以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、下記式(1):
式中、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13及びZ16は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、NHR1またはOR2を表わし、この際、R1は、炭素原子数6〜20個のアルキル基を表わし、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を少なくとも1個有するフェニル基を表わし;Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14及びZ15は、それぞれ独立して、NHR3、SR4またはOR5を表わし、この際、R3は、炭素原子数6〜20個のアルキル基を表わし、R4は、炭素原子数4〜20個のアルキル基または炭素原子数1〜8個のアルキル基を少なくとも1個有するフェニル基を表わし、R5は、炭素原子数4〜20個のアルキル基または炭素原子数1〜8個のアルキル基若しくはハロゲン原子を少なくとも1個有するフェニル基を表わし;複数のR1〜R5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく;Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
で示されるフタロシアニン化合物に関するものである。
本発明のフタロシアニン化合物は、優れたヘキサン等の炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒(以下、単に「脂肪族炭化水素系溶媒」とも称する)への溶解性を発揮するため、これらの脂肪族炭化水素系溶媒中に容易に溶解できる。具体的には、本発明のフタロシアニン化合物は、炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒における溶解度が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。ここで、本発明のフタロシアニン化合物の脂肪族炭化水素系溶媒における溶解度の上限は特に規定しないが、通常、80質量%程度、好ましくは50質量%程度である。このような範囲であれば、上記したような種々の用途に好適に使用できる。
また、ここで、炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒とは、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の、炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。上記したような用途を考慮すると、好ましくは、ヘキサン、デカンである。
本明細書において、脂肪族炭化水素系溶媒における溶解性は、ヘキサンにおける溶解度を指標として評価する。すなわち、本発明のフタロシアニン化合物は、ヘキサン中での溶解度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは10〜50質量%であることが好ましい。ここで、ヘキサンに対する溶解度は、以下の方法に従って測定した値である。すなわち、室温(25℃)で、ヘキサン(10g)中にフタロシアニン化合物を徐々に溶解させながら、その様子を目視により確認し、最終的に溶解する限界量(W1(g))を用いて、すなわち、飽和溶液中の溶質たるフタロシアニン化合物の濃度(ヘキサン中での溶解度)を下記式に従って求める。
また、本発明のフタロシアニン化合物の吸収波長としては、近赤外領域の中でも700〜1100nmの波長領域に最大吸収波長(λmax)を有することが好ましい。ここで、特に半導体レーザーを考慮する場合には、700〜1100nm、特に一般的な半導体レーザーの波長付近である750〜850nm、より好ましくは770〜820nmの波長領域に最大吸収波長(λmax)を有するフタロシアニン化合物が好ましく使用される。なお、本明細書において、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)は、フタロシアニン化合物のヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)を分光光度計(島津製作所製:UV−1650PC)を用いて測定した値(nm)である。
さらに、本発明のフタロシアニン化合物のモル吸光係数としては、特に制限されないが、上記したような用途、特にインクジェット用インクや偽造防止用インクへの使用を考慮すると、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは30,000〜300,000、さらに好ましくは50,000〜300,000である。なお、本明細書において、フタロシアニン化合物のモル吸光係数は、フタロシアニン化合物のヘキサン溶液中でのモル吸光係数を分光光度計(島津製作所製:UV−1650PC)を用いて測定した値である。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物は、カラートナー、インクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用の染色剤、光記録媒体、レーザー治療用感光性色素、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーティング助剤、感熱転写、感熱孔版等の光熱交換剤、感熱式のリライタブル記録の光熱交換剤、IDカードの偽造防止、プラスチックのレーザー透過溶着法(LTW:Laser Transmission Welding)用の光熱交換剤、熱線遮蔽剤、ならびに近赤外吸収フィルターなどの様々な用途、好ましくはインクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、光記録媒体、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板およびレーザー治療用感光性色素、特にインクジェット用インクおよび偽造防止用インクに好適に使用できる。
本発明のフタロシアニン化合物は、上記式(1)で示される。また、上記式(1)中、フタロシアニン骨格のZ2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14、Z15を一括して「β位」と、また、フタロシアニン骨格のZ1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13、Z16を一括して「α位」と称する。このため、フタロシアニン骨格のZ2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14、Z15の置換基を、フタロシアニン核の8箇所のβ位に置換する置換基または単に「β位の置換基」と、また、フタロシアニン骨格のZ1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13、Z16の置換基を、フタロシアニン核の8箇所のα位に置換する置換基または単に「α位の置換基」とも称する。
上記式(1)において、フタロシアニン核のα位の置換基である、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13及びZ16は、ハロゲン原子、NHR1またはOR2を表わす。この際、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13及びZ16は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、複数のR1〜R5が存在する場合には、これらのR1〜R5は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。フタロシアニン化合物の脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性は、特にα位に配置される置換基によって調節されうる。ここで、フタロシアニン核のα位には少なくともハロゲン原子またはNHR1が導入されていることが好ましく、特にNHR1が導入されていることが好ましい。このような置換基を有するフタロシアニン化合物は、優れた脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性を示す。このようにハロゲン原子またはNHR1基、特にNHR1基を適宜フタロシアニン骨格のα位に配置(導入)することによって、得られるフタロシアニン化合物の脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性が高くなる。このため、Z1〜Z16に占めるハロゲン原子またはNHR1基の数は、所望の脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性レベルによって異なるが、以下の(ア)や(イ)に示されるような配置が好ましい。(ア)フタロシアニン核のα位の置換基は、ハロゲン原子もしくはNHR1を表わす;および(イ)α位の置換基のうち、3〜8個がNHR1を表わしかつ残り(5〜0個)がOR2を表わす。このうち、上記(ア)においては、β位が少なくとも1個のNHR3で置換されている場合には、α位の置換基のうち、4〜8個がハロゲン原子でありかつ残り(4〜0個)がNHR1であることなどが好ましく、8個すべてがハロゲン原子である、および4個がハロゲン原子でありかつ残り(4個)がNHR1であることがより好ましい。また、β位がNHR3をもたない場合には、α位の置換基のうち、0〜7個がハロゲン原子でありかつ残り(8〜1個)がNHR1であることなどが好ましく、8個すべてがNHR1である、および4個がハロゲン原子でありかつ残り(4個)がNHR1であることがより好ましい。または、β位がすべてSR4で置換されている場合には、α位の置換基のうち、3〜6個または0個がハロゲン原子でありかつ残り(5〜2個)または8個がNHR1であるなどが好ましい。または、β位がすべてOR5で置換されている場合には、α位の置換基のうち、0または1個がハロゲン原子でありかつ残り(8または7個)がNHR1であるなどが好ましい。上記(イ)において、α位の置換基のうち、2〜6個がNHR1を表わしかつ残り(6〜2個)がOR2を表わすことがより好ましく、4個がNHR1を表わしかつ残りの4個がOR2を表わすことが特に好ましい。これらのうち、特に、α位の置換基のうち、8個すべてがハロゲン原子である;8個すべてがNHR1を表わす;5個がハロゲン原子でありかつ3個がNHR1を表わす;4個がハロゲン原子でありかつ4個がNHR1を表わす、4個がNHR1を表わしかつ4個がOR2を表わすことが好ましい。このようなフタロシアニン化合物は優れた脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性を示すため、特にカラートナー、インクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用の染色剤、光記録媒体、レーザー治療用感光性色素、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーティング助剤などの用途に好適に使用できる。
また、上記好ましい実施形態において、α位に複数種類の置換基が配置される場合には、各置換基がフタロシアニン骨格の各ベンゼン環に均質になる(各ベンゼン環にほぼ同数の置換基が存在する)ように配置されることが好ましい。例えば、4個がハロゲン原子でありかつ4個がNHR1を表わす場合には、ハロゲン原子及びNHR1は、フタロシアニン骨格の各ベンゼン環のα位に1個ずつ存在する(例えば、ハロゲン原子がZ1、Z5、Z9、及びZ13に配置されかつNHR1がZ4、Z8、Z12及びZ16に配置される)ことが好ましい。
上記式(1)において、フタロシアニン核のβ位の置換基である、Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14及びZ15は、NHR3、SR4またはOR5を表わす。この際、Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14及びZ15は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、フタロシアニン核のβ位には、上記した3種の置換基がどのように配置されていてもよいが、好ましくは(ウ)β位の置換基すべてがSR4を表わす;または(エ)β位の置換基すべてがOR5を表わす;または(オ)β位の置換基のうち、3〜8個がNHR3を表わしかつ残り(5〜0個)がSR4もしくはOR5を表わすことが好ましい。このような置換基を有するフタロシアニン化合物は、優れた脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性を示す。また、特にR4およびR5がアルキル基である場合には、脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性がより高くなるので好ましい。このうち、上記(オ)においては、β位の置換基のうち、3〜6個がNHR3を表わしかつ残り(5〜2個)がSR4もしくはOR5を表わすことがより好ましく、4個がNHR3を表わしかつ残りの4個がOR5を表わすことが特に好ましい。これらのうち、特に、8個すべてがSR4を表わす;8個すべてがOR5を表わす4個がNHR3を表わしかつ残りの4個がOR5を表わすことが好ましい。このようなフタロシアニン化合物は優れた脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性を示すため、特にカラートナー、インクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用の染色剤、光記録媒体、レーザー治療用感光性色素、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーティング助剤などの用途に好適に使用できる。
同様にして、上記好ましい実施形態において、β位に複数種類の置換基が配置される場合には、各置換基がフタロシアニン骨格の各ベンゼン環に均質になる(各ベンゼン環にほぼ同数の置換基が存在する)ように配置されることが好ましい。例えば、4個がNHR3を表わしかつ残りの4個がOR5を表わす場合には、NHR3及びOR5は、フタロシアニン骨格の各ベンゼン環のβ位に1個ずつ存在する(例えば、NHR3原子がZ2、Z6、Z10及びZ14に配置されかつOR5がZ3、Z7、Z11及びZ15に配置される)ことが好ましい。
本発明において、α位の置換基としてのハロゲン原子は、特に制限されるものではなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のいずれも選択し得るものである。好ましくは、α位の置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、臭素原子であり、特に好ましくはフッ素原子である。
α位の置換基としてのNHR1中のR1は、炭素原子数6〜20個のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数6〜20個のアルキル基とは、炭素原子数6〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数8〜15個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ドデシル基が好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
α位の置換基としてのOR2中のR2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を少なくとも1個有するフェニル基を表わす。ここで、炭素原子数1〜8個のアルキル基とは、炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、ブチル基が好ましく、メチル基、ブチル基が特に好ましい。また、R2は、上記したようなアルキル基が少なくとも1個フェニル基に結合した構造を有する。この際、フェニル基に結合するアルキル基の数は、1〜5のいずれの整数であってもよいが、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2である。また、アルキル基のフェニル基への結合位置は、特に制限されないが、例えば、2個のアルキル基がフェニル基に結合する場合には、アルキル基は、フェニル基の2,6位、2,4位、2,5位などに結合することが好ましく、特に2,6位に結合することが好ましい。
β位の置換基としてのNHR3中のR3は、炭素原子数6〜20個のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数6〜20個のアルキル基とは、炭素原子数6〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数8〜15個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基が好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
β位の置換基としてのSR4中のR4およびOR5中のR5は、炭素原子数4〜20個のアルキル基または炭素原子数1〜8個のアルキル基を少なくとも1個有するフェニル基を表わす。この際、R4およびR5は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、β位の置換基としてのSR4中のR4および/またはOR5中のR5が炭素原子数4〜20個のアルキル基を表わす場合の、炭素原子数4〜20個のアルキル基とは、炭素原子数4〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数6〜10個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキシル基、ブチル基、ヘキシル基、n−オクチル基が好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
また、β位の置換基としてのSR4中のR4が炭素原子数1〜8個のアルキル基を少なくとも1個有するフェニル基を表わす場合の、炭素原子数1〜8個のアルキル基とは、炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、n−ブチル基が特に好ましい。また、R4は、上記したようなアルキル基が少なくとも1個フェニル基に結合した構造を有する。この際、フェニル基に結合するアルキル基の数は、1〜5のいずれの整数であってもよいが、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、最も好ましくは1または2である。また、アルキル基のフェニル基への結合位置は、特に制限されないが、例えば、2個のアルキル基がフェニル基に結合する場合には、アルキル基は、フェニル基の2,6位、2,4位、2,5位などに結合することが好ましく、より好ましくは2,6位および2,5位に結合し、特に2,6位に結合することが好ましい。また、1個のアルキル基がフェニル基に結合する場合には、アルキル基は、フェニル基の2位、3位、4位のいずれに結合してもよいが、特に2位に結合することが好ましい。ここで、フェニル基にアルキル基が置換すると、脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性がより高くなるので好ましい。
また、β位の置換基としてのOR5中のR5が炭素原子数1〜8個のアルキル基を有するフェニル基を表わす場合の、炭素原子数1〜8個のアルキル基とは、炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、n−ブチル基が特に好ましい。また、β位の置換基としてのOR5中のR5がハロゲン原子を有するフェニル基を表わす場合の、ハロゲン原子としては、特に制限されるものではなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のいずれも選択し得るものである。好ましくは、フェニル基に導入されるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。本発明では、R5は、上記したようなアルキル基またはハロゲン原子が少なくとも1個フェニル基に結合した構造を有する。この際、フェニル基に結合するアルキル基の数は、1〜5のいずれの整数であってもよいが、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2である。また、アルキル基またはハロゲン原子のフェニル基への結合位置は、特に制限されないが、例えば、2個のアルキル基またはハロゲン原子がフェニル基に結合する場合には、アルキル基は、フェニル基の2,6位、2,4位、2,5位などに結合することが好ましく、より好ましくは2,6位および2,5位に結合し、特に2,6位に結合することが好ましい。
上記式(1)において、Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わすものである。ここで、無金属とは、金属以外の原子、例えば、2個の水素原子であることを意味する。また、金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化珪素等が挙げられる。好ましくは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物であり、具体的には、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、バナジル、チタニル、塩化インジウム、塩化錫(II)であり、より好ましくは銅、バナジルおよび亜鉛である。特に、フタロシアニン化合物をインクジェット用インクに使用する場合には、炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒、特にヘキサンへの溶解性の点から、中心金属Mは、銅、バナジル、亜鉛、パラジウムであることが好ましく、銅、バナジルおよび亜鉛であることがより好ましい。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物の好ましい例としては、下記化合物がある。なお、下記例示では、上記式(1)のフタロシアニン化合物のMが無金属とする。本発明のフタロシアニン化合物はこれに限定されるものではなく、以下に例示するフタロシアニン化合物が無金属以外の適当な金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である場合も含まれることは言うまでもない。また、下記の化合物において、3,6位は、フタロシアニン核のα位(Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13、Z16の置換位置)に置換したものであり、4,5位はフタロシアニン核のβ位(Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14、Z15の置換位置)に置換したものである。下記の化合物の略称において、Pcはフタロシアニン核を表わし、Pcのすぐ後にβ位に置換する8個の置換基を表わし、そのβ位に置換する置換基の後にα位に置換する8個の置換基を表わす。
フタロシアニン化合物(A)
4,5−オクタキス(ヘキシルチオ)−3,6−{トリス(2−エチルへキシルアミノ)−ペンタフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}3F5
フタロシアニン化合物(B)
4,5−オクタキス(ヘキシルチオ)−3,6−{テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)−テトラフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4
フタロシアニン化合物(C)
4,5−{テトラキス(ブトキシ)−テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)}−3,6−オクタフルオロフタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)3O}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F8
フタロシアニン化合物(D)
4,5−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)}−3,6−{テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)−テトラフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4
フタロシアニン化合物(E)
4,5−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)}−3,6−オクタフルオロフタロシアニン
略称;Pc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F8
フタロシアニン化合物(F)
4,5−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−オクタキス(2−エチルへキシルアミノ)フタロシアニン
略称;Pc(2,5−Cl2PhO)8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}8
フタロシアニン化合物(G)
4,5−オクタキス(2−メチル−5−ブチルフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)}フタロシアニン
略称;Pc{2−(CH3)−5−t−BuPhS}8{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4
フタロシアニン化合物(H)
4,5−オクタキス(オクチルチオ)−3,6−{トリス(n−オクチルアミノ)−ペンタフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)7S}8{CH3(CH2)7NH}3F5
フタロシアニン化合物(I)
4,5−オクタキス(ブチルチオ)−3,6−{テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)−テトラフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)3S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4
フタロシアニン化合物(J)
4,5−{テトラキス(ブトキシ)−テトラキス(デシルアミノ)}−3,6−オクタフルオロフタロシアニン
略称;Pc{CH3(CH2)3O}4{CH3(CH2)9NH}4F8
フタロシアニン化合物(K)
4,5−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(へキシルアミノ)}−3,6−{テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)−テトラフルオロ}フタロシアニン
略称;Pc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)5NH}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4
フタロシアニン化合物(L)
4,5−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(デシルアミノ)}−3,6−オクタフルオロフタロシアニン
略称;Pc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)9NH}4F8
フタロシアニン化合物(M)
4,5−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−オクタキス(ドデシルアミノ)フタロシアニン
略称;Pc(2,5−Cl2PhO)8{CH3(CH2)11NH}8
フタロシアニン化合物(N)
4,5−オクタキス(2−メチルフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルへキシルアミノ)}フタロシアニン
略称;Pc{2−(CH3)PhS}8{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4
上記フタロシアニン化合物のうち、フタロシアニン化合物(A)〜(N)が好ましく、フタロシアニン化合物(A)〜(G)が特に好ましい。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、特開2001−106689号公報、特開2005−220060号公報などの従来公知の方法を適当に利用することができるが、好ましくは溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が特に好ましく使用できる。以下、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法の特に好ましい実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、下記好ましい実施形態に制限されるものではない。
すなわち、下記式(2):
で示されるフタロニトリル化合物(A)、下記式(3):
で示されるフタロニトリル化合物(B)、下記式(4):
で示されるフタロニトリル化合物(C)、および下記式(5):
で示されるフタロニトリル化合物(D)を、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物および有機酸金属(本明細書中では、一括して「金属塩」とも称する)からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、フタロシアニン化合物(1)が製造できる。なお、上記式(2)〜(5)中、Z1〜Z16は、所望のフタロシアニン化合物(1)の構造によって規定され、上記式(1)の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
または、上記式(1)中のZ1〜Z16のいずれかがアミノ基(上記式(1)中のNHR1またはNHR3)である場合には、上記フタロニトリル化合物(A)〜(D)を、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種と環化反応させた後、該反応生成物をさらに下記式:Y−NH2(式中、Yは、上記式(1)中のR1またはR3に相当する)で示されるアミノ化合物(以下、単に「アミノ化合物」とも称する)と反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物を製造してもよい。
具体的には、上記フタロニトリル化合物(A)〜(D)を、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、アミノ基(上記式(1)中のNHR1またはNHR3)を持たないフタロシアニン誘導体を合成し、次に、このようにして合成されたフタロシアニン誘導体をさらに上記式のアミノ化合物と反応させることによって、本発明のフタロシアニンを製造することができる。当該方法は、上記式のアミノ化合物のアミノ基との求核置換反応性がハロゲン原子及びSRの順で高く、ORはほとんど求核置換反応性を示さないことを利用したものであり、SRまたはハロゲン原子、特にハロゲン原子が上記式のアミノ化合物と求核置換反応することによりアミノ基(上記式(1)中のNHR1またはNHR3)が形成される。このため、フタロシアニン骨格の所望の位置に効率よくアミノ基(上記式(1)中のNHR1またはNHR3)を導入できる。
上記製造方法において、上記フタロニトリル化合物(2)〜(5)は、所望のフタロシアニン構造に応じて適宜選択され、それぞれ異なる4種類のフタロニトリル化合物を用いてもよいし、1種類のフタロニトリル化合物のみを用いてもよい。
上記態様において、出発原料である式(2)〜(5)のフタロニトリル化合物(A)〜(D)は、特開昭64−45474号公報に開示されている方法などの、従来既知の方法により合成でき、また、市販品を用いることもできるが、好ましくは、下記式(6):
式中、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子および塩素原子、特に好ましくはフッ素原子を表わす、
で示されるフタロニトリル誘導体を、HOR2、HSR4またはHOR5(R2、R4およびR5は、上記式(1)の定義と同様である)からなる群より選択される1種以上と反応させることによって得る。この際、HOR2、HSR4またはHOR5の割合は、目的とするフタロニトリル化合物の構造によって適宜選択される。また、HOR2、HSR4またはHOR5の使用量は、これらの反応が進行して所望のフタロニトリル化合物を製造できる量であれば特に制限されないが、例えば、フタロニトリル誘導体に1個のOR2、SR4またはOR5を導入する場合には、HOR2、HSR4またはHOR5を、それぞれ、フタロニトリル誘導体1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルの量で、フタロニトリル誘導体を反応させる。
また、該フタロニトリル化合物は、前記式(6)で示されるフタロニトリル誘導体を、HOR2、HSR4及びHOR5からなる群より選択される1種以上と反応させることによって得られる。この際、該フタロニトリル誘導体とHOR2、HSR4またはHOR5との反応は、無溶媒下であるいは有機溶媒中で行われてもよいが、好ましくは有機溶媒中で行なわれる。この際使用できる有機溶媒としては、アセトニトリルおよびベンゾニトリル等のニトリル;アセトンおよび2−ブタノン等の極性溶媒などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アセトニトリル、ベンゾニトリルおよびアセトンである。溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、フタロニトリル誘導体の濃度が、通常、2〜40(w/v)%、好ましくは10〜30(w/v)%となるような量である。また、このフタロニトリル誘導体とHOR2、HSR4またはHOR5との反応は、反応中に発生するハロゲン化水素(例えば、フッ化水素)等を除去するために、これらのトラップ剤を使用することが好ましい。トラップ剤を使用する際の具体的なトラップ剤の例としては、フッ化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムなどが挙げられ、これらのうち、フッ化カリウム、炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムが好ましく、フッ化カリウムが最も好ましい。また、トラップ剤を使用する際のトラップ剤の使用量は、反応中に発生するハロゲン化水素等を効率良く除去できる量であれば特に制限されないが、フタロニトリル誘導体1モルに対して、通常1.0〜4.0モル、好ましくは1.1〜2.0モルである。
上記方法において、環化反応は、式(2)〜(5)のフタロニトリル化合物(A)〜(D)と金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種を溶融状態または有機溶媒中で反応させることが好ましい。この際使用できる金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属としては、反応後に得られる式(1)のフタロシアニンのMに相当するものが得られるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、上記式(1)におけるMは、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属、当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、酸化バナジウム、酸化チタニル及酸化銅等の金属酸化物、酢酸塩等の有機酸金属、ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物である。
また、上記方法において、環化反応は無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうことが好ましい。有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、及びベンゾニトリル等の不活性溶媒;ならびにピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン及びベンゾニトリルが、より好ましくは、ベンゾニトリルが使用される。
上記式(2)〜(5)で示すフタロニトリル化合物(A)〜(D)と金属化合物との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではないが、例えば、有機溶媒100部(以下、「質量部」を意味する)に対して、該フタロニトリル化合物を2〜40部、好ましくは20〜35部の範囲の合計量で、かつ金属化合物を該フタロニトリル化合物4モルに対して1〜2モル、好ましくは1.1〜1.5モルの範囲で仕込んで、反応温度30〜250℃、好ましくは80〜200℃の範囲で反応させる。なお、反応後は、従来公知のフタロシアニンの合成方法に従って、ろ過、洗浄、乾燥することにより、次工程に用いることのできるフタロシアニン誘導体を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
該フタロシアニン誘導体と上記式のアミノ化合物との反応は、必要であれば、反応に用いる化合物と反応性のない不活性な液体の存在下で混合し、一定の温度に加熱することにより行うことができ、好ましくは、反応させるアミノ化合物中で、一定の温度に加熱することにより行う。不活性な液体としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリルやN−メチルピロリドンまたはジメチルホルムアミドなどのようなアミドを単独であるいは2種以上の混合液の形態で用いることができる。
上記反応では、式(1)のフタロシアニンのZ1〜Z16の置換位置に所望の置換基を設計通りに導入することができるように、適宜最適な範囲を選択すればよいが、例えば、以下の条件が使用できる。すなわち、上記式のアミノ化合物を、フタロニトリル化合物(A)〜(D)と金属化合物との環化反応により得られるフタロシアニン誘導体1モルに対して、通常、1モル以上、好ましくは8〜36モルの範囲で仕込む。次に、この反応産物に、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機分を、発生してくるハロゲン化水素をトラップする目的で、フタロシアニン誘導体1モルに対して、1〜16モル、好ましくは3〜8モルの範囲でトラップ剤を仕込む。この際、使用できるトラップ剤は、上記環化反応におけるものと同様である。また、アルキルアミノ化合物を反応させる場合の反応温度は、20〜200℃、好ましくは30〜150℃であり、アリールアミノ化合物を反応させる場合の反応温度は、80〜250℃、好ましくは100〜200℃の範囲である。なお、反応後は、従来公知のフタロシアニンの置換反応による合成方法に従って、無機分をろ過し、アミノ化合物を留去(洗浄)することにより、目的とする本発明のフタロシアニン化合物を複雑な製造工程を経ることなく効率よく、しかも高純度で得ることができる。
このように製造された本発明のフタロシアニン化合物は、優れた炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性を発揮するため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の、炭素原子数6〜15の脂肪族炭化水素系溶媒に良好に溶解でき、また、700〜1100nmという特定波長域に最大吸収波長を示す。したがって、本発明のフタロシアニン化合物は、カラートナー、インクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用の染色剤、光記録媒体、レーザー治療用感光性色素、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーティング助剤、感熱転写、感熱孔版等の光熱交換剤、感熱式のリライタブル記録の光熱交換剤、IDカードの偽造防止、プラスチックのレーザー透過溶着法(LTW:Laser Transmission Welding)用の光熱交換剤、熱線遮蔽剤、ならびに近赤外吸収フィルターなどの様々な用途、好ましくはインクジェット用インク、家庭用インクジェット用インク、光記録媒体、偽造防止用インク、特に改ざん偽造防止用バーコード用インクや偽造防止用オフセットインク、ゴーグルのレンズや遮蔽板およびレーザー治療用感光性色素、特にインクジェット用インクおよび偽造防止用オフセットインクに好適に使用できる。
ゆえに、本発明の第二は、本発明のフタロシアニン化合物を含むインクジェット用インクに関する。本発明の第二は、本発明のフタロシアニン化合物を使用することに特徴があり、その他の成分、例えば、他の顔料、分散剤などは公知の同様のものが使用でき、例えば、特開平08−337,745号公報、特開2004−285,262号公報などに記載される成分が使用できる。
以下、実施例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1:フタロシアニン化合物(A):ZnPc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}3F5の合成
滴下ロートと還流冷却器とを備えた200mlの3つ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル12.05g(60.22mmol)と炭酸カリウム17.50g(126.62mmol)およびメチルエチルケトン85gを仕込み、60℃に加熱した。滴下ロートにメチルエチルケトン24gとヘキサンチオール14.50g(122.63mmol)を仕込み、1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、19時間反応させた後に放冷した。反応溶液を濾過して無機塩を除き、一度濃縮してから少量の酢酸エチルを加えて溶解し、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、濃縮した。目的の3,6−ジフルオロ−4,5−ジヘキシルチオフタロニトリル(黄色、液体)23.07gを得た(テトラフルオロフタロニトルに対する収率97.01%)。
このようにして得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ジヘキシルチオフタロニトリル10.01g(25.24mmol)とヨウ化亜鉛2.25g(7.05mmol)、及びベンゾニトリル20gを、還流冷却器を備えた50mlの3つ口反応容器に仕込み、180℃に昇温し、5時間反応させた後、放冷した。反応溶液をナスフラスコに移して、濃縮して有機溶媒を除いた後、メタノールを加え一度沸騰するまで加熱した後、放冷した。その後吸引ろ過により固形分を取り出し、得られた固形分をさらにメタノールでかけ洗いしてから70℃で真空乾燥することで、フタロシアニン化合物[ZnPc{CH3(CH2)5S}8F8](深緑色、固体)7.28gを得た(3,6−ジフルオロ−4,5−ジヘキシルチオフタロニトリルに対する収率69.8%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物[ZnPc{CH3(CH2)5S}8F8]1.00g(0.61mmol)とキシレン4gを滴下ロートと還流冷却器とを備えた25mlの反応容器に仕込み、100℃まで昇温した。続いて滴下ロートに2−エチルヘキシルアミン0.46g(3.56mmol)とキシレン2.5gを仕込みゆっくりと滴下した。滴下終了後、100℃で9.5時間反応させ、放冷してから反応溶液を分液ロートへ移し水で抽出洗浄し、有機層をエバポレーターにて濃縮した後、70℃で真空乾燥して、目的のフタロシアニン化合物(A):ZnPc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}3F5を1.18g(黒色、粘質オイル状)得た([ZnPc{CH3(CH2)5S}8F8]に対する収率98.6%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(A)について、分光光度計(島津製作所製:UV−1650PC)を用いてヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数を測定した。その結果を下記表1に示す。
また、室温(25℃)で、ヘキサン(10g)中に当該フタロシアニン化合物(A)を徐々に溶解させながら、その様子を目視により確認することにより、最終的に溶解する限界量、すなわち、飽和溶液中の溶質たるフタロシアニン化合物の濃度(溶解度)を求めた。その結果を下記表1に示す。なお、下記表1中の溶解度は、以下のようにして評価した。溶解度10質量%以上を◎;5質量%以上で10質量%未満を○;1質量%以上で5質量%未満を△;および1質量%未満を×。
実施例2:フタロシアニン化合物(B):ZnPc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4の合成
実施例1と同様にして得られたフタロシアニン[ZnPc{CH3(CH2)5S}8F8]1.00g(0.61mmol)とキシレン4gを滴下ロートと還流冷却器とを備えた25mlの反応容器に仕込み、120℃まで昇温した。続いて、滴下ロートに2−エチルヘキシルアミン0.626g(4.84mmol)とキシレン2.5gを仕込み、ゆっくりと滴下した以外は実施例1と同様に操作し、目的のフタロシアニン化合物(B):ZnPc{CH3(CH2)5S}8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4を1.23g(黒色、粘質オイル状)得た([ZnPc{CH3(CH2)5S}8F8]に対する収率97.6%)。
得られたフタロシアニン化合物(B)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例3:フタロシアニン化合物(C):ZnPc{CH3(CH2)3O}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F8
滴下ロートと還流冷却器とを備えた200mlの3つ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル10.00g(49.98mmol)と炭酸カリウム14.60g(105.64mmol)およびメチルエチルケトン70gを仕込み、40℃に加熱した。滴下ロートに、メチルエチルケトン10gとn−ブタノール7.61g(102.67mmol)を仕込み、1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、60℃に昇温し、8時間反応させた後に放冷した。反応溶液を濾過して無機塩を除き、一度濃縮してから酢酸エチルを加えて溶解し、分液ロートへ移して水で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウム乾燥後濃縮した。再度少量の酢酸エチルを加えて溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製し、濃縮した。目的の4−ブトキシトリフルオロフタロニトリル(黄色、液体)9.79gを得た(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率77.1%)。
このようにして得られた4−ブトキシトリフルオロフタロニトリル1.002g(3.94mmol)とヨウ化亜鉛0.374g(1.17mmol)、及びベンゾニトリル2.0gを、還流冷却器を備えた10mlの3つ口反応容器に仕込み、180℃に昇温し、3時間反応させた後、放冷した。反応溶液をメタノール/水=1/1の溶液にゆっくりと加えた。反応液を濾過して得た残渣をさらにメタノールと水の混合溶媒でかけ洗いしてから70℃で真空乾燥することで、フタロシアニン化合物[ZnPc{CH3(CH2)3O}]4F12(深緑色、固体)を0.66g得た(4−ブトキシトリフルオロフタロニトリルに対する収率62.8%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物[ZnPc{CH3(CH2)3O}]4F120.3gとキシレン12gとを、滴下ロートと還流冷却器とを備えた25mlの反応容器に仕込み、125℃まで昇温した。続いて滴下ロートに2−エチルヘキシルアミン0.29g(2.25mmol)を仕込み、ゆっくりと滴下した。滴下終了後、125℃で5時間反応させ、放冷してから反応溶液を分液ロートへ移し水で抽出洗浄し、有機層をエバポレーターにて濃縮した後、150℃で真空乾燥して、目的のフタロシアニン化合物(C):ZnPc{CH3(CH2)3O}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F8を0.42g(黒色、粘質オイル状)得た([ZnPc{CH3(CH2)3O}]4F8に対する収率99.4%)。
得られたフタロシアニン化合物(C)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例4:フタロシアニン化合物(D):VOPc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F4の合成
100mlの四ツ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル24g(0.120モル)、フッ化カリウム8.36g(0.144モル)、およびアセトニトリル45gを仕込み、内温を5℃以下にして、2,6−キシレノール14.69g(0.120モル)をアセトニトリル15gに溶解した溶液を滴下する。滴下後、3時間反応させ、反応液をろ過して、残渣をろ別する。
その後、ろ液からアセトニトリルを留去し、200mlの四口フラスコに移した後、塩化バナジウム6.13g(0.040モル)と1,2,4−トリメチルベンゼン60gとベンゾニトリル9.5gを加え、混合ガス(酸素6.8vol%/窒素バランス)を吹込みながら、160℃で13時間反応させた。
さらに、反応液中に炭酸カルシウム24.01g(0.240モル)、2−エチルヘキシルアミン62.01g(0.480モル)を加え、窒素ガスを吹き込みながら120℃5時間反応させた。反応終了後、反応液をろ過して不溶物をろ別する。その後、ろ液をメタノール1900g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過を行った。得られたケーキを再度メタノール1820gで攪拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機中で70℃で18時間、乾燥した後、目的物であるフタロシアニン化合物(D):VOPc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F448.53gを得た(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率75.3%)。
得られたフタロシアニン化合物(D)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例5:フタロシアニン化合物(E):CuPc{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4F8の合成
100mlの四ツ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル24g(0.120モル)、フッ化カリウム8.36g(0.144モル)、およびアセトニトリル45gを仕込み、内温を5℃以下にして、2,6−キシレノール14.69g(0.120モル)をアセトニトリル15gに溶解した溶液を滴下する。滴下後、3時間反応させ、反応液をろ過して残渣をろ別する。
その後、ろ液からアセトニトリルを留去し、200mlの四口フラスコに移した後、塩化銅3.12g(0.032モル)と炭酸カルシウム6.82g(0.068モル)と1−オクタノール16gを仕込み、160℃で10時間反応させた。さらに、反応終了後、反応液にメタノール100g滴下した後ろ過を行った。次に、得られたケーキ25.93gと炭酸カルシウム12.88g(0.129モル)に2−エチルヘキシルアミン16.60g(0.164モル)とトルエン96.67gを入れ、80℃で7時間反応した。反応終了後ろ過を行い、ろ別した後、得られたろ液をメタノール1800gへ滴下し、結晶を析出させ吸引ろ過を行った。得られたケーキを再度メタノール900gで攪拌洗浄した後、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機中で70℃で18時間、乾燥した後、目的物であるフタロシアニン化合物(E)のケーキ 11.45gを得た(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率 22.3%)。
得られたフタロシアニン化合物(E)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例6:フタロシアニン化合物(F):VOPc(2,5−Cl2PhO)8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}8の合成
500mlの四ツ口フラスコに、テトラフルオロフタロニトリル60g(0.30モル)、フッ化カリウム41.8g(0.72モル)およびアセトン160mlを仕込み、さらに滴下ロートに2,5−ジクロロフェノール97.8g(0.60モル)およびアセトン110mlを仕込む。−1℃に保ちながら攪拌下滴下ロートより2,5−ジクロロフェノール/アセトン混合溶液を約2時間かけて滴下した後、約2時間攪拌を続ける。その後、反応温度を室温までゆっくり上げながら、一晩攪拌する。その後、溶液を濃縮した後メタノール500ml中に投入し、さらに水50mlを加えて結晶を析出させる。結晶を吸引ろ過後、60℃で真空乾燥し、4,5−ビス(2,5−ジクロロフタロニトリル)3,6−ジフルオロフタロニトリル約106gを得た(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率約72.7%)。
100mlの四ツ口フラスコに上記で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル30.00g(61.72ミリモル)と、塩化バナジウム(III)3.64g(23.14ミリモル)、1−オクタノール3.01g(23.14ミリモル)およびベンゾニトリル50gを仕込み、190℃で攪拌下6時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール340g中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウエットケーキを得る。次に200mlの四口フラスコに上記で得られたケーキと2−エチルヘキシルアミン191.44g(1.4812モル)とトルエン87.8gを仕込み、120℃で13時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール936g中に滴下し結晶を析出させ、吸引ろ過を行った。得られたケーキを再度メタノール468gで攪拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機で100℃18h乾燥後、目的物であるフタロシアニン化合物(F):VOPc(2,5−Cl2PhO)8{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}8の濃青色ケーキ33gを得た(4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルに対する収率74.1%)。
得られたフタロシアニン化合物(F)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例7:フタロシアニン化合物(G):VOPc{2−(CH3)−5−tBuPhS}8{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4の合成
200mlの四ツ口フラスコ、テトラフルオロフタロニトリル12g(0.06モル)、フッ化カリウム8.37g(0.0144モル)およびアセトニトリル50mlを仕込み、さらに滴下ロートに2−メチル−5−t−ブチルフェノール21.64g(0.12モル)を仕込む。20℃に保ちながら攪拌下滴下ロートより2−メチル−5−t−ブチルフェノールを約0.5時間かけて滴下した後、約2時間攪拌を続ける。その後、反応温度を50℃までゆっくり上げながら2時間攪拌する。その後、2,6−キシレノール8.06g(0.066モル)とフッ化カリウム4.60g(0.0792モル)とアセトニトリル10gを加え、還流下で約8時間反応させる。その後、反応溶液を吸引ろ過しアセトニトリルを留去した後、60℃で真空乾燥し、4,5−ビス(2−メチル−5−tブチルフェノキシ)−3−(2,6−キシレノキシ)−6−フルオロフタロニトリル約35gを得た。
上記で得られた4,5−ビス(2−メチル−5−tブチルフェノキシ)−3−(2,6−キシレノキシ)−6−フルオロフタロニトリルと、塩化バナジウム(III)3.71g(23.59ミリモル)、1−オクタノール3.08g(23.59ミリモル)およびベンゾニトリル50gを仕込み、190℃で攪拌下6時間反応させた。反応終了後、ベンゾニトリル50gを加えた後60℃に降温し、その後2−エチルヘキシルアミン65gを加え、60℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノール1000g中に滴下し結晶を析出させ、吸引ろ過を行った。得られたケーキを再度メタノール500gで攪拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機で100℃18h乾燥後、目的物であるフタロシアニン化合物(G):VOPc{2−(CH3)−5−t−BuPhS}8{2,6−(CH3)2PhO}4{CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2NH}4を約21.5g得た(テトラフルオロフタロニトリルに対する収率62.5%)。
得られたフタロシアニン化合物(G)について、実施例1に記載される方法と同様にして、ヘキサン溶液中での最大吸収波長(λmax)とモル吸光係数、ならびにヘキサンに対する溶解度を測定した。その結果を下記表1に示す。