JP4402314B2 - 動力伝達装置のロックアップ制御装置 - Google Patents

動力伝達装置のロックアップ制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン側の動力を変速機側に伝達する流体継手と変速機側を断接する変速用の湿式多板クラッチを備えた動力伝達装置に係り、特に、流体継手を断接するための動力伝達装置のロックアップ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流体継手(フルードカップリング)は、船舶用、産業機械用、自動車用の動力伝達継手として従来から用いられている。流体継手を装備した車両用動力伝達装置は、例えば特開昭55−159360号公報に開示されるように、車両に搭載されたエンジンによって作動される流体継手と、その流体継手に伝動連結された湿式多板クラッチと、湿式多板クラッチに伝動連結された変速機が直列に配置されている。
【0003】
このような車両用動力伝達装置に装備される流体継手は、例えばディーゼルエンジンのクランクシャフト(流体継手としての入力軸)に連結されたケーシングと、そのケーシングと対向して配設されケーシングに取り付けられたポンプと、そのポンプと対向配設された、入力軸と同一線上に配置された出力軸に取り付けられたタービンとを具備しており、駆動側のポンプの回転を流体を仲介として被動側のタービンを回転させて、エンジンの動力を変速機側に伝達するものである。
【0004】
この流体継手において、始動時等には、流体継手のクリープ力が必要であるが、エンジンが設定回転数(例えば1000rpm)に達したならば、流体継手のすべりがエネルギーロスのとなるため 、ロックアップ装置が、断から接に作動されて、タービンをケーシングに接触させてポンプとタービンとを機械的に連結するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このロックアップ装置を作動させた場合、ロックアップ完了後は、エンジン回転数が一定以上(例えば800rpm)となることが望まれるが、タービン回転による判定では、湿式多板クラッチ断時に想定しないロックアップ断接が発生してしまう。すなわち、エンジン回転が800rpm近傍で、シフト操作により、湿式多板クラッチが断となり変速機側がつながっていないときに、アクセルを踏み込むと、負荷がないためタービン回転数は、設定回転数(1000rpm)まで上がるが、車速は一定であり、このタービン回転の判定でロックアップ装置を接とした場合には、その後に湿式多板クラッチが接となると、タービン回転数が800rpm以下に急激に下がり、再度ロックアップ装置が断となる想定しないロックアップ断接が発生してしまうと共に、最悪の場合エンストまで起こしてしまう問題がある。
【0006】
そこで、車速信号によって判定することも考えられるが、車速判定では、ギア比換算が必要となり、またギアの誤検出やギア比バリエーションに対応できないと共にタイヤの径が変わっても正確な判定が行えない問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、湿式多板クラッチの断接に影響されずにロックアップ装置を適正に断接できる動力伝達装置のロックアップ制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジン側の動力を変速機側に伝達する流体継手と変速機と前記変速機側を断接する変速用クラッチを備え、前記流体継手に前記流体継手を断接するロックアップ装置を備え、前記ロックアップ装置の断接を制御する制御装置を備えた動力伝達装置のロックアップ制御装置において、前記変速用クラッチと接続される前記変速機の入力軸側に、前記ロックアップ装置を作動すべく、前記変速機の入力回転数を検出する回転センサを設け、前記回転センサの検出値を前記制御装置に入力し、前記制御装置は、前記変速用クラッチの断接にかかわらず、前記検出値が予め前記制御装置に記憶させた所定値以下のとき前記ロックアップ装置を断とし、前記所定値より大きな設定値以上になったときに、前記ロックアップ装置を断から接に切り換える動力伝達装置のロックアップ制御装置である。
【0009】
請求項2の発明は、前記変速機の入力軸に接続される副軸の入力ギアに前記回転センサを設けた請求項1記載の動力伝達装置のロックアップ制御装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1は、車両の動力伝達装置のロックアップ制御装置の概略構成図を示したものである。
【0013】
図示するように、エンジンEには、クラッチ機構1を介して変速機T/Mが接続されている。クラッチ機構1は流体継手(フルードカップリング)2と湿式多板クラッチ(変速用クラッチ)3とからなる。流体継手2は、エンジンEから変速機T/Mに至る動力伝達経路の途中であってその上流側に設けられ、湿式多板クラッチ3は同下流側に直列に設けられる。なおここでいう流体継手とはトルクコンバータを含む広い概念であり、現に本実施形態においてもトルクコンバータを用いている。
【0014】
流体継手2は、エンジンEの出力軸(クランク軸)1aに接続されたケーシング18と一体に回転するポンプ部4と、ケーシング18内でポンプ部4に対向されクラッチ3の入力側に接続されたタービン部5と、タービン部5とポンプ部4との間に介設されたステータ部6とからなっている。またこの流体継手2には、ポンプ部4とタービン部5との締結・切離を行うロックアップクラッチ7と、そのロックアップクラッチ7を作動する油圧回路19からなるロックアップ装置20を有する。
【0015】
湿式多板クラッチ3は、その入力側が入力軸3aを介してタービン部5に接続され、出力側が変速機T/Mの入力軸8に接続され、流体継手2と変速機T/Mとの間を断接するもので、常時はスプリング(図示せず)で断方向に付勢され、油圧回路19からの圧油にて接にされる。
【0016】
変速機T/Mは、入力軸8と、これと同軸に配置された出力軸9と、これらに平行に配置された副軸10とを有する。入力軸8には、入力主ギヤ11が設けられている。出力軸9には、1速主ギヤM1と、2速主ギヤM2と、3速主ギヤM3と、4速主ギヤM4と、リバース主ギヤMRとが夫々軸支されていると共に、6速主ギヤM6が固設されている。副軸10には、入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12と、1速主ギヤM1に噛合する1速副ギヤC1と、2速主ギヤM2に噛合する2速副ギヤC2と、3速主ギヤM3に噛合する3速副ギヤC3と、4速主ギヤM4に噛合する4速副ギヤC4と、リバース主ギヤMRにアイドルギヤIRを介して噛合するリバース副ギヤCRとが固設されていると共に、6速主ギヤM6に噛合する6速副ギヤC6が軸支されている。
【0017】
この変速機T/Mによれば、出力軸9に固定されたハブH/R1にスプライン噛合されたスリーブS/R1を、リバース主ギヤMRのドグDRにスプライン噛合すると、出力軸9がリバース回転し、上記スリーブS/R1を1速主ギヤM1のドグD1にスプライン噛合すると、出力軸9が1速相当で回転する。そして、出力軸9に固定されたハブH/23にスプライン噛合されたスリーブS/23を、2速主ギヤM2のドグD2にスプライン噛合すると、出力軸9が2速相当で回転し、上記スリーブS/23を3速主ギヤM3のドグD3にスプライン噛合すると、出力軸9が3速相当で回転する。
【0018】
そして、出力軸9に固定されたハブH/45にスプライン噛合されたスリーブS/45を、4速主ギヤM4のドグD4にスプライン噛合すると、出力軸9が4速相当で回転し、上記スリーブS/45を入力主ギヤ11のドグD5にスプライン噛合すると、出力軸9が5速相当(直結)で回転する。そして、副軸10に固定されたハブH6にスプライン噛合されたスリーブS6を、6速副ギヤC6のドグD6にスプライン噛合すると、出力軸9が6速相当で回転する。
【0019】
上記各スリーブSは、図示しないシフトフォークおよびシフトロッドを介して、運転室内のシフトレバー21によってマニュアル操作される。
【0020】
またシフトレバー21によるギアの切り替え操作の際には、先ず、ニュートラルで、湿式多板クラッチ3が断とされ、そのニュートラル位置から他のギアに切り替えた後は、湿式多板クラッチ3が接とされる。
【0021】
このシフトレバー21の操作によるニュートラルとギヤポジションは、制御装置22に入力される。
【0022】
また、アクセルペダル23の踏み込み量は、センサ24により検出され、その踏み込み量が制御装置22に入力される。またブレーキペダル25の踏み込み量は、センサ26で検出され、その踏み込み量が制御装置22に入力される。
【0023】
本発明においては、変速機T/Mの入力主ギヤ11又は入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12に回転数を検出する回転センサ27が設けられ、その回転センサ27の検出値が制御装置22に入力され、制御装置22が、湿式多板クラッチ3の断接にかかわらず、回転センサ27で検出された回転数が所定値以下(例えば800rpm)のときには、流体継手2のロックアップ装置20を断側に、設定値以上(例えば1000rpm)となったとき、ロックアップ装置20を接側に作動するようにしたものである。
【0024】
この流体継手2とロックアップ装置20の詳細を図2により説明する。
【0025】
図2において、エンジンの出力軸(クランク軸)1aに接続されたケーシング18には、ポンプ部4が一体に設けられる。ポンプ部4は、軸受29によりクラッチ3の入力軸3aに対して回転自在に設けられる。またケーシング18内には、ポンプ部4に対向されてタービン部5が、クラッチ3の入力軸3aに接続されて設けられる。なお、図では、説明の便宜上、ステータ部6は省略してある。
タービン部5には、ダンパースプリング30を介して、クラッチディスク31が連結される。クラッチディスク31は、ケーシング18と対向するようタービン部5のタービンハブ32の外周に相対回転自在で、かつ軸方向に摺動可能に設けられ、そのケーシング18側に面したクラッチディスク31の外周部にクラッチフェージング33が装着される。
【0026】
このクラッチディスク31により、ケーシング18とクラッチディスク31間に外側室34が形成され、タービン部5とクラッチディスク31間に内側室35が形成される。
【0027】
入力軸3aには、内側通路36が形成され、その入力軸3aの外周に外側通路37が形成される。
【0028】
この流体継手2で、ロックアップ装置20が断のとき、圧油は、内側通路36からケーシング18とクラッチディスク31間に外側室34に流れ、外側室34から図示の矢印38に示すようにタービン部5とポンプ部4内を流れ、一部は軸受け29を通って外側通路37に流れて、ポンプ部4の回転をタービン部5に伝達する。またロックアップ装置が接のときは、圧油の流れは上述と逆に切り換えられる。すなわち、圧油は、外側通路37から軸受け29を通って図示の矢印39に示すようにポンプ部4とタービン部5内を流れると共に、内側室35に流れる。これによりクラッチディスク31のクラッチフェージング33がケーシング18に摩擦接触し、ケーシング18の回転が、クラッチディスク31よりダンパースプリング30を介してタービン部5に伝達され、ポンプ部4とタービン部5とが機械的に締結される。
【0029】
なお、湿式多板クラッチ3は、油が満たされたクラッチケーシング40内で、入力側と出力側とにそれぞれ複数枚ずつ互い違いにクラッチプレート41がスプライン噛合され、これらクラッチプレート41同士をクラッチピストン42により押し付け合い、或いは解放して、クラッチの接続・分断を行うものである。クラッチピストン42はクラッチスプリング43により常に断側に付勢されると共に、これを上回る油圧がクラッチピストン42に付加されたときクラッチ3が締結される。
【0030】
図3は、流体継手2及びロックアップ装置20と湿式多板クラッチ3を作動する油圧回路19の詳細を示したものである。
【0031】
図3に示すように、オイルタンク45の油がろ過器Fを介して油圧ポンプOPにより吸引吐出されると共に、その吐出圧がリリーフバルブ47により調整され、圧油供給ライン46に供給される圧油が一定の圧力となるようにされる。
【0032】
圧油供給ライン46には、ライン48を介して、流体継手2への圧油を切り換えるロックアップ用四方弁49が接続される。このロックアップ用四方弁49には、圧油をオイルタンク45に戻す圧油戻しライン50が接続されると共にその圧油戻しライン50に、絞り弁51、クーラ52、開閉弁53が接続される。
【0033】
開閉弁53は、常閉で、圧油供給ライン46に接続されたパイロットライン54からの圧油で開とされる。
【0034】
ロックアップ用四方弁49は、圧油供給ライン46のパイロットライン55に接続されたパイロット制御用二方電磁弁56により切り換え制御がなされ、常時(パイロット制御用二方電磁弁56がOFF、ロックアップ断のとき)は、ライン48からの圧油が、ライン57より、図2で説明した内側通路36に流れてタービン部5とポンプ部4に流れて、外側通路37からライン58を通し、ロックアップ用四方弁49を介して圧油戻しライン50に戻るようにされ、また、パイロット制御用二方電磁弁56が作動(ロックアップ接)されると、パイロットライン55からの圧油で、ロックアップ用四方弁49が切り換えられ、ライン48からの圧油が、ライン58より外側通路37に流れてポンプ部4とタービン部5に流れ、図2で説明した内側室35に溜まり、外側室34の油がライン58に流れて、ロックアップ用四方弁49、絞り弁59を介して圧油戻しライン50に戻されるようになっている。
【0035】
また、湿式多板クラッチ3は、圧油供給ライン46にライン60を介して接続され、そのライン60にクラッチ切換用二方弁61が接続され、そのクラッチ切換用二方弁61が、圧油供給ライン46のパイロットライン62に接続されたパイロット制御用二方電磁弁63で作動制御されるようになっている。
【0036】
この湿式多板クラッチ3は、常時は、クラッチ切換用二方弁61が閉位置にあり、その状態で、スプリング42により断方向に付勢され、パイロット制御用二方電磁弁63が開に作動されてパイロットライン62からの圧油によりクラッチ切換用二方弁61が開とされて湿式多板クラッチ3に圧油が供給されて接方向作動される。
【0037】
このパイロット制御用二方電磁弁56とパイロット制御用二方電磁弁63とは制御装置22からの電気信号で作動されるようになっている。
【0038】
次に、本実施形態に係る動力伝達装置の作動を説明する。
【0039】
この動力伝達装置では、エンジンEの動力を流体継手2、湿式多板クラッチ3、変速機T/Mという順で伝達する。
【0040】
発進時、ロックアップクラッチ7と多板湿式クラッチ3は、断とされ、ドライバがシフトレバー21のシフト操作により、発進段にシフトすると、湿式多板クラッチ3が接となり、その状態では、流体継手2のタービン部5は、駆動輪側から止められているので、ポンプ部4のみが回転し、クリープ力が発生することになる。その後、ブレーキペダル25を離したり、アクセルペダル23を踏み込んだりすれば、タービン部5が回転して変速機T/M側に動力が伝達される。
【0041】
発進後は、シフトレバー21で変速操作がなされ、その都度湿式多板クラッチ3が断接される。
【0042】
本発明においては、制御装置22は、変速機T/Mの入力主ギヤ11又は入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12の回転を回転センサ27で検出し、その検出値で回転が、設定値(例えば1000rpm)以上に達したときにロックアップ装置20を接とし、車両停止時など回転数が、所定値(例えば800rpm)以下になったときには断となるように制御することで、ロックアップ装置20を接とした際に、湿式多板クラッチ3が断で、その後、接になっても、その後の回転の急激な変化が無く、クラッチ断接やギア段に影響されずに、適正なロックアップ断接判定が可能となる。
【0043】
また、ロックアップ装置20を接にした後、回転数が下がり、所定値以下になったならば、制御装置22は、ロックアップ装置20を断に切り換える。
【0044】
制御装置22によるロックアップ装置20の作動は、図3で説明したように、パイロット制御用二方電磁弁56を作動し、圧油供給ライン46の圧油をパイロットライン55を介してロックアップ用四方弁49を切り換えることで、図2で説明したように、圧油が、外側通路37からポンプ部4とタービン部5に供給された後、内側室35に供給され、その圧油でロックアップクラッチ31をケーシング18側に押し付けて、フェージング33をケーシング18に接触させることで接とされる。
【0045】
なお、回転センサ27の取付位置は、図1では、主に入力主ギヤ11で説明したが、取付の容易性から図2に示すように入力副ギヤ12の回転を検出する位置に設けるのが良い。
【0046】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、変速用クラッチの断接にかかわらず、変速機側の入力回転数を検出する回転センサの検出値が、予め制御装置に記憶させた所定値以下のときロックアップ装置を断とし、所定値より大きな設定値以上になったときに、ロックアップ装置を断から接に切り換えることで、湿式多板クラッチの断接やギア段の影響を受けずに適切なロックアップが行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1の流体継手と湿式多板クラッチからなるクラッチ機構の詳細を示す断面図である。
【図3】図1の流体継手と湿式多板クラッチを作動する油圧回路の詳細を示す図である。
【符号の説明】
2 流体継手
3 湿式多板クラッチ
20 ロックアップ装置
22 制御装置
27 回転センサ
E エンジン
T/M 変速機

Claims (2)

  1. エンジン側の動力を変速機側に伝達する流体継手と変速機と前記変速機側を断接する変速用クラッチを備え、前記流体継手に前記流体継手を断接するロックアップ装置を備え、前記ロックアップ装置の断接を制御する制御装置を備えた動力伝達装置のロックアップ制御装置において、前記変速用クラッチと接続される前記変速機の入力軸側に、前記ロックアップ装置を作動すべく、前記変速機の入力回転数を検出する回転センサを設け、前記回転センサの検出値を前記制御装置に入力し、前記制御装置は、前記変速用クラッチの断接にかかわらず、前記検出値が予め前記制御装置に記憶させた所定値以下のとき前記ロックアップ装置を断とし、前記所定値より大きな設定値以上になったときに、前記ロックアップ装置を断から接に切り換えることを特徴とする動力伝達装置のロックアップ制御装置。
  2. 前記変速機の入力軸に接続される副軸の入力ギアに前記回転センサを設けた請求項1記載の動力伝達装置のロックアップ制御装置。
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