JP4405122B2 - エレベータの速度制御装置及び速度制御方法、並びに速度制御プログラム - Google Patents

エレベータの速度制御装置及び速度制御方法、並びに速度制御プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータの速度制御装置及び速度制御方法、並びに、速度制御装置に組み込まれる速度制御プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータは、乗客や荷物が積載された乗りかごをモータの駆動によって移動操作させて、乗客や荷物を目的階まで運搬するようにしている。このようなエレベータにおいて、乗りかごの移動速度は、予め決められた定格速度で一定となるように制御されているのが一般的である。ここで、定格速度とは、乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度をいう。
【0003】
エレベータの乗りかごを駆動するモータは、予め決められた乗りかごの定格速度と最大積載質量とから必要な容量が計算され、乗りかごに最大積載質量で乗客や荷物が積載された場合でも、乗りかごを定格速度で確実に移動操作させ得る十分な容量を有するものが選定される。
【0004】
例えば、図6に示すように、乗りかごの定格速度がVa、最大積載質量がLaに設定されたエレベータにおいては、乗りかごを駆動するモータとして、複数種のモータのうちから容量C3のモータが選ばれる。この容量C3のモータを用いて乗りかごを駆動すれば、乗りかごに最大積載質量Laの乗客や荷物が積載された場合、この乗りかごは定格速度Vaで確実に移動操作される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エレベータの乗りかごに最大積載質量の乗客や荷物が積載されることは極めて稀であり、通常は、最大積載質量に満たない積載質量で乗りかごが移動操作されることが多い。
【0006】
しかしながら、従来のエレベータでは、乗りかごの定格速度が予め決定されており、乗りかごの積載質量が最大積載質量に満たない場合でも、乗りかごを予め決められた定格速度で移動操作されるため、乗りかごを駆動するモータの能力を効率的に利用できていないのが実情である。すなわち、図6に示した例においては、例えば乗りかごの積載質量がLbの場合には、容量C3のモータでは乗りかごを速度Vbで移動操作させることができるにも拘わらず、定格速度Vaで移動操作するようにしているので、モータの能力が十分に活かされていない。
【0007】
近年では、建物の高層化に伴って、エレベータの乗りかごの移動速度を高速化することが強く求められる傾向にある。このような背景を考えると、乗りかごの積載質量が最大積載質量に満たない場合におけるモータの余力を有効利用して、乗りかごの移動速度を高めることが、エレベータのサービス向上を図る上でも非常に有効と思われる。
【0008】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、乗りかごを駆動するモータの能力を最大限利用して、エレベータのサービス向上を実現することができるエレベータの速度制御装置、及び速度制御方法、並びにエレベータの速度制御装置に組み込まれる速度制御プログラムを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエレベータの速度制御装置は、モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータに設けられ、前記乗りかごの移動速度を制御するものであり、前記乗りかごの積載質量を検出する積載質量検出手段と、前記乗りかごが停止している間に、前記積載質量検出手段によって検出された前記乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定する定格速度設定手段と、前記乗りかごが前記定格速度設定手段により設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
このエレベータの速度制御装置では、着床階での乗客の乗り降り等に応じて変化する乗りかごの積載質量が積載質量検出手段によって検出され、乗りかごが停止している間に、積載質量検出手段によって検出された乗りかごの積載質量に応じて、定格速度設定手段により、当該乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度が、モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定される。そして、乗りかごがこの定格速度設定手段によって設定された定格速度で移動するように、モータ制御手段によって、乗りかごを駆動するモータが駆動制御される。
【0011】
このエレベータの速度制御装置では、以上のように乗りかごの積載質量に応じてモータ容量の範囲内で設定可能な最速の定格速度が設定されるので、乗りかごの積載質量が減少してモータに余力が生じたときは、その分乗りかごの移動速度を高めることができ、モータの能力を有効に活かした効率的な運用が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータの速度制御方法は、モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータの前記乗りかごの移動速度を制御する方法であり、前記乗りかごの積載質量を検出し、前記乗りかごが停止している間に、前記検出された乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定し、前記乗りかごが前記設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御することを特徴とするものである。
【0013】
このエレベータの速度制御方法では、着床階での乗客の乗り降り等に応じて変化する乗りかごの積載質量に応じて、モータ容量の範囲内で設定可能な最速の定格速度が設定され、この定格速度で乗りかごが移動操作されるようにモータが駆動制御されるので、積載質量が減少して乗りかごを駆動するモータに余力が生じたときは、その分乗りかごの移動速度を高めることができ、モータの能力を有効に活かした効率的な運用が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る速度制御プログラムは、モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータに設けられて前記乗りかごの移動速度を制御する速度制御装置に組み込まれるプログラムであり、前記エレベータの速度制御装置に、前記乗りかごが停止している間に、積載量検出手段によって検出された乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定する定格速度設定機能と、前記乗りかごが前記設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御するモータ制御機能とを実現させることを特徴とするものである。
【0015】
この速度制御プログラムがエレベータの速度制御装置に組み込まれると、速度制御装置が、着床階での乗客の乗り降り等に応じて変化する乗りかごの積載質量に応じて、モータ容量の範囲内で設定可能な最速の定格速度を設定し、この定格速度で乗りかごが移動操作されるようにモータを駆動制御するので、積載質量が減少して乗りかごを駆動するモータに余力が生じたときは、その分乗りかごの移動速度を高めることができ、モータの能力を有効に活かした効率的な運用が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明を適用したエレベータの概略構成を図1に模式的に示す。この図1に示すエレベータは、乗客や荷物が積載される乗りかご1を備えている。この乗りかご1には、当該乗りかご1をエレベータ昇降路内でつり下げ支持するためのメインロープ2の一端側が締結されている。また、このメインロープ2の他端側は、乗りかご2と重量バランスを取るためのつり合いおもり3に締結されている。
【0018】
これら乗りかご2やつり合いおもり3の上方には、メインロープ2が掛けられるメインシーブ4が設けられている。このメインシーブ4は、モータ5の回転軸に取り付けられており、モータ5の駆動力を受けて回転して、メインロープ2を送り動作させるようになっている。そして、メインロープ2が送り動作されることで、乗りかご1が上下階に亘ってエレベータ昇降路内を移動するようになっている。
【0019】
また、乗りかご1の下端部とつり合いおもり3の下端部には、コンペンロープ(コンペンセーティングロープ)6の一端側と他端側とがそれぞれ締結されている。コンペンロープ6は、乗りかご1の移動に伴う乗りかご1とつり合いおもり3との間での重量バランスの変動を低減させるためのものであり、コンペンシーブ(コンペンセーティングシーブ)7によって所定のテンションが付与された状態で乗りかご1とつり合いおもり3との間に架張されている。
【0020】
このエレベータの運転は、エレベータ制御装置10によって制御されるようになっている。エレベータ制御装置10は、乗客によるホール呼びやかご呼びに応じて乗りかご1の行き先階を決定し、モータ5を駆動制御して乗りかご1を行き先階まで移動操作させる等の各種制御を行う。特に、本発明を適用したエレベータでは、このエレベータ制御装置10に、定格速度設定部11や速度テーブル12、モータ制御部13が設けられ、定格速度設定部11で設定された定格速度で乗りかご1が移動するように、モータ制御部13がモータ5を駆動制御するようになっている。また、乗りかご1には、この乗りかご1の積載質量を検出するための荷重センサ14が設けられており、この荷重センサ14からの検出信号がエレベータ制御装置10の定格速度設定部11に供給されるようになっている。そして、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11、速度テーブル12、モータ制御部13と、乗りかご1に設けられた荷重センサ14とにより、本発明に係るエレベータの速度制御装置が構成されている。
【0021】
定格速度設定部11は、荷重センサ14により検出された乗りかご1の積載質量に応じて、乗りかご1を移動させる際の定格速度を設定するものである。ここで、定格速度は、加速時及び減速時を除いた乗りかご1の移動速度であり、例えば、300m/分、240m/分、210m/分、180m/分、150m/分、120m/分等の中から選択的に設定される。これらの速度のうちで乗りかご1を移動させる際の定格速度として選択可能な速度は、その時点における乗りかご1の積載質量と、モータ5の容量とによって決定される。
【0022】
すなわち、モータ5が乗りかご1を駆動する際に要求される所要動力は、その時点における乗りかご1の積載質量と、この乗りかご1の定格速度との積によって求められる。ここで、例えば、モータ5が図2中の曲線で示される容量(最大トルク)を有するものである場合、乗りかご1の積載質量がL1であれば、乗りかご1を移動させる際の定格速度としてV1以下の速度(例えば150m/分、120m/分等)が選択可能であり、また、乗りかご1の積載質量がL2であれば、乗りかご1を移動させる際の定格速度としてV2以下の速度(例えば240m/分、210m/分、180m/分等)が選択可能である。
【0023】
定格速度設定部11は、以上のように、モータ5の容量と荷重センサ14により検出された乗りかご1の積載質量とから求められる選択可能な速度のうちで、最速の速度を定格速度として設定するようにしている。例えば、上述した例で、乗りかご1の積載質量がL1である場合には、定格速度設定部11は、乗りかご1の定格速度を150m/分に設定し、乗りかご1の積載質量がL2である場合には、定格速度設定部11は、乗りかご1の定格速度を240m/分に設定する。
【0024】
詳述すると、定格速度設定部11は、乗りかご1が停止している間、荷重センサ14から供給される検出信号をもとに、乗りかご1の積載質量を常時監視する。そして、乗りかご1の戸閉が完了し、乗りかご1の積載質量に変動が生じない状況となったら、その時点での乗りかご1の積載質量をもとに、速度テーブル12を参照して乗りかご1の定格速度を設定する。
【0025】
速度テーブル12には、乗りかご1の積載質量と、モータ5の容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度とが対応付けられて記載されている。具体的には、例えば図2に示したモータ5の容量を示す曲線上で複数の点がサンプリングされ、これらサンプリングされた各点に対応する積載質量と定格速度とが、それぞれ対応付けられて速度テーブル12に記載されている。
【0026】
定格速度設定部11は、乗りかご1の戸閉が完了した時点での積載質量をもとに、速度テーブル12を参照して、モータ5の容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度を、乗りかご1を移動させる際の定格速度として設定するようにしている。
【0027】
また、定格速度設定部11は、乗りかご1の定格速度を設定すると、乗りかご1を設定した定格速度にまで加速させる加速度を設定する。この加速度は、乗りかご1の乗り心地を考慮して、定格速度毎に理想的な値が予め定められており、例えば、定格速度と対応付けられて速度テーブル12に記載されている。そして、定格速度設定部11は、乗りかごの定格速度を設定すると、速度テーブル12を参照して、設定した定格速度に対応した加速度を、乗りかご1を定格速度にまで加速させる加速度として設定する。具体的には、例えば、定格速度が60m/分或いは45m/分に設定されたときは、加速度は0.5m/sに設定され、定格速度が105m/分或いは90m/分に設定されたときは、加速度は0.7m/sに設定され、定格速度が120m/分以上に設定されたときは、加速度は0.9m/sに設定されるようになっている。
【0028】
ただし、本発明を適用したエレベータでは、乗りかご1の定格速度がモータ5の容量の範囲内において設定可能なほぼ最速の定格速度に設定されるようになっているので、以上のように定格速度に応じて一義的に加速度を設定すると、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルクを上回る場合がある。そこで、このような場合には、定格速度設定部11は加速度を低い値に再設定し、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルク以下となるようにしている。
【0029】
モータ制御部13は、定格速度設定部11によって設定された定格速度で乗りかご1が移動するように、メインシーブ4及びメインロープ2を介して乗りかご1を駆動するモータ5の駆動制御を行うものである。具体的には、このモータ制御部13は、モータ5の回転速度を監視しながら、この回転速度が乗りかご1を定格速度設定部11で設定された定格速度で移動させる速度となるように、フィードバック制御を行う。
【0030】
なお、エレベータ制御装置10における定格速度設定部11やモータ制御部13は、エレベータ制御装置10に設けられた演算処理回路が、エレベータ制御装置10に組み込まれた速度制御プログラムに応じた処理を実行することで実現されるものである。この速度制御プログラムは、予めプログラムROMとしてエレベータ制御装置10内に組み込まれていてもよいし、後日、記録媒体からエレベータ制御装置10内のメモリに書き込まれるようにしてもよい。
【0031】
ここで、以上のような本発明を適用したエレベータにおいて、乗りかご1を行き先階に移動させる際の一連の処理の流れを図3のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
まず、ステップS1−1において、所定の階床に着床している乗りかご1の戸閉が完了して乗りかご1の積載質量に殆ど変動が生じない状況となると、ステップS1−2において、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11により、その時点で荷重センサ14により検出された乗りかご1の積載質量が、乗りかご1が行き先階へと移動する間の積載質量として設定される。この乗りかご1の積載質量は、乗りかご1が行き先階に着床し戸開されて乗客の乗り降りや荷物の積み降ろしがあるまで変動しない。
【0033】
次に、ステップS1−3において、定格速度設定部11により速度テーブル12が参照されて、乗りかご1の積載質量をもとに、モータ5の容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度が取得され、乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度として設定される。
【0034】
次に、ステップS1−4において、定格速度設定部11により速度テーブル12が参照されて、乗りかご1を設定した定格速度にまで加速させる加速度が仮設定される。
【0035】
次に、ステップS1−5において、定格速度設定部11により、乗りかごが着床している階床と乗りかご1の積載質量とに基づいてアンバランストルクが算出され、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルク以下であるかどうかが判断される。ここで、アンバランストルクは、乗りかご1の位置に応じて変動する乗りかご1とつり合いおもり3との重量アンバランスを是正するために必要な力である。このアンバランストルクが大きい場合には、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルクを越える場合もある。
【0036】
モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルク以下であると判断されると、次に、ステップS1−6において、定格速度設定部11により、ステップS1−4で仮設定された加速度が、乗りかご1をステップS1−3で設定した定格速度にまで加速させる加速度として設定される。一方、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルクを越えると判断されると、ステップS1−4に戻って加速度が低い値に再設定され、再度ステップS1−5の判断が行われる。
【0037】
定格速度設定部11により乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度及び加速度が設定されると、次に、ステップS1−7において、モータ制御部13により、定格速度設定部11で設定された定格速度及び加速度で乗りかご1が行き先階へと移動するように、モータ5が駆動制御される。これにより、モータ5の能力が最大限活かされて、乗りかご1が行き先階へと速やかに移動することになる。
【0038】
以上説明したように、本発明を適用したエレベータでは、乗りかご5を行き先階へと移動させる際に、乗りかご5の積載質量が検出され、この乗りかご5の積載質量に応じて、モータ5の容量の範囲内において最速の定格速度及び加速度が設定されるようになっているので、乗りかご5を可能な限り速やかに行き先階へと移動させることができ、サービス向上を実現できる。
【0039】
また、このエレベータでは、エレベータ制御装置10に、乗りかご1の積載質量と、モータ5の容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度とが対応付けられて記載された速度テーブル12が設けられ、定格速度設定部11が、この速度テーブル12を参照して、乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度を設定するようにしているので、乗りかご1の積載質量に応じた定格速度の設定を極めて簡便且つ正確に行うことができる。
【0040】
なお、以上は、予め定められた複数の速度、例えば、300m/分、240m/分、210m/分、180m/分、150m/分、120m/分等のうちで、乗りかご1の積載質量に応じて、モータ5の容量の範囲内で設定可能な最速の速度を乗りかご1の定格速度に設定するようにした例について説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、モータ5の容量と乗りかご5の積載質量とからリニアに算出される速度を乗りかご1の定格速度として設定するようにしてもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態では、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11が、乗りかご1の積載質量に応じて乗りかご1を移動させる際の定格速度及び加速度を設定したときに、乗りかご1の移動距離がこれら設定した定格速度及び加速度が出せる距離であるかどうかを判断し、乗りかご1の移動距離が定格速度及び加速度が出せない距離である場合には、定格速度及び加速度を再設定するようにしている。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、以下、第2の実施形態で特徴的な部分についてのみ説明する。
【0042】
乗りかご1の移動距離は、乗りかご1が着床している階床と、乗客によるホール呼びやかご呼びに応じて決定される乗りかご1の行き先階との間の距離である。また、定格速度及び加速度が出せる距離とは、乗りかご1が設定された加速度で加速し、設定された定格速度に達した後、加速度と同様の減速度で減速して停止するまでの距離である。ここで、例えば、1階に着床している乗りかご1が、乗客によるホール呼びやかご呼びに応じて2階に移動する場合を考えると、乗りかご1の積載質量に応じて、乗りかご1の定格速度が90m/分以上、加速度が0.7m/s以上に設定された場合には、図4に示すように、乗りかご1の移動距離(1階と2階との間の距離)が、設定された乗りかご1の定格速度(90m/分)及び加速度(0.7m/s)を出すのに十分ではない。
【0043】
このような場合には、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11は、定格速度及び加速度を低い値に再設定し、乗りかご1の移動距離がこれら再設定した定格速度及び加速度が出せる距離であるかどうかを再度判断する。そして、定格速度及び加速度が出せる距離が乗りかご1の移動距離以内となった時点における定格速度及び加速度を、最終的に、乗りかご1を移動させる際の定格速度及び加速度として設定する。
【0044】
上述した例では、例えば、乗りかご1の積載質量に応じて設定された乗りかご1の定格速度が105m/分、加速度が0.7m/sであったとすると、1階から2階へと移動する乗りかご1の移動距離は、これら定格速度及び加速度を出すのに十分な距離ではないので、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11は、定格速度を90m/分、加速度を0.7m/sに再設定し、乗りかご1の移動距離がこれら再設定した定格速度及び加速度が出せる距離であるかどうかを再度判断する。定格速度が90m/分、加速度が0.7m/sの場合には、これら定格速度及び加速度を出せる距離が、未だ乗りかご1の移動距離よりも大きいので、定格速度設定部11は、次に、定格速度を60m/分、加速度を0.5m/sに再設定し、乗りかご1の移動距離がこれら再設定した定格速度及び加速度が出せる距離であるかどうかを再度判断する。定格速度が60m/分、加速度が0.5m/sの場合には、これら定格速度及び加速度を出せる距離が乗りかご1の移動距離以内となるので、定格速度設定部11は、定格速度60m/分、加速度0.5m/sを、乗りかご1を移動させる際の定格速度及び加速度として最終的に設定する。
【0045】
第2の実施形態のエレベータでは、以上のように、乗りかご1の移動距離が乗りかご1の積載質量に応じて設定された定格速度及び加速度が出せない距離である場合に、定格速度及び加速度を低い値に再設定することで、乗りかご1の乗り心地の低下を抑制しながら、乗りかご5を可能な限り速やかに行き先階へと移動させることができる。すなわち、乗りかご1の移動距離が短い場合に、この乗りかご1の積載質量に応じて定格速度及び加速度が高い値に設定されると、乗りかご1の加速と減速との切り換えを急激に行う必要が生じ、乗りかご1の乗り心地を低下させる場合がある。これに対して、第2の実施形態のエレベータでは、乗りかご1の積載質量に加えて移動距離も考慮して最適な定格速度及び加速度を設定するようにしているので、乗りかご1の乗り心地の確保と高速移動とを両立させて、サービスの更なる向上を実現することができる。
【0046】
ここで、以上のような本発明を適用した第2の実施形態のエレベータにおいて、乗りかご1を行き先階に移動させる際の一連の処理の流れを図5のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、ステップS2−1において、所定の階床に着床している乗りかご1の戸閉が完了して乗りかご1の積載質量に変動が生じない状況となると、ステップS2−2において、エレベータ制御装置10の定格速度設定部11により、その時点で荷重センサ14により検出された乗りかご1の積載質量が、乗りかご1が行き先階へと移動する間の積載質量として認識される。この乗りかご1の積載質量は、乗りかご1が行き先階に着床し戸開されて乗客の乗り降りや荷物の積み降ろしがあるまで変動しない。
【0048】
次に、ステップS2−3において、乗客によるホール呼びやかご呼びに応じて、エレベータ制御装置10により、乗りかご1の行き先階が決定される。
【0049】
次に、ステップS2−4において、定格速度設定部11により速度テーブル12が参照されて、乗りかご1の積載質量をもとに、モータ5の容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度が取得され、乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度として仮設定される。
【0050】
次に、ステップS2−5において、定格速度設定部11により速度テーブル12が参照されて、乗りかご1を設定した定格速度にまで加速させる加速度が仮設定される。
【0051】
次に、ステップS2−6において、定格速度設定部11により、乗りかご1が行き先階に到着するまでの移動距離が、仮設定された定格速度及び加速度を出せる距離であるかどうかが判断される。ここで、乗りかご1の移動距離が仮設定された定格速度及び加速度を出すのに十分でないと判断されると、ステップS2−4に戻って定格速度が低い値に再設定され、ステップS2−5において再設定された定格速度に応じた加速度が仮設定されて、再度ステップS2−6の判断が行われる。
【0052】
乗りかご1の移動距離が仮設定された定格速度及び加速度を出すのに十分な距離であると判断されると、次に、ステップS2−7において、定格速度設定部11により、乗りかごが着床している階床と乗りかご1の積載質量とに基づいてアンバランストルクが算出され、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルク以下であるかどうかが判断される。ここで、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルク以下であると判断されると、次に、ステップS2−8において、定格速度設定部11により、ステップS2−4で仮設定された定格速度が乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度として設定され、ステップS2−9において、定格速度設定部11により、ステップS2−5で仮設定された加速度が、乗りかご1を設定した定格速度にまで加速させる加速度として設定される。
【0053】
一方、モータ5を駆動するための必要トルクがモータ5の最大トルクを越えると判断されると、ステップS2−5に戻って加速度が低い値に仮設定され、再度ステップS2−6及びステップS2−7の判断が行われる。
【0054】
定格速度設定部11により乗りかご1を行き先階へと移動させる際の定格速度及び加速度が設定されると、次に、ステップS2−10において、モータ制御部13により、定格速度設定部11で設定された定格速度及び加速度で乗りかご1が行き先階へと移動するように、モータ5が駆動制御される。これにより、モータ5の能力が最大限活かされて、乗りかご1が行き先階へと速やかに移動することになる。
【0055】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施形態のエレベータでは、乗りかご1の積載質量に応じて乗りかご1を移動させる際の定格速度及び加速度を設定したときに、乗りかご1の移動距離がこれら定格速度及び加速度が出せない距離である場合には、定格速度及び加速度を再設定するようにしているので、乗りかご1の乗り心地の確保と高速移動とを両立させて、更なるサービス向上を実現することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、乗りかごの積載質量に応じて、モータ容量の範囲内で設定可能な最速の定格速度が設定されるので、乗りかごの積載質量が減少して乗りかごを駆動するモータに余力が生じたときは、その分乗りかごの移動速度を高めることができ、モータの能力を効率的に活用することができる。したがって、本発明を適用したエレベータでは、乗りかごを可能な限り速やかに行き先階へと移動させることができ、サービスの向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したエレベータの概略構成を示す模式図。
【図2】乗りかごの積載質量と設定可能な定格速度との関係を示す図。
【図3】本発明を適用した第1の実施形態のエレベータにおいて、乗りかごを行き先階に移動させる際の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】乗りかごの移動距離と定格速度及び加速度が出せる距離との関係を示す図。
【図5】本発明を適用した第2の実施形態のエレベータにおいて、乗りかごを行き先階に移動させる際の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図6】従来のエレベータにおいて、予め設定された乗りかごの最大積載質量及び定格速度と、選択されるモータ容量との関係を示す図。
【符号の説明】
1 乗りかご
5 モータ
10 エレベータ制御装置
11 定格速度設定部
12 速度テーブル
13 モータ制御部
14 荷重センサ

Claims (7)

  1. モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータに設けられ、前記乗りかごの移動速度を制御する速度制御装置において、
    前記乗りかごの積載質量を検出する積載質量検出手段と、
    前記乗りかごが停止している間に、前記積載質量検出手段によって検出された前記乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定する定格速度設定手段と、
    前記乗りかごが前記定格速度設定手段により設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えること
    を特徴とするエレベータの速度制御装置。
  2. 前記乗りかごの積載質量と前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度とが対応付けられて記載された速度テーブルを備え、
    前記定格速度設定手段が、前記速度テーブルを参照して前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を設定すること
    を特徴とする請求項1に記載のエレベータの速度制御装置。
  3. 前記定格速度設定手段は、前記乗りかごが停止している間に、前記積載質量検出手段によって検出された前記乗りかごの積載質量と前記乗りかごの行き先階までの移動距離とに応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定すると共に、この設定した定格速度にまで加速させる加速度を前記モータの最大トルクを超えない範囲内で設定すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータの速度制御装置。
  4. モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータの前記乗りかごの移動速度を制御する速度制御方法において、
    前記乗りかごの積載質量を検出し、
    前記乗りかごが停止している間に、前記検出された乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定し、
    前記乗りかごが前記設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御すること
    を特徴とするエレベータの速度制御方法。
  5. 前記乗りかごの積載質量と前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度とが対応付けられて記載された速度テーブルを設け、この速度テーブルを参照して前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を設定すること
    を特徴とする請求項4に記載のエレベータの速度制御方法。
  6. 前記乗りかごが停止している間に、前記検出された前記乗りかごの積載質量と前記乗りかごの行き先階までの移動距離とに応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定すると共に、この設定した定格速度にまで加速させる加速度を前記モータの最大トルクを超えない範囲内で設定すること
    を特徴とする請求項4又は5に記載のエレベータの速度制御方法。
  7. モータの駆動によって乗りかごが移動するエレベータに設けられて前記乗りかごの移動速度を制御する速度制御装置に組み込まれる速度制御プログラムであって、
    前記エレベータの速度制御装置に、
    前記乗りかごが停止している間に、積載量検出手段によって検出された乗りかごの積載質量に応じて、前記乗りかごに積載荷重を作用させて上昇するときの最高速度である定格速度を、前記モータの容量の範囲内において設定可能な最速の定格速度に設定する定格速度設定機能と、
    前記乗りかごが前記設定された定格速度で乗客を乗せて移動するように、前記モータを駆動制御するモータ制御機能とを実現させること
    を特徴とする速度制御プログラム。
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