本発明は、工作機械等の産業機械で使用するリニアモータに関する。
従来から、工作機械等の産業機械では、高速、高精度化を実現するための手段としてリニアモータが使用されている。このようなリニアモータの中で、特に移動距離が長ストロークの機械において、高価な永久磁石を可動子側に配置することで、永久磁石の使用量を少なくして、モータの低コスト化を実現したリニアモータがある(特許文献1)。
図17(a)は、上記特許文献に開示された従来のリニアモータである。また同(b)は、従来のリニアモータの永久磁石の着磁方向を示す図である。更に、図18は、従来のリニアモータの交流巻線の接続を示す図である。そして、図19は、上記特許文献に開示された従来のリニアモータに採用された台形形状の固定子突極を示す図である。図17(a)において、12は固定子であり例えば工作機械のベッドに固定される。固定子12は例えば電磁鋼板を積層して形成され、表面にはピッチPで固定子突極10が形成されている。また、11は可動子であり例えば工作機械のテーブルに固定され、工作機械のベッドとテーブル間に設けたころがりガイド等で図17のX軸方向に移動可能に支持される。可動子11も固定子12と同様、例えば電磁鋼板を積層して形成される。さらに、13,14,15は可動子1を構成するU,V,W相のティースであり、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するP/3ピッチだけずらして配置されている(各ティースのピッチは4P+P/3)。16,17,18は各ティースに巻回されたU,V,W相の交流巻線、19は可動子11の表面にN,S,N,・・の順に交互に配置された永久磁石であり、各相ティースには(b)で示すようにN,Sを一組とすると3組の永久磁石がピッチPで配置されている。20は可動子磁気ヨーク、21は固定子磁気ヨーク、22は交流巻線16,17,18にU→VWの方向に電流を与えた状態における磁束の様子を表している。尚、交流巻線16,17,18は、図18に示すようにU相,V相,W相が中性点で接続されているスター巻線に結線されている。
今、交流巻線16,17,18に電流を印加すると、3相のティースはY軸方向のプラスあるいはマイナス方向に励磁される。その際、永久磁石19のうち、交流巻線の励磁方向と同一の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は強められ、励磁方向と反対の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は弱められるため、各相のティースはN極もしくはS極のどちらか一方に励磁され、N極もしくはS極の大きな一つの磁極となる。そして各ティースおよび固定子側を通過した磁束は図17の22に示すような閉ループを構成する。この時、可動子と固定子の位置に応じた磁気吸引力が生ずることで、可動子に推力が発生する。
さらに詳しく磁束の流れについて説明する。今、U→V,W相、すなわち交流巻線16は図示した巻線方向、交流巻線17,18には図示した巻線方向と反対方向に電流を流すと、図17のティース13はS極に、ティース14,15はN極になり、磁束22で示すように、磁束はティース13からティース14,15に流れ、つぎに固定子12を通って再びティース13に戻るという磁路を形成する。すると、可動子11にはX軸方向に磁気吸引力が働き推力が発生する。
図19に開示した台形形状の固定子突極は、リニアモータに電流を印加した場合に、ピーク推力を向上するために固定子突極の根元の部分を広く形成して固定子突極の磁気飽和を緩和する目的で採用される。
図17に示した従来のリニアモータの特徴は、高価な永久磁石を可動子側に配置しているので、リニアモータのストロークが長くなる場合には永久磁石の使用量が少なく済むため、リニアモータの低コスト化を実現できることである。また、可動子の永久磁石19で構成された各相の複数の磁極を一つの巻線で励磁する巻線方式にしたので、巻線長が短くなり、電流が巻線内を流れる電気抵抗による損失、いわゆる銅損が小さくなり効率が高くなるという特徴も有する。
尚、交流巻線の接続方法については、図18に示したスター巻線の他にも、Δ巻線を採用することも可能である。
特開2002−238241号公報の従来技術を示す図8
しかし、上述したような従来のリニアモータには以下に説明するような課題があった。
一般的に、工作機械においては、なめらかな加工面を得るために、リニアモータは一定の推力で各テーブルを駆動する必要がある。したがって、リニアモータの推力リップルは極力小さくする必要がある。ところが、従来のリニアモータにおいては、可動子11に設けられた永久磁石19のピッチと固定子12に設けられた固定子突極10の配置関係に起因して、比較的大きな推力リップルが発生してしまうという問題があった。
次に従来のリニアモータの推力リップルの発生周期について図17により説明する。リニアモータの推力リップルは、ティース13,14,15が固定子12を通過するときのパーミアンス変化に起因して発生する。今、ティース13が固定子突極10に対して移動していくと、ティース13は周期P/2毎に固定子突極10の右側、あるいは左側のいずれかの端部を通過し、この時のパーミアンス変化が最も大きくなる。これにより、ティース13が発生する推力リップル波形は周期P/2を主成分とした波形となる。一方、ティース14,15は、ティース13に対してX軸方向に相対的に、P/3だけずらして配置してある。このため、可動子11が移動していくと、P/2の1/3にあたるP/6周期毎にティース13,14,15のいずれかが固定子突極10の端部を通過することになり、P/6周期の推力リップルが発生する。
また、ティースが固定子突極の左側と右側を通過するときでも若干のパーミアンス変化が生ずるため、P/6周期の半分のP/3周期の推力リップルも発生する。さらに図19においては、固定子突極が台形形状になっており、先端部の幅が(P/2)−(ΔP×2)になっている。このような状況では、固定子突極の角部は、固定子突極の幅がP/2の時と比べるとΔPだけずれているため、ΔPのリップル周期が発生する。さらに、図示していないが、固定子突極が台形形状ではなく図17のような長方形で、固定子突極の幅が(P/2)−(ΔP×2)である場合においても、台形形状の固定子突極の場合と同様の理由で、固定子突極の角部のずれ量ΔPに相当するリップル周期が発生する。かくして図17に示す従来のリニアモータの推力リップル波形は周期P/6を主成分として、それに周期P/3が重畳した波形となり、図19のような固定子突極が台形形状の場合には、さらに、周期ΔPが重畳した波形となるのである。
本発明は、上記問題点を解決するもので、可動子の永久磁石と固定子突極の配置を工夫することにより推力リップルを低減したリニアモータを提供することを目的とする。
上記のような問題点を解決するために、本発明におけるリニアモータは、軟磁性体で形成され表面に複数の固定子突極と固定子凹部を交互に備えた固定子と、前記固定子との間に所定の間隔をもって移動可能に支持された可動子とを含み、可動子は、軟磁性体で形成され可動子の移動方向にそれぞれ相対的に基準磁極ピッチPに対してP/3だけずれた位置に配置された3組のティースと、永久磁石のN,S極を一組とし、前記ティースの固定子に対向する面にNm組配置された永久磁石と、前記ティースの外周に巻回された3相交流巻線とを備えた可動子を有するリニアモータにおいて、
Nm×P間隔毎に繰返し配置された固定子突極グループを構成するNm個の前記固定子突極もしくは前記固定子凹部、または前記各ティースのNm個のS極永久磁石もしくはN極永久磁石のうち少なくとも一つが、基準磁極ピッチPに対して、可動子の移動方向に、
±(P/6)×(m/Nm)但し、m:任意の整数(0<m<NmかつNm mod m=0)
もしくは、
±(P/3)×(m/Nm)但し、m:任意の整数(0<m<NmかつNm mod m=0)
だけずれて配置されていることを特徴とする。
Nm×P間隔毎に繰返し配置された固定子突極グループを構成するNm個の前記固定子突極もしくは前記固定子凹部、または前記各ティースのNm個のS極永久磁石もしくはN極永久磁石が、基準磁極ピッチPもしくは基準磁極ピッチPに対して、可動子の移動方向に、
±(P/6)×(m/Nm)但し、m:任意の整数(0<m<NmかつNm mod m=0)
もしくは、
±(P/3)×(m/Nm)但し、m:任意の整数(0<m<NmかつNm mod m=0)
だけずれて配置するようにして、推力リップルの成分であるP/6やP/3周期のリップルを相殺するようにしたので、高価な永久磁石を可動子側に配置することで低コストを実現し、なおかつ永久磁石で構成された各相の複数の磁極を一つの巻線で励磁する巻線方式にすることでモータ損失を低減し高効率化を実現しながら、従来リニアモータの課題であった推力リップルを低減したリニアモータを提供することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施例1に係るリニアモータを示す図である。また、図2は実施例1のリニアモータの原理を説明する図である。図1において、12は固定子、10は固定子突極、11は可動子、13,14,15は可動子11を構成するU,V,W相のティース、16,17,18は各ティースに巻回されたU,V,W相の交流巻線、19は可動子11の表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、各ティースに6個づつ、S,Nを一組とすると、ピッチPの間隔で3組の永久磁石組が配置されている。そして、ティース13,14,15は、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するP/3ピッチだけずらして配置されている。これらの符号は従来のリニアモータを示す図17と同じである。
一方、固定子突極10は、その幅が永久磁石19の幅と同じP/2の幅で構成されており、各相ティースの3組の永久磁石組に相当する3個の固定子突極を1グループとして、1個の基準固定子突極を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/3)だけずれるように配置し、3個の固定子突極グループをピッチP×3毎に繰り返して配置している。
より具体的に説明すると、まず、基準固定子突極を10a,10d,10eのようにピッチP×3毎に繰返し配置する。次に、基準固定子突極である10aの両側に位置する10b,10cを基準固定子突極10aとの間隔がP−(P/6)×(1/3)もしくは、P+(P/6)×(1/3)となるように配置するのである。また、10d,10eに代表される基準固定子突極の両側に位置する固定子突極についてもそれぞれ同様の配置とし、ピッチP×3毎に繰返し配置するのである。
次に、実施例1のリニアモータが実現する推力リップル低減効果について、その原理を説明する。
従来のリニアモータを示す図17において、U,V,Wの各相ティース13,14,15に固定された永久磁石19はS,Nを一組とすると3組がピッチPで配置され、同じく固定子12の固定子突極10もピッチPで配置されている。このように3組の永久磁石19と固定子突極10は同じピッチPで互いに向かい合って配置され、3組の永久磁石19と固定子突極には、ほぼ同じ磁束が生成されるため、結果的に、3組の永久磁石19と固定子突極の間には、それぞれ、ほぼ同じ大きさで、同じリップル周期(P/6)の推力が発生することになる。
実施例1では、これら3組の永久磁石19と固定子突極の間に発生する推力リップルを、固定子突極のピッチをずらして配置することにより相殺する構造とした。
次に推力リップルを低減する実施例1の発明による固定子突極の配置について図2を用いて説明する。図2は、U相ティース13の3組の永久磁石19が発生する推力について示した図であり、横軸は固定子に対する可動子位置、縦軸は推力を示している。今、永久磁石と固定子突極10aの間に発生する推力波形を波形21、その他の2組の永久磁石と固定子突極10b,10cが発生する推力波形を波形22,23とすると、固定子突極10a,10b,10cをそれぞれ推力リップルの周期であるP/6の1/3ピッチだけ相対的にずらして配置すれば、それぞれの推力波形も、図2に示すようにリップル周期P/6の1/3ピッチだけ相対的にずれた関係となり、波形21,22,23を合算した波形は波形24のように推力リップルが消え一定の波形となる。
以上説明したように、固定子12の固定子突極を上記のような関係に配置することにより、リニアモータの推力リップルを低減することができる。
尚、実施例1の発明によるリニアモータの構成は、基本的に3個の固定子突極を相対的にずらして配置する構成であるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ3の倍数組あれば、各ティースに配置した永久磁石の総組数に相当する固定子突極数の1/3づつを、それぞれ相対的にリップル周期P/6の1/3だけずらして配置することにより実施例1と同様の効果を得ることができる。尚、各相ティースの組数が6組、9組・・・と多くなると、リップル周期P/6の1/3だけずらすという固定子突極の配置の組合せが多くなるが、それらを規則的にまとめると次のようになる。すなわち、Nmを各相ティースに配設した永久磁石のS,Nの組数、Pを永久磁石組のピッチとすると、Nm個の固定子突極を1グループとして、Nm/3個を基準固定子突極としてPの基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りのNm×(2/3)個のうち、Nm/3個を基準磁極ピッチPの位置に対してX軸方向に−(P/6)×(1/3)だけずれた位置に配置し、最後のNm/3個を基準磁極ピッチPの位置に対してX軸方向に+(P/6)×(1/3)だけずれた位置に配置し、Nm個の固定子突極のグループをNm×P毎に繰返し配置すればよい。また、Nm×P毎に繰返し配置したNm個の固定子突極で構成されるグループ内の固定子突極の配置は、上述した条件を満たしていれば、必ずしも同じ配置である必要はない。
また、上記ずれ量の(P/6)項を(P/3)に変更すれば、リップル周期P/3成分のリップルを低減することもできる。
図3は、実施例2に係るリニアモータを示す図である。図3において、12は固定子、10は固定子突極、11は可動子、13,14,15は可動子11を構成するU,V,W相のティース、16,17,18は各ティースに巻回されたU,V,W相の交流巻線、19は可動子11の表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、各ティースに6個づつ、S,Nを一組とすると、ピッチPの間隔で3組の永久磁石組が配設されている。そして、ティース13,14,15は、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するP/3ピッチだけずらして配置されている。これらは従来のリニアモータを示す図17の構成と同じである。また、28は固定子凹部である。
ここで、実施例2のリニアモータの構成について説明する。実施例1のリニアモータが、固定子突極10の幅を同じにして、基準固定子突極である固定子突極10aに対して、その両側に位置する10b、10cの間隔を、それぞれP−(P/6)×(1/3)もしくはP+(P/6)×(1/3)だけずれた位置に配置し、固定子突極10a,10b,10cをピッチP×3毎に繰返し配置しているのに対して、実施例2のリニアモータは、図3に示すように、固定子凹部28の幅を同じにして、3個の固定子凹部の配置をリップル周期P/6の1/3だけ相対的にずらして配置したものである。すなわち、基準固定子凹部である固定子凹部28aに対して、その両側に位置する28b、28cの間隔を、それぞれP−(P/6)×(1/3)もしくはP+(P/6)×(1/3)だけずれた位置に配置し、固定子凹部28a,28b,28cをピッチP×3毎に繰返し配置している。以上のように配置することで、原理的に実施例1と同様の効果が得られ、推力リップルを低減することができる。
尚、実施例2のリニアモータは原理的に、実施例1と同じであるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ3の倍数組であれば、実施例1と同様に本発明を適用可能である。
図4は、実施例3に係るリニアモータを示す図である。また、図5は実施例3のリニアモータの原理を説明する図である。図3において、12は固定子、10は固定子突極、11は可動子、13,14はU,W相のティース、16は各ティースに巻回されたU相の交流巻線、19は可動子11の表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、各ティースに8個づつ、S,Nを一組とすると、ピッチPの間隔で4組の永久磁石組が配設されている。そして、ティース13,14,15は、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するP/3ピッチだけずらして配置されている。これらの符号は従来のリニアモータを示す図17と同じである。そして、固定子突極10は、その幅が永久磁石19の幅と同じP/2の幅で構成されており、各相ティースの永久磁石組数に相当する4個の固定子突極を1グループとして、2個の基準固定子突極を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/2)だけずれた位置に配置し、この4個の固定子突極グループをピッチP×4毎に繰返し配置している。より具体的に説明すると、まず、基準固定子突極である10f,10gを図4に示すようにピッチP×2毎に配置する。次に、基準固定子突極である10f,10gの右側に位置する10h,10iを基準固定子突極10f,10gとの間隔がP−(P/6)×(1/2)もしくは、P+(P/6)×(1/2)となるように配置し、固定子突極10f,10g,10h,10iのグループを、ピッチP×4で繰返し配置するのである。
次に、実施例3のリニアモータが実現する推力リップル低減効果について、その原理を説明する。
U,V,Wの各相ティース13,14,15に固定された永久磁石19はS,Nを一組とすると4組がピッチPで配置されている。この時、固定子12の固定子突極10がピッチPで配置されているとすると。4組の永久磁石19と固定子突極10は同じピッチPで互いに向かい合って配置され、4組の永久磁石19と固定子突極には、ほぼ同じ磁束が生成されるため、結果的に、4組の永久磁石19と固定子突極の間には、それぞれ、ほぼ同じ大きさで、同じリップル周期P/6の推力が発生することになる。
実施例3では、これら4組の永久磁石19と固定子突極の間に発生する推力リップルを、固定子突極のピッチをずらして配置することにより打消す構造とした。
次に推力リップルを低減する実施例3の発明による固定子突極の配置について図5を用いて説明する。図5は、U相ティース13の4組の永久磁石19が発生する推力について示した図であり、横軸は固定子に対する可動子位置、縦軸は推力を示している。今、2組の永久磁石と固定子突極10fおよび10gの間に発生する推力波形を波形31、他の2組の永久磁石と固定子突極10hおよび10iの間に発生する推力波形を波形32とすると、固定子突極10f,10g,10h,10iを10f,10gと10h,10iの2組にわけ、基準固定子突極である10f,10gに対して、10h,10iを推力リップルの周期であるP/6の1/2ピッチだけ相対的にずらして配置することにより、それぞれの推力波形は、図5に示すようにリップル周期P/6の1/2ピッチだけ相対的にずれた関係となる。その結果、波形31,32を合算した波形も、波形33に示すように推力リップルが消え一定の波形となる。
以上説明したように、固定子12の固定子突極を上記のような関係に配置することにより、リニアモータの推力リップルを低減することができる。
尚、実施例3の発明によるリニアモータの構成は、基本的に2個の固定子突極をずらして配置する構成であるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ偶数組であれば、各ティースに配置した永久磁石の総組数の1/2づつを、それぞれ相対的にリップル周期P/6の1/2だけずらして配置することにより実施例1と同様の効果を得ることができる。尚、各相ティースの組数が6組、8組・・・と多くなると、リップル周期P/6の1/2だけずらすという固定子突極の配置の組合せが多くなるが、それらを規則的にまとめると次のようになる。すなわち、Nmを各相ティースに配設した永久磁石のS,Nの組数、Pを永久磁石組のピッチとすると、Nm個の固定子突極を1グループとして、Nm/2個を基準固定子突極として基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りのNm/2個を基準磁極ピッチPの位置に対してX軸方向に−(P/6)×(1/2)、もしくは+(P/6)×(1/2)のずれた位置に配置し、Nm個の固定子突極のグループをNm×P毎に繰返し配置すればよい。また、Nm×P毎に繰返し配置したNm個の固定子突極で構成されるグループ内の固定子突極の配置は、上述した条件を満たしていれば、必ずしも同じ配置である必要はない。
また、上記ずれ量の(P/6)項を(P/3)に変更すれば、リップル周期P/3成分のリップルを低減することもできる。
図6は、実施例4に係るリニアモータを示す図である。図6において、12は固定子、10は固定子突極、11は可動子、13,14はU,W相のティース、16は各ティースに巻回されたU相の交流巻線、19は可動子11の表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、各ティースに8個づつ、S,Nを一組とすると、ピッチPの間隔で4組の永久磁石組が配設されている。そして、ティース13,14,15は、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するP/3ピッチだけずらして配置されている。これらの符号は従来のリニアモータを示す図17と同じである。また、28は固定子凹部である。
ここで、実施例4のリニアモータの構成について説明する。実施例3のリニアモータが、固定子突極10の幅を同じにして、各相ティースの永久磁石組数に相当する4個の固定子突極を1グループとして、2個の基準固定子突極を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように配置し、この4個の固定子突極グループをピッチP×4毎に繰返し配置しているのに対して、実施例4のリニアモータは、図6に示すように、固定子凹部28の幅を同じにする。そして、各相ティースの組数に相当する4個の固定子凹部を1グループとして、そのうちの2個の基準固定子凹部を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように配置したものである。より具体的に説明すると、基準固定子突極である28f,28gを図6に示すようにピッチP×2毎に配置し、次に、基準固定子突極である28f,28gの右側に位置する28h,28iを基準固定子突極28f,28gとの間隔がP−(P/6)×(1/2)もしくは、P+(P/6)×(1/2)となるように配置し、固定子突極28f,28g,28h,28iのグループを、ピッチP×4で繰返し配置している。
以上のように配置することで、原理的に実施例3と同様の効果が得られ、推力リップルを低減することができる。
尚、実施例4のリニアモータは原理的に、実施例3と同じであるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のS,Nの組数は、それぞれ偶数組であれば、実施例3と同様に本発明を適用可能である。
図7は、実施例5に係るリニアモータを示す図で、従来のリニアモータを示す図17の各相ティースの永久磁石配置を、推力リップルを低減する配置に変更した図である。尚、その他の構成は図17と同じである。実施例1では、推力リップルを低減するために、各相ティースの3組の永久磁石組に相当する3個の固定子突極を1グループとして、1個の基準固定子突極を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/3)だけずれるように配置し、3個の固定子突極グループをピッチP×3毎に繰り返して配置した。
これに対して、実施例5では、固定子突極は従来のリニアモータと同様基準磁極ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図7に示すように、永久磁石19のS極の幅を固定子突極ピッチPに対してP/2とし、永久磁石19aに対して、永久磁石19b,19cを相対的に(P/6)×(1/3)だけずれるように、19aと19bの間隔をP−(P/6)×(1/3)、19bと19cの間隔をP+(P/6)×(2/3)になるように配置してある。
以上のように各相ティースの永久磁石を配置することにより、実施例1と同じ原理により、3組の永久磁石組が発生する推力リップルが、お互いに打消され推力リップルを低減することができる。
尚、実施例5の発明によるリニアモータの構成は、基本的に3個の固定子突極を相対的にずらして配置する構成であるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ3の倍数組であれば、各ティースに配置したS極永久磁石の1/3づつを、それぞれ相対的にリップル周期P/6の1/3だけずらして配置することにより実施例1と同様の効果を得ることができる。尚、各相ティースの組数が6組、9組・・・と多くなると、リップル周期P/6の1/3だけずらすという永久磁石の配置の組合せが多くなるが、それらを規則的にまとめると次のようになる。すなわち、Nmを各相ティースに配設した永久磁石のS,Nの組数、Pを等間隔に配置された固定子突極のピッチである基準磁極ピッチとすると、各相ティースのS極永久磁石のNm/3個を基準固定子突極として基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りのNm×(2/3)個のうち、Nm/3個を基準磁極ピッチPの位置に対してX軸方向に−(P/6)×(1/3)、最後のNm/3個を基準磁極ピッチPの位置に対してX軸方向に+(P/6)×(1/3)なるように配置すればよい。また、各ティースの永久磁石の配置については、上述した永久磁石の配置条件を満たしていれば、U相,V相,W相のティースで必ずしも同じ配置である必要はない。
また、上記ずれ量の(P/6)項を(P/3)に変更すれば、リップル周期P/3成分のリップルを低減することもできる。
図8は、実施例6に係るリニアモータを示す図で、従来のリニアモータを示す図17の各相ティースの永久磁石配置を、推力リップルを低減する配置に変更した図である。尚、その他の構成は図17と同じである。
実施例5では、固定子突極は従来のリニアモータと同様ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図7に示すように、永久磁石19のS極の幅を固定子突極ピッチPに対して、P/2とし、永久磁石19aに対して、永久磁石19b,19cを相対的に(P/6)×(1/3)だけずれるように、19aと19bの間隔をP−(P/6)×(1/3)、19bと19cの間隔をP+(P/6)×(2/3)になるように配置した。
これに対して、実施例6では、固定子突極は従来のリニアモータと同様ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図8に示すように、永久磁石19のN極の幅を固定子突極ピッチPに対してP/2とし、永久磁石19dに対して、永久磁石19e,19fを相対的に(P/6)×(1/3)だけずれるように、19dと19eの間隔をP−(P/6)×(1/3)、19eと19fの間隔をP+(P/6)×(2/3)になるように配置した。
以上のように各相ティースの永久磁石を配置することにより、実施例5と同じ原理により、3組の永久磁石組が発生する推力リップルが、お互いに打消され推力リップルを低減することができる。
尚、実施例6のリニアモータは原理的に、実施例5と同じであるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ3の倍数組であれば、実施例5と同様に本発明を適用可能である。
図9は、実施例7に係るリニアモータを示す図で、実施例3を示す図4の固定子突極をピッチPで均等に配置し、その替わりに、各相ティースの永久磁石配置を、推力リップルを低減する配置に変更した図である。尚、その他の構成は図17と同じである。実施例3では、推力リップルを低減するために、各相ティースの永久磁石組数に相当する4個の固定子突極を1グループとして、2個の基準固定子突極を基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りの2個の固定子突極を、基準磁極ピッチPの位置に対して、それぞれの相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように配置し、この4個の固定子突極グループをピッチP×4毎に繰返し配置した。
これに対して、実施例7では、固定子突極は従来のリニアモータと同様ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図9に示すように、永久磁石19のS極の幅を固定子突極ピッチPに対してP/2とし、S極永久磁石19g,19hを基準磁極ピッチPの位置に配置し、S極永久磁石19i,19jを、永久磁石19g,19hに対して相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように、永久磁石19gと19iの間隔と、永久磁石19hと19jの間隔をそれぞれP+(P/6)×(1/2)になるように配置してある。
以上のように各相ティースの永久磁石を配置することにより、実施例3と同じ原理により、4組の永久磁石組が発生する推力リップルが、お互いに打消され推力リップルを低減することができる。
尚、実施例7の発明によるリニアモータの構成は、基本的に2組の永久磁石組をずらして配置する構成であるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ偶数組であれば、各ティースに配置した永久磁石の総組数の1/2づつを、それぞれ相対的にリップル周期P/6の1/2だけずらして配置することにより実施例1と同様の効果を得ることができる。尚、各相ティースの組数が6組、8組・・・と多くなると、リップル周期P/6の1/2だけずらすという固定子突極の配置の組合せが多くなるが、それらを規則的にまとめると次のようになる。すなわち、Nmを各相ティースに配設した永久磁石のS,Nの組数、Pを等間隔に配置した固定子突極のピッチである基準磁極ピッチとすると、各相ティースのS極永久磁石のNm/2個を基準固定子突極として基準磁極ピッチPの位置に配置し、残りのNm/2個を基準位置に対してX軸方向に−(P/6)×(1/2)、もしくは+(P/6)×(1/2)の位置に配置すればよい。また、各ティースの永久磁石の配置については、上述した永久磁石の配置条件を満たしていれば、U相,V相,W相のティースで必ずしも同じ配置である必要はない。
また、上記ずれ量の(P/6)項を(P/3)に変更すれば、リップル周期P/3成分のリップルを低減することもできる。
図10は、実施例8に係るリニアモータを示す図で、実施例3を示す図4の固定子突極をピッチPで均等に配置し、その替わりに、各相ティースの永久磁石配置を、推力リップルを低減する配置に変更した図である。尚、その他の構成は図4と同じである。
実施例7では、推力リップルを低減するために、固定子突極は従来のリニアモータと同様ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図9に示すように、永久磁石19のS極の幅を固定子突極ピッチPに対してP/2とし、S極永久磁石19g,19hを基準磁極ピッチPの位置に配置し、S極永久磁石19i,19jを、永久磁石19g,19hに対して相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように、永久磁石19gと19iの間隔と、永久磁石19hと19jの間隔をP+(P/6)×(1/2)になるように配置した。
これに対して、実施例8では、固定子突極は従来のリニアモータと同様ピッチPで配置し、永久磁石の配置を、図10に示すように、永久磁石19のN極の幅を固定子突極ピッチPに対してP/2とし、N極永久磁石19k,19Lを基準磁極ピッチPの位置に配置し、S極永久磁石19m,19nを、永久磁石19k,19Lに対して相対的に(P/6)×(1/2)だけずれるように、永久磁石19kと19mの間隔と、永久磁石19Lと19nの間隔をP+(P/6)×(1/2)になるように配置してある。
以上のように各相ティースの永久磁石を配置することにより、実施例7と同じ原理により、4組の永久磁石組が発生する推力リップルが、お互いに打消され推力リップルを低減することができる。
尚、実施例8のリニアモータは原理的に、実施例7と同じであるため、U相,V相,W相の各ティースに配置した永久磁石19のN,Sの組数は、それぞれ偶数組であれば、実施例7と同様に本発明を適用可能である。
以上、実施例1〜実施例8について説明したが、例えば、実施例3を示す図4のリニアモータにおいて、固定子突極10fに対して、固定子突極10h,10g,10iをそれぞれ、基準磁極ピッチPに対して、+(P/6)×(1/4),+(P/6)×(2/4),+(P/6)×(3/4)だけずれた位置に配置にすると、4つの推力リップル波形がリップル周期P/6の1/4づつ、ずれた配置となり、推力リップルはお互いに打消される。
このように、リップル周期P/6を打消す配置は上記実施例1,3の他にもあるが、固定子突極のずれ量が、リップル周期であるP/6の(m/Nm)倍(但し、m:任意の整数、0<m<NmかつNm mod m=0)という関係であればP/6周期のリップルを打消すことができる。この関係を判り易くまとめると次のようになる。すなわち、
Nm個の固定子突極のうち少なくとも一つが、基準磁極ピッチPに対して、可動子の移動方向に、
±(P/6)×(m/Nm)…(1)
但し、m:任意の整数(0<m<NmかつNm mod m=0)
だけずらして配置された関係にある。
また、背景技術で説明したように、図17,図19で説明した従来のリニアモータにおいて発生する周期P/3、周期ΔPのリップル成分についても、固定子突極の配置を上述した(1)式の(P/6)項をそれぞれP/3やΔPに変更した式に従って、ずらして配置すれば、上述した理由により、これらのリップル成分も打消すことができる。
以上の考え方は、固定子凹部やS極永久磁石、N極永久磁石の配置をずらした発明も含めて実施例1〜実施例8の全てに適用可能である。
ただし、他の例として、図4の固定子突極10fに対して、固定子突極10gを基準磁極ピッチPに対して+(P/6)×(1/2)だけずれた位置に配置し、固定子突極10fに対する10hの配置と、固定子突極10gに対する10iの配置を、同じ量だけリップル周期P/6の範囲内で任意にずらして配置すると、固定子突極10f,10hで合成される推力リップル波形と、固定子突極10g,10iで合成される推力リップル波形がリップル周期の1/2だけずれた配置となるため、推力リップルはお互いに打消される。
このように、リップル周期P/6を打消す固定子突極の配置は上述した±(P/6)×(m/Nm)で求められるずれ配置の他にも存在することがわかる。そこで、これらの配置も含めて、P/6のリップル周期を打消すことができる条件を考えてみると、リップル周期P/6を360°として、Nm個の固定子突極グループを構成する個々の固定子突極の基準磁極ピッチPに対するずれ量を角度に換算し、その値のsinの合計が0となるように配置すれば、Nm個の固定子突極のリップル波形は合計すると打消されることがわかる。この関係を数式で表すと、
Nm個の固定子突極グループを構成する個々の固定子突極の基準磁極ピッチPからのずれ量をそれぞれP1,P2,…Pnとすると、ずれ量P1,P2,…Pnは、
Σsin[(360×Pn)/(P/6)] =0:nは整数,n=1〜Nm…(2)
という式から求められるずれ量となる。
例えば、上述した固定子突極10fに対して、固定子突極10gを基準磁極ピッチPに対して+(P/6)×(1/2)だけずれた位置に配置し、固定子突極10fに対する10hの間隔と、固定子突極10gに対する10iの間隔を、共に基準磁極ピッチPに対して+(P/6)×(1/6)だけずらして配置した場合について考えてみる。今、10fの位置を0°とすると、10gはsin180°、10hはsin60°、10iはsin(180°+60°)となり、sin0°+sin180°+sin60°+sin240°=0となる。これは(2)式の条件を満たしているため、リップル周期P/6は打消される。
また、背景技術で説明したように、図17,図19で説明した従来のリニアモータにおいて発生する周期P/3、周期ΔPのリップル成分についても、固定子突極の配置を上述した(2)式の(P/6)項をそれぞれP/3やΔPに変更した式に従って、ずらして配置すれば、上述した理由により、これらのリップル成分も打消すことができる。
以上の考え方は、固定子凹部やS極永久磁石、N極永久磁石の配置をずらした発明も含めて実施例1〜実施例8の全てについて適用可能である。
さらに、周期P/6、周期P/3、周期ΔPのうち2つのリップル成分を低減するために、例えば、周期P/6のリップル成分をS極永久磁石の配置を上記(1)式による配置にして打消し、周期P/3のリップル成分を、固定子突極を上記(2)式による配置にして打消すというように、上記実施例1〜8を組合せて適用したリニアモータも本発明に含まれる。
図11は実施例9に係るリニアモータを示す図である。また、図12(a)は実施例9のリニアモータの原理を説明する図である。図11において、12は固定子、10は固定子突極、11は可動子、13,14、15はU,W相,V相のティース、16,17,18は各ティースに巻回されたU相の交流巻線、19は可動子11の表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、永久磁石のS,N極を一組とすると、各ティースには、ピッチPの間隔で3組の永久磁石組が配設されている。そして、ティース13,14,15は、基準磁極ピッチPsの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するPs/3ピッチだけずらして配置されている。これらの符号は従来のリニアモータを示す図17と同じである。そして、固定子突極10はピッチPs毎に均等に配置されており、固定子突極幅はPs/2に設定されている。そして、ピッチPsは、各ティースの全永久磁石組数をNm組とすると、Ps=P×3×Nm/(3×Nm+1)もしくは、Ps=P×3×Nm/(3×Nm−1)の関係となる、いわゆるバーニア配列に設定されている。
次に、実施例9のリニアモータが実現する推力リップル低減効果について、図12(a)を用いて、その原理を説明する。図12(a)はU相,V相,W相のティースの全永久磁石数に相当する(Nm×3)+1個の永久磁石19と、図11に示したピッチPs=P×3×Nm/(3×Nm+1)の関係に配置した固定子突極10とを並べて示した図である。
図12(a)に示した永久磁石19と固定子突極10の位置関係を見ると、30aと30eでS極永久磁石と固定子突極が対向し、30aと30eの中間にあたる30cの位置に向かって、S極永久磁石と固定子突極のずれ量が徐々に広がるような関係、すなわち、全永久磁石に相当する3×Nm組の間で、永久磁石と固定子突極が階調的にずれていくバーニア関係になっている。さらに、各相ティースは、その端部に相当する永久磁石19a,19b,19cの位置を見ればわかるように、基準磁極ピッチPsの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するPs/3ピッチだけずれて配置されることになる。
以上のように永久磁石19と固定子突極10をバーニア配列することにより、永久磁石と固定子突極が階調的にずれるような関係に配置されるため、可動子11が移動する際のパーミアンス変化が緩やかになり、推力リップルが低減される。
尚、実施例9においては、各相ティースの永久磁石数が6個のモデルについて説明したが、その他の個数についても、上述したように、Ps=P×3×Nm/(3×Nm+1)もしくは、Ps=P×3×Nm/(3×Nm−1)の関係となるように永久磁石と固定子突極を配置することで、図11と同様に推力リップルを低減することができる。
また、実施例9を示す図11の各相ティースの幅を広げて、Nm組の永久磁石に、さらにn組(n:整数)の永久磁石を追加して取り付けることにより、実施例9よりも高いバーニア効果を得られ推力リップルを低減することができるようになる。その理由は、図12(a)において、S極永久磁石と固定子突極の相対位置は、30aから30cと、30cから30eまでが対称となっており、S極永久磁石は、30aもしくは30eから30cに向かって徐々に固定子突極との相対位置がずれていくような関係に配置されている。したがって、各ティースの幅を広げ、各ティースに配置した3組の永久磁石端に、30aから30cまでの幅になるように2組の永久磁石を追加することで、永久磁石と固定子突極の配置は、より理想的なバーニア配列にできるためである。
図12(b)は実施例10に係るリニアモータの3相ティース分の永久磁石と固定子突極の配置を示す図である。図12(b)において、12は固定子、10は固定子突極、19は図示しない3相のティース表面にピッチP/2毎にS,N,S・・の順に交互に配置された永久磁石であり、永久磁石のS,N極を一組とすると、各ティースには、ピッチPの間隔で3組の永久磁石組が配設されている。そして、固定子突極10はピッチPs毎に均等に配置されており、固定子突極幅はPs/2に設定されている。そして、ピッチPsは、各ティースの全永久磁石組数をNm組とすると、Ps=P×2×Nm/(2×Nm+1)もしくは、Ps=P×2×Nm/(2×Nm−1)の関係となるバーニア配列に設定されている。
実施例9においては、3相ティース13,14,15は、ピッチPの間隔で配置した3×Nm組の永久磁石に対して、固定子突極ピッチPsを、Ps=P×3×Nm/(3×Nm+1)もしくは、Ps=P×3×Nm/(3×Nm−1)の関係になるようにバーニア配列しているが、実施例10では、推力リップルを低減する別の実施例として、1相のティースにピッチPの間隔で配置したNm組の永久磁石に対して、固定子突極をバーニア配列した。
図12(b)は、Nm=3組の場合について、実施例10におけるバーニア配列を示した図である。S極永久磁石は、30fもしくは30hから30gに向かって徐々に固定子突極との相対位置がずれていく関係にあり、U相ティース間でみれば、永久磁石と固定子突極間で、同じ方向に力が働くように階調的にずれていくような関係になっている。つまり、1相のティースにピッチPの間隔で配置したNm組の永久磁石に対して、固定子突極をバーニア配列するためには、1相分のティースの2倍に相当する2×Nm組の永久磁石に対する固定子突極のバーニア配置を求め、実際に2×Nm組の半分に相当するNm組を1相のティース分として使用すればよい。具体的には、各ティースの永久磁石の組数をNm組として、固定子突極ピッチPsを、
Ps=P×2×Nm/(2×Nm+1)もしくは、Ps=P×2×Nm/(2×Nm−1)の関係になるような配置にするのである。
ただし、実施例10においても、実施例9と同様、3相の各ティースは、基準磁極ピッチPsの位置に対して、それぞれがX軸方向に相対的に電気角120°に相当するPs/3ピッチだけずらして配置しなければならない。つまり、図12(b)に示したバーニア配列を実際のリニアモータに適用する場合には、永久磁石19は、固定子突極に対して、相対的に19a,19b,19cの位置になるように配置される。
尚、実施例10においては、各相ティースの永久磁石数が6個のモデルについて説明したが、その他の個数についても、上述したように、Ps=P×2×Nm/(2×Nm+1)もしくは、Ps=P×2×Nm/(2×Nm−1)の関係となるように永久磁石と固定子突極を配置することで、推力リップルを低減することができる。
また、実施例10の各相ティースの幅を短縮して、Nm組の永久磁石から、n組(n:整数)の永久磁石を削除することにより、実施例10よりも高い推力を得られることができるようになる。その理由は、実施例10における理想的なバーニア配置となる1相ティースあたりNm組の永久磁石において、永久磁石の移動方向端に位置する永久磁石は、推力の発生割合が少ないため、この部分を削除することで、より少ないモータ体積で、より大きな推力を出すことが可能となるためである。ただし、バーニア配列に関しては理想的ではなくなるため、推力リップルは若干増加する。
また、別の実施例として、実施例1〜10において、図13に示すように永久磁石の端部に面取り、あるいはRを設けることにより、推力リップルをさらに低減することができる。これは、可動子11が移動し、永久磁石の端部が固定子突極の端部を通過する際に、エアギャップが徐々に変化するため、推力リップルの原因となる急激なパーミアンス変化が緩やかになるためである。また、図14のように永久磁石間にギャップを設けて配置する構造や、図15に示すような固定子突極の端部に面取り、あるいはRを設けることによっても、図13と同様の効果を得ることができる。
また、実施例1〜10において、固定子突極や固定子凹部の幅をP/2として説明したが、P/2以外の幅の場合についても、上述したようにΔP周期のリップル成分は残るものの、推力リップルの主成分はP/6周期のリップル成分であるため、本発明を適用することで、このP/6周期のリップル成分を打消すことにより、推力リップルを大幅に低減することができる。
また、図17に示した従来のリニアモータの固定子突極の形状を図16に示すような、固定子突極の先端部付近の幅をP/2で平行に形成して、固定子突極の途中から底部に向かって台形形状にすることにより、周期ΔPのリップルが発生しないリニアモータとすることができる。さらに、図19で示した台形形状の固定子突極と同様、固定子突極底部付近の磁気飽和によるピーク推力の減少を防ぐこともできる。このような形状の固定子突極を設けたリニアモータに本発明を適用することにより、P/6やP/3のリップル成分を低減し、さらにリップル周期リップル周期ΔPのない極めて推力リップルの低いリニアモータを提供することができる。
また、実施例1〜8を組合せることにより、2つ以上の周期の推力リップル成分を低減可能であることは既に説明したが、同様の理由により、実施例9〜10と実施例1〜8の発明を組合せて、2つ以上の周期の推力リップル成分を打消すことも可能である。
さらに、本発明は、可動子と固定子の間に発生する磁気吸引力を相殺するために、特開2001−119919に開示されているような、2個の固定子を固定子突極が向かい合うように所定の間隔で配置し、固定子間に可動子を移動可能に配置した磁気吸引力相殺型のリニアモータについては、それぞれの固定子側と可動子の関係は、本発明による構成と同じであるから、本発明を適用することが可能である。
本発明のリニアモータの実施例1を示す図である。
実施例1に適用した推力リップル低減技術の原理を説明した図である。
本発明のリニアモータの実施例2を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例3を示す図である。
実施例3に適用した推力リップル低減技術の原理を説明した図である。
本発明のリニアモータの実施例4を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例5を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例6を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例7を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例8を示す図である。
本発明のリニアモータの実施例9を示す図である。
実施例9に適用した推力リップル低減技術の原理を説明する図である。
実施例10に適用した推力リップル低減技術の原理を説明する図である。
実施例1〜実施例10において永久磁石の端部に面取りを設けた図である。
実施例1〜実施例10において永久磁石間にギャップを設けた図である。
実施例1〜実施例10において固定子突極の端部に面取りを設けた図である。
実施例1〜実施例10において固定子突極の上部の幅をP/2として、固定子突極の途中から台形形状にした図である。
従来のリニアモータを示す図である。
従来のリニアモータの交流巻線の接続を示す図である。
従来のリニアモータの台形形状の固定子突極を示す図である。
符号の説明
10 固定子突極、11 可動子、12 固定子、13,14,15 ティース、16,17,18 交流巻線、19 永久磁石。