JP4403144B2 - α化ソバ粉の製造方法 - Google Patents

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本発明は、通常の量より低い蛋白質を含有するソバ粉を、二軸エクストルーダーを用いて、α化するα化ソバ粉の製造方法に関し、より詳しくは、二軸エクストルーダーでの、ソバ粉への加水量を0.04〜0.16L/kg/hr、及び処理温度を50〜100℃とすることを含むα化ソバ粉の製造方法、α化ソバ粉を含有するソバ食品に関する。
従来、ソバを麺に加工する際には小麦粉や卵、山芋、オヤマボクチといったつなぎを使用することが一般的である。これは、通常のソバ粉においては麺としてのつなぎ作用が非常に弱く、ソバ粉100%の麺を作るには熟練を要する他、ソバ粉のつなぎ作用のある蛋白質は水溶性であり、麺にしたての時には粘性があるものの、時間が経つとつなぎ作用を保持する力が無くなり、切れやすくなる為である。つなぎに小麦粉などを使用する理由は、小麦粉においては小麦蛋白がグルテンを形成しこのグルテンが強い粘弾性をもって麺の強度を保つからであり、その他の卵、山芋、オヤマボクチなどはその食品自体が持つ粘り気や、繊維などを使用して麺の強度を上げているためである。これらの理由から、麺にするための原料としてソバ粉の割合が多くなればなるほど麺としての強度が弱くなり、機械製麺にソバの生地が耐えられなくなったり、乾麺にしたりする際には棒掛け、乾燥工程に耐えられなくなり、ソバ麺として食用にするには麺線が切れて短くなってしまうため、ソバ粉が最大でも50%位の割合で機械製麺や乾麺の加工が行われているのが一般的である。
しかし、一方ではやはりより高配合(70%以上)で簡便にソバ麺の加工を行える技術というものも望まれている。これらを解決する手段として、殻を剥き処理したソバの実及び/又はその分割粒を水に浸漬させて2〜3日間比較的低温に保存し、該ソバの実の成分の一部を溶出させて粘稠性の溶液を調製する工程と、該調製溶液を加水成分として水まわし及び捏ねる等してソバを打つ工程とからなるソバの製造方法(例えば、特許文献1参照)やソバ粉を水で混練する際にアラビアゴムを添加して混練する工程を経てソバ生地を作り、このソバ生地を麺線に加工する、つなぎを使用しないソバの製法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
さらに、ソバ粉をα化して粘着力をだし、それを通常のソバ粉と配合してつなぎの代わりとし高配合のソバ麺を作る技術が知られており、例えば、ソバ粉に20〜30%の加水をしたものを、溝ドラム型乾燥機やスクリューコンベアを用いて加熱α化して、α化後含水量が15%以下のビーズ状、ペレット状等の任意の形状の小片となし、該小片を製粉機で再製粉したものを原料粉として製粉とするつなぎ材を用いない乾そば(例えば、特許文献3参照)や、ソバ粉又は剥皮そば粉砕粒に加水(0.62mL/g)し、二軸エクストルーダーを用いて、処理温度110〜200℃において押出し圧力が110〜200kg/cmとなる条件下でエクストルージョンクッキングして膨化した後、100メッシュ以下の微粉状態に前加工して製造したEx加工ソバ粉と、粗タンパク質含量9%以上で主粒度区分150〜400メッシュのソバ粉を、2:8〜5:5の比率で配合するソバ粉100%の配合ソバ(例えば、特許文献4参照)や、α化度50〜100のα化ソバ粉と、生ソバ粉を5:95〜100:0の割合に配合し、定法によりミキシングして麺生地とし、これを減圧条件下で麺帯とし、ついで麺線とする十割ソバの製造法(例えば、特許文献5参照)や、二軸エクストルーダーを用いて、普通製粉ソバ粉に加水(0.15〜0.25L/kg)しながら、処理温度110〜200℃で押出し圧力が20〜40kg/cmとなる条件下でエクストルージョンクッキングして膨化処理を施してから150メッシュ以下に粉砕したEx加工ソバ粉と、普通製粉ソバ粉とを配合したソバ粉を製造する方法(例えば、特許文献6参照)等が知られている。
特開平11−243889号公報 特開2002−281925号公報 特開昭52−145536号公報 特公平4−79628号公報 特開平10−23870号公報 特開2005−269981号公報
二軸エクストルーダーを用いる上記特許文献4や特許文献6に記載された技術は、ソバ粉に高い温度(110〜200℃)をかけるため焦げ臭が付加されたり、色調に赤味を帯びてソバ粉としては劣化していると判断される要因となるという問題が生じるおそれがあった。本発明の課題は、焦げ臭の付加及び色調の劣化を低減し、一般的なソバにおける風味を損なうことのない、ソバ粉高配合のソバ麺を簡便に作り得る製麺性の向上したα化ソバ粉やその製造方法、及びかかるα化ソバ粉を含有したソバ食品を提供することにある。
ソバ粉をα化して粘着力を出し、それをつなぎの代わりとしてソバ麺を作る技術は、高配合のソバ麺を作る技術として非常に有効であるが、製麺性の不均一化、焦げ臭の付加及び色調の劣化等といった問題が発生する。そこで本発明者は、上記問題を解決する為にα化されたソバ粉を製造する方法について鋭意研究を行なった。その研究の過程で、二軸エクストルーダーにおける、加水量の調整、処理温度の調整、軸回転速度、押出し圧力、さらには、原料ソバの蛋白質含有量、α化度について種々変更させ、かつ諸条件を多岐に亘って組み合わせ、実験を繰り返した結果、低蛋白質含有量のソバ粉を原料ソバ粉とし、比較的低加水条件及び低温度条件で二軸エクストルーダー処理することにより、きわめて良好なα化ソバ粉が得られ、通常のソバ粉と混合して製麺する際、製麺性が向上し、焦げ臭の付加及び色調の劣化を低減した、かつ、一般的なソバにおける風味を損なうことのない高配合のソバ麺を簡便に作り得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)二軸エクストルーダーを用いて、蛋白質含有率10重量%以下のソバ粉に0.04〜0.16L/kg/hrで加水しながら、処理温度50〜100℃、押出し圧力20〜70kg/cm2で、前記ソバ粉をα化処理することを特徴とするα化ソバ粉の製造方法や、(2)α化処理により、α化度95%以上とすることを特徴とする上記(1)記載のα化ソバ粉の製造方法や、(3)α化処理後、平均粒径120μm以下に粉砕することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のα化ソバ粉の製造方法や、(4)蛋白質含有率8重量%以下のソバ粉を用いることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法や、(5)0.05〜0.12L/kg/hrで加水することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法に関する。
また本発明は、(6)処理温度が50〜80℃であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法や、(7)押出し圧力が50〜70kg/cm2であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法や、(8)二軸エクストルーダーの軸回転速度が100〜200rpmであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法や、(9)上記(1)〜(8)のいずれか記載の製造方法により得られたα化ソバ粉や、(10)上記9記載のα化ソバ粉を配合したソバ食品に関する。
本発明のα化ソバ粉は、配合量が少なくてもソバのつなぎとして有用であり、さらに、製麺性が向上し、焦げ臭の付加及び色調の劣化を低減したソバ麺が得られ、一般的なソバにおける風味を損なうことのない高配合のソバ麺、ソバ食品を簡便に作ることができる。
本発明のα化ソバ粉の製造方法としては、二軸エクストルーダーを用いて、蛋白質含有率10%以下のソバ粉に0.04〜0.16L/kg/hrで加水しながら、処理温度50〜100℃、押出し圧力20〜70kg/cm2で、前記ソバ粉をα化処理する製法であれば特に制限されるものではなく、α化ソバ粉の原料ソバとして、普通ソバ、ダッタンソバ、宿根ソバ等食用に適するソバの実のすべてを1種単独又は混合して用いることができる。
これらソバの実は、例えば通常の製粉機(ロール式製粉機、石臼式製粉機等)により250〜300μmの大きさに粉砕・製粉し、その後、篩選別、分級等の技術を用いて、通常のソバ粉(蛋白質含有率12.1重量%)より蛋白質含量が低い蛋白質含有量10重量%以下のソバ粉、例えば、ソバ粉のうちで蛋白質が最も少ない内層粉を用いることが好ましく、具体的には、蛋白質含有量8重量%以下のものがより好ましく、蛋白質含有量6重量%以下3重量%以上のソバ粉を用いることが最も好ましい。通常、低蛋白質含有量のソバ粉の調製方法は、篩選別による取り分けで行っており、粗くソバを砕いた時、内層区分(低蛋白)は最初に粉になるのでその区分の粉だけを採取することにより得られる。その時に用いられる篩目は100〜150μm程度である。
この低蛋白質含有量のソバ粉を原料として用い、α化するために二軸エクストルーダーへ投入し、ソバ粉に0.04〜0.16L/kg/hr、好ましくは0.05〜0.12L/kg/hr、より好ましくは0.06〜0.10L/kg/hrの割合で加水しながら、処理温度(品温)を50〜100℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜75℃で、押出し圧力(吐出口)20〜70kg/cm2、好ましくは50〜70kg/cm2でα化処理を施す。なお、二軸エクストルーダーの軸回転速度は、機種や処理容量にもよるが、通常100〜200rpm、好ましくは120〜160rpm、より好ましくは140〜155rpmとすることができ、また、二軸エクストルーダーでの処理時間としては、機種や処理容量にもよるが、α化自体はほんの数秒で行われ、総加水量は、0.04〜0.16L/kg/hrより、1時間で50kg処理すれば2〜8Lの加水量となる。
使用する二軸エクストルーダーとしては、回転する2本のスクリュウの狭隘な間隙に対象とするソバ粉を導入し、連続的に剪断、混練することができ、本発明の諸処理条件を満たすことができるものであればどのような機種でもよく、例えば神戸製鋼所社製、幸和工業社製、栗本鉄工所社製、スエヒロEPM社製、日本製鋼所社製など市販のものを使用することができる。二軸エクストルーダーのほか、二軸エクストルーダーと同様の作用を有する二軸のスクリュウ等を装備した連続混練装置も使用することができる。
二軸エクストルーダーから押し出された膨化α化処理物のα化度としては、95%以上、好ましくは99%以上とすることができ、この膨化α化処理物は、粗砕機、破砕機等を使用して粒子状、例えば直径1〜5mm程度に粉砕される。この粉砕物を高速粉砕機、微粉砕機等を使用して微粉砕処理、例えば平均粒径200μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは60μm以下10μm以上のソバ粉へと微粉砕処理が行われ、本発明のα化ソバ粉を得ることができる。
以上のようにして得られた本発明のα化ソバ粉と通常のソバ粉とを、10:90〜50:50、好ましくは20:80〜30:70、より好ましくは25:75の配合割合で混合し、これに水を加えて所定の製麺工程にかけることで、小麦粉等のつなぎ材を用いないソバ粉100%の生麺、乾麺、好ましくは乾麺等の本発明のソバ食品を簡単に製造することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
ロール製粉にて粉砕し、篩選別で取り分けを行った蛋白質含有量5.15%のソバ粉を、二軸エクストルーダー((株)スエヒロEPM α−100型 ダイ形状Φ4.0×4)に投入して、加水量0.06L/kg/hr、処理温度60℃、軸回転速度150rpmにてα化処理を行った。このとき、二軸エクストルーダーの押出し圧力は60〜63kg/cm2であり、α化ソバ加工品のα化度は99%以上であった。得られたソバ加工物を丸七製粉機1号機(丸七商事(株))にて粗粉砕し、この粉砕物を高速粉砕機((株)日本精機製作所)にて平均粒径が50μmになるまで粉砕し、α化ソバ粉を得た。得られたα化ソバ粉をα化処理されていない普通ソバ粉に20%配合しソバ乾麺を製造した。
[従来のα化ソバ粉使用]
これとは別に、従来のα化ソバ粉を普通そば粉に対し20%配合しソバ乾麺を製造した場合、落麺が見られたのに対し、本発明のα化ソバ粉を配合したものでは落麺が見られなかった。前記の従来のα化ソバ粉の調製方法は、蛋白質含有率10.5〜12.0重量%の原料ソバを、加水率0%、加熱温度120〜150℃、圧力60〜90kg/cmの条件で処理し、製粉機で180μm程度に破砕し、α化度90〜95%のものが得られる方法である。
また、これら乾麺について、6分間茹で、冷水で流した後試食を行ったが、焦げ臭が少なくソバの風味が強いものであった。また色調も赤味がなく、一般のソバとしての色を残すものであった。このソバ麺に関して、10名のパネラーで官能検査を行なった結果の総合評価を表1に、α化ソバ粉の色調をカラーアナラーザーTC−8600(東京電飾社製)で測定し、その結果を表2に示す。表2において、Lは明るさの程度を表し、数値の高いほど明るく、aは赤味の程度を表し、数値の高いほど赤味の着色度が強く、bは黄味の程度を表し、数値の高いほど黄味の程度が強いことを意味する。
実施例1と同様のソバ粉を、二軸エクストルーダーの処理条件のうち、処理温度のみ80℃に変え、α化処理を行った。このとき、二軸エクストルーダーの押出し圧力は58〜60kg/cm2であり、α化ソバ加工品のα化度は98.4〜99%以上であった。得られたソバ加工物を実施例1と同様に粉砕し、ソバ乾麺の試作を行ったが、製麺時でも落麺は見られなかった。またこの乾麺について試食を行ったが、焦げ臭が少なくソバの風味が強いものであった。また色調も実施例1ほどではないが赤味がなく、一般のソバとしての色を残すものであった。このソバ麺に関して、10名のパネラーで官能検査を行なった結果の総合評価を表1に、α化ソバ粉の色調を表2に示す。
[比較例1]
ロール製粉にて粉砕した蛋白質含有量12.50%のソバ粉について、二軸エクストルーダーの処理条件を実施例1と同様にしてα化処理を行った。このとき、二軸エクストルーダーの押出し圧力は55〜60kg/cm2であり、α化ソバ加工品のα化度は99%以上であった。得られたソバ加工物を実施例1と同様に粉砕し、ソバ乾麺の試作を行ったが、製麺時でも落麺は見られなかった。しかし、この乾麺について試食を行ったところ、若干焦げ臭が目立ち、ソバとしての風味が弱く感じられた。また色調も赤味が強く、一般のソバとしては色が悪い部類に入ってしまうものであった。このソバ麺に関して、10名のパネラーで官能検査を行なった結果の総合評価を表1に、α化ソバ粉の色調を表2に示す。
表1より、高い温度(120〜150℃)で処理した従来のα化ソバ粉使用のソバ麺は、焦げ臭が強く、味もソバの風味とは少し違い、また、蛋白質含量が12.50%と多い比較例1は、若干焦げ臭を有し、弱いがα化ソバ独特の味がするのに比べて、本発明の実施例1及び2は、ソバの風味が強く、すなわちソバ特有の風味を維持し、普通のソバと遜色ないソバが得られたことがわかった。
表2より、本発明の実施例1及び2で得られたα化ソバ粉の乾色(通常状態)と湿色(水と粉を1:1で混ぜ、ペースト状にしたものを測定)は、普通ソバ粉(エクストルーダー加工していない一般的なソバ粉)と比べて、L値(明るさ)、a値(高いほど赤色の着色度が強い)、b値(高いほど黄色の着色度が強い)において遜色がなく、また、比較例1(蛋白質含有量12.50%)のソバ粉に比べてL値、a値、b値においてより優れていることがわかった。

Claims (10)

  1. 二軸エクストルーダーを用いて、蛋白質含有率10重量%以下のソバ粉に0.04〜0.16L/kg/hrで加水しながら、処理温度50〜100℃、押出し圧力20〜70kg/cm2で、前記ソバ粉をα化処理することを特徴とするα化ソバ粉の製造方法。
  2. α化処理により、α化度95%以上とすることを特徴とする請求項1記載のα化ソバ粉の製造方法。
  3. α化処理後、平均粒径120μm以下に粉砕することを特徴とする請求項1又は2記載のα化ソバ粉の製造方法。
  4. 蛋白質含有率8重量%以下のソバ粉を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法。
  5. 0.05〜0.12L/kg/hrで加水することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法。
  6. 処理温度が50〜80℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法。
  7. 押出し圧力が50〜70kg/cm2であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法。
  8. 二軸エクストルーダーの軸回転速度が100〜200rpmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のα化ソバ粉の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載の製造方法により得られたα化ソバ粉。
  10. 請求項9記載のα化ソバ粉を配合したソバ食品。
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