JP4409647B2 - 表面保護フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表面保護フィルムに関する。具体的には、金属板やガラス板、合成樹脂板などの表面に仮着され、これら物品の表面が傷付けられたり、ゴミなどが付着するのを防止する表面保護フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板、ガラス板、合成樹脂板又は塗装鋼板などの加工時及び運搬時に、これらの表面に汚れが付着したり、傷が付いたりすることを防止するために表面保護フィルムが多用されている。表面保護フィルムは、一般に熱可塑性樹脂からなる基材層の片面に粘着剤層が形成された構造を有する。使用に際しては、粘着剤層が金属板などの被着体表面に仮着され、それによって被着体表面を保護し、汚れの付着や傷つきを防止する機能を果たす。また、最終的には被着体表面から剥離され、廃棄される。
【0003】
近年、このような表面保護フィルムの粘着剤層として、経時変化に伴う粘着力の上昇を抑える観点などから、スチレン系ブロック共重合体などの合成ゴム系の粘着剤を用いることが多くなっている。
【0004】
このスチレン系ブロック共重合体を用いて表面保護フィルムを製造する場合には、一般的には当該スチレン系ブロック共重合体を有機溶媒に溶解若しくは懸濁させた粘着剤溶液を基材層の片面に塗布する方法と、スチレン系ブロック共重合体を無溶媒下で基材層と共押し出しして一体成形する方法とが用いられる。
【0005】
前者の溶媒を用いる方法では、被着体に最も適した基材層を選定した上で、被着体に最も適した粘着剤液を精度よく塗布することが可能で、且つ粘着剤層の厚みを至極簡単に調整可能である点で非常に望ましい方法と言える。
【0006】
しかしながら当該方法によれば、汎用されているポリオレフィン系基材層の表面に粘着剤層を形成した場合には、基材層との間で十分な投錨力を得ることができなかった。また、投錨性を向上させるために、コロナ処理などの各種表面処理を基材層に施したとしても必ずしも十分であるとは言えなかった。さらにコスト面からも、次に述べる共押出し法と比較して、製造コストが高くなってしまうという問題点があった。
【0007】
一方、共押出し法にあっては、ポリオレフィン系基材層との間で比較的容易に十分な投錨力を得ることができ、しかも安価に表面保護フィルムを作製することができる。
【0008】
しかしながら当該方法によれば、製造方法が限定されるために、得られる表面保護フィルムの特性値もある程度制限される。この結果、フィルム特性としてのフレキシビリティに限界があり、溶媒法に比較して被着体に適した表面保護フィルムを得ることが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、有機溶媒に溶解若しくは懸濁させた粘着剤溶液をコーティング方式で基材層表面に塗布することにより、被着体に最も適し、かつ共押出し法と同様に投錨力に優れた表面保護フィルムを得ることを目的としている。
【0010】
そこで本願発明者らは鋭意努力した結果、特定の粘着剤組成物を使用することにより、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の表面保護フィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層の片面に、粘着剤層が設けられた表面保護フィルムであって、前記粘着剤層は、一般式A−B−Aブロック共重合体(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックを示す。)及び当該A−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物由来の酸素原子を含有することを特徴としている。
【0012】
本発明において基材層として用いられるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)などが挙げられる。また、これらの樹脂は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせになる混合物も好適に用いられる。さらに、これらのポリオレフィン樹脂には、必要に応じて光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤など通常の粘着テープ用基材などに用いられる各種添加剤を用いることができる。また、本発明においては以下に述べる理由により、必要に応じてコロナ処理を行なうことが好ましい。
【0013】
基材層の厚さとしても特に限定されるものではないが、一般には10〜300μmの厚さのものが用いられ、柔軟性等の観点から20〜100μmの厚さのものが好適に用いられる。
【0014】
また、粘着剤層としては、一般式A−B−Aブロック共重合体(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックを示す。)を主成分とし、当該粘着剤層中に上記A−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物由来の酸素原子を含有している。
【0015】
粘着剤層の主成分となるA−B−Aブロック共重合体は、ブロック共重合体の構成成分として、Aブロックはスチレン系ブロック重合体、Bブロックはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックが用いられる。これらのブロック共重合体であれば特に限定されるものではなく、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などを挙げることができる。
【0016】
ここにおいて、A−B−Aブロック共重合体は、一般にトリブロック共重合体として市販されているものであって、当該A−B−Aブロック共重合体には、A−B−Aブロック共重合体のみならずA−Bブロック共重合体を含む概念で用いるものである。
【0017】
上記Aブロックであるスチレン系ブロック重合体としては、重量平均分子量が1,000〜100,000程度であって、好ましくはガラス転移温度が7℃以上のものが好適に用いられる。また、上記Bブロックであるブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックとしては、重量平均分子量が10,000〜500,000程度であって、好ましくはガラス転移温度が−20℃以下のものが好適に用いられる。特に、ブタジエン重合体ブロックやイソプレン重合体ブロックの共役ジエン重合体ブロックを水素添加して飽和し、残存二重結合を有しない重合体ブロックを用いることにより、耐熱性や耐候性を向上させることができる。
【0018】
ここにおいて、AブロックとBブロックとの好ましいブロック重合体の重量比は、A/B=2/98〜50/50であって、さらに好ましくはA/B=15/85〜50/50である。
【0019】
また、これらのスチレン系ブロック共重合体は1種のみでなく、2種以上を適宜混合して用いることにしてもよい。
【0020】
本発明においては、さらに粘着剤中に、A−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物由来の酸素原子を含有している。つまり、上記A−B−Aブロック共重合体に、A−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物、より具体的にいうと、主としてA−B−Aブロック共重合体のうち、Bブロック重合体であるブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックを部分的にエポキシ化したものが配合されている。
【0021】
すなわち、A−B−Aブロック共重合体とエポキシ化されたA−B−Aブロック共重合体とを混合して用いることにより、ポリオレフィン系樹脂の表面に存在していると考えられるカルボキシル基、水酸基等が、これらと親和力の強いエポキシ基と化学反応あるいは結合を生じることにより、基材層と粘着剤層の密着力が増大すると考えられる。その一方で、Aブロック重合体のスチレン基部分がA−B−Aブロック共重合体と相溶性を示すことにより、さらに基材層と粘着剤層の密着力が増大し、その結果基材層と粘着剤層との間の投錨力が向上するものと考えられる。従って、上記したようにポリオレフィン系樹脂からなる基材層の表面をコロナ処理することにより、カルボキシル基や水酸基がより多く基材層表面に存在するようになり、より一層投錨力が向上するものと考えられる。
【0022】
エポキシ化されたA−B−Aブロック共重合体のうちAブロック重合体については、上記A−B−Aブロック重合体と同様なブロック重合体が用いられる。また、Bブロックについては上記Bブロック重合体と同様なBブロック重合体であって、その一部がエポキシ化されたものであり、そのエポキシ当量はエポキシ化A−B−Aブロック共重合体に対し、概ね100〜10000g/equiv.のものが用いられ、好ましくは400〜3000g/equiv.のものが好ましく用いられる。なお、エポキシ当量は、臭化水素による滴定により測定されたオキシラン酸素濃度により算出されたものである。
【0023】
また、A−B−Aブロック共重合体とエポキシ化物の比率としては、特に限定されるものではないが、A−B−Aブロック共重合体100重量部に対し、エポキシ化物1〜20重量部程度が好適に用いられる。
【0024】
さらに本発明における粘着剤層は、両ブロック共重合体のみによって形成することができるが、粘着特性を調整すべく必要に応じて、例えばα−ピネンやβ−ピネン重合体、ジテルペン重合体、α−ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール樹脂やキシレン系樹脂などの適当な粘着付与剤を配合できる。さらに、液状ポリマーやパラフィン系オイルなどの軟化剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤など種々の添加剤を、本発明の目的範囲内で適当量配することができる。
【0025】
このような粘着剤層は、例えば次のようにして基材層の片面に設けられる。上記粘着剤層を形成する成分を、トルエンやキシレン、酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解若しくは懸濁させる。その後、基材層の片面若しくは基材層の表面処理面に当該溶液若しくは懸濁液を、例えばコンマコータに代表される各種ロールコータ、フォンテンブレードコータに代表される各種ブレードコータなどを用いて塗膜加工する。そして、乾燥して溶媒を揮散させた後に、30〜60℃に保存して数日間エージングすることにより、表面保護フィルムを作製できる。こうすることにより、基材層と粘着剤層との間の投錨性を確保できる。もちろん、無溶媒化の下で共押し出しして、表面保護フィルムを得ることも可能である。
【0026】
また本発明においては、基材層表面に存在していると考えられる特にカルボシキル基と、エポキシ基との反応性を高めるため、前記溶媒若しくは懸濁液中に反応触媒を加えておくことが望ましい。当該触媒としては、係る観点より上記反応性を高めるものであれば特に限定されるものではないが、その後の処理において揮散等され、表面保護フィルム中に残存されないものが好ましく用いられる。当該触媒として、例えばアンモニア水あるいはトリエタノールアミンやメチルアミンなどの有機アミン類を挙げることができる。
【0027】
粘着剤層の厚さとしては特に限定されるものではないが、一般的には0.1〜100μm、好ましくは0.1〜20μmに設定するのが望ましい。
【0028】
【実施例】
次に、本発明の実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明する。以下の説明中、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を示す。
【0029】
(実施例1)
厚さ40μmのポリプロピレン−ポリエチレンブレンドフィルム(組成重量比:ポリプロピレン/ポリエチレン=8/2)のコロナ処理面に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(日本ゼオン(株)社製、クインタック3450)100部と、テルペンフェノール系粘着付与剤3部及びエポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(MW=30,000 ブタジエン/スチレン重量比=60/40 エポキシ当量1200g/equiv.)10部を、トルエンに均一に溶解して、固形分25%の粘着剤溶液を得た。
【0030】
当該粘着剤溶液を、粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗布した後、乾燥してロール状に巻き取り、実施例1の表面保護フィルムを得た。また、基材層の背面には予め粘着剤塗布と同様の工程により、長鎖アルキル系背面処理剤からなる厚み1.0μmの背面処理層を形成しておき、良好な巻き戻し性を確保した。
【0031】
(実施例2)
エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の配合量を3部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0032】
(実施例3)
基材層として、コロナ処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0033】
(実施例4)
基材層として、コロナ処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0034】
(比較例1)
エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を用いずに粘着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0035】
(比較例2)
エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を用いずに粘着剤層を形成した以外は、実施例4と同様にして比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0036】
〔評価試験〕
上記各実施例及び比較例の表面保護フィルムを用いて、次の評価試験を行なった。なお、評価試験を行なうに際して、予め、40℃で3日間エージングを行なった。
【0037】
(接着力試験)
各表面保護フィルムを、三菱レーヨン(株)社製プリズムシート(商品名:ダイアートP−210)に貼付し、78N/cmの荷重をかけてラミネートして20分間放置した。その後、表面保護フィルムを20mm幅にカットし、引張試験機にて引っ張り速度0.3m/minで180°ピールして接着力試験を行い、剥離した時の荷重(gf/20mm)を測定した。
【0038】
(投錨性試験)
各表面保護フィルムを、トルエンにて洗浄したBA処理ステンレス板に貼付し、78N/cmの荷重をかけてラミネートして20分間放置した。その後、表面保護フィルムを20mm幅にカットし、引張試験機にて引っ張り速度0.3m/minで180°ピールした時の糊残りを目視観察した。
【0039】
上記各試験の結果を表1に示す。表1から分かるように実施例の表面保護フィルムにおいては、比較例に比べて遜色のない粘着力が得られた一方で、投錨破壊が見られず、良好な表面保護フィルムを得ることができた。このように、スチレン系ブロック共重合体を主成分とする粘着剤層中に,エポキシ化されたスチレン系ブロック共重合体を配合することにより、溶液若しくは懸濁液を用いた塗布工程によっても、投錨力に優れたポリオレフィン系フィルムをベースとした表面保護フィルムを得ることができた。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、粘着剤層中に含有されたA−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物由来の酸素原子が基材層のカルボキシル基等と反応若しくは結合が生じて、基材層との結合力が向上される。その結果、基材層と粘着剤層との間の投錨力が向上し、糊残りの少ない表面保護フィルムを提供できる。
【0042】
特に本発明にあっては、粘着剤成分を溶解若しくは懸濁させた有機溶媒の溶液を塗布して形成することが可能であって、粘着剤成分の組成比や被着体に適した基材層の選定を容易に行なえる。このため、被着体に応じた適切な表面保護フィルムを作製でき、表面保護フィルムの適用範囲が広げられる。
【0043】
このとき、アンモニアや有機アミン類を有機溶媒中に反応触媒として加えたり、基材層表面にコロナ処理を施すことにより、より一層基材層と粘着剤層との間の投錨力を向上することができる。
Claims (4)
- ポリオレフィン系樹脂からなる基材層の片面に、粘着剤層が設けられた表面保護フィルムであって、
前記粘着剤層は、一般式A−B−Aブロック共重合体(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等の共役ジエン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックを示す。)及び当該A−B−Aブロック共重合体のエポキシ化物由来の酸素原子を含有することを特徴とする表面保護フィルム。 - 前記粘着剤層は、前記A−B−Aブロック共重合体及び前記A−B−Aブロック共重合体を溶解若しくは分散させた有機溶媒を塗布して形成されたことを特徴とする請求項1記載の表面保護フィルム。
- 前記有機溶媒中に、アンモニア若しくは有機アミン類を添加したことを特徴とする請求項2記載の表面保護フィルム。
- 前記基材層の表面にコロナ処理が施されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の表面保護フィルム。
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