JP4406701B2 - イオン複合型粘土組成物およびその固化物 - Google Patents
イオン複合型粘土組成物およびその固化物 Download PDFInfo
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Description
これらの粘土材料は、繰り返し使用することを目的としているため、造形物作成後もその塑性は変化しないので、造形物の強度が劣り、また形状保持性が悪いといった問題点があった。一方、造形後に固化する材料の代表例としては石膏が知られているが、この石膏材料は強度と形状保持性に優れるものの、硬化後は極めて堅い材料となるため、硬化した後は元の粘土組成を再現することができず、その加工性・取り扱い性に劣り、また使用後に環境を汚染するといった難点があった。
この出願によれば、以下の発明が提供される。
(1)カチオン交換型リグニン誘導体塩とアニオン交換型粘土鉱物を含有することを特徴とするイオン複合型粘土組成物。
(2)カチオン交換型リグニン誘導体塩がリグニンの無機酸塩であることを特徴とする上記(1)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(3)リグニンの無機酸塩がリグニンスルホン酸塩であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(4)アニオン交換型粘土鉱物がアロフェンまたはイモゴライトであることを特徴とする上記(1)〜(3)何れかに記載のイオン交換型粘土組成物。
(5)アニオン交換型リグニン誘導体塩とカチオン交換型粘土鉱物を含有することを特徴とするイオン複合型粘土組成物。
(6)アニオン交換型リグニン誘導体塩がリグニンのオニウム塩であることを特徴とする上記(5)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(7)リグニンのオニウム塩がリグニンの第4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記(5)又は(6)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(8)カチオン交換型粘土鉱物がモンモリロナイト、バーミキュライト及びベントナイトから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(5)〜(7)何れかに記載のイオン複合型粘土組成物。
(9)溶媒を更に含有することを特徴とする上記(1)〜(8)何れかに記載のイオン複合型粘土組成物。
(10)溶媒が親水性溶媒であることを特徴とする上記(9)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(11)親水性溶媒が、水及び/又はアルコールであることを特徴とする上記(10)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(12)アルコールがエチレングリコール、エチレングリコールオリゴマー、ポリエチレングリコールおよびグリセリンから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(11)に記載のイオン複合型粘土組成物。
(13)上記(1)〜(12)何れかに記載のイオン複合型粘土組成物を固化することにより得られるイオン複合型粘土固化物。
カチオン交換型リグニン誘導体塩とは、アニオン性解離基を有するリグニン誘導体を意味し、具体的には、リグニンの無機酸及び有機酸が包含される。無機酸塩としては、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が、また有機酸としてはカルボン酸が挙げられるが、無機酸塩好ましくはスルホン酸の金属塩更に好ましくはスルホン酸のアルカリ金属塩が使用される。
使用する溶媒としては、特に制限はないが、人への安全性及び環境への汚染負荷のない溶媒を用いることが望ましく、エチレングリコール、エチレングリコールオリゴマー、ポリエチレングリコール、グリセリン、水等の親水性溶媒を用いることが好ましい。
[化1]
Lig−SO3 -M+ + Inorg+X- →Lig−SO3 -Inorg++ M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアルカリ金属などの金属原子を、Inorg+は粘土鉱物残基を、X-はハロゲン、リン酸、硫酸、ケイ酸等アニオンを表す。)
アニオン交換型リグニン誘導体塩とは、カチオン性解離基を有するリグニン誘導体を意味し、具体的にはリグニンのオニウム塩が好ましく用いられる。オニウム塩としては、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられるが、第4級アンモニウム塩が好ましく使用される。第4級アンモニウム塩としては、たとえばテトラアルキルアンモニウム塩、トリメチルアリールアンモニウム塩が挙げられる。
[化2]
Lig−N+(CH3)3X- + Inorg-M+
→ Lig−N+(CH3)3Inorg- + M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアルカリ金属などの金属原子を、Inorg-は粘土鉱物残基を、X-はハロゲン、硫酸、リン酸、ケイ酸、アルミン酸等のアニオンを表す。)
[化3]
(Lig−SO3 -M+ + Inorg-M+) +Inorg+X-
→ (Lig−SO3 -Inorg+ + Inorg−Inorg+)+ M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアルカリ金属などの金属原子を、Inorg-は粘土鉱物残基を、X-はハロゲン、リン酸、硫酸、ケイ酸等のアニオンを表す。)
[化4]
(Lig−N+(CH3)3X- + Inorg+X-)+ Inorg-M+
→ (Lig−N+(CH3)3Inorg- + Inorg+Inorg-)+ M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアルカリ金属などの金属原子を、Inorg-は粘土鉱物残基を、X-はハロゲン、リン酸、硫酸、ケイ酸等のアニオンを表す。)
[カチオン交換型リグニン誘導体塩とアニオン交換型粘土鉱物を含有するイオン複合型粘土組成物の調製]
部分脱スルホン型リグニンスルホン酸ナトリウム塩(弱酸性、5%水溶でpH 3.5)10部をポリエチレングリコール400(PEG400)20部に溶解し、溶液とした。この溶液5部とアロフェン 5部を混合して、イオン複合型粘土組成物を調製した。
[イオン複合型粘土固化物の調製]
上記で得たイオン複合型粘土組成物を室温に2日間放置して固化物を得た。この固化物は(示差走査熱量測定(DSC)、リグニン溶出試験により分析した結果、下記式で示される複合体であることが判った。
[化5]
Lig−SO3 -Na++ Inorg+X- →Lig−SO3 -Inorg++ Na+X-
(式中、Ligはリグニン残基、Inorg+はアロフェンカチオンサイトを、X-はアロフェン対イオンを示す)
なお、この固化物のTg(ガラス転移温度)は−71.5℃であった。また、前記リグニンスルホン酸ナトリウム塩のPEG400溶液のガラス転移温度(Tg)は−64.5℃であった。このことから、リグニンスルホン酸アニオンとアロフェンがオイン複合体を形成しており、リグニンの分子運動性が著しく抑制されたため、溶剤であるPEG400のガラス転移のみが検出されることが判った。さらに、固化物を水中で攪拌しても、リグニンの溶出は認められなかった。
[アニオン交換型リグニン誘導体塩とカチオン交換型粘土鉱物を含有するイオン複合体粘土組成物の調製]
クラフトリグニン (KL)10部をPEG400 20部に溶解して溶液を得た。この溶液に、ジメチルベンジルアミン(DMBA)0.1部およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド3部を加えて、100℃で24時間反応させて、アンモニウムカチオンを有するKL誘導体(A-KL)を含む溶液を調製した。上記混合物は水溶性であることから、混合物中のKLはA−KLに転換されたことが確認された。この溶液のTgは−67.7℃であった。上記のA−KLを含む溶液5部とモンモリロナイトト5部を混合して、イオン複合型粘土組成物を調製した。
[イオン複合型粘土固化物の調製]
上記で得たイオン複合型粘土組成物を室温に2日間放置して固化物を得た。この固化物は(示差走査熱量測定(DSC)、リグニン溶出試験により分析した結果、下記式で示される複合体であることが判った。
[化6]
Lig−N+(CH3)3X- + Inorg-M+
→ Lig−N+(CH3)3Inorg- + M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアルカリ金属などの金属原子を、Inorg-はモンモリロナイトのアニオンサイトを、X-は塩素アニオンを表す。)
なお、この固化物のTgは、−69.6℃及び−10.1℃であり、Tgにおける△Cpの値も大きく低下した。このことから、A−KLのカチオンとモンモリロナイトがイオン複合体を形成しており、リグニンの分子運動性が著しく抑制されたため高温側のTgと溶剤であるPEG400のTgが検出されることが判った。さらに、固化物を水中で攪拌しても、リグニンの溶出は認められなかった。
[アニオン交換型リグニン誘導体塩とカチオン交換型粘土鉱物を含有するイオン複合体粘土組成物の調製]
クラフトリグニン (KL)10部をPEG400 20部に溶解して溶液を得た。この溶液に、ジメチルベンジルアミン(DMBA)0.3部およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド3部を加えて、100℃で24時間反応させて、アンモニウムカチオンを有するKL誘導体(A-KL)を含む溶液を調製した。上記のA−KLを含む溶液4部とアンモニウムイオン含有型ベントナイト系ナノ粒子(粒子径 8μm, 層間距離 2.0nm)2部を混合して、イオン複合型粘土組成物を調製した。
[イオン複合型粘土固化物の調製]
上記で得たイオン複合型粘土組成物を室温に2日間放置して固化物を得た。この固化物は(示差走査熱量測定(DSC)、リグニンの溶出試験により分析した結果、下記式で示される複合体の混合物であることが判った。
[化7]
Lig−N+(CH3)3X- + Inorg-M+
→ Lig−N+(CH3)3Inorg- + M+X-
(式中、Ligはリグニン残基、M+はアンモニウムカチオンを、Inorg-はベントナイトのアニオンサイトを、X-は塩素のアニオンを表す。)
なお、この固化物のTgは、−70.5℃及び−9.2℃であり、Tgにおける△Cpの値も大きく低下した。このことから、A−KLのカチオンとベントナイトがオイン複合体を形成しており、リグニンの分子運動性が著しく抑制されたため高温側のTgと溶剤であるPEG400のTgが検出されることが判った。さらに、固化物を水中で攪拌しても、リグニンの溶出は認められなかった。
Claims (12)
- カチオン交換型リグニン誘導体塩とアニオン交換型粘土鉱物および溶媒を含有することを特徴とするイオン複合型粘土組成物。
- カチオン交換型リグニン誘導体塩がリグニンの無機酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のイオン複合型粘土組成物。
- リグニンの無機酸塩がリグニンスルホン酸塩であることを特徴とする請求項2に記載のイオン複合型粘土組成物。
- アニオン交換型粘土鉱物がアロフェンまたはイモゴライトであることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のイオン複合型粘土組成物。
- アニオン交換型リグニン誘導体塩とカチオン交換型粘土鉱物および溶媒を含有することを特徴とするイオン複合型粘土組成物。
- アニオン交換型リグニン誘導体塩がリグニンのオニウム塩であることを特徴とする請求項5に記載のイオン複合型粘土組成物。
- リグニンのオニウム塩がリグニンの第4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項6に記載のイオン複合型粘土組成物。
- カチオン交換型粘土鉱物がモンモリロナイト、バーミキュライト及びベントナイトから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項5〜7何れかに記載のイオン複合型粘土組成物。
- 溶媒が親水性溶媒であることを特徴とする請求項1〜8何れかに記載のイオン複合型粘土組成物。
- 親水性溶媒が、水及び/ 又はアルコールであることを特徴とする請求項9に記載のイオン複合型粘土組成物。
- アルコールがエチレングリコール、エチレングリコールオリゴマー、ポリエチレングリコールおよびグリセリンから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項10に記載のイオン複合型粘土組成物。
- 請求項1〜11何れかに記載のイオン複合型粘土組成物を固化することにより得られるイオン複合型粘土固化物。
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