反応器の重量減少はなく、年間腐食速度は0.00mm/年であった。
【0060】
実施例3
実施例2において反応温度を180℃とした以外は全く同様に操作を行ったところ、目的物の紫色ケーキ122.06gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ91.8%であったので、この値より換算すると収率82.2モル%(対TFPN)であった。
【0061】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.39mm/年であった。
【0062】
比較例1
実施例1において炭酸カルシウムを添加しないこと以外は全く同様に操作を行ったところ、目的物の紫色ケーキ102.20gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ88.7%であったので、この値より換算すると収率66.5モル%(対TFPN)であった。
【0063】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は3.12mm/年であった。
【0064】
実施例4
実施例2において撹拌速度を400rpm(この場合、撹拌動力0.5kW/m3 になる)とした以外実施例2と同様に操作を行ったところ、目的物の紫色ケーキ113.42gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ91.1%であったので、この値より換算すると収率75.8モル%(対TFPN)であった。
【0065】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.08mm/年であった。
【0066】
実施例5
実施例2において撹拌速度を200rpmとし、撹拌翼を直径68mmの二枚翼に(この場合、撹拌動力0.04kW/m3 に相当する)、またバッフルは用いなかった以外は全く同様に操作を行ったところ、目的物の紫色ケーキ103.14gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ90.4%であったので、この値より換算すると収率68.4モル%(対TFPN)であった。
【0067】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は1.39mm/年であった。
【0068】
実施例6
実施例2においてテトラフルオロフタロニトリルの代わりに4−フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル172.39gを用い、洗浄溶媒としてイソプロピルアルコールを使用したこと以外実施例2と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ97.08gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ86.9%であったので、この値より換算すると収率63.2モル%(対4−フェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル)であった。
【0069】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.21mm/年であった。
【0070】
実施例7
実施例2において三酸化バナジウムの代わりに酸化亜鉛13.05gを用いた以外実施例2と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ125.15gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ89.7%であったので、この値より換算すると収率82.5モル%(対TFPN)であった。
【0071】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.18mm/年であった。
【0072】
実施例8
実施例7においてテトラフルオロフタロニトリルの代わりに4,5−ビスフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル239.18gを用いた以外実施例7と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ111.05gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ93.1%であったので、この値より換算すると収率78.8モル%(対4,5−ビスフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル)であった。
【0073】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.26mm/年であった。
【0074】
実施例9
実施例7においてテトラフルオロフタロニトリルの代わりに4−アニリノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル172.39gを用い、洗浄溶媒としてイソプロピルアルコールを使用したこと以外実施例7と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ95.91gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ92.7%であったので、この値より換算すると収率67.3モル%(対4−アニリノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル)であった。
【0075】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.24mm/年であった。
【0076】
実施例10
実施例8において酸化亜鉛の代わりに酸化ニオブ17.46gを用いた以外実施例8と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ118.84gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ83.8%であったので、この値より換算すると収率75.9モル%(対4,5−ビスフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル)であった。
【0077】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.30mm/年であった。
【0078】
実施例11
実施例8において酸化亜鉛の代わりに酸化錫21.60gを用いた以外実施例8と同様に操作することにより、目的物の紫色ケーキ120.72gを得た。得られた目的物の純度を分析したところ83.8%であったので、この値より換算すると収率79.4モル%(対4,5−ビスフェニルチオ−3,6−ジフルオロフタロニトリル)であった。
【0079】
反応終了後、反応器の重量減少より年間腐食速度は0.06mm/年であった。
【0080】
【発明の効果】
本発明では、溶解性のフタロシアニン化合物、特に近赤外吸収色素あるいはその前駆体、高級染料などとして幅広い分野、例えば、近赤外域に吸収を有し、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、近赤外線吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写等の光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター等の近赤外線吸収材料、色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、光学用カラーフィルター、プラズマディスプレイ表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク等に利用することができる有用な溶解性のフタロシアニン化合物の工業的な製造において、反応系にアルカリ土類金属化合物を添加することにより、フタロシアニン化反応の際に副生するフッ酸等のハロゲン化水素酸をすばやくトラップすることができるため、該フッ酸等のハロゲン化水素酸による反応器腐食を極めて効果的に防止ないし極めて低いレベルに低減することができ、さらに、生成したフッ酸塩などのハロゲン化物は、濾過により除去可能で精製工程が簡略化できるとする利点も有するものである。
【0081】
また、本発明では、溶解性のフタロシアニン化合物の工業的な製造において、反応系にアルカリ土類金属化合物を添加する以外は実験室レベルでその有用性が確認できた従来既知の製造方法をそのまま適用することができるため、近赤外吸収色素あるいはその前駆体、高級染料などとして幅広い分野、例えば、近赤外域に吸収を有し、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、近赤外線吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写等の光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター等の近赤外線吸収材料、色分解フィルター、液晶表示用カラーフィルター、光学用カラーフィルター、プラズマディスプレイ表示用カラーフィルター、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク等に利用することができる有用な溶解性のフタロシアニン化合物を工業的規模においても実験室規模と変わらぬ収率で製造することができ、さらに、HF等のハロゲン化水素酸のトラップが容易に進行することにより、反応速度が向上するとした更なる作用効果を奏することができ、工業生産する上で生産効率が高まるとする利点も有するものである。
【0082】
また、本発明では、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物から、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物の存在下においてフタロシアニン化合物を製造する際に、アルカリ土類金属化合物を共存させ反応することにより、該pKaが7.0以下の化合物が触媒として働き、金属酸化物との間で活性種を発生させることにより、ハロゲン含有フタロニトリル化合物との反応性を高めることができ、従来法に比して実用上十分であるだけでなく、フタロシアニン骨格上に嵩高い置換基を導入することができる点で極めて優れているものである。
【0083】
また、本発明では、反応時に撹拌動力0.03kW/m3 以上で撹拌を行うことにより、上記に記載の発明の効果がより顕著に得られる。
【0084】
さらに、本発明では、アルカリ土類金属化合物として、カルシウム化合物を用いることにより、フッ酸等のハロゲン化水素酸をトラップして極めて安定で腐食性のないCaF2 などのハロゲン化カルシウムが生成されるため、精製過程で濾過などにより分離除去が容易である。
【0085】
さらにまた、本発明では、アルカリ土類金属化合物として好適な炭酸カルシウム等の炭酸塩を用い、加えて反応中に発生する水を有機溶媒と共沸留去しながら反応することにより、フッ酸等のハロゲン化水素酸をトラップしても反応系内に酸成分が残留せず、副生する水による悪影響もなくスムーズに反応を進行させることができるとする利点がある。
【0086】
さらに、本発明では、前記フタロシアニン化反応を有機溶媒中で行うことにより、反応器内のスラリー濃度を最適に保持できるため、生産性に優れ、反応速度を低下させることなく保持できるため余分な時間を要することもなく経済的にも優れており、また攪拌が容易に行え小型攪拌機でも攪拌効率に優れ、均一な反応を行えるものである。
Claims (3)
- ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物からフタロシアニン化合物を製造する際に、
アルカリ土類金属の炭酸塩の共存下、反応を水と共沸するかまたは水以上の沸点を有している有機溶媒中で、該反応で副生する水を該有機溶媒と共沸留去して行うことを特徴とするフタロシアニン化合物の製造方法。 - ハロゲン含有フタロニトリル化合物と金属酸化物から、25℃における水溶液中の酸または共役酸の解離指数pKa(酸または共役酸の解離定数の逆数の対数値)が7.0以下の化合物の存在下においてフタロシアニン化合物を製造する際に、
アルカリ土類金属の炭酸塩を共存させ反応することを特徴とする、フタロシアニン化合物の製造方法。 - 反応時に撹拌動力0.03kW/m3以上で撹拌を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
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