JP4403539B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)、その製造方法および電子写真装置に関するものであって、特には、イメージ電位幅を十分に広くとり、高階調性を実現するために初期帯電位の絶対値を0.8kV以上に設定した電子写真装置に搭載した際に、低温低湿環境における感光体の耐リーク特性や地かぶりなどの画像品質が改善されるとともに、コスト性にも優れた有機電子写真感光体に関するものである。
電子写真方式を利用した画像形成方法は、オフィス用複写機、プリンター、プロッターおよびこれらの機能を複合させたディジタル画像複合機などのほか、近年、個人向けの小型プリンター、ファクス送受信機にも広く適用されている。電子写真装置用感光体としては、カールソンの発明(特許文献1に記載)以来、多くの感光体が開発されており、最近では、特に有機材料を使用するものが一般的となっている。
このような感光体としては、アルミニウムなどの導電性基体上に陽極酸化皮膜や樹脂膜などの下引き層、フタロシアニン類やアゾ顔料など光導電性を有する有機顔料を含む電荷発生層、π電子共役系と結合したアミン、ヒドラゾンなど電荷のホッピング伝導に関与する部分構造を有する分子を含む電荷輸送層、および保護層を積層してなる機能分離型感光体がある。また、下引き層上に電荷発生および電荷輸送の双方の機能を併せ持つ感光層と、保護層とを積層してなる単層型感光体も知られている。
前記各層の形成方法としては、電荷発生や光散乱などの機能を有する顔料や電荷輸送の役割を担う電荷輸送材をそれぞれ適切な樹脂溶液に溶解または分散させて得られる塗料に、導電性基体を浸漬塗布する方法が、量産性に優れるため一般的に用いられている。
近年の電子写真装置は、発振波長が450〜780nm程度の半導体レーザーあるいは発光ダイオードを露光用光源として、画像や文字などのディジタル信号を光信号に変換し、帯電させた感光体上に照射することによって感光体表面に静電潜像を形成し、これをトナーによって可視化する所謂反転現像プロセスが主流である。
また、上記電荷発生材のうち、フタロシアニン類は、他の電荷発生材と比較して半導体レーザーの発振波長領域での吸光度が大きく、かつ、優れた電荷発生能力を有するため、感光層用材料として広く検討されている。現在、中心金属として、銅、アルミニウム、インジウム、バナジウム、チタニウムなどを有する各種フタロシアニンを用いた感光体が知られている(特許文献2〜5)。
感光体を帯電させる方法としては、スコロトロンからのコロナ放電などによる帯電部材と感光体とが非接触である非接触帯電方式と、導電性ゴムからなるローラーや導電性繊維からなるブラシなどによる帯電部材と感光体とが直接接触する接触帯電方式がある。このうち接触帯電方式は、非接触帯電方式と比較して大気中での放電距離が短いためにオゾンの発生が少なく、電源電圧が低くてもよく、放電によって生じる帯電部材への汚れの沈着がないためメンテナンスフリーであり、また、感光体上での帯電位を均一にできるという特徴を有する。従って、よりコンパクトで低コスト、低環境汚染の電子写真装置を実現できるため、特に中型〜小型装置で主流となっている。
ところで、上記した反転現像プロセスにおいては、暗部電位が画像上の白地に対応し、明部電位が黒地に対応するため、導電性基体上に著しい凹凸などの構造上の欠陥、あるいは不純物の析出などの材質の不均一性に関与する欠陥などが存在すると、これらが白地上の黒点、地かぶりなどの画像欠陥となって現れる。こうした画像不良は、導電性基体上の欠陥により導電性基体から感光層への電荷注入が生じ、この欠陥上で局所的な帯電位低下が引き起こされることによって生じるものと考えられている。特に、画像における高階調を実現するために初期帯電位の絶対値を0.8k≡以上に設定した電子写真装置においては、感光体に印加される電界が大きいためにこうした傾向が顕著であり、特に低温低湿環境で連続印字を行った場合に顕著となる。
このような電子写真装置における問題を改善するために、導電性基体と感光層との間に下引き層を設けることが一般的に行われており、アルミニウムの陽極酸化皮膜、ベーマイト皮膜の他、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ゼラチン、ポリウレタン、ポリアミドなどの樹脂膜が用いられている。これらの樹脂膜には、基体からの過剰な露光光の反射を抑制することにより干渉縞による画像不具合を防止したり、下引き層の抵抗値を適正に調整するなどの目的で、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物粒子を含有せしめることも可能である。特に、特許文献6に記載されている通り、陽極酸化皮膜は高温高湿下での電位安定性に優れることが知られている。また、共重合ナイロン皮膜は、浸漬塗工法により均一な膜厚が得られ、量産性に優れ、かつ、安価であることから、広く一般に用いられている。
白地上の黒点、地かぶりなどの画像欠陥を引き起こすもう一つの要因としては、下引き層および感光層塗布液中の顔料粒子の不均一さ、即ち、顔料粒子の粉砕や分散が不充分であることにより生じる粗大な一次粒子や、微細な一次粒子が過度に凝集して形成される二次粒子がある。こうした粗大な粒子が塗布液中に存在すると、これらが塗布の際、膜中にも取りこまれて電荷の経路となり、感光層表面への電荷の微小リークが生じ、下地の欠陥によるものと同様の画像障害を引き起こすのである。このうち、粗大な一次粒子はろ過などの処理によって比較的容易に塗布液から取り除くことが可能であるが、粗大な二次粒子については、常に塗布液内で粒径成長を続けるものであるので、このような粒子が生じないような組成を見出すとともに、粒子の凝集状態を生産ラインにおいて監視し、塗布液のゲル化や粘度上昇、粒子の沈降が生じないようにすることが重要である。
このような顔料分散膜を積層させてなる感光体の電気的特性は、各層における顔料分散状態のみならず、各層の界面における、異なる層に属する顔料同士の接触状態によっても支配され、特に、キャリアの注入特性に影響を及ぼすものと考えられる。こうした顔料の分散状態の評価方法として、動的光散乱やレーザー回折の原理を適用した粒度分布計や、塗布膜の断面や表面の電子顕微鏡観察画像の画像解析による粒度分布解析などがある。
米国特許第2297691号明細書 特開昭53−89433号公報 米国特許第3816118号明細書 特開昭57−148745号公報 米国特許第3825422号明細書 特公平5−34964号公報
しかしながら、上記の評価方法を用いて下引き層と感光層との界面における顔料の分散状態を評価するための解析方法については、これまで検討がなされておらず、界面の分散状態の最適化はなされてこなかった。そのため、特に、画像の高階調性が要求され、帯電位の絶対値が大きいために高電界が感光体に印加されるプリンタや複写機、これらとファクスとの複合機などにおける、特に低温低湿環境下での地かぶりなどの画像特性や、感光体の耐リーク特性についての改善は十分なされていなかった。
また、上記界面の分散状態は、下引き層と感光層との双方の分散状態に依存することから、一方の塗布液の顔料分散状態が良好であれば、他方の塗布液の顔料分散状態は必ずしも最適化されている必要はないとも言える。しかし、各塗布液における顔料の分散状態の管理は、従来、下引き層と感光層とのそれぞれについて個別に行われ、それらの使用可否の判定は、それぞれの塗料について、例えば、粒径などの分散状態の管理基準に基づいて決定されることがほとんどであった。そのため、例えば、良好な分散状態にある感光層塗布液との組合せであれば使用可能な程度の分散状態にある下引き層塗布液であっても、検査の結果不合格となることがあった。また、それとは逆に、良好な分散状態にある下引き層塗布液との組合せであれば使用可能な程度の分散状態にある感光層塗布液であっても、検査の結果使用不可能と判定されることもあり、塗布液の運用上、著しい非効率が生じることとなっていた。
従って、上記のような不都合を解消して、界面における顔料の接触状態を最適化することにより、高帯電位であっても不具合なく動作する感光体を実現することが必要不可欠であるとともに、下引き層塗布液と感光層塗布液との双方の分散状態を併せて考慮することができ、これにより塗布液の効率の良い運用を図ることができる技術が求められていた。
そこで本発明の目的は、通常の使用環境のみならず、低温低湿度の環境下においても、地かぶりや黒点のない階調性が良好な画像を得ることができる電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置を提供することにあり、また、下引き層塗布液と感光層塗布液との双方の分散状態を併せて考慮することで、効率良く塗布液を運用することができる電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、浸漬塗布に用いられる下引き層塗布液および感光層塗布液、または、下引き層塗布膜および感光層塗布膜に係る通過累積頻度曲線から、上和野ら(「連続アニュラー型湿式媒体攪拌ミルにおける微粒子の粉砕進行状況の表示と評価法」、上和野他 化学工学論文集 第25巻 第5号 pp796〜800、1999)によって提案された評価手法に基づき得られる所定の粒度パラメータの値を、所定範囲に規定することにより、上記不具合を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の電子写真感光体の製造方法は、導電性基体上に、金属酸化物微粒子を含有する下引き層塗布液と、有機顔料微粒子を含有する感光層塗布液とを、順次浸漬塗布して下引き層および感光層を形成する工程を含む電子写真感光体の製造方法において、
前記下引き層塗布液および感光層塗布液を、前記金属酸化物微粒子の通過累積粒度分布曲線における、下記式(1)、
Figure 0004403539
で定義される面積SUCLと、前記有機顔料微粒子の通過累積粒度分布曲線における、下記式(2)、
Figure 0004403539
で定義される面積SCGLとが、下記式(4)、
Figure 0004403539
(上記式中、Dは金属酸化物微粒子または有機顔料微粒子の粒径を示し、D≦10μmであり、Rは通過累積頻度であって0≦R≦1を満たし、RmaxおよびRminは粒径測定の精度によって決まる定数であって、Rmax0.95、Rmin0.05であり、S UCLおよびSCGLはそれぞれ通過累積分布曲線の上側部分であって、通過累積分布曲線と、直線R=Rmax、R=RminおよびD=D|R=Rminとで囲まれる領域の面積である)で示される関係を満足するよう調製することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記構成とすることにより、通常の使用環境のみならず低温低湿度の環境下においても地かぶりや黒点の発生のない、階調性の良好な画像が得られる電子写真感光体および電子写真装置を実現することができる。また、本発明の製造方法によれば、下引き層塗布液と感光層塗布液との双方の分散状態を併せて考慮することで、塗布液を効率良く運用することができ、高品質であってコスト性にも優れた電子写真感光体の提供が可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、導電性基体上に少なくとも、金属酸化物微粒子を含有する下引き層と、有機顔料微粒子を含有する感光層とを積層してなる電子写真感光体に関する技術であり、これら金属酸化物微粒子および有機顔料微粒子に係る通過累積頻度曲線を介して、その分散状態を規定する点に特徴を有する。
具体的には、浸漬塗布に用いられる下引き層塗布液および感光層塗布液の粒度分布を表す通過累積頻度曲線、または、下引き層と感光層とを積層した膜の断面の電子顕微鏡画像の画像解析あるいは下引き層および感光層表面の電子顕微鏡画像の画像解析により得られる通過累積頻度曲線より、前記上和野らによって提案された下記式(1)および(2)、
Figure 0004403539
Figure 0004403539
を用いて得られる、通過累積分布曲線の上側部分であって、通過累積分布曲線と、直線R=Rmax、R=RminおよびD=D|R=Rminとで囲まれる領域の面積SUCL、SCGLを求めてこれらの和SUCL+SCGLを調べ、特定の範囲内に和SUCL+SCGLを調整することが重要となる。
ここで、Dは金属酸化物微粒子または有機顔料微粒子の粒径であり、Rは通過累積頻度であって0≦R≦1を満たす。また、Rmax、Rminは測定の繰返し再現性など粒径測定の精度によって決まる定数であり、式(1)および(2)で夫々等しい値をとり、Rmaxは1に近いほど、Rminは0に近いほど、より広い範囲の粒径の情報を考慮することができる。Rmax、Rminは、これらの値を変化させてもSの値が測定誤差の範囲内で変化しないような値に決めることが好ましく、具体的には、Rmaxは0.9以上、Rminは0.1以下とする。
即ち、本発明によれば、下引き層塗布液および感光層塗布液中に夫々含まれる金属酸化物微粒子および有機顔料微粒子の粒度分布について、それらの通過累積分布曲線と直線R=Rmax、R=RminおよびD=D|R=Rminとで囲まれる領域の面積SUCL、SCGLを求め、更に、これらの和SUCL+SCGLを算出し、この和SUCL+SCGLが下記式(4)、
Figure 0004403539
を満たすよう調製した下引き層塗布液および感光層塗布液を用いて下引き層および電荷発生層を形成した電子写真感光体、あるいは、下引き層および電荷発生層における金属酸化物微粒子および有機顔料微粒子の粒度分布が下記式(3)、
Figure 0004403539
の条件を満たす感光体を、帯電位が0.8kV以上である電子写真装置に搭載することにより、通常の使用環境のみならず、低温低湿環境下においても、地かぶりや黒点の発生のない、階調性が良好な画像を得ることができるのである。図1に、通過累積分布曲線と直線R=Rmax、R=Rmin、D=D|R=RminおよびSUCL、SCGLとの関係を示す。
特に、塗布液状態での粒度分布評価については、塗布液を塗布ラインの塗布液タンクに投入する直前の投入前検査として、または、製品を塗布ラインで生産中にインラインで、若しくは塗布液を適切な時間間隔で塗布ラインからサンプリングして実施し、製品の塗布中は常にSUCL、SCGLが上記式(4)を満たすようにしなければならない。
上記式(3)および(4)は、下引き層および感光層の両方に顔料分散の劣化度の下限を課すと同時に、必ずしも、両方の塗布液または塗布膜における顔料分散状態が同時に最適化されている必要はないことを示している。 従って、本発明によれば、必ずしも最適な顔料分散状態になく、従来は廃棄していた塗布液であっても、それと組み合わせる、他の層を構成する塗布液との組合せによっては使用可能となる場合があり、本発明はこうした塗布液の組合せについて、それらにおける顔料分散状態が満たすべき明確な基準を与えるものである。
塗布液の組成や作製方法によっては、塗布液中の顔料の一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成することがある。このような場合は前記式(1)〜(4)におけるSの値は大きくなる傾向にあり、膜中における顔料の粒径分布評価から得られるSの値よりも、塗布液における粒径分布評価結果から得られるSの値の方が大きくなる場合がある。このような理由により、塗布液における粒度分布の評価基準よりも、塗布膜における粒度分布評価基準を、より厳しく、即ち、粒度分布がより狭く、Sの値がより小さいものが合格するように設定している。
なお、常に塗布液および塗布膜の両方において粒度分布測定を行う必要はなく、通常は塗布液の粒径分布評価のみで運用してもよいが、塗布液の粒度分布測定結果として、S=1.0〜1.1が得られた場合には、塗布膜状態でも粒径分布評価を行い、Sの値を確認することが好ましい。このような塗布液状態における管理が品質管理面、コスト低減などの観点からとりわけ重要である。
なお、本発明は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層からなる機能分離型感光体と、電荷発生および電荷輸送の双方の機能を併せ持つ単層からなる単層型感光体との双方を含むものであるが、特には、機能分離型感光体において有効であり、この場合、上記感光層塗布液および感光層塗布膜とは、有機顔料微粒子を樹脂バインダーに分散してなる電荷発生層塗布液およびこれにより形成される電荷発生層塗布膜を意味する。
本発明における粒度分布測定は次のように行うことができる。
まず、感光層塗布液および下引き層塗布液については、適切な濃度に希釈して、これをSiウエハなど平滑な表面に塗布したものを乾燥し、その表面にPt−Pd合金などを5nm以下程度に蒸着して導電性を付与した試料を走査型電子顕微鏡で観察して、試料表面の二次電子像を得る。この像について画像解析を行って粒度分布曲線を求め、この粒度分布を通過累積分布曲線で表し、更に、前記式(1)および(2)に係る積分値を数値計算によって求めることで、SUCL、SCGLを算出する。画像解析には、例えば、(株)planetron製 Image−Pro PLUS、(株)ニレコ製 LUZEX APなどの画像解析装置やソフトウエアを利用することができる。また、動的光散乱法などを応用した市販の粒度分析計、例えば、Microtrac Inc.製 UPA150、UPA250などの装置を用いて、塗布液をそのまま、あるいは適度に希釈した状態での粒度分布測定を行い、直接、通過累積分布曲線を算出することもできる。より詳細に下引き層と感光層との界面の状態を得ようとする場合には、これら層の積層膜の断面について電子顕微鏡観察を行って画像データを得る。断面観察用試料の作製は、ミクロトームによる超薄切片法、樹脂埋め込み研磨法、収束イオンビームによる切断法などにより行うことができる。中でもミクロトームにより超薄切片を作製し、この試料について透過電子像を得て解析を行うと、特に輪郭が明瞭な粒子の断面像が得られるので、好ましい。
以下に、本発明の感光体の具体的構成につき、機能分離型感光体の場合を例にとって詳細に説明する。
導電性基体としては、各種金属、例えばアルミニウム製の円筒や導電性プラスチック製フィルムなどを用いることができる。ガラスやアクリル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの成型体、シート材などに電極を付与したものも用いることができる。
下引き層の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ナイロン、メラミン、セルロースなどの絶縁性高分子、あるいはポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリンなどの導電性高分子を用いることができ、これら高分子材料を適切な溶媒に溶解し、二酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物微粒子を分散させて形成した下引き層塗布液を用いて、下引き層を形成することができる。
電荷発生層は、電荷発生材としての各種有機顔料を樹脂バインダー中に分散させて形成する。かかる有機顔料としては、特に、各種の結晶形態を有する無金属フタロシアニンや、中心金属として銅、アルミニウム、インジウム、バナジウム、チタニウムなどを有する各種フタロシアニン、各種ビスアゾ、トリスアゾ顔料が好適である。これらの有機顔料は、粒子径50〜800nm、好ましくは150〜300nm程度の微粒子に調整され、樹脂バインダー中に分散された状態で用いられる。電荷発生層の性能は樹脂バインダーによっても影響を受けるが、かかる樹脂バインダーとしては、例えば、各種のポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂などの中から適切なものを選択して用いることができる。電荷発生層の膜厚としては、0.1〜5μm、特には0.2〜0.5μmが好適である。
良好な分散状態を得、均一な電荷発生層を形成するためには、塗布液溶媒の選択も重要であるが、本発明においては、塩化メチレン、1, 2−ジクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフランなどエーテル系炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、エチルセロソルブなどのエステル類などを用いることができる。
塗布液中での電荷発生材と結着樹脂との比率は、塗布、乾燥後の電荷発生層において、結着樹脂比率が30重量%〜70重量%となるように、調整することが望ましい。とりわけ好ましい電荷発生層の組成は、結着樹脂50重量部に対して電荷発生材50重量部である。以上述べた組成物を適宜配合して塗布液を作製し、更に、媒体攪拌ミル、ペイントシェーカーなどの分散処理装置を用いて処理することにより、顔料粒子の粒径を所望の大きさに調整し、塗工に用いる。
電荷輸送層は、電荷輸送材単体、または、電荷輸送材を樹脂バインダーと共に適切な溶媒に溶解させた塗布液を作製し、これを浸漬法、アプリケーターによる方法等を用いて電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成する。電荷輸送材としては、複写機、プリンター、ファクス送受信機などにおける感光体の帯電方式に応じて、正孔輸送性を有する物質(正孔輸送材)または電子輸送性を有する物質(電子輸送材)を適宜用いる。これらの物質は、公知の物質(例えば、Borsenberger, P.M. and Weiss D.S. eds “Organic Photoreceptors for Imaging Systems” Marcel Dekker Inc. 1993中に例示されているもの)の中から適切なものを選んで用いることができる。正孔輸送材としては、各種ヒドラゾン、スチリル、ジアミン、ブタジエン、インドール化合物あるいはこれらの混合物、電子輸送材としては、各種ベンゾキノン誘導体、フェナントレンキノン誘導体、スチルベンキノン誘導体、アゾキノン誘導体等が挙げられる。
電荷輸送材とともに電荷輸送層を形成する樹脂バインダーとしては、膜強度や耐摩耗性の観点から、ポリカーボネート系高分子が広く用いられている。これらポリカーボネート系高分子としては、ビスフェノールA型、C型、Z型などがあり、また、これらを構成するモノマー単位を含む共重合体を用いてもよい。かかるポリカーボネート高分子の最適分子量範囲は10000〜100000である。その他、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、セルロース樹脂およびこれらの共重合体を用いることもできる。電荷輸送層の膜厚は、感光体の帯電特性、耐摩耗性などを考慮すると、3〜50μmの範囲となるよう形成することが好ましい。また、表面の平滑性を得るために、シリコーンオイルを適宜添加してもよい。さらに、必要に応じて電荷輸送層上に表面保護層を設けてもよい。なお、電荷輸送層塗布液を作製する際に用いる溶媒としては、上記電荷発生層と同様のものを用いることができ、特に制限されるものではない。
また、本発明の感光体を単層型とする場合の感光層材料としては、上記電荷発生層および電荷輸送層に用いるのと同様の電荷発生材、電荷輸送材、および樹脂バインダーを適宜用いることができ、これらを適切な溶媒にて溶解、分散させて感光層塗布液を作製することができる。
本発明の電子写真装置は、本発明の上記電子写真感光体を搭載するものであればよく、それ以外の装置の具体的構成等については、特に制限されるものではない。好ましくは、電子写真プロセスにおいて、感光体表面の初期帯電位の絶対値が0.8kV以上となる電子写真装置とすることで、本発明の効果をより良好に得ることができる。
以下、本発明を実験例および実施例に基づいて説明するが、本発明の実施の形態は以下の例に限定されるものではない。
以下の説明においては、まず、各実験例にて、作製条件を変更することにより、それぞれ異なる値のSUCLおよびSCGLを有する下引き層塗布液および電荷発生層塗布液を作製し、引き続いて、実施例および比較例において、これらの塗布液の組合せからなる感光体を作製した。
[実験例1]
パラ−ビニルフェノール樹脂(丸善石油化学(株)製 マルカリンカーMH−2(登録商標))0.25kgと、メラミン樹脂(三井化学 ユーバン2020(登録商標))0.25kgとをテトラヒドロフラン7.5kg、ブタノール1.5kgからなる混合溶媒に溶解させた後、アミノシラン処理されたアナターゼ型酸化チタン微粒子0.5kgを加え、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを、原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.8μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して90v/v%の嵩充填率で充填したアニュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量800mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷1.5kWにて、処理開始からの積算投入電力が10kWhとなるまで、原料循環用リザーバータンクとビーズミルとの間で循環処理を行った。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは処理液のミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。ここで、ローター駆動用モーターのネット負荷とは、モーターの空転時の負荷を実液処理時の負荷から差し引いた電力である。ビーズミル処理済みのスラリーを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、下引き層塗布液とした。
[実験例2]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を15kWhとした以外は実験例1と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例3]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を20kWhとした以外は実験例1と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例4]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を1kWhとした以外は実験例1と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例5]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を5kWhとした以外は実験例1と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例6]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を30kWhとした以外は実験例1と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例7]
ポリビニルブチラール樹脂0.05kgをテトラヒドロフラン3kgとシクロヘキサノン0.8kgとの混合溶媒に溶解し、これにHillerらによって調べられた相IIに属する結晶型を有するチタニルフタロシアニン(W. Hiller et.al. Z. Kristallogr. 159 pp173 (1982))0.2kgを加えたスラリーを、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.5μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して95v/v%の嵩充填率で充填したアニュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.25kWにて、処理開始からの積算投入電力が2.5kWhとなるまでビーズミルと原料循環用リザーバータンクとの間で循環処理を行い、ミルベースとした。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは、ミルベースのミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。次に、このミルベースをテトラヒドロフラン6kgとポリビニルブチラール0.5kgとからなる希釈液で希釈した液を、再度前記ビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.1kWの条件で1パスだけ処理した。希釈後、ビーズミル1パス処理済みのミルベースを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、電荷発生層塗布液とした。
[実験例8]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3kWhとした以外は実験例7と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例9]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3.5kWhとした以外は実験例7と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例10]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を2kWhとした以外は実験例7と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例11]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4kWhとした以外は実験例7と同様にして電荷発生層塗布液を作成した。
[実験例12]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4.5kWhとした以外は実験例7と同様にして電荷発生層塗布液を作成した。
[実験例13]
共重合ナイロン樹脂(東レ(株)製 CM4000)0.25kg、メラミン樹脂(三井化学(株)製 ユーバン2021(登録商標))0.25kgを、ジクロロメタン4.0kg、メタノール3.5 kg、ブタノール1.5kgからなる混合溶媒に溶解させた後、アミノシラン処理されたアナターゼ型酸化チタン微粒子0.5kgを加え、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.8μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して90v/v%の嵩充填率で充填したアニュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量800mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷1.0kWにて、処理開始からの積算投入電力が10kWhとなるまで、原料循環用リザーバータンクとビーズミルとの間で循環処理を行った。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは、処理液のミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。ビーズミル処理済みのスラリーを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、下引き層塗布液とした。
[実験例14]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を15kWhとした以外は実験例13と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例15]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を20kWhとした以外は実験例13と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例16]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を1kWhとした以外は実験例13と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例17]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を5kWhとした以外は実験例13と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例18]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を30kWhとした以外は実験例13と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例19]
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂(ユニオンカーバイド社製 VMCH)0.05kgをジクロロメタン3kgとジクロロエタン0.8kgとの混合溶媒に溶解し、これに特開平8−209023号公報に記載の結晶型を有するチタニルフタロシアニン0.2kgを加えたスラリーを、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.4μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して95v/v%の嵩充填率で充填したアニュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.15kWにて、処理開始からの積算投入電力が2.5kWhとなるまで、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクとの間で循環処理を行い、ミルベースとした。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは、ミルベースのミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。次に、このミルベースをジクロロメタン6kgと前記塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂0.5kgとから成る希釈液で希釈した液を、再度、前記ビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.1kWの条件で1パスだけ処理した。希釈後、ビーズミル1パス処理済みのミルベースを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、電荷発生層塗布液とした。
[実験例20]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3kWhとした以外は実験例19と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例21]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3.5kWhとした以外は実験例19と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例22]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を2kWhとした以外は実験例19と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例23]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4kWhとした以外は実験例19と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例24]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4.5kWhとした以外は実験例19と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例25]
共重合ナイロン樹脂(東レ(株)製 CM4000)0.25kg、メラミン樹脂(三井化学(株)製 ユーバン2021(登録商標))0.25kgを、ジクロロメタン4.0kg、メタノール3.5 kg、ブタノール1.5kgからなる混合溶媒に溶解させた後、アミノシラン処理されたルチル型酸化チタン微粒子0.5kgを加え、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.8μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して90v/v%の嵩充填率で充填したアニュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量800mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷1.0kWにて、処理開始からの積算投入電力が10kWhとなるまで、原料循環用リザーバータンクとビーズミルとの間で循環処理を行った。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは、処理液のミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。ビーズミル処理済みのスラリーを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、下引き層塗布液とした。
[実験例26]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を15kWhとした以外は実験例25と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例27]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を20kWhとした以外は実験例25と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例28]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を1kWhとした以外は実験例25と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例29]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を5kWhとした以外は実験例25と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例30]
ビーズミル処理に要する積算投入電力を30kWhとした以外は実験例25と同様にして下引き層塗布液を作製した。
[実験例31]
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂(ユニオンカーバイド社製 VMCH)0.05kgをジクロロメタン3kgとジクロロエタン0.8kgの混合溶媒に溶解し、これに角田らによって開示されたτ型無金属フタロシアニン(角田他、電子写真学会誌24 No.2 (1985) pp102〜107)0.2kgを加えたスラリーを、ディゾルバーにて少なくとも30min攪拌し、均一なスラリーとした。このスラリーを、原料循環用リザーバータンクおよび出力3kWのローター駆動用モーターを具備し、ビーズ径0.4μmのジルコニアビーズをベッセル容量に対して95v/v%の嵩充填率で充填したアニとュラータイプのビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.10kWにて、処理開始からの積算投入電力が2.5kWhとなるまで、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクとの間で循環処理を行い、ミルベースとした。なお、ビーズミルと原料循環用リザーバータンクは、ミルベースのミル出口における温度が20℃以下となるよう強制冷却された。次に、このミルベースをジクロロメタン6kgと前記塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂0.5kgとから成る希釈液で希釈した液を、再度、前記ビーズミルを用いて、処理液流量600mL/min、ローター駆動用モーターのネット負荷0.1kWの条件で1パスだけ処理した。希釈後、ビーズミル1パス処理済みのミルベースを有効孔径10μmのフィルターにて濾過し、電荷発生層塗布液とした。
[実験例32]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3kWhとした以外は実験例31と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例33]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を3.5kWhとした以外は実験例31と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例34]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を2kWhとした以外は実験例31と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例35]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4kWhとした以外は実験例31と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実験例36]
ミルベースのビーズミル処理に要する積算投入電力を4.5kWhとした以外は実験例31と同様にして電荷発生層塗布液を作製した。
[実施例1]
実験例1で作製した下引き層塗布液を用い、浸漬塗布によって円筒状アルミニウム基体上に下引き層を成膜した。乾燥温度150℃、乾燥時間15minの条件で乾燥することによって得られた下引き層の乾燥後膜厚は5μmであった。次に、実験例7で作製した電荷発生層塗布液を用いて、上記下引き層形成後の基体上に、電荷発生層を成膜した。乾燥温度80℃、乾燥時間15minの条件で乾燥することによって得られた電荷発生層の乾燥後膜厚は0.1〜0.5μmであった。
この電荷発生層上に、電荷輸送材として下記構造式(5)、
Figure 0004403539
で示されるスチルベン化合物9重量%、樹脂バインダーとしてのポリカーボネート樹脂(出光興産製 タフゼットB-500(登録商標))11重量%、および、溶剤としてのテトラヒドロフラン80重量%から成る電荷輸送層塗布液を浸漬塗工し、温度90℃で60min乾燥して、18μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
実験例1〜12、13〜24、25〜36にてそれぞれ作製された各塗布液の前記UPA150によるSUCL、SCGL測定結果、および、膜状態でのSUCL、SCGL測定結果を、分散状態の評価として、それぞれ表1〜5、6〜10、11〜15にまとめて示す。ここで、膜状態の粒度分布測定は、ミクロトーム等によって切り出したドラム断面試料の透過電子顕微鏡観察を行い、その結果得られた画像を、(株)planetron製 Image−Pro PLUSにて解析することにより行った。基体に対する塗料の付着状況は、基体の各部位によって若干異なっている場合があり、そうした要因のために同じ試料から切り出した試料片であっても粒度分布測定結果がばらつくことがある。従って、観察試料の切り出しは、ドラムの複数の部位、即ち、基体の上端近傍、中央部近傍、下端部近傍について各一点づつ行い、それら観察試料から得られた粒度分布パラメータSの平均値を評価結果として採用した。なお、粒度分布測定の解析においては、いずれの場合もRmax=0.95、Rmin=0.05とした。
[実施例2〜61、比較例1〜47]
上記実施例1における下引き層および電荷発生層と等しい膜厚、乾燥条件にて、各実験例で作製した塗料を同様のアルミニウム基体上に順次成膜し、更に、実施例1と同じ電荷輸送層塗布液を用いて同じ膜厚、乾燥の条件にて電荷輸送層を形成した感光体を、それぞれ下記の表1〜5、6〜10、11〜15に示す実験例の組合せにて作製した。上記実施例1を含めて、下記の表1〜5、6〜10、11〜15にそれぞれ示した各層の組合せからなる感光体を実施例1〜20、21〜40、41〜61および比較例1〜16、17〜32、33〜47とした。
上述した実施例1〜61および比較例1〜47において作製した感光体を、市販の接触帯電方式のプリンターを改造して外部電源を取り付け、帯電位を任意に変更することを可能にした電子写真装置に搭載して、はじめに帯電位一定の条件にて、気温10℃、相対湿度20%の環境下で画像サンプルを採取した。帯電部材としては、シリコーン樹脂製帯電ローラーを用いた。外部電源から周波数1kHzの正弦波にて感光体に交流電圧および直流バイアス電圧を加え、これらの交流電圧および直流バイアス電圧を適宜調整することにより、感光体の帯電位を調整した。画像データの評価は、室温における実機電位特性がほぼ同等の感光体によって得られた画像について、画像中の白色部分における地かぶりおよび黒点の有無によって良否を判定した。次に、帯電位を上昇させて同様の評価を行い、SUCL+SCGLの値が1を越えるものについてリークの発生頻度を調べた。帯電位設定は、−600V、−700V、−800V、−900V、−1000Vの5条件とした。
これらの結果をそれぞれ下記の表1〜5、6〜10、11〜15にまとめて示す。
Figure 0004403539
*帯電位設定:−600V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度19%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−700V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度25%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−800V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度44%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−900V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度75%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−1000V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度94%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−600V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度19%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−700V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度25%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−800V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度44%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−900V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度69%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−1000V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度88%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−600V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度7%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−700V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度20%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−800V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度60%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−900V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度73%
Figure 0004403539
*帯電位設定:−1000V、SUCL+SCGL>1におけるリーク発生頻度87%
上記表1〜15に示すように、塗布液状態でSUCL+SCGL≦1.1であり、かつ、塗布膜状態でSUCL+SCGL≦1である場合に、かぶりなどが発生しない良好な画像特性が得られていることが分かる。
また、帯電位が−800Vを下回ると、SUCL+SCGL>1の領域においてリークの発生頻度が明らかに増大する。従って、帯電位が−800Vを下回る(−800〜−1000V以下)設定の電子写真装置においては、SUCL+SCGL≦1.1を満たす下引き層塗布液および電荷発生層塗布液を用いて形成された膜からなる電子写真感光体、あるいは、SUCL+SCGL≦1である下引き層と電荷発生層との組合せを適用した感光体を用いることが、特に重要であることが確かめられた。
通過累積頻度曲線と各粒度パラメータの関係を示す説明図である。

Claims (1)

  1. 導電性基体上に、金属酸化物微粒子を含有する下引き層塗布液と、有機顔料微粒子を含有する感光層塗布液とを、順次浸漬塗布して下引き層および感光層を形成する工程を含む電子写真感光体の製造方法において、
    前記下引き層塗布液および感光層塗布液を、前記金属酸化物微粒子の通過累積粒度分布曲線における、下記式(1)、
    Figure 0004403539
    で定義される面積SUCLと、前記有機顔料微粒子の通過累積粒度分布曲線における、下記式(2)、
    Figure 0004403539
    で定義される面積SCGLとが、下記式(4)、
    Figure 0004403539
    (上記式中、Dは金属酸化物微粒子または有機顔料微粒子の粒径を示し、D≦10μmであり、Rは通過累積頻度であって0≦R≦1を満たし、RmaxおよびRminは粒径測定の精度によって決まる定数であって、Rmax0.95、Rmin0.05であり、S UCLおよびSCGLはそれぞれ通過累積分布曲線の上側部分であって、通過累積分布曲線と、直線R=Rmax、R=RminおよびD=D|R=Rminとで囲まれる領域の面積である)で示される関係を満足するよう調製することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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