次に、本発明による壁面構造の第1の実施の形態について説明する。
図1(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、同図(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。
パネル1A、1Bを構成するパネル本体1aは、方形の板状をした所定の厚さ(3cm〜10cm程度)のコンクリートから成り、前面には凹凸で模様が設けられている。連結部材2aは、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成され、2箇所に穴が設けられている。連結部材2aの一方の穴にはアンカーボルト4aが差し込まれて、パネル本体1aの背面に埋め込まれているインサートナットにアンカーボルト4aが螺合し、ナット5aで締め付けることにより、連結部材2aはパネル本体1aの背面に固定される。他方の穴にはナット5bが溶接され、ボルト4bがナット5bに螺合している。また、パネル本体1aは、同図(a)、(d)に示すように、左方の側面の前面側が左側方に突出し、右方の側面の背面側が右側方に突出している。
同図(a)、(b)、(c)に示すように、パネル1Aの2個の上側の連結部材2aは、一端がパネル本体1aに固定され、他端がパネル本体1aの上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに設けられている。また、パネル1Aのパネル本体1a背面下方に設けられた控えブロック6aはコンクリート製であり、穴が設けられている。この穴にボルト4cが差し込まれてパネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにボルト4cが螺合することにより、控えブロック6aはパネル本体1aの背面に固定されている。控えブロック6aは、形鋼や平鋼等の鋼製であってもよく、最下段のパネル本体1aの背面側に延出して設けられる。控えブロック6aは、パネル本体1aと別体に形成されてパネル本体1aを自立させる。
同図(d)、(e)、(f)に示すように、パネル1Bのパネル本体1aの背面において、2個の上側の連結部材2aは、一端がパネル本体1aに固定され、他端がパネル本体1aの上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに設けられている。また、2個の下側の連結部材2aは、一端がパネル本体1aに固定され、他端がパネル本体1aの下辺背面側から下方に突出して、パネル本体1aに設けられている。上側の連結部材2aと下側の連結部材2aとは、一方向において互いに揃わないように所定間隔ずらしてパネル本体1aの背面に配置されている。
また、パネル1A、1Bの上側の連結部材2aの、アンカーボルト4aによるパネル本体1aとの取付箇所よりも上端の反対側に離れた下端は、パネル本体1aの背面に当接する支点を構成する。また、パネル1Bの下側の連結部材2aの、アンカーボルト4aによるパネル本体1aとの取付箇所よりも下端の反対側に離れた上端は、パネル本体1aの背面に当接する支点を構成する。
パネル1Bのパネル本体1aの前面下方には、2個の転倒防止部材3aが設けられている。これら転倒防止部材3aは、連結部材2aと同様に、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成されている。転倒防止部材3aは、上端、下端、および上端寄りに3個の穴が設けられている。転倒防止部材3aの上端寄りの穴にボルト4dが差し込まれて円筒状の調整材8aに挿通されて、このボルト4dがパネル本体1aの前面に埋め込まれたインサートナットに螺合することにより、転倒防止部材3aは、上端側の一端がパネル本体1aに固定され、下端側の他端がパネル本体1aの下辺前面側から下方に突出して、パネル本体1aに設けられている。
また、転倒防止部材3aの上端および下端の各穴にはナット5cおよび5dが溶接され、これらナット5cおよび5dにボルト4eおよびボルト4fが螺合している。転倒防止部材3aは、ボルト4dによるパネル本体1aとの取付箇所よりも下端の反対側に離れた上端に、パネル本体1aの前面に当接する支点がボルト4eによって設けられている。
図2(a)は、図1に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
最初に、最下段のパネル1Aのパネル本体1aが砕石16上の基礎11上に設置される。この際、パネル本体1aの下端部より高い位置からその背面側に延出して設けられている控えブロック6aの後端には、三角柱状をした枕木12が設置され、パネル1Aの傾斜角度が基礎11の表面に垂直に調節される。また、パネル本体1aの前面下端には、さし筋13がくさび14を介して設置され、最下段のパネル本体1aが前方へせり出すのが防がれる。なお、控えブロック6aは最下段のパネル本体1aではなく、2段目以降に積まれるパネル1Bのパネル本体1aに設けてもよい。
次に、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に、パネル本体1aの半分程度の高さAまでコンクリート15が打設される。これにより、控えブロック6aと共に最下段のパネル1Aのパネル本体1aが基礎11上に固定される。
次に、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Bのパネル本体1aが積まれる。この際、パネル1Aの上側の連結部材2aの他端が上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面に当接して上段のパネル本体1aと係合し、パネル1Bの下側の連結部材2aの他端が下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に当接して下段のパネル本体1aと係合することにより、2段垂直に積み上げられたパネル1A、1Bの各パネル本体1aが上下に隣接するパネル本体1aに係合して、壁面が構成される。
パネル1A、1Bの各アンカーボルト4aによる各連結部材2aの取付部分のパネル本体1aの厚さが、各連結部材2aの係合面2a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと、隣接するパネル本体1aに係合する各連結部材2aの係合面2a1との間には、所定の間隔9があいている。この所定の間隔9において、各連結部材2aは、各ボルト4bを介して隣接するパネル本体1aに係合する。各ボルト4bは、隣接するパネル本体1aに係合する係合面2a1側に出し入れ自在な調整治具を構成する。
一端がパネル1Bのパネル本体1aの前面下方に固定された各転倒防止部材3aは、他端が下側に隣接するパネル本体1aの前面に当接して係合し、パネル1Aに垂直に積み上げられたパネル1Bのパネル本体1aの転倒を防止する。各転倒防止部材3aは、調整材8aにより、隣接するパネル本体1aに係合する係合面3a1が、隣接するパネル本体1aの前面と所定の間隔10があくように設けられている。この所定の間隔10において、各転倒防止部材3aは、各ボルト4fを介して隣接するパネル本体1aに係合される。ボルト4fは、隣接するパネル本体1aに係合する係合面3a1側に出し入れ自在な調整治具を構成する
次に、2段に積み上げられたパネル1A、1Bの各パネル本体1aの背面に、2段目のパネル1Bのパネル本体1aの半分程度の高さBまでコンクリート15が打設される。この際、各パネル本体1aの背面に突出した長いアンカーボルト4aはコンクリート15により埋設され、硬化後、パネル1A、1Bにより構成される壁面が前面側に倒れるのを抑止するアンカーになる。その後、2段目のパネル1Bに3段目のパネル1Bが各連結部材2aおよび転倒防止部材3aを用いて同様に積み上げられ、その背後に同様にコンクリート15が打設されて、壁面が構築されて行く。
図2(b)は、上述した第1の実施の形態の第1の変形例による壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
第1の実施形態では、同図(a)に示すように、転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1aの前面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1aの前面に当接して係合する構成であったが、同図(b)に示す第1の変形例では、転倒防止部材3aが、一端がパネル本体1aの前面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1aの前面に当接して係合する構成になっている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
図3は、図1に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図1および図2と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造は、上述した第1の実施形態の壁面構造を、道路を拡幅するために既設の擁壁21aの前面に構築した一例である。擁壁21aの上部には車道22が設けられており、車道22の側部には側溝23が設けられている。この擁壁21aの前面に上述したパネル1A、1Bを複数段積み上げることにより、新たな壁面構造が完成する。この壁面構造を構築する際、擁壁21aの前方の基礎地盤24の一部が掘り下げられ、掘り下げられた部分に砕石16および基礎11が敷設され、それらの上にパネル1A、1Bが設置されることにより、新たな壁面構造が構築される。パネル本体1aの前面に当接して係合された転倒防止部材3aは、パネル本体1aの背面がコンクリート15により打設されて強固に固定された後、順次取り外される。この壁面構造の上部には歩道25が設けられ、歩道25の側部には転倒防止柵26が新たに設けられている。このように擁壁21aといった既設構造物の前面に新たな壁面構造を構築する場合には、コンクリート15に軽量コンクリート等が使用される場合もある。
このような第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1aを複数段垂直に積み上げる際、一端がパネル本体1aに固定され、他端がパネル本体1aの上辺背面側から上方に突出してパネル本体1aに設けられた上側の連結部材2aの他端を上段のパネル本体1aの背面に当接させて上段のパネル本体1aと係合させ、一端がパネル本体1aに固定され、他端がパネル本体1aの下辺背面側から下方に突出してパネル本体1aに設けられた下側の連結部材2aの他端を下段のパネル本体1aの背面に当接させて下段のパネル本体1aと係合させると共に、パネル本体1aの転倒を転倒防止部材3aにより防止させることにより、上下のパネル本体1aを支え合わせることができる。
このため、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を考慮することなく、パネル本体1aを積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1A、1Bを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。また、パネル本体1aを複数段垂直に積み上げる際、上下のパネル本体1aどうしを連結部材2aによって単に係合させると共に、パネル本体1aの転倒を転倒防止部材3aにより防止させることで、上下のパネル本体1aどうしが支え合い、パネル本体1aが自立する。このため、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体1aの形状を薄く構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
また、上下のパネル本体1aはボルト等で剛結される構成ではないため、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、パネル本体1aの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体1aはその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体1aどうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構造のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面構造が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面構造が提供される。
また、パネル本体の背面に広いスペースを占めてパネル本体を支持する従来のような支持鉄筋等のサポート材を設置する必要もないので、壁面の背面にスペースを確保できない狭い所や、壁面の背面のスペースを狭くして施工する所、例えば橋脚等の前方などでも、パネル本体1aを支障なく積み上げて新たな壁面を構築して、補修や補強を行うことができる。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、図1(e)に示すように、上側の連結部材2aと下側の連結部材2aとは、一方向において互いに揃わないように所定間隔ずらしてパネル本体1aの背面に配置されているので、壁面の敷設延長方向が真っ直ぐな直線施工時などにおいて、下方に積まれるパネル本体1aの真上に上方のパネル本体1aを積み上げるような規則的な積み方を行う場合、上段のパネル本体1aの下側の連結部材2aと下段のパネル本体1aの上側の連結部材2aとが一方向において互いに揃い、重なってぶつかるのを回避することができる。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、パネル1A、1Bの各パネル本体1aの積み上げ作業中に、パネル本体1aの前面側からパネル本体1aを介して上側および下側の各連結部材2aの他端側に何らかの負荷がかかっても、支点を構成する各連結部材2aの一端が、アンカーボルト4aによる取付箇所を挟む連結部材2aの他端の反対側でパネル本体1aの背面に当接することにより、この負荷が、パネル本体1aの背面に当接する支点でも受けられる。このため、パネル1A、1Bの各連結部材2aの他端側にかかる負荷は、パネル1A、1Bの連結部材2aのアンカーボルト4aによる取付箇所と、連結部材2aの一端に設けられた支点とで支えられ、アンカーボルト4aによる取付箇所のみで連結部材2aが固定されている場合に比べて、連結部材2aはぐらつくことなく確実にパネル本体1aに固定される。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1aを積み上げる作業において、一端がパネル本体1aの前面に固定され、他端が、上または下に隣接するパネル本体1aの前面に当接して係合する転倒防止部材3aにより、パネル本体1aが壁面の前面側へ転倒するのが防止される。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1aの背面に充填されたコンクリート15などの裏込部の側圧により、パネル本体1aを介して転倒防止部材3aの下方または上方の他端側に負荷がかかっても、転倒防止部材3aの上方または下方の一端に設けられたボルト4fによる支点が、ボルト4dによる取付箇所を挟む転倒防止部材3aの他端の反対側でパネル本体1aの前面に当接することにより、この負荷が、パネル本体1aの前面に当接するボルト4fによる支点でも受けられる。このため、転倒防止部材3aの他端側にかかる負荷は、転倒防止部材3aのボル4dによる取付箇所と、転倒防止部材3aの一端に設けられたボルト4fによる支点とで支えられ、ボルト4dによる取付箇所のみで転倒防止部材3aが固定されている場合に比べて、転倒防止部材3aはぐらつくことなく確実にパネル本体1aに固定される。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、連結部材2aがパネル本体1aと別体で形成されるため、連結部材2aとパネル本体1aとを別々に安価に製作することができ、連結部材2aとパネル本体1aとをコンクリートなどで一体に製作する場合に比べて壁面の製作コストを大幅に削減できる。
また、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を考慮することなく、パネル本体1aを積み上げると、上下のパネル本体1aに設けられた各連結部材2aどうしがどこかでぶつかる。しかし、連結部材2aがパネル本体1aに着脱自在に取り付けられるので、ぶつかる連結部材2aの一方を取り外したり、別の位置にずらして予めパネル本体1aの背面に設けられたインサートナット等に取り付けることで、連結部材2aどうしのぶつかりを避けることができる。また、図4に示すように、連結部材2aは、パネル本体1aにアンカーボルト4aを中心に回動自在に取り付けられている。図4は、第1の実施の形態による壁面構造において連結部材2aが回動自在に取り付けられている構成を説明するための、2段目以降に積まれるパネル1Bの背面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、同図において、パネル本体1aに取り付けられる転倒防止部材3aの図示、および、連結部材2aの一端に設けられるパネル本体1aの背面に当接する支点の図示は省略している。このため、同図に示すように、ぶつかる連結部材2aの一方の他端を、アンカーボルト4aによるパネル本体1aとの取付箇所を中心にパネル本体1aの背面上で回動させることにより、連結部材2aどうしのぶつかりを避けることができる。
また、上述した図1〜図4に示す壁面構造により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aを積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側または背面側の間で出入りが生じることになる。この出入りについて、図5を用いて説明する。
図5(a)および(c)は、パネル1Bをイモ積み方式で複数段積み上げて曲線施工した第1の実施の形態の壁面構造の平面図および側面図、同図(b)および(d)は、パネル1Bを千鳥積み方式で複数段積み上げて曲線施工した第1の実施の形態の壁面構造の平面図および側面図である。なお、同図において図1および図2と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、図5(a)および(b)において、パネル本体1aに取り付けられる、連結部材2aや転倒防止部材3a等の部材の図示は省略している。
同図(a)および(c)に示す壁面構造では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とが高さ方向に一直線になるように設置して、パネル本体1aを積み上げるイモ積み方式により、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられる。また、同図(b)および(d)に示す壁面構造では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とが高さ方向に一直線にならないように設置して、パネル本体1aを積み上げる千鳥積み方式により、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられる。
図1および図2に示す第1の実施の形態では、各2個の連結部材2aがパネル本体1aの背面の上部および下部から上方および下方に突出して設けられる構成であったが、イモ積み方式および千鳥積み方式の場合も同様に同図(c)および(d)に示すように、各2個の連結部材2aがパネル本体1aの背面の上部および下部から上方および下方に突出して設けられる構成になっている。また、第1の実施の形態では、2個の転倒防止部材3aがパネル本体1aの前面の下部から下方に突出して設けられる構成であったが、イモ積み方式および千鳥積み方式の場合も同様に同図(c)および(d)に示すように、2個の転倒防止部材3aがパネル本体1aの前面の下部から下方に突出して設けられる構成になっている。
一方、上述した第1の実施の形態では、パネル本体1aは、連結部材2aの取付部分の厚さが、連結部材2aの係合面2a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと隣接するパネル本体1aに係合する連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔9があけられる構成であった。しかし、図5では、パネル本体1aの背面に取り付けられる連結部材2aの取付面とパネル本体1aとの間に所定の間隔9をあける調整材8aが介挿されて、連結部材2aがパネル本体1aに着脱自在に取り付けられる構成になっている。この構成により、隣接するパネル本体1aと、隣接するパネル本体1aに係合する連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔9があけられている。
また、上述した第1の実施の形態では、パネル1A、1Bの連結部材2aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端が、パネル本体1aの背面に当接する支点を構成する構成であったが、図5の連結部材2aにはこのような支点は設けられていない。また、上述した第1の実施の形態では、パネル本体1aへの転倒防止部材3aの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に、パネル本体1aの前面に当接する支点がボルト4fにより設けられる構成であったが、図5の転倒防止部材3aにはこのような支点は設けられていない。
イモ積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(a)および(c)に示すように、上段および下段のパネル本体1aの位置関係に出入りは生じない。一方、イモ積み以外の千鳥積み方式等により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(b)および(d)に示すように、下部にあるパネル本体1aと上部にあるパネル本体1aとは上下の位置関係が揃わずに配置され、上下のパネル本体1aの前面および背面が面一にならない。つまり、同図(b)の平面図に示すように、実線で示される上段のパネル本体1aと、その下の段に設けられた点線で示されるパネル本体1aとは、曲線施工のためにずれて配置され、パネル本体1aに出入りが生じる。また、同図(d)の側面図に示すように、パネル本体1aを側面から見た場合にも、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じることになる。
同図(b)および(d)に示すこのような壁面構造によれば、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aを積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じることになる。しかし、この構成によれば、連結部材2aの、隣接するパネル本体1aに係合する係合面2a1が隣接するパネル本体1aと所定の間隔9があくように設けられているため、この予め設けられた隙間により、連結部材2aの係合面2a1と隣接するパネル本体1aとがぶつかり合うことなく、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工によってパネル本体1aを作業効率よく積み上げることが可能になる。また、この予め設けられた隙間により、パネル本体1aの前面に転倒防止部材3aを予め取り付けた状態でパネル本体1aを効率的に積み上げる場合には、パネル本体1aと連結部材2aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。また、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えて、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとが一面となる場合にも、上述したように、パネル本体1aと連結部材2aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。
また、同図(b)および(d)に示す壁面構造によれば、連結部材2aのパネル本体1aに取り付けられる取付面とパネル本体1aとの間に調整材8aが介挿されることで、連結部材2aの隣接するパネル本体1aに係合する係合面2a1と、隣接するパネル本体1aとの間にあく所定の間隔9が、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りの大きさに応じて、調整される。この調整により、連結部材2aの係合面2a1と隣接するパネル本体1aとがぶつかり合うことなく、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工によってパネル本体1aを積み上げることができる。
また、図1および図2に示す第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、連結部材2aの取付部分のパネル本体1aの厚さが、連結部材2aの係合面2a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと連結部材2aの係合面との間に所定の間隔9があけられる。このため、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工する際、上下のパネル本体1aの間に出入りが生じても、隣接するパネル本体1aと連結部材2aの係合面2a1とがぶつかり合うことなく、パネル本体1aを積み上げることができる。また、パネル本体1aの前面に転倒防止部材3aを予め取り付けた状態でパネル本体1aを効率的に積み上げる場合には、パネル本体1aと連結部材2aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。また、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えて、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとが一面となる場合にも、上述したように、パネル本体1aと連結部材2aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、連結部材2aが、隣接するパネル本体1aに係合する係合面2a1側に出し入れ自在なボルト4bを介して、隣接するパネル本体1aに係合するため、上下のパネル本体1aの背面が面一にならない場合でも、隣接するパネル本体1aに係合する係合面2a1側へのボルト4bの出し入れを調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工の作業効率が向上する。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aを積み上げる場合、図5を用いて説明したように、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側または背面側の間で出入りが生じ、転倒防止部材3aの係合面3a1と隣接するパネル本体1aとがぶつかり合うことになる。しかし、この構成によれば、転倒防止部材3aの、隣接するパネル本体1aに係合する係合面3a1が隣接するパネル本体1aと所定の間隔10があくように設けられているため、この予め設けられた隙間により、転倒防止部材3aの係合面3a1と隣接するパネル本体1aとがぶつかり合うことなく、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工時にパネル本体1aが壁面の前面側へ転倒するのが防止される。また、この予め設けられた隙間により、パネル本体1aの前面に転倒防止部材3aを予め取り付けた状態でパネル本体を効率的に積み上げる場合には、パネル本体1aと転倒防止部材3aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。特に、パネル本体1aの前面に図1および図2に示すように凹凸状の模様が付いている場合、模様に転倒防止部材3aが干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。また、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えて、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとが一面となる場合にも、上述したように、パネル本体1aと転倒防止部材3aとが相互に干渉することなく、スムーズにパネル本体1aを積み上げることが可能になる。
また、第1の実施形態および第1の変形例による壁面構造によれば、転倒防止部材3aが、隣接するパネル本体1aに係合する係合面3a1側に出し入れ自在なボルト4fを介して、隣接するパネル本体1aに係合するため、上下のパネル本体1aの前面が面一にならない場合でも、また、上下のパネル本体1aの前面に凹凸状の模様が付いていたりする場合でも、隣接するパネル本体1aに係合する係合面3a1側へのボルト4fの出し入れを調整することにより、転倒防止部材3aの他端を上下のパネル本体1aの前面に容易にぐらつくことなく係合させることができる。
図6(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図1に示す第1の実施の形態では、各2個の連結部材2aがパネル本体1aの背面の上部および下部から上方および下方に突出して設けられる構成であったが、本変形例の場合も同様に、各2個の連結部材2aがパネル本体1aの背面の上部および下部から上方および下方に突出して設けられる構成になっている。
一方、図1に示す第1の実施の形態では、連結部材2aの他端に設けられる穴にはナット5bが溶接され、ボルト4bがナット5bに螺合している構成であったが、本変形例では、連結部材2aの他端にこのような穴およびボルトは設けられていない。
また、図1に示す第1の実施の形態では、2個の転倒防止部材3aがパネル本体1aの前面の下部から下方に突出して設けられる構成であったが、本変形例では、図6に示すように、転倒防止部材3bは、上段のパネル本体1aの背面に水平方向に固定されている。この転倒防止部材3bは、その両端部および中央部に設けられた各穴にボルト4gが差し込まれ、差し込まれたボルト4gが上段のパネル本体1aの背面に設けられたインサートナットに螺合して、上段のパネル本体1aに設けられた2個の下側の連結部材2a、および、下段のパネル本体1aに設けられた2個の上側の連結部材2aを相互に固定する。
このような第2の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1aを積み上げる作業において、転倒防止部材3bにより、隣接する各パネル本体1aの各連結部材2aが、上記のように相互に固定されることで、パネル本体1aが転倒するのが防止されて、パネル本体1aが自立する。
図7(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第3の変形例による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図1に示す第1の実施の形態では、2個の転倒防止部材3aがパネル本体1aの前面の下部から下方に突出して設けられる構成であったが、本変形例では、パネル本体1aの前面にはこのような転倒防止部材3aは設けられていない。
図8は、図7に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図1および図2と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造は、パネル本体1aの背面どうしが対向して構成される一対の壁面の間に、コンクリート15が順次打設されて構築される。高い強度の壁面構造を構築するため、パネル本体1aの背面どうしが対向して構成される一対の壁面の間には、格子状に組まれた鉄筋31が垂直方向に伸びて設けられている。この垂直方向に伸びた鉄筋31の下部では、コンクリートからなる基礎11内に鉄筋31が水平方向に伸びて設けられており、全体として鉄筋31は逆T字状に組まれている。鉄筋31は、パネル本体1aの背面で横鉄筋31cが縦鉄筋31a、31bに固定されている。パネル本体1aは連結部材2aおよび後述する転倒防止部材3cによって自立しているが、さらに、パネル本体1aの背面のアンカーボルト4aは、横鉄筋31cに係合されている。このため、パネル本体1aは、突出したアンカーボルト4aが単にコンクリート15に埋入されて固定される場合よりも、より強固に裏込部に固定される。また、規則的に設置されたパネル本体1aの背面のアンカーボルト4aに横鉄筋31cを係合させることにより、鉄筋31の組立精度が向上する。
また、上述した図7(a)、(b)、(c)では、最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に控えブロック6aが固定される構成であったが、図8では、最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に、L字に曲げられたL字支持部材6bが固定される。L字支持部材6bの垂直折り曲げ片には穴が設けられており、この穴にアンカーボルト4aが差し込まれて、パネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにアンカーボルト4aが螺合している。この状態で、ナット5aが締め付けられることで、L字支持部材6bはパネル本体1aの背面に固定されている。また、ボルト4iが垂直に基礎11に埋設されており、このボルト4iの突出した先端がL字支持部材6bの水平折り曲げ片に設けられた穴に通されて、ナット5fが締め付けられることで、パネル1Aのパネル本体1aおよびL字支持部材6bが基礎11に固定されている。
この壁面構造では、壁面を構築する際、コの字型に折れ曲がっている転倒防止部材3cがパネル本体1aの最上部に架設される。この転倒防止部材3cは、一対の壁面の各パネル本体1aの前面に対峙する両端部に穴が設けられ、各穴に溶接されて設けられたナット5eにボルト4hが螺合している。これらのボルト4hが、背面がコンクリート15によって固定されていない最上段の各パネル本体1aの前面に当接することで、転倒防止部材3cは、パネル本体1aの背面どうしが対向して構成される一対の壁面の最上段の各パネル本体1a自体を、相互に固定する。
図9は、図7に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図8と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造の前面には、上述した図8に示すように構築されたパネル1A、1Bが設けられている。ただし、表面に現れない裏込部側の壁面のパネル1A、1Bの表面には、凹凸状の模様が設けられていない。この壁面構造の上部には、車道22およびガードレール32が設けられている。
このような第3の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1aを積み上げる作業において、転倒防止部材3cにより、パネル本体1aの背面どうしが対向して構成される一対の壁面の最上段の各パネル本体1a自体が、上記のように相互に固定されることで、パネル本体1aが転倒するのが防止されて、パネル本体1aが自立する。
図10(a)、(b)および(c)は、本発明の第2の実施の形態による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、同図(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。
上述した第1の実施の形態では、各連結部材2aの一端がパネル本体1aの背面に設けられる構成であったが、この第2の実施の形態では、各連結部材2bの一端がパネル本体1bの上辺または下辺に設けられる。同図(a)、(b)および(c)に示す最下段のパネル1Cでは、2個の上側の連結部材2bがパネル本体1bの上辺から上方に突出して設けられている。同図(d)、(e)および(f)に示す2段目以降に積まれるパネル1Dでは、2個の上側の連結部材2bがパネル本体1bの背面の上辺から上方に突出して設けられ、2個の下側の連結部材2bがパネル本体1bの背面の下辺から下方に突出して設けられている。
パネル本体1bの上辺の左右2箇所および下辺の左右2箇所には切り欠き部41が設けられており、各切り欠き部41にはパネル本体1bの高さ方向にインサートナットが埋め込まれている。各連結部材2bはL字形に折り曲げられており、L字形の水平折り曲げ片に設けられた穴にボルト4jが差し込まれて、各切り欠き部41に埋め込まれているインサートナットにボルト4jが螺合することにより、各連結部材2bはパネル本体1bの上辺または下辺に固定されている。また、パネル本体1bの背面にパネル本体1bの厚さ方向に埋め込まれている4個のインサートナットに、各アンカーボルト4aが螺合することにより、各アンカーボルト4aはパネル本体1bの背面に突出して固定されている。
図11(a)は、図10に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図10と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
第1の実施の形態では、2個の転倒防止部材3aがパネル本体1aの前面の下部から下方に突出して設けられる構成であったが、本実施形態では、図11(a)に示すように、鋼棒などで構成される引張材42a〜42dが転倒防止部材として設けられている。引張材42a〜42dは、一端がパネル本体1bの背面から突出したアンカーボルト4aに溶接して取り付けられ、他端が、コンクリートの硬化した基礎11の表層部に設けられたU字状の留め具33に溶接して固定されて、パネル本体1bの背面および基礎11の表層部間に設けられている。このように設置されたパネル本体1bは、引張材42a〜42dにより前面側への転倒が防止されている。
第1の実施の形態では、最下段のパネル本体1aを自立させるために、その背面に控えブロック6aを設ける構成であったが、本実施形態では、図11(a)に示すように、設置されたパネル本体1bは、上述した引張材42a〜42dにより自立するので、最下段のパネル本体1bを支える控えブロックは設けられていない。
1段目のパネル1Cのパネル本体1bおよび2段目、3段目のパネル1Dのパネル本体1bが積み上げられた後、これらのパネル本体の背面に、2段目のパネル1Dのパネル本体1bの上端部程度の高さCまで、コンクリート15が打設される。その後、コンクリート15の硬化した表層部に設けられたUの字状の留め具33と、上段に積まれる不図示のパネル本体1bの背面に設けられたアンカーボルト4aとが不図示の引張材でつながれて、上段に積まれる不図示のパネル本体1bの転倒が防止されながら、パネル本体1bが積み上げられる作業が繰り返し行われる。
図11(b)は、第2の実施の形態の第1の変形例による壁面構造の一部側面図である。なお、同図において図11(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図10および図11(a)に示す第2の実施形態では、パネル本体1bに連結部材2bがボルト4jで固定される構成であった。図11(b)に示す本変形例では、L字形の連結部材2bの水平折り曲げ片の下面に短い鉄筋43が溶接されている。コンクリートのパネル本体1bを製作する際に、連結部材2bの水平折り曲げ片に溶接されたこの鉄筋43がパネル本体1bに埋め込まれて、パネル本体1bと連結部材2bとが一体成型される。これ以外の構成は第2の実施形態の構成と同一である。
図12は、図10に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図11と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造は、図11に示す壁面を、各パネル本体1bの背面が対向するように対にして構成し、基礎地盤24に砂防ダムを構築した一例である。
このような第2の実施形態およびその第1の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1bを積み上げる作業において、転倒防止部材を構成する引張材42a〜42dにより、パネル本体1bが前面側に転倒するのが防止される。このため、砂防ダムのように、壁面の裏側に作業スペースが十分にあり、壁面の裏側から大量のコンクリート15等の充填材の大きな側圧が壁面にかかっても壁面が倒れないようにしたい場合、パネル本体1bとコンクリート15の表層部との間に引張材42a〜42dが設けられることにより、壁面が大きな側圧に対抗できる。従って、壁面の背面に一度に充填するコンクリート15の量を増やすことができて、充填材を含む壁面構造全体を構築する作業時間を大幅に短縮することができる。
図13(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第2の変形例による壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図10と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
上述した第2の実施の形態および第1の変形例では、転倒防止部材を構成する引張材42a〜42dが、一端がパネル本体1bの背面に取り付けられ、他端が、パネル本体1bの背面に充填されたコンクリート15の硬化した表層部に固定される構成であった。一方、本変形例では、転倒防止部材3dが、隣接する各パネル本体1b自体を相互に固定する構成になっている。
転倒防止部材3dは鋼棒などで構成され、棒状の転倒防止部材3dのフック状に曲げられた上端が、上段のパネル本体1bの背面に突出したアンカーボルト4aの先端部分に溶接されて固定されている。また、転倒防止部材3dの中央部および下端は、上段および下段の各パネル本体1bの背面に突出した各アンカーボルト4aに溶接されている。このように転倒防止部材3dが各アンカーボルト4aに固定されることで、隣接する各パネル本体1b自体が相互に固定されている。
図14(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第3の変形例による壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図8および図10と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
本変形例でも、転倒防止部材3eが、隣接する各パネル本体1b自体を相互に固定する構成になっている。
この転倒防止部材3eは先端がコの字状になっており、積まれた上段のパネル本体1bの上部において、8個のボルト4hを介してパネル本体1bの前面および背面に当接して係合する。また、転倒防止部材3eの長い直線状部分が、下段のパネル本体1bの前面に4個のボルト4hを介して係合する。各ボルト4hは、転倒防止部材3eに溶接されたナット5eに螺合している。転倒防止部材3eが上記のようにパネル本体1bに係合することで、隣接する各パネル本体1b自体が相互に固定されている。
図13、図14に示すこのような第2、第3の変形例によれば、パネル本体1bを積み上げる作業において、転倒防止部材3d、3eにより、隣接するパネル本体1b自体が相互に固定されることで、パネル本体1bが転倒するのが防止されて、パネル本体1bが自立する。
図15(a)、(b)および(c)は、本発明の第3の実施の形態による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Eの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Fの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図8と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図1および図2に示す第1の実施の形態では、各2個の連結部材2aがパネル本体1aの背面の上部および下部から上方および下方に突出して設けられる構成であったが、本実施形態では、連結部材2cがパネル本体1cの背面の上部から上方に突出して設けられると共に、パネル本体1cの上辺および下辺に段差を付けて設けられた係合部1c1が、上下に隣接するパネル本体1cの下辺および上辺に係合する構成になっている。
連結部材2cは、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成されている。連結部材2cは、上端、下端、および下端寄りに3個の穴が設けられている。連結部材2cの下端寄りの穴にアンカーボルト4aが差し込まれて矩形状の調整材8aに挿通され、このアンカーボルト4aがパネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットに螺合している。連結部材2cは、アンカーボルト4aに螺合しているナット5aが締め付けられることにより、連結部材2cの一端がパネル本体1cに固定され、他端がパネル本体1cの上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1cの上側に設けられている。
また、連結部材2cの上端および下端の各穴にはナット5bおよび5gが溶接され、これらナット5bおよび5gにボルト4bおよびボルト4kが螺合している。連結部材2cは、アンカーボルト4aによるパネル本体1cとの取付箇所よりも上端の反対側に離れた下端に、パネル本体1cの背面に当接する支点がボルト4kによって設けられている。
図1に示す第1の実施の形態および図2(b)に示すその第1の変形例では、転倒防止部材3aは、パネル本体1aの立体的な模様部分の凸部上に設けられていたが、本実施形態では、転倒防止部材3aは、パネル本体1cの模様部分の凹部の目地部分に設けられている。転倒防止部材3aの下端寄りの穴にボルト4dが差し込まれて矩形状の調整材8aに挿通され、このボルト4dがパネル本体1cの前面の目地部分に埋め込まれたインサートナットに螺合することにより、転倒防止部材3aは、下端側の一端がパネル本体1cに固定され、上端側の他端がパネル本体1cの上辺前面側から上方に突出して、パネル本体1cに設けられている。
同図(a)、(b)、(c)に示すように、最下段のパネル1Eのパネル本体1cの背面下部には、上述した図8と同様のL字支持部材6bが固定されている。このL字支持部材6bは最下段のパネル1Eのパネル本体1cを自立させる。また、同図(d)、(e)、(f)に示すパネル1Fのパネル本体1bの背面の下部に埋め込まれている2個のインサートナットに各アンカーボルト4aが螺合することにより、各アンカーボルト4aはパネル1Fのパネル本体1cの背面下部に突出して固定されている。
図16(a)は、図15に示すパネル1E、1Fを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図8および図15と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
上側の連結部材2cの他端が上段のパネル本体1cの背面に当接して上段のパネル本体1cと係合し、パネル本体1cの下辺および上辺に設けられた係合部1c1が下段のパネル本体1cの上辺および上段のパネル本体1cの下辺に係合することにより、複数段垂直に積み上げられた各パネル本体1cが上下に隣接するパネル本体1cに係合して壁面が構成される。
パネル本体1cは、連結部材2cおよび係合部1c1、並びに転倒防止部材3aによって自立するが、壁面を構築する際、さらに、パネル1cの背面に縦鉄筋52aを設け、パネル本体1cの背面のアンカーボルト4aに横鉄筋52bを係合させて、横鉄筋52bを縦鉄筋52aに固定する。このようにしてパネル1E、1Fを積み上げながら、パネル本体1cの背面にコンクリート15を順次打設することで、壁面が構築される。
図16(b)は、第3の実施の形態の第1の変形例による壁面構造の一部側面図である。なお、同図において図16(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
同図(a)に示す第3の実施形態では、連結部材2cおよび転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1cの背面および前面の各上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1cの背面および前面に当接して係合する構成であった。一方、同図(b)に示す第1の変形例では、連結部材2cおよび転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1cの背面および前面の各下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1cの背面および前面に当接して係合する構成になっている。また、同図(b)に示す第1の変形例における係合部1c2の形状は、同図(a)に示す第3の実施形態における係合部1c1の形状と比べて、高さ方向の突出形状が逆の形状になっている。これ以外の構成は第3の実施形態の構成と同一である。
図17は、図15に示すパネル1E、1Fを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の斜視図である。なお、同図において図15および図16(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造は、図16に示す壁面構造を、橋脚53の前面に構築した一例である。パネル本体1cの前面に当接して係合された転倒防止部材3aは、パネル本体1cの背面がコンクリート15により打設されて強固に固定された後、取り外される。
このような第3の実施形態による壁面構造によれば、上側の連結部材2cの他端を上段のパネル本体1cの背面に当接させて上段のパネル本体1cと係合させ、パネル本体1cの下辺および上辺に設けられた係合部1c1を下段のパネル本体1cの上辺および上段のパネル本体1cの下辺に係合させると共に、パネル本体1cの転倒を転倒防止部材3aにより防止させることにより、上下のパネル本体1cを支え合わせることができる。また、第1の変形例による壁面構造によれば、下側の連結部材2cの他端を下段のパネル本体1cの背面に当接させて下段のパネル本体1cと係合させ、パネル本体1cの上辺および下辺に設けられた係合部1c1を上段のパネル本体1cの下辺および下段のパネル本体1cの上辺に係合させると共に、パネル本体1cの転倒を転倒防止部材3aにより防止させることにより、上下のパネル本体1cを支え合わせることができる。
このため、パネル本体1cを積み上げる際、上下のパネル本体1cの位置関係を考慮することなく、パネル本体1cを積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1E、1Fを積み上げる際に上下のパネル1E、1Fの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。また、パネル本体1cを複数段垂直に積み上げる際、上下のパネル本体1cどうしを連結部材2cおよび係合部1c1によって単に係合させると共に、パネル本体1cの転倒を転倒防止部材3aにより防止させることで、上下のパネル本体1cどうしが支え合い、パネル本体1cが自立する。このため、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体1cの積み上げ作業効率は向上する。図17に示すように橋脚53の前面に壁面構造を構築する場合には、狭い壁面の背面側でボルトやネジの締結作業を行わずに済み、壁面の前面側から全ての作業を行えるので、特に、パネル本体1cの積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体1cの形状を薄く構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
また、上下のパネル本体1cはボルト等で剛結される構成ではないため、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、パネル本体1cの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体1cはその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体1cどうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構造のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面構造が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面構造が提供される。
また、パネル本体の背面に広いスペースを占めてパネル本体を支持する従来のような支持鉄筋等のサポート材を設置する必要もないので、壁面の背面にスペースを確保できない狭い所や、壁面の背面のスペースを狭くして施工する所、例えば橋脚等の前方などでも、パネル本体1cを支障なく積み上げて新たな壁面を構築して、補修や補強を行うことができる。
なお、本実施形態および第1の変形例では、パネル本体1cの上辺および下辺に係合部1c1、1c2が設けられる構成であったが、係合部は、パネル本体の上辺または下辺の少なくとも何れか一方に設けられて、上下に隣接するパネル本体の下辺または上辺に係合する構成にしてもよい。
また、本実施形態における、図17に示す橋脚53を囲む壁面構造の形状は、橋脚53の矩形断面形状に合わせて直方体状であったが、断面円形状の橋脚を囲む場合には、壁面構造の形状は円筒状となる。また、本実施形態では、橋脚53の周りに壁面構造を構築する構成であったが、例えば、穴など内側に空洞を有する構造物の空洞に面する外壁に、本実施形態の壁面構造を円筒状に構築する構成であってもよい。この場合、パネル本体の前面は構造物の空洞側を向くことになる。ここで、円筒状構造物の大きさが小さい場合には、平板状のパネル本体1cにより形成される壁面の形状は、円筒状ではなく、多角形状となってしまう。このため、円筒状構造物の曲がり方に合わせてパネル本体1cを曲面状に成型して、構成するようにしてもよい。
図18(a)、(b)および(c)は、第3の実施の形態の第2の変形例による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Gの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Hの平面図、背面図および側面図である。
図15に示す第3の実施形態では、パネル本体1cの上辺に段差を付けて設けられた係合部1c1の前面側部分が背面側部分より上方に突出し、パネル本体1cの下辺に段差を付けて設けられた係合部1c1の背面側部分が前面側部分より下方に突出している構成であった。一方、図18に示す第2の変形例では、図16(b)に示す第1の変形例における係合部1c2と同様に、パネル本体1dの上辺に段差を付けて設けられた係合部1d1の背面側部分が前面側部分より上方に突出し、パネル本体1dの下辺に段差を付けて設けられた係合部1d1の前面側部分が背面側部分より下方に突出している構成になっている。
また、第3の実施形態では、連結部材2cおよび転倒防止部材3aがパネル本体1cの背面および前面の各上方に固定され、上側に積まれたパネル本体1cが背面側に倒れるのを上述した形状の係合部1c1および下側のパネル本体1cの連結部材2cによって防ぎ、上側に積まれたパネル本体1cが前面側に倒れるのを下側のパネル本体1cの転倒防止部材3aおよび下側のパネル本体1cの連結部材2cによって防止する構成であった。一方、第2の変形例では、連結部材2cがパネル本体1dの背面下方、転倒防止部材3aがパネル本体1dの前面上方に固定され、上側に積まれたパネル本体1dが背面側に倒れるのを上述した形状の係合部1d1および上側のパネル本体1dの連結部材2cによって防ぎ、上側に積まれたパネル本体1dが前面側に倒れるのを係合部1d1および下側のパネル本体1dの転倒防止部材3aによって防止する構成になっている。
図19(a)は、図18に示すパネル1G、1Hを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図16および図18と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
下側の連結部材2cの他端が下段のパネル本体1dの背面に当接して下段のパネル本体1dと係合し、パネル本体1dの下辺および上辺に設けられた係合部1d1が下段のパネル本体1dの上辺および上段のパネル本体1dの下辺に係合することにより、複数段垂直に積み上げられた各パネル本体1dが上下に隣接するパネル本体1dに係合して壁面が構成される。このようにパネル本体1dを積み上げることでも、例えば、図17に示すような橋脚53を補強する壁面構造が完成する。
図19(b)は、第3の実施の形態の第3の変形例による壁面構造の一部側面図である。なお、同図において図19(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
第3の実施形態の第2の変形例では、図18に示すように、連結部材2cの一端がパネル本体1dの背面下方に固定され、転倒防止部材3aの一端がパネル本体1dの前面上方に固定される構成であったが、同図(b)に示す第3の変形例では、連結部材2cは、一端がパネル本体1dの背面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1dの背面に当接して係合し、転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1dの前面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1dの前面に当接して係合する構成になっている。また、同図(b)に示す第3の変形例における係合部1d2の形状は、同図(a)に示す第2の変形例における係合部1d1の形状と比べて、高さ方向の突出形状が逆の形状になっている。これ以外の構成は第3の実施形態の第2の変形例の構成と同一である。
図20(a)、(b)および(c)は、本発明の第4の実施の形態による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Iの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Jの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図15と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施形態では、図15に示す第3の実施の形態と同様に、上側の連結部材2dの一端がパネル本体1eの背面上方に固定され、他端が、パネル本体1eの上辺背面側から上方に突出して、連結部材2dがパネル本体1eに設けられている。ただし、連結部材2dの取付面とパネル本体1eの背面との間には隙間が設けられていない。また、転倒防止部材3fは、一端がパネル本体1eの前面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1eの前面に当接して係合する。また、パネル本体1eの上辺および下辺に段差を付けて設けられた係合部1e1が、上下に隣接するパネル本体1eの下辺および上辺に係合する構成になっている。上述した第3の実施形態、その第1、第2、および第3の各変形例、並びにこの第4の実施形態は、上下のパネル本体1c、1d、および1eが係合部1c1、1c2、1d1、1d2、および1e1によって隙間無く係合するため、上下のパネル本体1c、1d、および1eの位置関係を揃えずに行う曲線施工には不向きとなっている。
図15に示す第3の実施形態および図19(b)に示す第3の変形例では、パネル本体1c、1dの上辺に段差を付けて設けられた係合部1c1、1d2の前面側部分が背面側部分より突出し、図16(b)に示す第1の変形例および図18に示す第2の変形例では、パネル本体1c、1dの上辺に段差を付けて設けられた係合部1c2、1d1の背面側部分が前面側部分より突出している構成であったが、同図に示す第4の実施の形態では、パネル本体1eの上辺に段差を付けて設けられた係合部1e1は、その中央部分が背面側部分および前面側部分より上方に突出している凸形状となっている。また、パネル本体1eの下辺に段差を付けて設けられた係合部1e1は、その背面側部分および前面側部分が中央部分より下方に突出している凹形状となっている。従って、この係合部1e1を介して隣接するパネル本体1eどうしが係合すると、パネル本体1eが上下のパネル本体1eに対して、前面側や背面側にずれることもなくなる。また、パネル本体1eの背面に打設されたコンクリート等が前面側へ漏れるのが効果的に防止される。
図21(a)は、図20に示すパネル1I、1Jを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図16および図20と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
下段のパネル本体1eの上側の連結部材2dの他端が上段のパネル本体1eの背面に当接して下段のパネル本体1eと係合し、パネル本体1eの下辺および上辺に設けられた係合部1e1が下段のパネル本体1eの上辺および上段のパネル本体1eの下辺に係合することにより、複数段垂直に積み上げられた各パネル本体1eが上下に隣接するパネル本体1eに係合して壁面が構成される。このようにパネル本体1eを積み上げることでも、例えば、図17に示すような橋脚53を補強する壁面構造が完成する。
図21(b)は、第4の実施の形態の第1の変形例による壁面構造の一部側面図である。なお、同図において図21(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
同図(a)に示す第4の実施形態では、連結部材2dおよび転倒防止部材3fは、一端がパネル本体1eの背面および前面の各上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1eの背面および前面に当接して係合する構成であった。一方、同図(b)に示す第1の変形例では、連結部材2dおよび転倒防止部材3fは、一端がパネル本体1eの背面および前面の各下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1eの背面および前面に当接して係合する構成になっている。これ以外の構成は第4の実施形態の構成と同一である。
図22(a)、(b)および(c)は、第4の実施の形態の第2の変形例による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Iの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Jの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図20と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図20に示す第4の実施形態では、連結部材2dは、一端がパネル本体1eの背面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1eの背面に当接して係合する構成であった。一方、図22に示す第2の変形例では、連結部材2dは、一端がパネル本体1eの背面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1eの背面に当接して係合する構成になっている。
図23(a)は、図22に示すパネル1I、1Jを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図16および図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
下側の連結部材2dの他端が下段のパネル本体1eの背面に当接して下段のパネル本体1eと係合し、パネル本体1eの下辺および上辺に設けられた係合部1e1が下段のパネル本体1eの上辺および上段のパネル本体1eの下辺に係合することにより、複数段垂直に積み上げられた各パネル本体1eが上下に隣接するパネル本体1eに係合して壁面が構成される。このようにパネル本体1eを積み上げることでも、例えば、図17に示すような橋脚53を補強する壁面構造が完成する。
図23(b)は、第4の実施の形態の第3の変形例による壁面構造の一部側面図である。
同図(a)に示す第4の実施形態の第2の変形例では、連結部材2dは、一端がパネル本体1eの背面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1eの背面に当接して係合し、転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1eの前面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1eの前面に当接して係合する構成であった。一方、同図(b)に示す第3の変形例では、連結部材2dは、一端がパネル本体1eの背面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1eの背面に当接して係合し、転倒防止部材3aは、一端がパネル本体1eの前面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1eの前面に当接して係合する構成になっている。これ以外の構成は第4の実施形態の第2の変形例の構成と同一である。
図24(a)、(b)および(c)は、本発明の第5の実施の形態による壁面構造の最下段に設けられるパネル1Kの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Lの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施形態では、上側の連結部材2eは、一端が、矩形状の調整材8aを介してパネル本体1fに固定され、他端が、パネル本体1fの上方に突出してパネル本体1fに設けられている。また、パネル本体1fの上辺および下辺に段差を付けて設けられた係合部1f1が、上下に隣接するパネル本体1fの下辺および上辺に係合する構成になっている。また、パネル1Lのパネル本体1fの下端部の係合部1f1には、左右2箇所にインサートナットが設けられており、このインサートナットには、隣接するパネル本体1fの係合面1f11に当接して係合させるためのボルト4lが螺合している。
本実施形態の連結部材2eは、これまでの実施の形態と異なって板状の形状をしており、連結部材2eの上部寄りに設けられた穴にネジ溝が切られて、このネジ溝にボルト4bが螺合している。
転倒防止部材3gは、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成されている。転倒防止部材3gの両端部および中央部に設けられた穴にアンカーボルト4aおよびボルト4gが差し込まれ、差し込まれたこれらボルト4aおよび4gがパネル本体1fの背面に埋め込まれた各インサートナットに螺合して、同図(e)に示すように転倒防止部材3gがパネル本体1fの背面に水平方向に設けられる。両端部のアンカーボルト4aにはナット5aが螺合している。
図25(a)は、図24に示すパネル1K、1Lを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図24と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
パネル本体1fの上辺および下辺の各係合部1f1は、隣接するパネル本体1fに係合する係合面1f11が、隣接するパネル本体1fと所定の間隔17があくように設けられている。下辺の係合部1f1は、隣接するパネル本体1fに係合する係合面1f11側に出し入れ自在なボルト4lを介して、隣接するパネル本体1fに係合する。
また、設置された最下段のパネル1Kのパネル本体1fの上に2段目のパネル1Lのパネル本体1fを積み上げる際、最下段のパネル1Kの設置後、2段目のパネル1Lのパネル本体1fの背面において、転倒防止部材3gの両端部の穴にアンカーボルト4aを差し込み、このアンカーボルト4aにナット5aを螺合させて締め付けると共に、転倒防止部材3gの中央部の穴にボルト4gを差し込んで締め付ける。これにより、転倒防止部材3gが、最下段のパネル1Lのパネル本体1fの連結部材2eと2段目のパネル1Lのパネル本体1fとを相互に固定する。2段目のパネル1Lよりも上に積まれるパネル1Lも、同様にして、隣接するパネル1Lのパネル本体1fの一方の連結部材2eと他方のパネル1Lのパネル本体1fとが、転倒防止部材3gによって相互に固定される。
図25(b)は、第5の実施の形態の第1の変形例による壁面構造の一部側面図である。
同図(a)に示す第5の実施形態では、連結部材2eは、一端がパネル本体1fの背面上方に固定され、他端が、上側に隣接するパネル本体1fの背面に当接して係合する構成であった。一方、同図(b)に示す第1の変形例では、連結部材2eは、一端がパネル本体1fの背面下方に固定され、他端が、下側に隣接するパネル本体1fの背面に当接して係合する構成になっている。また、同図(b)に示す第1の変形例における係合部1f2の形状は、同図(a)に示す第5の実施形態における係合部1f1の形状と比べて、高さ方向の突出形状が逆の形状になっている。また、同図(a)に示す第5の実施形態では、パネル本体1fの下辺の係合部1f1に、隣接するパネル本体1fの係合面1f11に当接して係合させるためのボルト4lが螺合している構成であった。一方、同図(b)に示す第1の変形例では、パネル本体1fの上辺の係合部1f2に、隣接するパネル本体1fの係合面1f21に当接して係合させるためのボルト4lが螺合している構成になっている。これ以外の構成は第5の実施形態の構成と同一である。
図26は、図24に示すパネル1K、1Lを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図3および図25と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この壁面構造は、図25に示す壁面構造を、道路を拡幅するために既設の擁壁21aの前面に構築した一例である。
このような第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構造によれば、上下のパネル本体1fの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1fを積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体1fと上方に積まれるパネル本体1fとは一面とならず、上下のパネル本体1fの前面側または背面側の間で出入りが生じることになる。しかし、この構成によれば、係合部1f1、1f2の、隣接するパネル本体1fに係合する係合面1f11、1f21が隣接するパネル本体1fと所定の間隔17があくように設けられているため、この予め設けられた隙間により、係合部1f1、1f2の係合面1f11、1f21と隣接するパネル本体1fとがぶつかり合うことなく、上下のパネル本体1fの位置関係を揃えずに行う曲線施工によってパネル本体1fを作業効率よく積み上げることが可能になる。
また、第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構造によれば、上下のパネル本体1fの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1fを積み上げる場合、上下のパネル本体1fの背面が面一にならない場合でも、隣接するパネル本体1fに係合する係合面1f11、1f21側へのボルト4lの出し入れを調整することにより、上下のパネル本体1fを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、上下のパネル本体1fの位置関係を揃えずに行う曲線施工の作業効率が向上する。
また、第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構造によれば、パネル本体1fを積み上げる作業において、転倒防止部材3gにより、隣接するパネル本体1fの一方の連結部材2eと他方のパネル本体1fとが相互に固定されることで、パネル本体1fが転倒するのが防止されて、パネル本体1fが自立する。
図27は、第5の実施の形態の第2の変形例による壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Lの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図24と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構造では、水平方向に設けられた転倒防止部材3gにより、隣接するパネル本体1fの一方の連結部材2eと他方のパネル本体1fとが相互に固定される構成であった。一方、本変形例では、転倒防止部材3hが隣接するパネル本体1fの一方の連結部材2eと他方のパネル本体1fとを相互に固定する。
転倒防止部材3hは鋼棒などで構成され、棒状の転倒防止部材3hの一方の端部がフック状に曲げられている。この転倒防止部材3hのフック状の端部が、上段のパネル1fの背面側に突出したアンカーボルト4aに溶接されて、アンカーボルト4aを介して上段のパネル1fの背面に固定されている。転倒防止部材3hの他方の端部は、下段のパネル本体1fの上側の連結部材2eの背面に溶接されて固定されている。このように転倒防止部材3hにより、隣接するパネル本体1fの一方のパネル本体1fと他方の連結部材2eとが相互に固定されることで、パネル本体1fが転倒するのが防止されて、パネル本体1fが自立する。
なお、上下のパネル本体1c、1d、1e、1fを係合する各係合部1c1、1c2、1d1、1d2、1e1、1f1、および1f2は上述した各形状に限定されることはない。上下のパネル本体1c、1d、1e、1fを係合することができれば、どのような形状であってもよい。
また、上述した第5の実施形態における図24に示す転倒防止部材3g、および第5の実施形態の第2の変形例における図27に示す転倒防止部材3hは、これら各図に示す壁面構造に限らず、他の各実施形態およびそれらの各変形例による壁面構造にも同様に適用することが出来る。また、同様に、前述した第1の実施形態の第3の変形例における図8に示す転倒防止部材3c、第2の実施形態における図11に示す引張材42a〜42dで構成される転倒防止部材、第2の実施形態の第2の変形例における図13に示す転倒防止部材3d、および第2の実施形態の第3の変形例における図14に示す転倒防止部材3eも、これら各図に示す壁面構造に限らず、他の各実施形態およびそれらの各変形例による壁面構造にも同様に適用することが出来る。
また、上述した各実施形態および各変形例では、壁面の背面にコンクリート15で裏込部を形成した場合について説明したが、裏込部は、コンクリート以外によって構成してもよく、例えば、軽量コンクリートや、グラウト材、盛土などで構成してもよい。また、上述した各実施形態および各変形例では、連結部材2a〜2e、転倒防止部材3a〜3h、および引張材42a〜42dを鉄鋼製の材質で構成した場合について説明したが、鉄鋼製以外の材質で構成してもよい。また、パネル本体1a〜1fの材質もコンクリートに限定されることはなく、例えば、樹脂等によって構成してもよい。
また、上述した各実施形態および各変形例では、パネル本体1a〜1fの上側や下側に2個の連結部材2a〜2eや転倒防止部材3a、3fを設ける構成であったが、パネル本体1a〜1fの上側や下側に設けられる連結部材2a〜2eや転倒防止部材3a、3fの個数は、2個に限らず、1個や3個以上であってもよい。例えば、パネル1C、1Dの上側に2個の連結部材2b、パネル1Dの下側に最低1個の連結部材2bを設ける構成や、パネル1C、1Dの上側に最低1個の連結部材2b、パネル1Dの下側に2個の連結部材2bを設ける構成などにしてもよい。