JP4060135B2 - 土木構造物 - Google Patents
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Description
この発明は、鋼矢板から成る外壁材、及びコンクリートブロックパネルから成る外壁材の2種をそれぞれ土木構造物の長手方向の両側面位置に沿って並立させ、これら相体峙する一対の外壁材の内側にコンクリート等の硬化材を充填して構築された土木構造物の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術としては、(1)鋼矢板を外壁材として用い、その内側にコンクリートを打設してなる砂防堰堤が、特公平4−33921号公報、特開平7−3750号公報に開示されている。
【0003】
(2)鋼板を外壁材として用い、その内側にコンクリートを打設してなる砂防堰堤は、特公昭61−3929号公報、実開昭60−40530号公報などに開示されている。
【0004】
(3)鋼矢板を千鳥状配置に組み立てた外壁材を用い、その内側にコンクリートを打設してなる砂防堰堤は、特公平4−2727号公報、特公平4−44644号公報などに開示されている。
【0005】
(4)その他、コンクリートブロックパネルで双方の外壁材を組み立て、相対峙する一対の外壁材の内側にコンクリート等の硬化材を充填して構築された土木構造物及びその構築工法も、本出願人らが先に特許出願している(特願2001−45858)。
【0006】
上記(1)〜(4)の土木構造物はいずれも、基礎地盤上に直接、鋼矢板等による外壁材の組み立てを一気に全部完成し、又は基礎地盤上に基礎フレーム等の骨組みを構築し、その骨組みに鋼矢板等を接合して外壁材を一気に全部完成し、前記外壁材の内側へコンクリートを打設して土木構造物を完成する構築工法が採用されている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術(1)〜(3)のように、基礎地盤上に直接鋼矢板等による外壁材を構築すると、一段目の鋼矢板の配置や、鋼矢板の法面勾配等を設計した通りに構築することが甚だ困難である。即ち、外壁材を所定の法面勾配で正確に定形化する(コンクリート型枠としての形を作り保持する。)現場作業が困難で手数がかかる。
【0008】
また、外壁材の構築を頂上まで全部完成して、コンクリートの打設を構造物の最高高さまで一気に行うときは、作業用足場の用意が不可欠である上に、並立し相対峙する一対の外壁材同士をコンクリートの打設圧に耐える強度及び剛性を具備するようにタイロッド等の連結部材で強固に結合、固定するなどの補強工作が不可欠である。更に外壁材自体の変形(いわゆる孕み変形)を防ぐ強固な壁構造とする必要がある。
【0009】
そのため、基礎地盤上に予め基礎フレーム等の骨組みを構築し、その骨組みに鋼矢板等を接合して外壁材を完成させることも行われる。しかし、この場合には部材点数及び工数が多くなってコストが嵩む。しかも前記部材点数及び工数の増加に伴い組立作業が煩雑となる。
【0010】
ところで、砂防堰堤などの土木構造物は、土石流の発生が懸念される急峻な山間部に設置され、土石流に含まれた大小の石塊や流木などは上流側の壁面に衝突する。したがって、土木構造物の上流側の壁面は、土石流の衝突、衝撃に充分耐えるように、例えば鋼矢板で外壁材を構築することが望まれる。よって、外壁材を鋼矢板で構築した土木構造物は理にかなっている。
【0011】
一方、上記(4)のように上流側及び下流側双方の外壁材をコンクリートブロックパネルで組み立てた土木構造物は、前記の要望に充分応えているとは言い難い。しかし、土木構造物の下流側の壁面には、石塊や流木などが衝突する懸念は皆無である。その上、この種の土木構造物が設置される位置は標高が高い場所が普通で、一般的には下から見上げる場合が多い。そこで環境に優しい景観を作るという意味からは、下流側の壁面を例えばコンクリートブロックパネルで組み立てた外壁材を採用することが望まれる。逆に、下流側の壁面に鋼矢板で組み立てた外壁材を使用することは景観上の適切を欠くと言わねばならない。
【0012】
従って、本発明の目的は、少ない部材点数、少ない工数で外壁材の組み立てと定型化(特に第一段目)を容易に正確に行うことができ、コストの削減と作業能率の向上を可能にした土木構造物を提供することである。
【0013】
本発明の次の目的は、土石流が流れ落ちて来る上流側の外壁材はモジュール長さの鋼矢板で構築し、景観性が重視される下流側の外壁材はコンクリートブロックパネルで構築した土木構造物を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る土木構造物は、
土木構造物の長手方向の両側面位置に沿って並立し相対峙する一対の外壁材の内側にコンクリート等の硬化材を充填して構築された土木構造物であって、
一方の外壁材1はモジュール長さの鋼矢板13で組み立てられ、他方の外壁材2はコンクリートブロックパネル21で組み立てられており、それぞれの内側面の一定高さ位置毎にほぼ水平姿勢のアンカー材4が段階的に複数本取り付けられていること、
鋼矢板13から成る外壁材1は、基礎コンクリート5の上に鋼矢板13の下端を挿入できる上向きに開口した溝形断面材である基礎梁8が配置され、基礎コンクリート5に固定したアンカー金具7によって前記基礎梁8が位置決めされ、前記アンカー金具7及びこれと結合した斜めのサポート材10により短い支柱11がその下端を前記基礎梁8の溝内へ挿入して法面勾配に立てられ、前記支柱11の背面側に水平方向の腹起こし材12が結合され、前記基礎梁8の溝内へ下端を挿入した第一段目の鋼矢板13は、水平方向に隣接するもの同士が両側縁のジョイント部30により接合して繋がれ前記支柱11の傾斜に沿って建て込まれており、更に上段の鋼矢板を上下方向に順に突き合わせて接続し、水平方向の腹起こし材12と結合して外壁材1が組み立てられ、外壁材1の上端部は各鋼矢板の上縁部の高さを水平方向に一直線状に揃え、同上縁部の上に堤冠材16が取り付けらていること、
コンクリートブロックパネルから成る外壁材2を構成する各コンクリートブロックパネル21は、水平方向及び上下方向に隣接するもの同士をブロック連結金具20で結合して組み立てらていること、
前記構成で並立し相対峙する一対の外壁材1、2の内側に硬化材3が段階的に充填されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した土木構造物において、
土石流が流れ落ちて来る上流側の外壁材は鋼矢板13で組み立てられ、下流側の外壁材はコンクリートブロックパネル21で組み立てられていることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施形態、及び実施例】
先ずは本発明に係る土木構造物の構築工法の実施形態を図面に基づいて説明し、併せて請求項1、2の発明に係る土木構造物の構成を逐次説明する。
【0026】
本発明に係る土木構造物の構築工法は、図1に概念図を示したように、砂防堰堤のような土木構造物Wの長手方向の両側面に相当する外面位置に沿って並立し相対峙する一対の外壁材1、2を段階的に構築し、その内側に、コンクリート等の硬化材3を段階的に充填して同土木構造物Wを構築する工法である。一方(上流側)の外壁材1はモジュール長さの鋼矢板13で組み立て、他方(下流側)の外壁材2はコンクリートブロックパネル21で組み立てることを特徴とする。
【0027】
しかも、各外壁材1、2の内側面には一定の高さ位置毎に段階的にアンカー材4…をほぼ水平な姿勢に複数本ずつ取り付け、これを硬化材3の中に埋め込み、強度を発現した硬化材3のアンカー作用で外壁材1、2の自立支持及び形態保持を行うことも特徴としている。図1中の符号5は基礎コンクリートを指す。
【0028】
以下、更に具体的な説明を進める。
先ず、モジュール長さの鋼矢板13で組み立てる外壁材1の構築について説明する。図2は鋼矢板13で組み立てた外壁材1の完成状態の一例を部分的に示し、図3〜図5は同外壁材1の組み立て要領を示している。
【0029】
図3と図4は、基礎コンクリート5の上に外壁材1の第一段目の組み立てを行った状況を示している。基礎コンクリート5の構築に際して予め埋め込みアンカーを用意するか、又は完成した基礎コンクリート5にアンカー用孔を削孔して彫り込みアンカーを用意するなどし、そのアンカーボルト6を利用して、アングル等によるアンカー金具7の内側端部を固定する。同アンカー金具7の外側端部に、鋼矢板の下端を挿入できその位置を定める上向きに開口した溝形断面材である基礎梁8がほぼ直角な向き(土木構造物Wの長手方向)に連結されている。前記アンカー金具7…により、基礎梁8の位置決め固定が行われる。
【0030】
前記アンカー金具7は、支柱11の設置位置と対応する間隔(約2m)で基礎梁8の長手方向に複数設置されている。下端を前記アンカー金具7とボルト止め等の手段で結合した斜めのサポート材10の上端部と、やはり下端部を基礎梁8の溝内へ挿入して外壁材断面のセンター位置へボルト止め等により位置決めした支柱11の上部とを交わらせ、ボルトで固定する等の手法により、支柱11は当該土木構造物Wについて設計された法面勾配に立てられ強固に支持される。支柱11にはアングル材等が使用され、後記する標準モジュール寸法(一例として長さ約1m)の鋼矢板13Aよりも少し長い程度で、言うなれば外壁材1の下部の一段目のみを支持する程度の比較的短い支柱として立てられている。
【0031】
上記のようにして立てた各支柱11、11…の間に、第一段目及び第二段目の腹起こし材12aと12bがそれぞれ水平方向に配置されボルト止め等の手段で結合して架設支持されている。腹起こし材12には通例アングル材が使用され、その上辺が水平面となる態様で支柱11へ取り付けられる。
【0032】
前記第一段目及び第二段目の腹起こし材12a、12bの取り付け位置について説明する。第二段目の腹起こし材12bは、図4の(イ)列の位置に建てた標準モジュール寸法の鋼矢板13Aの上縁部よりも少し下がった位置にほぼ水平に配置され、(ロ)列の位置の鋼矢板13Aとのみボルト止め等による結合が行われる。第一段目の腹起こし材12aは、前記第二段目の腹起こし材12bの位置よりはずっと下方の約1/4高さ付近の位置、即ち、基礎コンクリート5の上に建てた(ロ)列の略1/2モジュール長さの鋼矢板13Bとのボルト止め等による結合が可能な高さ位置に設置される。図2中の符号15は腹起こし材同士の接続金物を指している。
【0033】
次に、基礎コンクリート5の上に第一段目の外壁材1を鋼矢板13で組み立てる要領を、図3と図4に基づいて説明する。
【0034】
鋼矢板13としては、軽量型で本発明が標準と定めたモジュール長さ寸法(以下、標準モジュール寸法と云う=長さ約1m、幅寸は355mm、厚さ5〜6mm)の標準鋼矢板13Aと、長さ寸法が約1/2モジュール寸法(長さ約50cm)の短いハーフ鋼矢板13Bの2種を使用する。第一段目の鋼矢板13Aと13Bは、下端をそれぞれ、基礎コンクリート5上の基礎梁8の溝内へ挿入して互い違いに配置する。隣接する鋼矢板13Aと13B同士はその両側縁に有するグリップ形状のスライドジョイント部30(図5を参照)を接合して、上記の支柱11の傾斜に沿って建て込む。図4中の(ロ)の列に属するハーフ鋼矢板13Bは、前記第一段目の腹起こし材12aとボルト止め等の手段で結合する。(イ)の列に属する標準鋼矢板13Aは第一段目及び第二段目の腹起こし材12a、12bのいずれとも結合しない。鋼矢板の建て込み時にスライドジョイント部30に必要な自由度を残すためである。
【0035】
前記(ロ)の列に属するハーフ鋼矢板13Bの上に、標準モジュール寸法の標準鋼矢板13Aをもう1枚建て込み、これを第二段目の腹起こし材12bと結合して、第一段目の鋼矢板の組立作業を終了する。
【0036】
したがって、一段目の各鋼矢板の上縁部(つまり、上下の鋼矢板同士の継目14に相当)は、図4に示した通り、上下左右方向に背が低いものと背が高いものとが互い違いの配置、即ち段違いの千鳥状配置に形成される。一段目以上の外壁材1の組み立ては標準鋼矢板13Aのみで行う。ハーフ鋼矢板13Bは最上段部の組み立てにおいて使用することになる。
【0037】
図3、図4に示すように鋼矢板の第一段目の組み立てを完成した状態で、最初の1ユニットの硬化材充填工程を実施する。但し、このときには既に、反対側のコンクリートブロックパネルによる外壁材2の組み立ても、同じく第一段目の組み立てを終えているのであるが、便宜上その図示、説明は後述する。要するに、本発明の構築工法の実施においては、相対峙する一対の外壁材1、2の組立作業は同時並行作業として効率良く行われる。
【0038】
硬化材3としては、通常コンクリートを使用することが多いが、クラッシャーランと水及びセメントから成るコンクリート、又は現地発生土と採石、水及びセメントから成るソイルセメントなどを、施工場所等の条件に応じて適宜選択して使用する。
【0039】
硬化材3を充填する工程は、一対をなす外壁材1、2の内側へ、少なくとも一段のアンカー材4をほぼ水平な姿勢で埋め込むに足る高さ(通例100cm程度)を1ユニットとして実施する。また、1ユニットの施工は、その層厚を複数に分けた分量ずつに区分して充填し、転圧して養生を行う工程を、当該1ユニットの高さまで複数回に分けて繰り返し行う。
【0040】
更に具体的に図3、図4の実施形態に基づいて硬化材3の充填工程を説明する。
基礎コンクリート5の上面から第二段目の腹起こし材12bの位置(つまり、外壁材1側の第一段目のアンカー材4の取付け位置)を少し超える垂直高さL1(約100cm)のレベルまで(図4中(イ)列の標準鋼矢板13Aの上縁近傍位置まで)を、硬化材3の1ユニットの充填作業として行う。この第一段階の充填作業は、具体的には前記1ユニットの充填層厚(約100cm)を例えば25cmずつ4回に小分けして段階的に進める。その理由は、硬化材3を一定の層厚に充填した後、その層の硬化材3を集中的に振動ローラー等で転圧し、強度を発現するまで養生する工程を効果的に行う配慮による。
【0041】
1ユニットの充填工程の終局に相当する第4回目の充填作業に先立ち、直前の充填工程で強度を発現し硬化した硬化材3の上面を作業員の足場に利用して、第二段目の腹起こし材12bの予め用意した取付用孔へアンカー材4の一端を引っ掛けて止める等の手法で第一段目のアンカー材4を取り付ける。そして、同アンカー材4を例えば上方からワイヤーで吊るなどして略水平姿勢に保ち、レベルL1までの硬化材3の充填工程を進める。この硬化材3の充填及び転圧、養生の工程を遂行することにより、第一段目のアンカー材4はほぼ水平な姿勢に硬化材3の中に埋設され、その後強度を発現した硬化材3によるアンカー作用を受ける。よって、このアンカー材4は次上位の外壁材1(第二段目の組み立て状態にある鋼矢板)の自立支持及び形状保持機能を働く。
【0042】
上記したように硬化材3をレベルL1まで充填する工程の間、第一段目まで組み立てられた外壁材1(鋼矢板)は、硬化材3の充填圧力、及び転圧等による圧力などに対する耐力、及び剛性(形態保持性能)を、基礎コンクリート5へアンカーしたアンカー金具7とサポート材10及び支柱11、並びに同支柱11…の間へ水平方向に取り付けた腹起こし材12a、12bによる架構で確保する。第二段目以上に組み立てた外壁材1(鋼矢板)の耐力及び剛性は、上記したように直前のレベルL1まで充填した硬化材3の中に埋設され強度を発現した硬化材3のアンカー作用を受けるアンカー材4の支持力によって付与される。
【0043】
上記のようにして最初の1ユニットのレベルL1まで硬化材3を充填し、その強度が発現した段階で、前記レベルL1の硬化材3の上面を作業員の足場に利用して、第二段目の鋼矢板の組み立てが行われる。
【0044】
図4に符号(イ)で示した列の背が低い鋼矢板13Aの上に、矢印Yで示したように、標準モジュール寸法の鋼矢板13A…を、両隣の1/2モジュール長さ分だけ上方へ突き出ている符号(ロ)の列の鋼矢板13A、13Aのジョイント部30(図5を参照)との接合を行いつつ順次建て込んで継ぎ足す。続いて、前記建て込みの結果相対的に背が低くなった符号(ロ)の列の鋼矢板13Aの上に、標準鋼矢板13Aを両隣の鋼矢板のジョイント部30との接合を行いつつ順次建て込んで継ぎ足す。そして、先に(イ)の列に建て込んだ二段目の鋼矢板13Aの上縁より少し下がった位置に三段目の腹起こし材12cを配置し、今度も(ロ)の列の鋼矢板とのみ結合を行って第二段目の鋼矢板の組み立てが終わる。
【0045】
結局、二段目の鋼矢板も(ロ)の列の鋼矢板が1/2モジュール寸法だけ先行して背が高く構築される。鋼矢板による外壁材1の組み立ては、以下同様の作業工程を繰り返して行われる。よって各鋼矢板の上縁部(継目)は上下左右に互い違いの配置(千鳥状配置)に組み立てられる。
【0046】
上記外壁材1の二段目の組み立て作業のときも、作業員は、レベルL1まで先行して充填し硬化した硬化材3の上面を足場に利用できるから、外壁材組み立て用の作業足場を用意する必要はない。標準モジュール寸法の鋼矢板13Aは軽量型(軽量鋼矢板)であるから、人手により容易に運搬や持ち上げ等することができ、重機類を必要としない。
【0047】
上記のとおり、外壁材1を構成する各鋼矢板の上縁部は、常に上下左右に段違いの千鳥状配置に接合して組み立てが進められるから、外壁材1の剛性度は平均して高い。また、外壁材1の組み立ては、標準モジュール寸法の鋼矢板13Aの長さ(約100cm)を1ユニットとして行う硬化材3の充填工程よりも、一工程分先行して行われる。腹起こし材12の上下方向ピッチも約100cm間隔となる。腹起こし材12の位置毎に段階的に取り付けを行う各段のアンカー材4の上下方向間隔も約100cmに配置されることになる。
【0048】
以下、次の1ユニットの硬化材3の充填工程を、アンカー材4の設置と併せて上述した内容で行う。更に鋼矢板13の組み立てを一工程先行して行う構築作業を、順次当該土木構造物Wの最高高さまで繰り返すことになる。
【0049】
但し、外壁材1の上端部分の組み立てに関しては、図2に示したように、再び標準モジュール寸法の1/2長さのハーフ鋼矢板13Bを併用することにより、上縁を水平方向に一直線状に揃える。この上縁部の上にアングル材等を使用した堤冠材16を取り付ける。硬化材3は、この堤冠材16と同等レベルまで充填される(請求項1に記載した発明)。
【0050】
次に、コンクリートブロックパネルで組み立てる外壁材2の構築について説明する。図6はコンクリートブロックパネル21で組み立てた外壁材2の完成状態の一例を部分的に示し、図7〜図10は同外壁材2の組み立て要領を示している。
【0051】
図7と図8は、基礎コンクリート5の上に外壁材2の第一段目の組み立てを行う状況を示している。基礎コンクリート5の構築に際して予め埋め込みアンカーを用意するか、又は完成した基礎コンクリート5にアンカー用孔を削孔して彫り込みアンカーを用意するなどし、そのアンカーボルト6を利用して、アングル等によるアンカー金具7の内側端部を固定する。
【0052】
前記アンカー金具7は、当該土木構造物Wの長手方向に、コンクリートブロックパネルの横長(約1.5m)と同等の間隔をあけて複数設置されている。下端を前記アンカー金具7とボルト止め等の手段で結合した斜めのサポート材10の上端部と、やはり下端部を前記アンカー金具7の外端とボルト止め等により連結したブロック支持金具20の上部とを交わらせ、ボルトで固定する手法により、ブロック支持金具20が当該土木構造物Wについて設計された法面勾配に立てられ強固に支持される。このブロック支持金具20には、通例一対の不等辺山形鋼を各々の一辺の平面が前記法面勾配の傾斜面を上下方向に形成するように背中合わせの態様で使用される。ブロック支持金具20は、後記する標準モジュール寸法(一例として高さ約1m)の1/2高さのハーフ型コンクリートブロックパネル21Bの高さよりも少し短い程度の高さとされている。
【0053】
第一段目のコンクリートブロックパネルの組み立ては、上記のようにして立てた各ブロック支持金具20…の間に1枚ずつ、鉄筋コンクリート造のプレキャスト製品であるコンクリートブロックパネル、即ち、本発明が標準と定めたモジュール高さ寸法(以下、標準モジュール寸法と云う=高さ約1m、横幅寸法は約1.5m、厚さ150mm)の標準型コンクリートブロックパネル21Aと、高さ寸法が約1/2モジュール(約50cm)のハーフ型コンクリートブロックパネル21Bの2種を使用して行う。第一段目には2種のコンクリートブロックパネル21Aと21Bを互い違いに配置する。そして、隣接するコンクリートブロックパネル21Aと21Bは、その両側縁部を該当位置のブロック支持金具20の法面勾配の傾斜面に沿って基礎コンクリート5の上に建て込み、それぞれを各ブロック支持金具20とボルト止め等の手段で結合する。したがって、一段目の各コンクリートブロックパネルの上縁部は、図8に示す通り、背が低い(ハ)列のものと背が高い(ニ)列のものとが互い違いの配置、即ち上下方向に段違いの千鳥状配置に形成される。
【0054】
図8の(ハ)列のハーフ型コンクリートブロックパネル21Bの上に、矢印uで示すように標準型コンクリートブロックパネル21Aを積み重ねた状態を、第一段目の組み立て状態とする。この第一段目の組み立て状態で、最初の1ユニットの硬化材充填工程を実施する。このときには既に、反対側の鋼矢板による外壁材1の組み立ても、同じく第一段目の組み立てを終えていることは既に説明した。
【0055】
硬化材3を充填する工程については、既に段落番号[0037]〜[0045]において詳しく説明したので、省略する。
【0056】
なお、外壁材2を構成する標準型コンクリートブロックパネル21Aには上下2段に、ハーフ型コンクリートブロックパネル21Bには中間に一段のみ、それぞれの内側面にリング金物22が用意され、このリング金物22へ一端部を掛け止める要領で各段のアンカー材4が段階的に取り付けられる。そのため外壁材2における硬化材3の充填工程は、前記アンカー材4の取り付けピッチにしたがい、標準型コンクリートブロックパネル21Aの高さ約100cmを1ユニットの充填工程として作業を進める。1ユニットの硬化材3が強度を発現し硬化した段階で、二段目の外壁材の組み立てを一工程分先行して進める。
【0057】
基礎コンクリート5上の最初の1ユニットの硬化材充填工程における外壁材2の支持及び形状保持は、アンカー金具7とサポート材10及びブロック支持金具20とから成る架構によって行われる。
【0058】
上記のようにして図7のレベルL1’及びL1までを1ユニットとして硬化材3を充填し、その強度が発現した段階で、前記レベルL1の硬化材3の上面を足場にして、第二段目の外壁材2の組み立てを行う。
【0059】
図示した標準型コンクリートブロックパネル21A及びハーフ型コンクリートブロックパネル21Bは共に、図9と図10に示したように、その上下の辺、及び左右の両側辺に、積み重ね作業の位置決めを容易にし、且つ積み重ね状態の位置ズレを防いで安定化させる、階段状の凹凸P、QとM、Nを備えており、これらを重ね合わせて(又は接合して)上下左右の積み重ねと接合を行う。しかも各コンクリートブロックパネル21の両側部にはそれぞれ、内側面の上半分から約1/2モジュール寸法だけ上方に突き出るアングル形状のブロック連結金具23を備えている。
【0060】
したがって、上下左右に互い違いに積み重ねたコンクリートブロックパネル21は、左右に隣り合うブロック連結金具23、23の上下を、平板状の短い連結板24を介してボルト止め等の手段で結合することにより、強固な壁構造を容易に組み立てることができる。
【0061】
以下、硬化材3の充填工程をアンカー材4の設置と併せて上述した内容で1ユニットずつ行い、更にコンクリートブロックパネル21の組み立てを一工程分先行して行う組立作業を、当該土木構造物Wの最高高さまで繰り返す。
【0062】
この外壁材2の場合にも、図6に示したように、最終段階では再びハーフ型コンクリートブロックパネル21Bを使用して上縁部を水平方向に一直線状に揃える。硬化材3はこの上縁部と同等レベルまで充填される(請求項1に記載した発明)。
【0063】
【本発明の奏する効果】
請求項1、2に記載した発明に係る土木構造物は、一対をなす外壁材1、2の組み立てを一方はモジュール長さの鋼矢板を使用して、他方はコンクリートブロックパネルを使用して、それぞれ同時に並行して一段ずつ行い、硬化材3の充填は前記一段の高さを1ユニットとして複数回に分けてアンカー材の取付けと共に外壁材1、2の内側へ充填して構築を段階的に進めるため、外壁材のむやみな補強、補剛工作や作業用足場の用意などが無用であり、少ない部材点数、少ない工数で土木構造物を構築することができ、コストの削減と作業効率の向上が可能である。
【0064】
しかも本発明に係る土木構造物は、土石流が流れ落ちて来る上流側の外壁材1をモジュール長さの鋼矢板で構築したので、土石流衝突の衝撃力から構造物を保護することができる。また、景観性が重視される下流側の外壁材2はコンクリートブロックパネルで構築したから、環境に優しい景観を作ることができる。よって、本発明の土木構造物は、機能性と景観性の双方に優れた合理的な構成である。のみならず、鋼矢板による外壁材は、土石流などにより部分的に破壊されたりしたときには、その破壊部分の鋼矢板を取り替えて修復し再利用するメンテナンス性に優れる。他方、コンクリートブロックパネルによる外壁材は、コンクリートが腐食等の心配がなく半永久的な材料であるから、メンテナンスフリーの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る土木構造物を示した断面図である。
【図2】鋼矢板による外壁材の構造を示した斜視図である。
【図3】鋼矢板による外壁材を一段目まで組み立てた状況を示す側面図である。
【図4】鋼矢板による外壁材を一段目まで組み立てた状況を示す外側面図である。
【図5】鋼矢板による外壁材の組み立て状況を示した平面図である。
【図6】コンクリートブロックパネルによる外壁材の構造を示した斜視図である。
【図7】コンクリートブロックパネルによる外壁材を一段目まで組み立てた状況を示す側面図である。
【図8】 コンクリートブロックパネルによる外壁材を一段目まで組み立てた状況を示す内側面図である。
【図9】コンクリートブロックパネルによる外壁材の組み立て状況を示した斜視図である。
【図10】 コンクリートブロックパネルの構造を示した斜視図である。
【符号の説明】
W 土木構造物
1 鋼矢板による外壁材
2 コンクリートブロックパネルによる外壁材
3 硬化材(コンクリートなど)
13 鋼矢板
21 コンクリートブロックパネル
4 アンカー材
30 ジョイント部
12 腹起こし材
23 ブロック連結金具
24 連結板
5 基礎コンクリート
8 基礎梁
6 アンカーボルト
7 アンカー金具
10 サポート材
11 支柱
16 堤冠材
20 ブロック支持金具
Claims (2)
- 土木構造物の長手方向の両側面位置に沿って並立し相対峙する一対の外壁材の内側にコンクリート等の硬化材を充填して構築された土木構造物であって、
一方の外壁材(1)はモジュール長さの鋼矢板(13)で組み立てられ、他方の外壁材(2)はコンクリートブロックパネル(21)で組み立てられており、それぞれの内側面の一定高さ位置毎にほぼ水平姿勢のアンカー材(4)が段階的に複数本取り付けられていること、
鋼矢板(13)から成る外壁材(1)は、基礎コンクリート(5)の上に鋼矢板(13)の下端を挿入できる上向きに開口した溝形断面材である基礎梁(8)が配置され、基礎コンクリート(5)に固定したアンカー金具(7)によって前記基礎梁(8)が位置決めされ、前記アンカー金具(7)及びこれと結合した斜めのサポート材(10)により短い支柱(11)がその下端を前記基礎梁(8)の溝内へ挿入して法面勾配に立てられ、前記支柱(11)の背面側に水平方向の腹起こし材(12)が結合され、前記基礎梁(8)の溝内へ下端を挿入した第一段目の鋼矢板(13)は、水平方向に隣接するもの同士が両側縁のジョイント部(30)により接合して繋がれ前記支柱(11)の傾斜に沿って建て込まれており、更に上段の鋼矢板を上下方向に順に突き合わせて接続し、水平方向の腹起こし材(12)と結合して外壁材(1)が組み立てられ、外壁材(1)上端部は各鋼矢板の上縁部の高さを水平方向に一直線状に揃え、同上縁部の上に堤冠材(16)が取り付けらていること、
コンクリートブロックパネルから成る外壁材(2)を構成する各コンクリートブロックパネル(21)は、水平方向及び上下方向に隣接するもの同士をブロック連結金具(20)で結合して組み立てられていること、
前記構成で並立し相対峙する一対の外壁材(1)(2)の内側に硬化材(3)が段階的に充填されていることを特徴とする、土木構造物。 - 土石流が流れ落ちて来る上流側の外壁材は鋼矢板(13)で組み立てられ、下流側の外壁材はコンクリートブロックパネル(21)で組み立てられていることを特徴とする、請求項1に記載した土木構造物。
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