以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(電気光学装置の第1実施形態)
本発明による電気光学装置の第1実施形態について、特に画像表示領域における構成を中心としてその動作と共に、図1から図7を参照して説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極、遮光膜等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図3は、図2のD−D’断面図であり、図4は、図2のA−A’断面図である。図5は、図2から図4に示した電気光学装置のデータ線及び半導体層を部分的に抜き出して示す拡大斜視図である。図6は、比較例における斜めからの入射光が反射してTFTのチャネル領域に入射する様子を示す図式的断面図である。また、図7は、変形形態における図2のA−A’断面に対応する断面図である。尚、図3、図4、図6及び図7においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図1において、本実施形態による電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aを制御するためのTFT30がマトリクス状に複数形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。電気光学物質は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの電気光学物質部分を通過不可能とされ、ノーマリーブラックモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの電気光学物質部分を通過可能とされ、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される電気光学物質容量と並列に蓄積容量70を付加する。例えば、画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量70により保持される。これにより、保持特性は更に改善され、コントラスト比の高い電気光学装置が実現できる。
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール5を介してポリシリコン膜等からなる半導体層1aのうち後述のソース領域に電気的接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうち後述のドレイン領域に電気的接続されている。また、半導体層1aのうちチャネル領域1a’(図中右下りの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、チャネル領域1a’に走査線3aがゲート電極として対向配置されたTFT(即ち、図1に示したTFT30)が設けられている。
容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中、上向き)に突出した突出部とを有する。
また、図中右上がりの斜線で示した領域には夫々、走査線3a及びTFTの下側を通るように、第1遮光膜11aが設けられている。より具体的には図2において、第1遮光膜11aは夫々、走査線3aに沿って縞状に形成されていると共に、データ線6aと交差する箇所が上下に幅広に形成されており、この幅広の部分により各TFTのチャネル領域1a'及び該チャネル領域に隣接するチャネル隣接領域1a”をTFTアレイ基板側から見て夫々覆う位置に設けられている。
本実施形態では特に、図2中、コンタクトホール5に近い側のチャネル隣接領域1a”の両側に位置する黒塗りした矩形領域における後述の層間絶縁膜に溝が形成されており、その溝内にデータ線6aの主配線部の縁から図2中紙面に向かって伸びる側方遮光部6bが設けられている。即ち、図2中、コンタクトホール5に近い側のチャネル隣接領域1a”は、その側方遮光部6bにより左右から囲まれており、該左右からの光に対する遮光が施されている。この側方遮光部6bに係る構成については図4から図6を用いて後に詳述する。
次に図3の断面図に示すように、電気光学装置は、透明な一方の基板の一例を構成するTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な他方の基板の一例を構成する対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO膜(Indium Tin Oxide膜)などの透明導電性薄膜からなる。
また配向膜16は例えば、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極(共通電極)21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性薄膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
TFTアレイ基板10には、各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。
対向基板20には、更に図3に示すように、各画素の開口領域以外の領域に、ブラックマスク或いはブラックマトリクスと称される第2遮光膜23が設けられている。このため、対向基板20の側から入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a’やLDD領域1b及び1cに侵入することはない。更に、第2遮光膜23は、コントラストの向上、色材の混色防止などの機能を有する。尚、LDD領域1b及び1cは、図2に示したチャネル隣接領域1a”に含まれる。
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材(図14及び図15参照)により囲まれた空間に電気光学物質が封入され、電気光学物質層50が形成される。電気光学物質層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。電気光学物質層50は、例えば一種又は数種類のネマティック電気光学物質を混合した電気光学物質からなる。シール材は、二つの基板10及び20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサが混入されている。
更に図3に示すように、画素スイッチング用TFT30に各々対向する位置においてTFTアレイ基板10と各画素スイッチング用TFT30との間には、第1遮光膜11aが設けられている。第1遮光膜11aは、好ましくは不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo及びPdのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等から構成される。このような材料から構成すれば、TFTアレイ基板10上の第1遮光膜11aの形成工程の後に行われる画素スイッチング用TFT30の形成工程における高温処理により、第1遮光膜11aが破壊されたり溶融しないようにできる。第1遮光膜11aが形成されているので、TFTアレイ基板10の側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1a’やLDD領域1b、1cに入射する事態を未然に防ぐことができ、これに起因した光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することはない。
更に、第1遮光膜11aと複数の画素スイッチング用TFT30との間には、第1層間絶縁膜12が設けられている。第1層間絶縁膜12は、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的絶縁するために設けられるものである。更に、第1層間絶縁膜12は、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、画素スイッチング用TFT30のための下地膜としての機能をも有する。即ち、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。第1層間絶縁膜12は、例えば、NSG(ノンドープトシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などの高絶縁性ガラス又は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等からなる。第1層間絶縁膜12により、第1遮光膜11aが画素スイッチング用TFT30等を汚染する事態を未然に防ぐこともできる。
本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。より詳細には、半導体層1aの高濃度ドレイン領域1eが、データ線6a及び走査線3aの下に延設されて、同じくデータ線6a及び走査線3aに沿って伸びる容量線3b部分に絶縁膜2を介して対向配置されて、第1蓄積容量電極(半導体層)1fとされている。特に蓄積容量70の誘電体としての絶縁膜2は、高温酸化によりポリシリコン膜上に形成されるTFT30のゲート絶縁膜2に他ならないので、薄く且つ高耐圧の絶縁膜とすることができ、蓄積容量70は比較的小面積で大容量の蓄積容量として構成できる。
この結果、データ線6a下の領域及び走査線3aに沿って電気光学物質のディスクリネーションが発生する領域(即ち、容量線3bが形成された領域)という開口領域を外れたスペースを有効に利用して、画素電極9aの蓄積容量を増やすことが出来る。
図3において、画素スイッチング用TFT30は、LDD構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域(ソース側LDD領域)1b及び低濃度ドレイン領域(ドレイン側LDD領域)1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。高濃度ドレイン領域1eには、複数の画素電極9aのうちの対応する一つが接続されている。ソース領域1b及び1d並びにドレイン領域1c及び1eは後述のように、半導体層1aに対し、n型又はp型のチャネルを形成するかに応じて所定濃度のn型用又はp型用のドーパントをドープすることにより形成されている。n型チャネルのTFTは、動作速度が速いという利点があり、画素のスイッチング素子である画素スイッチング用TFT30として用いられることが多い。本実施形態では特にデータ線6aは、Al等の低抵抗な金属膜や金属シリサイド等の合金膜などの遮光性の薄膜から構成されている。また、走査線3a、ゲート絶縁膜2及び第1層間絶縁膜12の上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が各々形成された第2層間絶縁膜4が形成されている。このソース領域1bへのコンタクトホール5を介して、データ線6aは高濃度ソース領域1dに電気的接続されている。更に、データ線6a及び第2層間絶縁膜4の上には、高濃度ドレイン領域1eへのコンタクトホール8が形成された第3層間絶縁膜7が形成されている。この高濃度ドレイン領域1eへのコンタクトホール8を介して、画素電極9aは高濃度ドレイン領域1eに電気的接続されている。前述の画素電極9aは、このように構成された第3層間絶縁膜7の上面に設けられている。尚、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとは、データ線6aと同一のAl膜や走査線3bと同一のポリシリコン膜を中継しての電気的接続するようにしてもよい。
画素スイッチング用TFT30は、好ましくは上述のようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を持ってよいし、ゲート電極3aをマスクとして高濃度で不純物イオンを打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。
また本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極3aを高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。このようにデュアルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース−ドレイン領域接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。これらのゲート電極の少なくとも1個をLDD構造或いはオフセット構造にすれば、更にオフ電流を低減でき、安定したスイッチング素子を得ることができる。
次に、図4に示すように本実施形態では、図2においてチャネル領域1a’の上下に位置する二つのチャネル隣接領域1a”のうちコンタクトホール5に近い側のチャネル隣接領域1a”(上述の図3におけるソース側のLDD領域1bを含む方のチャネル隣接領域1a”)は、下方が遮光膜11aにより遮光されており、図4及び図5に示すように、上方がデータ線6aの主配線部により遮光されている。そして特に図4に示すように第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜4には、チャネル隣接領域11a”に対向する箇所におけるデータ線6aの主配線部の縁に対向する位置に溝が形成されており、データ線6aの側方遮光部6bが、主配線部の縁からこの溝に向けて伸びており、チャネル隣接領域11a”を溝側から部分的に囲むように構成されている。
このように、チャネル隣接領域1a”の側方が側方遮光部6bにより囲まれているので、このチャネル隣接領域1a”は、その側方が遮光されている。また図5に示すように、コンタクトホール5の内部に伸びるデータ線部分6cは、チャネル隣接領域1a”をチャネル領域1a’と反対側から遮光する機能をも有する。即ち、本実施形態では、コンタクトホール5に近い側のチャネル隣接領域1a”は、これら二つの側方遮光部6b及び一つのデータ線部分6cにより、3つの方向から側方が遮光されている。更に、チャネル隣接領域1a”のチャネル領域1a’と同じ側の側方については、側方遮光部やコンタクトホール内のデータ線部分などはないが、こちらの側方(図2で上方)は、図3に示した第2遮光膜23により大きく覆われており、斜めに入射する入射光が元来少ないため、これを遮光するための部分をデータ線6aに敢えて形成しなくても実用上の問題は殆ど又は全くない。
以上のように本実施形態の電気光学装置によれば、走査線3aを上側から覆うように形成されたデータ線6aの主配線部及び側方遮光部6bが、チャネル領域1a’並びにLDD領域1b及び1cを含むチャネル隣接領域1a”を、入射光から遮光する。また、画素スイッチング用TFT30の下側に設けられた第1遮光膜11aが、チャネル領域1a’並びにLDD領域1b及び1cを含むチャネル隣接領域1a”を、戻り光から遮光する。即ち、データ線6aの主配線部及び側方遮光部6b並びに第1遮光膜11aが、チャネル領域1a’及びチャネル隣接領域1a”を立体的に囲むことにより遮光が行われる。この結果、TFT30では、投射光や戻り光の入射角度や電気光学装置内における反射角度等に殆ど又は全くよらずに、投射光や戻り光等による光電流の発生に起因したトランジスタ特性の劣化が低減される。
これに対して図6に示した比較例では、データ線6aには、側方遮光部6bが形成されていない。従って、図6から明らかなように、TFTアレイ基板10に対して斜めから入射する入射光が、TFTの下側の第1遮光11aの上面に反射されて、LDD領域を含むチャネル隣接領域1a”に入射したり、第1遮光膜11aの上面で反射された後にデータ線6aの下面で反射されてチャネル隣接領域1a”に入射したり、更に第1遮光膜11aの上面及びデータ線6aの下面間で多重反射されて最終的にチャネル隣接領域1a”に入射したりする。これらの結果、TFTアレイ基板10に対して垂直な入射光であれば、データ線6aの主配線部により有効に遮光できるものの、TFTアレイ基板10に対して斜めな入射光を有効に遮光できないのである。このような斜めの入射光が第1遮光膜11aの上面に届かないようにするために、対向基板20上の第2遮光膜23(図4参照)の幅を広げることは可能であるが、このように構成したのでは、開口領域を狭める必要が生じ、結果として表示画像が暗くなってしまう。
この比較例に対して上述のように本実施形態では、側方遮光部6bがチャネル隣接領域1a”を側方から囲むため、 TFTアレイ基板10に対して斜めな入射光を有効に遮光できるのである。
尚、本実施形態では、第1及び第2層間絶縁膜12及び4の両方が開孔されて、二つの層に応じた深さの溝が形成され、その溝内に側方遮光部6bが設けられているが、例えば、図7に示すように、第2層間絶縁膜4のみ開孔すれば、その厚みに対応した深さの溝が形成される。尚、ここに“開孔”とは、貫通孔と非貫通孔との両者を含む意であり、図4において、第1層間絶縁膜12が完全に開孔されていなくても、或いは、図7において、第2層間絶縁膜4が完全に開孔されていなくても、開孔に見合った深さの溝を形成でき、その溝の深さに応じた側方遮光部6bを形成可能である。
他方、本実施形態において、第1遮光膜11aは、定電位源又は大容量部分に電気的接続されてもよい。このように構成すれば、第1遮光膜11aに対向配置される画素スイッチング用TFT30に対し第1遮光膜11aの電位変動が悪影響を及ぼすことはない。また、容量線3bを定電位とすることで、蓄積容量70の第2蓄積容量電極として良好に機能し得る。この場合、定電位源としては、当該電気光学装置を駆動するための周辺回路(例えば、走査線駆動回路、データ線駆動回路等)に供給される負電源、正電源等の定電位源、接地電源、対向電極21に供給される定電位源等が挙げられる。
また、容量線3bと走査線3aとは、同一のポリシリコン膜からなり、蓄積容量70の誘電体膜と画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜2とは、同一の高温酸化膜からなり、第1蓄積容量電極1fと、画素スイッチング用TFT30のチャネル形成領域1a’、ソース領域1d、ドレイン領域1e等とは、同一の半導体層1aからなる。このため、TFTアレイ基板10上に形成される積層構造を単純化でき、更に、後述の電気光学装置の製造方法において、同一の薄膜形成工程で容量線3b及び走査線3aを同時に形成でき、蓄積容量70の誘電体膜及びゲート絶縁膜2を同時に形成できる。
以上詳細に説明したように本実施形態の電気光学装置によれば、画素部におけるTFT30のチャネル領域1a’及びチャネル隣接領域1a”における遮光機能が高いため良好なTFT特性により高品位の画像表示が可能であり、しかも遮光膜により画素開口率を殆ど低下させることがないため画素開口率が高く明るい画像表示が可能である。
(電気光学装置の第1実施形態における製造プロセス)
次に、以上のような構成を持つ電気光学装置の製造プロセスについて、図8から図10を参照して説明する。尚、図8から図10は各工程におけるTFTアレイ基板側の各層を、図4と同様に図2のA−A’断面に対応させて示す工程図である。
先ず、図8の工程(1)に示すように、石英基板、ハードガラス等のTFTアレイ基板10を用意する。ここで、好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気且つ約900〜1300℃の高温でアニール処理し、後に実施される高温プロセスにおけるTFTアレイ基板10に生じる歪みが少なくなるように前処理しておく。即ち、製造プロセスにおける最高温で高温処理される温度に合わせて、事前にTFTアレイ基板10を同じ温度かそれ以上の温度で熱処理しておく。そして、このように処理されたTFTアレイ基板10の全面に、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタにより、1000〜5000オングストローム程度の層厚、好ましくは約2000オングストロームの層厚の遮光膜11を形成する。尚、遮光膜11上には、表面反射を緩和するためにポリシリコン膜等の反射防止膜を形成しても良い。
次に、工程(2)に示すように、該形成された遮光膜11上にフォトリソグラフィにより第1遮光膜11aのパターン(図2参照)に対応するレジストマスクを形成し、該レジストマスクを介して遮光膜11に対しエッチングを行うことにより、第1遮光膜11aを形成する。
次に工程(3)に示すように、第1遮光膜11aの上に、例えば、常圧又は減圧CVD法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第1層間絶縁膜12を形成する。この第1層間絶縁膜12の層厚は、例えば、約5000〜20000オングストロームとする。
次に工程(4)に示すように、第1層間絶縁膜12の上に、約450〜550℃、好ましくは約500℃の比較的低温環境中で、流量約400〜600cc/minのモノシランガス、ジシランガス等を用いた減圧CVD(例えば、圧力約20〜40PaのCVD)により、アモルファスシリコン膜を形成する。その後、窒素雰囲気中で、約600〜700℃にて約1〜10時間、好ましくは、4〜6時間のアニール処理を施することにより、ポリシリコン膜1を約500〜2000オングストロームの厚さ、好ましくは約1000オングストロームの厚さとなるまで固相成長させる。固相成長させる方法としては、RTA(Rapid Thermal Anneal)を使ったアニール処理でも良いし、エキシマレーザー等を用いたレーザーアニールでも良い。
この際、図3に示した画素スイッチング用TFT30として、nチャネル型の画素スイッチング用TFT30を作成する場合には、当該チャネル領域にSb(アンチモン)、As(砒素)、P(リン)などのV族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。また、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合には、B(ボロン)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)などのIII族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。尚、アモルファスシリコン膜を経ないで、減圧CVD法等によりポリシリコン膜1を直接形成しても良い。或いは、減圧CVD法等により堆積したポリシリコン膜にシリコンイオンを打ち込んで一旦非晶質化(アモルファス化)し、その後アニール処理等により再結晶化させてポリシリコン膜1を形成しても良い。
次に工程(5)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図2に示した如き所定パターンを有し、チャネル領域1a’やチャネル隣接領域1a”を含む半導体層1aを形成する。
次に工程(6)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aと共に第1蓄積容量電極1f(図3参照)を約900〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度により熱酸化することにより、約300オングストロームの比較的薄い厚さの熱酸化シリコン膜を形成し、更に減圧CVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜を約500オングストロームの比較的薄い厚さに堆積し、多層構造を持つ画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜2と共に容量形成用のゲート絶縁膜2を形成する。この結果、第1蓄積容量電極1fの厚さは、約300〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約350〜500オングストロームの厚さとなり、ゲート絶縁膜2の厚さは、約200〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約300〜1000オングストロームの厚さとなる。このように高温熱酸化時間を短くすることにより、特に8インチ程度の大型基板を使用する場合に熱によるそりを防止することができる。但し、ポリシリコン層1を熱酸化することのみにより、単一層構造を持つゲート絶縁膜2を形成してもよい。
尚、工程(6)において特に限定されないが、第1蓄積容量電極1fとなる半導体層部分に、例えば、Pイオンをドーズ量約3×1012/cm2でドープして、低抵抗化させてもよい。
次に工程(7)に示すように、減圧CVD法等によりポリシリコン層3を堆積した後、リン(P)を熱拡散し、ポリシリコン膜3を導電化する。又は、Pイオンをポリシリコン膜3の成膜と同時に導入したドープトシリコン膜を用いてもよい。
次に、図9の工程(8)に示すように、レジストマスクを用いたフォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図2に示した如き所定パターンの走査線3aと共に容量線3bを形成する。これらの容量線3b(走査線3a)の層厚は、例えば、約3500オングストロームとされる。尚、図9の工程(8)に示したA−A’断面では、ポリシリコン膜3が残る箇所はない。
次に、図3に示した画素スイッチング用TFT30をLDD構造を持つnチャネル型のTFTとする場合、半導体層1aに、先ず低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3a(ゲート電極)を拡散マスクとして、PなどのV族元素のドーパントを低濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1013/cm2のドーズ量にて)ドープする。これにより走査線3a下の半導体層1aはチャネル領域1a’となる。この不純物のドープにより容量線3b及び走査線3aも低抵抗化される。更に、画素スイッチング用TFT30を構成する高濃度ソース領域1b及び高濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3aよりも幅の広いマスクでレジスト層を走査線3a上に形成した後、同じくPなどのV族元素のドーパントを高濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。また、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合、半導体層1aに、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、BなどのIII族元素のドーパントを用いてドープする。尚、例えば、低濃度のドープを行わずに、オフセット構造のTFTとしてもよく、走査線3aをマスクとして、Pイオン、Bイオン等を用いたイオン注入技術によりセルフアライン型のTFTとしてもよい。この不純物のドープにより容量線3b及び走査線3aも更に低抵抗化される。
尚、これらのTFT30の素子形成工程と並行して、nチャネル型TFT及びpチャネル型TFTから構成される相補型構造を持つデータ線駆動回路、走査線駆動回路等の周辺回路をTFTアレイ基板10上の周辺部に形成してもよい。このように、本実施形態において画素スイッチング用TFT30は半導体層をポリシリコンで形成するので、画素スイッチング用TFT30の形成時にほぼ同一工程で、周辺回路を形成することができ、製造上有利である。
次に工程(9)に示すように、ゲート絶縁膜2a並びに不図示の画素スイッチング用TFT30における走査線3aと共に容量線3b及び走査線3aを覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第2層間絶縁膜4を形成する。第2層間絶縁膜4の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。
次に工程(10)の段階で、図3に示した高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを活性化するために約1000℃のアニール処理を20分程度行った後、図2で黒塗りで示した矩形領域に、側方遮光部6bが配置される溝を形成するために、第2層間絶縁膜4及び第1層間絶縁膜12を反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより或いはウエットエッチングにより、当該領域を開孔する。これと並行して、データ線31に対するコンタクトホール5を(図2及び図3参照)開孔する。また、走査線3aや容量線3bを図示しない配線と接続するためのコンタクトホールも、コンタクトホール5と同一の工程により第2層間絶縁膜4に開孔する。
次に、工程(11)に示すように、第2層間絶縁膜4の上に、スパッタ処理等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を金属膜6として、約1000〜5000オングストロームの厚さ、好ましくは約3000オングストロームに堆積する。
次に、工程(12)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、データ線6aを形成する。この際特に、第2層間絶縁膜4及び第1層間絶縁膜12に開孔された溝の内部には、データ線6aの縁から溝の内部に向けて延設された側方遮光部6b(図5参照)が形成される。
次に工程(13)に示すように、データ線6a上を覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第3層間絶縁膜7を形成する。第3層間絶縁膜7の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。尚、本実施の形態の製造プロセスでは特に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を施したり、スピンコート等によりSOG(Spin On Glass)を形成して、第3層間絶縁膜7の上面を平坦化する。
あるいは、有機SOG膜や無機SOG膜等により平坦化しても良い。このため、第3層間絶縁膜7の表面の凹凸により引き起こされる電気光学物質のディスクリネーション(配向不良)を低減できる。
その後、画素スイッチング用TFT30においては、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとを電気的接続するためのコンタクトホール8を、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより形成する。
次に図10の工程(14)に示すように、第3層間絶縁膜7の上に、スパッタ処理等により、ITO膜等の透明導電性薄膜9を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積し、更に工程(15)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、画素電極9aを形成する。尚、当該電気光学装置を反射型の電気光学装置に用いる場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料から画素電極9aを形成してもよい。
続いて、画素電極9aの上にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように且つ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜16(図3及び図4参照)が形成される。
他方、図3及び図4に示した対向基板20については、ガラス基板等が先ず用意され、第2遮光膜23及び周辺見切りとしての第3遮光膜(図14及び図15参照)が、例えば金属クロムをスパッタした後、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て形成される。尚、これらの第2及び第3遮光膜は、Cr、Ni、Alなどの金属材料の他、カーボンやTiをフォトレジストに分散した樹脂ブラックなどの材料から形成してもよい。
その後、対向基板20の全面にスパッタ処理等により、ITO等の透明導電性薄膜を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。更に、対向電極21の全面にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように且つ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜22(図3及び図4参照)が形成される。
最後に、上述のように各層が形成されたTFTアレイ基板10と対向基板20とは、配向膜16及び22が対面するようにシール材52により貼り合わされ、真空吸引等により、両基板間の空間に、例えば複数種類のネマティック電気光学物質を混合してなる電気光学物質が吸引されて、所定層厚の電気光学物質層50が形成される。
(電気光学装置の第2実施形態)
本発明による電気光学装置の第2実施形態について、特に画像表示領域における構成を中心としてその動作と共に、図11から図13を参照して説明する。図11は、データ線、走査線、画素電極、遮光膜等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図12は、図11のB−B’断面図であり、図13は、図11のC−C’断面図である。尚、図11から図13に示した第2実施形態において図2から図6に示した第1実施形態と同様の構成要素については、同様の参照符号を付し、その説明は省略する。また、図12及び図13においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図11において第1に、第2実施形態では第1実施形態とは異なり、図中黒塗りで示した枠状の領域において層間絶縁膜に形成される溝は、対向基板20の側から見てTFT毎にチャネル領域1a'及びチャネル隣接領域1a”を包囲するように形成されており、側方遮光部6b'は、上述のように形成された溝に対応してTFTアレイ基板10に平行な面内でチャネル領域1a'及びチャネル隣接領域1a”を包囲する。従って、第2実施形態によれば、チャネル領域1a'及びチャネル隣接領域1a”は、側方遮光部6b'により、基板に平行な平面内において隙間無く包囲されているので、いずれの方向から斜めに投射光や戻り光或いはそれらの反射光が入射しようとしても、当該側方遮光部6b'により遮光することが可能となる。
また、図12及び図13に示すように、本実施の形態では、第1層間絶縁膜12に開孔が形成され、第2層間絶縁膜4には開孔が形成されないが、第1層間絶縁膜12の厚みに応じて第2層間絶縁膜4には、溝が形成されており、この溝内にデータ線6aの側方配線部6b’が伸びている。従って、この側方遮光部6b’により、側方の遮光がなされている。
再び図11において第2に、第2実施形態では第1実施形態とは異なり、第1遮光膜11aは、複数の島状部分に分断されている。従って、例えば、縞状(図2参照)や格子状に設けられた遮光膜の場合と比較して、一体として形成される部分の面積が遥かに小さいため、遮光膜とその隣接膜との間の物性の相違により遮光膜に発生するストレスを大幅に緩和できる。このため、第1遮光膜11aにおける膜剥がれや膜変形或いはクラックの発生防止が図られる。同時に、第1遮光膜11a自身のストレスにより画素スイッチング用TFT30の特性が劣化する事態を未然に防ぐことが出来る。更に、このように第1遮光膜11aの各島状部分は、TFT30のチャネル領域1a'に対する遮光を行うのに必要な領域に最低限設けられているので、限られた画素部の非開口領域において、データ線6aや走査線3aと各島状部分(遮光膜)が重なる領域も最低限に抑えられており、製造プロセス中に、第1遮光膜11aに意図しない突起等が形成された場合などに第1遮光膜11aとデータ線6aや走査線3aとがショートして、当該電気光学装置が不良品化する可能性を低く出来るので有利である。
以上の各実施形態では、側方遮光部6b、6b’が形成される溝の側壁部分を、テーパ状に形成してもよい。このように構成すれば、データ線6aの側方遮光部6b、6b’の裏面側に戻り光が照射したとしても、テーパー角度を制御することにより、乱反射させ、チャネル領域1a’やチャネル隣接領域1a’’に光が照射されるのを防ぐことができる。また、溝内に後工程で形成される、側方遮光部6b、6b’(即ち、Al薄膜)の他、例えば、ポリシリコン膜、レジスト等が残ることがない。また、テーパのない或いは逆テーパの形成された側壁を横切って側方遮光部6b、6b’を形成したり配線を引き回すのは容易ではなく、配線不良の原因となる。尚、このように溝の側壁部分にテーパを付けるためには、例えば、図9に示した工程(10)のエッチング工程において、ドライエッチング後にウエットエッチングを行えばよい。
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された電気光学装置の各実施形態の全体構成を図14及び図15を参照して説明する。尚、図14は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た平面図であり、図15は、対向基板20を含めて示す図14のH−H’断面図である。
図14において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、例えば第2遮光膜23と同じ或いは異なる材料から成る周辺見切りとしての第3遮光膜53が設けられている。シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定タイミングで供給することによりデータ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び実装端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定タイミングで供給することにより走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域の辺に沿って両側に配列してもよい。例えば奇数列のデータ線6aは画像表示領域の一方の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給し、偶数列のデータ線は前記画像表示領域の反対側の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給するようにしてもよい。この様にデータ線6aを櫛歯状に駆動するようにすれば、データ線駆動回路の占有面積を拡張することができるため、複雑な回路を構成することが可能となる。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材106が設けられている。そして、図15に示すように、図14に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。尚、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路103、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
以上図1から図15を参照して説明した各実施形態では、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(テープオートメイテッドボンディング基板)上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(ダブル−STN)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
以上説明した各実施形態における電気光学装置は、カラー電気光学物質プロジェクタに適用されるため、3枚の電気光学装置がRGB用のライトバルブとして各々用いられ、各パネルには各々RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。従って、各実施形態では、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、第2遮光膜23の形成されていない画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に、対向基板20上に形成してもよい。このようにすれば、電気光学物質プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー電気光学物質テレビなどのカラー電気光学装置に各実施形態における電気光学装置を適用できる。更に、対向基板20上に1画素1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい電気光学装置が実現できる。更にまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー電気光学装置が実現できる。
以上説明した各実施形態における電気光学装置では、従来と同様に入射光を対向基板20の側から入射することとしたが、第1遮光膜11aを設けているので、TFTアレイ基板10の側から入射光を入射し、対向基板20の側から出射するようにしても良い。即ち、このように電気光学装置を電気光学物質プロジェクタに取り付けても、半導体層1aのチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cに光が入射することを防ぐことが出来、高画質の画像を表示することが可能である。ここで、従来は、TFTアレイ基板10の裏面側での反射を防止するために、反射防止用のAR被膜された偏光板を別途配置したり、ARフィルムを貼り付ける必要があった。しかし、各実施形態では、TFTアレイ基板10の表面と半導体層1aの少なくともチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cとの間に第1遮光膜11aが形成されているため、このようなAR被膜された偏光板やARフィルムを用いたり、TFTアレイ基板10そのものをAR処理した基板を使用する必要が無くなる。従って、各実施形態によれば、材料コストを削減でき、また偏光板貼り付け時に、ごみ、傷等により、歩留まりを落とすことがなく大変有利である。また、耐光性が優れているため、明るい光源を使用したり、偏光ビームスプリッタにより偏光変換して、光利用効率を向上させても、光によるクロストーク等の画質劣化を生じない。
また、各画素に設けられるスイッチング素子としては、正スタガ型又はコプラナー型のポリシリコンTFTであるとして説明したが、逆スタガ型のTFTやアモルファスシリコンTFT等の他の形式のTFTに対しても、各実施形態は有効である。
(電子機器)
次に、以上詳細に説明した液晶装置100を備えた電子機器の実施の形態について図16から図18を参照して説明する。
先ず図16に、このように液晶装置100を備えた電子機器の概略構成を示す。
図16において、電子機器は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008並びに電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置などのメモリ、画像信号を同調して出力する同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号などの表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、シリアル−パラレル変換回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKと共に駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。
尚、液晶装置100を構成するTFTアレイ基板の上に、駆動回路1004を搭載してもよく、これに加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
次に図17から図18に、このように構成された電子機器の具体例を各々示す。
図17において、電子機器の一例たる液晶プロジェクタ1100は、上述した駆動回路1004がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置100を含む液晶表示モジュールを3個用意し、各々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに各々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより各々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
本実施の形態では特に、遮光膜がTFTの下側にも設けられているため、当該液晶装置100からの投射光に基づく液晶プロジェクタ内の投射光学系による反射光、投射光が通過する際のTFTアレイ基板の表面からの反射光、他の液晶装置から出射した後にダイクロイックプリズム1112を突き抜けてくる投射光の一部等が、戻り光としてTFTアレイ基板の側から入射しても、画素電極のスイッチング用のTFT等のチャネル領域に対する遮光を十分に行うことができる。
このため、小型化に適したプリズムを投射光学系に用いても、各液晶装置のTFTアレイ基板とプリズムとの間において、戻り光防止用のARフィルムを貼り付けたり、偏光板にAR被膜処理を施したりすることが不要となるので、構成を小型且つ簡易化する上で大変有利である。
図18において、電子機器の他の例たるマルチメディア対応のラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)1200は、上述した液晶装置100がトップカバーケース内に設けられており、更にCPU、メモリ、モデム等を収容すると共にキーボード1202が組み込まれた本体1204を備えている。
以上図17から図18を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、携帯電話、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが図16に示した電子機器の例として挙げられる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、製造効率が高く高品位の画像表示が可能な液晶装置を備えた各種の電子機器を実現できる。