JP4400182B2 - 変異型エストロゲンレセプターαおよびその遺伝子 - Google Patents

変異型エストロゲンレセプターαおよびその遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、変異型エストロゲンレセプターαおよびその遺伝子に関する。
エストロゲンの様々な生理的作用はエストロゲンレセプターを介して引き起こされる。エストロゲンレセプターは、子宮、膣、輸卵管、肝臓、乳癌、骨等の組織中のエストロゲン標的細胞に存在し、リガンド応答性転写調節因子である。エストロゲンレセプターは、エストロゲンと結合すると活性化されて染色体上のエストロゲン応答配列に結合し、該応答配列の下流に在する標的遺伝子の転写を調節する。このようなエストロゲンとレセプターの活性化における異常は、種々の疾患の原因となる場合があることが知られており、エストロゲンレセプターに作用して抗エストロゲン活性を示す物質(以下、抗エストロゲン物質と記す)を、このような疾患の治療薬として使用する試みがなされている。例えば、抗エストロゲン物質であるタモキシフェンは乳がんの治療薬として使用されている。
GenBank Accession No.M12674 GenBank Accession No. M38651 GenBank Accession No. X61098 GenBank Accession No. Y00102 Metzger D et al., J. Biol. Chem., 270: 9535-9542(1995) Berry M. et al., EMBO J., 9: 2811-2818(1990)
ところが、エストロゲンレセプターを構成するアミノ酸のいずれかが置換されており、抗エストロゲン物質に対する反応性が通常と異なっていると、上記のような抗エストロゲン物質を用いる治療において、期待される効果が上がらない場合や好ましくない症状を併発する場合が生じる可能性が危惧される。そこで、抗エストロゲン物質に対する反応性に関わるアミノ酸置換が明らかになれば、そのようなアミノ酸置換の有無を調べることにより抗エストロゲン物質投与等の治療の有効性を治療開始前に判定することが可能となる。また、かかるアミノ酸置換を有するエストロゲンレセプターに対しても、所望の効果を示す物質を探索するための試験系を構築することも可能となる。
本発明者は、かかる状況の下、鋭意検討した結果、特定の位置のアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、ある種の抗エストロゲン物質に対して野生型エストロゲンレセプターαとは異なる反応性を示すエストロゲンレセプターα、および該レセプターをコードするDNAを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
1)下記の性質を有するエストロゲンレセプターα(以下、本発明レセプターと記す)。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
2)下記の性質を有するエストロゲンレセプターα。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号390で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸およびアミノ酸番号578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
3)下記の性質を有するエストロゲンレセプターα。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号303、390、396、415、494、531および578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
4)下記の性質を有するアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターα。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュア抗エストロゲンにより阻害される。
5)下記の性質を有するアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターα。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュア抗エストロゲンにより阻害される。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号390で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸およびアミノ酸番号578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
6)下記の性質を有するアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターα。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュア抗エストロゲンにより阻害される。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号303、390、396、415、494、531および578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
7)(b)記載の抗エストロゲン物質が、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェンまたはラロキシフェンである前項1〜6のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
8)配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンである前項1〜7のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
9)野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸がバリンである前項1〜8のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
10)エストロゲンレセプターαが、哺乳類動物由来のエストロゲンレセプターαである前項1〜9のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
11)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターα。
12)前項1〜11のいずれかに記載のエストロゲンレセプターαをコードする単離されたDNA(以下、本発明DNAと記す)。
13)DNAがcDNAである前項12記載のDNA。
14)プロモーターが機能可能な形で結合されてなる前項12または13のいずれかに記載のDNA。
15)前項12〜14のいずれかに記載のDNAを含有するベクター(以下、本発明ベクターと記す)。
16)宿主細胞内で複製可能なベクターに前項12〜14のいずれかに記載のDNAを組込むことを特徴とするベクターの製造方法。
17)前項12〜14のいずれかに記載のDNAまたは前項15記載のベクターが宿主細胞に導入されてなる形質転換体(以下、本発明形質転換体と記す)。
18)宿主細胞が動物細胞である前項17に記載の形質転換体。
19)宿主細胞が哺乳類動物細胞である前項17または18のいずれかに記載の形質転換体。
20)前項12〜14のいずれかに記載のDNAまたは前項15に記載のベクターを宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の製造方法。
21)前項17〜19のいずれかに記載の形質転換体を培養してエストロゲンレセプターαを産生させることを特徴とするエストロゲンレセプターαの製造方法。
22)前項1〜11のいずれかに記載のエストロゲンレセプターαと被験物質とを接触させる工程を含むリガンド・レセプターバインディングアッセイ。
23)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなるエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法(以下、本発明評価方法と記す)。
24)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
25)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号390で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸およびアミノ酸番号578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
26)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号303、390、396、415、494、531および578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
27)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュアアンチエストロゲンにより阻害される。
28)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュアアンチエストロゲンにより阻害される。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号390で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸およびアミノ酸番号578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
29)下記の性質を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
(a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなり、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
(b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を、活性化することができる。
(c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されず、ピュアアンチエストロゲンにより阻害される。
(d)アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号303、390、396、415、494、531および578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である。
30)(b)記載の抗エストロゲン物質が、タモキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェンまたはラロキシフェンである前項24〜29のいずれかに記載の方法。
31)配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンである前項23〜30のいずれかに記載の方法。
32)野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸が、バリンである前項23〜31のいずれかに記載の方法。
33)エストロゲンレセプターαが、哺乳類動物由来のエストロゲンレセプターαである前項23〜32のいずれかに記載の方法。
34)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターαを産生し、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程を含む被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法。
35)前項23〜34のいずれかに記載の方法により、形質転換体の産生するエストロゲンレセプターαに対する被験物質の活性調節能を評価する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質のスクリーニング方法。
36)試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べる工程を含むエストロゲンレセプターα遺伝子型の判定方法。
37)試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質による治療の有効性の判定方法。
38)試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含む抗エストロゲン物質による治療の有効性の判定方法。
39)試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸の塩基配列を決定する工程を含む前項29または30のいずれかに記載の方法。
40)試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸を電気泳動してその移動度を測定し、野生型エストロゲンレセプターαの当該領域をコードする核酸の移動度と前記増幅された核酸の移動度とが異なるか否かを調べる工程を含む前項37または38のいずれかに記載の方法。
41)野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする塩基配列からなるプローブと、試料中の核酸とがハイブリダイズするか否かを調べる工程を含む前項37または38のいずれかに記載の方法。
42)試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸を制限酵素により消化して該制限酵素の認識配列の有無を調べる工程を含む前項37または38のいずれかに記載の方法。
を提供するものである。
本発明により、特定の位置のアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、ある種の抗エストロゲン物質に対して野生型エストロゲンレセプターαとは異なる反応性を示すエストロゲンレセプターα、該レセプターをコードするDNA、前記特定位置のアミノ酸が野生型レセプターのアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなるエストロゲンレセプターαを利用する被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法、前記特定位置のアミノ酸置換の有無を調べるエストロゲンレセプターα遺伝子型の判定方法、前記アミノ酸置換の有無を調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質による治療の有効性の判定方法等が提供可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、
エストロゲンレセプターαの「アミノ酸配列の相同性に基づくアライメント」とは、種々の生物由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列間で同一、または類似性の高いアミノ酸配列を揃えるように、アミノ酸配列を並べて示した表を意味する。具体例として、表1に示すようなヒト、マウスおよびラット等由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のアライメントを挙げることができる。
Figure 0004400182
表1において、hERa.TXTは、ヒト由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No.M12674記載のアミノ酸配列のアミノ末端から400番目のアミノ酸バリンがグリシンに置換されたアミノ酸配列;配列表に配列番号1で示す。)、mER.TXTは、マウス由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. M38651)、ratER(X6).TXTは、ラット由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. X61098)、ratER(Y0).TXTは、ラット由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. Y00102)を、それぞれアミノ酸の1文字表記で示す。当該アライメントは、市販のソフトウェアであるGenetyx-Win SV/R ver. 4.0(ソフトウエア開発株式会社)を使用して作成された。*は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405のアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を示す。
「アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」とは、上記のような種々の生物由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列と並べて記載した場合に、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸と同じ位置にくるアミノ酸を意味する。具体的には例えば、「アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」としては、ヒト由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(配列番号1で示す)のアミノ末端から405番目のアミノ酸であるアラニン、マウス由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. M38651)のアミノ末端から409番目のアミノ酸であるアラニン、ラット由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. X61098)のアミノ末端から410番目のアミノ酸であるアラニン、ラット由来のエストロゲンレセプターαのアミノ酸配列(GenBank Accession No. Y00102)のアミノ末端から410番目のアミノ酸であるアラニン等を挙げることができる。
「野生型エストロゲンレセプターα」とは、同一種の生物由来の当該レセプターのアミノ酸配列において天然に最も高頻度にみられるアミノ酸配列からなるエストロゲンレセプターαを意味する。例えばヒト由来の野生型エストロゲンレセプターαとして、配列番号1で示されるアミノ酸配列(GenBank Accession No. M12674記載のアミノ酸配列のアミノ末端から400番目のアミノ酸バリンがグリシンに代わったアミノ酸配列)からなるエストロゲンレセプターαを挙げることができる。
「エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化」することができるかどうかは、例えば、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されてなるレポーター遺伝子を使用して、後述のレポーターアッセイ等の試験方法を行うことにより評価することができる。
「エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF1」および「エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2」とは、それぞれ、エストロゲンレセプターαの一部の領域であって、エストロゲンレセプターαの転写活性化能に関与する領域である[Metzger D et al., J. Biol. Chem., 270: 9535-9542(1995)等]。「野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質」は、例えば、Berry M. et al., EMBO J., 9: 2811-2818(1990)等の記載に準じたレポーターアッセイを行うことによりその特性を評価することができる。具体的には例えば、chicken embryo fibroblastの初代培養細胞[Solomon. J.J, Tissue Cult. Assoc. Manual, 1: 7-11(1975)等の記載に準じて調製することができる。]等の転写活性化領域AF1の活性化能の強い細胞に、野生型エストロゲンレセプターα遺伝子を発現させ、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されてなるレポーター遺伝子を導入する。得られた細胞(以下、AF1活性評価用細胞と記す)に被験物質を接触させ、後述のようにしてレポーターアッセイを行うと、「野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制し、転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質」は、転写を活性化しレポーター遺伝子の発現量を増大させる。一方、chicken embryo fibroblastの初代培養細胞等の細胞に、転写活性化領域AF1をコードする領域を欠損させた野生型エストロゲンレセプターα遺伝子を発現させ、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されてなるレポーター遺伝子を導入する。得られた細胞(以下、AF2活性評価用細胞と記す)に被験物質を接触させ、後述のようにしてレポーターアッセイを行うと、「野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質」は、転写活性化を誘導せずレポーター遺伝子の発現量を変化させない。このような特性を有する「野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質」の具体例としては、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン等を挙げることができる。
「ピュア抗エストロゲン」とは、タモキシフェンの有するような部分アゴニスト活性を含むエストロゲン活性を実質的に全く示さない物質を意味し、このような物質は前述のようなAF1活性評価用細胞またはAF2活性評価用細胞のいずれを用いてレポーターアッセイを行った場合においても、転写活性化を誘導せずレポーター遺伝子の発現量を変化させない。「ピュア抗エストロゲン」の具体例としては、ICI182780 [Wakeling, A.E. et al., Cancer Res.,512: 3867-3873(1991)]、ZM189154 [Dukes, M. et al., J. Endocrinol., 141: 335-341(1994)]等を挙げることができる。
本発明レセプターは、「当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換され」ているため、以下の(e)および(f)の性質を有する。
(e)タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン等の、野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
(f)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の下流に連結されてなる遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は前記(e)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
上記のようなアミノ酸の置換としては、具体的には例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアラニンのバリンへの置換を挙げることができる。
本発明レセプターとしては、ヒト、サル、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳類等の動物に由来するレセプターが好ましく、その具体的な例としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターαを挙げることができる。
本発明DNAは、上記のような本発明レセプターをコードする単離されたDNAである。本発明DNAとしては、天然から単離されたDNAであってもよいし、例えば、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって、天然から単離されたDNAに変異を導入することにより作出されたDNAであってもよい。
本発明DNAは、例えば、野生型エストロゲンレセプターαをコードするcDNAから以下のようにして調製することができる。
野生型エストロゲンレセプターαをコードするcDNAを取得するには、まず、GenBank等の遺伝子データベースや文献などに記載されている塩基配列に基づき、ヒト、サル、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳類等の動物由来の野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAをポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと記す)で増幅するためのプライマーを設計し、合成する。具体的には例えば、ヒト由来の野生型エストロゲンレセプターαをコードするcDNAを取得するためには、GenBank Accession No. M12674に記載されている塩基配列に基づいて設計されたプライマー、例えば、配列番号3で示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび、配列番号4で示される塩基配列からなるリバースプライマーを化学合成する。
一方、例えば、ヒト、サル、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳類等の動物の組織から、Sambrook, J., and Zrussell, D.W.;モレキュラー クローニング第3版、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(2001年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じてRNAを抽出し、一本鎖cDNAを合成する。具体的には、まず、ヒト、サル、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳類等の動物組織から全RNAを調製する。例えば肝臓等の組織を塩酸グアニジンやチオシアン酸グアニジン等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS-フェノール法、グアニジンチオシアネート/塩化セシウム-超遠心法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン社製)、TRIZOL試薬(インビトロジェン社製)がある。次に、得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをmRNAのポリA配列に結合させ、逆転写酵素、例えば、RnaseH- Superscript II Reverse Transcriptase (インビトロジェン社製)および添付されたバッファーとオリゴdTプライマーを用いて、42 ℃で1時間反応させ、次いで99 ℃で5分間加熱することにより、逆転写酵素を失活させる。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムバイオテク社製)等が挙げられる。
次に、前記のようにして合成された一本鎖cDNAを鋳型にして、前記のプライマーをそれぞれ200 nMになるように添加し、例えばLA Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)および該酵素に添付されたバッファーを用いてPCRを行う。かかるPCRとしては、例えば、PCR System9700(アプライドバイオシステムズ社製)等の市販のPCR用サーマルサイクラーを用いて、95 ℃、1分間、次いで68 ℃、3分間を1サイクルとして35サイクル程度行う。ここで、前記のようにして合成されたcDNAに替えて、クロンテック社製クイッククローンcDNA等の市販の各種動物由来のcDNAを用いてもよい。得られた反応液の一部を、アガロース(アガロースL:ニッポンジーン)を用いたゲル電気泳動に供する。電気泳動したゲル上にて既知配列から予想される大きさの野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAからなるバンドの存在を確認後、ゲルからそのバンド部分のDNAを回収する。回収されたDNAの塩基配列は、回収されたDNAとダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)等の市販の蛍光シークエンス用試薬とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700等の自動DNAシークエンサーを用いた塩基配列解析により回収されたDNAが目的とするDNAであることを確認することができる。このようにして取得された野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAを、大腸菌等において複製可能なベクターにクローニングする。具体的には例えば、回収されたDNAの約1μgをDNA Blunting Kit(宝酒造社製)等により、その末端を平滑化し、次にT4ポリヌクレオチドキナーゼを反応させてその末端をリン酸化する。該DNAをフェノール処理後、エタノール沈殿法により精製し、精製されたDNAを大腸菌等において複製可能なベクターに導入することにより、野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAを保有するベクターを得ることができる。
次いで、このようにして作製された野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAを保有するベクターのDNAを調製し、調製されたDNAを鋳型にして、Sambrook, J., and Russell, D.W.;モレキュラー クローニング第3版、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(2001年)等に記載された部位特異的変異導入法等に準じて、目的のアミノ酸置換を行うための塩基置換を野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAに導入する。具体的には例えば、Stratagene社製のQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit等が挙げられる。目的の塩基置換を行うために設計され合成された2種のプライマーを用いて、キットの説明書の記載に準じて部位特異的変異を導入する。ヒト由来野生型エストロゲンレセプターαのアミノ末端から405番目のアミノ酸であるアラニンをコードするコドンGCTを、バリンをコードするコドンGTTへ置換するためのプライマーとしては、例えば、配列番号5で示される塩基配列からなるフォワードプライマー、および配列番号6で示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用することができる。
得られたDNAの塩基配列を決定することにより、目的通りの塩基置換が行われたことを確認することができる。
このようにして取得された本発明DNAを、形質転換させる宿主細胞において利用可能なベクター、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自律複製可能なベクターであって、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクター(以下、基本ベクターと記す)に、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより本発明ベクターを構築することができる。
本発明ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には微生物である大腸菌を宿主細胞とする場合、例えばプラスミドpUC19(宝酒造社製)や、ファージミドpBluescript II(Stratagene社)等を挙げることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合は、プラスミドpGBT9、pGAD404、pACT2 (クロンテック社製)などを挙げることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合はpRc/RSV、pRc/CMV (インビトロジェン社)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV (アマシャムバイオテック社)、EBウイルスプラスミドpCEP4(インビトロジェン社)等のウイルス由来の自律複製起点(ori)を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルスなどを挙げることができ、昆虫細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスを挙げることができる。
自律複製起点を含むベクター、例えば、上記の酵母用プラスミドpACT2や、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV、エプスタイン-バールウイルスプラスミドpCEP4などを用いて本発明ベクターを構築すると、該ベクターは宿主細胞に導入された際にエピソームとして細胞内に保持される。
バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本発明DNAを組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いることができる。このようなトランスファーベクターの具体的例としては、pVL1392、pVL1393(インビトロジェン社)、pSFB5(ファーミンジェン社)などのプラスミドを挙げることができる。本発明DNAを前記のようなトランスファーベクターに挿入し、該トランスファーベクターとウイルスゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスゲノムとの間で相同組換えが起こり、本発明DNAがゲノム上に組み込まれた組換えウイルスを得ることができる。ウイルスゲノムとしては、バキュロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスなどのゲノムを用いることができる。
より具体的には、例えばバキュロウイルスに本発明DNAを組み込む場合、トランスファーベクターpVL1392、pVL1393等のマルチクローニング部位に本発明DNAを挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとバキュロウイルスのゲノムDNA(BaculoGold; ファーミンジェン社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等により導入し、該細胞を培養する。前記のBaculogold DNAを用いると、本発明DNAが挿入されたウイルスDNAを含有するウイルス粒子のみが宿主細胞の培養液中へ放出される。かかる組換えウイルス粒子を培養液から回収し、これをフェノール等で除蛋白処理することにより、本発明DNAを含有するウイルスDNAを得ることができる。さらに、該ウイルスのDNAを、昆虫細胞Sf21株などのウイルス粒子形成能を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等により導入し、該細胞を培養することにより、前記組換えウイルス粒子を増やすことができる。
一方、マウス白血病レトロウイルスなどの比較的小さなゲノムへは、トランスファーベクターを利用せずに、本発明DNAを直接組み込むこともできる。例えばウイルスベクタ-DC(X)(Eli Gilboa et al., BioTechniques,4: 504-512(1986))などは、該ベクター上のクローニング部位に本発明DNAを組み込むとよい。このようにして構築した組換えウイルスを、例えば、Ampli-GPE(J. Virol., 66: 3755(1992))などのパッケージング細胞に導入すれば、本発明DNAの挿入されたウイルスDNAを含有するウイルス粒子を得ることができる。
本発明DNAの上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本発明DNAを宿主細胞で発現させることの可能な本発明ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本発明DNAが導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に本発明DNAが発現されるように、該プロモーターと本発明DNAとを結合させることを意味する。使用されるプロモーターは、形質転換する宿主細胞内でプロモーター活性を示すものであって、例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期または後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等を挙げることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合にはアルコール脱水素酵素 (ADH)1遺伝子プロモーターなどを挙げることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本発明DNAとが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本発明DNAを挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本発明DNAを挿入し動物細胞へ導入すれば、本発明DNAを発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点 (ori)が組み込まれているため、ori(-)のSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えばCOS細胞等に該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として該プラスミドに組み込まれた本発明DNAを大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミドまたはその誘導体のADH1プロモーターの下流に本発明DNAを挿入すれば、本発明DNAを例えばCG1945株(クロンテック社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能な本発明ベクターが構築できる。
本発明DNAまたは本発明ベクターを宿主細胞に導入することにより、本発明形質転換体を取得することができる。本発明DNAまたは本発明ベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、形質転換される宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、微生物である大腸菌を宿主細胞とする場合は、モレキュラー・クローニング第3版(Sambrook, J., and Russell, D.W.、コールド・スプリング・ハーバー、2001年)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞または昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、またはリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法により前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合は、例えば塩化リチウム法を基にしたYeast Transformation Kit(クロンテック社製)などを用いて導入することができる。
尚、ウイルスをベクターに用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスDNAを宿主細胞に導入できるほか、ウイルスDNAを含有する組み換えウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによってもウイルスDNAを宿主細胞に導入することができる。
本発明形質転換体を選抜するには、例えば、本発明DNAまたは本発明ベクターを宿主細胞へ導入する際に、同時に選抜マーカー遺伝子を宿主細胞へ導入し、得られた細胞を、導入された選抜マーカー遺伝子の性質に応じた条件で培養するとよい。例えば、選抜マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本発明ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせなどを挙げることができる。また、選抜マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本発明ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。さらに、本発明DNAを宿主細胞で発現させることの可能な本発明ベクターを導入した場合には、エストロゲン結合活性に基づく検出方法を用いることもできる。
本発明DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を取得するには、例えば、本発明ベクターを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これを前述の方法で宿主細胞へ導入して該細胞を通常数週間培養し、導入された本発明ベクターにコードされる選抜マーカー遺伝子の形質発現を指標にして目的とする形質転換体を選抜すればよい。例えば、上記のような選抜薬剤に対する耐性付与遺伝子を選抜マーカー遺伝子として有する本発明ベクターを前述の方法で宿主細胞に導入し、該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上該細胞を継代培養して、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養することにより、本発明DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を選抜することができる。該形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、一過性に本発明DNAを導入した株と比較して、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
上述のようにして得られた本発明形質転換体を培養することにより本発明レセプターを産生させることができる。
例えば、本発明形質転換体が微生物である場合、該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養される。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(試験管振とう式培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等)などが可能である。培養温度は、微生物が生育する範囲で適宜変更できるが、例えば、約15 ℃〜約40 ℃の培養温度、pHが6.0〜8.0の培地において培養するのが一般的である。培養時間は、培養条件によって異なるが、通常約1〜5日間である。温度シフト型やイソプロピル β-D-ガラクトピラノシド (IPTG)誘導型等の誘導型のプロモーターを有する発現ベクターを用いた場合には誘導時間は1日以内が望ましく、通常数時間である。
また、上記形質転換体が哺乳類、昆虫類等の動物細胞である場合、該形質転換体は一般の培養細胞における通常の培養に使用される培地を用いて培養することができる。選抜薬剤を利用して当該形質転換体を作製した場合は、該選抜薬剤の存在下に培養するのが望ましい。哺乳類動物細胞の場合、例えば終濃度が10%となるよう牛胎児血清(Fetal Bovine Serum; FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル(DMEM)培地(日水製薬社製等)を用いて37 ℃、5% CO2存在下等の条件で数日ごとに新しい培養液に交換しながら培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば0.25%(v/v)程度のトリプシン/PBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、数倍に希釈して新しいシャーレに播種し培養を続ける。昆虫類細胞の場合も同様に、例えば10%(v/v) FBSおよび2%(w/v) Yeastlateを含むGrace培地等の昆虫細胞用培養液を用いて培養温度25℃から35℃で培養すればよい。この際、Sf21細胞などのシャーレからはがれやすい細胞の場合は、トリプシン溶液を用いずに、ピペッテイング等により分散させ継代培養を行うことができる。また、バキュロウイルス等のウイルスベクターを含む形質転換体の場合は、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前、例えばウイルス感染後72時間までとするのが好ましい。
本発明形質転換体により産生された本発明レセプター蛋白質の回収は、適宜、通常の単離、精製の方法を組み合わせて行えばよく、例えば、培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、集められた該細胞を通常のバッファー、例えば20mM HEPES (pH 7.0), 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 0.5 mM PMSFからなるバッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕し、破砕液を100,000 x gで数十分間から1時間程度超遠心分離し、上清画分を回収することにより、エストロゲンレセプターを含む画分を得ることができる。さらに、前記上清画分をイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、より精製されたエストロゲンレセプターを回収することもできる。この際、エストロゲン応答配列すなわちエストロゲンレセプターが結合する塩基配列を含む15 bpから200 bp程度の長さのオリゴヌクレオチドをプローブとしたDNAバインディングアッセイなどにより、本発明レセプターを含む画分を見分けることもできる。
このようにして製造された本発明レセプターは、例えば、被験物質の本発明レセプターに対する結合能や結合量などを評価するためのリガンド・レセプターバインディングアッセイ等に用いることができる。
本発明レセプターを用いたリガンド・レセプターバインディングアッセイは、該レセプターに対する化学物質の結合能の測定や結合量の定量のほか、結合特異性、結合力の分析などが可能な試験方法である。例えば、上述のようにして本発明形質転換体から回収された本発明レセプターに、標識されたリガンド(以下、標識リガンドと記す)が結合しているところへ、被験物質を共存させると、被験物質と標識リガンドとの競合から、両者のレセプターへの親和性に応じて、標識リガンドがレセプターから遊離し、レセプターに結合した標識リガンドの量が減少し、よってレセプターに結合した標識量が減少する。従って、遊離型の標識リガンドの標識量または結合型の標識リガンドの標識量をモニターすることにより、被験物質のレセプターへの結合能が間接的に分かる。
標識リガンドとしては、例えば、トリチウム標識された17β-エストラジオール(以下、E2と記す)等を用いることができる。標識リガンドの結合型/遊離型の分離はヒドロキシアパタイト法やグリセロール密度勾配超遠心法などで行うことができる。反応系は大きく3群に分けられる。一つの系は、本発明レセプターに標識リガンドが結合しているところへ溶媒のみが添加される群であり、被験物質の濃度がゼロの系に相当し、この系から得られる結合型の標識リガンドの標識量は、標識リガンドのエストロゲンレセプターに対する総結合量を示す。もう一つの系は、本発明レセプターに標識リガンドが結合しているところへ、例えば、標識されていないE2が、レセプターを十分飽和し標識リガンドが結合できなくなるだけの濃度(例えば10μM)となるよう添加された系であり、この系から得られる結合型の標識リガンドの標識量は、標識リガンドの本発明レセプターに対する非特異的な結合量と判断される。従って、本発明レセプターへの標識リガンドの特異的結合量は、総結合量からこの非特異的結合量を引いた値となる。3番目の系は、本発明レセプターに標識リガンドが結合しているところへ、被験物質が、例えば最終濃度10μM(この濃度は目的により任意に変更する。)となるよう添加された系である。被験物質が本発明レセプターへの結合能を有する場合は、この系から得られる結合型の標識リガンドの標識量は、上記のようにして求めた被験物質濃度がゼロの時の本発明レセプターへの標識リガンドの特異的結合量より小さくなる。このようにしてリガンド・レセプターバインディングアッセイを行うことにより、本発明レセプターに対する被験物質の結合能を調べることができ、被験物質が複数の物質を含む場合にはその中に本発明レセプターに親和性を示す物質が存在するかどうかを調べることもできる。さらに、本発明レセプターに対する被験物質の結合能をより詳細に評価するには、例えば前記の3番目の系における被験物質の添加濃度を変えて同様にアッセイを行い結合型の標識リガンドの標識量を測定する。該測定値に基づき、各アッセイにおける結合型と遊離型のリガンド量を算出して、例えばスキャッチャード解析を行うことにより、被験物質と本発明レセプターとの結合親和性、結合特異性、結合容量等を評価することができる。
本発明評価方法は、例えば、本発明DNAを用いて被験物質のレポーターアッセイを行うことにより実施することができる。エストロゲンレセプターα活性調節能としては、エストロゲンレセプターαに対するアゴニスト活性、アンタゴニスト活性等を挙げることができ、より具体的には例えばエストロゲン様活性、抗エストロゲン活性が挙げられる。
本発明評価方法において使用される「エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子」とは、具体的には、例えばエストロゲン応答配列を含むアフリカツメガエルのビテロジェニン遺伝子の転写制御領域等の下流にレポーター蛋白質をコードするDNAが連結されてなるレポーター遺伝子、またはエストロゲン応答配列の下流に転写開始に必要な塩基配列とレポーター蛋白質をコードするDNAとが連結されてなるレポーター遺伝子などであり、宿主細胞内でのエストロゲンレセプターの転写調節能をモニターするために利用される遺伝子である。このようなレポーター遺伝子作製に用いられる「レポーター蛋白質をコードするDNA」としては、ルシフェラーゼをコードするDNA、分泌型アルカリフォスファターゼをコードするDNA、β-ガラクトシダーゼをコードするDNA、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードするDNA、成長ホルモンをコードするDNAなどを利用することができ、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質をコードするDNAが好ましい。
本発明評価方法に使用される形質転換体を取得するには、例えば、本発明DNAと、上記レポーター遺伝子とを、例えばエストロゲンレセプター非内在性宿主細胞、具体的には例えばHeLa細胞、CV-1細胞、Hepa1細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、COS1細胞、BF-2細胞、CHH-1細胞等に導入し形質転換体を作製する。ここで、本発明DNAは、例えば、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合させて基本ベクターに組み込み、前記のような細胞に導入するとよい。上記レポーター遺伝子も、基本ベクターに組み込んで用いるとよい。例えば、本発明DNAが組み込まれたベクター、上記レポーター遺伝子が組み込まれたベクター、および選抜マーカー遺伝子を含有するベクターとを同時に宿主細胞に導入し、選抜マーカー遺伝子の発現を指標にして形質転換体を選抜することにより、上記レポーター遺伝子と本発明DNAとが宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を取得する。該形質転換体は凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、これをいったん取得すると、アッセイを行う毎に、これらの遺伝子を宿主細胞に導入して新たな形質転換体を取得する必要がなく、また、形質転換体の性能も一定に保つことができることから、例えば自動化されたロボットによる大規模スクリーニングを実施する際にも有用である。
上述のように作製された形質転換体を、例えば1日から数日間培養する間に、被験物質を培地中に加えて前記形質転換体と接触させ、該形質転換体における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する。該形質転換体が産生する本発明レセプターが被験物質の結合により活性化された場合は、レポーター遺伝子の転写が促進され、レポーター遺伝子にコードされたレポーター蛋白質が形質転換体の細胞内などに蓄積されるかもしくは培地中に分泌される。この蛋白質の量を測定することにより、該形質転換体細胞あたりのレポーター遺伝子の発現量を測定する。具体的には、例えば、レポーター蛋白質としてルシフェラーゼを用いた場合は、細胞粗抽出物にルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを加えると、細胞抽出物中のルシフェラーゼ量に比例した強度で発光する。従って、この発光強度をルミノメーターなどの測定装置で測定することにより、ルシフェラーゼの量、ひいては、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現量を知ることができる。同様にして、形質転換体に被験物質を接触させない条件下におけるレポーター遺伝子の発現量を測定し、該発現量と、被験物質を接触させた条件下におけるレポーター遺伝子発現量とを比較する。形質転換体に被験物質を接触させない条件下におけるレポーター遺伝子の発現量と比較して、被験物質を接触させた条件下におけるレポーター遺伝子の発現量が高ければ、この被験物質は、本発明レセプターに対するアゴニスト活性、すなわち、該レセプターの活性化能を有すると評価することができる。また、例えば、上記の形質転換体にE2等のエストロゲンを接触させた条件下、および、該エストロゲンと被験物質とを同時に接触させた条件下にそれぞれ上記と同様の方法でレポーター遺伝子の発現量を測定する。形質転換体にエストロゲンを接触させた条件下におけるレポーター遺伝子の発現量と比較して、エストロゲンと被験物質とを接触させた条件下におけるレポーター遺伝子の発現量が低ければ、この被験物質は本発明レセプターに対するアンタゴニスト活性、すなわち、該レセプターに対する抗エストロゲン活性を有すると評価することができる。このようにして、例えば、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子と本発明DNAとが宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いてレポーターアッセイを行い、被験物質の抗エストロゲン活性を評価することにより、本発明レセプターに対して抗エストロゲン活性を示す物質を選び出すことができる。
上記のような本発明評価方法によれば、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン等の、野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するがAF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質であって、本発明レセプターに対してアゴニスト活性を示し抗エストロゲン活性を示さない物質を見出すことができる。また、反対に、かかる評価方法により、本発明レセプターに対してアゴニスト活性を示さず、かつ、抗エストロゲン活性を示す物質を選び出すこともできることから、該評価方法に基づく被験物質のスクリーニングは、エストロゲン活性を実質的に全く示さないピュア抗エストロゲンの開発に有用である。
ヒト等の動物個体の細胞で産生されるエストロゲンレセプターαが本発明レセプターであるか否かを調べるには、例えば、該個体の有するエストロゲンレセプターα遺伝子が、本発明DNAであるか否かを調べるとよい。
まず、ヒト等の動物個体から試料を採取し、該試料からゲノムDNAまたはcDNAを調製する。例えば、毛根、末梢血、口腔上皮細胞などのゲノムDNAの抽出が可能な細胞組織の試料から、例えば村松正寶、”ラボマニュアル遺伝子工学”(丸善1988)やTAKARA PCR Technical news No. 2, 宝酒造(19911)等に記載される通常の方法に準じてゲノムDNA調製することができる。具体的には例えば、試料が毛髪の場合は、毛根のついた毛髪1本を滅菌水、エタノールで洗浄後、これにBCL-Buffer[10 mM Tris-Cl(pH7.5), 5 mM MgCl2, 0.32 M Sucrose, 1%(v/v) Triton X-100]200μlを加え、さらにプロテイナーゼKを最終濃度100μl/ml 、SDSを最終濃度0.5%(w/v)になるようにそれぞれ加え混合する。この混合物を70℃で1時間保温した後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が末梢血の場合は、DNA-Extraction Kit (Stratagene社製)等を用いて該試料を処理することによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が手術あるいは生検により得られた組織サンプルである場合は、該試料が新鮮なうちに、例えばTRIZOL試薬(インビトロジェン社製)等を用いてRNAを調製し、調製されたRNAを鋳型にして逆転写酵素によりcDNAを合成すれば、合成されたcDNAをゲノムDNAの替わりに検査に使用することができる。
このようにして調製されたゲノムDNAまたはcDNA中に存在するエストロゲンレセプターα遺伝子が、本発明DNAであるか否かを調べるには、例えば、該エストロゲンレセプターα遺伝子にコードされるエストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうちの前記アミノ酸と相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べるとよく、そのための方法としては、例えば、前記の「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を試料中の核酸を鋳型として増幅し、増幅された核酸の塩基配列を決定する方法を挙げることができる。
「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸は、例えばPCRにより増幅することができる。
かかるPCRに使用することのできるプライマーとしては、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸をPCRにより増幅する能力を有し、GC含量が約30%以上約70%以下、好ましくは約35%以上約60%以下であり、かつ8塩基〜50塩基、好ましくは約15塩基〜約40塩基からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。より具体的には、例えば、フォワードプライマー用オリゴヌクレオチドとして、配列番号7〜11のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを挙げることができ、リバースプライマー用オリゴヌクレオチドとして、配列番号12〜16のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。
上記のようなオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行う場合、一般にはフォワード用とリバース用の二種類のオリゴヌクレオチドを組み合わせて用いる。これらのオリゴヌクレオチドは、例えばβ-シアノエチルホスホアミダイト法やチオホスファイト法によって化学合成することができる。
PCRは、例えばSaiki, R.K. et al., Science, 230: 1350-1354 (1985)等に記載の方法に準じて行うことができる。例えば、プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、4種類の塩基(dATP, dTTP, dGTP, dCTP)、約1.5 mMから約3.0 mMの塩化マグネシウム等及びゲノムDNAを含有する増幅用緩衝液を調製する。調製された増幅用緩衝液を用いて、例えば以下の条件による3工程の増幅サイクルを繰返して行う。まず変性工程として、たとえば、約90℃から約95℃、好ましくは約94 ℃から約95 ℃で、1分間から約5分間、好ましくは約1分間から約2分間の保温が行われる。次にプライマーのアニーリング工程として、たとえば、約30 ℃から70 ℃、好ましくは40 ℃から60 ℃で、約3秒間から約3分間、好ましくは約5秒間から約2分間の保温が行われる。さらにDNAポリメラーゼによる伸長工程として、たとえば、約70℃から約75℃、好ましくは約72 ℃から約74 ℃で、約15秒間から約5分間、好ましくは約30秒間から約4分間の保温が行われる。この3工程からなる増幅サイクルを、約20回から約50回、好ましくは約25回から約40回行う。
このようなPCRで増幅された核酸をアガロース電気泳動等に供して回収した後、回収された核酸についてダイレクトシークエンス[BioTechniques,7,494(1989)]を行うことにより該DNAの塩基配列を確認することができる。塩基配列は、Maxam Gilbert法(例えば、Maxam, A.M and Gilbert, W., Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 74; 560, 1977)やSanger法(例えばSanger, F. and Coulson, A.R., J.Mol.Biol.,94; 441, 1975., Sanger, F., Nicklen, S. and Coulson, A.R., Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 74; 5463, 1977)に準じて解析すればよい。アプライドバイオシステムズ社製モデル3700等の自動DNAシークエンサーを用いる場合には、対応するDNAシークエンスキット、例えばアプライドバイオシステムズ社製のBigDye terminator cycle sequencing ready reaction kit等を用いることができる。
試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べるための方法としては、例えば、前記の「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を試料中の核酸を鋳型として増幅し、増幅された核酸を電気泳動して該核酸の移動度を測定し、野生型エストロゲンレセプターαの当該領域をコードする核酸の移動度と前記核酸の移動度とが異なるか否かを調べる方法をあげることもできる。
例えばヒト試料中のエストロゲンレセプターα遺伝子について調べる場合には、まず、例えば前記の、配列番号7から配列番号16に示されるオリゴヌクレオチドの末端をFITCなどの蛍光物質で標識した後、これをプライマーとして前述のようにPCRを行い、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を増幅する。また、野生型エストロゲンレセプターαの相当する領域をコードする核酸も同様にして増幅する。
増幅された核酸を、例えばHum. Mutation, 2; 338に記載されるSSCP(single strand conformation polymorphism)法などに準じて電気泳動する。具体的には、蛍光標識されたプライマーを用いてPCRを行い、増幅された核酸を加熱変性して一本鎖とし、非変性ポリアクリルアミド電気泳動に供して一本鎖を各々分離する。電気泳動に用いられる緩衝液としては、トリス-リン酸系(pH 7.5-8.0)、トリス-酢酸系(pH 7.5-8.0)、トリス-ホウ酸系(pH 7.5-8.3)などが挙げられ、好ましくはトリス−ホウ酸系をあげることができる。また必要に応じて、ゲルにグリセロール等を添加する。電気泳動の条件としては、例えば、定電力30W-40W、室温(約20 ℃から約25 ℃)または4℃にて、4〜8時間泳動する条件を挙げることができる。次いで、蛍光を読み取ることができるスキャナーにより、電気泳動後のゲル中の蛍光シグナルを検出し、試料由来の「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸と、野生型エストロゲンレセプターαの当該領域をコードする核酸の移動度を比較する。これらの核酸の移動度が異なる場合には、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする塩基配列に、野生型エストロゲンレセプターαの当該領域をコードする塩基配列とは異なる塩基配列が含まれると判定することができる。さらに、この移動度の異なる核酸を含むゲルからそこに含まれる核酸を滅菌水中に抽出し、これを鋳型にしてPCRにより該核酸を増幅し、増幅産物をTA クローニングシステムによりpGEM-T Easy vector (インビトロジェン社製)等のベクターにクローニング後、クローニングされた該核酸の塩基配列を確認することができ、野生型エストロゲンレセプターαをコードする塩基配列とは異なる塩基配列を特定することができる。
試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べるための方法としては、例えば、前記の「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸と、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうち、前記アミノ酸と相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする塩基配列からなるプローブとがハイブリダイズするか否かを調べる方法を挙げることもできる。
野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする塩基配列からなるプローブとしては、かかる塩基配列からなりGC含量が約30%以上約60%以下のオリゴヌクレオチドを挙げることができる。ハイブリダイゼーションによる検出に適するようにオリゴヌクレオチドを構成する塩基数として15個以上40個以下が好ましい。具体的には、例えば、下記の塩基配列群から選ばれる塩基配列からなるオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。ヒト由来野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアラニンを含む領域をコードする塩基配列からなるプローブとしては、配列番号17〜21のいずれかで示される塩基配列からなるプローブなどが挙げられる。
上記のようなオリゴヌクレオチドは、一般的に、オリゴヌクレオチドを構成する塩基数が約100個以下の場合には、例えばβ-シアノエチルホスホアミダイト法やチオホスファイト法により化学合成することができる。
上述のようにしてヒト等の動物個体の試料から調製されたゲノムDNAまたはcDNA中に存在する「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸は、必要に応じて例えば上記のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより増幅した後、配列番号17〜21のいずれかで示される塩基配列のプローブと混合してハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションは、通常のドットブロットハイブリダイゼーション法や、ミスマッチハイブリダイゼーション部位に結合する酵素であるTaq MutSという酵素を利用したミスマッチ検出方法[Biswas, I., and Hsieh, P., J.Biol.Chem., 271; 5040-5048(1996)やNippon gene information 1999 No.125, ニッポンジーン社等に記載がある]などに準じて行うことができる。
ドットブロットハイブリダイゼーション法の具体的な手順としては、例えば、まず、ヒト等の動物個体の試料から調製されたゲノムDNAもしくはcDNA、またはPCRにより増幅された「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を、例えば、90 ℃から100 ℃で、3〜5分間保温した後、ナイロンフィルター[Hybond N(アマシャムバイオテック社製)等]にスポットし、スポットされたフィルターを濾紙上で乾燥後、これに紫外線照射することにより核酸をフィルターに固定する。次いで、得られたDNA固定フィルターと上記のプローブとを、例えば、40〜50℃で、10〜20時間インキュベートすることによりハイブリダイズさせ、通常の方法に準じてプローブを含むハイブリッドを検出する。プローブとして32P等の放射性同位元素で標識した放射性プローブを用いる場合は、ハイブリダイズ後のフィルターをX線フィルムに感光させることによりプローブを含むハイブリッドを検出することができる。ビオチン化ヌクレオチドで標識した非放射性プローブを用いる場合は、ストレプトアビジンを介してビオチン化アルカリ性フォスファターゼ等により該プローブを含むハイブリッドを酵素標識し、酵素反応による基質の呈色あるいは発光を検出することによりプローブを含むハイブリッドを検出することができる。また、アルカリ性フォスファターゼあるいはペルオキシダーゼ等の酵素でスぺーサーを介して直接標識した非放射性プローブを用いることもできる。プローブを含むハイブリッドが検出されない場合には、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸に、使用したプローブの塩基配列と異なる塩基配列が含まれると判定することができる。
ミスマッチハイブリダイゼーション部位に結合する酵素であるTaq MutSという酵素を利用したミスマッチ検出方法を利用する場合には、熱(0〜75 ℃)に対して安定で、高い温度でも活性を維持してDNAのミスマッチ塩基対を認識して結合可能なTaq MutSの結合特性を利用して、未変性ポリアクリルアミドゲルを利用したゲルシフトアッセイまたはナイロンフィルターやニトロセルロースフィルターなどの固相上でのドットブロッテイング法等にてミスマッチ塩基対を検出することができる。ミスマッチが検出された場合には、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸に、使用したプローブの塩基配列と異なる塩基配列が含まれると判定することができる。
試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べるための方法としては、例えば、前記の「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を試料中の遺伝子から増幅し、制限酵素により消化して、遺伝子変異由来の制限酵素部位の消失あるいは発現を検出することにより該制限酵素の認識配列の有無を調べる方法をあげることもできる。
例えばヒト試料中のエストロゲンレセプターα遺伝子について調べる場合には、まず、例えば前記の、配列番号7〜16のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして前述のようにPCRを行い、「配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸」を含む領域をコードする核酸を増幅する。また、野生型エストロゲンレセプターαの相当する領域をコードする核酸も同様にして増幅する。増幅された両核酸中の遺伝子変異由来の配列の差異を認識する制限酵素を用いて両核酸を定法に従い切断する。これら制限酵素処理後の核酸断片を、アガロースやポリアクリルアミド等を用いたゲル電気泳動に供すれば両核酸消化物のフラグメントパターンの違いにより、野生型エストロゲンレセプターαをコードする塩基配列とは異なる塩基配列を特定することができる。
上述のようにして行うことができるヒト等の動物個体に由来する試料中のエストロゲンレセプターα遺伝子型の判定は、該個体の有するエストロゲンレセプターαの、抗エストロゲン物質等のエストロゲン活性調節物質に対する反応性を予測し、該物質投与等の治療の有効性を治療開始前に予測するうえで非常に有用である。また、抗エストロゲン物質等のエストロゲン活性調節物質投与期間中、または投与後に、特定組織の該レセプターの遺伝子型の判定を行うことにより、投与物質による治療の継続、有効性を判断するにも有用である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
実施例1(ヒト野生型エストロゲンレセプターαをコードするDNAの発現プラスミドの作製)
まず、ヒト野生型エストロゲンレセプターαをコードするcDNAを取得した。配列番号3で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを化学合成した。ヒト肝臓由来cDNA(クイッククローンcDNA#7113-1;クロンテック社製)10 ngを鋳型にし、配列番号3で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをそれぞれ10 pmol添加し、LA Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)および該酵素に添付されたバッファーを用いてPCRを行った。該PCRにおいて反応液の保温は、PCR System9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95 ℃、1分間、68 ℃、3分間を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次に、反応液全量をアガロース(Agarose S:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供した。約1.8 kbのDNAが増幅されていることを確認した後、該DNAを回収した。回収されたDNAの一部とダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、これを自動DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)により塩基配列解析を行い、回収されたDNAが、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを確認した。
次に、上記のようにして取得されたDNA約100 ngを鋳型にして、配列番号22で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとを用いて上記と同様の条件にてPCRを行い、コザックのコンセンサス配列の直後にヒト野生型エストロゲンレセプターαをコードする塩基配列が連結されてなる塩基配列を有するDNAを増幅した。得られたDNAを低融点アガロースゲル電気泳動法により分離し、約1.8 kbのDNAを回収した。その約1μgを、DNA Blunting Kit(宝酒造社製)により、その末端を平滑化し、これにT4ポリヌクレオチドキナーゼを反応させてその末端をリン酸化した。得られたDNAをフェノール処理後、エタノール沈殿法により精製し、その全量を下記の発現プラスミド作製用のインサートDNAとして用いた。プラスミドpRc/RSV(インビトロジェン社製)を制限酵素Hind IIIで消化した後、フェノール処理、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収されたDNAをDNA Blunting Kit(宝酒造社製)で処理して末端を平滑化し、低融点アガロース(ニッポンジーン社製;Agarose L)を用いたアガロースゲル電気泳動に供し、ゲルからバンド部分のDNAを回収した。回収されたDNA約100 ngにBacterial alkaline phosphatase(BAP)を加えて65 ℃で1時間保温した後、上記のインサートDNA全量とを混合し、T4リガーゼを添加して連結反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換し、アンピシリン耐性を示したコロニーからプラスミドDNAを調製し、その塩基配列を自動DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いてダイターミネーター法により決定した。得られた塩基配列を、前述のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致していることが確認されたプラスミドを選択し、pRc/RSV-hERαコザックと名づけた。
実施例2(本発明レセプターをコードするDNAの発現プラスミドの作製)
(1)変異導入したプラスミドの作製
実施例1で作製されたプラスミドpRc/RSV-hERαコザックを鋳型にし、塩基置換用の合成オリゴヌクレオチドとQuickchange Site-directed mutagenesis Kit (Stratagene社製)を用いて変異を導入した。まず、配列番号5で示される塩基配列からなる上鎖用オリゴヌクレオチド、および配列番号6で示される塩基配列からなる下鎖用オリゴヌクレオチドを化学合成し、キットの説明書の記載に準じて行った。PCRは、Stratagene社製のPfu Turbo DNAポリメラーゼを使用し、各々200 μMの4種類の塩基(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)を添加して、前記酵素に添付された専用バッファー中で、pRc/RSV-hERαコザックを鋳型にして行い、95 ℃、30秒間、55 ℃、1 分間、68 ℃、10分間を1サイクルとしてこれを16サイクル行う条件で実施した。次に、PCR反応液の一部を取り、制限酵素Dpn I(Stratagene社製)で37℃にて1 時間消化した。該反応液を用いて大腸菌XLI-Blueコンピテントセル(Stratagene社製)を形質転換した。アンピシリン耐性を示した大腸菌のコロニー数個からそれぞれの保有するプラスミドDNAを精製し、これらの塩基配列を解析して、配列番号1で示されるアミノ酸配列においてアミノ酸番号405で示されるアラニンをコードするコドン(GCT)が、バリンをコードするコドン(GTT)に置換される変異の導入を確認した。前記の変異の導入が確認されたプラスミドをpRc/RSV-hERαA405Vコザックと名づけた。
実施例3(レポーター遺伝子と選抜マーカー遺伝子とを含むプラスミドの作製)
エストロゲン応答配列を含むアフリカツメガエル由来ビテロゲニン遺伝子上流の塩基配列(配列番号23で示される塩基配列)からなるオリゴヌクレオチドおよび該塩基配列と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをDNA合成機にて合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA(該DNAを、以下、ERE DNAと記す)とした後、T4リガーゼを作用させてERE DNAをタンデムに結合させ、これにT4ポリヌクレオチドキナーゼを作用させてその両末端をリン酸化した。
また、マウスメタロチオネインI遺伝子のTATAボックス近傍の塩基配列とリーダー配列に由来する塩基配列からなる2本のオリゴヌクレオチド、すなわち配列番号24で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号25で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをアニーリングさせて2本鎖DNAとし、これにT4ポリヌクレオチドキナーゼを作用させてその両末端をリン酸化した(該DNAを、以下、TATA DNAと記す)。一方、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドpGL3(プロメガ社製)を制限酵素Bgl IIおよびHind IIIで消化した後、これに細菌由来アルカリフォスファタ-ゼ (BAP)を加えて65℃で1時間保温した。次いで、該保温液を低融点アガロース(Agarose L;ニッポンジーン社製)を用いた電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。約100 ngの該DNAと、前記のTATA DNA1μgとを混合し、T4リガーゼで結合させることによりプラスミドpGL3-TATAを作製した。
次に、pGL3-TATAを制限酵素Sma Iで消化した後、BAPを加えて65 ℃で1時間保温した。該保温液を低融点アガロースゲル電気泳動に供し、バンド部分のゲルからDNAを回収した。該DNA約100 ngと、上記のタンデムに結合させ末端をリン酸化したERE DNA約1μgとを混合してT4リガーゼを反応させた後、該反応液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換した。アンピシリン耐性を示した大腸菌のコロニー数個からそれぞれの保有するプラスミドのDNAを精製し、これらを制限酵素Kpn IおよびXho Iで消化して該消化液をアガロースゲル電気泳動で分析した。pGL3-TATAのSma I部位にERE DNAがタンデムに5コピー導入された構造を有するプラスミドを選択し、これをプラスミドpGL3-TATA-EREx5と名づけた。
次いで、プラスミドpUCSV-BSD(フナコシ社)をBamH Iで消化し、ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットをコードするDNAを調製した。該DNAと、前記プラスミドpGL3-TATA-EREx5をBamH Iで消化しBAP処理して得られたDNAとを混合して、T4リガーゼを反応させた後、該反応液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換した。アンピシリン耐性を示した大腸菌からプラスミドDNAを調製し、それぞれを制限酵素Bam HIで消化して該消化液をアガロースゲル電気泳動で分析した。ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットがBamH I部位に導入された構造を有するプラスミドを選択し、プラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDと名づけた。
実施例4(レポーターアッセイ用安定形質転換細胞の作製)
ヒト由来のHeLa細胞に、前述のように作製されたプラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNAを直鎖化して導入し、安定形質転換細胞を作製した。
まず、プラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNAをSal Iで消化した。
一方、約5x105の細胞のHeLa細胞を、10% FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37 ℃にて5% CO2存在下に、直径約10 cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて24時間培養した。該細胞に、リポフェクトアミン(インビトロジェン社製)を用いたリポフェクション法により、上記の直鎖化されたプラスミドpGL3-TATA-EREx5-BSDのDNAを導入した。リポフェクション法の条件はリポフェクトアミンに添付されたマニュアルの記載に従って、処理時間は5時間、直鎖化されたプラスミドDNAの総量は7μg/シャーレとし、リポフェクトアミン量は21μl/シャーレとした。リポフェクション処理後、培地を10% FBSを含むDMEM培地に交換して約36時間培養した。次いで、該細胞をトリプシン処理によりシャーレから剥がして回収し、終濃度16μg/mlのブラストサイジンSが添加された培地の入った培養容器に移し、培地を3日から4日ごとに新しい培地(ブラストサイジンSを含む)に交換しながら約1ヶ月間培養した。出現した直径1 mmから数mmの細胞コロニーを、あらかじめ培地を分注しておいた96穴ビュープレート(ベルトールド社製)にコロニーごと移し、さらに培養した。細胞がウェルの底面の半分以上を占める程度までに増殖したら(移植から約5日後)、トリプシン処理により細胞を剥がして回収し、2等分して2枚の新しい96穴ビュープレートに播種した。1枚はそのまま継代と培養を続け、マスタープレートとした。残り1枚は二日間培養した後、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(-)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり20μlずつ加えて室温に30分間放置した。該プレートを、酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96p(ベルトールド社製)にそれぞれセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注して、ルシフェラーゼ活性を測定した。この中で高いルシフェラーゼ活性を示す細胞を10個選択して保存した。さらに前記細胞をそれぞれ10 cmプレート上で拡大培養した。この10種の細胞に実施例1で作製した野生型エストロゲンレセプターα発現プラスミドをリポフェクトアミン(インビトロジェン社製)を用いたリポフェクション法で、添付されたマニュアルの記載に従って導入した。得られた細胞に、DMSOに溶解させたE2を培地中の終濃度が10 nMとなるように加えて2日間培養し、前述した方法に従いルシフェラーゼ活性を測定した。E2を添加した系で最も高い活性誘導を示した細胞に対応する野生型エストロゲンレセプターα発現プラスミド導入前の細胞を、レポーター遺伝子の導入されたレポーターアッセイ用安定形質転換細胞として選択した。
実施例5(安定形質転換細胞を用いたレポーターアッセイ)
実施例4で選択された安定形質転換細胞を、10 cmプレートに約2 x 106細胞を播種し、チャコールデキストラン処理済みFBSが10%となるよう添加されたE-MEM培地(以下、FBS含有E-MEM培地と記す)で、5% CO2条件下37 ℃にて1日間培養を行った。該細胞に、リポフェクトアミン(Invitrogen社製)を用いてそのプロトコールに従い、7μgのヒト野生型エストロゲンレセプターα遺伝子発現プラスミドpRc/RSV-hERαコザックまたは7μgのヒト変異型エストロゲンレセプターα遺伝子発現プラスミドpRc/RSV-hERαA405Vコザックを導入した。37 ℃にて16時間培養した後、培地を交換しさらに3時間培養した。その後、細胞を集めてFBS含有E-MEM培地に懸濁して均一化し、予めDMSOで溶解した様々な濃度の抗エストロゲン様化合物を添加した(DMSO終濃度 0.1%)96穴プレートに播種した。また、同様に様々な濃度の抗エストロゲン様化合物と10 nMのエストラジオールとを同時に添加した(DMSO終濃度0.1%)96穴プレートに上記細胞を播種した。細胞が播種された96穴プレートは37 ℃にて約40時間培養した後、5倍に希釈した細胞溶解剤PGC50(ニッポンジーン社製)を50μl/wellずつ加えて、時々軽くゆすりながら室温にて30分間放置して細胞を溶解させた。このように調製された細胞溶解液を10μlずつ96穴白色サンプルプレート(ベルトールド社製)に採取し、基質自動インジェクター付きのルミノメーターLB96p(ベルトールド社製)で50μl/wellずつ酵素基質液PGL100(ニッポンジーン社製)を添加し、直ちに発光量を5秒間測定した。
野生型エストロゲンレセプターαもしくは本発明レセプターに対する4−ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェンまたはZM189154のエストロゲン様作用の測定結果をそれぞれ図1〜図3に示した。
また、野生型エストロゲンレセプターαもしくは本発明レセプターに対する4−ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェンまたはZM189154の抗エストロゲン作用の測定結果をそれぞれ図4〜図6に示した。
実施例6(増幅用オリゴヌクレオチドの作製)
ヒト由来変異型エストロゲンレセプターをコードするDNAの変異部位の塩基配列を含む核酸を検出するために、ヒト由来野生型エストロゲンレセプターのアミノ末端から405番目のバリンをコードする部位を核酸の増幅範囲内に含め、そしてGC含量が30%以上70%以下で、かつ約20塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドを設計する。設計された塩基配列に基づきオリゴヌクレオチドを作製する。
実施例7(ヒト組織を材料にした遺伝子診断)
ヒト肝臓凍結サンプル100 mg分を[4 M グアニジンチオシアネート, 0.1 M Tris-Cl(pH 7.5) 1% β-メルカプトエタノール]5 mlに加え、ポリトロンホモジナイザーで粉砕する。これをあらかじめ超遠心用チューブに入れておいた25 mlの5.7 M 塩化セシウム溶液に重層し、90,000 x gで24時間密度勾配超遠心にてRNAを分離する。このRNAを回収し、70%エタノールでリンス後、室温で風乾する。これを滅菌水10μlに溶解し、濃度測定する。このRNA 1〜5μgを鋳型にして、オリゴdTプライマー(アマシャムバイオテック社製)1μgを逆転写合成の際のプライマーとして用い、Superscript II(インビトロジェン社製)により添付バッファー中で42 ℃で1時間反応させることによりcDNAを合成する。このようにして得たcDNA溶液の50分の1を鋳型にして、前記、配列番号10と配列番号16で示される配列を持ったPCR用オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応を行う。PCRは、Stratagene社製のPfu DNAポリメラーゼを使用し、200μMの4種類の各々の塩基(dATP, dTTP, dGTP, dCTP)および酵素に添付された専用バッファー中で、94 ℃、1分間、55 ℃、30秒間、72 ℃、1分間を1サイクルとして35サイクル実施する。PCR法により得られたDNA断片を、1%のアガロース(Agarose S、ニッポンジーン社製)を含むゲル中で電気始動して分離し、回収する。この全量を鋳型にして、前記配列番号11で示される配列を持ったオリゴヌクレオチド5 pMをシークエンスプライマーとして用いダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)によりダイレクトシークエンス用のサンプルを調製する。これを、自動DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いた塩基配列解析に供し塩基配列を決定する。
実施例8(検体中に含まれるゲノムDNAの抽出)
検体中に含まれるゲノムDNAは、TAKARA PCR Technical news No. 2.宝酒造(1991)等に記載される通常の方法によって調製する。具体的には、1本の毛根のついた毛髪をプラスチック製チューブに移し、BCL buffer[10 mM Tris-Cl(pH 7.5), 5 mM MgCl2, 0.32 M sucrose, 1%(v/v) Triton X-100] を200μl加え、さらに最終濃度100μg/mlのプロテイナーゼK溶液および最終濃度0.5%(w/v)のSDSをそれぞれ混合する。この混合物を70℃にて1時間保温した後、等量のフェノール/クロロホルムを加え、激しく振とう後、遠心分離(15,000 rpm, 5分間, 4℃)する。水層を回収し、もう一度フェノール抽出を行う。回収された水層に等量のクロロホルムを加え、激しく振とう後遠心分離により水層を回収する。これに500μlの100%エタノールを加え、-80 ℃にて20分間保温した後遠心分離する。得られたペレットを乾燥した後、滅菌水に溶解させる。
この他、ゲノムDNAの採取可能な細胞として末梢血を用いる。10 mlの血液を採取し、DNA Extraction kit(Stratagene社製)を用いて、キット添付の説明書に従いゲノムDNAを抽出する。
実施例9(PCR−SSCP法による塩基置換の解析)
まず、配列番号7〜11のいずれかに示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからフォワードプライマーを1種、配列番号12〜16のいずれかに示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからリバースプライマーを1種選択し、DNA合成機にて化学合成する。この際、5'末端を蛍光物質FITCで修飾しておく。次に上述のようにして得られるゲノムDNA 100 ngを鋳型にして、FITC修飾された本発明オリゴヌクレオチド各200 pMをプライマーとして用いたPCR法により、エストロゲンレセプターα遺伝子断片を増幅する。PCR法は、耐熱性ポリメラーゼとしてEx Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を使用し、200μMの4種類の各々の塩基(dATP, dTTP, dGTP, dCTP)および酵素に添付された専用バッファーを用いて、94 ℃、30秒間、55 ℃、30秒間、74 ℃、30秒間を1サイクルとして40サイクル実施する。反応後、得られる増幅産物の1/20量を95%ホルムアミド中で95℃、5分間の条件で加熱変性後、急冷させる。そのうち、2.5μ1を5%未変性ポリアクリルアミドゲルを用いて、180 mMトリス−ホウ酸緩衝液(pH 8.0)中で電気泳動を行う。電気泳動の条件は、室温、定電力40 W、5時間で実施する。泳動終了後、蛍光読み取りスキャナーでゲル中の蛍光シグナルを検出することにより、増幅核酸断片を検出する。隣り合わせて泳動しておく野生型エストロゲンレセプターα遺伝子における増幅産物のバンドの移動度と比較して、変異型エストロゲンレセプターα遺伝子における増幅産物は移動度が異なるため、増幅配列中における変異の存在の有無が検定可能である。
実施例10(塩基配列解析による塩基置換の解析)
実施例9により検出される変異型エストロゲンレセプターα遺伝子断片のバンドに対応する位置のゲルの一部を1 mm角に切り取り、滅菌水400μl中で一晩、浸透し、DNAを溶出させる。ゲルを除去し、エタノール沈殿により精製後、DNAを50μlの滅菌水に溶解する。そのうち、1μlを鋳型にして、前記、PCR-SSCPに用いたオリゴヌクレオチドを使用してPCRを行い、エストロゲンレセプターα遺伝子断片を増幅する。PCRは、耐熱性DNAポリメラーゼとしてEx Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用い、添付バッファー中で、94 ℃、30秒間、55 ℃、30秒間、74 ℃、30秒間を1サイクルとして30サイクル実施する。反応終了後、得られる増幅産物をアガロースゲル電気泳動により確認後、pGEM-T Easy vector(プロメガ社製)等のTAクローニングベクターに増幅断片をクローニングする。クローニングされたプラスミドを鋳型にして、BigDye Terminator cycle sequence ready reaction kit(アプライドバイオシステムズ社製)と自動DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製モデル3700)を使用して塩基配列を決定する。
実施例11(PCRと制限酵素を組み合わせた塩基置換の解析)
ゲノムDNAあるいはcDNAを鋳型として配列番号26と配列番号27で示す変異検出用プライマーを用いてPCR法を通常のように行い、ヒトエストロゲンレセプターα遺伝子を増幅する。なお、上記のPCR法では、耐熱性DNAポリメラーゼとしてPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社製)を使用し、添付バッファー中で、94 ℃、1分間、55 ℃、30秒間、72 ℃、1分間を1サイクルとして30サイクル実施する。得られた100塩基対の長さのDNA断片を制限酵素BspT104 Iで処理すると、野生型エストロゲンレセプターαを鋳型とする場合は消化されないが、ヒト由来野生型エストロゲンレセプターαのアミノ末端から405番目のアラニンがバリンに変異した変異型エストロゲンレセプターαを鋳型とした場合はTTCGAAという新たな配列ができたるためBspT104 Iにより80塩基対と20塩基対のDNA断片に消化される。このようにして該変異を有するエストロゲンレセプターαをコードするDNAを検出できる。
本発明により、特定の位置のアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、ある種の抗エストロゲン物質に対して野生型エストロゲンレセプターαとは異なる反応性を示すエストロゲンレセプターα、該レセプターをコードするDNA、前記特定位置のアミノ酸が野生型レセプターのアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されてなるエストロゲンレセプターαを利用する被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法、前記特定位置のアミノ酸置換の有無を調べるエストロゲンレセプターα遺伝子型の判定方法、前記アミノ酸置換の有無を調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質による治療の有効性の判定方法等が提供可能となる。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対する4-ヒドロキシタモキシフェンの活性化能を測定した結果を示す図である。溶媒のみを添加した対照区(図中「溶媒対照」と示す)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対するラロキシフェンの活性化能を測定した結果を示す図である。溶媒のみを添加した対照区(図中「溶媒対照」と示す)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対するZM189154の活性化能を測定した結果を示す図である。溶媒のみを添加した対照区(図中「溶媒対照」と示す。)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対する4−ヒドロキシタモキシフェンの抗エストロゲン活性を測定した結果を示す図である。100 pMのE2のみを添加した試験区(図中「溶媒対照」と示す)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対するラロキシフェンの抗エストロゲン活性を測定した結果を示す図である。100 pMのE2のみを添加した試験区(図中「溶媒対照」と示す)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を用いたレポーターアッセイにより、ヒト野生型エストロゲンレセプターαまたは本発明レセプター(図中「変異型」と示す)に対するZM189154の抗エストロゲン活性を測定した結果を示す図である。100 pMのE2のみを添加した試験区(図中「溶媒対照」と示す)におけるルシフェラーゼ活性の値を100%として、各試験区におけるルシフェラーゼ活性の値を示した。
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
サザンハイブリダイゼーションのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号18
サザンハイブリダイゼーションのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号19
サザンハイブリダイゼーションのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号20
サザンハイブリダイゼーションのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号21
サザンハイブリダイゼーションのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号22
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
エストロゲン応答配列を作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号24
プロモーターDNAを作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号25
プロモーターDNAを作製するために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号26
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号27
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

Claims (27)

  1. 下記の性質を有するエストロゲンレセプターα。
    (a)当該レセプターを構成するアミノ酸のうち、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、前記のアミノ酸の置換は以下の(b)および(c)の性質を当該レセプターに付与する。
    ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンであり、且つ、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸がバリンである。
    (b)野生型エストロゲンレセプターαの転写活性化領域AF2の機能を抑制するが転写活性化領域AF1の機能は抑制しないタイプの抗エストロゲン物質のいずれかと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができる。
    (c)エストロゲンと接触すると、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子の転写を活性化することができ、該活性化は、前記(b)において遺伝子の転写を活性化することができる化合物により実質的に阻害されない。
  2. 前記(b)および(c)において、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にある遺伝子が、細胞の染色体に導入された遺伝子である請求項1記載のエストロゲンレセプターα。
  3. 前記(c)における活性化が、ピュア抗エストロゲンにより阻害される活性化でもある請求項1または2のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
  4. (b)記載の抗エストロゲン物質が、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェンまたはラロキシフェンである請求項1〜3のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
  5. アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号390で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸およびアミノ酸番号578で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸と同一である請求項1〜4のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
  6. エストロゲンレセプターαが、哺乳類動物由来のエストロゲンレセプターαである請求項1〜5のいずれかに記載のエストロゲンレセプターα。
  7. 配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するエストロゲンレセプターα。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のエストロゲンレセプターαをコードする単離されたDNA。
  9. DNAがcDNAである請求項記載のDNA。
  10. プロモーターが機能可能な形で結合されてなる請求項またはのいずれかに記載のDNA。
  11. 請求項10のいずれかに記載のDNAを含有するベクター。
  12. 宿主細胞内で複製可能なベクターに請求項11に記載のDNAを組込むことを特徴とするベクターの製造方法。
  13. 請求項10のいずれかに記載のDNAまたは請求項11記載のベクターが宿主細胞に導入されてなる形質転換体。
  14. 宿主細胞が動物細胞である請求項13に記載の形質転換体。
  15. 宿主細胞が哺乳類動物細胞である請求項13または14のいずれかに記載の形質転換体。
  16. 請求項10のいずれかに記載のDNAまたは請求項11に記載のベクターを宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の製造方法。
  17. 請求項1315のいずれかに記載の形質転換体を培養してエストロゲンレセプターαを産生させることを特徴とするエストロゲンレセプターαの製造方法。
  18. (1)標識されたリガンドが結合している請求項1〜のいずれかに記載のエストロゲンレセプターαと被験物質とを接触させる工程、及び
    (2)前記エストロゲンレセプターαと前記被験物質との結合状態を、前記標識されたリガンドと当該被験物質との競合により生じる遊離型の標識されたリガンド又は結合型の標識されたリガンドの量をモニターすることにより間接的に確認する工程含むリガンド・レセプターバインディングアッセイ。
  19. 被験物質のエストロゲンレセプターα活性調節能の評価方法であり、
    (1)請求項1〜7のいずれかに記載のエストロゲンレセプターαを産生し、かつ、エストロゲン応答配列を含む転写制御領域の転写制御下にあるレポーター遺伝子が染色体に導入されてなる形質転換体と、被験物質とを接触させる工程、
    (2)前記形質転換体が有する前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び
    (3)測定された発現量に基づき前記物質のエストロゲンレセプター活性調節能力を評価する工程
    を含む方法。
  20. 請求項19に記載の方法により、形質転換体の産生するエストロゲンレセプターαに対する被験物質の活性調節能を評価する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質のスクリーニング方法。
  21. 試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べる工程を含むエストロゲンレセプターα遺伝子型の判定方法。
    ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンであり、且つ、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸がバリンである。
  22. 試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含むエストロゲンレセプターα活性調節物質による治療の有効性の判定方法。
    ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンであり、且つ、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸がバリンである。
  23. 試料中の核酸において、エストロゲンレセプターαを構成するアミノ酸であって、アミノ酸配列の相同性に基づくアライメントにおいて、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸をコードする塩基配列が、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸をコードする塩基配列に置換されているか否かを調べてエストロゲンレセプターα遺伝子型を判定する工程を含む抗エストロゲン物質による治療の有効性の判定方法。
    ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸がアラニンであり、且つ、野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列の相当する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸がバリンである。
  24. 試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸の塩基配列を決定する工程を含む請求項22または23のいずれかに記載の方法。
  25. 試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸を電気泳動してその移動度を測定し、野生型エストロゲンレセプターαの当該領域をコードする核酸の移動度と前記増幅された核酸の移動度とが異なるか否かを調べる工程を含む請求項22または23のいずれかに記載の方法。
  26. 野生型エストロゲンレセプターαのアミノ酸配列のうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405で示されるアミノ酸に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする塩基配列からなるプローブと、試料中の核酸とがハイブリダイズするか否かを調べる工程を含む請求項22または23のいずれかに記載の方法。
  27. 試料中の核酸を鋳型として、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405に相当する位置にあるアミノ酸を含む領域をコードする核酸を増幅し、増幅された核酸を制限酵素により消化して該制限酵素の認識配列の有無を調べる工程を含む請求項22または23のいずれかに記載の方法。
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