本明細書では、実施形態および変形形態が図面に基づいて説明されている。なお、図面は、各形態について、共通する箇所には共通の符号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。また、一の形態で記述されていることは、適宜、他の形態についても適用することができる。さらに、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<回転電機10の概略構成>
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、電機子としての固定子20と、界磁としての可動子30とを具備している。固定子20は、固定子鉄心21と、固定子巻線22とを備えている。固定子鉄心21には、複数(本実施形態では、60個)のスロット21cが形成されており、複数(60個)のスロット21cには、固定子巻線22が巻装されている。なお、本実施形態では、固定子巻線22は、互いに位相が異なる複数(本実施形態では、3つ)の相コイル22cを備えている。つまり、本実施形態の回転電機10は、三相機である。
可動子30は、固定子20に対して移動可能に支持されており、可動子鉄心31と、可動子鉄心31に設けられている複数(本実施形態では、8極)の可動子磁極32(4組の一対の可動子磁極32a,32b)とを備えている。このように、本実施形態の回転電機10は、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)であり、毎極毎相スロット数Nsppは2.5である。つまり、本実施形態の回転電機10は、毎極毎相スロット数Nsppが整数でない分数スロット構成の回転電機である。
ここで、毎極毎相スロット数Nsppを帯分数で表したときの整数部分を整数部aとする。また、帯分数の真分数部分を既約分数で表したときの分子部分を分子部b、分母部分を分母部cとする。なお、整数部aは、0(ゼロ)または正の整数とし、分子部bおよび分母部cは、いずれも正の整数とする。また、三相の回転電機10では、分母部cは、2以上、かつ、3の倍数でない整数とする。本実施形態では、毎極毎相スロット数Nsppが2.5であり、整数部aは2、分子部bは1、分母部cは2である。また、本明細書では、毎極毎相スロット数Nsppの分子部bおよび分母部cを用いて、b/c系列の回転電機10と表記する。つまり、本実施形態の回転電機10は、1/2系列の回転電機10である。
さらに、固定子20に対する可動子30の移動方向を第一方向(矢印X方向)とする。また、固定子20と可動子30の対向方向を第二方向(矢印Y方向)とする。さらに、第二方向(矢印Y方向)のうちの固定子20側から可動子30側に向かう方向を第二方向可動子側(矢印Y1方向)とする。また、第二方向(矢印Y方向)のうちの可動子30側から固定子20側に向かう方向を第二方向固定子側(矢印Y2方向)とする。さらに、第一方向(矢印X方向)および第二方向(矢印Y方向)のいずれの方向に対しても直交する方向を第三方向(矢印Z方向)とする。
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型の円筒状回転電機である。よって、第一方向(矢印X方向)は、回転電機10の周方向に相当し、固定子20に対する可動子30の回転方向に相当する。また、第二方向(矢印Y方向)は、回転電機10の径方向に相当し、スロット21cの深さ方向に相当する。さらに、第三方向(矢印Z方向)は、回転電機10の軸線方向に相当する。
固定子鉄心21は、例えば、電磁鋼板21xが第三方向(矢印Z方向)に複数積層されて形成されている。複数の電磁鋼板21xは、例えば、ケイ素鋼板を用いることができ、複数の電磁鋼板21xの各々は、薄板状に形成されている。固定子鉄心21は、ヨーク部21aと、ヨーク部21aと一体に形成されている複数(本実施形態では、60個)のティース部21bとを備えている。
ヨーク部21aは、第一方向(矢印X方向)に沿って形成されている。複数(60個)のティース部21bは、ヨーク部21aから第二方向(矢印Y方向)(本実施形態では、第二方向可動子側(矢印Y1方向))に突出するように形成されている。また、第一方向(矢印X方向)に隣接するティース部21b,21bによって、スロット21cが形成されており、複数(60個)のスロット21cには、固定子巻線22が挿通されている。さらに、複数(60個)のティース部21bの各々は、ティース先端部21dを備えている。ティース先端部21dは、ティース部21bの第二方向可動子側(矢印Y1方向)の先端部をいい、第一方向(矢印X方向)に幅広に形成されている。
固定子巻線22は、例えば、銅などの導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。固定子巻線22の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて固定子巻線22に発生する渦電流損を低減することができ、回転電機10の効率が向上する。また、巻線成形に要する力を低減することができるので、成形性が向上して製作が容易になる。
固定子巻線22は、分数スロット構成の固定子20に巻装可能であれば良く、固定子巻線22の巻装方法は、限定されない。固定子巻線22は、例えば、二層重巻、同心巻、波巻によって巻装することができる。いずれの場合も、固定子巻線22は、複数のコイルサイド22aと、複数のコイルエンド22bと、を有している。複数のコイルサイド22aは、複数のスロット21cに収容されている部位をいう。複数のコイルエンド22bは、複数のコイルサイド22aの同一側端部をそれぞれ接続している部位をいう。
固定子巻線22の複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数の単位コイル22dを備えている。図2Aに示すように、二層重巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、一対のコイルサイド22a,22aと、一対のコイルエンド22b,22bと、を備えている。二層重巻の場合、複数の単位コイル22dの巻方向および巻ピッチは、いずれも同一であり、例えば、巻ピッチは、7スロットピッチ(7sp)に設定することができる。7スロットピッチ(7sp)は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数である。同心巻の場合、複数の単位コイル22dは、巻ピッチが異なる複数種類の単位コイル22dを備えている。後述するように、本実施形態の固定子巻線22は、同心巻で巻装されている。
図2Bに示すように、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、複数のコイルサイド22aと、複数のコイルエンド22bと、を備えている。複数のコイルエンド22bは、複数のコイルサイド22aの第三方向(矢印Z方向)の一端側の端部同士、および、複数のコイルサイド22aの第三方向(矢印Z方向)の他端側の端部同士を波巻構成になるように交互に接続している。
また、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々の巻ピッチは、例えば、7スロットピッチ(7sp)および8スロットピッチ(8sp)が交互に繰り返される。7スロットピッチ(7sp)は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数であり、短節巻部2SWが形成される。8スロットピッチ(8sp)は、毎極スロット数(7.5)より大きい直近の整数であり、長節巻部2LWが形成される。つまり、波巻の場合、複数の単位コイル22dの各々は、第一方向(矢印X方向)において、短節巻部2SWと長節巻部2LWとが交互に繰り返されている。固定子巻線22は、二層重巻、同心巻および波巻のいずれの場合であっても、後述する基本コイル70を構成することができる。
このように、本実施形態の固定子巻線22は、分布巻で巻装されている。分布巻では、固定子巻線22の巻線ピッチが、1スロットピッチより大きく設定され、複数(8極)の可動子磁極32の概ね1磁極幅で巻装される。分布巻では、既述した毎極毎相スロット数Nsppの整数部aは、1以上の正の整数(本実施形態では、2)になる。また、本実施形態では、三相の固定子巻線22は、Y結線で電気的に接続されている。三相の固定子巻線22は、Δ結線で電気的に接続することもできる。さらに、固定子巻線22の相数は、限定されない。
可動子鉄心31は、例えば、電磁鋼板31xが第三方向(矢印Z方向)に複数積層されて形成されている。複数の電磁鋼板31xは、例えば、ケイ素鋼板を用いることができ、複数の電磁鋼板31xの各々は、薄板状に形成されている。本実施形態の回転電機10は、円筒状回転電機であり、可動子鉄心31は、円柱状に形成されている。また、可動子鉄心31には、第一方向(矢印X方向)に沿って複数の磁石収容部(図示略)が設けられている。
複数の磁石収容部には、所定磁極数分(本実施形態では、8極)の永久磁石(可動子磁極32であり、四組の一対の可動子磁極32a,32b)が埋設されており、永久磁石と、通電に伴い固定子20に発生する回転磁界とによって、可動子30が移動可能(回転可能)になっている。本明細書では、一対の可動子磁極32a,32bのうちの一方の極性(例えば、N極)を備える可動子磁極32は、可動子磁極32aで示されている。一対の可動子磁極32a,32bのうちの他方の極性(例えば、S極)を備える可動子磁極32は、可動子磁極32bで示されている。
永久磁石は、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。また、永久磁石の製法は、限定されない。永久磁石は、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって可動子鉄心31に鋳込み形成することができる。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中で加圧成形して、高温で焼き固めて形成することができる。なお、可動子30は、表面磁石形にすることもできる。表面磁石形の可動子30は、固定子鉄心21の各ティース先端部21dと対向する可動子鉄心31の表面(外側表面)に永久磁石が設けられる。
本実施形態では、可動子30は、固定子20の内方(回転電機10の軸心側)に設けられており、固定子20に対して移動可能(回転可能)に支持されている。具体的には、可動子鉄心31には、シャフト(図示略)が設けられており、シャフトは、可動子鉄心31の軸心を第三方向(矢印Z方向)に沿って貫通している。シャフトの第三方向(矢印Z方向)の両端部は、軸受部材(図示略)によって、回転可能に支持されている。これにより、可動子30は、固定子20に対して、移動可能(回転可能)になっている。
<固定子20および可動子30の磁気構成に起因する回転電機10の騒音および振動>
図3は、参考形態に係り、複数のティース部21bと、一対の可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態の一例を示している。同図では、円環状の固定子鉄心21が直線状に展開されて図示されており、第三方向(矢印Z方向)視の固定子鉄心21が示されている。なお、同図では、ヨーク部21aおよび固定子巻線22は、図示が省略されており、各ティース部21bには、固定子鉄心21に形成される固定子磁極の識別番号(以下、固定子磁極番号T_Noという。)が付されている。本明細書では、説明の便宜上、固定子磁極番号T_Noが60と固定子磁極番号T_Noが1との間のスロット21c(スロット番号S_Noが0とする。)の中央位置を一対の可動子磁極32a,32bの位置基準(位置座標PPが0)としている。
また、同図では、円弧状に配置されている一対の可動子磁極32a,32bが直線状に展開されて図示されており、第三方向(矢印Z方向)視の一対の可動子磁極32a,32bが示されている。同図では、一対の可動子磁極32a,32bが一組、図示されており、他の三組の一対の可動子磁極32a,32bは、図示が省略されている。また、一対の可動子磁極32a,32b内の矢印は、既述した一対の可動子磁極32a,32bの極性(N極およびS極)の相違を示している。上述した図3の図示の方法については、概ね、後述する図6Aについても同様に言える。但し、図6Aでは、一対の可動子磁極32a,32bの各磁極中心位置および各両端部位置は、記載スペースの都合上、括弧内の数値のみで示されている。
図3に示すように、可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの一方の端部32a1(位置座標PPが0)は、スロット21cの中央位置に対向している。これに対して、可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの他方の端部32a2(位置座標PPが7.5)は、ティース部21bの中央位置に対向している。そのため、可動子磁極32aの磁極中心位置32a3(位置座標PPが3.75)は、ティース部21bの磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが4のティース部21b)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずれて配設されている。
その結果、複数のティース部21bに作用する第二方向(矢印Y方向)の電磁気的な吸引力分布(以下、「複数のティース部21bに作用する吸引力分布」ともいい、単に「吸引力分布」ともいう。)は、図4の棒グラフで表される分布となる。図4は、参考形態に係り、複数のティース部21bに作用する第二方向(矢印Y方向)の電磁気的な吸引力分布の一例を示している。縦軸は、吸引力の大きさPSUを示し、横軸は、第一方向(矢印X方向)を示している。参考形態の回転電機は、可動子30が後述する連続スキュー部位42を具備していない点で、本実施形態の回転電機10と異なる。
複数のティース部21bに作用する吸引力分布は、例えば、磁界解析によって取得することができる。このことは、後述する実施形態の吸引力分布についても同様に言える。実線L11は、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。同図に示すように、可動子磁極32aの吸引力分布のピーク値は、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが4のティース部21b)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずれている。このような吸引力分布が生じる磁極対向状態を磁極対向状態M10とする。
一方、図3に示す可動子磁極32bの第一方向(矢印X方向)の両端部32b1,32b2のうちの一方の端部32b1(位置座標PPが7.5)は、ティース部21bの中央位置に対向している。これに対して、可動子磁極32bの第一方向(矢印X方向)の両端部32b1,32b2のうちの他方の端部32b2(位置座標PPが15)は、スロット21cの中央位置に対向している。そのため、可動子磁極32bの磁極中心位置32b3(位置座標PPが11.25)は、ティース部21bの磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが12のティース部21b)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずれて配設されている。
その結果、複数のティース部21bに作用する吸引力分布は、図4の棒グラフで表される分布になる。実線L12は、棒グラフで表された固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。同図に示すように、可動子磁極32bの吸引力分布のピーク値は、概ね、固定子磁極の磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが12のティース部21b)にある。このような吸引力分布が生じる磁極対向状態を磁極対向状態M11とする。
このように、1/2系列の回転電機10では、二種類の磁極対向状態M10および磁極対向状態M11を備えており、二種類の吸引力分布を備えている。そのため、第一方向(矢印X方向)に隣接する一対の可動子磁極32a,32bは、互いに吸引力分布が異なる。その結果、複数のティース部21bに作用する吸引力分布は、一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎(二磁極毎)に隔極で等価になる。上述したことは、図示が省略されている他の一対の可動子磁極32a,32bについても同様に言える。1/2系列の回転電機10では、互いに吸引力分布が異なる第一方向(矢印X方向)に隣接する一対の可動子磁極32a,32bを単位として、第一方向(矢印X方向)に平行移動させた状態で、多極化(本実施形態では、8極化)されている。
図4に示すように、二種類の吸引力分布(二種類の磁極対向状態M10および磁極対向状態M11)は、鏡面33に対して、概ね対称(鏡面対称)になっている。鏡面33は、第二方向(矢印Y方向)および第三方向(矢印Z方向)によって形成される仮想の基準面をいう。例えば、固定子磁極番号T_Noが9のティース部21bの中央位置に形成される鏡面33を考える。このとき、一対の可動子磁極32a,32bの吸引力分布(磁極対向状態M10および磁極対向状態M11)は、鏡面33に対して、概ね対称(鏡面対称)になっている。そのため、実線L11を鏡面33に対して折り返すと、実線L12と概ね一致する。上述したことは、他の一対の可動子磁極32a,32bについても同様に言える。なお、図4の破線L13は、第一方向(矢印X方向)に可動子30の一磁極分、実線L11を平行移動させたものを示している。また、図4に示す破線で囲まれた領域は、ティース部21b(固定子磁極)と、一対の可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態の相違を示している。
二種類の吸引力分布(二種類の磁極対向状態M10および磁極対向状態M11)は、固定子鉄心21に対して、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では空間変形モード8次)と比べて、より低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力の成分を備える。図5A〜図5Cに示すように、起振力が固定子鉄心21に作用すると、固定子鉄心21の外周は、破線で示す形状に変形し易い。図5A〜図5Cは、第三方向(矢印Z方向)視の固定子鉄心21の外周形状の一例を示している。変形前の固定子鉄心21の外周形状は、実線で示され、変形後の固定子鉄心21の外周形状は、破線(曲線21s8、曲線21s4、曲線21s2)で示されている。
可動子30の磁極数が8極の回転電機10(8極機)において吸引力のピーク値が毎極で等価な場合(例えば、8極24スロット構成、8極48スロット構成などの回転電機)、固定子鉄心21の一周あたり、起振力の強弱が8回繰り返される。その結果、固定子鉄心21の外周は、図5Aの曲線21s8で示す形状に変形し易い。このように、整数スロット構成の8極の回転電機10では、空間変形モード8次の起振力の成分を備える。空間変形モード8次の起振力は、可動子30の磁極数(この場合、8極)に依拠し、一磁極を単位として繰り返される。
一方、吸引力のピーク値が一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎(二磁極毎)に隔極で等価になる場合(例えば、8極36スロット構成、8極60スロット構成などの回転電機)、固定子鉄心21の一周あたり、起振力の強弱が4回繰り返される。その結果、固定子鉄心21の外周は、図5Bの曲線21s4で示す形状に変形し易い。このように、分数スロット構成(1/2系列)の8極の回転電機10では、空間変形モード4次の起振力の成分を備える。
また、吸引力のピーク値が一磁極毎、一磁極対毎には等価にならず、二磁極対毎(四磁極毎)に等価になる場合(例えば、8極30スロット構成、8極54スロット構成などの回転電機)、固定子鉄心21の一周あたり、起振力の強弱が2回繰り返される。その結果、固定子鉄心21の外周は、図5Cの曲線21s2で示す形状に変形し易い。このように、分数スロット構成(1/4系列)の8極の回転電機10では、空間変形モード2次の起振力の成分を備える。
このように、分数スロット構成の回転電機10では、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、空間変形モード8次)の起振力と比べて、より低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力の成分を備える。そのため、駆動回転数が広範囲に亘る回転電機10では、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が、駆動回転数範囲内に生じ易くなる。その結果、固定子20の共振が発生し、回転電機10の騒音および振動が増大する可能性がある。そこで、本実施形態の回転電機10は、吸引力分布を整数スロット構成の回転電機と同程度(本実施形態では、空間変形モード8次)まで高次化する。
(本実施形態の可動子30の構成)
図6Aは、本実施形態に係り、複数のティース部21bと、一対の可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態の一例を示している。同図は、説明の便宜上、図3の図示の方法と一部異なる。具体的には、固定子20は、第三方向(矢印Z方向)視の複数のティース部21b(複数の固定子磁極)と、複数のスロット21cとが図示されており、図3と同様である。一方、可動子30は、固定子20の第二方向(矢印Y方向)と、可動子30の第三方向(矢印Z方向)とが同一紙面上で一致するように、図示されており、固定子20と可動子30との間の空隙を境界にして、図示の方法が切り替わる。このように、同図では、第三方向(矢印Z方向)視の固定子20と、第二方向(矢印Y方向)視の可動子30とが併記されている。これは、可動子30に施した連続スキューと、固定子20の第一方向(矢印X方向)との位置関係を明示するために便宜的に図示したものであり、図3の図示の方法と異なる。
図6Aに示すように、本実施形態では、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている。第一基準部位41は、基準部位であり、スキューの基準になる部位をいう。連続スキュー部位42は、スキュー部位であり、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)に徐々にずらされて、第三方向(矢印Z方向)に配設されている部位をいう。本実施形態では、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。
なお、同図では、第一基準部位41および連続スキュー部位42は、一対の可動子磁極32a,32bを例に図示されているが、可動子鉄心31においても同様に形成されている。つまり、可動子鉄心31を形成する複数の電磁鋼板31x(連続スキュー部位42)は、可動子鉄心31を形成する一つの電磁鋼板31x(第一基準部位41)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設(積層)されている。
また、連続スキュー部位42を第三方向(矢印Z方向)に垂直な平面で第一方向(矢印X方向)に沿って二等分したときの各部位を、第一基準部位41側の部位から順に、第一連続スキュー部位42a、第二連続スキュー部位42bとする。このように、図6Aでは、説明の便宜上、連続スキュー部位42は、第一連続スキュー部位42aと、第二連続スキュー部位42bとに分けて図示されているが、連続スキュー部位42は、一体に形成されている。なお、同図では、第一基準部位41は、一対の可動子磁極32a,32bの第三方向(矢印Z方向)の一端側端面である。また、第二連続スキュー部位42bの第三方向(矢印Z方向)の両端面のうち、第一連続スキュー部位42aと第二連続スキュー部位42bとの境界面と異なる側の端面は、一対の可動子磁極32a,32bの第三方向(矢印Z方向)の他端側端面である。
連続スキュー部位42は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が、複数(本実施形態では、60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が設定されている。本実施形態では、可動子30が、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えており、固定子20は、これらを具備していない。そのため、固定子20におけるスキュー量は0であり、可動子30の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。
具体的には、図6Aに示すように、第一連続スキュー部位42aと第二連続スキュー部位42bとの境界面の一対の可動子磁極32a,32bは、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)分、ずらされて配設されている。また、一対の可動子磁極32a,32bの第三方向(矢印Z方向)の他端側端面は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に、1スロットピッチ(1sp)分、ずらされて配設されている。なお、本実施形態の回転電機10は、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)であり、1スロットピッチ(1sp)分は、電気角24°(=360°/15スロット)に相当する。
第一基準部位41の可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの一方の端部32a1(位置座標PPが0であり、位置PA1で示す。)は、スロット21cの中央位置に対向している。第一基準部位41の可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの他方の端部32a2(位置座標PPが7.5であり、位置PB1で示す。)は、ティース部21bの中央位置に対向している。このとき、第一基準部位41の可動子磁極32aの磁極中心位置32a3(位置座標PPが3.75であり、位置PC1で示す。)は、ティース部21bの磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが4のティース部21b)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずれて配設されている。
第一連続スキュー部位42aと第二連続スキュー部位42bとの境界面の可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの一方の端部32a1(位置座標PPが0.5であり、位置PA2で示す。)は、ティース部21bの中央位置に対向している。当該可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの他方の端部32a2(位置座標PPが8であり、位置PB2で示す。)は、スロット21cの中央位置に対向している。このとき、当該可動子磁極32aの磁極中心位置32a3(位置座標PPが4.25であり、位置PC2で示す。)は、ティース部21bの磁極中心位置(固定子磁極番号T_Noが5のティース部21b)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずれて配設されている。
位置PC1(位置座標PPが3.75)において形成される吸引力分布と、位置PC2(位置座標PPが4.25)において形成される吸引力分布と、が混成されて、これらの吸引力分布は、平均化される。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、空間変形モード8次の起振力の成分が増加する。つまり、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、空間変形モード8次)と比べて、より低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力の成分が空間的に半波長ずらして重ね合わされて、これらの吸引力分布は、整数スロット構成の回転電機と同程度(本実施形態では、空間変形モード8次)まで高次化される。
本明細書では、毎極毎相スロット数Nsppの分母部cを用いて表される第一方向(矢印X方向)に1/cスロットピッチ(本実施形態では、1/2スロットピッチ(1/2sp))離間する部位を離間部位という。位置PC1(位置座標PPが3.75)で示す部位と、位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す部位とは、離間部位である。位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位間について上述したことは、第三方向(矢印Z方向)の他の離間部位間においても、同様に言える。
図6Bは、図6Aの破線で囲まれた領域の磁極対向状態を説明する模式図である。同図の丸印は、上述した位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位を表している。四角印は、位置PD1(位置座標PPが4)および位置PD2(位置座標PPが4.5)で示す離間部位を表している。三角印は、位置PE1(位置座標PPが4.25)および位置PE2(位置座標PPが4.75)で示す離間部位を表している。同図に示すように、これらの離間部位は、可動子磁極32aの磁極中心位置32a3を示す破線上に位置している。いずれの離間部位間においても、位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位間について上述したことが同様に言える。
また、図示されている離間部位以外の離間部位間(磁極中心位置32a3を示す破線上に位置する離間部位間)についても、上述したことが同様に言える。つまり、可動子30の第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、上述した関係と同様の関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成り立つ。また、同図に示す磁極対向状態は、可動子30の移動(可動子磁極32aの磁極中心位置32a3が複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分、移動)に伴い、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)単位で、第一方向(矢印X方向)において繰り返される。
このように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されることにより、可動子30の第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、吸引力分布が混成されて、吸引力分布は、平均化される。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、空間変形モード8次の起振力の成分が増加する。具体的には、離間部位間(図6Bに示す例では、例えば、丸印の部位間、四角印の部位間、三角印の部位間)において、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、空間変形モード8次)と比べて、より低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力の成分が空間的に半波長ずらして重ね合わされて、これらの吸引力分布は、整数スロット構成の回転電機と同程度(本実施形態では、空間変形モード8次)まで高次化される。
なお、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されていない場合、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立しない領域が生じる。その結果、当該領域において、低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力の成分が残存し、可動子30の第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、吸引力分布の混成、平均化および均等化を図ることが困難になる。
図6Cは、参考形態に係り、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されていない場合の磁極対向状態を説明する模式図である。同図は、第一ケースおよび第二ケースについて、図6Bに示す各離間部位の配置を再現しようとした図である。第一ケースでは、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの3/4スロットピッチ(3/4sp)分に設定されている。第二ケースでは、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの5/4スロットピッチ(5/4sp)分に設定されている。
図6Bの位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位は、図6Cの第一ケースでは、位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC21(位置座標PPが4.25)で示す離間部位に相当する。これらの離間部位は、図6Bと同様に丸印で表されている。また、図6Bの位置PD1(位置座標PPが4)および位置PD2(位置座標PPが4.5)で示す離間部位は、図6Cの第一ケースでは、位置PD11(位置座標PPが4)および位置PD21(位置座標PPが4.5)で示す離間部位に相当する。これらの離間部位は、図6Bと同様に四角印で表されている。いずれの離間部位間においても、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立する。
一方、図6Bの位置PE1(位置座標PPが4.25)および位置PE2(位置座標PPが4.75)で示す離間部位は、図6Cの第一ケースでは、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立しない。具体的には、図6Cの第一ケースでは、図6Bの位置PE1(位置座標PPが4.25)に相当する位置PE11(位置座標PPが4.25)で示す部位は、存在する。しかしながら、図6Bの位置PE2(位置座標PPが4.75)で示す部位に相当する部位は、存在しない。このように、第一ケースでは、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立しない領域ZN1が生じる。この場合、領域ZN1は、連続スキュー部位42のうち、第一基準部位41に対するスキュー量が、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分に設定される部位から、1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定される部位までの領域になる。
図6Bの位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位は、図6Cの第二ケースでは、位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC22(位置座標PPが4.25)で示す離間部位に相当する。これらの離間部位は、図6Bと同様に丸印で表されている。また、図6Bの位置PD1(位置座標PPが4)および位置PD2(位置座標PPが4.5)で示す離間部位は、図6Cの第二ケースでは、位置PD12(位置座標PPが4)および位置PD22(位置座標PPが4.5)で示す離間部位に相当する。これらの離間部位は、図6Bと同様に四角印で表されている。さらに、図6Bの位置PE1(位置座標PPが4.25)および位置PE2(位置座標PPが4.75)で示す離間部位は、図6Cの第二ケースでは、位置PE12(位置座標PPが4.25)および位置PE22(位置座標PPが4.75)で示す離間部位に相当する。これらの離間部位は、図6Bと同様に三角印で表されている。いずれの離間部位間においても、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立する。
しかしながら、図6Cの第二ケースにおいても、上述した関係(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する離間部位間の関係)が成立しない領域ZN2が生じる。この場合、領域ZN2は、連続スキュー部位42のうち、第一基準部位41に対するスキュー量が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定される部位から、5/4スロットピッチ(5/4sp)分に設定される部位までの領域になる。なお、見掛け上、領域ZN2と、位置PC22から位置PD22までの領域とは、離間部位間の関係になる。しかしながら、位置PC22から位置PD22までの領域は、位置PC1から位置PD12までの領域と、既に離間部位間の関係になっている。そのため、吸引力分布の混成、平均化および均等化の観点において、領域ZN2と離間部位間の関係が成立する領域は、存在しない。
このように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されていない場合、可動子30の第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、吸引力分布の混成、平均化および均等化を図ることが困難になる。したがって、本実施形態では、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。
図7Aは、本実施形態に係り、複数のティース部21bに作用する第二方向(矢印Y方向)の電磁気的な吸引力分布の一例を示している。縦軸は、吸引力の大きさPSUを示し、横軸は、第一方向(矢印X方向)を示している。実線L21は、棒グラフで表される固定子磁極毎の吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。同図は、上述した吸引力分布の混成、平均化および均等化によって、吸引力のピーク値が毎極において等価になる吸引力分布(整数スロット構成の吸引力分布)に近づいていることを示している。なお、吸引力ピッチLP0は、吸引力のピーク値の第一方向(矢印X方向)の間隔を示している。吸引力ピッチLP0は、毎極において均等になっている。
図7Bは、離間部位毎の吸引力分布の混成、平均化および均等化を説明する模式図である。縦軸は、吸引力の大きさPSUを示し、横軸は、第一方向(矢印X方向)を示している。図6Bの位置PC1(位置座標PPが3.75)および位置PC2(位置座標PPが4.25)で示す離間部位間(丸印で表す)において、吸引力分布の混成、平均化が行われる。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、空間変形モード8次の起振力の成分が増加する。実線L31は、このときの吸引力分布である第一吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。また、吸引力ピッチLP1は、第一吸引力分布における吸引力のピーク値の第一方向(矢印X方向)の間隔を示している。吸引力ピッチLP1は、毎極において均等になっている。
同様に、図6Bの位置PD1(位置座標PPが4)および位置PD2(位置座標PPが4.5)で示す離間部位間(四角印で表す)において、吸引力分布の混成、平均化が行われる。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、空間変形モード8次の起振力の成分が増加する。破線L32は、このときの吸引力分布である第二吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。また、吸引力ピッチLP2は、第二吸引力分布における吸引力のピーク値の第一方向(矢印X方向)の間隔を示している。吸引力ピッチLP2は、毎極において均等になっている。さらに、図6Bの位置PE1(位置座標PPが4.25)および位置PE2(位置座標PPが4.75)で示す離間部位間(三角印で表す)において、吸引力分布の混成、平均化が行われる。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、空間変形モード8次の起振力の成分が増加する。実線L33は、このときの吸引力分布である第三吸引力分布を直線で近似した近似直線を示している。また、吸引力ピッチLP3は、第三吸引力分布における吸引力のピーク値の第一方向(矢印X方向)の間隔を示している。吸引力ピッチLP3は、毎極において均等になっている。
第二吸引力分布は、第一吸引力分布に対して、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分、第一方向(矢印X方向)の一の方向(矢印X1方向)に、吸引力のピーク値が、ずれている。また、第三吸引力分布は、第一吸引力分布に対して、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分、第一方向(矢印X方向)の一の方向(矢印X1方向)に、吸引力のピーク値が、ずれている。可動子30の全体では、高次化されたこれらの吸引力分布が、最小の0スロットピッチから、最大の1/2スロットピッチ(1/2sp)分、第一方向(矢印X方向)の一の方向(矢印X1方向)に、ずれて加算され、吸引力分布の高次化が維持される。つまり、図7Aに示すように、可動子30の全体においても、吸引力ピッチLP0は、毎極において均等になっている。
なお、図6Aと、図7Aの実線L21とを併せて参照すると、可動子磁極32aの磁極中心位置32a3および可動子磁極32bの磁極中心位置32b3において、吸引力は、最大になり、騒音および振動に対する影響が最も大きくなる。一方、磁極中心位置32a3から、可動子磁極32aと可動子磁極32bとの磁極境界に向かって、吸引力は、次第に低下し、騒音および振動に対する影響が小さくなる。磁極中心位置32b3から、可動子磁極32aと可動子磁極32bとの磁極境界に向かう場合についても、同様である。このような事情に鑑みて、本明細書では、可動子磁極32aの磁極中心位置32a3に沿って位置する離間部位を代表して、騒音および振動に対する影響が説明されている。
本実施形態の回転電機10によれば、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている。また、連続スキュー部位42は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値(本実施形態では、1スロットピッチ(1sp)分)が設定されている。これにより、本実施形態の回転電機10は、第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、固定子20と可動子30との間に発生する第一方向(矢印X方向)の電磁気的な吸引力分布を混成することができ、当該吸引力分布を平均化することができる。その結果、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができる。よって、本実施形態の回転電機10は、当該吸引力分布を整数スロット構成の回転電機と同程度(本実施形態では、空間変形モード8次)まで高次化し、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数を高めて、例えば、駆動回転数範囲外に設定することが可能になる。つまり、本実施形態の回転電機10は、駆動回転数範囲内で、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。
連続スキュー部位42は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側にかけて、第一基準部位41に対するスキュー量の増加割合または減少割合が一定に設定されていると好適である。本明細書では、連続スキュー部位42が第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされる場合、連続スキュー部位42のスキュー量は、増加するものとする。逆に、連続スキュー部位42が第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされる場合、連続スキュー部位42のスキュー量は、減少するものとする。
また、図6Aに示すように、第三方向(矢印Z方向)の他端側端面の可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの一方の端部32a1を、位置PA3(位置座標PPが1)とする。当該可動子磁極32aの第一方向(矢印X方向)の両端部32a1,32a2のうちの他方の端部32a2を、位置PB3(位置座標PPが8.5)とする。このときの当該可動子磁極32aの磁極中心位置32a3を、位置PC3(位置座標PPが4.75)とする。
本実施形態の回転電機10によれば、連続スキュー部位42は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側にかけて、第一基準部位41に対するスキュー量の増加割合が一定に設定されている。例えば、位置PC1(位置座標PPが3.75)と、位置PC2(位置座標PPが4.25)との間では、位置PC1(位置座標PPが3.75)に対するスキュー量の増加量は、1/2スロットピッチ(1/2sp)分である。また、位置PC2(位置座標PPが4.25)と、位置PC3(位置座標PPが4.75)との間では、位置PC2(位置座標PPが4.25)に対するスキュー量の増加量は、1/2スロットピッチ(1/2sp)分である。このように、位置PC1(位置座標PPが3.75)から位置PC3(位置座標PPが4.75)に亘って、スキュー量は、一定割合で、一様に増加している。
このように、連続スキュー部位42は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側にかけて、第一基準部位41に対するスキュー量の増加割合が一定に設定されているので、第一基準部位41に対するスキュー量が不連続に変化する場合と比べて、主に、第三方向(矢印Z方向)の漏れ磁束を低減することができる。また、製造工程の簡素化を図ることもできる。上述したことは、第一基準部位41に対するスキュー量の減少割合が一定に設定される場合についても、同様に言える。この場合、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設される。
また、本実施形態の回転電機10によれば、可動子30は、連続スキュー部位42を備えているので、回転電機10の騒音および振動の低減と併せて、トルクリップルも低減することができる。回転電機10のトルクリップルは、回転電機10の出力トルクに生じる脈動であり、可動子30の移動に伴う固定子20と可動子30との間の磁束変化の変動に起因して発生する。トルクリップルの一例として、コギングトルク、スロットリップル、ポールリップルなどが挙げられる。コギングトルクは、無通電時において、固定子磁極と可動子磁極の磁極対向状態が不連続に(段階的に)変化することに起因して発生する。本実施形態の回転電機10では、コギングトルクの増減に合わせて、トルクリップルが増減する傾向にあるので、本明細書では、トルクリップルは、コギングトルクを例に説明されている。
既述したように、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)に徐々にずらされて、第三方向(矢印Z方向)に配設されている。また、本実施形態では、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。そのため、可動子30の第一方向(矢印X方向)の任意の位置部位が、第一方向(矢印X方向)に、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分の幅をもって広がって、固定子20と対向することになるので、固定子20のスロット21cの開口部における磁気変動が徐々に変化し、トルクリップル(コギングトルク)が低減される。
なお、分数スロット構成の回転電機10では、第一方向(矢印X方向)において、異なる磁極対向状態が繰り返されるので、トルクリップル(コギングトルク)は、整数スロット構成の回転電機と比べて、減少する傾向にある。本実施形態の回転電機10によれば、可動子30は、連続スキュー部位42を備えているので、固定子磁極と可動子磁極の磁極対向状態に起因するトルクリップル(コギングトルク)がさらに低減される。また、本実施形態の回転電機10によれば、可動子30は、連続スキュー部位42を備えているので、磁束の急峻な変化が抑制され、鉄損の低減、磁石渦損の低減、銅渦損の低減などを図ることもできる。
なお、非特許文献1に記載されているように、高調波成分を低減するには、固定子20の複数(60個)のスロット21cの1/cスロットピッチ分の連続スキュー(第一基準部位41に対するスキュー量の最大値を1/cスロットピッチに設定する)を施せば良い。同様の効果は、固定子20の複数(60個)のスロット21cのnq/cスロットピッチ(nqは、自然数。)分の連続スキューによっても得られる。但し、自然数nqが大きくなる程、回転電機10のトルク目減りが増大する。また、製造上煩雑になる傾向がある。そのため、通常は、自然数nqとして1を選択する。一方、本実施形態では、分数スロット構成の回転電機10において、連続スキュー部位42は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値(本実施形態では、1スロットピッチ(1sp)分、すなわちnq=c=2)が設定されている。つまり、本実施形態は、自然数nqとして2を選択する。これにより、回転電機10の騒音および振動の低減と併せて、トルクリップル(コギングトルク)、出力波形に含まれる高調波成分も低減することができる。
また、回転電機10の騒音、振動およびトルクリップル(コギングトルク)を低減する方法として、固定子鉄心21の各ティース先端部21d、または、各ティース先端部21dと対向する可動子鉄心31の表面(外側表面)に、切り欠きを設ける手法が挙げられる。しかしながら、この手法は、実質的に空隙の拡大となり、上述したスキューと比べて、トルク目減りが増大する。本実施形態の回転電機10は、トルク目減りを抑制しつつ、回転電機10の騒音、振動およびトルクリップル(コギングトルク)を低減することができる。
図8Aは、第三方向(矢印Z方向)視の複数のティース部21bと一対の可動子磁極32a,32bとの間の磁極対向状態の一例を示している。直線56aは、可動子30が固定子20の内方に設けられる回転電機10(インナーロータ型の回転電機)において、固定子20の内周面の一部を示している。具体的には、固定子20の内周面は、ティース先端部21dのうち、可動子30と対向する対向面に相当する。直線56bは、可動子30が固定子20の内方に設けられる回転電機10において、可動子30の外周面付近の一部を示している。具体的には、可動子30の外周面付近は、一対の可動子磁極32a,32bの第二方向(矢印Y方向)の両端面のうち、固定子20側の端面に相当する。
図8Bは、固定子20のスキューの状態の一例を示している。同図は、図8Aに示す直線56a付近の固定子20の内周面の一部を、第二方向(矢印Y方向)のうちの可動子30側から固定子20側に向かう方向である第二方向固定子側(矢印Y2方向)に視た図に相当する。図8Bに示す固定子20の内周面は、第一方向(矢印X方向)においては一部が示され、第三方向(矢印Z方向)においては全部が示されている。なお、図8Aにおいて、図8Bにおける図示の方向を矢印Y21で示している。
本実施形態では、固定子20におけるスキュー量は0である。そのため、固定子20のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)に沿って形成される。直線51は、基準位置P_ref(例えば、図6Aに示す位置座標PPが3.75)における固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側と、第三方向(矢印Z方向)の他端側とが、第三方向(矢印Z方向)に沿って結ばれている。
図8Cは、可動子30のスキューの状態の一例を示している。同図は、図8Aに示す直線56b付近の可動子30の外周面付近の一部を、第二方向固定子側(矢印Y2方向)に視た図に相当する。図8Cに示す可動子30の外周面付近は、第一方向(矢印X方向)においては一部が示され、第三方向(矢印Z方向)においては全部が示されている。なお、図8Aにおいて、図8Cにおける図示の方向を矢印Y22で示している。
本実施形態では、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。そのため、可動子30のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側に向かってスキュー量に応じて変位する。また、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。直線52は、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_ref(例えば、位置座標PPが3.75)と、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1スロットピッチ(1sp)分、離れた位置(この場合、位置座標PPが4.75)と、が結ばれている。
なお、図8Bおよび図8Cにおいて図示されている部位は、図6A、図8Aの破線で囲まれる領域に相当する。また、図8Bに示す固定子20の基準位置P_refと、図8Cに示す可動子30の基準位置P_refとは、一致している。さらに、以下に示す変形形態は、適宜、図8Bおよび図8Cに相当する図面に基づいて説明されている。この場合、図8Bおよび図8Cの図示の方法について既述したことは、後述する図面においても同様に言える。
(第一変形形態)
本変形形態は、固定子20が第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備え、可動子30が、これらを具備していない点で、実施形態と異なる。本明細書では、実施形態と異なる点が中心に説明されている。
図9Aは、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。そのため、固定子20のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側に向かってスキュー量に応じて変位する。また、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。直線51は、固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1スロットピッチ(1sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
本変形形態では、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。具体的には、固定子鉄心21を形成する複数の電磁鋼板21x(連続スキュー部位42)は、固定子鉄心21を形成する一つの電磁鋼板21x(第一基準部位41)に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設(積層)されている。なお、実施形態と同様に、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらすこともできる。この場合、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設される。
図9Bは、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、可動子30におけるスキュー量は0である。そのため、可動子30のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)に沿って形成される。直線52は、基準位置P_refにおける可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側と、第三方向(矢印Z方向)の他端側とが、第三方向(矢印Z方向)に沿って結ばれている。
本変形形態の回転電機10によれば、固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている。また、連続スキュー部位42は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値(本変形形態では、1スロットピッチ(1sp)分)が設定されている。よって、本変形形態の回転電機10は、実施形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第二変形形態)
本変形形態は、固定子20および可動子30が、いずれも、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている点で、実施形態と異なる。本明細書では、実施形態と異なる点が中心に説明されている。
図10Aは、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。そのため、固定子20のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側に向かってスキュー量に応じて変位する。また、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。直線51は、固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1/2スロットピッチ(1/2sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
図10Bは、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。そのため、可動子30のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側に向かってスキュー量に応じて変位する。また、連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。直線52は、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1/2スロットピッチ(1/2sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。一方、可動子30の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。よって、固定子20および可動子30の第三方向(矢印Z方向)の他端側において、固定子20と可動子30の相対スキュー量は、最大となり、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になっている。
このように、固定子20および可動子30のうちの一方(本変形形態では、可動子30)の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、固定子20および可動子30のうちの他方(本変形形態では、固定子20)の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされていると好適である。また、固定子20の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値と、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値とが同値(本変形形態では、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分)に設定されていると好適である。
図11Aは、第一比較形態に係り、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本比較形態では、固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。直線51は、固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1/2スロットピッチ(1/2sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
図11Bは、第一比較形態に係り、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本比較形態では、可動子30の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの3/2スロットピッチ(1/2sp+1sp)分に設定されている。直線52は、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから3/2スロットピッチ(1/2sp+1sp)分、離れた位置と、が結ばれている。よって、固定子20および可動子30の第三方向(矢印Z方向)の他端側において、固定子20と可動子30の相対スキュー量は、最大となり、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になっている。
このように、第一比較形態では、固定子20および可動子30は、いずれも、連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して同一方向(この場合、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向))にずらされている。そのため、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの3/2スロットピッチ(1/2sp+1sp)分に設定される。つまり、第一比較形態では、本変形形態および実施形態と比べて、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値が増加している。
本変形形態の回転電機10によれば、固定子20および可動子30は、いずれも、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている。また、可動子30の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされている。これにより、本変形形態の回転電機10は、固定子20および可動子30のうちの一方のみでスキューを行う場合と比べて、スキュー量を低減することができる。また、本変形形態の回転電機10は、固定子20および可動子30の連続スキュー部位42,42が第一方向(矢印X方向)において逆方向にずらされているので、同一方向にずらされる場合と比べて、スキュー量の増加を抑制することができる。よって、本変形形態の回転電機10は、スキュー量の増加に伴うトルク目減りの増大を抑制することができる。また、本変形形態の回転電機10は、スキュー量の低減により、漏れ磁束を低減することができる。また、スキュー量の増加に伴う製造工程における作業性の悪化を抑制することもできる。
上述した効果は、固定子20の複数のスロット21cの数が少なくなるほど、顕著になる。既述したように、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)では、1スロットピッチ(1sp)分は、電気角24°(=360°/15スロット)に相当する。一方、例えば、8極36スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が9スロットを基本構成とする回転電機)では、1スロットピッチ(1sp)分は、電気角40°(=360°/9スロット)に相当する。つまり、8極36スロット構成の回転電機では、8極60スロット構成の回転電機と比べて、スキュー量は、増大する。本変形形態の回転電機10は、固定子20および可動子30のうちの一方のみでスキューを行う場合と比べて、スキュー量を低減することができるので、固定子20の複数のスロット21cの数が少ない回転電機10に適用すると特に好適である。
なお、上述したことは、固定子20の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、可動子30の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされている場合についても、同様に言える。つまり、固定子20および可動子30のうちの一方の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、固定子20および可動子30のうちの他方の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされていると好適である。
図12Aは、第二比較形態に係り、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本比較形態では、固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分に設定されている。直線51は、固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1/4スロットピッチ(1/4sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
図12Bは、第二比較形態に係り、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本比較形態では、可動子30の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの3/4スロットピッチ(3/4sp)分に設定されている。直線52は、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから3/4スロットピッチ(3/4sp)分、離れた位置と、が結ばれている。よって、固定子20および可動子30の第三方向(矢印Z方向)の他端側において、固定子20と可動子30の相対スキュー量は、最大となり、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になっている。
このように、第二比較形態では、固定子20の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値と、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値とが異なっている。その結果、本比較形態では、本変形形態と比べて、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量が増大している。固定子20の連続スキュー部位42と比べて、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量が増大すると、特に、永久磁石(四組の一対の可動子磁極32a,32b)が焼結磁石の場合に、永久磁石を可動子鉄心31の磁石収容部に装着する際の作業性が悪化する可能性がある。なお、可動子30の連続スキュー部位42と比べて、固定子20の連続スキュー部位42におけるスキュー量を増大させることもできる。この場合は、固定子巻線22を固定子鉄心21の複数(60個)のスロット21cに組み付ける際の作業性が悪化する可能性がある。
本変形形態の回転電機10によれば、固定子20の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値と、可動子30の連続スキュー部位42におけるスキュー量の最大値とが同値(複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分)に設定されている。これにより、本変形形態の回転電機10は、固定子20および可動子30の両方において、スキュー量を均等に分散させることができ、スキューに伴う固定子20および可動子30の製造の煩雑さを按分して、製造工程における作業性を向上させることができる。
なお、図10Aに示すように、第三方向(矢印Z方向)に沿った直線と、直線51とのなす角を、スキューの傾斜角θとする。図10Bに示すように、第三方向(矢印Z方向)に沿った直線と、直線52とのなす角についても、同様である。回転電機10の体格の相違により、同じスキュー量であっても、スキューの傾斜角θが異なる。すなわち、固定子鉄心21が同じ内径(第二方向(矢印Y方向)の寸法が同じ)および可動子鉄心31が同じ外径(第二方向(矢印Y方向)の寸法が同じ)であっても、軸長(第三方向(矢印Z方向)の寸法)が増大すると、スキューの傾斜角θは、小さくなり、軸方向(第三方向(矢印Z方向))の磁気漏れ、製造上の煩雑さは、低減する。また、同じスキュー量であっても、固定子20および可動子30の各構成、構造によって、製造上の難易度が異なる場合がある。以上を総合的に勘案し、固定子20および可動子30のうち、製造上の煩雑さが少ない側のスキュー量を多くし、製造上の煩雑さが多い側のスキュー量を少なくすることもできる。このように、回転電機10の体格、要求仕様などに応じて、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、固定子20の連続スキュー部位42の第一基準部位41に対するスキュー量の最大値と、可動子30の連続スキュー部位42の第一基準部位41に対するスキュー量の最大値とを、適宜、設定することができる。
(第三変形形態)
本変形形態は、固定子20が、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備え、可動子30が、第二基準部位43と、段スキュー部位44とを備えている点で、実施形態と異なる。本明細書では、実施形態と異なる点が中心に説明されている。
図13Aは、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。そのため、固定子20のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側に向かってスキュー量に応じて変位する。連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。直線51は、固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refから1/2スロットピッチ(1/2sp)分、離れた位置と、が結ばれている。
図13Bは、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、可動子30は、第二基準部位43と、段スキュー部位44とを備える。第二基準部位43は、基準部位であり、スキューの基準になる部位をいう。段スキュー部位44は、スキュー部位であり、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)に階段状にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている部位をいう。本変形形態では、段スキュー部位44は、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に階段状(一段)にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このように、本変形形態では、基準部位は、第一基準部位41と第二基準部位43とを備え、スキュー部位は、連続スキュー部位42と段スキュー部位44とを備える。なお、本変形形態においても、固定子20の基準位置P_ref(第一基準部位41の基準位置)と、可動子30の基準位置P_ref(第二基準部位43の基準位置)とは、一致している。
段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量は、連続スキュー部位42における第一基準部位41に対するスキュー量の最大値の半分に設定される。既述したように、本変形形態では、固定子20の連続スキュー部位42における第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。そのため、可動子30の段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量は、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分に設定する。これにより、固定子20および可動子30の第三方向(矢印Z方向)の他端側において、固定子20と可動子30の相対スキュー量は、最大となり、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値(実質の最大値であり、連続スキュー換算)は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になる。
図13Cは、連続スキュー部位42と段スキュー部位44のスキュー量の換算方法を示している。本変形形態では、固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている。このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されている。よって、仮に、可動子30が、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える場合、第二変形形態で既述したように、可動子30の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されると好適である。また、このときの第一基準部位41に対するスキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分に設定されると好適である。図13Cに示す直線52は、可動子30が、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える場合の仮想のスキュー位置を示している。
上述した連続スキュー部位42における第一基準部位41に対するスキュー量の最大値(この場合、複数(60個)のスロット21cの1/2スロットピッチ(1/2sp)分)を、段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量に換算する。同図に示すように、第一連続スキュー部位42a(段スキューの第二基準部位43に対応)における連続スキューの中心位置54aは、基準位置P_refから第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に、複数(60個)のスロット21cの1/8スロットピッチ(1/8sp)分、移動した位置に相当する。また、第二連続スキュー部位42b(段スキューの段スキュー部位44に対応)における連続スキューの中心位置54bは、基準位置P_refから第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に、複数(60個)のスロット21cの3/8スロットピッチ(3/8sp)分、移動した位置に相当する。
第一連続スキュー部位42aの中心位置54aと、第二連続スキュー部位42bの中心位置54bとの差分(この場合、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分)が、段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量になる。なお、第一連続スキュー部位42aの中心位置54aを、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に、複数(60個)のスロット21cの1/8スロットピッチ(1/8sp)分、移動させると、基準位置P_refと一致し、図13Bでは、第二基準部位43の中心位置53aとして図示されている。また、第二連続スキュー部位42bの中心位置54bを、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に、複数(60個)のスロット21cの1/8スロットピッチ(1/8sp)分、移動させると、図13Bに示す段スキュー部位44の中心位置53bと一致する。
本変形形態の回転電機10によれば、固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備え、可動子30は、第二基準部位43と、段スキュー部位44とを備えている。また、段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量は、連続スキュー部位42における第一基準部位41に対するスキュー量の最大値の半分(本変形形態では、複数(60個)のスロット21cの1/4スロットピッチ(1/4sp)分)に設定されている。これにより、本変形形態の回転電機10は、スキューに伴う固定子20および可動子30の製造の煩雑さを軽減して、製造工程における作業性を向上させることができる。具体的には、固定子巻線22を固定子鉄心21の複数(60個)のスロット21cに組み付ける際の作業性を考慮すると、固定子20は、段スキュー部位44と比べて、連続スキュー部位42を備える方が良い。一方、永久磁石(四組の一対の可動子磁極32a,32b)が焼結磁石の場合に、永久磁石を可動子鉄心31の磁石収容部に装着する際の作業性を考慮すると、可動子30は、連続スキュー部位42と比べて、段スキュー部位44を備える方が良い。上述した構成により、本変形形態の回転電機10は、固定子20および可動子30の両方において、製造工程における作業性を向上させることができる。
なお、固定子20の連続スキュー部位42は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設することもできる。この場合、可動子30の段スキュー部位44は、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に階段状(一段)にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されると好適である。つまり、固定子20の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、可動子30の段スキュー部位44は、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされていると好適である。これにより、第二変形形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、段スキュー部位44は、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)に階段状(複数段)にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設することもできる。この場合も、図13Cに示す一段の場合と同様にして、連続スキューの各中心位置と、段スキューの各中心位置とを一致させて、段スキュー部位44の各段における第二基準部位43に対するスキュー量を換算することができる。
実施形態および変形形態で示すように、固定子20および可動子30のうちの少なくとも一方は、スキューの基準になる基準部位(第一基準部位41,第二基準部位43)と、基準部位(第一基準部位41,第二基準部位43)に対して第一方向(矢印X方向)にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されているスキュー部位(連続スキュー部位42,段スキュー部位44)と、を備える。スキュー部位(連続スキュー部位42,段スキュー部位44)は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、基準部位(第一基準部位41,第二基準部位43)に対するスキュー量の最大値が設定されている。さらに、既述した形態のいずれにおいても、連続スキュー部位42は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側にかけて、第一基準部位41に対するスキュー量の増加割合または減少割合が一定に設定されていると好適である。これにより、実施形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。なお、固定子20および可動子30のうちの少なくとも一方は、第二基準部位43と段スキュー部位44とを備え、第一基準部位41および連続スキュー部位42を具備しない形態にすることもできる。
(第四変形形態)
本変形形態は、第一基準部位41が第三方向一端側第一基準部位41aと、第三方向他端側第一基準部位41bとを備え、連続スキュー部位42が第三方向一端側連続スキュー部位45aと、第三方向他端側連続スキュー部位45bとを備えている点で、第一変形形態と異なる。本明細書では、実施形態と異なる点が中心に説明されている。
図14Aは、固定子20のスキューの状態の一例を示している。本変形形態では、固定子20におけるスキュー量は0である。そのため、固定子20のスキュー位置は、第三方向(矢印Z方向)に沿って形成される。直線51は、基準位置P_refにおける固定子20のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側と、第三方向(矢印Z方向)の他端側とが、第三方向(矢印Z方向)に沿って結ばれている。
図14Bは、可動子30のスキューの状態の一例を示している。本変形形態においても、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備える。但し、本変形形態では、第一基準部位41は、第三方向一端側第一基準部位41aと、第三方向他端側第一基準部位41bとを備える。第三方向一端側第一基準部位41aは、第三方向(矢印Z方向)の一端側に設けられる第一基準部位41をいう。第三方向他端側第一基準部位41bは、第三方向(矢印Z方向)の他端側に設けられる第一基準部位41をいう。
また、連続スキュー部位42は、第三方向一端側連続スキュー部位45aと、第三方向他端側連続スキュー部位45bとを備えている。第三方向一端側連続スキュー部位45aは、第三方向(矢印Z方向)の一端側の半分の部位が、第三方向一端側第一基準部位41aから第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)の中央部46まで配設されている部位をいう。第三方向他端側連続スキュー部位45bは、第三方向(矢印Z方向)の他端側の半分の部位が、中央部46から第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされて第三方向他端側第一基準部位41bまで配設されている部位をいう。なお、本変形形態においても、固定子20の基準位置P_refと、可動子30の基準位置P_ref(第三方向一端側第一基準部位41aの基準位置および第三方向他端側第一基準部位41bの基準位置)とは、一致している。
第三方向一端側連続スキュー部位45aは、第三方向一端側第一基準部位41aに対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。直線55aは、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の一端側の基準位置P_refと、第三方向(矢印Z方向)の中央部46の基準位置P_refから1スロットピッチ(1sp)分、離れた位置と、が結ばれている。同様に、第三方向他端側連続スキュー部位45bは、第三方向他端側第一基準部位41bに対するスキュー量の最大値が、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分に設定されている。直線55bは、可動子30のスキュー位置を示しており、第三方向(矢印Z方向)の中央部46の基準位置P_refから1スロットピッチ(1sp)分、離れた位置と、第三方向(矢印Z方向)の他端側の基準位置P_refと、が結ばれている。これらにより、固定子20および可動子30の第三方向(矢印Z方向)の中央部46において、固定子20と可動子30の相対スキュー量は、最大となり、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値は、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になっている。
本変形形態の回転電機10によれば、可動子30は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備えている。第一基準部位41は、第三方向一端側第一基準部位41aと、第三方向他端側第一基準部位41bとを備えている。連続スキュー部位42は、第三方向一端側連続スキュー部位45aと、第三方向他端側連続スキュー部位45bとを備えている。また、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分になるように、第一基準部位41(第三方向一端側第一基準部位41a、第三方向他端側第一基準部位41b)に対するスキュー量の最大値(本変形形態では、複数(60個)のスロット21cの1スロットピッチ(1sp)分)が設定されている。よって、本変形形態の回転電機10は、実施形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、第三方向一端側連続スキュー部位45aは、第三方向(矢印Z方向)の一端側から中央部46にかけて、第三方向一端側第一基準部位41aに対するスキュー量の増加割合が一定に設定され、第三方向他端側連続スキュー部位45bは、第三方向(矢印Z方向)の中央部46から他端側にかけて、第三方向他端側第一基準部位41bに対するスキュー量の減少割合が一定に設定されていると好適である。また、スキュー量の増加割合の絶対値と、スキュー量の減少割合の絶対値とが同値に設定されていると好適である。これらにより、第一基準部位41(第三方向一端側第一基準部位41a、第三方向他端側第一基準部位41b)に対するスキュー量が不連続に変化する場合と比べて、漏れ磁束を低減することができる。また、製造工程の簡素化を図ることもできる。
さらに、本変形形態の回転電機10では、連続スキュー部位42は、第三方向一端側連続スキュー部位45aと、第三方向他端側連続スキュー部位45bとを備えているので、第三方向(矢印Z方向)の対称性が確保され、捻じれ共振を低減することができる。なお、永久磁石(四組の一対の可動子磁極32a,32b)が焼結磁石の場合に、永久磁石を可動子鉄心31の磁石収容部に装着する際の作業性が悪化する可能性がある。この場合、永久磁石を第三方向(矢印Z方向)に垂直な平面で第一方向(矢印X方向)に沿って二等分して分割すると良い。分割された一方の永久磁石を第三方向(矢印Z方向)の一端側から装着し、分割された他方の永久磁石を第三方向(矢印Z方向)の他端側から装着することにより、上述した作業性の悪化を軽減することができる。
なお、本変形形態では、実施形態で既述した離間部位(第一方向(矢印X方向)に、1/2スロットピッチ(1/2sp)離間する部位)の第三方向(矢印Z方向)の距離が、実施形態と比べて、概ね、半減する。したがって、本変形形態では、吸引力分布の高次化が、より有効に実現する。また、本変形形態は、固定子20および可動子30の軸長(第三方向(矢印Z方向)の寸法)が増大する場合においても、好適である。さらに、本変形形態の構成を第三方向(矢印Z方向)において繰り返し用いても良い。また、連続スキュー部位42において、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に徐々にずらされる部位と、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に徐々にずらされる部位とは、同数でなくても良い。これらは、回転電機10の体格、要求仕様などに応じて、適宜、選択することができる。なお、実施形態の構成において、同様の作用効果を得るために、実施形態の構成を第三方向(矢印Z方向)において繰り返す多重スキューが考えられる。しかしながら、この場合、多重スキューの各スキュー間で、第一方向(矢印X方向)における不連続部が生じ、磁気漏れが発生して出力トルクの低下等が発生するので望ましくない。
<固定子巻線22の相配置に起因する回転電機10の騒音および振動>
図15は、参考形態の固定子巻線22の相配置の一例を示している。参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に、8極60スロット構成の回転電機(可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機)である。また、参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に三相機であり、固定子巻線22は、複数(3つ)の相コイル22cを備えている。複数(3つ)の相コイル22cを、U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cwとする。U相コイル22cu、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwは、電気角で120°ずつ、位相がずれており、U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cwの順に位相が遅れているものとする。
同図は、複数(26個)のスロット21cに収容されている複数(一層あたり26個、合計52個)のコイルサイド22aの相(U相、V相またはW相)を示している。なお、コイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、相(U相、V相またはW相)毎のコイルサイド22aの分布を説明するために、便宜上、規定したものであり、実際のコイルサイド22aの数(実際の巻線の数)を示すものではない。また、同図では、コイルサイド22aの通電方向は、アスタリスクの有無で表されている。具体的には、アスタリスクが付されている相(例えば、U*)は、アスタリスクが付されていない相(例えば、U)に対して、コイルサイド22aの通電方向が逆方向に設定されている。本参考形態の回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様に、毎極毎相スロット数Nsppが2.5である。そのため、第一方向(矢印X方向)に隣接する同相の数は、第一層L1および第二層L2の各層で、2と3とが交互に繰り返されている。
また、位置座標PPは、複数(26個)のスロット21cの第一方向(矢印X方向)の位置を示している。位置座標PPは、説明の便宜上、設定されたものであり、複数(一層あたり26個、合計52個)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)の位置が特定可能になっている。さらに、同図では、複数(3つ)の可動子磁極32(可動子磁極32a,32b,32a)が併記されている。
ここで、第一方向(矢印X方向)に連続して隣り合う複数(本参考形態では、3つ)のスロット21cに収容されている同相の電流方向が同じ複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの集合を一相帯61とする。例えば、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22a(同図では、U*で示す)の集合は、一相帯61である。同図では、U相の一相帯61を構成する複数(5つ)のコイルサイド22aが囲まれて明示されているが、V相およびW相についても、同様に一相帯61が構成されている。
さらに、一相帯61を構成する複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの配置および当該複数(5つ)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)における位置の両方を加味して算出される一相帯61の中心を一相帯61のコイルサイド中心CCとする。例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)が収容されている。よって、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61のコイルサイド中心CC11は、例えば、下記数1から算出することができ、コイルサイド中心CC11は、0.8になる。
(数1)
CC11=(0×2+1×2+2×1)/(2+2+1)=0.8
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)が収容されている。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。よって、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61のコイルサイド中心CC12は、例えば、下記数2から算出することができ、コイルサイド中心CC12は、8.2になる。
(数2)
CC12=(7×1+8×2+9×2)/(1+2+2)=8.2
位置座標PPが15のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。また、位置座標PPが16のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが17のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)が収容されている。よって、位置座標PPが15、16および17の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61のコイルサイド中心CC13は、例えば、下記数3から算出することができ、コイルサイド中心CC13は、15.8になる。
(数3)
CC13=(15×2+16×2+17×1)/(2+2+1)=15.8
位置座標PPが22のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)が収容されている。また、位置座標PPが23のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。さらに、位置座標PPが24のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)が収容されている。よって、位置座標PPが22、23および24の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61のコイルサイド中心CC14は、例えば、下記数4から算出することができ、コイルサイド中心CC14は、23.2になる。
(数4)
CC14=(22×1+23×2+24×2)/(1+2+2)=23.2
上述した算出結果から、U相の一相帯61のコイルサイド中心CC11とコイルサイド中心CC12との間の距離は、7.4(=8.2−0.8)になる。また、U相の一相帯61のコイルサイド中心CC12とコイルサイド中心CC13との間の距離は、7.6(=15.8−8.2)になる。さらに、U相の一相帯61のコイルサイド中心CC13とコイルサイド中心CC14との間の距離は、7.4(=23.2−15.8)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯61のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返される。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯61のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等にはならず、一磁極対毎に均等になる。
一方、U相の一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも5つであり、一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。このように、本明細書では、一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等であるコイルを基本コイル70という。図3に示すように、本参考形態の固定子巻線22は、一つの基本コイル70を備えている。
また、本明細書では、一相帯61を構成する複数(本参考形態では、5つ)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)の分布幅をコイルサイド分布幅とする。図15から明らかなように、本参考形態のコイルサイド分布幅は、毎極において3スロット分である。さらに、本明細書では、複数(8極)の可動子磁極32を基準にした実質のコイルサイド分布幅を実効コイルサイド分布幅とする。例えば、位置座標PPが0のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが7.5の位置になる。また、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが8.5の位置になる。さらに、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのU*で示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが9.5の位置になる。つまり、実効コイルサイド分布幅は、位置座標PPが7から9.5までの3.5スロット分である。
逆に、例えば、位置座標PPが7のスロット21cに収容されているU相の一つのコイルサイド22a(同図では、一つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが−0.5の位置になる。また、位置座標PPが8のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが0.5の位置になる。さらに、位置座標PPが9のスロット21cに収容されているU相の複数(2つ)のコイルサイド22a(同図では、2つのUで示す)の複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置は、位置座標PPが1.5の位置になる。つまり、実効コイルサイド分布幅は、位置座標PPが−0.5から2までの3.5スロット分である。このように、1/2系列の回転電機10では、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯61は、複数(8極)の可動子磁極32を基準にした等価位置が、1/2スロット分、ずれている。同図に示すU相の一相帯61の近傍の数字は、U相の一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を上述した等価位置で示している。
U相の一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等であるので、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。しかしながら、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の一相帯61のコイルサイド中心CC間の距離は、7.4および7.6が交互に繰り返されるので、起磁力分布は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎に隔極で等価になる。つまり、1/2系列の回転電機10は、二種類の起磁力分布を備えている。
二種類の起磁力分布は、固定子鉄心21に対して、可動子30の磁極数(本参考形態では、8極)に依拠する次数(本参考形態では、空間変形モード8次)と比べて、低次(本参考形態では、空間変形モード4次)の起振力を発生させる。そのため、駆動回転数が広範囲に亘る回転電機10では、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が、駆動回転数範囲内に生じ易くなる。その結果、固定子20の共振が発生し、回転電機10の騒音および振動が増大する可能性がある。そこで、本実施形態では、起磁力の大きさが均等であっても、起磁力分布が均等でない状態(回転対称性をもたない状態)を改善することによって、固定子巻線22の相配置に起因する回転電機10の騒音および振動を低減する。なお、図15の図示の方法について既述したことは、固定子巻線22の相配置を示す後述する図面についても同様に言える。また、本明細書では、固定子巻線22の相配置がU相を例に説明されているが、V相およびW相についても同様に言える。
(本実施形態の固定子巻線22の構成)
図16Aに示すように、固定子巻線22は、複数(本実施形態では、4つ)の基本コイル70を備えている。複数(4つ)の基本コイル70の各々は、参考形態で既述した基本コイル70と同一構成である。また、複数(4つ)の基本コイル70は、第一基本コイル71と、少なくとも一つの第二基本コイル72(本実施形態では、3つの第二基本コイル72)とを備えている。第一基本コイル71は、第一方向(矢印X方向)における毎極の一相帯61の配置に関して基準になるコイルをいう。第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)における毎極の一相帯61の配置が異なるコイルをいう。
さらに、少なくとも一つの第二基本コイル72(本実施形態では、3つの第二基本コイル72)は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されていると好適である。また、所定スロットピッチは、移動単位量のn倍(但し、nは1以上の自然数)で表されると好適である。さらに、移動単位量は、NIスロットピッチであり、NIは、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)の直近の整数または1であると好適である。また、少なくとも一つの第二基本コイル72(本実施形態では、3つの第二基本コイル)の各々の所定スロットピッチを列挙した数列である第一数列は、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含むと好適である。
本実施形態では、複数(3つ)の第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(後述する第一方向第二極コイル側(矢印X1方向))に移動した位置に配置されている。また、移動単位量は、毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より小さい直近の整数である7スロットピッチに設定されている。さらに、複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの一の第二基本コイル72(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの他の一の第二基本コイル72(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの他の一の第二基本コイル72(例えば、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定されている。このように、本実施形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1および2である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
例えば、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。また、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
さらに、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72では、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯61についても同様に言える。
なお、図16Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図16Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図16Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図16Aに示す通電方向に対して反転されている。
また、図16Bに示す第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図16Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、図16Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72の他の一相帯61についても同様に言える。また、上述したことは、同図に示す第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72の他の一相帯61についても同様に言える。なお、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72では、コイルサイド22aの通電方向は、正しいので、コイルサイド22aの通電方向を反転する必要はない。
ここで、第一基本コイル71の一の一相帯61を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aと、少なくとも一つの第二基本コイル72(本実施形態では、3つの第二基本コイル72)の各々の一の一相帯61を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aと、が混成されて新しく形成される一相帯61を混成一相帯62とする。例えば、第一基本コイル71のU相の一相帯61は、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが−1、0および1の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯62は、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
固定子巻線22は、混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが複数(本実施形態では、8極)の可動子磁極32の毎極において均等になるように、複数(本実施形態では、4つ)の基本コイル70が混成されている。具体的には、複数(3つ)の第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ(7スロットピッチ(7sp)または14スロットピッチ(14sp))分、移動されて、複数(4つ)の基本コイル70が積層されている。これにより、本実施形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第八層L8の八層に形成されている。
また、混成一相帯62を構成する複数(本実施形態では、20個)のコイルサイド22aの配置および当該複数(20個)のコイルサイド22aの第一方向(矢印X方向)における位置の両方を加味して算出される混成一相帯62の中心を混成一相帯62のコイルサイド中心CCとする。例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC21は、例えば、下記数5から算出することができ、コイルサイド中心CC21は、0.25になる。
(数5)
CC21=(−1×4+0×8+1×7+2×1)/(4+8+7+1)=0.25
同様に、例えば、第一基本コイル71のU相の一相帯61は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。
第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが6、7および8の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。この場合、U相の混成一相帯62は、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。また、U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されている。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されている。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。よって、位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC22は、例えば、下記数6から算出することができ、コイルサイド中心CC22は、7.75になる。
(数6)
CC22=(6×1+7×7+8×8+9×4)/(1+7+8+4)=7.75
また、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが14、15、16および17の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC23は、例えば、下記数7から算出することができ、コイルサイド中心CC23は、15.25になる。
(数7)
CC23=(14×4+15×8+16×7+17×1)/(4+8+7+1)
=15.25
さらに、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが21、22、23および24の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、20個である。上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC24は、例えば、下記数8から算出することができ、コイルサイド中心CC24は、22.75になる。
(数8)
CC24=(21×1+22×7+23×8+24×4)/(1+7+8+4)
=22.75
上述した算出結果から、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC21とコイルサイド中心CC22との間の距離は、7.5(=7.75−0.25)になる。また、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC22とコイルサイド中心CC23との間の距離は、7.5(=15.25−7.75)になる。さらに、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC23とコイルサイド中心CC24との間の距離は、7.5(=22.75−15.25)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、7.5であり、均等である。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。
ここで、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離の比を隣接コイルサイド比とする。既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル70を備える形態)では、隣接コイルサイド比は、0.974(=7.4/7.6)である。一方、本実施形態(固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル70を備える形態)では、隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。このように、隣接コイルサイド比が1に近づく程、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、均等化されていると言える。
U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも20個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。よって、起磁力分布は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極においてより等価になり、本実施形態の回転電機10は、一種類の起磁力分布を備えているとみなすことができる。
このように、本実施形態では、起磁力分布の回転対称性が改善されている。その結果、本実施形態の回転電機10は、可動子30の磁極数(本実施形態では、8極)に依拠する次数(本実施形態では、空間変形モード8次)と比べて、低次(本実施形態では、空間変形モード4次)の起振力が低減される。よって、本実施形態の回転電機10は、固定子鉄心21の固有振動数と一致する回転数が高まり、例えば、駆動回転数範囲外に設定することができる。つまり、本実施形態の回転電機10は、駆動回転数範囲内で、固定子20の共振機会を回避して、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。
なお、本実施形態の回転電機10によれば、回転電機10の騒音および振動の低減に付随して、トルクリップルも低減することもできる。また、回転電機10の騒音および振動を低減する方法として、固定子鉄心21の各ティース先端部21d、または、各ティース先端部21dと対向する可動子鉄心31の表面(外側表面)に、切り欠きを設ける手法が挙げられる。しかしながら、この手法は、実質的に空隙の拡大となり、トルク目減りが増大する。本実施形態の回転電機10は、トルク目減りを抑制しつつ、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。
なお、図16Cに示すように、本実施形態では、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内において、同相のコイルサイド22aが集約されている。例えば、図16Bに示す第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図16Cでは、第五層L5から第六層L6に移動されている。図16Bに示す第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図16Cでは、第三層L3から第五層L5に移動されている。このようにして、図16Cでは、位置座標PPが−1のスロット21cにおいて、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが集約され、V相の複数(4つ)のコイルサイド22aが集約されている。
また、図16Bに示す第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72において、位置座標PPが1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図16Cでは、第八層L8から第七層L7に移動されている。このようにして、図16Cでは、位置座標PPが1のスロット21cにおいて、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが集約されている。さらに、図16Bに示す第一基本コイル71において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図16Cでは、第二層L2から第一層L1に移動されている。このようにして、図16Cでは、位置座標PPが2のスロット21cにおいて、W相の複数(7つ)のコイルサイド22aが集約されている。上述したことは、他の混成一相帯62についても同様に言える。
本実施形態では、相間(U相、V相およびW相のうちの任意の相の間)の境界が単純化(相間の境界の凹凸が最小化)されており、相間の絶縁が容易になっている。例えば、相間を絶縁する絶縁紙の形状が単純化され、絶縁紙の配置が容易になる。このように、複数(本実施形態では、4つ)の基本コイル70の混成には、同一のスロット21cに収容される少なくとも一つのコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置を変更した形態が含まれる。
さらに、例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。また、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。位置座標PPが6、7、8および9の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62の実効コイルサイド分布幅は、4.5スロット分である。
このように、本実施形態の実効コイルサイド分布幅(4.5スロット分)は、既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル70を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本実施形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。なお、起磁力分布は、コイルサイド分布に基づいて形成されるので、上述したことは、コイルサイド分布からも言える。
図17Aは、参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル70を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。コイルサイド分布は、位置座標PP毎の同相(U相)の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示しており、同図では、コイルサイド分布は、棒グラフによって示されている。横軸は、位置座標PPを示しており、縦軸は、U相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示している。
なお、スロットサイズ(スロット21cの深さ)は変わらないので、コイルサイド分布を示す後述する図面(例えば、図17Bなど)を含めて、縦軸の上限は、一定になる必要がある。しかしながら、コイルサイド分布を示す図では、説明の便宜上、縦軸は、コイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示しており、縦軸の上限は、必ずしも一定になっていない。コイルサイド分布を示す図では、棒グラフの相対的な高さの比率と棒グラフの分布が意味をもつ。例えば、図17Aに示す位置座標PPが0、1および2の棒グラフの相対的な高さの比率は、2:2:1であり、図17Bに示す位置座標PPが−1、0、1および2の棒グラフの相対的な高さの比率は、4:8:7:1である。
また、説明の便宜上、棒グラフの横軸方向の幅を1スロット分とし、隣接する棒グラフの間には、ティース部21bの第一方向(矢印X方向)の幅に相当する空白が設けられている。但し、同図は、ティース部21bの第一方向(矢印X方向)の幅を規定するものではない。さらに、同図では、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極対分のコイルサイド分布が図示されている。同図に示すコイルサイド分布は、複数(8極)の可動子磁極32の一磁極対毎に繰り返される。図17Aの図示の方法について既述したことは、コイルサイド分布を示す後述する図面についても同様に言える。但し、後述する図面では、縦軸は、混成一相帯62を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)を示している。
図15に示すように、例えば、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図17Aに示すように、位置座標PPが0におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。同様に、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。また、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(2つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相の一相帯61を構成するコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、2とする。
図17Bは、本実施形態(固定子巻線22が複数(4つ)の基本コイル70を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図16Cに示すように、例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されている。そのため、図17Bに示すように、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。同様に、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、8とする。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが6のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが6におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。また、位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(7つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、7とする。さらに、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(8つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、8とする。また、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。
図17Bに示す本実施形態のコイルサイド分布は、図17Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。本実施形態では、混成一相帯62を構成する複数(20個)のコイルサイド22aは、参考形態の一相帯61を構成する複数(5つ)のコイルサイド22aと比べて、広範囲の隣接する複数のスロット21cに配置されている。その結果、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力分布は、第一方向(矢印X方向)に分散される。よって、固定子20と可動子30との間の吸引力分布も、なだらかになり、吸引力のピーク値(吸引力分布における基本波成分の振幅)および吸引力の第一方向(矢印X方向)の変化量は、参考形態と比べて低減する。また、吸引力のピーク値が最大になる位置の第一方向(矢印X方向)におけるピッチもより等ピッチ化される。よって、本実施形態の回転電機10は、参考形態の回転電機10と比べて、回転電機10の騒音および振動を低減することができる。また、固定子20と可動子30との間の空隙に発生する磁束波形は、参考形態と比べて、正弦波に近づいている。さらに、本実施形態の回転電機10は、参考形態と比べて、起磁力の高調波成分(例えば、五次および七次の成分)も低減されている。
なお、一相帯61を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさは、複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線に流れる電流の電流値と、複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線の巻数(ターン数であり、導体数)とを乗じた値になる。複数のコイルサイド22aを形成する複数の巻線は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方によって電気的に接続することができる。但し、複数の巻線に並列接続される部位が存在すると、当該部位では、直列接続される場合と比べて、電流値が小さくなるので、起磁力の大きさも小さくなる。よって、複数の巻線の巻数(ターン数であり、導体数)を考える場合、並列接続される部位の導体数を直列接続の導体数に換算した直列換算導体数を用いる必要がある。例えば、複数(2つ)の巻線が直列接続される部位の各々の導体数を1とする。このとき、複数(2つ)の巻線が並列接続(二並列)される部位では、直列換算導体数は、1であり、直列換算導体数を直列接続の場合と等価にするには、当該部位の導体数を2とする。
ここで、第一基本コイル71の一の一相帯61を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aの直列換算導体数を第一コイルサイド導体数とする。また、第一基本コイル71の一の一相帯61に対して第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ(本実施形態では、7スロットピッチまたは14スロットピッチ)分、移動した位置に配置されている少なくとも一つの第二基本コイル72(本実施形態では、3つの第二基本コイル72)の各々の一の一相帯61を構成する複数(本実施形態では、5つ)のコイルサイド22aの直列換算導体数を第二コイルサイド導体数とする。
例えば、図16Bに示すように、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、2.5スロット分を占有している。一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。第一基本コイル71の当該一相帯61に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、5(=2.5×2)スロット分を占有している。また、第一基本コイル71の当該一相帯61に対して、第一方向(矢印X方向)に14スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが14、15および16の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。
このように、本実施形態では、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数のうちの一方の第二コイルサイド導体数(この場合、2.5×t0で表される)は、第一コイルサイド導体数と均等である。これに対して、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数のうちの他方の第二コイルサイド導体数(この場合、5×t0で表される)は、第一コイルサイド導体数と異なり、第一コイルサイド導体数の二倍になっている。上述したことは、他の一相帯61についても同様に言える。
ここで、第一コイルサイド導体数と、所定スロットピッチが小さいものから順に所定スロットピッチ毎に列挙された少なくとも一つの第二コイルサイド導体数(本実施形態では、複数(2つ)の第二コイルサイド導体数)と、からなるコイルサイド導体数を列挙した要素数がm個(但し、mは3以上の自然数)の数列を第二数列とする。本実施形態では、mが3であり、第二数列の要素数は3個である。また、第二数列の要素を列挙すると、2.5×t0、5×t0、2.5×t0となり、第二数列の各要素の比は、1:2:1になる。
本実施形態では、第二数列は、k番目(但し、kはm/2以下の自然数)の要素のコイルサイド導体数と、(m−k+1)番目の要素のコイルサイド導体数と、が同一である。具体的には、本実施形態では、mが3であるので、kは、1になる。1番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。3(=3−1+1)番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。よって、1番目の要素のコイルサイド導体数と、3番目の要素のコイルサイド導体数とは、同一である。また、第二数列は、2番目の要素のコイルサイド導体数(5×t0)が、1番目の要素のコイルサイド導体数および3番目の要素のコイルサイド導体数(2.5×t0)と比べて、二倍に設定されている。
本実施形態では、第二数列は、1番目の要素からj番目(但し、jはm/2であり、m/2が自然数でないときには小数点以下を切り上げた自然数)の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、j番目の要素からm番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少している。具体的には、本実施形態では、mが3であるので、jは、2になる。また、1番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0であり、2番目の要素のコイルサイド導体数は、5×t0である。よって、第二数列は、1番目の要素から2番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加している。一方、2番目の要素のコイルサイド導体数は、5×t0であり、3番目の要素のコイルサイド導体数は、2.5×t0である。よって、第二数列は、2番目の要素から3番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少している。
上述したことは、mが4以上の自然数においても同様に言える。例えば、mが6の場合を想定する。第二数列の1番目の要素から6番目の要素を、順に、要素EL1、要素EL2、要素EL3、要素EL4、要素EL5、要素EL6とする。但し、要素EL1と要素EL6は、コイルサイド導体数が同一であり、要素EL2と要素EL5は、コイルサイド導体数が同一であり、要素EL3と要素EL4は、コイルサイド導体数が同一であるものとする。また、1番目の要素EL1から3番目の要素EL3にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、4番目の要素EL4から6番目の要素EL6にかけて、コイルサイド導体数が減少しているものとする。
mが6であるので、kは3(=6/2)以下の自然数になる。上記仮定したように、1番目の要素EL1と、6(=6−1+1)番目の要素EL6は、コイルサイド導体数が同一である。2番目の要素EL2と、5(=6−2+1)番目の要素EL5は、コイルサイド導体数が同一である。3番目の要素EL3と、4(=6−3+1)番目の要素EL4は、コイルサイド導体数が同一である。また、mが6であるので、jは、3になる。上記仮定したように、1番目の要素EL1から3番目の要素EL3にかけて、コイルサイド導体数が増加している。一方、4番目の要素EL4から6番目の要素EL6にかけて、コイルサイド導体数が減少している。
このように、第二数列は、k番目(但し、kはm/2以下の自然数)の要素のコイルサイド導体数と、(m−k+1)番目の要素のコイルサイド導体数と、が同一であると好適である。また、第二数列は、1番目の要素からj番目(但し、jはm/2であり、m/2が自然数でないときには小数点以下を切り上げた自然数)の要素にかけて、コイルサイド導体数が増加しており、j番目の要素からm番目の要素にかけて、コイルサイド導体数が減少していると好適である。さらに、本実施形態では、mは3である。この場合、第二数列は、2番目の要素のコイルサイド導体数が、1番目の要素のコイルサイド導体数および3番目の要素のコイルサイド導体数と比べて、二倍に設定されていると好適である。
(同心巻による固定子巻線22の構成例)
図16Cに示すように、複数(本実施形態では、4つ)の基本コイル70が混成されている固定子巻線22は、複数(本実施形態では、3つ)の相コイル22c(U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cw)を含んでいる。複数(3つ)の相コイル22cは、少なくとも一つ(本実施形態では、三相の各相4個、合計12個)の極対コイル80を具備しており、各極対コイル80は、同心状に巻装されている複数(本実施形態では、4つ)の単位コイル22dを備えている。なお、同図では、図示の便宜上、U相コイル22cuの一つの極対コイル80を構成する複数(4つ)の単位コイル22dが明示されている。
図18に示すように、複数(3つ)の相コイル22cの各極対コイル80は、第一極コイル81fと第二極コイル81sとを備え、第一極コイル81fおよび第二極コイル81sが電気的に直列接続されていると好適である。本実施形態では、第一極コイル81fは、一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチが異なる複数(2つ)の単位コイル22dを備えており、当該複数(2つ)の単位コイル22dを第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2とする。第一単位コイル22d1の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、7スロットピッチ(7sp)に設定されており、第二単位コイル22d2の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、5スロットピッチ(5sp)に設定されている。第一単位コイル22d1および第二単位コイル22d2は、同心状に巻装され、単位コイル間接続部82によって直列接続されており、第一極コイル81fが形成されている。
本実施形態では、第二極コイル81sは、一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチが異なる複数(2つ)の単位コイル22dを備えており、当該複数(2つ)の単位コイル22dを第三単位コイル22d3、第四単位コイル22d4とする。第三単位コイル22d3の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、6スロットピッチ(6sp)に設定されており、第四単位コイル22d4の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、4スロットピッチ(4sp)に設定されている。第三単位コイル22d3および第四単位コイル22d4は、同心状に巻装され、単位コイル間接続部82によって直列接続されており、第二極コイル81sが形成されている。第二極コイル81sは、第一極コイル81fが複数(8極)の可動子磁極32のうちの一の可動子磁極32(同図では、可動子磁極32a)と対向するときに当該可動子磁極32(可動子磁極32a)に隣接する一の可動子磁極32(同図では、可動子磁極32b)と対向する。
このように、各極対コイル80を構成する複数(4つ)の単位コイル22d(第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2、第三単位コイル22d3および第四単位コイル22d4)は、一対のスロット21c,21cに収容されている一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチがそれぞれ異なる。また、各極対コイル80を構成する複数(4つ)の単位コイル22d(第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2、第三単位コイル22d3および第四単位コイル22d4)は、一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチが、いずれも毎極スロット数(本実施形態では、7.5)より短く設定されている。一方、二層重巻によって固定子巻線を構成する場合、単位コイルの一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、いずれも7スロットピッチ(7sp)に設定される。よって、本実施形態の回転電機10は、二層重巻構成の固定子巻線と比べて、固定子巻線22の導体長を短くすることができ、固定子巻線22に使用する導体量を少なくすることができる。
図16Bに示すように、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72と、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72とは、固定子20上の配置が同じである。よって、これらの二つの第二基本コイル72は、1種類の基本コイル70と考える。これらの二つの第二基本コイル72と、第一層L1および第二層L2を形成する第一基本コイル71と、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72とは、固定子20上の配置がそれぞれ異なる。よって、本実施形態の固定子巻線22は、固定子20上の配置が異なる奇数種類(本実施形態では、3種類)の複数(本実施形態では、4つ)の基本コイル70を備えている。
また、図16Cに示すように、複数(4つ)の基本コイル70は、同一のスロット21cに収容されている同相のコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置が相毎(U相、V相およびW相毎)に集約されている。さらに、複数(本実施形態では、3つ)の相コイル22cの各々は、複数(4つ)の基本コイル70の全体において、複数(本実施形態では、8極)の可動子磁極32の磁極対数分(本実施形態では、4つ)の極対コイル80を備えている。よって、例えば、複数(4つ)の基本コイル70の各々において4つの極対コイル80を備える場合と比べて、本実施形態の回転電機10は、極対コイル80の数を低減することができ、固定子巻線22の簡素化を図ることができる。その結果、本実施形態の回転電機10は、極対コイル80間の配策の簡素化およびこれに伴う固定子巻線22の小型化を図ることができ、固定子巻線22の装着作業における作業性の向上を図ることができる。
さらに、図18に示すように、複数(3つ)の相コイル22cの各極対コイル80は、巻始め側の第一極コイル81fから巻終り側の第二極コイル81sへ引き回す極コイル間接続部83を介して連続して巻進められていると好適である。本実施形態では、巻始め部80aから巻終り部80bまで巻線が連続して巻進められて、極対コイル80が形成されている。これにより、第一極コイル81fを構成する複数(2つ)の単位コイル22d(第一単位コイル22d1および第二単位コイル22d2)と、第二極コイル81sを構成する複数(2つ)の単位コイル22d(第三単位コイル22d3および第四単位コイル22d4)とが直列接続されている。本実施形態では、第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2、第三単位コイル22d3および第四単位コイル22d4は、この順に直列接続されている。なお、第一極コイル81fおよび第二極コイル81sの各々について、個別に巻装し、第一極コイル81fおよび第二極コイル81sを直列接続することによって、極対コイル80を形成することもできる。また、複数の極対コイル80の巻線を連続して巻進めて、直列接続された複数の極対コイル80を形成することもできる。
また、複数(3つ)の相コイル22cの各極対コイル80は、第一コイル引出部80fと第二コイル引出部80sとからなる一対のコイル引出部80f,80sを備えていると好適である。第一コイル引出部80fは、第一極コイル81fを構成する一の単位コイル22dであって巻始めの単位コイル22d(本実施形態では、第一単位コイル22d1)の一のコイルサイド22aから引き出される。当該コイルサイド22aを第一コイルサイド22a1とする。第二コイル引出部80sは、第二極コイル81sを構成する一の単位コイル22dであって巻終りの単位コイル22d(本実施形態では、第四単位コイル22d4)の一のコイルサイド22aから引き出される。当該コイルサイド22aを第二コイルサイド22a2とする。なお、図18では、極コイル間接続部83によって接続される第一極コイル81f側のコイルサイド22aを第三コイルサイド22a3とする。また、極コイル間接続部83によって接続される第二極コイル81s側のコイルサイド22aを第四コイルサイド22a4とする。
さらに、U相コイル22cuは、一対のコイル引出部80f,80sを介して、U相の複数(4つ)の極対コイル80が電気的に接続されていると好適である。本実施形態では、各極対コイル80の巻始め部80a同士が電気的に接続され、U相端子8TUに接続されている。また、各極対コイル80の巻終り部80b同士が電気的に接続され、中性点8Nに接続されている。これにより、U相コイル22cuを構成する複数(4つ)の極対コイル80は、電気的に並列接続されている。
なお、U相コイル22cuは、直列接続されている複数(4つ)の極対コイル80によって構成することもできる。また、U相コイル22cuは、複数(4つ)の極対コイル80のうちの第一方向(矢印X方向)に隣接または一磁極対分おきに存在する複数(2つ)の極対コイル80を直列接続し、残りの第一方向(矢印X方向)に隣接または一磁極対分おきに存在する複数(2つ)の極対コイル80を直列接続して、これらを並列接続することもできる。U相コイル22cuについて上述したことは、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwについても同様に言える。このように、複数(3つ)の相コイル22cの各々が具備する複数(4つ)の極対コイル80は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも一方により電気的に接続することができる。また、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、一対のコイル引出部80f,80sを介して、同相の複数(4つ)の極対コイル80が電気的に接続されていると好適である。
なお、図18に示すように、本実施形態では、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)は、第一方向(矢印X方向)のうちの第一極コイル81f側から第二極コイル81s側に向かう方向(第一方向第二極コイル側)である。また、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)は、第一方向(矢印X方向)のうちの第二極コイル81s側から第一極コイル81f側に向かう方向(第一方向第一極コイル側)である。
(第五変形形態)
本変形形態は、固定子巻線22が複数(2つ)の基本コイル70を備える点で、実施形態と異なる。本変形形態では、実施形態と異なる点が中心に説明されている。
図19Aに示すように、固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル70を備えている。複数(2つ)の基本コイル70の各々は、既述した基本コイル70と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル70は、第一基本コイル71と、一つの第二基本コイル72とを備えている。本変形形態においても、一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。また、一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置されている。これらにより、本変形形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成されている。
本変形形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定されている。また、所定スロットピッチは、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定されている。このように、本変形形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))を含んでいる。
例えば、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、一つの第二基本コイル72では、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上述したことは、他のU相の一相帯61についても同様に言える。また、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。よって、上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC31は、例えば、下記数9から算出することができ、コイルサイド中心CC31は、0.5になる。
(数9)
CC31=(−1×1+0×4+1×4+2×1)/(1+4+4+1)=0.5
また、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC32は、例えば、下記数10から算出することができ、コイルサイド中心CC32は、8になる。
(数10)
CC32=(7×3+8×4+9×3)/(3+4+3)=8
さらに、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが14、15、16および17の複数(4つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC33は、例えば、下記数11から算出することができ、コイルサイド中心CC33は、15.5になる。
(数11)
CC33=(14×1+15×4+16×4+17×1)/(1+4+4+1)
=15.5
また、U相の混成一相帯62は、例えば、位置座標PPが22、23および24の複数(3つ)のスロット21cに形成されている。上記の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、10個である。上記の混成一相帯62のコイルサイド中心CC34は、例えば、下記数12から算出することができ、コイルサイド中心CC34は、23になる。
(数12)
CC34=(22×3+23×4+24×3)/(3+4+3)=23
上述した算出結果から、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC31とコイルサイド中心CC32との間の距離は、7.5(=8−0.5)になる。また、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC32とコイルサイド中心CC33との間の距離は、7.5(=15.5−8)になる。さらに、U相の混成一相帯62のコイルサイド中心CC33とコイルサイド中心CC34との間の距離は、7.5(=23−15.5)になる。このように、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、いずれも7.5であり、均等である。そのため、第一方向(矢印X方向)において隣接する同相(U相)の混成一相帯62のコイルサイド中心CC間の距離は、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。また、本変形形態の隣接コイルサイド比は、1(=7.5/7.5)である。
なお、図19Aに示す相配置は、同一のスロット21cに収容されている同相の複数のコイルサイド22aにおいて、通電方向が異なるコイルサイド22aが混在している。そのため、図19Bに示すように、複数のコイルサイド22aの通電方向を修正する必要がある。例えば、図19Bに示す第二基本コイル72において、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに収容されているU相の複数(5つ)のコイルサイド22aの通電方向は、図19Aに示す通電方向に対して反転されている。上述したことは、第二基本コイル72の他の一相帯61についても同様に言える。
また、図19Cに示すように、本変形形態においても、同一のスロット21cに収容されている複数のコイルサイド22aは、当該スロット21c内において、同相のコイルサイド22aが集約されている。例えば、図19Bに示す第二基本コイル72において、位置座標PPが−1のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図19Cでは、第三層L3から第四層L4に移動されている。また、図19Bに示す第一基本コイル71において、位置座標PPが2のスロット21cに収容されているU相のコイルサイド22aは、図19Cでは、第二層L2から第一層L1に移動されている。上述したことは、他の混成一相帯62についても同様に言える。
さらに、例えば、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62のコイルサイド分布幅は、3スロット分である。また、位置座標PPが−1、0、1および2の複数(4つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の混成一相帯62の実効コイルサイド分布幅は、4スロット分である。
このように、本変形形態の実効コイルサイド分布幅(4スロット分)は、実施形態で既述した参考形態(固定子巻線22が一つの基本コイル70を備える形態)の実効コイルサイド分布幅(3.5スロット分)と比べて、増加している。そのため、本変形形態の起磁力分布は、参考形態の起磁力分布と比べて、なだらかになる。
また、図20は、本変形形態(固定子巻線22が複数(2つ)の基本コイル70を備える形態)のコイルサイド分布の一例を示している。図19Cに示すように、例えば、位置座標PPが−1のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されている。そのため、図20に示すように、位置座標PPが−1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。同様に、位置座標PPが0のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが0におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。また、位置座標PPが1のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが1におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが2のスロット21cには、U相の一つのコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが2におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、1とする。
位置座標PPが7のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが7におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。また、位置座標PPが8のスロット21cには、U相の複数(4つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが8におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、4とする。さらに、位置座標PPが9のスロット21cには、U相の複数(3つ)のコイルサイド22aが収容されており、位置座標PPが9におけるU相のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、3とする。
図20に示す本変形形態のコイルサイド分布は、図17Aに示す参考形態のコイルサイド分布と比べて、第一方向(矢印X方向)に広がり、なだらかになっている。また、本変形形態のコイルサイド分布は、参考形態のコイルサイド分布と比べて、正弦波に近づいている。よって、本変形形態の回転電機10は、実施形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、例えば、第一基本コイル71において、位置座標PPが0、1および2の複数(3つ)のスロット21cに形成されているU相の一相帯61は、2.5スロット分を占有している。実施形態と同様に、一つのスロット21cを占有するコイルサイド22aの直列換算導体数を基準導体数t0とすると、第一コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。
第一基本コイル71の当該一相帯61に対して、第一方向(矢印X方向)に7スロットピッチ分、移動した位置に配置されている第二基本コイル72のU相の一相帯61は、位置座標PPが7、8および9の複数(3つ)のスロット21cに形成されており、2.5スロット分を占有している。よって、第二コイルサイド導体数は、2.5×t0で表すことができる。つまり、本変形形態では、第一コイルサイド導体数および第二コイルサイド導体数は、均等である。なお、上述したことは、他の一相帯61についても同様に言える。
図19Bおよび図19Cに示すように、複数(本変形形態では、2つ)の基本コイル70が混成されている固定子巻線22は、複数(3つ)の相コイル22c(U相コイル22cu、V相コイル22cv、W相コイル22cw)を含んでいる。複数(3つ)の相コイル22cは、複数(三相の各相8個、合計24個)の極対コイル80を具備しており、各極対コイル80は、同心状に巻装されている複数(3つ)の単位コイル22dを備えている。なお、これらの図では、図示の便宜上、一磁極対分のU相コイル22cuの二つの極対コイル80を構成する複数(6つ)の単位コイル22dが明示されている。
図19Bおよび図19C並びに図21に示すように、本変形形態の第一極コイル81fは、一つの単位コイル22dを備えており、当該単位コイル22dを第一単位コイル22d1とする。第一単位コイル22d1の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、6スロットピッチ(6sp)に設定されている。第一単位コイル22d1は、同心状に巻装され、第一極コイル81fが形成されている。
第二極コイル81sは、一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチが異なる複数(2つ)の単位コイル22dを備えており、当該複数(2つ)の単位コイル22dを第二単位コイル22d2、第三単位コイル22d3とする。第二単位コイル22d2の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、7スロットピッチ(7sp)に設定されており、第三単位コイル22d3の一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチは、5スロットピッチ(5sp)に設定されている。第二単位コイル22d2および第三単位コイル22d3は、同心状に巻装され、単位コイル間接続部82によって直列接続されており、第二極コイル81sが形成されている。
このように、本変形形態においても、各極対コイル80を構成する複数(3つ)の単位コイル22d(第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2および第三単位コイル22d3)は、一対のスロット21c,21cに収容されている一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチがそれぞれ異なる。また、各極対コイル80を構成する複数(3つ)の単位コイル22d(第一単位コイル22d1、第二単位コイル22d2および第三単位コイル22d3)は、一対のコイルサイド22a,22a間のコイルピッチが、いずれも毎極スロット数(本変形形態では、7.5)より短く設定されている。よって、実施形態において既述したことは、本変形形態においても同様に言える。
図19Bおよび図19Cに示すように、本変形形態の固定子巻線22は、固定子20上の配置が異なる偶数種類(本変形形態では、2種類)の複数(本変形形態では、2つ)の基本コイル70を備えている。また、複数(本変形形態では、3つ)の相コイル22cの各々は、複数(2つ)の基本コイル70の各々において、複数(本変形形態では、8極)の可動子磁極32の磁極対数分(本変形形態では、4つ)の極対コイル80を備えている。具体的には、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、第一基本コイル71において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備え、第二基本コイル72において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えている。
複数(3つ)の相コイル22cの各々が具備する複数(8つ)の極対コイル80は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも直列接続により電気的に接続することができる。また、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、一対のコイル引出部80f,80sを介して、同相の複数(8つ)の極対コイル80が電気的に接続されていると好適である。
図22Aは、U相コイル22cuの各極対コイル80の結線の一例を示している。同図は、図示の便宜上、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの二つの極対コイル80と、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの二つの極対コイル80とが図示されている。第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの二つの極対コイル80は、一の極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aがU相端子8TUと接続されている。当該極対コイル80の第二コイル引出部80sの巻終り部80bは、第一方向(矢印X方向)に隣接する一の極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aと接続されている。このようにして、二つの極対コイル80が直列接続されている。なお、実際は、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの四つの極対コイル80が直列接続されている。
第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの二つの極対コイル80は、一の極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aが中性点8Nと接続されている。当該極対コイル80の第二コイル引出部80sの巻終り部80bは、第一方向(矢印X方向)に隣接する一の極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aと接続されている。このようにして、二つの極対コイル80が直列接続されている。なお、実際は、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの四つの極対コイル80が直列接続されている。
ここで、第一基本コイル71において直列接続されているU相コイル22cuの極対コイル80の端部のうち、U相端子8TUに接続されている端部と反対側の端部(第二コイル引出部80sの巻終り部80b)を第一端部80e1とする。また、第二基本コイル72において直列接続されているU相コイル22cuの極対コイル80の端部のうち、中性点8Nに接続されている端部と反対側の端部(第二コイル引出部80sの巻終り部80b)を第二端部80e2とする。本形態では、第一端部80e1と第二端部80e2との間は、電気的に接続されている。これにより、U相コイル22cuの複数(8つ)の極対コイル80は、すべて直列接続される。本形態では、U相コイル22cuが具備する極対コイル80の種類は、一種類であり、極対コイル80の種類数を最小化することができる。上述したことは、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwについても同様に言える。
図22Bは、U相コイル22cuの各極対コイル80の他の結線の一例を示している。同図は、図示の便宜上、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの一つの極対コイル80と、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの一つの極対コイル80とが図示されている。本形態では、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80は、既述した極対コイル80と同じであるが、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80は、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80に対して、巻方向が逆方向に設定されている。具体的には、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80は、第三方向(矢印Z方向)に沿って延びる仮想の直線の周りに、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80を180°回転させた形態と一致する。
また、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第一極コイル81fは、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第二極コイル81sと対向している。第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第二極コイル81sは、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第一極コイル81fと対向している。
第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aは、U相端子8TUと接続されている。また、第一基本コイル71が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第二コイル引出部80sの巻終り部80bと、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第一コイル引出部80fの巻始め部80aとが接続されている。さらに、第二基本コイル72が備えるU相コイル22cuの極対コイル80の第二コイル引出部80sの巻終り部80bは、中性点8Nと接続されている。これにより、一磁極対分のU相コイル22cuの複数(2つ)の極対コイル80が直列接続される。
残りの三磁極対分の複数(6つ)の極対コイル80についても、同様にして、一磁極対分の複数(2つ)の極対コイル80がそれぞれ直列接続される。ここで、一磁極対分の直列接続される複数(2つ)の極対コイル80を直列極対コイルとする。合計四組の直列極対コイルは、すべて直列接続することができる。また、合計四組の直列極対コイルは、すべて並列接続することもできる。さらに、合計四組の直列極対コイルのうちの二組の直列極対コイルを直列接続し、残りの二組の直列極対コイルを直列接続し、直列接続された二組の直列極対コイルと、直列接続された二組の直列極対コイルとを並列接続することもできる。本形態では、U相コイル22cuが具備する極対コイル80の種類は、二種類であり、図22Aに示す形態と比べて、極対コイル80の種類数が増加している。しかしながら、本形態では、第二基本コイル72の数が増加した場合に、極対コイル80間を接続する配策を均等化し易い。上述したことは、V相コイル22cvおよびW相コイル22cwについても同様に言える。
なお、本変形形態の極対コイル80は、実施形態と比べて、第一極コイル81fを構成する単位コイル22dの数が一つ少ない。また、本変形形態の極対コイル80は、第二極コイル81sの構成が実施形態と同じである。よって、本変形形態の極対コイル80は、実施形態と比べて、極対コイル80の構成としては簡素化される。
また、図16Dに示すように、実施形態についても、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(4つ)の基本コイル70の各々において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。具体的には、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、第一層L1および第二層L2を形成する第一基本コイル71において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備え、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。複数(3つ)の相コイル22cの各々は、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備え、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72において、磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。
なお、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72と、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72とは、固定子20上の配置が同じである。よって、例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72が備える各極対コイル80の各単位コイル22dの巻数を二倍にして、固定子20上の配置が同じ単位コイル22dを集約(一コイル化)しても良い。
(第六変形形態)
固定子巻線22は、複数(3つ)の基本コイル70を備えることもできる(第六変形形態)。この場合も、複数(3つ)の基本コイル70の各々は、既述した基本コイル70と同一構成である。また、複数(3つ)の基本コイル70は、第一基本コイル71と、複数(2つ)の第二基本コイル72とを備える。本変形形態においても、複数(2つ)の第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置される。また、複数(2つ)の第二基本コイル72の各々は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置される。これらにより、本変形形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第六層L6の六層に形成される。
本変形形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定される。但し、複数(2つ)の第二基本コイル72のうちの一方の第二基本コイル72(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定される。複数(2つ)の第二基本コイル72のうちの他方の第二基本コイル72(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定される。よって、本変形形態においても、所定スロットピッチを規定するnは、1および2である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から2倍(14スロットピッチ(14sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
本変形形態では、U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも15個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善される。よって、本変形形態においても、既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形形態では、固定子巻線22は、固定子20上の配置が異なる奇数種類(3種類)の複数(3つ)の基本コイル70を備える。さらに、複数(3つ)の基本コイル70は、同一のスロット21cに収容されている同相のコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置を相毎(U相、V相およびW相毎)に集約することができる。また、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(3つ)の基本コイル70の全体において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(3つ)の基本コイル70の各々において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることもできる。
(第七変形形態)
固定子巻線22は、複数(4つ)の基本コイル70を備えることもできる(第七変形形態)。この場合も、複数(4つ)の基本コイル70の各々は、既述した基本コイル70と同一構成である。また、複数(4つ)の基本コイル70は、第一基本コイル71と、複数(3つ)の第二基本コイル72とを備える。本変形形態においても、複数(3つ)の第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置される。また、複数(3つ)の第二基本コイル72の各々は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置される。これらにより、本変形形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第八層L8の八層に形成される。
本変形形態においても、移動単位量は、7スロットピッチに設定される。但し、複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの一の第二基本コイル72(例えば、第三層L3および第四層L4を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))に設定される。複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの他の一の第二基本コイル72(例えば、第五層L5および第六層L6を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの2倍(14スロットピッチ(14sp))に設定される。複数(3つ)の第二基本コイル72のうちの他の一の第二基本コイル72(例えば、第七層L7および第八層L8を形成する第二基本コイル72)は、所定スロットピッチが、移動単位量である7スロットピッチの3倍(21スロットピッチ(21sp))に設定される。このように、本変形形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1、2および3である。また、第一数列は、移動単位量である7スロットピッチの1倍(7スロットピッチ(7sp))から3倍(21スロットピッチ(21sp))までのすべての自然数倍を含んでいる。
本実施形態では、U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも20個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善される。よって、本変形形態においても、既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形形態では、固定子巻線22は、固定子20上の配置が異なる偶数種類(4種類)の複数(4つ)の基本コイル70を備える。さらに、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(4つ)の基本コイル70の各々において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。また、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(4つ)の基本コイル70のうちの複数(2つ)の基本コイル70の全体において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備え、残りの複数(2つ)の基本コイル70の全体において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることもできる。
(第八変形形態)
固定子巻線22は、複数(2つ)の基本コイル70を備え、移動単位量を1スロットピッチに設定することもできる(第八変形形態)。この場合も、複数(2つ)の基本コイル70の各々は、既述した基本コイル70と同一構成である。また、複数(2つ)の基本コイル70は、第一基本コイル71と、一つの第二基本コイル72とを備える。本変形形態においても、一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置される。また、一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)に移動した位置に配置される。これらにより、本変形形態の固定子巻線22は、第一層L1〜第四層L4の四層に形成される。
本実施形態では、移動単位量は、1スロットピッチに設定される。また、所定スロットピッチは、移動単位量である1スロットピッチの1倍(1スロットピッチ(1sp))に設定される。このように、本変形形態では、所定スロットピッチを規定するnは、1である。また、第一数列は、移動単位量である1スロットピッチの1倍(1スロットピッチ(1sp))を含んでいる。
本変形形態では、U相の混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aの数(コイルサイド数CN)は、いずれも10個であり、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等である。そのため、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさは、複数(8極)の可動子磁極32の毎極において均等になる。さらに、起磁力分布の回転対称性が改善される。よって、本変形形態においても、既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形形態では、複数(2つ)の基本コイル70は、同一のスロット21cに収容されている同相のコイルサイド22aの当該スロット21c内の配置が相毎(U相、V相およびW相毎)に集約される。さらに、複数(3つ)の相コイル22cの各々は、複数(2つ)の基本コイル70の全体において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることができる。複数(2つ)の相コイル22cの各々は、複数(2つ)の基本コイル70の各々において、複数(8極)の可動子磁極32の磁極対数分(4つ)の極対コイル80を備えることもできる。
(他の変形形態)
実施形態、並びに、第五変形形態、第六変形形態および第七変形形態において、移動単位量は、8スロットピッチに設定することもできる。また、少なくとも一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)に移動した位置に配置することもできる。さらに、固定子巻線22は、5つ以上の基本コイル70を備えることもでき、基本コイル70の数は、限定されない。但し、基本コイル70の数が増加する程、回転電機10の出力トルクの目減りが増大する。よって、固定子20上の配置が同じ基本コイル70を一種類とするとき、基本コイル70の種類数は、毎極毎相スロット数Nsppの二倍(既述した形態では、5=(2.5×2)種類)までにすると好適である。
<騒音および振動の回転次数>
本願発明者は、スキューによって低減可能な騒音および振動の回転次数と、基本コイル70の混成によって低減可能な騒音および振動の回転次数とを把握するために、高調波解析を行った。そして、本願発明者は、解析結果から、スキューおよび基本コイル70の混成によって、分数スロット構成に特有の全ての回転次数の騒音および振動が低減されることを確認した。また、本願発明者は、解析結果から、騒音および振動の回転次数について再現式を導出した。さらに、本願発明者は、騒音および振動が生じる原理を検討し、騒音および振動の回転次数について理論式を導出した。そして、本願発明者は、導出された再現式と理論式とを比較し、理論式の妥当性を確認した。
(高調波解析)
図23は、回転電機10の駆動範囲の一例を示している。同図の横軸は、回転電機10の駆動回転数Omgを示し、縦軸は、回転電機10の出力トルクTrqを示している。回転電機10の力行駆動範囲は、点O、点PN1、点PN2、点PN3および点PN4によって囲まれる領域で示されている。また、回転電機10の力行駆動範囲のうち、回転電機10の出力電流(相電流)を正弦波状に経時変化させる正弦波駆動が可能な領域は、点O、点PN1、点PN5および点PN6によって囲まれる領域で示されている。正弦波駆動が可能な領域から、矩形波駆動および弱め界磁制御によって駆動回転数Omgをさらに上昇させることが可能な領域は、点PN5、点PN2、点PN3、点PN4および点PN6によって囲まれる領域で示されている。駆動回転数Omgの最大値を最大回転数Omgmaxとし、出力トルクTrqの最大値を最大トルクTrqmaxとする。
また、出力トルクTrqが最大トルクTrqmaxで一定のときの駆動回転数Omgの最大値を最大回転数Omg1とする。矩形波駆動および弱め界磁制御を行わないで、正弦波駆動のみによって駆動可能な駆動回転数Omgの最大値を最大回転数Omg2とする。さらに、正弦波駆動が可能な領域のうち、磁気飽和の影響が少ない領域は、点O、点PN7、点PN8および点PN6によって囲まれる領域で示されている。当該領域の出力トルクTrqの最大値を最大トルクTrq1とする。
本解析結果は、原則として、回転電機10の力行駆動範囲の全領域で適用することができる。特に、正弦波駆動が可能な領域のうち、磁気飽和の影響が少ない領域では、固定子20と可動子30との間に発生する電磁気的な吸引力分布に、固定子20および可動子30の構成(すなわち、分数スロット構成)以外の要因に起因する高調波成分の重塁が少ない。換言すれば、当該領域では、吸引力分布に、固定子20および可動子30の構成(分数スロット構成)に起因する高調波成分が重塁する。そのため、本明細書で示す解析結果は、当該領域において取得されている。なお、固定子20および可動子30の構成(分数スロット構成)以外の要因には、例えば、固定子20および可動子30を構成する構成部材の磁気特性の非線形性、回転電機10の出力電流(相電流)の基本波成分以外の成分などが挙げられる。また、当該領域以外の領域において解析結果を適用する場合は、固定子20および可動子30の構成(分数スロット構成)以外の要因に起因する高調波成分を低減する追加対応を適宜実施すれば良い。
ちなみに、実施形態の回転電機10の最大出力は、30kWであり、固定子鉄心21の外径(直径)は、200mm、固定子鉄心21の積厚は、50mmである。また、最大回転数Omgmaxは、16krpm、最大トルクTrqmaxは、50Nmである。最大回転数Omg1は、約6krpm、最大回転数Omg2は、約10krpmである。さらに、最大トルクTrq1は、最大トルクTrqmaxの約75%(37.5Nm)に設定されている。但し、解析結果が適用可能な回転電機および駆動条件は、上述した回転電機10および駆動条件に限定されるものではない。
図24は、解析結果から得られる分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の主要な回転次数の一例を示している。同図では、分数スロット構成の1/2系列の回転電機10について、可動子30の磁極数および固定子20のスロット数毎に、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の主要な回転次数が示されている。例えば、本実施形態の回転電機10は、8極60スロット構成の1/2系列の回転電機であり、可動子30の磁極数が2極、固定子20のスロット数が15スロットを基本構成とする回転電機である。この場合、同図に示すように、騒音および振動の回転次数には、64(=4×16)次、56(=4×14)次、40(=4×10)次、32(=4×8)次、16(=4×4)次、および、8(=4×2)次が含まれる。
同図では、2極21スロットを基本構成とする8極84スロット構成の回転電機10、2極9スロットを基本構成とする8極36スロット構成の回転電機10、および、2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10についても、同様にして、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の主要な回転次数が示されている。なお、2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10では、固定子巻線22が集中巻で巻装される。集中巻では、固定子巻線22の巻線ピッチが、1スロットピッチ分に設定され、固定子磁極の一磁極幅で巻装される。2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10では、固定子巻線22が集中巻構成ゆえに、混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが複数の可動子磁極32の毎極において均等になるように、複数の基本コイル70を混成することが困難になる。そのため、2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10は、参考形態とする。また、毎極毎相スロット数Nsppが4.5以上の場合についても、同様にして、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の主要な回転次数を取得することができる。
分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の主要な回転次数は、例えば、次のようにして取得することができる。磁界解析により、固定子20と可動子30との間の空隙の磁束密度を求め、固定子20と可動子30との間に発生する電磁気的な吸引力の時空間分布を取得する。そして、時空間分布をフーリエ展開し、吸引力の空間成分(空間変形モード次数)と、時間成分(時間次数、回転方向)とを取得する。騒音および振動の回転次数は、空間変形モード次数と時間次数とを乗じた次数になる。但し、時間次数は、可動子30の機械角360°(円筒状の回転電機10では、可動子30の一回転)あたりに、該当空間変形モード次数の空間変形が回転する回数とする。
具体的には、吸引力のピーク値が一磁極毎には等価にならず、一磁極対毎(二磁極毎)に隔極で等価になる回転電機10(例えば、1/2系列の8極の回転電機)では、固定子鉄心21の一周あたり、起振力の強弱が4回繰り返される。その結果、固定子鉄心21の外周は、図5Bの曲線21s4で示す形状に変形し易く、例えば、1/2系列の8極の回転電機10は、4次の空間変形モードを備える。このとき、例えば、4次の空間変形モードの空間変形が、可動子30の一回転あたり16回転したとする。すなわち、4次の空間変形モードの空間変形は、可動子30の16倍の回転速度をもつとする。この場合、騒音および振動の回転次数は、64(=4×16)次になる。同様にして、図24に示す騒音および振動の回転次数が取得される。なお、騒音および振動の時間次数には、正転および逆転(回転方向に相当)の二種類がある。正転および逆転は、上記フーリエ展開における時間成分(時間次数、回転方向)から求まるので、同図では、正転時および逆転時の次数が記載されている。
図25A〜図25Fは、通電時の騒音および振動の低減効果の一例を示している。図25Aは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の64次の回転次数について示しており、図25Bは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の56次の回転次数について示している。図25Cは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の40次の回転次数について示しており、図25Dは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の32次の回転次数について示している。図25Eは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の16次の回転次数について示しており、図25Fは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の8次の回転次数について示している。
これらの図のNo.0は、参考形態に係る回転電機10の解析結果を示している。参考形態では、既述したスキューおよび基本コイル70の混成の両方が、実施されていない。図25A〜図25Fでは、第二方向(矢印Y方向)に発生する電磁気的な吸引力の振幅が、図25Fに示すNo.0の吸引力の振幅を1としたときの比率を用いて、示されている。また、No.1は、実施形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.1では、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分になるように、可動子30にスキューが施されている。なお、実施形態では、既述したように、複数(4つ)の基本コイル70の混成が行われているが、騒音および振動の低減効果を分かり易くするため、No.1では、スキューによる効果のみが示されている。つまり、No.1では、複数(4つ)の基本コイル70の混成は、行われていない。
No.2は、第五変形形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.2では、複数(2つ)の基本コイル70の混成が行われている。また、No.3は、第六変形形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.3では、複数(3つ)の基本コイル70の混成が行われている。さらに、No.4は、実施形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.4では、複数(4つ)の基本コイル70の混成が行われている。また、No.5は、第七変形形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.5では、複数(4つ)の基本コイル70の混成が行われている。さらに、No.6は、第八変形形態に係る回転電機10の解析結果を示している。No.6では、複数(2つ)の基本コイル70の混成が行われている。なお、実施形態、並びに、第五変形形態〜第八変形形態では、既述したスキューが実施されているが、騒音および振動の低減効果を分かり易くするため、No.2〜No.6では、基本コイル70の混成による効果のみが示されている。つまり、No.2〜No.6では、スキューは、実施されていない。また、No.0〜No6の構成について既述したことは、図25Gおよび図25H、並びに、図26A〜図26Hについても、同様に言える。
図25A〜図25CのNo.1に示すように、高次側の回転次数の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる。特に、図25Aおよび図25Bに示す最も高次側の2つの次数(64次および56次)において、その効果は、顕著である。一方、図25A〜図25CのNo.2〜No.6に示すように、基本コイル70の混成を行っても、高次側の回転次数の騒音および振動は、低減され難い。
図25D〜図25FのNo.2〜No.5に示すように、低次側の回転次数の騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる。特に、図25Eおよび図25Fに示す最も低次側の2つの次数(16次および8次)において、その効果は、顕著である。一方、図25D〜図25FのNo.1に示すように、スキューを行っても、低次側の回転次数の騒音および振動は、低減され難い。なお、中間の2つの次数(40次および32次)の騒音および振動は、各々、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって、低減することができる。また、図25Cおよび図25DのNo.6に示すように、第八変形形態に係る回転電機10は、中間の2つの次数(40次および32次)において、その効果は、顕著である。
このように、騒音および振動の回転次数によって、騒音および振動を低減する有効策が異なる。また、第二方向(矢印Y方向)に発生する電磁気的な吸引力の振幅の大きさは、回転次数によって異なる。具体的には、No.0の64次および56次の振幅の大きさの平均と、No.0の40次および32次の振幅の大きさの平均と、No.0の16次および8次の振幅の大きさの平均とは、0.715(=(0.63+0.80)/2):0.155(=(0.19+0.12)/2):0.77(=(0.54+1.00)/2)になり、概ね、1:0.2:1になる。
図25Gは、通電時の出力トルクの目減り抑制効果の一例を示している。図25Gでは、No.0に示す参考形態に係る回転電機10の出力トルクを1としたときの比率を用いて、通電時の各出力トルクが示されている。また、図25Hは、通電時のトルクリップルの低減効果の一例を示している。図25Hでは、No.0に示す参考形態に係る回転電機10のトルクリップルを1としたときの比率を用いて、通電時の各トルクリップルが示されている。
図25GのNo.1に示すように、スキューによる通電時の出力トルクの目減りは、比較的大きいが、図25HのNo.1に示すように、通電時のトルクリップルの低減効果は、顕著である。また、図25GのNo.2〜No.6に示すように、基本コイル70の混成による通電時の出力トルクの目減りは、第五変形形態(No.2)、第六変形形態(No.3)および実施形態(No.4)が比較的小さい。図25HのNo.2〜No.6に示すように、基本コイル70の混成による通電時のトルクリップルの低減効果は、第五変形形態(No.2)および第六変形形態(No.3)が顕著である。このように、スキューおよび基本コイル70の混成については、出力トルクの目減り抑制効果およびトルクリップルの低減効果を考慮すると好適である。
図26A〜図26Fは、非通電時の騒音および振動の低減効果の一例を示している。図26Aは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の64次の回転次数について示しており、図26Bは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の56次の回転次数について示している。図26Cは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の40次の回転次数について示しており、図26Dは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の32次の回転次数について示している。図26Eは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の16次の回転次数について示しており、図26Fは、分数スロット構成に起因して発生する騒音および振動の8次の回転次数について示している。
図26A〜図26Fに示すように、非通電時の騒音および振動の回転次数は、概ね、図26Aおよび図26Bに示す最も高次側の2つの次数(64次および56次)であり、他の次数は、無視することができる。最も高次側の2つの次数(64次および56次)の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる。なお、図26A〜図26FのNo.2〜No.6は、非通電時ゆえに吸引力の振幅は、No.0と等価になる。すなわち、これらの図は、基本コイル70の混成による騒音および振動の低減効果が通電時に発揮され、非通電時には発揮されないことを示している。上述したことは、図26Gおよび図26Hについても、同様に言える。
図26Gは、非通電時の出力トルクを示している。同図に示すように、非通電時は、回転電機10の出力トルクは、0(ゼロ)である。図26Hは、非通電時のトルクリップル(すなわち、コギングトルク)の低減効果の一例を示している。同図では、No.0に示す参考形態に係る回転電機10のトルクリップルを1としたときの比率を用いて、非通電時のトルクリップルが示されている。同図に示すように、回転電機10のトルクリップルは、スキューによって、低減することができる。
(騒音および振動の回転次数の再現式)
図24に示す解析結果から得られる騒音および振動の回転次数について、騒音および振動の回転次数の再現式を導出する。例えば、同図に示す2極15スロットを基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10では、騒音および振動の回転次数には、64(=4×16)次および56(=4×14)次が含まれる。既述したように、64次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(16次)とを乗じた次数を示し、56次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(14次)とを乗じた次数を示している。この場合、毎極毎相スロット数Nsppは、2.5であり、毎極スロット数は、7.5(=2.5×3)になる。毎極スロット数7.5の二倍である15に、1(=(1/2)×2)を加えると、時間次数(16次)が得られる。毎極スロット数7.5の二倍である15から、1(=(1/2)×2)を減じると、時間次数(14次)が得られる。よって、高次側の2つの次数NVH(64次および56次)は、下記数13で示すことができる。
(数13)
NVH=4×{(15/2)×2±1}
また、2極15スロットを基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10では、騒音および振動の回転次数には、40(=4×10)次および32(=4×8)次が含まれる。40次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(10次)とを乗じた次数を示し、32次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(8次)とを乗じた次数を示している。この場合、図24の矢印で示すように、毎極スロット数7.5の二倍である15から、6(=3×1×2)を減じた9(=4.5×2)を考える。9(=4.5×2)に、1(=(1/2)×2)を加えると、時間次数(10次)が得られる。9(=4.5×2)から、1(=(1/2)×2)を減じると、時間次数(8次)が得られる。よって、中間の2つの次数NVM(40次および32次)は、下記数14で示すことができる。
(数14)
NVM=4×{[(15/2)−3×1]×2±1}
さらに、2極15スロットを基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10では、騒音および振動の回転次数には、16(=4×4)次および8(=4×2)次が含まれる。16次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(4次)とを乗じた次数を示し、8次は、空間変形モード次数(4次)と、時間次数(2次)とを乗じた次数を示している。この場合、図24の矢印で示すように、毎極スロット数7.5の二倍である15から、12(=3×2×2)を減じた3(=1.5×2)を考える。3(=1.5×2)に、1(=(1/2)×2)を加えると、時間次数(4次)が得られる。3(=1.5×2)から、1(=(1/2)×2)を減じると、時間次数(2次)が得られる。よって、低次側の2つの次数NVL(16次および8次)は、下記数15で示すことができる。
(数15)
NVL=4×{[(15/2)−3×2]×2±1}
可動子磁極32の極対数を極対数mpとするとき、可動子30の磁極数がNp極の基本構成の1/2系列の回転電機10では、空間変形モード次数は、(mp×Np/2)次で表すことができる。例えば、上述した8極60スロット構成の回転電機10では、極対数mpは4であり、空間変形モード次数は、4(=4×2/2)次になる。また、回転電機10が三相機の場合、毎極スロット数(Ns/Np)は、毎極毎相スロット数Nsppの三倍になる。これらから、騒音および振動の回転次数NVは、下記数16で示すことができる。
(数16)
NV=(mp×Np/2)×{[(Ns/Np)−3×h]×2±1}
=(mp×Np/2)×{3×(Nspp−h)×2±1}
既述したように、通電時は、図24に示す騒音および振動の回転次数の全ての次数が含まれ、非通電時は、同図に示す騒音および振動の回転次数のうち、高次側の2つの次数が含まれる。よって、通電時は、数16における整数hは、0〜aの整数とし、非通電時は、数16における整数hは、0とする。但し、「a」は、既述した整数部aであり、毎極毎相スロット数Nsppを帯分数で表したときの整数部分をいう。
例えば、2極15スロットを基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10では、「a」は、2であり、通電時の数16における整数hは、0、1および2である。数16において、整数hを0(ゼロ)にすると、数13に示す回転次数と一致する。数16において、整数hを1にすると、数14に示す回転次数と一致する。数16において、整数hを2にすると、数15に示す回転次数と一致する。図24では、数16における整数hが併記されている。2極21スロットを基本構成とする8極84スロット構成の回転電機10、2極9スロットを基本構成とする8極36スロット構成の回転電機10、および、2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10についても、同様にして、数16によって、騒音および振動の回転次数を再現することができる。具体的には、2極21スロットを基本構成とする8極84スロット構成の回転電機10では、aは3であり、整数hは0、1、2および3である。2極9スロットを基本構成とする8極36スロット構成の回転電機10では、aは1であり、整数hは0および1である。2極3スロットを基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10では、aは0であり、整数hは0である。
また、騒音および振動の回転次数の総数は、2×(a+1)で表すことができる。例えば、上述した2極15スロットを基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10では、aは2であり、64次、56次、40次、32次、16次および8次の6(=2×(2+1))個の回転次数を備える。さらに、図24に示すいずれの回転電機10においても、高次側の2つの次数(整数hは0)と、低次側の2つの次数(整数hはa)との四種類の基本モードの回転次数を備える。また、整数部aが2以上の回転電機10では、高次側の2つの次数(整数hは0)と、低次側の2つの次数(整数hはa)との間に、{2×(a−1)}種類の中間モードの回転次数を備える。
なお、図24に示すように、整数部aが増加すると、騒音および振動の回転次数の種類が増加する。これは、吸引力分布のベース部分に、スロット数が増加することに伴う脈動が重畳することによるものと考えられる。また、固定子20および可動子30によって構成される磁気構成および固定子巻線22の配置における毎極不均等性を反映した吸引力等価点の中間位置に、吸引力の準等価点が生じる。整数部aが増加すると、準等価点の数が増加するものと考えられる。なお、同図では、矢印を用いて、整数部aが増加するにつれて、回転次数の種類が増加していく様子を示している。
(騒音および振動の回転次数の理論式)
図27は、可動子磁極32と固定子磁極(ティース部21b)の磁極対向状態と、可動子30の移動量との間の関係の一例を示す理論モデルである。同図は、説明の便宜上、可動子30が移動する前の一対の可動子磁極32a,32bと、可動子30が移動した後の一対の可動子磁極32a,32bと、が併記されている。
基準磁極中心BM1は、可動子30が移動する前の可動子磁極32aの磁極中心位置を示し、隣接磁極中心BM2は、可動子30が移動する前の可動子磁極32aに隣接する可動子磁極32bの磁極中心位置を示している。また、対応基準磁極中心CM1は、可動子30が後述する基点移動量(Nspp/h1)分、移動した後の可動子磁極32aの磁極中心位置を示している。第一対応磁極中心CMF1は、可動子30が基点移動量(Nspp/h1)分、移動した後の可動子磁極32aに隣接する正転側の可動子磁極32bの磁極中心位置を示している。第二対応磁極中心CMB1は、可動子30が基点移動量(Nspp/h1)移動した後の可動子磁極32aに隣接する逆転側の可動子磁極32bの磁極中心位置を示している。
なお、正転側は、可動子30の移動方向と同じ方向側とし、逆転側は、可動子30の移動方向と反対方向側とする。同図では、可動子30の移動方向は、第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)を例に図示されている。本明細書で記述されていることは、可動子30の移動方向が第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)の場合も、同様に言える。また、一対の可動子磁極32a,32b内の矢印は、図3と同様に図示されている。
既述したように、1/2系列の回転電機10は、第一方向(矢印X方向)において、二種類の磁極対向状態を備え、第一方向(矢印X方向)において、二種類の吸引力分布を備えている。例えば、基準磁極中心BM1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するときに(同図では、「対向」と記されている)、隣接磁極中心BM2は、固定子磁極(ティース部21b)と対向せず、スロット21cと対向している(同図では、「非対向」と記されている)。可動子30が基点から正転側に移動すると、基準磁極中心BM1は、固定子磁極(ティース部21b)と対向する状態(対向状態)から、スロット21cと対向する状態(非対向状態)になり、対応基準磁極中心CM1と一致する。このとき、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1は、スロット21cと対向する状態(非対向状態)から、固定子磁極(ティース部21b)と対向する状態(対向状態)になる。つまり、基点からの可動子30の移動に伴い、吸引力の中心等価点は、基準磁極中心BM1から、第一対応磁極中心CMF1または第二対応磁極中心CMB1に移動すると言える。
固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の周期性は、毎極毎相スロット数Nsppに反映されるので、整数h1を用いて、可動子30の移動量を、1スロットピッチを単位量とする基点移動量(Nspp/h1)で表すことにする。基点から第一対応磁極中心CMF1までの距離は、毎極スロット数(三相機では、毎極毎相スロット数Nsppの三倍)に、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えたものであり、正転側移動量(Nspp×3+Nspp/h1)になる。基点から第二対応磁極中心CMB1までの距離は、毎極スロット数(三相機では、毎極毎相スロット数Nsppの三倍)から、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を減じたものであり、逆転側移動量(Nspp×3−Nspp/h1)になる。
同図に示すように、正転側移動量(Nspp×3+Nspp/h1)および逆転側移動量(Nspp×3−Nspp/h1)の大きさ(絶対値)は、いずれも可動子30の基点移動量(Nspp/h1)と比べて大きい。つまり、可動子30の移動速度より速く(すなわち、機械角で扱う時間次数が1より大きくなる)、騒音および振動を生じさせる空間変形源である吸引力が移動するメカニズムが存在する。可動子30の基点移動量(Nspp/h1)に対する正転側移動量(Nspp×3+Nspp/h1)の割合を、吸引力の中心等価点の移動倍率とすると、移動倍率MMは、下記数17で示すことができる。可動子30の基点移動量(Nspp/h1)に対する逆転側移動量(Nspp×3−Nspp/h1)の割合についても、同様に、吸引力の中心等価点の移動倍率を算出することができる。よって、下記数17では、正転側と逆転側の両方について、吸引力の中心等価点の移動倍率MMが併記されている。
(数17)
MM=(Nspp×3±Nspp/h1)/(Nspp/h1)=3×h1±1
吸引力の中心等価点の移動倍率MMは、騒音および振動の時間次数に相当し、移動倍率MMは、正の整数である。また、固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の基本周期は、毎極毎相スロット数Nsppであるので、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、毎極毎相スロット数Nspp以下となる。つまり、整数h1の下限値は、1となる。さらに、本実施形態では、1/2系列の回転電機10であり、固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の「ずれ」は、可動子30の一磁極において、1/2スロットピッチ(最小値)である。よって、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)の最小値は、1/2スロットピッチである。つまり、整数h1の上限値は、(Nspp×2)である。これらから、整数h1は、1〜(Nspp×2)の整数となる。(Nspp×2)より大きい移動量は、整数h1の倍数で扱うことができるので、整数h1によって、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)の全てを網羅することができる。
以上より、可動子30の磁極数がNp極の基本構成の1/2系列の回転電機10では、騒音および振動の回転次数NVは、可動子磁極32の極対数mpおよび磁極数Np、並びに、1〜(Nspp×2)の整数h1を用いて、下記数18で示すことができる。また、可動子30の磁極数がNMP(=mp×Np)極の1/2系列の回転電機10では、可動子磁極32の磁極数NMPおよび1〜(Nspp×2)の整数h1を用いて、下記数19で示すことができる。さらに、数16で示す騒音および振動の回転次数の再現式と、数18で示す騒音および振動の回転次数の理論式とを比較すると、下記数20で示す関係が成立するときに、再現式と理論式が一致する。
(数18)
NV=(mp×Np/2)×(3×h1±1)
(数19)
NV=(NMP/2)×(3×h1±1)
(数20)
(Nspp−h)×2=h1
なお、可動子30の一回転あたり可動子磁極32の磁極数NMP回の吸引力変化が発生する。よって、騒音および振動の回転次数は、可動子磁極32の磁極数NMPの倍数(例えば、8極の回転電機10であれば、8の倍数)になり、(3×h1±1)/2は、整数である必要がある。分母の「2」が偶数なので、3×h1は、奇数でなければならず、整数h1は、奇数である必要がある。また、既述したように、非通電時には、固定子巻線22の相配置に起因する毎極不均等性は、問題にならず、固定子20および可動子30によって構成される磁気構成に起因する毎極不均等性のみが問題になる。よって、非通電時には、整数h1は、Nspp×2のみとなる。さらに、毎極毎相スロット数Nsppは、既述したように、整数部a、分子部bおよび分母部cを用いて、a+b/cで表すことができ、1/2系列の回転電機10では、a+b/2で表すことができる。よって、Nspp×2は、a×2+bで表すことができる。
次に、吸引力の中心等価点が、基準磁極中心BM1から、第一対応磁極中心CMF1または第二対応磁極中心CMB1に移動することが可能な移動成立要件について検討する。図28は、磁極中心の存在範囲の一例を示している。同図のハッチングが付された部位は、ティース部21bの存在範囲を模式的に示しており、第一方向(矢印X方向)に隣接するハッチングが付された部位間は、スロット21c(ティース部21bとティース部21bとの間)の存在範囲を模式的に示している。同図では、複数(本実施形態では、60個)のティース部21bの各々の第一方向(矢印X方向)の幅であるティース幅と、複数(本実施形態では、60個)のスロット21cの各々の第一方向(矢印X方向)の幅であるスロット幅と、が均等に設定されている。なお、同図は、吸引力等価点が移動するメカニズムを説明するための模式図であり、図1に示すティース先端部21dは、無いものとして取り扱う。また、吸引力等価点が移動するメカニズムにおいて重要なのは、吸引力分布であるので、吸引力分布に最も影響がある固定子20と可動子30との対向部(可動子30に空隙を介して対向する固定子20の表面部)におけるティース幅およびスロット幅を取り扱う。上述したことは、ティース幅およびスロット幅が不均等に設定される場合についても同様とする。
ここで、位置座標0を基点とする第一方向(矢印X方向)の位置座標であって、基準磁極中心BM1が固定子磁極(ティース部21b)と対向(図27に示す「対向」)可能な範囲を示す位置座標を基点位置座標x0とする。基準磁極中心BM1が固定子磁極(ティース部21b)と対向(図27に示す「対向」)するためには、基準磁極中心BM1は、基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲(0+(0〜0.5))に存在する必要がある。但し、0+(0〜0.5)は、整数0に、0〜0.5までの任意の数を加えた範囲を示しており、以下、整数に所定範囲の任意の数を加えた数は、同様に記載する。本実施形態では、毎極毎相スロット数Nsppが2.5であり、基準磁極中心BM1と隣接磁極中心BM2との間の距離である毎極スロット数は、7.5(=2.5×3)になる。よって、隣接磁極中心BM2がスロット21cと対向(図27に示す「非対向」)するためには、隣接磁極中心BM2は、位置座標が7.5〜8までの範囲(7+(0.5〜1))に存在する必要がある。
例えば、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=2.5/5)になる。この場合、対応基準磁極中心CM1がスロット21cと対向(図27に示す「非対向」)するためには、対応基準磁極中心CM1は、位置座標が0.5〜1までの範囲(0+(0.5〜1))に存在する必要がある。対応基準磁極中心CM1と第一対応磁極中心CMF1との間の距離は、毎極スロット数である7.5(=2.5×3)になる。よって、第一対応磁極中心CMF1が固定子磁極(ティース部21b)と対向(図27に示す「対向」)するためには、第一対応磁極中心CMF1は、位置座標が8〜8.5までの範囲(8+(0〜0.5))に存在する必要がある。同様に、対応基準磁極中心CM1と第二対応磁極中心CMB1との間の距離は、毎極スロット数である7.5(=2.5×3)になる。よって、第二対応磁極中心CMB1が固定子磁極(ティース部21b)と対向(図27に示す「対向」)するためには、第二対応磁極中心CMB1は、位置座標が−7〜−6.5までの範囲(−7+(0〜0.5))に存在する必要がある。整数h1が1、2、3および4の場合も、同様にして、磁極中心の存在範囲を導出することができる。
図29Aは、磁極中心の吸引力等価点の移動成立要件の一例を示している。図29Bは、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの磁極中心の吸引力等価点の移動成立要件の一例を示している。上述した磁極中心の存在範囲から、基準磁極中心BM1は、基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲に存在する必要がある。隣接磁極中心BM2は、毎極毎相スロット数Nsppの三倍を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)である必要がある。また、対応基準磁極中心CM1は、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)である必要がある。
第一対応磁極中心CMF1は、毎極毎相スロット数Nsppの三倍(Nspp×3)および可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0〜0.5)である必要がある。1/2系列の回転電機10では、毎極毎相スロット数Nsppの三倍(Nspp×3)は、整数+0.5になる。よって、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0は、整数+(0.5〜1)である必要がある。上述した対応基準磁極中心CM1についての移動成立要件を含めて、正転側の磁極中心の移動成立要件は、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。
第二対応磁極中心CMB1は、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加え、毎極毎相スロット数Nsppの三倍(Nspp×3)を減じた基点位置座標x0が、整数+(0〜0.5)である必要がある。上述したように、1/2系列の回転電機10では、毎極毎相スロット数Nsppの三倍(Nspp×3)は、整数+0.5になる。よって、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0は、整数+(0.5〜1)である必要がある。上述した対応基準磁極中心CM1についての移動成立要件を含めて、逆転側の磁極中心の移動成立要件は、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。このように、正転側の磁極中心の移動成立要件と、逆転側の磁極中心の移動成立要件とは、同じになる。
図30は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。整数h1が1の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、2.5(=2.5/1)になる。基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+2.5)は、2.5〜3までの範囲(2+(0.5〜1))を採り、上述した磁極中心の移動成立要件を満たす。よって、基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。同様に、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=2.5/5)になる。基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.5)は、0.5〜1までの範囲(0+(0.5〜1))を採り、上述した磁極中心の移動成立要件を満たす。よって、基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。
整数h1が3の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.833(=2.5/3)になる。基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.833)は、0.833〜1.333までの範囲(0+(0.833〜1.333))を採り、上述した磁極中心の移動成立要件を満たさない範囲が存在する。よって、基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.167までの一部の範囲に存在する。
整数h1が2の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、1.25(=2.5/2)になる。基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+1.25)は、1.25〜1.75までの範囲(1+(0.25〜0.75))を採り、上述した磁極中心の移動成立要件を満たさない範囲が存在する。よって、基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0.25〜0.5までの一部の範囲に存在する。
整数h1が4の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.625(=2.5/4)になる。基点位置座標x0が0〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.625)は、0.625〜1.125までの範囲(0+(0.625〜1.125))を採り、上述した磁極中心の移動成立要件を満たさない範囲が存在する。よって、基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.375までの一部の範囲に存在する。
既述したように、整数h1は、奇数である必要がある。よって、整数h1が1、3および5のときの基点位置座標x0は、「適」であり、整数h1が2および4のときの基点位置座標x0は、「不適」である。また、非通電時には、整数h1は、Nspp×2のみであり、整数h1は、5(=2.5×2)のみが該当する。通電時には、整数h1は、上述した奇数であれば良い。図30に示す丸印は、整数h1が存在し得ることを示し、バツ印は、整数h1が存在しないことを示している。
図31は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の存在範囲を棒グラフにしたものである。同図では、整数h1が1、3および5のときの基点位置座標x0の存在範囲は、実線の棒グラフで示されている。上述したように、整数h1が2および4のときの基点位置座標x0は、「不適」であるので、整数h1が2および4のときの基点位置座標x0の存在範囲は、破線の棒グラフで示されている。
(理論式の妥当性)
数20に示すように、整数h1が(Nspp−h)×2と一致するとき、騒音および振動の回転次数の再現式と、騒音および振動の回転次数の理論式とが一致する。また、通電時には、再現式の整数hは、0〜aの整数とし、非通電時には、再現式の整数hは、0とする。本実施形態の回転電機10は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5であり、通電時には、再現式の整数hは、0、1、および2であり、非通電時には、再現式の整数hは、0である。
既述したように、再現式の整数hが0のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側の2つの次数(64次および56次)を示す。高次側の回転次数の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる(図25Aおよび図25B参照)。再現式の整数hが0のとき、理論式の整数h1は、5になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.5スロットピッチになる。0.5スロットピッチは、1/2系列の回転電機10における固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の「ずれ」(可動子30の一磁極において、1/2スロットピッチずれる状態)を反映したものである。よって、図31に示す理論式の整数h1が5のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューによって低減可能であることが、図27に示す理論モデルによっても裏付けられる。
再現式の整数hが2のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、低次側の2つの次数(16次および8次)を示す。低次側の回転次数の騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる(図25Eおよび図25F参照)。再現式の整数hが2のとき、理論式の整数h1は、1になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、2.5(=Nspp)スロットピッチになる。2.5(=Nspp)スロットピッチは、一相帯61のコイルサイド分布の繰り返し周期である5(=2.5×2=Nspp×2)スロットピッチを反映したものである。よって、図31に示す理論式の整数h1が1のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、基本コイル70の混成によって低減可能であることが、図27に示す理論モデルによっても裏付けられる。
再現式の整数hが1のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側と低次側との間の中間の次数(40次および32次)を示す。中間の次数(40次および32次)の騒音および振動は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって、低減することができる(図25Cおよび図25D参照)。再現式の整数hが1のとき、理論式の整数h1は、3になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.833スロットピッチになる。0.833スロットピッチは、上述した固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の「ずれ」、または、一相帯61のコイルサイド分布の繰り返し周期を直接反映したものでなく、移動成立要件を満たす可動子30の位置は、一部範囲に限定される。これは、遠因としての上述した固定子20および可動子30によって構成される磁気構成の「ずれ」(可動子30の一磁極において、1/2スロットピッチずれる状態)と、一相帯61のコイルサイド分布の繰り返し周期(5スロットピッチ)と、整数部aの増加によりティース部21bの数が増加し、移動成立要件を満たす機会が増える点とを反映したものである。よって、図31に示す理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって低減可能であることが、図27に示す理論モデルによっても裏付けられる。このように、理論式の整数h1と再現式の整数hが、数20に示す関係にあるとき、騒音および振動の回転次数の再現式と、騒音および振動の回転次数の理論式とが一致し、解析結果を定性的に説明することができる。
また、図31に示す理論式の整数h1が5のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲と、同図に示す理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲と、同図に示す理論式の整数h1が1のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲とは、0.5:0.167:0.5になり、概ね、1:0.33:1になる。一方、図25A〜図25Fに基づいて既述したように、解析結果では、No.0の64次および56次の振幅の大きさの平均と、No.0の40次および32次の振幅の大きさの平均と、No.0の16次および8次の振幅の大きさの平均とは、概ね、1:0.2:1になる。このように、理論式から導出される基点位置座標x0の範囲と、解析結果から導出される吸引力の振幅の大きさとは、同様の傾向がみられる。これは、基点位置座標x0の範囲が広いほど該当変形(該当空間変形モード次数の空間変形)が累積され、該当変形の吸引力振幅が増加することを反映している。この結果からも、理論式は、妥当であると言える。
上述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合についても、同様に言える。既述したように、通電時には、理論式の整数h1は、1〜(Nspp×2)であり、非通電時には、理論式の整数h1は、Nspp×2のみである。但し、理論式の整数h1は、奇数とする。毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合、通電時には、理論式の整数h1は、1、3、5および7(=3.5×2)であり、非通電時には、理論式の整数h1は、7(=3.5×2)のみである。また、磁極中心の移動成立要件は、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合、上記の整数h1に対して、可動子30の基点移動量(3.5/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。
図32Aおよび図32Bは、毎極毎相スロット数Nsppが3.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。これらの図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の範囲を算出した算出結果を示している。なお、同図では、上述した整数h1が奇数であるか否か、および、整数h1の存否が併記されている。
具体的には、整数h1が1の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、3.5(=3.5/1)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。同様に、整数h1が7の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=3.5/7)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。
整数h1が3の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、1.166(=3.5/3)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0.334〜0.5までの一部の範囲に存在する。同様に、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.7(=3.5/5)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.3までの一部の範囲に存在する。
また、整数h1が2の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、1.75(=3.5/2)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.25までの一部の範囲に存在する。さらに、整数h1が4の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.875(=3.5/4)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.125までの一部の範囲に存在する。また、整数h1が6の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.583(=3.5/6)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.417までの一部の範囲に存在する。
図33は、毎極毎相スロット数Nsppが3.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の存在範囲を棒グラフにしたものである。毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合、通電時には、再現式の整数hは、0、1、2および3であり、非通電時には、再現式の整数hは、0である。
図24に示すように、再現式の整数hが0のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側の2つの次数(88次および80次)を示す。高次側の回転次数の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる。再現式の整数hが0のとき、理論式の整数h1は、7になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.5スロットピッチになる。図33に示す理論式の整数h1が7のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューによって、低減することができる。
再現式の整数hが3のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、低次側の2つの次数(16次および8次)を示す。低次側の回転次数の騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる。再現式の整数hが3のとき、理論式の整数h1は、1になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、3.5スロットピッチになる。図33に示す理論式の整数h1が1のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる。
再現式の整数hが1のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側と低次側との間の中間の次数(64次および56次)を示す。また、再現式の整数hが2のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側と低次側との間の中間の次数(40次および32次)を示す。これらの中間の次数(64次および56次、並びに、40次および32次)の騒音および振動は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって、低減することができる。
再現式の整数hが1のとき、理論式の整数h1は、5になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.7スロットピッチになる。図33に示す理論式の整数h1が5のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって、低減することができる。また、再現式の整数hが2のとき、理論式の整数h1は、3になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、1.166スロットピッチになる。図33に示す理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両者によって、低減することができる。このように、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合について既述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが3.5の場合についても、同様に言える。
上述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合についても、同様に言える。毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合、通電時には、理論式の整数h1は、1および3(=1.5×2)であり、非通電時には、理論式の整数h1は、3(=1.5×2)のみである。また、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合、磁極中心の移動成立要件は、上記の整数h1に対して、可動子30の基点移動量(1.5/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。
図34は、毎極毎相スロット数Nsppが1.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。同図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の範囲を算出した算出結果を示している。なお、同図では、整数h1が奇数であるか否か、および、整数h1の存否が併記されている。
具体的には、整数h1が1の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、1.5(=1.5/1)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。同様に、整数h1が3の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=1.5/3)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。一方、整数h1が2の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.75(=1.5/2)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0〜0.25までの一部の範囲に存在する。
図35は、毎極毎相スロット数Nsppが1.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の存在範囲を棒グラフにしたものである。毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合、通電時には、再現式の整数hは、0および1であり、非通電時には、再現式の整数hは、0である。
図24に示すように、再現式の整数hが0のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、高次側の2つの次数(40次および32次)を示す。高次側の回転次数の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる。再現式の整数hが0のとき、理論式の整数h1は、3になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.5スロットピッチになる。図35に示す理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューによって、低減することができる。
再現式の整数hが1のとき、数16は、騒音および振動の回転次数のうち、低次側の2つの次数(16次および8次)を示す。低次側の回転次数の騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる。再現式の整数hが1のとき、理論式の整数h1は、1になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、1.5スロットピッチになる。図35に示す理論式の整数h1が1のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、基本コイル70の混成によって、低減することができる。このように、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合について既述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合についても、同様に言える。なお、図24に示すように、毎極毎相スロット数Nsppが1.5の場合、高次側と低次側との間の中間の回転次数は、存在しない。
上述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合についても、同様に言える。毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合、通電時には、理論式の整数h1は、1(=0.5×2)のみであり、非通電時には、理論式の整数h1は、1(=0.5×2)のみである。また、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合、磁極中心の移動成立要件は、上記の整数h1に対して、可動子30の基点移動量(0.5/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1)であれば良い。
図36は、毎極毎相スロット数Nsppが0.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。同図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の範囲を算出した算出結果を示している。具体的には、整数h1が1の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=0.5/1)になる。磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの全域で存在する。なお、同図では、整数h1が奇数であるか否か、および、整数h1の存否が併記されている。
図37は、毎極毎相スロット数Nsppが0.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合と同様にして、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合について、磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0の存在範囲を棒グラフにしたものである。毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合、通電時および非通電時のいずれにおいても、再現式の整数hは、0である。
図24に示すように、再現式の整数hが0のとき、数16は、騒音および振動の回転次数について、二つの次数(16次および8次)を示す。これらの次数の騒音および振動は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロット21cの1スロットピッチ分に設定されるスキューによって、低減することができる。再現式の整数hが0のとき、理論式の整数h1は、1になるので、移動成立要件を満たす基点移動量は、0.5スロットピッチになる。図37に示す理論式の整数h1が1のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動は、上述したスキューによって、低減することができる。このように、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合について既述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合についても、同様に言える。なお、図24に示すように、毎極毎相スロット数Nsppが0.5の場合、高次側および低次側の回転次数は、一致する。また、高次側と低次側との間の中間の回転次数は、存在しない。
以上より、2極21スロット(Nspp=3.5)を基本構成とする8極84スロット構成の回転電機10、2極15スロット(Nspp=2.5)を基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10、2極9スロット(Nspp=1.5)を基本構成とする8極36スロット構成の回転電機10、および、2極3スロット(Nspp=0.5)を基本構成とする8極12スロット構成の回転電機10の全てについて、解析結果を定性的に説明することができたと言える。なお、騒音および振動の回転次数の再現式および理論式の各々について、空間変形の回転方向が正転時および逆転時の時間次数の和を求めると、高次側の次数、低次側の次数および高次側と低次側との間の中間の次数の各々において、時間次数の和は、一致する。この点からも、騒音および振動の回転次数の理論式は、妥当であることが分かる。
(ティース幅およびスロット幅)
既述した形態では、ティース幅とスロット幅が均等に設定されているが、ティース幅とスロット幅は、不均等に設定することもできる。例えば、2極15スロット(Nspp=2.5)を基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10において、ティース幅が変化量Δs分、増加する場合(換言すれば、スロット幅が変化量Δs分、減少する場合)を想定する。この場合、変化量Δsは、0より大きく、かつ、0.5より小さい任意の数とする。
図38は、ティース幅がスロット幅と比べて大きいときの磁極中心の存在範囲の一例を示している。同図は、図28に対応しており、ティース幅がスロット幅と比べて大きく設定されている点を除いて、図28と同様に図示されている。図39Aは、ティース幅がスロット幅と比べて大きいときの磁極中心の吸引力等価点の移動成立要件の一例を示している。同図は、図29Aに対応し、図39Aは、図29Aと同様に図示されている。図39Bは、ティース幅がスロット幅と比べて大きく、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの磁極中心の吸引力等価点の移動成立要件の一例を示している。同図は、図29Bに対応し、図39Bは、図29Bと同様に図示されている。
基準磁極中心BM1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、基準磁極中心BM1は、基点位置座標x0が0〜(0.5+Δs)までの範囲(0+(0〜0.5+Δs))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、正値であり、基準磁極中心BM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。一方、隣接磁極中心BM2がスロット21cと対向するためには、隣接磁極中心BM2は、位置座標が(7.5+Δs)〜8までの範囲(7+(0.5+Δs〜1))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、正値であり、隣接磁極中心BM2の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。
例えば、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=2.5/5)になる。この場合、対応基準磁極中心CM1がスロット21cと対向するためには、対応基準磁極中心CM1は、位置座標が(0.5+Δs)〜1までの範囲(0+(0.5+Δs〜1))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、正値であり、対応基準磁極中心CM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。
第一対応磁極中心CMF1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、第一対応磁極中心CMF1は、位置座標が8〜(8.5+Δs)までの範囲(8+(0〜0.5+Δs))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、正値であり、第一対応磁極中心CMF1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。また、第二対応磁極中心CMB1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、第二対応磁極中心CMB1は、位置座標が−7〜(−6.5+Δ)までの範囲(−7+(0〜0.5+Δ))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、正値であり、第二対応磁極中心CMB1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。整数h1が1、2、3および4の場合も、同様にして、磁極中心の存在範囲を導出することができる。
上述したように、基準磁極中心BM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。一方、隣接磁極中心BM2の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。よって、基点側(基準磁極中心BM1および隣接磁極中心BM2)についての移動成立要件は、隣接磁極中心BM2の存在範囲を充足する要件になり、基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲に存在する必要がある。
対応基準磁極中心CM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。一方、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。よって、対応点側(対応基準磁極中心CM1、並びに、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1)についての移動成立要件は、対応基準磁極中心CM1の存在範囲を充足する要件になる。具体的には、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5+Δs〜1)である必要がある。なお、正転側の磁極中心の移動成立要件と、逆転側の磁極中心の移動成立要件とは、同じになる。
図40は、ティース幅がスロット幅と比べて大きく、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。同図は、図30に対応し、図40は、図30と同様に図示されている。整数h1が1の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、2.5(=2.5/1)になる。基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+2.5)は、(2.5+Δs)〜3までの範囲(2+(0.5+Δs〜1))を採る。上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、Δs〜0.5までの一部の範囲に存在する。同様に、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=2.5/5)になる。基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.5)は、(0.5+Δs)〜1までの範囲(0+(0.5+Δs〜1))を採る。上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、Δs〜0.5までの一部の範囲に存在する。
整数h1が3の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.833(=2.5/3)になる。基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.833)は、(0.833+Δs)〜1.333までの範囲(0+(0.833+Δs〜1.333))を採る。上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、Δs〜0.167までの一部の範囲に存在する。
整数h1が2の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、1.25(=2.5/2)になる。基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+1.25)は、(1.25+Δs)〜1.75までの範囲(1+(0.25+Δs〜0.75))を採る。上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、0.25+Δs〜0.5までの一部の範囲に存在する。
整数h1が4の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.625(=2.5/4)になる。基点位置座標x0がΔs〜0.5までの範囲を採るとき、x0+2.5/h1(=x0+0.625)は、(0.625+Δs)〜1.125までの範囲(0+(0.625+Δs〜1.125))を採る。上述した磁極中心の移動成立要件を満たす基点位置座標x0は、0〜0.5までの範囲のうち、Δs〜0.375までの一部の範囲に存在する。なお、整数h1が奇数であるか否か、並びに、通電時および非通電時の整数h1の存否については、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合(図30)と同じである。
図41は、ティース幅がスロット幅と比べて大きく、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、図31と同様に図示されている。図41に示すように、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合(図31)と比べて、基点位置座標x0の存在範囲の下限値が、上昇している。基点位置座標x0の存在範囲の上限値は、変わらない。つまり、ティース幅がスロット幅と比べて大きく設定されることにより、騒音および振動が発生する可動子30の位置領域を狭めることができる。
次に、例えば、2極15スロット(Nspp=2.5)を基本構成とする8極60スロット構成の回転電機10において、ティース幅が変化量Δs分、減少する場合(換言すれば、スロット幅が変化量Δs分、増加する場合)を想定する。この場合、変化量Δsは、−0.5より大きく、かつ、0より小さい任意の数とする。図42は、ティース幅がスロット幅と比べて小さいときの磁極中心の存在範囲の一例を示している。同図は、図28に対応しており、ティース幅がスロット幅と比べて小さく設定されている点を除いて、図28と同様に図示されている。
基準磁極中心BM1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、基準磁極中心BM1は、基点位置座標x0が0〜(0.5+Δs)までの範囲(0+(0〜0.5+Δs))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、負値であり、基準磁極中心BM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。一方、隣接磁極中心BM2がスロット21cと対向するためには、隣接磁極中心BM2は、位置座標が(7.5+Δs)〜8までの範囲(7+(0.5+Δs〜1))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、負値であり、隣接磁極中心BM2の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。
例えば、整数h1が5の場合、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)は、0.5(=2.5/5)になる。この場合、対応基準磁極中心CM1がスロット21cと対向するためには、対応基準磁極中心CM1は、位置座標が(0.5+Δs)〜1までの範囲(0+(0.5+Δs〜1))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、負値であり、対応基準磁極中心CM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。
第一対応磁極中心CMF1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、第一対応磁極中心CMF1は、位置座標が8〜(8.5+Δs)までの範囲(8+(0〜0.5+Δs))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、負値であり、第一対応磁極中心CMF1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。また、第二対応磁極中心CMB1が固定子磁極(ティース部21b)と対向するためには、第二対応磁極中心CMB1は、位置座標が−7〜(−6.5+Δ)までの範囲(−7+(0〜0.5+Δ))に存在する必要がある。ティース幅の変化量Δsは、負値であり、第二対応磁極中心CMB1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。整数h1が1、2、3および4の場合も、同様にして、磁極中心の存在範囲を導出することができる。
このように、基準磁極中心BM1、隣接磁極中心BM2、対応基準磁極中心CM1、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1は、ティース幅がスロット幅と比べて大きく設定される場合と同様に、記述することができる。しかしながら、基準磁極中心BM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。一方、隣接磁極中心BM2の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。よって、基点側(基準磁極中心BM1および隣接磁極中心BM2)についての移動成立要件は、基準磁極中心BM1の存在範囲を充足する要件になり、基点位置座標x0が0〜(0.5+Δs)までの範囲に存在する必要がある。
対応基準磁極中心CM1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、広がる。一方、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1の存在範囲は、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合と比べて、狭まる。よって、対応点側(対応基準磁極中心CM1、並びに、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1)についての移動成立要件は、第一対応磁極中心CMF1および第二対応磁極中心CMB1の存在範囲を充足する要件になる。具体的には、可動子30の基点移動量(Nspp/h1)を加えた基点位置座標x0が、整数+(0.5〜1+Δs)である必要がある。なお、正転側の磁極中心の移動成立要件と、逆転側の磁極中心の移動成立要件とは、同じになる。
図43は、ティース幅がスロット幅と比べて小さく、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲および整数h1の存否を示している。同図は、図30および図40に対応し、図43は、図30および図40と同様に図示されている。図44は、ティース幅がスロット幅と比べて小さく、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5のときの基点位置座標x0の存在範囲を示している。同図は、図31および図41に対応し、図44は、図31および図41と同様に図示されている。図44に示すように、ティース幅とスロット幅が均等に設定される場合(図31)と比べて、基点位置座標x0の存在範囲の上限値が、低下している。基点位置座標x0の存在範囲の下限値は、変わらない。つまり、ティース幅がスロット幅と比べて小さく設定されることにより、騒音および振動が発生する可動子30の位置領域を狭めることができる。
このように、ティース幅とスロット幅を不均等に設定することにより、ティース幅とスロット幅が均等に設定されている場合と比べて、騒音および振動が発生する可動子30の位置領域を狭めることができ、騒音および振動を低減することができる。例えば、図41から分かるように、ティース幅の変化量Δsが0.167になると、理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動が消失する。つまり、ティース幅(固定子磁極幅)を固定子磁極ピッチの67%以上(スロット幅をスロットピッチの33%以下)に設定することにより、理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動を消失することができる。
また、図44から分かるように、変化量Δsが−0.167になると、理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動が消失する。つまり、ティース幅(固定子磁極幅)を固定子磁極ピッチの33%以下(スロット幅をスロットピッチの67%以上)に設定することにより、理論式の整数h1が3のときの棒グラフで示す基点位置座標x0の範囲に発生する騒音および振動を消失することができる。
なお、ティース幅とスロット幅を均等に設定した場合において、図1に示すティース先端部21dの第一方向(矢印X方向)の幅を調整(増減)、または、図1に示すスロット開口部を狭めることにより、上述した消失効果を模擬する効果が期待できる。ティース幅とスロット幅が不均等に設定され、かつ、毎極毎相スロット数Nsppが2.5の場合について既述したことは、毎極毎相スロット数Nsppが異なる場合についても、同様に言える。
<その他>
実施形態は、既述した形態および図面に示した形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、分数スロット構成の回転電機10であれば、固定子20のスロット数および可動子30の磁極数は、限定されない。また、既述の実施形態では、可動子30は、固定子20の内方に設けられている(インナーロータ型の回転電機)。しかしながら、可動子30は、固定子20の外方に設けることもできる(アウターロータ型の回転電機)。また、回転電機10は、固定子20および可動子30が同軸に配されるラジアル空隙型またはアキシャル空隙型の回転電機に限定されるものではない。回転電機10は、固定子20および可動子30が直線上に配され、可動子30が固定子20に対して直線上に移動するリニア電動機またはリニア発電機に適用することもできる。さらに、回転電機10は、分数スロット構成の種々の回転電機に用いることができ、例えば、車両の駆動用電動機、発電機、産業用または家庭用の電動機、発電機などに用いることができる。
<効果の一例>
様相1に係る回転電機10によれば、スキュー部位は、固定子20と可動子30の相対スキュー量の最大値が複数のスロットの1スロットピッチ分になるように、基準部位に対するスキュー量の最大値が設定されている。これにより、様相1に係る回転電機10は、第三方向(矢印Z方向)の全体に亘って、固定子20と可動子30との間に発生する第一方向(矢印X方向)の電磁気的な吸引力分布を混成することができ、当該吸引力分布を平均化することができる。その結果、様相1に係る回転電機10は、毎極における当該吸引力分布の均等化を図ることができ、騒音および振動を低減することができる。
また、様相1に係る回転電機10によれば、固定子巻線22は、混成一相帯62を構成する複数のコイルサイド22aによって発生する起磁力の大きさが複数の可動子磁極32の毎極において均等になるように、複数の基本コイル70が混成されている。これにより、固定子巻線22が通電されたときに発生する起磁力の大きさ及び起磁力分布の毎極の均等性が増す。その結果、可動子30の磁極数と比べて低次の空間変形モードの起振力が低減され、様相1に係る回転電機10は、可動子30の磁極数と比べて低次の空間変形モードの騒音および振動を抑制することができる。
さらに、様相1に係る回転電機10によれば、上述したスキューによって高次側の回転次数の騒音および振動を低減し、上述した基本コイル70の混成によって低次側の回転次数の騒音および振動を低減することができる。高次側と低次側との間の中間の回転次数の騒音および振動が生じる場合は、上述したスキューおよび基本コイル70の混成の両方によって高次側と低次側との間の中間の回転次数の騒音および振動を低減することができる。このように、様相1に係る回転電機10は、分数スロット構成に起因して発生する全ての回転次数の騒音および振動を低減することができる。
様相2に係る回転電機10によれば、様相1に係る回転電機10において、毎極毎相スロット数Nsppの小数点以下が0.5になる三相の回転電機10(1/2系列の三相の回転電機10)である。様相2に係る回転電機10は、(NMP/2)次の空間変形モード次数と、(3×h1±1)次の時間次数とを乗じた回転次数の騒音および振動を低減する。上記次数は、複数の可動子磁極32の磁極数NMPと、1から毎極毎相スロット数Nsppの二倍までの整数または毎極毎相スロット数Nsppの二倍の整数である整数h1と、を用いて表される。
様相2に係る回転電機10は、騒音および振動の回転次数を把握することが容易であり、解析結果から得られる騒音および振動の回転次数(例えば、実施形態で示す再現式など)との対比が容易になる。そのため、様相2に係る回転電機10は、騒音および振動を低減する対策(スキューおよび基本コイル70の混成)の有効性(騒音および振動が低減される回転次数)を把握し易い。
様相3に係る回転電機10によれば、様相1または様相2に係る回転電機10において、複数のティース部21bの各々の第一方向(矢印X方向)の幅であるティース幅と、複数のスロット21cの各々の第一方向(矢印X方向)の幅であるスロット幅と、が不均等に設定されている。
様相3に係る回転電機10は、ティース幅とスロット幅が均等に設定されている場合と比べて、騒音および振動が発生する可動子30の位置領域を狭めることができ、騒音および振動を低減することができる。
様相4に係る回転電機10によれば、様相1〜様相3のいずれか一つの様相に係る回転電機10において、基準部位は、第一基準部位41と第二基準部位43とを備える。スキュー部位は、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)に徐々にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている連続スキュー部位42と、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)に階段状にずらされて第三方向(矢印Z方向)に配設されている段スキュー部位44とを備える。固定子20は、第一基準部位41と、連続スキュー部位42とを備え、可動子30は、第二基準部位43と、段スキュー部位44とを備える。段スキュー部位44における第二基準部位43に対するスキュー量は、連続スキュー部位42における第一基準部位41に対するスキュー量の最大値の半分に設定されている。
様相4に係る回転電機10は、固定子20および可動子30のうちの一方のみでスキューを行う場合と比べて、スキュー量を低減することができる。また、固定子巻線22を固定子鉄心21の複数のスロット21cに組み付ける際の作業性を考慮すると、固定子20は、段スキュー部位44と比べて、連続スキュー部位42を備える方が良い。一方、永久磁石(複数の可動子磁極32)が焼結磁石の場合に、永久磁石を可動子鉄心31の磁石収容部に装着する際の作業性を考慮すると、可動子30は、連続スキュー部位42と比べて、段スキュー部位44を備える方が良い。様相4に係る回転電機10は、上述した構成により、スキューに伴う固定子20および可動子30の製造の煩雑さを軽減して、製造工程における作業性を向上させることができる。
様相5に係る回転電機10によれば、様相4に係る回転電機10において、固定子20の連続スキュー部位42が、第一基準部位41に対して第一方向(矢印X方向)のうちの一の方向(矢印X1方向)にずらされているときに、可動子30の段スキュー部位44は、第二基準部位43に対して第一方向(矢印X方向)のうちの他の一の方向(矢印X2方向)にずらされている。
様相5に係る回転電機10は、固定子20の連続スキュー部位42と可動子30の段スキュー部位44とが同一方向にずらされる場合と比べて、スキュー量の増加を抑制することができる。よって、様相5に係る回転電機10は、スキュー量の増加に伴うトルク目減りの増大を抑制することができ、漏れ磁束を低減することができる。
様相6に係る回転電機10によれば、様相4または様相5に係る回転電機10において、連続スキュー部位42は、第三方向(矢印Z方向)の一端側から他端側にかけて、第一基準部位41に対するスキュー量の増加割合または減少割合が一定に設定されている。
様相6に係る回転電機10は、第一基準部位41に対するスキュー量が不連続に変化する場合と比べて、主に、第三方向(矢印Z方向)の漏れ磁束を低減することができ、製造工程の簡素化を図ることができる。
様相7に係る回転電機10によれば、様相1〜様相6のいずれか一つの様相に係る回転電機10において、少なくとも一つの第二基本コイル72は、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されている。
様相7に係る回転電機10は、少なくとも一つの第二基本コイル72が、第一基本コイル71に対して、第一方向(矢印X方向)に所定スロットピッチ分、移動した位置に配置されているので、複数の基本コイル70の混成が容易である。
様相8に係る回転電機10によれば、様相7に係る回転電機10において、所定スロットピッチは、移動単位量のn倍(但し、nは1以上の自然数)で表される。但し、NIスロットピッチ(但し、NIは、毎極スロット数の直近の整数または1)を移動単位量とする。
様相8に係る回転電機10は、実効コイルサイド分布幅の過大な増加(コイルサイド分布の過大な広範化)を抑制することができる。そのため、様相8に係る回転電機10は、出力トルクの目減りを抑制することができる。特に、NIが毎極スロット数の直近の整数であるとき、上述した効果は、顕著である。
様相9に係る回転電機10によれば、様相8に係る回転電機10において、少なくとも一つの第二基本コイル72の各々の所定スロットピッチを列挙した数列である第一数列は、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含む。
様相9に係る回転電機10によれば、第一数列は、移動単位量の1倍からn倍までのすべての自然数倍を含むので、起磁力の毎極の均等化が容易である。
<付記項>
(付記項1)
前記基準部位は、第一基準部位であり、
前記スキュー部位は、前記第一基準部位に対して前記第一方向に徐々にずらされて前記第三方向に配設されている連続スキュー部位であり、
前記固定子および前記可動子は、いずれも、前記第一基準部位と、前記連続スキュー部位とを備え、
前記固定子および前記可動子のうちの一方の前記連続スキュー部位が、前記第一基準部位に対して前記第一方向のうちの一の方向にずらされているときに、前記固定子および前記可動子のうちの他方の前記連続スキュー部位は、前記第一基準部位に対して前記第一方向のうちの他の一の方向にずらされている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
(付記項2)
前記固定子の前記連続スキュー部位におけるスキュー量の最大値と、前記可動子の前記連続スキュー部位におけるスキュー量の最大値とが同値に設定されている付記項1に記載の回転電機。
(付記項3)
前記連続スキュー部位は、前記第三方向の一端側から他端側にかけて、前記第一基準部位に対するスキュー量の増加割合または減少割合が一定に設定されている付記項1または付記項2に記載の回転電機。
(付記項4)
前記NIは、前記毎極スロット数の直近の整数であり、
前記混成一相帯を構成する前記複数のコイルサイドの配置および当該複数のコイルサイドの前記第一方向における位置の両方を加味して算出される前記混成一相帯の中心をコイルサイド中心とするとき、
前記第一方向において隣接する前記コイルサイド中心間の距離は、前記複数の可動子磁極の毎極において均等である請求項9に記載の回転電機。
(付記項5)
前記複数の基本コイルが混成されている前記固定子巻線は、少なくとも一つの極対コイルを具備する複数の相コイルを含み、各前記極対コイルは、同心状に巻装されている複数の単位コイルを備え、
各前記極対コイルを構成する前記複数の単位コイルは、一対のスロットに収容されている一対のコイルサイド間のコイルピッチがそれぞれ異なり、前記一対のコイルサイド間の前記コイルピッチが、いずれも毎極スロット数より短く設定されている請求項1〜請求項9、付記項4のいずれか一項に記載の回転電機。
(付記項6)
各前記極対コイルは、
一つの前記単位コイルまたは前記一対のコイルサイド間の前記コイルピッチが異なる複数の前記単位コイルを備え少なくとも一つの前記単位コイルが同心状に巻装され電気的に直列接続されている第一極コイルと、
一つの前記単位コイルまたは前記一対のコイルサイド間の前記コイルピッチが異なる複数の前記単位コイルを備え少なくとも一つの前記単位コイルが同心状に巻装され電気的に直列接続されており、前記第一極コイルが前記複数の可動子磁極のうちの一の可動子磁極と対向するときに当該可動子磁極に隣接する一の可動子磁極と対向する第二極コイルと、
を備え、前記第一極コイルおよび前記第二極コイルが電気的に直列接続されている付記項5に記載の回転電機。
(付記項7)
前記複数の相コイルの各々は、前記複数の基本コイルの各々において、前記複数の可動子磁極の磁極対数分の前記極対コイルを備える付記項5または付記項6に記載の回転電機。
(付記項8)
前記複数の基本コイルは、同一のスロットに収容されている同相のコイルサイドの当該スロット内の配置が相毎に集約されており、
前記複数の相コイルの各々は、前記複数の基本コイルの全体において、前記複数の可動子磁極の磁極対数分の前記極対コイルを備える付記項5または付記項6に記載の回転電機。