JP4402645B2 - 制御系解析装置およびプログラム - Google Patents
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系の推論モデルとしては、物理式を用いた論理モデルが考えられるが(例えば、非特許文献1など参照)、大規模な系では、自律的に制御動作を行う複数の装置間で互いに影響し合うトレードオフが複雑に絡み合っており、また周囲環境からも影響を受けるため、目に見えない多くの振る舞いをすべて把握して適切な物理式で表すことは困難である。
この事例ベースモデルでは、過去に系で得られた入出力パラメータの関係すなわち履歴データから事例データを生成することによりモデリングを行う。このため、物理式を用いた論理モデルと比較して、装置間のトレードオフや周囲環境の影響などを正確に把握する必要がなくなり、規模が大きくて動作が複雑な系であっても比較的容易にモデリングを行うことができる。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる制御系解析装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる制御系解析装置の構成を示すブロック図である。
この制御系解析装置1は、入力された各種情報をコンピュータで演算処理する情報処理装置からなり、任意の対象を制御する制御系2の動作を示すモデルを用いて操作パラメータの最適設定値を算出する。
この制御系解析装置1には、パラメータ計測部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
冷却塔21は、冷凍機23からの冷却水22Aと外気との熱交換を行う装置であり、冷却後の冷却水22Bが冷却水ポンプ22により冷凍機23へ送られる。冷凍機23は、空調機25からの冷水24Aと冷却塔21からの冷却水22Bとの熱交換を行う熱源機器であり、冷却後の冷水24Bが冷水ポンプ24により空調機25へ送られる。空調機25は、被制御室26からの空気27Aと冷凍機23からの冷水24Bとの間で熱交換を行う空調機であり、冷却後の空気27Bが被制御室26へ送られる。
例えば、空調機25では、空気27Aの温度が所定の設定値となるようファンによる空気27Aの送風量が制御される。冷凍機23では、空調機25へ送る冷水24Bの冷水送水温度が所定の設定値となるよう運転のオン/オフ制御が行われる。冷却塔21では、冷凍機23へ送る冷却水22Bの温度が所定の設定値となるようファンによる外気の送風量が制御される。
画面表示部13は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの指示に応じて操作メニューや各種演算結果を画面表示する機能を有している。
記憶部14で記憶する主な処理情報としては、操作パラメータ14A、条件パラメータ14B、評価パラメータ14C、事例データ14D、事例ベースモデル14E、および操作パラメータ最適設定値14Fがある。
事例データ14Dは、制御系2の各種動作状態を代表するデータであり、演算処理部15により、上記履歴データから制御系2の制御遅れを考慮して生成された、操作パラメータ、条件パラメータ、および評価パラメータの値の組から構成されている。
演算処理部15により実現される主な機能手段としては、事例データ生成手段15A、モデル作成手段15B、および最適化処理手段15Cがある。
モデル作成手段15Bは、記憶部14の事例データ14Dに基づいて、操作パラメータと条件パラメータを入力パラメータとするとともに評価パラメータを出力パラメータとし、制御系2の各種状態での動作を示す事例ベースモデル14Eを作成する機能を有している。
次に、図3および図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる制御系解析装置の動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる制御系解析装置の動作を示す動作フロー図である。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかる制御系解析装置のモデル作成処理を示すフローチャートである。ここでは、図2の空調システムの動作を示す事例ベースモデルを作成する場合を例として説明する。
まず、演算処理部15は、パラメータ計測部11により、制御系2から操作パラメータ20A、条件パラメータ20B、および評価パラメータ20Cの値を計測し(ステップ100)、得られた時系列データに基づき操作パラメータ14A、条件パラメータ14B、および評価パラメータ14Cからなる履歴データを生成して記憶部14へ保存する。
また、評価パラメータ20Cについては、冷却塔消費電力Pa、冷凍機消費電力Pb、空調機消費電力Pc、およびポンプ消費電力Ppを、同一計測時刻ごとに合算し、得られた時系列データを評価パラメータ14Cとして記憶部14へ保存する(ステップ102)。
図5は、事例データの生成を示す説明図である。図6は、事例データの構成例である。事例データ生成手段15Aは、操作パラメータ14A、条件パラメータ14B、および評価パラメータ14Cのうち任意の時刻区間Tごとに、当該区間Tに属する各時系列データを統計処理してその代表値をそれぞれ求め、これら代表値の組から事例データ14Dを生成する。
実際の事例データ14Dは、図7の三次元空間内にまばらに存在しているが、RSM−Sにより個々の事例データが補間され、制御系2の広範囲にわたる動作状態を示すモデルが作成されていることがわかる。
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる制御系解析装置について説明する。図8は、制御系の構成例(排熱利用型蒸気供給システム)を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、空調システムからなる制御系2に対して制御系解析装置1を適用した場合について説明した。本実施の形態では、排熱利用型蒸気供給システムからなる制御系2に対して制御系解析装置1を適用した場合について説明する。なお、制御系解析装置1の構成については、前述の図1と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、制御系解析装置1のパラメータ計測部11により、実際に稼働している制御系2から、この制御系2の動作を示すモデルを作成するため、モデルの入力パラメータとなる操作パラメータ20Aと条件パラメータ20B、およびモデルの出力パラメータとなる評価パラメータ20Cからなる各パラメータ20の値を時系列で計測する。
また、負荷設備45で消費される蒸気消費量(蒸気負荷)を条件パラメータ20Bと見なし、蒸気ヘッダ44から負荷設備45へ蒸気を供給する配管に設けられた蒸気流量計52により蒸気消費量Qsを計測している。
また、制御系2のエネルギー消費量を削減する省エネルギーを目的として最適な操作パラメータを得る場合を例とする。したがって、補助ボイラ43でのエネルギー消費量を評価パラメータ20Cと見なし、補助ボイラ43へ供給されるガス42の配管に設けたガス流量計53により補助ボイラ側ガス消費量Qgを計測している。
これにより、空調システムだけでなく排熱利用型蒸気供給システムについても、実際の制御系2で実績のある適正稼働条件を満足する操作パラメータ最適設定値を適切に決定することができる。
以上の各実施の形態では、操作パラメータ、条件パラメータ、および評価パラメータの具体例をあげて説明したが、これらパラメータは上記具体例に限定されるものではない。例えば、制御系2が空調システムの場合、操作パラメータとしては、冷水送水温度のほか、冷却塔21から冷凍機23へ送られる冷却水22Bの冷却水温度や、空調機25から被制御室26へ給気する空気27Bの給気温度を用いてもよい。また、条件パラメータとしては、被制御室26の負荷熱量のほか、被制御室26の室内温度を用いてもよい。また、評価パラメータとしては、制御系2で消費される電力のほか、ガス、一次エネルギー、蒸気、排熱などの利用量を用いてもよい。
また、評価パラメータが複数の場合、操作パラメータ最適設定値14Fを決定するには、例えば多目的最適化問題でのPareto最適解の探索において広く用いられている重みパラメータ法やリグレット関数などを用いた公知の評価手法を適用して評価関数を求めればよく(例えば、非特許文献2など参照)、非線形計画問題において広く用いられている制約条件付きのNewton法や準Newton法などの公知の探索手法を用いればよい。
Claims (10)
- 任意の対象を制御する系の動作を示すモデルを用いて操作パラメータの最適設定値を得る制御系解析装置であって、
前記系の動作を決定するとともに前記系の動作に応じて所望の設定値近傍で変動する操作パラメータ、前記系の動作に影響を及ぼす要因を示す条件パラメータ、および前記系の動作の最適化を評価するための評価パラメータの値を、実際に稼働している前記系から逐次計測し、これら時系列データを履歴データとして記憶部へ格納するパラメータ計測手段と、
前記記憶部の各履歴データから前記系の動作を示す複数の事例データを生成して前記記憶部へ格納する事例データ生成手段と、
前記記憶部の事例データに基づいて、前記操作パラメータと前記条件パラメータを入力パラメータとするとともに前記評価パラメータを出力パラメータとし、前記系の各種状態での動作を示す事例ベースモデルを作成するモデル作成手段と
を備えることを特徴とする制御系解析装置。 - 請求項1に記載の制御系解析装置において、
前記事例データ生成手段は、前記履歴データの各パラメータ値を、前記系の時間遅れ以上の時間長を有する一定区間ごとに統計処理してそれぞれの代表値を算出し、各区間の代表値の組から前記事例データを生成することを特徴とする制御系解析装置。 - 請求項1に記載の制御系解析装置において、
前記モデル作成手段は、多変数スプラインによる応答曲面法(RSM−S:Response Surface Method by Spline)を用いて前記事例ベースモデルを作成することを特徴とする制御系解析装置。 - 請求項1に記載の制御系解析装置において、
前記系が空調システムの場合、前記操作パラメータは熱源機器から空調機へ送水される水の送水温度からなり、前記条件パラメータは空調対象となる空調負荷からなり、前記評価パラメータは前記系で消費されるエネルギー消費量からなることを特徴とする制御系解析装置。 - 請求項1に記載の制御系解析装置において、
前記系が排熱利用型蒸気供給システムの場合、前記操作パラメータは排熱利用ボイラ側蒸気圧または補助ボイラ側蒸気圧のいずれかまたは両方からなり、前記条件パラメータは負荷側での蒸気負荷からなり、前記評価パラメータは前記補助ボイラ側のエネルギー消費量または排熱利用ボイラ側の排熱利用量のいずれかまたは両方からなることを特徴とする制御系解析装置。 - 任意の対象を制御する系の動作を示すモデルを用いて操作パラメータの最適設定値を得る制御系解析装置のコンピュータに、
前記系の動作を決定するとともに前記系の動作に応じて所望の設定値近傍で変動する操作パラメータ、前記系の動作に影響を及ぼす要因を示す条件パラメータ、および前記系の動作の最適化を評価するための評価パラメータの値を、実際に稼働している前記系から逐次計測し、これら時系列データを履歴データとして記憶部へ格納するパラメータ計測ステップと、
前記記憶部の各履歴データから前記系の動作を示す複数の事例データを生成して前記記憶部へ格納する事例データ生成ステップと、
前記記憶部の事例データに基づいて、前記操作パラメータと前記条件パラメータを入力パラメータとするとともに前記評価パラメータを出力パラメータとし、前記系の各種状態での動作を示す事例ベースモデルを作成するモデル作成ステップと
を実行させるプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記事例データ生成ステップは、前記履歴データの各パラメータ値を、前記系の時間遅れ以上の時間長を有する一定区間ごとに統計処理してそれぞれの代表値を算出し、各区間の代表値の組から前記事例データを生成することを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記モデル作成ステップは、多変数スプラインによる応答曲面法(RSM−S:Response Surface Method by Spline)を用いて前記事例ベースモデルを作成することを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記系が空調システムの場合、前記操作パラメータは熱源機器から空調機へ送水される水の送水温度からなり、前記条件パラメータは空調対象となる空調負荷からなり、前記評価パラメータは前記系で消費されるエネルギー消費量からなることを特徴とするプログラム。 - 請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記系が排熱利用型蒸気供給システムの場合、前記操作パラメータは排熱利用ボイラ側蒸気圧または補助ボイラ側蒸気圧のいずれかまたは両方からなり、前記条件パラメータは負荷側での蒸気負荷からなり、前記評価パラメータは前記補助ボイラ側のエネルギー消費量または排熱利用ボイラ側の排熱利用量のいずれかまたは両方からなることを特徴とするプログラム。
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