JP3616274B2 - 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents

中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3616274B2
JP3616274B2 JP13792799A JP13792799A JP3616274B2 JP 3616274 B2 JP3616274 B2 JP 3616274B2 JP 13792799 A JP13792799 A JP 13792799A JP 13792799 A JP13792799 A JP 13792799A JP 3616274 B2 JP3616274 B2 JP 3616274B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
splicing variant
exon
presenilin
splicing
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP13792799A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000037192A (ja
Inventor
勉 高木
直也 佐藤
正彌 遠山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Tanabe Pharma Corp
Original Assignee
Mitsubishi Tanabe Pharma Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Tanabe Pharma Corp filed Critical Mitsubishi Tanabe Pharma Corp
Priority to JP13792799A priority Critical patent/JP3616274B2/ja
Publication of JP2000037192A publication Critical patent/JP2000037192A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3616274B2 publication Critical patent/JP3616274B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレセニリン−2の新規なスプライシング変種、ならびに中枢神経系疾患の治療薬のスクリーニング方法及び同定方法に関する。また、本発明は、中枢神経系疾患の検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真核生物のゲノムDNA上では、成熟したmRNAに対応する配列が何ヶ所かに分断されて存在していることが多い。このような場合、遺伝子の転写は、成熟mRNAに対応する配列を含む全領域にわたって一続きで行われて前駆体mRNA(pre−mRNA)(成熟mRNAには不必要な部分も含む転写産物)が作られる。そして、この前駆体mRNAがプロセッシングを受けて成熟したmRNAとなる。プロセッシングの過程では、キャップ構造やポリAの付加が行われると同時に、成熟mRNAには不必要な部分(イントロン又は介在配列)が切り取られ、成熟mRNAに対応する部分(エキソン)が貼りあわされて成熟mRNAとなる。このような切り貼りの過程は「スプライシング」と呼ばれるが、スプライシングは、スプライソソームと呼ばれる大型の蛋白質−RNA集合体の関与により、複数の切断と連結が調節される複雑で繊細な過程である。例えばゲノム上のイントロン−エキソンの境界領域に起こった突然変異などにより、しばしば異なった種類の成熟mRNA、すなわち「スプライシング変種」が生じるが、このような変種の中には機能的に異常な変異型蛋白質を生じて疾病の原因となる例が知られている。これまでに種々の疾病や障害について、発症メカニズム解明のために原因遺伝子におけるスプライシング変種が研究されるとともに、スプライシング変種を疾病の診断マーカーとして利用すること等もなされてきた。
【0003】
一方、家族性アルツハイマー病(FAD)の主な原因遺伝子としては、これまでに第21染色体上のアミロイド前駆体蛋白質(APP:Amyloid Precursor Protein)遺伝子、第14染色体上のプレセニリン−1(PS−1:Presenilin−1)遺伝子、及び第1染色体上のプレセニリン−2(PS−2:Presenilin−2)遺伝子が知られている。そして、これら原因遺伝子において見い出されている突然変異やスプライシング変種等に着目し、アルツハイマー病の発症メカニズムとの関係について研究がなされている。しかしながら、アルツハイマー病の大部分を占める孤発性アルツハイマー病の発症メカニズムについては、まだほとんど何も解明されていない状況にある。
【0004】
例えばプレセニリン−1遺伝子(Sherringtonら、Nature、第375巻、第754−760頁、1995年)については、家族性又は孤発性アルツハイマー病患者と正常の脳組織に由来するmRNAの解析が行われ、種々のスプライシング変種の存在が報告されている(Clarkら、Nature Genetics、第11巻、第219−222頁、1995年;Anwarら、Journal of Neurochemistry、第66巻、第1774〜1777頁、1996年)。
【0005】
プレセニリン−2遺伝子(Levy−Lahadら、Genomics、第34巻、第198−204頁、1996年;Levy−Lahadら、Science、第269巻、第973−977頁、1995年;Rogaevら、Nature、第376巻、第775−778頁、1995年)は、プレセニリン−1遺伝子と同様、12のエキソンから構成されており、このうち10のエキソン(エキソン3〜12)が蛋白質をコードしていることが知られている。また、正常ヒト組織において、エキソン8が欠失したスプライシング変種や、エキソン3及びエキソン4が同時に欠失したスプライシング変種の存在が報告されている(Priharら、NeuroReport、第7巻、第1680〜1684頁、1996年)。しかし、プレセニリン−2遺伝子について、アルツハイマー病(特に孤発性アルツハイマー病)に特異的なスプライシング変種の報告はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、中枢神経系疾患(アルツハイマー病等)治療薬の新規なスクリーニング方法及び同定方法を提供することにある。また、中枢神経系疾患(アルツハイマー病等)の新規な検査方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、中枢神経系疾患の研究に有用な新規なプレセニリン−2由来スプライシング変種を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、神経細胞の培養系において、酸化ストレス負荷やβ−アミロイド刺激などにより、正常状態では見られない異常なプレセニリン−2mRNAのスプライシング変種((i)エキソン5を欠くスプライシング変種、(ii)エキソン3を欠くスプライシング変種、及び(iii)エキソン3とエキソン4を欠くとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種)が発現誘導されることを独自に見出した。また、それらスプライシング変種のうちの一つであるエキソン5欠失変種について、ヒト脳組織における発現を調べたところ、孤発性アルツハイマー病患者の脳組織において、エキソン5を欠くスプライシング変種が高頻度に存在することを独自に見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は、プレセニリン−2遺伝子から転写されるスプライシング変種の発現に対する被検物質の抑制作用を検定することを特徴とする、中枢神経系疾患治療薬もしくは予防薬のスクリーニング方法および同定方法である。
【0009】
また、動物個体由来の被検試料中における、プレセニリン−2遺伝子から転写されたスプライシング変種の発現を検出することを特徴とする中枢神経系疾患の検査方法である。
【0010】
さらに、プレセニリン−2遺伝子から転写されたスプライシング変種(以下、プレセニリン−2のスプライシング変種)に由来する塩基配列を有する核酸及び該スプライシング変種にコードされるポリペプチドである。
【0011】
本発明において、エキソン5を欠くスプライシング変種とは、エキソン4とエキソン6が接合した領域を有するスプライシング変種を意味する。エキソン3を欠くスプライシング変種とは、エキソン2とエキソン4が接合した領域を有するスプライシング変種を意味する。エキソン3及びエキソン4を欠くとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種とは、エキソン2の下流にイントロン(エキソン4及びエキソン5の間に位置するイントロン)由来の配列が付加されその下流にエキソン5の領域を有するスプライシング変種を意味する。
【0012】
後記配列表の配列番号1および図3には、既報のヒトプレセニリン−2遺伝子のcDNA配列(全エキソンを含む)を示した。配列番号2、3及び4には、本発明者らが新たに見出したヒトプレセニリン−2スプライシング変種(mRNA)に対応するcDNA配列を示し、配列番号5にはスプライシング変種にコードされる変異型ポリペプチドの配列を示した。
【0013】
配列番号2は、ヒトプレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種のcDNA配列を示す。このようなスプライシング変種におけるエキソン4とエキソン6の接合(junction)部位は、配列番号2の第705番目と706番目の塩基の間に存在する。発明者らはエキソン5欠失に加えてさらにエキソン8が欠失したスプライシング変種も見出しており、このようなスプライシング変種のcDNAは、配列番号2において第995〜1093番目の塩基(エキソン8に相当する領域)が欠失した塩基配列を有する。
【0014】
配列番号3は、ヒトプレセニリン−2遺伝子のエキソン3を欠くスプライシング変種のcDNA配列を示す。エキソン2とエキソン4の接合部位は、配列番号3の第329番目と330番目の塩基の間に存在する。
【0015】
配列番号4は、ヒトプレセニリン−2遺伝子のエキソン3及びエキソン4を同時に欠くとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種のcDNA配列を示す。エキソン2とエキソン5の接合域に存在するイントロン(イントロン4)由来の配列は、配列番号4の第330〜409番目の塩基に存在する。
【0016】
配列番号5は、ヒトプレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種cDNA(配列番号2)の翻訳領域の塩基配列(配列番号5上段)及びそこにコードされる変異ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号5下段)を示す。
【0017】
前記配列番号2から5で示される塩基配列もしくはアミノ酸配列について、既知DNAデータベース(GenBankおよびEMBL)及びプロテインデータベース(NBRF及びSWISS−PROT)に含まれる全ての配列に対してホモロジー検索を行った結果、完全に一致するものはなく、これら配列は新規なものであると考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の方法(検査方法及びスクリーニング方法並びに同定方法)は、アルツハイマー病(家族性又は孤発性)(アルツハイマー型老年性痴呆)の他、びまん性レビー小体病、ボクサー脳等の中枢神経系疾患に適用され、とりわけ、アルツハイマー病、特に孤発性アルツハイマー病のために好適に適用される。本発明の方法は、ヒトの疾病に対して適用されるほか、サル、イヌ、ラット、マウスなどの哺乳動物の疾病や疾病モデルに対しても適用される。
【0019】
本発明のスクリーニング方法及び同定方法は、プレセニリン−2のスプライシング変種の発現を抑制する作用を検定することにより実施される。より具体的には、例えば細胞や組織を被検物質の存在下に培養するか、あるいは被検物質を動物個体に投与した後、細胞や組織中のプレセニリン−2スプライシング変種の発現量を検出することにより、中枢神経系疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング又は同定を実施できる。
【0020】
培養系を用いてスクリーニング又は同定を行う場合、細胞を例えば酸化ストレス負荷(低酸素負荷、低酸素負荷後の再酸素化処理、過酸化水素添加等)やβ−アミロイド刺激等の条件下に培養する。このような培養条件により、正常状態では見られない以下の(i)〜(iii)のような異常なプレセニリン−2のスプライシング変種が発現誘導されるので、これら培養系をインビトロの病態モデルとし、被検物質の作用を調べるために用いることができる。
【0021】
(i)エキソン5を欠くスプライシング変種は、細胞に低酸素負荷を与えて培養することにより発現誘導される。発現誘導されるエキソン5欠失スプライシング変種の中にはさらにエキソン8を欠くものも含まれる。
【0022】
(ii)エキソン3を欠くスプライシング変種及び(iii)エキソン3とエキソン4を欠くとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種は、低酸素負荷後の再酸素化処理、過酸化水素添加およびβ−アミロイド刺激により発現誘導される。
【0023】
培養系に被検物質を存在させることにより、被検物質が存在しない場合と比較して、異常なスプライシング変種の発現量が抑制される場合には、その被検物質には病態を正常化させる作用があると判定される。
【0024】
プレセニリン−2のスプライシング変種のうち、エキソン5を欠くスプライシング変種は実際にアルツハイマー病患者の脳組織中において特異的に見出されており、従って、エキソン5を欠くスプライシング変種を誘導する系、例えば低酸素負荷などの酸化ストレスを与える細胞培養系は、アルツハイマー病(特に孤発性アルツハイマー病)治療薬をスクリーニングもしくは同定するために好適に用いることができる。
【0025】
培養系において用いる細胞としては、哺乳動物(ヒト、サル等)由来の中枢神経系細胞(神経細胞、グリア細胞、および星状細胞など)のほか、神経系細胞への分化誘導が可能な未分化細胞などを用いることができる。細胞は、動物組織から分離した初代培養細胞であってもよく、癌化もしくは不死化した株化細胞であってもよい。このような株化細胞としては例えば、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞(ATCC HTB−11)、同IMR−32細胞(ATCC CCL−127)、同SKN−MC細胞(ATCC HTB−10)、ヒト腎臓由来トランスフォームド細胞293(kidney transformed 293;ATCC CRL−1573)などが挙げられる。
【0026】
低酸素負荷(低酸素処理)は、例えば細胞を通常の酸素条件下(約20%O、約5%CO)で約48時間以上培養した後、低酸素条件(O濃度1%以下、約95%N、約5%CO)の培養器中に移して約12〜48時間程度培養すればよく、再酸素化処理は、前記のように低酸素処理した細胞を、再び通常培養の条件下に戻して培養すればよい(特開平9−238685;Ogawaら、Journal of Clinical Investigation、第85巻、第1090〜1098頁、1990年)。過酸化水素添加は、過酸化水素を培地に終濃度44〜440μMとなるように添加して約2時間培養すればよい。また、β−アミロイド刺激は、β−アミロイド蛋白質又はその部分ペプチド(例えば、Aβ25−35(β−アミロイド蛋白質の第25−35番目のアミノ酸残基からなる部分ペプチド)など)を0.5〜5μMとなるように添加して約16時間培養すればよい。
【0027】
プレセニリン−2の異常なスプライシング変種は、また、中枢神経系疾患の検査に利用できる。本発明の検査方法は、動物個体由来の被検試料中におけるプレセニリン−2のスプライシング変種の発現を検出することにより実施できる。より具体的には例えば、被検試料からRNAを抽出してRNA中におけるプレセニリン−2のスプライシング変種を検出すればよい。あるいは、被検試料中のスプライシング変種に由来する変異型ポリペプチドを検出してもよい。
【0028】
アルツハイマー病患者(特に孤発性アルツハイマー病患者)では、脳組織中におけるプレセニリン−2のエキソン5欠失スプライシング変種が、正常人と比較して明確に高い頻度で見出される。従って、プレセニリン−2のエキソン5欠失スプライシング変種が検出された場合には、アルツハイマー病である危険率が高いものと判定できる。
【0029】
被検試料としては、動物個体由来の組織および体液が挙げられる。特に、好ましい体組織としては、中枢神経系(神経細胞、グリア細胞、および星状細胞など)を含む脳組織や線維芽細胞などが挙げられる。体液としては、血清、血漿などが挙げられる。
【0030】
本発明の方法において、プレセニリン−2のスプライシング変種の発現を検出するには、細胞や組織からRNA(mRNA)を抽出してRNA中におけるプレセニリン−2のスプライシング変種を検出すればよい。あるいは、スプライシング変種にコードされる変異型ポリペプチドを検出することによって間接的にスプライシング変種の発現を検出することもできる。
【0031】
プレセニリン−2遺伝子は、ヒト、ラット、マウスなどから既にクローニングされて塩基配列やアミノ酸配列が決定されている((ヒト)GeneBank/EMBL 登録No. L43964 及び No.U50871、SWISS−PROT登録 No.P49810 ;Genomics、第34巻、第198−204頁、1996年;Science、第269巻、第973−977頁、1995年;Nature、第376巻、第775−778頁、1995年:(ラット)Gene、第197巻、第383−387頁、1997年;GeneBank/EMBL登録No. D83700:(マウス)GeneBank/EMBL登録No. AF038935)。従って、スプライシング変種の検出の際にはこれら配列情報を利用できる。また、後記配列表に示したヒト由来の各スプライシング変種の塩基配列の情報を利用できる。
【0032】
RNA中のスプライシング変種を検出する場合には、細胞や組織からRNA(mRNA)を調製し、そのmRNAやmRNAから調製したcDNAを用い、異常スプライシングにより生じたジャンクション部位とその前後の領域を検出する。検出には、通常のポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)、RNA分解酵素プロテクションアッセイ法(RNase protection assay法)もしくはノーザンブロット法などを利用することができる。これら方法により、異常スプライシングによって生じる断片を、断片の大きさを指標として検出する。
【0033】
PCR法(「PCR Protocols」Innis MA,Gelfad DH, Sninsky JJ and White TJ eds., Academic Press, Sandiego, 1990年)を利用する場合、異常スプライシングによって生じるジャンクション部位とその前後の領域を含む断片を増幅するために適当なプライマー(センスプライマー及びアンチセンスプライマー)を設計、合成する。これらプライマーを用い、mRNAより合成したcDNAを鋳型としてPCRを実施し、得られたPCR産物を、必要に応じて電気泳動などにより分離し、その断片の大きさを調べることによりスプライシング変種を検出できる。また、スプライシング変種を詳細に同定するためには、PCR産物について塩基配列を決定すればよい。
【0034】
RNA分解酵素プロテクションアッセイ法(Nucleic Acid Research、第12巻、7035−7056頁、1984年)は、一本鎖RNAを特異的に分解し二本鎖RNAは分解しない性質を有するRNA分解酵素を利用する方法であり、検査すべきRNAに対するアンチセンス鎖RNAを通常プローブとして用いる。検査すべきRNAと、標識したRNAプローブとをハイブリダイズさせた後、RNA分解酵素を作用させてハイブリダイズしなかったRNAを分解し、これを電気泳動などで分離して断片を検出・定量する。RNAプローブの調製は、例えばmRNAより合成したcDNAを鋳型としてPCRなどによりプローブとしたい適切な領域を増幅し、得られた断片をプラスミドベクター中のプロモータ下流に適切な方向で接続してRNAプローブ合成用ベクターを構築する。このベクターと、T3、T7、SP6等のRNAポリメラーゼを用いてインビトロでRNAプローブを産生させることができる。プレセニリン−2のスプライシング変種を検出する場合には、プローブとする領域は、異常スプライシングが起こるジャンクション部位を含む領域、例えば、エキソン4からエキソン6を含む領域などを選択すればよい。
【0035】
上記のような方法のほか、異常なスプライシングによって新たに生じるジャンクション部位を、直接核酸プローブを用いて検出することもできる。この場合、検出すべきジャンクション部位とその周辺の配列情報をもとに、ジャンクション部位とその前後を含む領域に相補的なDNA(オリゴヌクレオチド)を設計、合成し、これを標識したものをプローブとして用いる。被検細胞又は組織から得たmRNA又はそのcDNA、あるいはこれらを鋳型としてPCRにより増幅したDNA断片などについて、前記プローブを用いてノーザンブロッティング又はサザンブロッティングなどを実施し、プローブとハイブリダイズする核酸が存在するかどうかを判定すればよい。
【0036】
変異型ポリペプチドを検出することによって間接的にスプライシング変種を検出する場合には、例えば、変異型ポリペプチドを特異的に認識する抗体を利用して免疫化学的に検出する方法を用いることができる。特異的抗体としては、変異型ポリペプチドとは反応するが正常プレセニリン−2とは交差反応しない抗体を用いればよい。抗体を調製するための抗原は、例えば、変異型ポリペプチドを遺伝子組換え技術により調製したものを用いることができる。あるいは抗原として合成ペプチドを用いてもよい。例えば、エキソン5欠失スプライシング変種にコードされる変異型ポリペプチドを検出したい場合、特異抗体は、配列番号5のC末端側6アミノ酸の配列を含む適当な長さの合成ペプチドなどを、抗原として用いて調製することができる。
【0037】
変異型ポリペプチド又は正常プレセニリン−2は、プレセニリン−2遺伝子のスプライシング変種又は正常mRNAに対するcDNAを適当なベクタープラスミドに結合した組換え発現ベクターを用いて調製できる。
【0038】
プレセニリン−2遺伝子のcDNAは、例えば動物組織や細胞(中枢神経系細胞など)から調製したmRNAのcDNAを遺伝子源として単離取得できる。スプライシング変種のcDNAを取得する場合には、前記のように酸化ストレス負荷(低酸素負荷、低酸素負荷後の再酸素化処理、過酸化水素添加等)やβ−アミロイド刺激等の条件下に培養した細胞を用いればよい。これら遺伝子源から、既知配列情報に基づいて設計したプライマーを用いるPCRによりcDNA断片を得る。必要に応じて遺伝子源から調製したcDNAライブラリー又は市販のライブラリーを用い、PCRにより増幅した断片や合成オリゴヌクレオチド等をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーション法により目的cDNAを取得することもできる。
【0039】
プレセニリン−2又はその変異型ポリペプチドを生産するための発現系(宿主−ベクター系)としては、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母、細菌等の発現系が挙げられる。機能蛋白を得るためには、昆虫細胞(Spodoptera frugiperda SF9、SF21等)および哺乳動物細胞(サルCOS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、ヒトHeLa細胞等)を宿主として用いることが好ましい。昆虫細胞を宿主とする場合のベクターとして例えば、バキュロウイルスベクター等が挙げられる。哺乳動物細胞を宿主とする場合のベクターとして例えば、レトロウイルス系ベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等が挙げられる。これらベクター中の適当なプロモーターの下流にcDNAを挿入して発現ベクターを構築することができる。
【0040】
得られた発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、形質転換体を適当な培地で培養することによって、目的とするポリペプチドが生産される。宿主細胞中で産生されたポリペプチドは、摩擦型破砕装置ダイノミル(Dyno Mill)などを用いる物理的な手法、あるいは、リゾチーム処理など化学的な手法により細胞を破砕し、その細胞抽出液から、公知の精製方法(無機塩類による塩析、有機溶媒による分画沈澱、イオン交換樹脂、及び各種カラムクロマトグラフィーによる吸脱着法、ゲルろ過法、蛋白沈澱剤を利用する方法など)又はこれらを適宜組合わせることによって分離、採取することができる。
【0041】
プレセニリン−2又はその変異型ポリペプチドをコードするDNAとしては、例えば配列番号1〜4に示される塩基配列を有するヒト由来のcDNAを用いることができる。このほか、自然界に存在する他の種由来の遺伝子やそれらの対立遺伝子を用いてもよい。また、自然界に存在する塩基配列に限定されず、ポリペプチドのアミノ酸配列に対応するDNAを設計して用いることもできる。この場合、ひとつのアミノ酸をコードするコドンは各々1〜6種類知られており、用いるコドンの選択は任意でよく、利用する宿主のコドン使用頻度等を考慮して、より発現効率の高い配列を設計することができる。
【0042】
また、スプライシング変種に由来する変異型ポリペプチドは、実質的に同等の免疫原性や機能を有する程度であれば、アミノ酸配列の一部が修飾・改変されたものであってもよい。例えばヒトプレセニリンのエキソン5欠失スプライシング変種に由来するポリペプチドとしては、配列番号5で示されたアミノ酸配列を有するものが挙げられるが、このほか、そのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換された配列を有するものが挙げられる。アミノ酸の付加、欠失もしくは置換は、通常1〜約20個、好ましくは1〜約10個、より好ましくは1〜約5個である。このようなポリペプチドは、配列番号5で示されるアミノ酸配列と通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のアミノ酸配列のホモロジーを有する。
【0043】
設計したアミノ酸配列をコードするDNAは、DNAの化学合成、前記cDNAの断片化と結合、塩基配列の一部改変等によって取得できる。人為的な塩基配列の一部改変、変異導入は、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用して部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)(Mark, D. F. et al.、Proceedings of National Academy of Sciences、第81巻、第5662〜5666頁(1984年)) 等によって実施できる。
【0044】
また、プレセニリン−2の異常なスプライシング変種(特にエキソン5欠失スプライシング変種)及びその検出方法は、中枢神経系疾患(特にアルツハイマー病)の病態研究にも有用である。異常なスプライシング変種のcDNAを含む組換え発現プラスミドを細胞に導入して、細胞内における機能を詳細に解析することや、スプライシング変種由来の変異型ポリペプチドの機能・作用を解析することは発症メカニズムの解明につながると考えられる。
【0045】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【0046】
なお、下記実施例において、各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook, J., Fritsch, E.F.及びManiatis, T. 著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊)に記載の方法により行うか、または、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
【0047】
【実施例】
実施例1 ヒト神経細胞におけるスプライシング変種の検出
(1)ヒト神経細胞の培養とRNA調製
ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞(ATCC HTB−11)を、10cm径の培養皿で、10%ウシ胎児血清含有α−MEM培地(α−Minimum Essential Medium;GIBCO社製)中、コンフルエントな状態まで、37℃で約48時間CO培養器で培養後、ウシ胎児血清不含の同培地に培地交換し、約2時間培養した。
【0048】
前記培養細胞についてさらに、以下の(i)〜(iv)の条件で培養した。
【0049】
(コントロールは前記と同条件でさらに16時間培養を継続して行った。)
(i)低酸素処理:培養皿を低酸素培養器(酸素濃度1%以下、95%N、5%CO)(Coy Laboratory Products社製)に移し16時間培養した。
【0050】
(ii)再酸素化処理:培養皿を低酸素培養器(酸素濃度1%以下、95%N、5%CO)に移し16時間培養後、通常のCO培養器(酸素濃度20%、75%N、5%CO)に戻して4時間培養した。
【0051】
(iii)β−アミロイド刺激:Aβ25−35(Sigma社製)を終濃度0.5μM又は5μMとなるように培地に加え16時間培養した。
【0052】
(iv)過酸化水素(H)添加:過酸化水素(H)を終濃度が44μM又は440μMとなるように培地に添加し2時間培養した。
【0053】
前記のように培養した細胞を各々回収し、生理的リン酸緩衝液(PBS:Phosphate buffured Saline)で洗浄した。これを、細胞溶解用緩衝液(RLT溶液、QIAGEN社製)700μlに懸濁した後、細胞を破砕し、細胞抽出液を得た。この細胞抽出液から、トータルRNAを調製した。RNAの調製は、RNA調製用キット(商品名:Rneasy total RNAキット、QIAGEN社製)を用いて行った。
【0054】
(2)スプライシング変種類の検出
前項(1)で得たRNA(トータルRNA、1μg)を鋳型とし、オリゴdTプライマー(50 pmole)、ランダムオリゴヌクレオチド(5 pmole)及びリバーストランスクリプターゼ(Promega社製、Moloney leukaemia virus reverse transcriptase)(200単位)を含む緩衝液(0.05M Tris−HCl,pH 8.3, 0.075M KCl, 0.003M MgCl2, DTT,0.0002M deoxynucleotides)0.05ml中、42℃で1時間反応させて、一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAを用い、以下のように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase chain reaction)によりスプライシング変種を検出した。
【0055】
プレセニリン−2(PS−2)遺伝子用のPCRプライマーとしては、
PS251(配列番号6)(センスプライマー)、PS253(配列番号7)(センスプライマー)、PS233(配列番号8)(アンチセンスプライマー)及びPS231(配列番号9)(アンチセンスプライマー)の4種を用いた。
【0056】
各プライマーに対応するPS−2遺伝子上の位置と方向を図1および図3に示した。
【0057】
PCRは、まず、前記で得た一本鎖cDNAを鋳型とし、PS−2遺伝子のコーディング領域全体(約1.6kbp)を増幅するためのプライマーとして、PS251(配列番号6)(センスプライマー)及びPS231(配列番号9)(アンチセンスプライマー)を用いて、1回目のPCR反応を行った。PCRは、変性反応95℃、約40秒、伸長反応72℃で1分、アニーリング60℃で約30秒の条件(サイクル数:30サイクル)で行った。
【0058】
反応液を1/5希釈し、その1μlを鋳型として2回目のPCRを行った。PS−2のコーディング領域の5’末端側断片を検出するためのPCRプライマーとしては、PS251(配列番号6)(センスプライマー)及びPS233(配列番号8)(アンチセンスプライマー)を、また、3’末端側断片を検出するためのPCRプライマーとしては、PS253(配列番号7)(センスプライマー)及びPS231(配列番号9)(アンチセンスプライマー)を用いた。PCRは、前記と同様の条件を用いた。得られたPCR産物について、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行って、DNA断片の大きさを調べた。
【0059】
結果を図2に示した。図2に示したように、5’末端側断片を増幅したPCRの結果、コントロールでは見られないバンドが、低酸素処理した細胞由来の試料で1本検出された。また、低酸素負荷後の再酸素化処理およびβ−アミロイド刺激した細胞由来の試料で各2本、過酸化水素添加培養した細胞由来の試料で3本、コントロールで見られないバンドが検出された。これに対して3’末端側断片を増幅したPCRの結果では、コントロールを含む全ての試料で、同様に各2本のメジャーバンドが確認された。
【0060】
これらの結果から、低酸素処理により、5’末端側でスプライシング異常が発生し、少なくとも一種類のスプライシング変種が誘導されたと考えられた。また、低酸素負荷後の再酸素化処理およびβ−アミロイド刺激によっても5’末端側でスプライシング異常が発生し、各々2種及び3種類のスプライシング変種が誘導されたと考えられた。
【0061】
(3)PS−2スプライシング変種の解析
前項(2)で見出されたPS−2スプライシング変種について、以下のように塩基配列を決定した。前記(2)と同様にPCR産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、スプライシング変種に由来すると考えられるDNA断片(5’末端側断片5種類と3’末端側断片2種類)をゲルから回収し、各々ベクタープラスミドpGEM−T(Promega社製)に連結した。得られた組換えプラスミドを用いて、ダイデオキシ法により、挿入断片部分の塩基配列を決定した。塩基配列は、アプライド・バイオシステム社の自動シークエンサー(373A DNA Sequencing System)を用いて行った。
【0062】
塩基配列を決定した結果、確認されたスプライシング変種を、図1に模式図で示した。
【0063】
3’末端側で見出された2種類の断片のうち、1つは正常なスプライシングの産物であり、他の1つはエキソン8が欠失したスプライシング変種であった。エキソン8欠失スプライシング変種は、正常組織での存在が既に報告されており、この欠失はPS−2蛋白質の機能に影響を与えるものではないと考えられる。
【0064】
一方、低酸素処理の5’末端側断片において見出された変種は、エキソン5が欠失したスプライシング変種であることがわかった。エキソン5欠失スプライシング変種は、これまで正常組織において全く報告されていないものである。このスプライシング変種(エキソン5欠失)に対応するcDNA塩基配列を、後記配列表の配列番号2に示した。このスプライシング変種におけるエキソン4とエキソン6の接合部位は、配列番号2の第705番目と706番目の塩基の間に存在する。エキソン5の欠失によって接合部位から下流で読取枠のずれが生じ、配列番号2におけるオープンリーディングフレームは第350〜724番目の塩基に存在する。このオープンリーディングフレームの塩基配列及びここにコードされる変異型ポリペプチド(124アミノ酸残基)のアミノ酸配列を配列番号5に示した。変異型ポリペプチドは、正常なプレセニリン−2蛋白質(448アミノ酸残基)のN末端側119アミノ酸残基分のC末端に、読取枠のずれによって生じた5アミノ酸残基が付加された配列を有する。
【0065】
また、エキソン5欠失変種の中にはさらにエキソン8が欠失したものも存在しており、このようなスプライシング変種のcDNAは、配列番号2において第995〜1093番目の塩基(エキソン8に相当する領域)が欠失した塩基配列を有する。
【0066】
低酸素負荷後の再酸素化処理、β−アミロイド刺激及び過酸化水素添加の5’末端側断片において見出された変種のうちの一つは、エキソン3を欠失したスプライシング変種であり、もう一つは、エキソン3及びエキソン4を欠失するとともに、イントロン4(エキソン4とエキソン5の間のイントロン)の内部でスプライシングされたスプライシング変種であった。
【0067】
エキソン3欠失スプライシング変種のcDNA配列を配列番号3に示した。エキソン2とエキソン5の接合部位は、配列番号3の第329番目と330番目の塩基の間に存在する。
【0068】
また、エキソン3及びエキソン4を欠失するとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種のcDNA配列を配列番号4及び図4に示した。エキソン2とエキソン5の接合域に存在するイントロン(イントロン4)由来の配列は、配列番号4の第330〜409番目の塩基に存在する。
【0069】
これまでに正常組織において、エキソン3及びエキソン4を同時に欠失したスプライシング変種は報告されているが、エキソン3のみを欠失した変種、エキソン3及びエキソン4を欠失するとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種は報告されていない。
【0070】
実施例2 ヒト神経細胞におけるPS−2スプライシング変種発現誘導に対する薬剤の影響
(1)ヒト神経細胞の低酸素処理下での培養とRNA調製
ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞を、前記実施例1の(1)に準じ、以下のように低酸素処理条件下で培養した。すなわち、10%ウシ胎児血清含有α−MEM培地中、コンフルエントな状態まで(約48時間)37℃、CO培養器(酸素濃度:20%)で培養後、ウシ胎児血清不含の同培地に培地交換した。培地には、シクロヘキシミド(終濃度0.2μg/ml又は1μg/ml)、N−アセチル−L−システインを(終濃度2μM又は10μM)又はジフェニレンヨードニウムクロライド(Diphenileneiodonium Chloride)(終濃度5μM又は20μM)を添加した。これを、低酸素培養器(酸素濃度:1%以下)に移し、さらに16時間培養した。
【0071】
前記のように培養した細胞を各々回収し、細胞から前記実施例1の(1)項と同様の方法にてRNA(トータルRNA)を調製した。
【0072】
(2)PS−2スプライシング変種の検出
前項(1)で得たRNA(トータルRNA)を用い、実施例1の(2)項と同様の方法で、PS−2のスプライシング変種の検出を行った。すなわち、前記RNAを鋳型として一本鎖cDNAを調製し、これを鋳型として一回目のPCRを行ってPS−2コーディング領域全長を含むDNA断片を増幅した。PCRプライマーとしてはPS251(配列番号6)(センスプライマー)及びPS231(配列番号9)(アンチセンスプライマー)を用いた。
【0073】
反応液を希釈し、その1μlを鋳型として用いて、2回目のPCRを行い、PS−2のコーディング領域の5’末端側を含むDNA断片を増幅した。PCRプライマーとしては、PS251(配列番号6)(センスプライマー)及びPS233(配列番号8)(アンチセンスプライマー)を用いた。得られたPCR産物について、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、スプライシング変種に由来する断片(エキソン5欠失に由来する約640塩基長の断片等)の有無を調べた。
【0074】
その結果を図5に示した。図5に示したように、低酸素処理によって誘導されるエキソン5欠失変種の発現は、蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミド処理によって抑制された。このことから、エキソン5欠失変種の発現誘導には、低酸素処理時に新生される蛋白質が関与していると考えられた。また、エキソン5欠失変種は、抗酸化剤であるN−アセチル−L−システイン又はジフェニレンヨードニウムクロライドによってもその発現が抑制された。これらのことから、低酸素処理によって誘導されるPS−2エキソン5欠失変種の発現には、活性酸素など低酸素状態での何らかの酸化ストレスが関与していると考えられた。
【0075】
実施例3 ヒト脳組織におけるPS−2スプライシング変種の発現
ヒト脳組織サンプルについて、PS−2のエキソン5欠失スプライシング変種の検出を行った。ヒト脳の組織サンプルは、孤発性AD患者脳(30例)及びほぼ同年齢の正常者脳(17例)から採取したもの計47サンプルを用いた。
【0076】
脳組織サンプル(凍結保存サンプル)をホモジナイズし、得られた抽出液から、前記実施例1の(1)項と同様にしてRNAを調製した。得られたRNAを用いて、実施例1の(2)項及び実施例2の(2)項と同様にしてPS−2のスプライシング変種の検出をPCRを用いて行った。
【0077】
その結果を表1に示した。エキソン5欠失スプライシング変種の発現は、正常者脳においては17例中3例(17%)であった。これに対して、孤発性AD患者の脳における発現は、30例中21例(70%)であった。このように孤発性AD患者の脳においては、正常者脳よりも明らかに高い頻度でエキソン5欠失スプライシング変種が発現していることがわかった。
【0078】
【表1】
Figure 0003616274
【0079】
【表2】
Figure 0003616274
【0080】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、従来困難であった孤発性アルツハイマー病など中枢神経系疾患の治療薬・予防薬のスクリーニング及び同定を効率よく実施することができる。本発明のスクリーニング方法によって見出された薬物あるいは同定された薬物は、作用点が明らかとなっているので医薬品としての開発に有利である。
【0081】
また、中枢神経系疾患、特に従来診断が困難であった孤発性アルツハイマー病の診断を好適に行うことができる。
【0082】
また、プレセニリン−2の異常なスプライシング変種及びその検出方法は、中枢神経系疾患(特にアルツハイマー病)の病態研究にも有用である。異常なスプライシング変種の細胞内における機能を詳細に解析することや、スプライシング変種由来の変異型ポリペプチドの機能・作用を解析することは発症メカニズムの解明につながる。
【0083】
【配列表】
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274
Figure 0003616274

【図面の簡単な説明】
【図1】PS−2遺伝子のPCRプライマー及び各種スプライシング変種由来のPCR産物を示す模式図。
【図2】ヒト神経細胞におけるPS−2スプライシング変種の発現誘導を示す電気泳動の図(白黒反転させたもの)であり、図中、Nはコントロールを表し、Hは低酸素処理した細胞を表し、Rは低酸素負荷後再酸素化処理した細胞を表し、Aβ25−35はAβ25−35(β−アミロイド蛋白質の第25−35番目のアミノ酸残基からなる部分ペプチド)を0.5μMまたは5μM添加培養した細胞を表し、Hは過酸化水素を44μMまたは440μM添加した細胞を表す。
【図3】PS−2の全エキソンを含むcDNA配列、PCRプライマー及び各エキソンの位置を示した図。
【図4】PS−2のエキソン3及びエキソン4を欠失するとともにイントロン配列の一部を有するスプライシング変種のスプライシング部位近傍の配列を示した図。
【図5】ヒト神経細胞におけるPS−2スプライシング変種の発現誘導に対する薬剤の影響を示す電気泳動の図(白黒反転させたもの)であり、図中、Nはコントロールを表し、Hは低酸素処理した細胞を表し、CHXはシクロヘキシミドを0.2μg/mlまたは1μg/ml添加した後、低酸素処理した細胞を表し、DPIはジフェニレンヨードニウムクロライドを5μMまたは20μM添加した後、低酸素処理した細胞を表し、NACはN−アセチル−L−システインを2μMまたは10μM添加した後、低酸素処理した細胞を表す。

Claims (18)

  1. プレセニリン−2遺伝子から転写されるスプライシング変種の発現に対する被検物質の抑制作用を検定することを特徴とする、中枢神経系疾患治療薬もしくは予防薬のスクリーニング方法および同定方法であって、スプライシング変種が、プレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種である方法
  2. スプライシング変種が、プレセニリン−2遺伝子のエキソン5及びエキソン8を欠くスプライシング変種である請求項記載の方法。
  3. スプライシング変種の発現が、神経細胞におけるスプライシング変種の発現である、請求項1記載の方法。
  4. スプライシング変種の発現が、神経細胞に酸化ストレスを負荷することにより誘導されるものである、請求項記載の方法。
  5. スプライシング変種の発現が、動物の脳組織におけるスプライシング変種の発現である、請求項1記載の方法。
  6. 中枢神経系疾患がアルツハイマー病である請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 中枢神経系疾患が孤発性アルツハイマー病である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  8. 動物個体由来の被検試料中における、プレセニリン−2遺伝子から転写されたスプライシング変種の発現を検出することを特徴とする中枢神経系疾患の検査方法であって、スプライシング変種が、プレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種である方法
  9. 中枢神経系疾患が、アルツハイマー病である請求項記載の検査方法。
  10. 中枢神経系疾患が孤発性アルツハイマー病である請求項8記載の検査方法。
  11. 配列番号2記載の塩基配列の第705番目及び第706番目の塩基とその前後の領域を含む核酸を検出することからなる、プレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種の検出方法。
  12. プレセニリン−2遺伝子のエキソン5を欠くスプライシング変種と同一か又はそれに相補的な塩基配列を有する核酸。
  13. (1)配列番号2記載の塩基配列、(2)配列番号2において第995〜1093番目の塩基が欠失した塩基配列、及び(3)前記(1)又は(2)に相補的な塩基配列から選択される塩基配列を有する請求項12記載の核酸。
  14. 請求項12記載の核酸を含む組換えプラスミド。
  15. プレセニリン−2のエキソン5を欠くスプライシング変種に由来するポリペプチドであって、(1)配列番号5の下段記載のアミノ酸配列を有するか又は(2)配列番号5記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されたアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  16. 請求項15記載のポリペプチドをコードするDNA。
  17. 配列番号5の上段記載の塩基配列を有する請求項16記載のDNA。
  18. 請求項16記載のDNAを含む組換えプラスミド。
JP13792799A 1998-05-21 1999-05-19 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法 Expired - Fee Related JP3616274B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13792799A JP3616274B2 (ja) 1998-05-21 1999-05-19 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10-139408 1998-05-21
JP13940898 1998-05-21
JP13792799A JP3616274B2 (ja) 1998-05-21 1999-05-19 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000037192A JP2000037192A (ja) 2000-02-08
JP3616274B2 true JP3616274B2 (ja) 2005-02-02

Family

ID=26471086

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13792799A Expired - Fee Related JP3616274B2 (ja) 1998-05-21 1999-05-19 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3616274B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7358063B2 (en) 2001-07-19 2008-04-15 Sysmex Corporation Method of detecting PS2V

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000037192A (ja) 2000-02-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3944654B2 (ja) 神経細胞アポトーシスの抑制タンパクとその遺伝子配列、並びに脊髄性筋萎縮症の原因となる当該遺伝子の突然変異
JP5608863B2 (ja) 新生児期〜乳児期発症の難治性てんかんの検出方法
JPH08509808A (ja) 神経糸状タンパク質遺伝子発現およびアルツハイマー病の検出
CA2416545A1 (en) Common polymorphism in scn5a implicated in drug-induced cardiac arrhythmia
EP1078987B1 (en) Method for examining central nervous system diseases and method for screening remedies
KR102058624B1 (ko) 감각신경성 난청 진단을 위한 마커 tmem43 및 그의 용도
WO2014110628A1 (en) Gene and mutations thereof associated with seizure disorders
US20050130171A1 (en) Genes expressed in Alzheimer's disease
US20040053265A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of a caveolae-associated integral membrane protein for alzheimer's disease and related neurodegenerative disorders
JP3616274B2 (ja) 中枢神経系疾患の検査方法および治療薬のスクリーニング方法
JP2008237204A (ja) 疾患モデル動物、細胞、組織、精巣、交配用動物、生殖細胞生産方法、生殖細胞、培養細胞、スクリーニング方法、医薬組成物、妊孕性診断キット、検出方法、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体
US7060457B2 (en) Aberrant glutamate transporters and methods of use
CN114875148A (zh) 一种家族性多发性脂肪瘤检测试剂盒及引物组的应用
WO2000021985A2 (en) Genes encoding olfactory receptors and biallelic markers thereof
US9631234B2 (en) Homeobox gene
EP1423704B1 (en) Diagnostic and therapeutic use of f-box proteins for alzheimer's disease and related neurodegenerative disorders
WO2005012526A1 (en) Lafora's disease gene
JP2000511408A (ja) 新規治療
Porteous et al. Genetics of schizophrenia and bipolar affective disorder: strategies to identify candidate genes
WO2004111272A2 (en) Polymorphism in the human nbs1 gene useful in diagnostic of inherited predisposition to cancer
Scherer et al. Lafora's disease gene
JP4161569B2 (ja) bHLH−PAS蛋白質、その遺伝子及びそれらの利用
JP2005525079A (ja) Als2遺伝子と筋萎縮性側索硬化症2型
JPWO2002024903A1 (ja) アレルギー性疾患の検査方法
EP1485410B1 (en) Diagnostic and therapeutic use of human maguin proteins and nucleic acids for neurodegenerative diseases

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040706

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040830

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20041019

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20041104

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071112

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081112

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081112

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081112

Year of fee payment: 4

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081112

Year of fee payment: 4

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081112

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091112

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091112

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101112

Year of fee payment: 6

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101112

Year of fee payment: 6

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101112

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111112

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121112

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121112

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131112

Year of fee payment: 9

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees