JP4407351B2 - 導電性樹脂組成物及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、高い導電性や電磁波シールド性を有する、充填材を高濃度に含有した導電性樹脂組成物(マスターバッチ)に関する。
従来より、基体となる樹脂に導電性充填材を混合して導電性樹脂組成物が製造されている。この導電性充填材として、導電性金属やその合金、金属酸化物等の導電性化合物からなる粉体や繊維などが用いられている。これらは基質が導電性であることから電磁波シールド性や制電性が要求されるICトレー、パソコンや液晶パネル等においても幅広く使用され、また、昨今の健康志向による電磁波や磁界の人体への影響に対する懸念から、近年多く使用されるようになってきている。
ところが、導電粉や金属粒子の場合は樹脂中でこれらが相互に接触した状態にするためには比較的多量に用いる必要があり、樹脂組成物の重量が増加する。しかも粉体や粒状物は接触面積が大きくないので多量に用いても高い導電性を得るのは難しいという問題がある。一方、金属繊維は相互に絡み合って接触状態を保つので金属粉よりは少ない使用量で足りるが、金属繊維自体が樹脂より重いのでこれを配合した樹脂組成物の重量も大きくなる。更に、金属繊維は樹脂繊維より柔軟性に乏しいので、金属繊維の配合量が多くなると樹脂組成物の柔軟性および耐久性が損なわれる。
別の手法として、ウイスカー状(針状結晶)の金属を用いる例も従来知られていたが、微細な金属繊維や金属ウイスカー、針状金属酸化物などは呼吸器官に吸引されて重大な障害を引き起こすことが問題となり、最近ではほとんど使用されていない。
また、ナイロン繊維やポリエステル繊維などの有機高分子材料からなる合成繊維表面に金属薄膜をコーティングした導電性繊維ないし導電性糸が従来から知られており、金属コーティング膜の密着性を高めるために種々の方法が試みられている。例えば、硫化銅をコーティングする場合に、銅イオン捕捉基を有する染料で高分子材料を前処理し、これに銅イオンを結合させた後に硫化する方法(特許文献1)や、アルカリ処理して粗面化した繊維表面に銅イオン捕捉基を付着させた後にこれに硫化銅を結合させる方法(特許文献2)などが知られている。また、アラミド繊維などのように金属メッキを施し難いものについては、ポリビニルピロリドンを利用して金属イオンを付着させ、これを還元して金属メッキを形成する方法(特許文献3)などが知られている。
しかしながら、これらは被覆強度が十分ではなく、通常の添加剤や配合剤と混ぜると、加工の際に金属被覆が剥離したり、あるいは成形後にも経時的に金属被覆が剥離して導電性が低下する問題があり、実用に適うものが得られていない。さらに、均一な金属被覆を有する長繊維は製造コストが高いという問題がある。
また、上記ポリビニルピロリドンを利用するメッキ方法は繊維の種類が限られるので一般的ではない。また、銅イオン捕捉基を導入するコーティング方法は金属被膜が銅やその化合物に限られ、しかも金属被膜の付着強度が必ずしも十分ではないと云う問題がある。なお、有機繊維をアルカリ処理して粗面化すれば概ね金属被膜の付着強度を高めることができるが、粗面化の程度と金属被膜の状態が適切ではないと十分な効果が得られないのが現状である。
別の手法として、炭素短繊維と樹脂とを溶融混練してコンパウンドペレットを作製する方法が知られている。例えば、炭素短繊維とポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を単軸押出機で押出して、次いで定長にカットしたコンパウンドペレットの製造方法(特許文献4)、同様に炭素繊維とポリカーボネートのコンパウンド(特許文献5、6、7)、炭素繊維とポリエステルのコンパウンド(特許文献8)、ガラス繊維とポリエステルのコンパウンド(特許文献9)、導電性繊維とポリオレフィンのコンパウンド(特許文献10、特許文献11)、等が開示されている。
しかし、かかるコンパウンドペレットは製造工程中に炭素繊維の脆さのため、短く切断され、なおかつ射出成形工程でさらに繊維が切断されるので、繊維長が短くなるという問題があり、成形品の導電性や力学特性を向上させる方法としては限界があった。
また、コンパウンドに使用されるポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートやポリフェニレンエーテル等のエンジニアリングプラスチック等に使用される樹脂に対してはあまり相溶性が良くないため、より一層の物性低下や導電性の低下を引き起こすという問題があった。
一方、特許文献12には、整列された強化用フィラメントが熱可塑性樹脂で含浸された繊維強化構造物が開示されている。また、特許文献13には、繊維配列方向の長さが3〜60mmである、平行に配列した繊維を30重量%以上含有するペレットが開示されている。
更に、特許文献14、15には、樹脂被覆繊維ペレットのペレット長と繊維長が同等である事が開示されている。この繊維を樹脂で被覆した樹脂被覆繊維ペレットを射出成形すると、成形後の成形品中に含まれる繊維の長さが、コンパウンドペレットに比べてはるかに長くなり、成形品の耐衝撃性、曲げ弾性率などが向上することが記載されている。
このように、予め繊維を樹脂で被覆した繊維被覆樹脂組成物を用いることによりほぼ解決できるようになった。しかし、この方法のように単に繊維束を樹脂で被覆しただけのものは繊維間に空気層が存在するため、樹脂の含浸性が充分でなく、これを用いて得られた成形品には、繊維の分散不良や空気層の乱反射による白濁化、成形直後に気泡が抜けたことに起因する粗面化等の表面の外観不良や繊維の破砕により良好な機械物性を得ることが出来ないという問題があった。
また、かかる樹脂被覆繊維ペレットは、その特徴を生かして近年、導電性繊維を用いて、電磁波シールド性が要求される用途(例えば、パソコン筐体、液晶等)に使われているが、上記と同様の理由により、成形品中に繊維が均一に分散しにくいため、良好な電磁波シールド特性が得られないという問題があった。
このような点から、より実用性のある新しい繊維含有樹脂成形品を得るために、成形品中の繊維の残存長をなるべく長く保ち、繊維の分散性をあげる事により、良好な表面状態を維持し、更なる機械物性や導電性の向上を可能とする繊維含有樹脂組成物の早急な開発が望まれていた。
特公平01−37513号公報 特開平06−298973号公報 特表平06−506267号公報 特公平5−83044号公報 特開昭61−241356号公報 特開平04−198224号公報 特開2000−007906号公報 特許第846072号公報 特許第2651057号公報 特開昭59−196334号公報 特許2732986号公報 特公昭63−37694号公報 特許2626012号公報 特開昭57−181852号公報 特開2003−192911号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、高い機械物性の維持や高い導電性を確保した成形品を得ることを可能とするために、金属皮膜の剥がれ、樹脂との混練不良、繊維の折損等による樹脂強化能や導電性の低下等を抑制し、樹脂の含浸性の良好な分散性に優れた熱可塑性樹脂を金属被覆繊維に含浸させて、導電性樹脂組成物として提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明の第1の発明は、金属被覆繊維(A)10〜90重量%と熱可塑性樹脂(B)90〜10重量%とを含む導電性樹脂組成物であって、
金属被覆繊維(A)が、
50〜94.9重量%の有機繊維(a)の表面に、
IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)5〜40重量%が被覆され、
さらにフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系樹脂およびベンゾトリアゾールからなる群より選択される1種以上の有機系防錆剤(c)0.1〜10重量%により防錆処理されているものであり、
金属被覆繊維(A)が熱可塑性樹脂(B)を含浸し、かつ長さ1m当たりに20〜80ピッチの縒りを有している導電性樹脂組成物である。
の発明は、導電性金属(b)が、有機繊維(a)の表面に無電メッキ法により被覆されたものである第1発明に記載の導電性樹脂組成物である。
の発明は、金属被覆繊維(A)の導電性が10-3Ωcm以下である第1または第2の発明に記載の導電性樹脂組成物である。
の発明は、熱可塑性樹脂(B)における200℃での溶融粘度が10000dPa・s以下かつ重量平均分子量が10000〜30000である第1〜第3の発明いずれか記載の導電性樹脂組成物である
の発明は、有機繊維(a)50〜94.9重量%の表面に、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)を5〜40重量%被覆し、更にフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系樹脂およびベンゾトリアゾールからなる群より選択される1種以上の有機系防錆剤(c)0.1〜10重量%で防錆処理して金属被覆繊維(A)を得、
次にこの金属被覆繊維(A)10〜90重量%に熱可塑性樹脂(B)90〜10重量%を含浸させた後、長さ1m当たりに20〜80ピッチの縒りを行った導電性樹脂組成物の製造方法である。
の発明は、第の発明に記載の導電性樹脂組成物の製造方法を用いて得られる導電性樹脂組成物である。
の発明は、第1〜第4及び第6の発明いずれか記載の導電性樹脂組成物と熱可塑性樹脂(C)を用いて得られる成形品である。

本発明の導電性樹脂組成物は、金属被覆繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とを含み、金属被覆繊維(A)が、有機繊維(a)の表面に、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)が被覆され、さらに有機系防錆剤(c)により防錆処理されているので、熱可塑性樹脂(B)を含浸しやすく、かつペレット加工が良好であることから、
(1)嵩高い充填材をコンパクトにまとめて比重を高くし単位体積あたりの充填材含有量を多くし、
(2)充填材のまわりを熱可塑性樹脂(B)で被覆することによって成形品の製造まで充填材を保護する役割を担い、
(3)定量供給性が良好であるので、機械物性や導電性が良好な成形品の提供が可能である。
(4)防錆処理により金属被覆繊維(A)における被覆強度が大きくなるので、優れた導電性を長期間安定に保つことができる。
また、熱可塑性樹脂(B)を含浸した金属被覆繊維(A)は縒りを有しているので、導電性樹脂組成物の形状を整え金属被覆繊維(A)の保護ができる。
本発明の導電性樹脂組成物は、金属被覆繊維(A)10〜90重量%、熱可塑性樹脂(B)90〜10重量%であり、金属被覆繊維(A)における有機繊維(a)が50〜94.9重量%、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)が5〜40重量%、有機系防錆剤(c)が0.1〜10重量%なので、良好な導電性樹脂組成物が得られる。
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性金属(b)が、有機繊維(a)の表面に無電界メッキ法により被覆されたものなので、有機繊維(a)と導電性金属(b)との密着性が向上できる。
また、有機系防錆剤(c)が、疎水性を有するアクリル系樹脂又はシリコーン系樹脂なので、金属被覆を防錆し長期間安定に導電性が維持できる。
また、金属被覆繊維(A)の導電性が10−3Ωcm以下なので、良好な導電性樹脂組成物が得られる。
また、熱可塑性樹脂(B)における200℃での溶融粘度が10000dPa・s以下かつ重量平均分子量が10000〜30000なので、有機繊維(a)に良好に含浸できる。
また、金属被覆繊維(A)の縒りが、長さ1m当たりに20〜80ピッチなので、加工上及び品質上、良好な導電性樹脂組成物が得られる。
本発明は、有機繊維(a)の表面に、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)を被覆し、更に有機系防錆剤(c)で防錆処理して金属被覆繊維(A)を得、次にこの金属被覆繊維(A)に熱可塑性樹脂(B)を含浸させた後、縒りを行ったことを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法なので、良好な導電性樹脂組成物が得られる。
本発明の成形品は、本発明の導電性樹脂組成物と熱可塑性樹脂(C)を用いて得られるので、高い導電性と共に機械物性も良好である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性樹脂組成物は、有機繊維(a)の表面に、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)が被覆され、更に有機系防錆剤(c)で防錆処理して得られる金属被覆繊維(A)に、熱可塑性樹脂(B)を含浸させ。縒りを行ったものである。
<有機繊維(a)>
有機繊維(a)としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ナイロン、アラミドなどの高分子材料を主成分とした合成繊維、木綿などの天然繊維、レーヨンなどのセルロース系繊維、これらの複合繊維などが挙げられる。このうちポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維などの合成繊維に金属被覆を設けたものは被覆強度が従来のものより格段に高いので好ましい。
更に本発明は、有機繊維(a)として高強度ナイロン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリカーボネート系繊維あるいはパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を用いたものを含む。これらの有機繊維は高重合体であり溶融温度が高く耐熱性に優れているので、これらを用いた導電性樹脂は高温環境下での使用に適する。なお、この他のエンジニアプラスチックからなる繊維を用いることも可能である。
<導電性金属(b)>
有機繊維(a)の表面に被覆される導電性金属(b)としては、IIIA族金属、遷移金属等の導電性金属が好ましい。例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄、クロム、錫、亜鉛、白金、オスミウム、パラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウムまたはこれらの合金の一種または二種以上からなる導電性金属を用いることができる。また、この金属被覆は異なる二種以上の金属を積層したものでも良い。
有機繊維(a)表面への被覆方法ないし手段としては、電解メッキや無電解(化学)メッキ、あるいは真空蒸着などがある。繊維表面との密着性を維持する点では、メッキ処理液が有機繊維の表面に隙間なく入り込んでアンカー効果を発揮し、有機繊維と被覆している金属との接着強度が向上し密着性が向上する無電解メッキの方が好ましい。尚、導電性金属を被覆する際に、予め繊維表面をアルカリ等によってエッチング処理し粗面化すると被覆されるメッキ金属がこの繊維体表面の粗面に入り込んでアンカー効果を発揮するので好ましい。
有機繊維(a)の表面に導電性金属(b)が被覆された繊維における導電性金属(b)の量は5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%が更に好ましい。被覆量が5重量%未満であると導電性が低下し、成形品の導電性や電磁波シールド性に期待が持てない傾向がある。また、40重量%を超えると有機繊維(a)と導電性金属(b)との粘弾性の相違により剥離しやすくなるため、成形品における特性は上記同様維持できなくなる傾向がある。
有機繊維(a)の表面に導電性金属(b)が被覆された繊維は、必要に応じて加熱処理を施しても良い。加熱処理の冷却過程で有機繊維(a)の組織が整えられ被覆強度が向上できる。例えば、加熱により繊維の分子配列が揃って結晶化し、被覆金属に密着した状態で繊維が収縮し、徐冷工程で被覆金属が有機繊維との一体性を保って収縮することにより被覆強度が向上する。また、このような加熱冷却処理によって被覆強度が向上すると共に非伸縮性を有するようになる。一般に有機繊維は結晶化温度以上に加熱されると結晶構造が変化するので熱収縮を生じることが多いが、以上のような加熱処理を施せば有機繊維の結晶構造が整えられるので、その後に加熱しても結晶構造が変化し難く、熱収縮をほとんど生じない。更に、加熱処理を施すことによって、より低い電気抵抗値を有するものを得ることができる。
加熱処理手段は、加熱炉、熱風炉などの他に赤外線による加熱でもよいし、メッキ槽内での加圧水蒸気による加熱処理でもよい。加熱処理雰囲気は空気中でも良いが、金属被覆の酸化による変色を防止するには、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で加熱処理することが好ましい。
<有機系防錆剤(c)>
次に、(a)の表面に(b)が被覆された上記繊維は、有機系防錆剤(c)により防錆処理されることにより、金属活性を抑制できる。防錆処理としては、防錆剤を溶媒または水に溶解や分散させて低粘度化して含浸させるウエット法と、加熱により低粘度化し含浸させるホットメルト法(ドライ法)等の方法がある。防錆処理によって、金属表面に吸着している有害物質を置換または可溶化して取り除いたり、金属表面上に吸着膜をつくって直接水や有害物質との接触を避けたりする。また、金属自体が触媒となって樹脂の酸化劣化の進行を早めるため、その触媒作用を抑えるための金属不活性剤の膜をつくって金属酸化を抑制し、金属被覆の被覆強度を永年的に格段に高めると共に金属剥離を防止し、更には樹脂との相溶性を向上させ、機械的物性の維持向上を可能とすることができる。
有機系防錆剤(c)としては、例えば、錆止め剤としては脂肪酸,脂肪族アミン,有機リン酸エステル,有機スルホン酸塩等、防食防止剤としては、窒素化合物(ベンゾトリアゾールなど),ジチオリン酸亜鉛等、金属不活性剤としては、シッフ型化合物等の低分子化合物が挙げられるが、熱可塑性樹脂(B)との相溶性を保つためには、パラフィン、ワックス、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、シリコーン等の高分子量の樹脂が好ましい。
金属被覆を防錆し、長期間安定に導電性を維持するにはフッ素系アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂等の疎水性を有する樹脂が最も好ましい。フッ素系アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂を使用する場合、低温で薄膜コーティング可能なウェット法で防錆処理することが好ましい。
アクリル系樹脂としては、例えば、成分として、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基性カルボン酸モノマーと、その他の共重合性モノマーとして、架橋性を与えるための官能基を有さない非架橋性モノマーや官能基を有する架橋性モノマー等からなるモノマー混合物から成る共重合樹脂が挙げられる。上記共重合樹脂は、反応溶剤や水中でアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の通常のラジカル重合開始剤を用いて70℃ないし150℃の温度で共重合せしめることにより得られる。
一塩基性カルボン酸モノマーの使用量は全モノマー量に対して0.1〜40重量%である。また、共重合性モノマーとしては、疎水性付与向上の点でペルフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用が最も好ましい。
上記共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系モノマー、ペルフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロブチル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロオクチル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロノニル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロデシル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロドデシル(メタ)アクリル酸エステル、ペルフルオロヘキサデシル(メタ)アクリル酸エステル等のペルフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。これらの一種もしくは2種以上使用でき、特に制限はない。
架橋性モノマーとしては(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2-メチルアリル、(メタ)アクリル酸1-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-ブテニル、(メタ)アクリル酸3-ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3-メチル-3-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-クロルアリル、(メタ)アクリル酸3-クロルアリル、(メタ)アクリル酸o-アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2-(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等のヒドロキシ(アルコキシ)含有(メタ)アクリル酸エステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパン トリアクリル酸等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシリル基含有モノマー類;ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル等のジビニル類;イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のジアリル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;無水イタコン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;等が挙げられる。これらの一種もしくは2種以上使用でき、特に制限はない。
シリコーン系樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ハイドロジェンメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、エポキシ・ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルコール変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、高級脂肪酸変性ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサン、アルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル・アラルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、クロロアルキル変性ポリシロキサン、(メタ)アクリロイル変性ポリシロキサンなどが挙げられる。これらの一種もしくは2種以上使用可能であるが、特に限定されない。
具体的には、ジメチルポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF451、XS69−A1753、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH200、BY16−140など、メチルハイドロジェンポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF484、TSF483、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH1107、BY16−805など、両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のYF3800、YF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBY16−801、BY16−817、BY16−873、PRX413など、両末端ハイドロジェンジメチルポリシロキサンとしてチッソ社製のサイラプレーンFM1111、FM1121、FM1125、東芝シリコーン社製のXF40−A2606、XF40−A0153など、
メチルフェニルポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF431、TSF433、TSF434、TSF437、TSF4300、YF3804、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH510、SH550、SH710など、アルキル変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF4421、TSF4422、TSF4420、XF42−A3160、XF42−A3161、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH203、SH230、SF8416、BX16−811F、BY16−846など、アミノ変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF4700、TSF4701、TSF4702、TSF4703、TSF4704、TSF4705、TSF4706、XF42−A2645、XF42−A2646、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8417、BY16−828、BY16−849、BY16−850、BX16−859、BX16−860、BX16−853、BX16−853B、チッソ社製のサイラプレーンFM3311、FM3321、FM3325などが挙げられる。
カルボキシル変性ポリシロキサンとして、東芝シリコーン社製のTSF4700、TSF4771、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8418など、エポキシ変性ポリシロキサンとして、東芝シリコーン社製のTSF4731、YF3965、XF42−A4439、TSF4730、TSF4732、XF42−A4438、XF42−A5041、TSL9906、TSL9946、TSL9986、XF42−A2262、XF42−A2263、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8411、SF8413、BY16−839、BX16−861、BX16−862、SF8421EG、BY16−845、BX16−863、BX16−864、BX16−865、BX16−866、BY16−855、BY16−855B、チッソ社製のサイラプレーンFM0511、FM0521、FM0525、FM5511、FM5521、FM5525など、エポキシ・ポリエーテル変性ポリシロキサンとして東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8421など、
アルコール変性ポリシロキサンとして、東芝シリコーン社製のTSF4750、TSF4751、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8428、SH3771、SH3746、BY11−954、BY16−036、BY16−027、BY16−038、BX16−018、BY16−848、BX16−848B、BX16−001、BX16−002、BX16−003、BX16−004、BY16−005、BX16−009、BX16−010、BX16−011、BX16−012、SF8427、チッソ社製のサイラプレーンFM4411、FM4421、FM4425、FM0411、FM0421、FM0425などが挙げられる。
ポリエーテル変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF4440、TSF4425、TSF4426、TSF4452、TSF4460、TSF4441、TSF4453、TSF4480、TSF4450、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH3749、BX16−033、SH3748、BX16−034、BX16−035、SF8400、SF8410、SF8419など、高級脂肪酸変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF410、TSF411など、高級アルコールエステル変性ポリシロキサンとして東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8422など、ビニル基含有ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のXF40−A1987、TSL9646、TSL9686、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBX16−867、BX16−868、チッソ社製のサイラプレーンFM2231、FM2241、FM2242、FP2231、FP2241、FP2242など、
アルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSF4450など、アルキル・アラルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサンとして東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSF8419など、フッ素変性ポリシロキサンとして、東芝シリコーン社製のFQF501、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のFS1265など、メルカプト変性ポリシロキサンとして東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBX16−838A、BX16−838など、クロロアルキル変性ポリシロキサンとして東芝シリコーン社製のTSL9236、TSL9276、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBX16−835など、(メタ)アクリロイル変性ポリシロキサンとしてチッソ社製のサイラプレーンFM0711、FM0721、FM0725などが挙げられる。
これら有機ポリシロキサン化合物は単独又は2種類以上の混合物として用いても良いし、シロキサン結合を含有しない高分子化合物との混合物として用いてもかまわない。シロキサン結合を含有しない高分子化合物の例として、ビニルモノマーの単一重合体または2成分以上の共重合体が挙げられる。
更に、これら疎水性のあるアクリル系樹脂やシリコーン系樹脂には、金属被覆面への密着性向上とブロッキング防止のために、補助的にイソシアネート化合物、エポキシ化合物あるいはアジリジニル化合物等の架橋剤を使用することができる。これらは、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂量に対して0.01〜10重量%で使用される。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、およびこれらのトリメチロールプロパンなどのポリオールのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、イソシアヌレート環を含むイソホロンジイソシアネートの三量体など、2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、および1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げられる。
アジリジン系化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどを挙げることができる。
金属被覆繊維(A)における有機系防錆剤(c)の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5.0重量%がより好ましい。処理量が0.1重量%未満であると、金属被覆繊維の金属酸化を抑制することが不十分となり、更に熱可塑性樹脂(B)との相溶性が低下するため、成形品における金属被覆繊維(A)の分散性が低下し、導電性も低下する傾向がある。10重量%を超えると、表面処理に関与しない余剰防錆剤が、導電性組成物の加工時や成形品の成形時にブリードしたり、機械的物性を低下する可能性がある。
<金属被覆繊維(A)>
有機繊維(a)の表面に導電性金属(b)が被覆され、さらに有機系防錆剤(c)により防錆処理することにより金属被覆繊維(A)が得られる。
上記処理により、金属被覆繊維(A)は規格(JIS L 0849)に基づく被覆の剥離強度試験において4等級以上の剥離強度(単に4等級以上の強度と云う)を有することができる。上記規格試験は繊維体や布の染色堅牢度を示す試験であり、汚染度の高い順(付着性の低い順)に1等級から5等級までの基準が定められている。5等級の汚染度が最も低く、繊維への金属密着性が最も高いことを示す。
また必要に応じて、以上の工程を経て製造した金属被覆繊維を電気炉に装入し、有機繊維の結晶化温度以上および融解温度未満の温度条件で加熱し処理してもよい。
金属被覆繊維(A)における各構成成分の配合量は、有機繊維(a)50〜94.9重量%、導電性金属(b)5〜40重量%、有機系防錆剤(c)0.1〜10重量%が好ましい。
金属被覆繊維(A)は、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、テルペン・フェノールなどのフェノール系共重合体、液晶性樹脂などの集束剤で処理されていてもよい。
金属被覆繊維(A)の導電性は10−3Ωcm以下が望ましい。ここで、導電性とは試料(150デニール)の中央部10cm間の電気抵抗を測定し、試料1cm、1デニール当りの抵抗値(Ω/cm・デニール)を求めたものである。
金属被覆繊維(A)の繊維径は4〜20μmが好ましい。4μm未満であると嵩高になり、また、溶融樹脂中での剪断力が弱くなる傾向があり、20μmを超えると成形品の表面が平滑でなくなる傾向がある。
<熱可塑性樹脂(B)>
金属被覆繊維(A)に含浸される熱可塑性樹脂(B)は、樹脂種を特に限定しない。
また、熱可塑性樹脂(B)を含浸した金属被覆繊維(A)ストランドは、次いでペレット成形される。ペレット成形の工程は、充填材としての導電性樹脂組成物の定量供給特性には必要不可欠なものである。よって、熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が10000未満では、ペレット成形の衝撃に耐えられずにバラバラになりペレット形状が保持出来ない。またMwが30000を超えると熱可塑性樹脂(B)の含浸性が不十分となり、成形した場合に分散性が低下し、それに伴って、導電性が低下する可能性がある。
尚、本発明におけるMwは、高温GPCアライアンスシステム(Waters製)にて測定した値である。
更に、熱可塑性樹脂(B)の200℃での溶融粘度が10000dPa・s以下であることが望ましい。溶融粘度が10000dPa・sを超えると、金属被覆繊維(A)に対して良好な含浸が得られず、ストランド表面に毛羽立ちの発生や、成形品の分散性不良を起こす可能性があるためである。
尚、本発明における溶融粘度とは、JIS K7199に準拠して、試験温度200℃にて、キャピラリーフローテスト試験装置キャピログラフ1D(東洋精機社製)で測定されたものである。
<含浸(溶融引き抜き)工程>
金属被覆繊維(A)への熱可塑性樹脂(B)の含浸方法としては、加熱により低粘度化した熱可塑性樹脂(B)を金属被覆繊維(A)に含浸させた後、その繊維を引き抜いてストランド状に製造する公知の方法を用いることができる。含浸温度は、金属被覆繊維(A)の延伸性が失われない程度の温度が好ましい。
含浸工程に用いられる金属被覆繊維(A)の束は、好ましくは3000〜100000本であり、5000〜25000本が特に好ましい。この束をひとつの単位として熱可塑性樹脂(B)を含浸させ、ストランド状に製造することが好ましい。
この含浸工程により、金属被覆繊維(A)束を構成する繊維と繊維の間の空間は熱可塑性樹脂(B)で満たされるとともに、金属被覆繊維(A)は確実に一体化して離脱することなく保持され、その後の取り扱い性が良好になり作業性が向上する。
金属被覆繊維(A)は含浸前に開繊させることが好ましい。開繊により樹脂の含浸が短時間にスムーズに行われ、成形条件が多少変化しても高い含浸性が保持され、繊維を均一に分散かつ各繊維を囲むように樹脂が含浸するため繊維間に存在する空間が小さくなり、その数も減少し、良好な含浸状態が得られる。
また、金属被覆繊維(A)は無撚りの方が開繊処理しやすいため、金属被覆繊維(A)に熱可塑性樹脂(B)が含浸されやすくなり好ましいが、撚りがかかっているものを用いることも出来る。
<縒り工程>
また、金属被覆繊維(A)は、熱可塑性樹脂(B)を含浸させた溶融引き抜き工程後に、含浸装置のダイスの出口等で縒りを行うことが必要である。ダイスの中でほぐれたり短く切れてしまったりした繊維を巻き込んで撚ることにより、これらが原因で生じるオリフィスの目詰まりを防ぐとともに、含浸された樹脂が繊維の束の外側に浸み出して束を被覆することによりストランドの形状が整い、金属被覆繊維(A)を保護する効果がある。また撚る事により、ペレット長よりも5〜10%繊維を長く維持する事が可能であり、成形樹脂にこの導電性樹脂組成物を配合して成形品にした場合、撚りの無い導電性樹脂組成物を用いた場合に比べて、機械物性や導電性を約20%以上向上させることが可能である。
撚り数は、長さ1m当たりに20〜80ピッチが好ましい。20ピッチ未満では、ダイの中でほぐれたり短く切れてしまった繊維がペレット表層に毛羽立ちとして現れたり、オリフィスでの目詰まりを引き起こして、加工上または品質上好ましくないだけでなく、成形品中での繊維長の維持が困難になり、強度や導電性等において期待した効果が得られ難い傾向がある。80ピッチを超えると、繊維同士の絡み合いが大きくなって成形時に良好に分散しなかったり、金型ゲートで繊維詰まりを発生させる等、成形加工上好ましくない傾向がある。
<導電性樹脂組成物>
熱可塑性樹脂組成物(B)が含浸された金属被覆繊維(A)ストランドは、その後、機械的衝撃処理によりカットされペレット成形されて、本発明の導電性樹脂組成物が得られる。尚、本発明でいう「ペレット」とは、直径又は一辺が2mm〜5mmくらいの小さい球形、円柱形又は角柱等に造粒した成形用材料をいう。
本発明の導電性樹脂組成物とはマスターバッチのことである。マスターバッチとは、充填材である金属被覆繊維(A)を高濃度に含有し、成形品の成形時に成形樹脂(未着色の熱可塑性樹脂)である熱可塑性樹脂(C)で充填材含有率を所望の濃度に希釈されて成形される熱可塑性樹脂組成物のことである。
マスターバッチにおける金属被覆繊維(A)の割合は10〜90重量%が望ましい。これらの範囲を超えると、金属被覆繊維(A)に含浸されるための熱可塑性樹脂(B)が充分量ではないため、金属被覆繊維(A)に金属剥離が生じたり、繊維が一束にまとまらず、導電性樹脂組成物が成形しにくい傾向がある。また、これらの範囲未満では含浸に用いても、その量に応じた効果が期待できないばかりか、相対的にマスターバッチにおける充填材である金属被覆繊維(A)の量が減少し、成形品の物性強化や導電性の効果が低減する場合がある。
成形品における、充填材としての金属被覆繊維(A)の機械的損傷を抑えるため、マスターバッチと熱可塑性樹脂(C)とは予め溶融混練せず、成形品の加工時に直接射出成形機や押出成形機にそれぞれ投入され、機内で初めて溶融混合するという成形工程を取る方法が望ましい。また、成形機内において、熱可塑性樹脂(C)中に金属被覆繊維(A)が速やかにかつ均一に分散されることが必要とされるため、充填材としての金属被覆繊維(A)束に含浸されている熱可塑性樹脂(B)の融点又は軟化点は熱可塑性樹脂(C)の融点又は軟化点以下であることが好ましい。
<熱可塑性樹脂(C)>
本発明の成形品において用いられる熱可塑性樹脂(C)は、熱可塑性樹脂(B)と相溶性のあるものが用いられる。例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン9Tなど)やこれらの共重合ポリアミド(液晶性ポリアミドを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)やこれらの共重合ポリエステル(液晶性ポリエステルを含む)、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタ−ルおよびこれらを組み合わせたポリマーアロイなど、ほとんどすべての熱可塑性樹脂を用いることができる。それらの中で好ましいものとしては、エンジニアリングプラスチックとして用いられている、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニテンサルファイド、液晶ポリエステル等、主骨格に芳香環を含む樹脂である。またこれらはポリオレフィン等の脂肪族系樹脂にも使用可能である。
また、特に耐衝撃性改良の必要性に応じて、オレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して、所望の特性をさらに付与した樹脂も使用することもできる。更に、成形性、耐熱性、低吸水性などの必要特性に応じて、これらの共重合体、および2種類以上混合した樹脂も本発明で使用できる。また、更に耐衝撃性向上などのために、上記樹脂にエラストマー、もしくはゴム成分を添加した樹脂や、樹脂を混合するときの相溶性制御などのために末端基の変性、封止した樹脂も、本発明に含まれる。
<成形品>
成形品における熱可塑性樹脂(C)の配合割合は30〜85重量%、特に60〜80重量%が好ましい。30重量%未満では樹脂の流動性が悪くなって成形不良になり、85重量%を超えると成形品の機械特性が得にくい傾向がある。
また、成形品の体積固有抵抗値は、10Ωcm以下であることが望ましい。10Ωcmを超えると電子波シールド効果がほとんど期待できないからである。
尚、本発明における体積固有抵抗値とは、以下の特定方法で得られた値である。
幅50mm×長さ75mm×厚さ3mmの試験片を、絶乾状態(水分率0.1%以下)にて、2面ある長さ×厚さ面に導電性ペーストを塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥させてから、その両面を電極に圧着し、電極間の電気抵抗値をホイーストンブリッジType2755(横河電気社製)にて測定する。一つのサンプルに対して、流れ方向、流れと直角方向の二方向を測定してそれぞれ平均値を求め、体積固有電気抵抗値とした(単位はΩ・cm)。
体積抵抗率の算出方法δ=R・S/L(但し、δ:体積抵抗率、R:電気抵抗測定値、S:試験片の断面積、L:電極間の長さを表す。)
本発明の成形品としては導電性繊維、導電性塗膜、導電性フィルム、導電性ネット、導電性パイプ、導電性筺体、あるいは他の成形体や積層樹脂、樹脂塊など種々の形状のものが挙げられる。また、本発明の成形品は織布または不織布などの布地材料や編物材料、電磁波シールド材、無塵服や手袋、靴、カバー、作業衣など静電防止材料、あるいは電極や電線の代替材料の原料として用いることができる。
また、薄肉成形品における成形性、力学的特性(特に剛性)が求められる電子・電気機器用部材などが挙げられる。本発明の成形品は、高い剛性、軽量化、電磁波シールド性などが達成できるため、携帯用の電子・電気機器のハウジングなどの用途において有効である。より具体的には、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携帯用電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラジオカセット再生機などのハウジングなどに好んで使用される。
<その他の成分>
本発明の導電性樹脂組成物または成形品の製造の際、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、変色防止剤、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、結晶核剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、制振剤、防臭剤、スリップ剤、摺動性改質剤、導電性付与剤、帯電防止剤、剛性付与剤、衝撃改良剤等の添加剤等の添加剤を配合しても構わない。
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。例中、部とは重量部を、%とは重量%を表す。
(金属被覆繊維の製造例)
表1に示す有機繊維(150デニール)、表2に示す有機系防錆剤を用い、以下の処理工程を経て金属被覆繊維を製造した。
(1)脱脂処理:脱脂液(エースクリーンA−220:奥野製薬工業社製品)の5%溶液を55℃でメッキ槽に5分間循環させた後、イオン交換水を通じて十分に洗浄した。
(2)アルカリ処理:次に、20%水酸化ナトリウム溶液を70℃でメッキ槽に20分間循環させ、さらにイオン交換水を通じて十分に洗浄した後に5%濃塩酸溶液を室温でメッキ槽に2分間循環させた。
(3)活性化処理:次に、濃塩酸溶液と塩化パラジウム混合溶液(キャタリストC:輿野製薬工業社製品)をメッキ槽に室温で3分間循環させた後にイオン交換水を通じて十分に洗浄した。さらに10%硫酸溶液をメッキ槽に45℃で3分間循環させて活性化した。
(4)金属による被覆処理:以上の前処理によって有機繊維の表面に触媒を付着させた後に、IIIA族金属や遷移金属等の各メッキ液に有機繊維を浸漬し、無電解メッキによって下地の金属被覆を形成した。
(5)防錆処理:防錆剤をMEK(メチルエチルケトン)に溶解させ防錆剤ワニスを10%濃度に調製した。これに上記繊維を浸漬し乾燥後に、160℃、6分間の条件で加熱半硬化させることによって、防錆剤量が5%の金属被覆繊維を作製した。
(実施例1)
製造例において、アラミド繊維100部に対し銅25部の割合で銅を被覆した銅20%被覆アラミド繊維を得、これをフッ素系アクリル樹脂と硬化剤TDI(トルエンジイソシアネート)を溶解した防錆剤MEK溶液に浸漬させて金属被覆繊維を得た。銅20%被覆アラミド繊維100部に対する防錆剤付着量は5部であった。
得られた金属被覆繊維3束(繊維径9μm、繊維束15000本)65部を共重合ポリエステル35部に含浸し、縒りを行ったストランドをペレタイザーにてカットして長さ6mmで縒り数40ピッチ/1mのペレット状のマスターバッチ(導電性樹脂組成物)を得た。マスターバッチは含浸性及びコーティング性ともに良好であった。
(実施例2)
製造例において、防錆剤としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(以下、H−シロキサンという)を用いた以外は実施例1と同様にして銅20%被覆アラミド繊維を得た。銅20%被覆アラミド繊維100部に対する防錆剤付着量は5部であった。
得られた金属被覆繊維を実施例1と同様にして、繊維濃度65%の長さ6mmで縒り数35ピッチのペレット状のマスターバッチを得た。マスターバッチは含浸性及びコーティング性とも良好であった。
(比較例1)
製造例において、銅20%被覆アラミド繊維に防錆処理を行わない以外は実施例1と同様にし、長さ6mmで撚り数10ピッチのマスターバッチを得た。マスターバッチは含浸性及びコーティング性とも良好であった。
(実施例3)
製造例において、防錆剤としてベンゾトリアゾール(低分子量防錆剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属被覆繊維を得た。得られた金属被覆繊維を、実施例1と同様にして、繊維濃度65%で長さ6mmで縒り数25ピッチのペレット状のマスターバッチを得た。このとき、若干脈動とブロッキングが起きたもののカッティングしてマスターバッチを作成できた。
(比較例2)
実施例1の金属被覆繊維を、撚りを入れない以外は実施例1と同様にして長さ6mmで縒り数0ピッチのマスターバッチを作製した。このとき、若干脈動はしたものの、含浸性及びコーティング性とも良好なマスターバッチを得る事ができた。
(比較例3)
実施例1の金属被覆繊維を6mm長にカットした短繊維65%と共重合ポリエステル35%とを配合し、ヘンシェルミキサ−150L(三井鉱山社製)にて混合攪拌した後、スクリュー径40mm、L/D値42の二軸同方向回転型スクリュー押出機にて溶融混練し、ストランドをペレタイザーにてカットしようとしたが、ストランドの脈流やケバ立ちが激しく、マスターバッチを得ることができなかった。そのため、その後の実験は中止した。
(実施例4〜7)
製造例において、アラミド繊維100部に対し、実施例1の銅の代わりにニッケル、銀、亜鉛、銅/ニッケル合金(重量比=1/1)を被覆した金属20%被覆繊維を得、実施例1と同様に防錆剤MEK溶液に含浸させて金属被覆繊維を得た。
これを用いて実施例1と同様にして繊維濃度65%で長さ6mm、縒り30ピッチのペレット状のマスターバッチを得た。このとき、含浸性及びコーティング性とも良好なマスターバッチを得る事ができた。
(比較例4〜7)
金属20%被覆繊維に防錆処理をしない以外は、実施例4〜7と同様にして、長さ6mmカット、縒り15ピッチのマスターバッチを得た。このとき、若干脈動が起き、若干の毛羽立ちが認められたが、カッティングには問題なく、マスターバッチを作成できた。
(実施例8〜12)
製造例において、アラミド繊維の代わりにパラ系アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を用いて銅20%被覆繊維を得、実施例1と同様に防錆剤MEK溶液に含浸させて金属被覆繊維を得た。
これを用いて実施例1と同様にして繊維濃度65%で長さ6mm、縒り30ピッチのペレット状のマスターバッチを得た。このとき、含浸性及びコーティング性とも良好なマスターバッチを得る事ができた。
(比較例8〜12)
銅20%被覆繊維に防錆処理をしない以外は、実施例8〜12と同様にして、長さ6mmカット、縒り15ピッチのマスターバッチを得た。このとき若干脈動が起き、若干の毛羽立ちが認められたが、カッティングには問題なくマスターバッチを作成できた。
(実施例13〜14)
実施例1で使用した共重合ポリエステル樹脂の代わりに、ポリカーボネート、ポリアミド40%に変更した以外は実施例1と同様にして、金属被覆繊維を得た。
得られた金属被覆繊維を実施例1と同様にして、繊維濃度60%で長さ6mm、ピッチ30のペレット状のマスターバッチを得た。このとき、含浸性及びコーティング性とも良好なマスターバッチを得る事ができた。
(比較例13〜14)
実施例13〜14の銅20%被覆繊維に防錆処理をしない以外は同様にして共重合ポリエステルを含浸させてマスターバッチを製造しようとしたが、発泡やストランドの脈動が激しく、マスターバッチを作製することができなかった。そのため、その後の実験は中止した。
実施例1〜14及び比較例1〜14の有機繊維について表1に示した。
実施例1〜14及び比較例1〜14の有機系防錆剤について表2に示した。
実施例1〜14及び比較例1〜14の熱可塑性樹脂(B)について表3に示した。
実施例1〜14及び比較例1〜14で得られた金属被覆繊維に対し(1)〜(3)の評価した結果を表4に示した。
(1)密着強度(剥離強度)
繊維体や布の染色堅ろう度を示す規格試験(JIS L 0849)に準じた剥離強度試験に基づいて、試験試料(金属被覆有機繊維)の束に白色布を重ね、200gの荷重を加え、毎分30回の往復速度で100回往復摩擦を行い、白色布に付着した汚染度に基づき、汚染度の高い順(付着性の低い順)に1等級から5等級までの基準に従って剥離強度(密着強度)を判定した。
(2)導電性
150デニールの試験試料(金属被覆有機繊維)の中央部10cm間の電気抵抗を測定し、試料1cm、1デニール当たりの抵抗値(Ω/cm・デニール)を求めた。(1)の摩擦前(初期電気抵抗)と摩擦後(摩擦100回後)の電気抵抗について求めた。
(3)収縮率(伸縮率)
金属被覆有機繊維に、200℃の温度下で1.5gの荷重を加えたときの伸縮長さを収縮率として求めた。一般的に金属表面が酸化されると収縮しやすくなる。
実施例1〜14及び比較例1〜14の導電性樹脂組成物について、配合内容と製造方法を表5に示した。
実施例1〜14及び比較例1〜14の導電性樹脂組成物(マスターバッチ)に対し(4)及び(5)の評価を行い、表7に示した。また、導電性樹脂組成物(マスターバッチ)と表6に示す熱可塑性樹脂(C)を使用して成形品を製造し、(6)〜(10)の評価を行い結果を表7及び8に示した。
[生産性評価]
(4)導電性樹脂組成物(マスターバッチ)製造時の生産性評価
○:含浸も十分で、脈流やストランドの毛羽立ちを生じることなく、順調に生産可能。
△:若干の脈流や毛羽立ちは生じるが、含浸やカッティングは良好で生産は可能。
×:含浸も不十分で、ストランドに毛羽立ちやブロッキングが発生し、生産不可能。
(5)縒り数
ポリエステル系樹脂組成物(マスターバッチ)の製造時の撚り入れ数を、1m当たりのピッチ数で評価。20ピッチ以上であると、ダイス出口のオリフィスの目詰まりやストランドの毛羽立ちがほとんど無い。
[シート成形品の評価]
導電性樹脂組成物(マスターバッチ)を、充填材濃度10%になるように、表6に示す熱可塑性樹脂(C)としてポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレート(PET)をそれぞれ混合した。
これらを、各々Tダイフィルム成形機(東洋精機製)を用いて、成形温度290℃、回転数60rpmで溶融押出し、膜厚100μmのシート状の成形品を得、シート状態を以下の基準で評価し、結果を表7に示した。
(6)シート成形品評価(膜割れ、ブツ、突起及び平滑性の有無等を目視評価)
○ :非常に良好であり、実用上問題なし。
△ :若干の表面あれが認められ、平滑性に難はあるが、実用上は問題なし。
× :加工性に問題があるだけでなく、分散不良により、膜割れ、剥離、ブツ、ピンホールのいずれかに問題があり、不良。
− :試験を実施せず。
[射出成形品の評価]
シート成形品の評価と同様に、充填材濃度10%になるように、表6に示す熱可塑性樹脂(C)をそれぞれ混合し、射出成形機IS100F1(東芝機械社製)にて、背圧0kg/cm、成形温度290℃(熱可塑性樹脂(C)がポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の場合)、240℃(熱可塑性樹脂(C)がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)の場合)の条件で射出成形し、プレート成形品を得た。
得られたプレートについて、(7)射出成形品評価(表層状態)、(8)射出成形品評価(機械物性保持率)、(9)導電性(体積抵抗値)及び(10)電磁波シールド性(透過減衰率)を以下の基準で評価し、(7)及び(8)については表7、(9)及び(10)については表8に示した。
(7)成形プレートの表層状態評価(フラッシュ、シルバー、ひび割れ、ブツ、突起及び平滑性の有無等を目視評価)
○ :シルバーやフラッシュの発生もなく、外観や平滑性も非常に良好。
△ :シルバーやフラッシュの発生はないが、外観あるいは平滑性のいずれかに難あり。
× :フラッシュ、シルバー、ひび割れ、ブツ、突起及び平滑性のいずれかに問題有り。不良。
− :試験を実施せず。
(8)成形プレートの機械物性保持率評価
各プレートの引張強度(ASTM D638)、曲げ弾性率(ASTM D790)、アイゾット衝撃度(ASTM D256)の3つの機械的物性の試験値をそれぞれ求め、熱可塑性樹脂(C)のみの組成から成るプレートの値を100%として、それぞれのプレートの物性の保持率を求めた。
○ :引張強度の保持率:150%以上、曲げ弾性率の保持率:200%以上及びアイゾット衝撃値の保持率(PCの場合:50%以上、PPE、PPSの場合:60%以上、ABSの場合:80%以上)を供に満足する場合。
△ :1試験値の保持率が上記条件を満たさない場合。
× :2試験値以上の保持率が上記条件を満たさない場合。
− :試験を実施せず。
(9)体積抵抗値の評価
射出成形した各プレートの幅50mm×長さ75mm×厚さ3mmの試験片を、絶乾状態(水分率0.1%以下)で測定に供した。まず、2面ある長さ×厚さ面に導電性ペーストを塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥させてから、その両面を電極に圧着し、電極間の電気抵抗値をホイーストンブリッジType2755(横河電気社製)にて測定する。一つのサンプルに対して、流れ方向、流れと直角方向の二方向を測定し、それぞれ平均値を求め、体積固有電気抵抗値とした(単位はΩ・cm)。10Ω・cm以下が導電性は良好である目安となる。
体積抵抗率の算出方法δ=R・S/L(但し、δ:体積抵抗率、R:電気抵抗測定値、S:試験片の断面積、L:電極間の長さを表す。)
(10)電磁波シールド性(透過減衰率)
射出成形した各プレートの厚さ3mmの平板を、スペクトロアナライザFSEA30(ロードシュワルツ社製)のシールドボックス内で10KHz〜3GHzの電磁波を照射した時に平板で減衰する減衰量測定した(アドバンテスト法)。減衰量測定値は、デシベル(単位dB)で表記し、表8にはマイクロ波領域の500MHzの数値を示した。一般的には30dB(約97%カット)以上であると電磁波シールド性があると言われており、40dB(99%カット)以上あれば、問題ないとされている。
本発明の導電性樹脂組成物は、高い導電性を有しているため、少量添加で帯電/放電防止性を付与することができ、それらの特性が必要とされる部材、例えばICトレー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適応にも有用である。

Claims (7)

  1. 金属被覆繊維(A)10〜90重量%と熱可塑性樹脂(B)90〜10重量%とを含む導電性樹脂組成物であって、
    金属被覆繊維(A)が、
    50〜94.9重量%の有機繊維(a)の表面に、
    IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)5〜40重量%が被覆され、
    さらにフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系樹脂およびベンゾトリアゾールからなる群より選択される1種以上の有機系防錆剤(c)0.1〜10重量%により防錆処理されているものであり、
    金属被覆繊維(A)が熱可塑性樹脂(B)を含浸し、かつ長さ1m当たりに20〜80ピッチの縒りを有している導電性樹脂組成物。
  2. 導電性金属(b)が、有機繊維(a)の表面に無電メッキ法により被覆されたものである請求項1載の導電性樹脂組成物。
  3. 金属被覆繊維(A)の導電性が10-3Ωcm以下である請求項1または2記載の導電性樹脂組成物
  4. 熱可塑性樹脂(B)における200℃での溶融粘度が10000dPa・s以下かつ重量平均分子量が10000〜30000である請求項1〜3いずれか記載の導電性樹脂組成物。
  5. 有機繊維(a)50〜94.9重量%の表面に、IIIA族金属、遷移金属から選ばれる1種以上の導電性金属(b)を5〜40重量%被覆し、更にフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系樹脂およびベンゾトリアゾールからなる群より選択される1種以上の有機系防錆剤(c)0.1〜10重量%で防錆処理して金属被覆繊維(A)を得、
    次にこの金属被覆繊維(A)10〜90重量%に熱可塑性樹脂(B)90〜10重量%を含浸させた後、長さ1m当たりに20〜80ピッチの縒りを行った導電性樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項に記載の導電性樹脂組成物の製造方法を用いて得られる導電性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜4及びいずれか記載の導電性樹脂組成物と熱可塑性樹脂(C)を用いて得られる成形品。
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