JP4412572B2 - 外壁ユニット、コンクリート構造物および同構造物の施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンクリートにより構築される構造物の外壁を構成するための外壁ユニット、該外壁ユニットを用いたコンクリート構造物および同コンクリート構造物の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内部コンクリートの外側を外部コンクリート層で補強した構造の砂防ダムは、従来から知られている。図20は、この種の砂防ダムを構築する従来の施工方法を示す図である。
同図に示す従来の砂防ダム300の施工方法は、まずH型鋼を一定の高さまで積み上げて型枠301を設置し、この型枠301内にコンクリートを投入して内部コンクリート層302を形成する。
【0003】
次いで、この内部コンクリート層302の外側に鉄筋303を一定の高さで設置するとともに、その更に外側に型枠304を配設して、この型枠304と内部コンクリート層302との間に、高い強度を有するコンクリートを流し込んで外部コンクリート層305を形成していた。
【0004】
その後、施工済みの内部コンクリートおよび外部コンクリートが固まるのを待って、更にその上段に上記手順で型枠301の設置、内部コンクリート層302の形成、鉄筋303の設置、型枠304の設置、および外部コンクリート層305の形成を繰り返し、砂防ダム300を構築していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の砂防ダム300においては、外部コンクリート層305を施工するために多くの工程が必要で作業が煩雑であるばかりか、外部コンクリート層305が固まるまで、更にその上段を施工することができなかった。
【0006】
この外部コンクリート層305は、通常、型枠304内にコンクリートを投入してから固まるまでに長時間(24時間程度)を要し、しかも、砂防ダムは、所望の高さになるまで多段階に分けて順次積み上げ形成していくので、施工期間が長期化する大きな要因となっていた。
【0007】
一方、あらかじめ所定の形状に成形したコンクリートブロックを積み重ねて外壁を形成するとともに、この外壁の内側にコンクリートを投入して砂防ダムを構築する施工方法も考えられている。
【0008】
しかしながら、コンクリートブロックを積み重ねるときには、同ブロックの崩壊を防止するために、サポート部品を用いて個々のコンクリートブロックを支持する必要があった。このようなサポートの施設作業は思いのほか煩雑であるため、施工性の向上を図る上で、改善の余地があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンクリート構造物の施工性の向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、外壁ユニットに関する請求項1の発明は、矩形状のコンクリートブロックと、このコンクリートブロックの両側部上端から上方にそれぞれ延出して設けられ、当該コンクリートブロックの上面に積み重ねられるコンクリートブロックの少なくとも背面両側部を支持する一対の支持金具と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、コンクリートブロックに備えた支持金具により、その上段に積み重ねられるコンクリートブロックを支持することとしたので、少なくとも上段に積み重ねられるコンクリートブロックを別体のサポート部品で支持する必要がなくなり、施工性の向上を図ることができる。
【0012】
これら各支持金具は、断面L字状に形成されており、上面に積み重ねられるコンクリートブロックの背面が接する支持面と、同コンクリートブロックの側面が接する案内面とを有する構成とすれば、支持金具の支持面によって上段に積み重ねられるコンクリートブロックを支持しながら、しかも案内面に沿ってその上段側のコンクリートブロックを適正な積み重ね位置に案内することができるので、その施工性を一層向上させることができる(請求項2)。
【0013】
また、コンクリートブロックの背面を平坦面に形成すれば、このような外壁ユニットを用いて構築した外壁の内部作業に際して、邪魔になる突起物がなくなり作業性が向上する(請求項3)。たとえば、外壁内部に投入したコンクリートを、ローラ車両等の建設機械を用いて転圧するような場合には、外壁の背面近くまで建設機械を走らせることができるので、均一でむらのない転圧作業を実現することができる。
【0014】
請求項4の発明では、コンクリートブロックには、支持金具の延出部を締結する締結部が設けてあり、下段側のコンクリートブロックから延出する支持金具は、上段側のコンクリートブロックに設けたこの締結部に締結する。これにより、順次積み重ねられるコンクリートブロックが相互に連結されて、強固な施設状態を形成することができる。
【0015】
さらに、支持金具に連結部を形成するとともに、延長方向に隣接する各コンクリートブロックの支持金具に形成した連結部間に装着される連結金具を備えた構成とすれば、延長方向にもコンクリートブロックが相互に連結されて、一層強固な施設状態を形成することができる(請求項5)。なお、本発明においては、コンクリートブロックを横に並べて配設していく方向を、「延長方向」と定義してしている。
【0016】
請求項6の発明は、コンクリートブロックの上面および下面に相互に噛み合う段差部を延長方向に延在して形成することを特徴とする。
この構成によれば、コンクリートブロックを積み重ねる際に、組み積みされるコンクリートブロックの段差部を噛み合わせることで、容易にコンクリートブロック相互間の位置合わせを行うことができる。
【0017】
また、コンクリート構造物に関する請求項7の発明は、内部コンクリートと、この内部コンクリートの外側に設けられた外壁とを含むコンクリート構造物であって、外壁を上記本発明の外壁ユニットで構成することを特徴とする。
この発明によれば、上記外壁ユニットでコンクリート構造物の外壁を構成することで、このような構造物の施工性を向上させることができる。
【0018】
請求項8の発明は、コンクリート構造物において、クラッシャランを骨材として用いたコンクリートにより、上記内部コンクリートを構築することを特徴とする。
クラッシャランは、道路舗装の下層路盤に使用される粒状路盤材であり、JIS(日本工業規格) A 5001において品質規格されている道路用砕石である。このように、クラッシャランは、品質規格に適合するように粒度調節されているため、安価で汎用性があり、一定の品質のものを各地で容易に入手することができる。したがって、クラッシャランを骨材として用いたコンクリートにより構造物の内部を形成することで、標準的な品質管理基準や施工要領等を作成することができるので、その施工性を一層向上させることができる。
【0019】
さらに、コンクリート構造物の施工方法に関する請求項9の発明は、上記外壁ユニットを配設して外壁を構築する外壁施工工程と、外壁の内側にコンクリートを投入する投入工程と、投入したコンクリートを敷き均しするとともに該コンクリートに振動を加えてこのコンクリートを転圧する敷き均し転圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、上記外壁ユニットを配設して外壁を構築するので、外壁の施工作業が容易となり、施工期間の短縮を図ることができる。
また、外壁内にコンクリートを投入する投入工程と、投入したコンクリートを敷き均しするとともに該コンクリートに振動を加えてこのコンクリートを転圧する敷き均し転圧工程とを含むこととしたので、外壁内に投入されるコンクリートの硬化を長時間待つ必要がなくなり、施工期間を一層短縮することができる。
なお、投入工程は、クラッシャランを骨材として用いたコンクリートを外壁の内側に投入する工程とすることができる(請求項10)。
【0021】
請求項11の発明は、外壁施工工程において、延長方向に隣接する各外壁ユニットの高さ位置をずらして配設するとともに、逐次、外壁ユニットを積み重ねていくことを特徴とする。
この発明によれば、組み積みされるコンクリートブロック間の接合部分を延長方向に不連続とすることができるので、土石流等の衝突に伴い外壁が受ける横方向の荷重に対する剪断抵抗が大きくなり、コンクリート構造物の強度を向上させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
〈外壁ユニットに関する実施形態(以下、実施形態1とする)〉
この発明の実施形態1に係る外壁ユニット1は、図1乃至図4に示すように、コンクリートブロック10、一対の支持金具30,30、および連結金具40を有している。
【0023】
これらの図に示すように、コンクリートブロック10は、矩形状に形成してあり、例えば、呼び強度21N/mm2程度の比較的強度の高いコンクリートから構成されている。
このコンクリートブロック10の上面および下面には、段差部11,12が延長方向に延在して設けてあり、これら段差部11,12はコンクリートブロック10を積み重ねたとき相互に噛み合わせ可能に形成されている。
【0024】
コンクリートブロック10の両側面には、凹溝13,14が高さ方向に延在して設けてあり、これら凹溝13,14には、シール材15,16が装着されている。これらシール材15,16は、例えば、エチレン・プロピレンゴム等のゴム材料で形成される。
【0025】
また、コンクリートブロック10の両側面には、凹部17,18が高さ方向に延在して設けてあり、この凹部17,18に支持金具30を配置することで支持金具30の厚みを吸収する構造としてある。
【0026】
このコンクリートブロック10の背面10aは平坦面に形成してあり、その両側部の上端近くには第1締結孔19および第2締結孔20を高さ方向に並べて設けてある。また、第2締結孔20の下方には、適所に第3締結孔21が設けてある。これら締結孔19〜21には埋め込みナットが埋設してあり、ボルト等の締結具を用いて、支持金具30および連結部材40を締結することができる。
【0027】
また、コンクリートブロック10の背面には、後述する敷き均し高さに相当する箇所にフック22が埋設されている。このフック22には、後述するようにアンカー105の基端部を引っ掛けることができる。
【0028】
なお、図5および図6は、厚さの異なる二種類のコンクリートブロックの構成例を示している。
【0029】
支持金具30は、断面L字状に形成してあり、その屈曲した内側部分には支持面31と案内面32とが形成されている。
支持面31は、コンクリートブロック10を積み重ねたときに、上段側のコンクリートブロック10の背面を支持する面である。案内面32は、コンクリートブロック10を積み重ねる際に、上段側のコンクリートブロック10の側面に接して、同コンクリートブロック10を案内する機能を有している。
【0030】
また、支持金具30の基端部には、第1連結孔33および第2連結孔34が高さ方向に並べて設けられるとともに、その先端部には、高さ方向に延びる長孔状の第3連結孔35が設けてある。
【0031】
図2に示すように、一対の支持金具30,30は、それぞれ第2連結孔34がボルト等の締結具を介してコンクリートブロック10の第2締結孔20,20に締結され、これによりコンクリートブロック10の背面両側部に装着される。このとき、支持金具30の第1連結孔33は、コンクリートブロック10の第1締結孔19と対応する位置に配置される。また、図7に示すように、支持金具30,30は、コンクリートブロック10の側面に形成した凹部17,18に側片部分を配置することで、凹部17,18内に厚みが吸収される。
【0032】
また、この装着状態では、支持金具30の中間部から先端にかけての部分が、コンクリートブロック10の上面両側部から上方に延出している。ここで、コンクリートブロック10の上端から支持金具30に形成した第3連結孔35までの長さは、コンクリートブロック10の下端から第3締結孔21までの長さに対応させてある。
【0033】
さらに、一対の支持金具30,30に形成された案内面32の間隔は、コンクリートブロック10の幅とほぼ同じ寸法となる。したがって、これら案内面32,32で上段側のコンクリートブロック10の両側面を案内しながら、該コンクリートブロック10を適正な積み重ね位置に案内することができる。
【0034】
すなわち、コンクリートブロック10を積み重ねるときには、まず図3に示すように、一対の支持金具30,30の案内面32,32の間に、上段側のコンクリートブロック10を差し込む。そして、このコンクリートブロック10の背面両側部を支持金具30の支持面31に摺接させるとともに、同コンクリートブロック10の両側面を支持金具30の案内面32に摺接させ、同コンクリートブロック10を適正位置へ支持しながら案内していく。
【0035】
このように積み重ねられた上段側のコンクリートブロック10は、下面に形成した段差部12が、下段側のコンクリートブロック10の上面に形成した段差部11と噛み合うので、各コンクリートブロック10の相互間の位置合わせを容易に行うことができる。
【0036】
また上述したように、コンクリートブロック10の上端から支持金具30に形成した第3連結孔35までの長さを、コンクリートブロック10の下端から第3締結孔21までの長さに対応させてあるので、下段側のコンクリートブロック10から延出する支持金具30の第3連結孔35は、上段側のコンクリートブロック10に形成した第3締結孔21に対応する位置に配置される。そして、これら第3連結孔35と第3締結孔21とをボルト等の締結具を介して締結することで、上下段のコンクリートブロック10が相互に連結され、強固な施設状態を形成することができる(図3参照)。
【0037】
なお、支持金具30の第3連結孔35は、高さ方向に延びる長孔状に形成したので、例えば、積み重ねられるコンクリートブロック10の高さ位置が僅かにずれる場合にあっても、支持金具30の第3連結孔35とコンクリートブロック10の第3締結孔21との位置合わせを容易に行うことができる。
【0038】
さらに、この状態では、上段側のコンクリートブロック10の背面10aが支持金具30の支持面31によって支持されるので、サポート部品を用いなくとも積み重ねたコンクリートブロック10の倒壊や位置ずれを防止することができる。したがって、サポート部品の施設作業が省略されるので、施工性が向上する。
【0039】
連結金具40は、図4に示すように、平板状に形成してあり、この連結金具40には、第1ボルト差込孔41および第2ボルト差込孔42が延長方向に並べて設けてある。
この連結金具40は、延長方向に隣接するコンクリートブロック10を連結するためのもので、第1ボルト差込孔41を支持金具30の第1連結孔33(および第1締結孔19)に合わせてボルト等の締結具を介して締結するとともに、第2ボルト差込孔42を延長方向に隣接するコンクリートブロック10に装着した支持金具30の第3連結孔35に合わせてボルト等の締結具を介して締結することにより、延長方向に隣接するコンクリートブロック10の相互間も連結することができ、一層強固な施設状態を形成することができる。
【0040】
この連結金具40の第2ボルト差込孔42と支持金具30の第3連結孔35との連結は、上述した支持金具30の第3連結孔35とコンクリートブロック10の第3締結孔21との締結に際して同時に行えば、コンクリートブロック10の連結作業を簡略化することができる。
【0041】
また、このように支持金具30の第1連結孔33と延長方向に隣接するコンクリートブロック10に装着された支持金具30の第3連結孔35とを連結することとすれば、延長方向に隣接するコンクリートブロック10の高さ位置をずらして配設することができる。
【0042】
さらに、支持金具30,30はコンクリートブロック10の側面に形成した凹部17,18に側片部分を配置してあるので、この凹部17,18に支持金具30,30の厚みが吸収される。したがって、コンクリートブロック10を延長方向に並べて配置したときにも、隣接する各コンクリートブロック10の相互間に隙間が生じることがなくなる(図7参照)。
【0043】
なお、コンクリートブロック10を延長方向に連結したとき、隣接するコンクリートブロック10相互間の接合部分(側面)は、シール材15,16によりシールされる。
【0044】
〈コンクリート構造物に関する実施形態(以下、実施形態2とする)〉
図8は本実施形態2のコンクリート構造物、すなわち河川に構築される砂防ダムを示す正面図、図9は同砂防ダムの内部構造を示す側面断面図である。
これらの図に示すように、砂防ダム100は、内部コンクリート101および外壁102等から構成されており、外壁102は、上述した実施形態1の外壁ユニット1を積み重ねて構築されている。
この外壁102は、地面から一定の高さ(図示102aの高さ位置)までは勾配を設けて構築してあり、更にその上部は地面とほぼ垂直に立ち上がるように勾配を変化させている。そして、地面から一定の高さまでの外壁102を構成する外壁ユニット1は、コンクリートブロック10を、例えば1m程度の高さに設定してある。
【0045】
また、コンクリートブロック10の背面に埋設される各フック22(図1参照)は、例えば、コンクリートブロック10の下端からの25cmおよび75cm程度の高さ位置に埋設してある。なお、上流側に設けられる外壁102には、図5に示すような厚みのあるコンクリートブロック10を用いており、これにより土石流の衝突等に対する耐衝撃性を向上させている。一方、土石流等が直接衝突することのない下流側の外壁102は、図6に示すような薄いコンクリートブロック10を用いることができる。
【0046】
内部コンクリート101は、骨材にクラッシャランを用いたコンクリートで構成されている。
この骨材に用いられるクラッシャランは、既述したように、道路舗装の下層路盤に使用される粒状路盤材であり、JIS A 5001において品質規格されている道路用砕石である。すなわち、クラッシャランは、日本工業規格(JIS)に適合するように粒度調節され、一定の品質を有している。
【0047】
したがって、クラッシャランは、現地発生材に比べて均一性が高く、安価で汎用性があるため、施工現場がどこであっても一定の品質のものを近隣から容易に入手でき、標準的な品質管理基準や施工要領等を作成することができるとともに、煩雑でコストのかかる試験調査等を簡略化することができる。なお、この発明において、クラッシャランにはいわゆる再生クラッシャランも含まれる。
【0048】
次に、図10乃至図16に基づいて砂防ダム100の施工方法について説明する。
まず、図10に示すように、基礎103の延長方向に外壁ユニット1を配設して、外壁102の最下段を形成していく。このとき、相互に隣接するコンクリートブロック10の高さ位置をずらせて千鳥状に配置する。例えば、1m程度の高さのコンクリートブロック10と、50cm程度の高さのコンクリートブロック10とを、延長方向に交互に配置していく。なお、図11に示すように、最下段に配置した外壁ユニット1は、支持部材104によって傾斜姿勢を保持しておく。
【0049】
次いで、図12(a)に示すように、施工現場に仮設された混合ヤード200内で、クラッシャラン、セメントおよび水等をバックホウ201によって練り混ぜて、コンクリートを生成し、このコンクリートをダンプトラック202により搬送し、外壁102内に投入する(図12(b)参照)。そして、この投入したコンクリートの敷き均しを行う。
敷き均し工程では、図13(a)に示すように、例えば、敷き均し厚さを25cm程度として、コンクリートブロック10の背面下部に埋設されたフック22の近傍にコンクリート層101aの上面がくるように敷き均しを行う。
【0050】
このように第1層目のコンクリート層101aの敷き均しが終了した後、図14に示すように、棒状のアンカー105をコンクリート層101aの上面に延在するように配置する。そして、棒状のアンカー105の基端部をコンクリートブロック10のフック22に回動自在に取り付ける。図には示されていないが、アンカー105の基端部は、コンクリートブロック10のフック22に回動自在に取り付けるためにフック形状としてあり、その先端部は、外側への引抜き抵抗を増加させるために屈曲させてある。
【0051】
続いて、このコンクリート層101aの上面に、さらに、コンクリートを投入して、第2層目の敷き均し工程を行う。この第2層目についても、敷き均し厚さを25cm程度として、第1層目および第2層目を合わせた層厚さを50cm程度とし、この第2層目の上面が外壁102上面の凹部近傍にくるようにする(図13(b))。
アンカー105は、コンクリート層101aの第1層目と第2層目の間に埋設される。このアンカーを介して、、コンクリートブロック10とコンクリート層101aとが連結されるので、外壁102と内部コンクリート101とが一体化する。
【0052】
第2層目の敷き均しが終了した後、図12(c)に示すように転圧工程を行う。
転圧工程では、例えば、1t級、3t級または6t級の振動ローラ203の自重による圧密と、振動による骨材間摩擦の減少およびモルタルの流動作用により、内部コンクリート層101aを締め固める。
【0053】
ここで、本実施形態に用いた外壁ユニット1のコンクリートブロック10は、背面10aが平坦面に形成してあるので(図1参照)、コンクリートブロック10の背面近くまで振動ローラ203を走らせることができ、均一でむらのない転圧作業を実現することができる。
【0054】
また、転圧工程の際には、コンクリート層101aが締め固められて沈下し、この沈下にともないコンクリート層101a内のアンカー105も沈下するが、本実施形態にあっては、アンカー105の基端部はコンクリートブロック10の背面に埋設したフック22に回動自在に取り付けあるので、このようにアンカー105が沈下してもコンクリートブロック10が内側に引っ張られることが少なく、コンクリートブロック10が内側に倒壊するなどの不具合も防止することができる。
【0055】
この転圧工程が終了した後は、高さの低いコンクリートブロック10の上面に、さらにコンクリートブロックを積み重ね、再び上述した手順でコンクリート層101aを形成し、一定の高さまで砂防ダム100を構築する。
【0056】
本実施形態にあっては、延長方向に隣接するコンクリートブロック10の高さ位置をずらして千鳥状に配設したので、高さ方向に組み積みされるコンクリートブロック10の相互間の接合部分は延長方向に不連続となって、土石流等の衝突に伴い外壁102が受ける横方向の荷重に対する剪断抵抗が大きくなり、砂防ダム100の強度を向上させることができる。
【0057】
さて、本実施の形態では、砂防ダム100の勾配を変化させる部位(図8,9の102a)に、図15に示す二種類の外壁ユニット210,220を用いている。なお、図15に示す外壁ユニット210,220において、図1,図2に示した外壁ユニット1と共通の構成部分には同一の符号を付してある。
これら外壁ユニット210,220は、コンクリートブロック211,221に屈曲部211a,221aが形成してあり、図16に示すように、千鳥状に組み積みされた外壁ユニット1の上段に、これら外壁ユニット210,220を交互に並べて組み積みすることで、各屈曲部211a,221aが延長方向に連続する構成となっている。この屈曲部211a,221aは、砂防ダム100の勾配を変化させる部位102aに位置決めされ、これによって砂防ダム100の上部が地面に対しほぼ垂直に立ち上がる。
【0058】
このように、千鳥状の組み積み形態を保ちつつ、屈曲部211a,211aにより砂防ダム100の勾配を変化させているので、かかる部位においても横方向の荷重に対する大きな剪断抵抗を保持することができる。
【0059】
次に、図17乃至図19を参照して、この発明の実施形態1に係る外壁ユニット1を用いたコンクリート構造物の他の構造物への適用例を説明する。
図17に示すように、例えば、道路擁壁に用いられる重力擁壁230やもたれ式擁壁240の外壁231,241を実施形態1に係る外壁ユニット1を用いたコンクリート構造物で構築することで、これら擁壁230,240の施工性の向上を図ることができる。
【0060】
また、外壁ユニット1を用いて堤防250の外壁251を構築することで、堤防250の施工性の向上が図られるとともに、従来の盛土により形成された堤防よりもその強度を大幅に向上させることができるので、河川の氾濫による堤防の決壊等を防止することができる(図18参照)。
さらに、従来は盛土により構築されていた橋台260の周辺構造を、外壁ユニット1により外壁271を構成したコンクリート構造物270により構築することで、車両の通過等による地盤沈下が防止され、安定した施工状態を保持することができる(図19参照)。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、コンクリート構造物を構成する内部コンクリートは、クラッシャランを骨材に用いたコンクリートに限らず、現地発生材等を骨材に用いた一般的なコンクリートにより構築してもよいことは勿論である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の外壁ユニットは、コンクリートブロックに備えた支持金具により、その上段に積み重ねられるコンクリートブロックを支持することとしたので、サポート部品を用いずにコンクリートブロックの積み重ね作業を迅速に行うことができ、施工性の向上を図ることができる。
【0063】
また、本発明のコンクリート構造物およびコンクリート構造物の施工方法は、上記外壁ユニットにより外壁を構成したので、特に外壁の構築作業が容易となり、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態1に係る外壁ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図2】同じく外壁ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図3】同じく外壁ユニットを積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図4】同じく外壁ユニットを延長方向に連結した状態を示す斜視図である。
【図5】コンクリートブロックの構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
【図6】他のコンクリートブロックの構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
【図7】延長方向に隣接する外壁ユニットの接合部分を示す拡大図である。
【図8】この発明の実施形態2に係る砂防ダムの正面図である。
【図9】同じく砂防ダムの側面図である。
【図10】同じく砂防ダムの外壁施工方法を説明するための背面図である。
【図11】外壁の最下段を構成するコンクリートブロックの支持構造を説明するための側面図である。
【図12】砂防ダムの施工方法を説明するための図であり、(a)は練り混ぜ工程を示し、(b)は投入工程を示し、(c)は敷き均し転圧工程を示す。
【図13】砂防ダムの施工方法を説明するための図10に続く背面図である。
【図14】砂防ダムの施工方法を説明するための図13に続く側面図である。
【図15】砂防ダムの勾配変更部分に用いられる外壁ユニットの構成を示す斜視図である。
【図16】砂防ダムの勾配変更部分の構成を示す正面図である。
【図17】この発明の実施形態2に係るコンクリート構造物の他の適用例を示す図である。
【図18】同じくコンクリート構造物の他の適用例を示す図である。
【図19】同じくコンクリート構造物の他の適用例を示す図である。
【図20】従来の砂防ダムの施工方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1:外壁ユニット
10:コンクリートブロック
10a:背面
11,12:段差部
13,14:凹溝
15,16:シール材
17,18:凹部
19:第1締結孔
20:第2締結孔
21:第3締結孔
22:フック
30:支持金具
31:支持面
32:案内面
33:第1連結孔
34:第2連結孔
35:第3連結孔
40:連結金具
41:第1ボルト差込孔
42:第2ボルト差込孔
100:砂防ダム
101:内部コンクリート
101a:コンクリート層
102:外壁
103:基礎
104:支持部材
105:アンカー
200:混合ヤード
201:バックホウ
202:ダンプトラック
203:振動ローラ
210:外壁ユニット
211:コンクリートブロック
211a:屈曲部
220:外壁ユニット
221:コンクリートブロック
221a:屈曲部
230:重力擁壁
231:外壁
240:もたれ式擁壁
241:外壁
250:堤防
251:外壁
260:橋台
270:コンクリート構造物
271:外壁
Claims (10)
- 矩形状のコンクリートブロックと、
このコンクリートブロックの両側部上端から上方にそれぞれ延出して設けられ、当該コンクリートブロックの上面に積み重ねられるコンクリートブロックの少なくとも背面両側部を支持する一対の支持金具と、を備え、
且つ、前記各支持金具は、断面L字状に形成されており、前記上面に積み重ねられるコンクリートブロックの背面が接する支持面と、同コンクリートブロックの側面が接する案内面とを有することを特徴とする外壁ユニット。 - 請求項1記載の外壁ユニットにおいて、
前記コンクリートブロックは、背面が平坦面に形成してあることを特徴とする外壁ユニット。 - 請求項1または2記載の外壁ユニットにおいて、
前記コンクリートブロックには、前記支持金具の延出部を締結する締結部が設けてあることを特徴とする外壁ユニット。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の外壁ユニットにおいて、
前記支持金具に連結部を形成するとともに、
延長方向に隣接する各コンクリートブロックの支持金具に形成した連結部間に装着される連結金具を備えたことを特徴とする外壁ユニット。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の外壁ユニットにおいて、
前記コンクリートブロックの上面および下面に、相互に噛み合う段差部を延長方向に延在して形成することを特徴とする外壁ユニット。 - 内部コンクリートと、この内部コンクリートの外側に設けられた外壁とを含むコンクリート構造物であって、
前記外壁を請求項1乃至5のいずれか一項に記載の外壁ユニットで構成することを特徴とするコンクリート構造物。 - 請求項6記載のコンクリート構造物において、
前記内部コンクリートは、クラッシャランを骨材として用いたコンクリートにより構築されることを特徴とするコンクリート構造物。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の外壁ユニットを配設して外壁を構築する外壁施工工程と、
前記外壁の内側にコンクリートを投入する投入工程と、
前記投入したコンクリートを敷き均しするとともに該コンクリートに振動を加えてこのコンクリートを転圧する敷き均し転圧工程と、を含むことを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。 - 請求項8記載のコンクリート構造物の施工方法において、
前記投入工程は、クラッシャランを骨材として用いたコンクリートを前記外壁の内側に投入する工程であることを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。 - 請求項8または9記載のコンクリート構造物の施工方法において、
前記外壁施工工程では、延長方向に隣接する各外壁ユニットの高さ位置をずらして配設するとともに、逐次、外壁ユニットを積み重ねていくことを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。
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