JP4411937B2 - 容器用ポリエステル樹脂ラミネート金属板 - Google Patents
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Description
そこで、これらの問題を解決するため、熱可塑性樹脂フィルムを金属板に接着することにより樹脂被覆を形成する方法が開発され、従来、これに使用されるラミネートフィルムに関する提案が数多くなされている。
また、特許文献3には、固体高分解能NMRによる構造解析における1、4位のベンゼン環炭素の緩和時間を所定レベル以上とした金属板ラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。
したがって本発明の目的は、上記のような従来技術の課題を解決し、フィルム密着性、耐熱性、成形加工性に優れ、さらに加工後のレトルト後耐食性にも優れた容器用ポリエステル樹脂ラミネート金属板を提供することにある。
また、そのようなラミネート用フィルムにおいて、フィルムを構成するポリエステル単位の90モル%以上をエチレンテレフタレート単位とすることにより、耐熱性及び味特性が大幅に改善されることが判明した。
[1]動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の最高温ピーク温度が113℃〜128℃、面配向係数が0.130〜0.150、温度変調DSC測定による可動非晶量が25.0%〜38.0%であり、フィルムを構成するポリエステルが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とし、共重合成分としてジエチレングリコールのみを0.01〜3.0mol%含む二軸延伸ポリエステルフィルムを、金属板の両面又は片面にラミネートしたことを特徴とする容器用ポリエステル樹脂ラミネート金属板。
ここで、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の高温側ピーク温度が113℃未満では、フィルムの破断強度が低下するため加工後にフィルム割れが生じやすく、一方、128℃を超えるとフィルムの伸びが小さくなるため、成形性が悪化する。また、面配向係数が0.130未満では、フィルムの弾性率が低下するため機械的強度が低下し、一方、0.150を超えると、加工後にフィルム割れが生じやすく、耐食性やラミネート時のフィルム密着性が悪化する。
動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の高温側ピーク温度は、例えば、フィルムの延伸条件(延伸温度、延伸倍率など)や延伸後のフィルムの熱処理条件(熱処理温度、熱処理時間など)などにより調整することができる。
なお、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の高温側ピーク温度及び面配向係数は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
なお、上記温度変調DSC測定による可動非晶量は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させてもよい。
また、フィルムには、公知の酸化防止剤を0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜1質量%添加することが、耐衝撃性を向上させる点から望ましい。酸化防止剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒドラジン類、フォスファイト類等に分類される公知の酸化防止剤を使用することができる。なかでも、ペンタエスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェイト等が好適である。
この二軸延伸ポリエステルフィルムは単層で若しくは接着層等と積層させて金属板表面にラミネートされる。二軸延伸ポリエステルフィルムの下層に接着層等として1層以上のフィルムを設ける場合、このフィルムとして熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー等のポリマーからなるフィルムを用いてもよい。具体的には、ポリエステル、例えば、高分子量ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ブタンジオール、イソフタル酸残基骨格を有する共重合ポリエチレンテレフタレート、さらにジエチレングリコールを添加、共重合したポリエステル等が好ましく使用できる。また特に、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを用いることが、ラミネート後の加工性とレトルト後耐食性を両立させる点から好ましい。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性及び耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/cm2の範囲とすることが望ましい。
ポリエステル樹脂として、公知の重合法によりジエチレングリコール含有量が1.6mol%のポリエチレンテレフタレート樹脂を製造した。この樹脂を160℃にて5時間乾燥した後、押出機により加熱溶融し、溶融樹脂をTダイからフィルム状に冷却ドラムに吐出し、冷却ドラム上で固化させることにより未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度110℃にて長手方向に3.0倍延伸し、温度115℃で幅方向に3.0倍延伸した後、熱処理温度180℃、熱処理時間5秒間の熱処理を施すことにより、表1に示す実施例1の樹脂フィルムを製造した。
[実施例2〜7、参考例1,2、比較例1〜7の樹脂フィルムの製造]
実施例1の製造条件における樹脂組成、延伸条件、熱処理条件を適宜変更することにより、表1及び表2に示す実施例2〜7、参考例1,2、比較例1〜7の樹脂フィルムを製造した。
(1) 動的粘弾性測定
原反フィルムから長手方向に長さ4cm、幅0.4cmの短冊状の試験片を切り取り、オリエンテック社製「RHEO VIBRON DDV−01FP」を用いて、加振周波数110Hz、チャック間距離約3cm、昇温速度3℃/min、−150℃〜220℃で貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定し、この貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)の比から損失正接(tanδ)を求めた。
(2) 面配向係数
ナトリウムD線(波長589mm)を光源として、アッベ屈折計を用いてフィルムの長手方向、幅方向および厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)をそれぞれ測定し、このフィルム長手方向、幅方向及び厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)から、下記計算式により面配向係数fnを求めた。
面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nz
ティー・エイ・インスツルメント社製「DSC2920」を用いて、温度範囲0℃〜200℃、昇温速度2℃/min、振幅1℃、周波数60Hz、窒素雰囲気下で原反フィルムのガラス転移点前後の比熱を測定し、下記計算式より可動非晶量を求めた。
可動非晶量(%)={ΔCp/ΔCp(a)}×100
ここで ΔCp:原反フィルムのガラス転移点前後の比熱差
ΔCp(a):完全非晶物のガラス転移点前後の比熱差
(4) フィルム中のジエチレングリコール成分の含有量
フィルムを加水分解しガスクロマトグラフにより測定した。
(5) 耐熱性
原反フィルムから10mm×200mmの試験片を切り取り、この試験片
を150℃×30分間、熱風で加熱した後の収縮率を長手方向、幅方向について各5点測定し、それらの平均値を求め、下記により評価した。
◎:長手方向、幅方向の収縮率がいずれも1.8%未満である。
○:長手方向、幅方向の収縮率のいずれかが1.8%以上3.0%未満である。
×:長手方向、幅方向の収縮率のいずれかが3.0%以上である。
このラミネート金属板を製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製し、各性能について調査を行った。その結果を、樹脂フィルムの構成とともに表1及び表2に示す。
(a) 成形性
ラミネート金属板にワックス塗布後、直径179mmの円板を打ち抜き、絞り比1.60で浅絞り缶を得た。次いで、この絞りカップに対し、絞り比2.10及び2.80で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。その評価基準は以下の通りである。
◎:成形後フィルムに損傷なく、フィルム剥離も認められない。
△:成形可能であるが、フィルム剥離が認められる。
×:缶が破胴し、成形不可能。
第3段階の絞り成形加工後の缶について、水を満注した後、蓋を巻き締め、各試験について10個ずつを130℃で30分間の加圧水蒸気中に保持し、37℃にて30日間保管した。その後、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm×長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムを一部剥離し、引張試験機で剥離した部分のフィルムを、フィルムが剥離されたクロムめっき鋼板とは反対方向(角度:180°)に開き、引張速度30mm/minでピール試験を行い、密着力を評価した。なお、密着力測定対象面は、缶内面側とした。その評価基準は以下の通りである。
◎:0.15kgf/15mm以上
○:0.10kgf/15mm以上、0.15kgf/15mm未満
×:0.10kgf/15mm未満
(c) レトルト後耐食性
第3段階の絞り成形加工後の缶について、水を満注した後、蓋を巻き締め、各試験について10個ずつを130℃で30分間の加圧水蒸気中に保持し、37℃にて30日間保管した。その後、缶内面側の缶胴上部の腐食状況を目視にて評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎:全く腐食が認められない。
○:ほとんど腐食が認められない。
△:軽微な腐食が認められる。
×:顕著な腐食が認められる。
Claims (1)
- 動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の最高温ピーク温度が113℃〜128℃、面配向係数が0.130〜0.150、温度変調DSC測定による可動非晶量が25.0%〜38.0%であり、フィルムを構成するポリエステルが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とし、共重合成分としてジエチレングリコールのみを0.01〜3.0mol%含む二軸延伸ポリエステルフィルムを、金属板の両面又は片面にラミネートしたことを特徴とする容器用ポリエステル樹脂ラミネート金属板。
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