JP4161569B2 - bHLH−PAS蛋白質、その遺伝子及びそれらの利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、bHLH−PAS蛋白質に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(basic helix-loop-helix:以下、bHLHと記す。)モチーフとPASドメイン(Per-Arnt-Simホモロジードメイン)とを有する蛋白質(以下、bHLH−PAS蛋白質と記す。)は、ホモもしくはヘテロ二量体を形成することによりDNAに結合して転写調節因子として機能し、細胞増殖、発生分化、生体機能発現などに係る遺伝子の転写調節に重要な役割を果たしている(Annu Rev Pharmacol Toxicol 2000;40:519-61)。
例えば、Ahレセプター(Aryl hydrocarbon receptor)は、ダイオキシン等のリガンドの結合により活性化され、同じくbHLH−PAS蛋白質であるArnt(AhR nuclear translocator)とヘテロ二量体を形成して薬物代謝酵素遺伝子等の転写制御領域に結合しその転写を活性化する。また、Hifは低酸素状態への生体応答において遺伝子発現を活性化し、PerやClockは日周リズムの制御に関与し、SRC−1やTIF2はステロイドホルモンレセプターファミリーのコアクチベーターとして機能する。ショウジョウバエにおいて正中線の発達に関与するSimは、ヒト等の哺乳動物においても発生過程の正中線に発現すること等からその発達に関係していると考えられており、ヒトのSim2については遺伝病であるダウン症との関連も示唆されている(Genome Res 1997;7:615-624, Chrast,R et al.)。さらに、成体において主に中枢神経系に発現するNPAS1及びNPAS2は、神経機能や行動に異常を呈するマウスの遺伝病との関係が示唆されており(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997;94:713-18)、NPAS2遺伝子が破壊されたノックアウトマウスは長期記憶に異常が認められた(Science 2000;288:2226-2230)。
このようにbHLH−PAS蛋白質は、該蛋白質が発現する組織において、その組織の発達や機能発現に必要な酵素遺伝子や構造遺伝子等の遺伝子の転写調節に関っており、その働きに異常が生じれば、疾病や障害等の原因となる。そこで、かかる疾病や障害等の診断、予防、治療に有用な手段を開発するために、bHLH−PAS蛋白質及び該蛋白質をコードするDNAの取得が望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる状況の下、鋭意検討した結果、脳で発現するbHLH−PAS蛋白質をコードするDNAの単離に成功し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1)以下の(a)〜(e)のいずれかの蛋白質をコードするDNA、
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
2)以下の(a)〜(d)のいずれかの塩基配列を有するDNA、
(a)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列。
(b)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列。
(c)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列。
(d)配列番号54で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列。
3)前項1)又は2)に記載のDNAを含有するベクター(以下、本発明ベクターと記す。)、
4)前項1又は2に記載のDNAの上流に、プロモーターが機能可能な形で結合されてなるDNAを含有するベクター、
5)宿主細胞内で複製可能なベクターに、前項1)又は2)に記載のDNAを組込むことを特徴とするベクターの製造方法、
6)前項1)もしくは2)に記載のDNA又は前項3)に記載のベクターが宿主細胞に導入されてなる形質転換体(以下、本発明形質転換体と記す。)、
7)宿主細胞が動物細胞である前項6記載の形質転換体。
8)宿主細胞が大腸菌又は酵母である前項6記載の形質転換体。
9)前項1)もしくは2)に記載のDNA又は前項3)に記載のベクターを宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の製造方法、
10)以下の(a)〜(e)の蛋白質(以下、一括して本発明蛋白質と記す。)、
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
11)以下の(a)〜(e)のいずれかの蛋白質をコードするDNAが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を培養する工程を含むことを特徴とする本発明蛋白質の製造方法、
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
12)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体、
13)本発明蛋白質を検出する方法であって、
(1)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体と被検試料とを接触させる工程、及び
(2)被検試料中の蛋白質と前記抗体との複合体を検出する工程、を含む方法、14)本発明蛋白質に結合する物質をスクリーニングする方法であって、
(1)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと被検物質とを接触させる工程、及び
(2)本発明蛋白質又は前記ポリペプチドに結合する物質を選択する工程、を含む方法、
15)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドの転写調節能を測定する方法であって、
以下のi)の遺伝子とii)の遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体、及び、以下のiii)の遺伝子とii)の遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量を測定し、測定された発現量を比較する工程を含む方法、
<各遺伝子>
i)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域と、本発明蛋白質またはその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質をコードするDNAが、宿主細胞内で機能可能なプロモーターの下流に接続されてなるキメラ遺伝子。
ii)i)記載のDNA結合領域が結合可能なDNAと宿主細胞内で機能可能な最小プロモーターとを含むプロモーターの下流に、レポーター蛋白質をコードするDNAが接続されてなるレポーター遺伝子。
iii)i)記載のDNA結合領域をコードするDNAが、i)記載のプロモーターの下流に接続されてなる遺伝子。
16)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドの転写調節能を変化させる物質をスクリーニングする方法であって、
(1)i)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域と、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質をコードするDNAが、宿主細胞内で機能可能なプロモーターの下流に接続されてなるキメラ遺伝子、と
ii)i)記載のDNA結合領域が結合可能なDNAと宿主細胞内で機能可能な最小プロモーターとを含むプロモーターの下流に、レポーター蛋白質をコードするDNAが接続されてなるレポーター遺伝子
とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させ、被検物質存在下における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び
(2)(1)で測定されたレポーター遺伝子の発現量が、被検物質非存在下における当該レポーター遺伝子の発現量とは実質的に異なる被検物質を選択する工程、を含む方法、
17)ツーハイブリッドアッセイのための、前項1記載のDNAの使用、
18)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドの細胞内発現量を変化させる物質をスクリーニングする方法であって、
(1)前記蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子が宿主細胞に導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させ、被検物質存在下における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び
(2)(1)で測定されたレポーター遺伝子の発現量が、被検物質非存在下における当該レポーター遺伝子の発現量とは実質的に異なる被検物質を選択する工程、
を含む方法。
19)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにスリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
20)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
21)本発明蛋白質をコードする核酸を検出する方法であって、
(1)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチドと被検試料由来の核酸とをハイブリダイゼーション条件下に接触させる工程、及び
(2)前記ポリヌクレオチドと被検試料由来の核酸とのハイブリッドを検出する工程、を含む方法、
22)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
23)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
24)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
25)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド、
26)配列番号11〜42のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチド、
27)以下の(a)〜(f)のポリヌクレオチドから選ばれる1以上のポリヌクレオチドを含むキット(以下、本発明キットと記載することもある。)、
(a)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにスリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(b)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(c)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(d)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(e)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(f)配列番号11〜42のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチド。
28)本発明蛋白質をコードするゲノムDNAを増幅する方法であって、以下の(f)〜(j)のポリヌクレオチドから選ばれる1以上のポリヌクレオチドをプライマーとして用いて、ゲノムDNAを鋳型としてポリメラーゼチェイン反応を行う工程を含む方法、
<ポリヌクレオチド群>
(f)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(g)配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(h)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(i)配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(j)配列番号11〜42のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチド。
29)本発明蛋白質をコードするcDNAを増幅する方法であって、以下の(f)又は(g)のポリヌクレオチドから選ばれる1以上のポリヌクレオチドをプライマーとして用いて、cDNAを鋳型としてポリメラーゼチェイン反応を行う工程を含む方法、
<ポリヌクレオチド群>
(f)配列番号4〜6のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリペプチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
(g)配列番号4〜6のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド。
30)本発明蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子型を分析する方法であって、被検試料の核酸において、本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べる工程を含む方法、
31)標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べる工程が、被検試料の核酸を鋳型として本発明蛋白質をコードするDNAを増幅し、増幅されたDNAの塩基配列を決定する工程を含む前項30)に記載の方法、
32)標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有しているか否かを調べる工程が、被検試料の核酸を鋳型として本発明蛋白質のアミノ酸配列をコードするDNAを増幅し、増幅されたDNAを電気泳動してその移動度を測定する工程を含む前項30)に記載の方法、
33)標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有しているか否かを調べる工程が、被検試料の核酸又は該核酸の増幅物と、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリペプチドにスリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチドとの、ストリンジェントな条件下におけるハイブリダイゼーションのパターンを調べる工程を含む前項30)に記載の方法、
34)標準蛋白質のアミノ酸配列が、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列である前項30)〜33)のいずれかに記載の方法、
35)哺乳動物細胞に、前項1又は2記載のDNAを、当該DNAが前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を含む哺乳動物細胞におけるdrebrin 1の発現促進方法(以下、本発明発現促進方法と記すこともある。)、
36)前記哺乳動物細胞が、精神遅滞を伴なう疾患又はアルツハイマー症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞である、前項35記載の方法、
37)前項1又は2に記載のDNAを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなる遺伝子治療剤(以下、本発明遺伝子治療剤と記すこともある。)、
を提供するものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明蛋白質には、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質が含まれる。
本発明蛋白質のアミノ酸配列において認められる、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列との相違としては、アミノ酸の欠失、置換、修飾、付加等の変異をあげることができる。これらには、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって人為的に導入され得る変異に加えて、動物の系統、個体、器官、組織等の違いによるアミノ酸配列の相違などの天然に生ずる多型変異も含まれる。
【0005】
本発明において「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は、Vector NTI、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)等の市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。
本発明におけるアミノ酸同一性は、例えば、90%以上であることが好ましい。
【0006】
また、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNA」としては、例えば、高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりDNA-DNAハイブリッドを形成し、低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも該ハイブリッドが維持されうるDNAをあげることができる。本発明蛋白質の転写調節能は、例えば、後述のレポーター遺伝子を用いたアッセイ等に基づき評価することができる。
【0007】
本発明蛋白質をコードするDNA(以下、本発明DNAと記す。)は、例えば、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織から、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じて取得することができる。具体的には、まず、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織由来の全RNAを調製する。例えば、脳の組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)がある。得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素により一本鎖cDNAを合成する。次いで、合成された一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ大腸菌RNaseHを用いてRNA鎖にニックとギャップを入れることにより得られるRNAをプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖のcDNAを合成する。更に、合成された二本鎖cDNAの両末端をT4 DNAポリメラーゼにより平滑化する。末端が平滑化された二本鎖cDNAは、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿等の通常の方法により精製、回収する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムファルマシアバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムファルマシアバイオテク社製)等があげられる。次に、得られた二本鎖cDNAを例えば、プラスミドpUC118やファージλgt10などのベクターとリガーゼを用いて連結することによりcDNAライブラリーを作製する。尚、cDNAライブラリーとしては、市販のcDNAライブラリー(GIBCO−BRL社製やClontech社製等)を用いることも可能である。
また、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織片から、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)や、村松正寶、”ラボマニュアル遺伝子工学”(丸善1988)等に記載される通常の方法に準じてゲノムDNAを調製する。例えば試料が毛髪の場合には、毛髪2〜3本を滅菌水、次いでエタノールで洗浄した後、2〜3 mmの長さに切断し、これにBCL-Buffer[10mM Tris-HCl(pH7.5), 5 mM MgCl2, 0.32M Sucrose, 1 Triton X-100]200μlを加え、さらにProteinaseKを最終濃度100μl/ml 、SDSを最終濃度0.5 (w/v)になるようにそれぞれ加え混合する。この混合物を70℃で1時間保温した後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が末梢血の場合は、DNA-Extraction kit(Stratagene社製)等を用いて該試料を処理することによりゲノムDNAを得ることができる。得られたゲノムDNAをλgt10などのベクターとリガーゼを用いて連結することによりゲノムDNAライブラリーが得られる。尚、ゲノムDNAライブラリーとしては、市販のゲノムDNAライブラリー(Stratagene社製等)を用いることも可能である。
【0008】
上記のようなcDNAライブラリーやゲノムDNAライブラリーから、例えば、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)や、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、本発明DNAを取得することができる。
PCRに用いられるプライマーとしては、例えば、約10塩基から約50塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドであって、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の5’非翻訳領域から選択した塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、及び、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の3’非翻訳領域から選択した塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをあげることができる。具体的には、フォワードプライマーとしては、例えば、配列番号7で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号8で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。また、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。PCRの条件としては、例えば、反応液50μl中に、LA-Taqポリメラーゼ用10倍濃緩衝液(宝酒造社製)5μl、2.5mM dNTP混合液(各2.5mMのdATP,dGTP,dCTP及びdTTPを含む。)5μl(dATP,dGTP,dCTP及びdTTP各々の終濃度が0.25mM)、20μMプライマー 各0.25〜1.25μl(終濃度が0.1〜0.5μM)、鋳型cDNA 0.1〜0.5μg、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)1.25ユニットを含む組成の反応液にて、95℃で1分間次いで68℃で3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行う等の条件が挙げられる。
【0009】
ハイブリダイゼーション法に用いられるプローブとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNA、配列番号54で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列からなるDNA、又はこれらDNAの部分塩基配列を有するDNA等があげられる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v)フィコール400、0.1(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1(w/v)BSA)、0.5(w/v)SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件等をあげることができる。また、例えば、5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液及び20μg/ml変性サケ精子DNA存在下に65℃にて保温し、次いで2xSSC中で室温にて30分間の保温を行い、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間の保温を2回行う条件をあげることもできる。
尚、本発明DNAは、例えば配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al.,Nature,310,105,1984)等の通常の方法に準じて、核酸の化学合成を行うことにより調製することもできる。
【0010】
このようにして得られた本発明DNAは、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えば、TAクローニングキット(Invitrogen社)やpBluescriptII(Stratagene社)などの市販のプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
得られた本発明DNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,560,1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
本発明DNAの具体例としては、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列を有するDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列を有するDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列、配列番号54で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
本発明DNAは、drebrin 1の発現を促進する能力を有している。drebrin 1はアルツハイマー症患者の細胞内において激減しており、その改善はアルツハイマー症における認識力機能不全および記憶力不全の治療に寄与する。
【0011】
本発明DNAを、該遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクター(以下、基本ベクターと記す。)、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより本発明ベクターを構築することができる。
本発明ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合、例えばプラスミドpUC119(宝酒造社製)や、ファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等を上げることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合は、プラスミドpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)などをあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合はpRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルスなどをあげることができ、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本発明DNAを組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いることができる。このようなトランスファーベクターの具体的例としては、Pharmingen社から市販されているpVL1392,pVL1393(Smith,G.E.,Summers M.D.et al.:Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983))、pSFB5(Funahashi,S.et al.:J.Virol.,65,5584-5588(1991))などのプラスミドをあげることができる。本発明DNAを前記のようなトランスファーベクターに挿入し、該トランスファーベクターとウイルスのゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスのゲノムとの間で相同組換えが起こり、本発明遺伝子がゲノム上にくみこまれたウイルスを得ることができる。ウイルスのゲノムとしては、Baculovirus,Adenovirus,Vacciniavirusなどのゲノムを用いることができる。
より具体的には、例えばバキュロウイルスに本発明遺伝子を組み込む場合、トランスファーベクターpVL1393,pVL1392等のマルチクローニング部位に本発明DNAを挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとBaculovirus genome DNA(Baculogold;Pharmingen社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等により導入し、得られた細胞を培養する。培養液から遠心分離等により、本発明DNAが挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を回収し、これをフェノール等で除蛋白処理することにより、本発明DNAを含有するウイルスのゲノムを得ることができる。さらに、該ウイルスのゲノムを、昆虫細胞Sf21株などのウイルス粒子形成能を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等により導入し、得られる細胞を培養することにより、本発明DNAを含有するウイルス粒子を増やすことができる。
一方、マウス白血病レトロウイルスなどの比較的小さなゲノムへは、トランスファーベクターを利用せずに、本発明DNAを直接組み込むこともできる。例えばウイルスベクタ-DC(X)(Eli Gilboa et al.,BioTechniques,4,504-512(1986))などは、該ベクター上のクローニング部位に本発明DNAを組み込む。得られた本発明DNAの組込まれたウイルスベクターを、例えばAmpli-GPE(J.Virol.,66,3755(1992))などのパッケージング細胞に導入することにより、本発明DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を得ることができる。
【0012】
本発明DNAの上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本発明DNAを宿主細胞で発現させることの可能な本発明ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本発明DNAが導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に本発明DNAが発現されるように、該プロモーターと本発明遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、導入される宿主細胞内でプロモーター活性を示すDNAをあげることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合にはADH1プロモーターなどをあげることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本発明DNAとが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本発明DNAを挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本発明DNAを挿入し動物細胞へ導入することにより、本発明DNAを発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えばCOS細胞等に該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として該プラスミドに組み込まれた本発明DNAを大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミド又はその誘導体のADH1プロモーターの下流に本発明DNAを挿入すれば、本発明DNAを例えばCG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能な本発明ベクターが構築できる。
【0013】
さらに、本発明DNA又はその部分塩基配列を有するDNAと、他の所望の蛋白質をコードするDNAとをその読み枠を合わせて結合し、その上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと、前記所望の蛋白質との融合蛋白質をコードするDNAを宿主細胞で発現させることの可能な本発明ベクターを構築することもできる。このような本発明ベクターの構築には、宿主細胞において機能するプロモーターと、前記所望の蛋白質をコードするDNAとをあらかじめ保有する基本ベクターを使用することもできる。本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと、Gal4DNA結合領域との融合蛋白質をコードするDNAを発現させる場合には、例えば宿主細胞が出芽酵母であればpGBT9やpAS2(クロンテック社製)等を、宿主細胞が動物細胞であればpMベクター(クロンテック社製)等を用いることができる。本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと、LexA DNA結合領域との融合蛋白質をコードするDNAを発現させる場合には、例えば出芽酵母発現用pGildaベクター(クロンテック社製)等を用いることができる。本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと、グルタチオンSトランスフェラーゼ(以下、GSTと記す。)との融合蛋白質をコードするDNAを発現させる場合には、例えば大腸菌発現用pGEXシリーズベクター(アマシャムファルマシア社製)等を用いることができる。
【0014】
構築された本発明ベクターを宿主細胞に導入することにより、本発明形質転換体を取得することができる。本発明ベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合は、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法に準じて前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合は、例えばリチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)などを用いて導入することができる。
尚、ウイルスをベクターに用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、本発明DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
【0015】
本発明形質転換体を選抜するには、例えば、本発明ベクターと同時にマーカー遺伝子を宿主細胞へ導入し、マーカー遺伝子の性質に応じた方法で細胞を培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本発明ベクターが導入された宿主細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせなどをあげることができる。また、マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本発明ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
本発明DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を取得するには、例えば、本発明ベクターとマーカー遺伝子を有するベクターとを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これらを前述の方法で宿主細胞へ導入して該細胞を通常数週間培養し、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標にして目的とする形質転換体を選抜し取得すればよい。また、例えば、上記のような選抜薬剤に対する耐性付与遺伝子をマーカー遺伝子として有する本発明ベクターを前述の方法で宿主細胞に導入し、該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上継代培養して、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養することにより、本発明DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を選抜し取得することもできる。導入された本発明DNAが宿主細胞の染色体に組み込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、調製されたゲノムDNAから、導入された本発明DNAの部分塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いるPCRや、導入された本発明DNAをプローブに用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、本発明DNAの存在を検出すればよい。かかる形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
【0016】
上述のようにして得られた本発明形質転換体を培養することにより本発明蛋白質を産生させることができる。
例えば、本発明形質転換体が微生物である場合、該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養することができる。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(旋回式振とう培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(JarFermenter)培養、タンク培養等)などが可能である。培養温度及び培地のpHは、微生物が生育する範囲から適宜選ぶことができ、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度にて、約6〜約8の培地pHで培養するのが一般的である。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1日間〜約5日間である。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型のプロモーターを有する発現ベクターを用いた場合には誘導時間は1日間以内が望ましく、通常数時間である。
また、上記形質転換体が哺乳類、昆虫類等の動物細胞である場合、該形質転換体は一般の培養細胞における通常の培養に使用される培地を用いて培養することができる。選抜薬剤を利用して当該形質転換体を作製した場合は、該選抜薬剤の存在下に培養するのが望ましい。哺乳類動物細胞の場合、例えば終濃度が10%(v/v)となるようFBSを添加したDMEM培地(ニッスイ社製等)を用いて37℃、5%CO2存在下等の条件で数日ごとに新しい培養液に交換しながら培養する。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば0.25(w/v)程度となるようトリプシンが添加されたPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、数倍に希釈して新しいシャーレに播種し培養を続ける。昆虫類動物細胞の場合も同様に、例えば10%(v/v)FBS及び2%(w/v)Yeastlateを含むGrace's medium等の昆虫細胞用培養液を用いて培養温度25℃から35℃で培養すればよい。この際、Sf21細胞などのシャーレからはがれやすい細胞の場合は、トリプシン液を用いずピペッテイングにより分散させ継代培養を行なうことができる。また、バキュロウイルス等のウイルスベクターを含む形質転換体の場合は、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前、例えばウイルス感染後72時間までとするのが好ましい。
本発明形質転換体により産生された本発明蛋白質の回収は、適宜、通常の単離、精製の方法を組み合わせて行うことができ、例えば、培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、集められた該細胞を通常のバッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕し、破砕液を遠心分離して上清画分を回収することにより、本発明蛋白質を含む画分を得ることができる。さらに、前記上清画分をイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、より精製された本発明蛋白質を回収することもできる。また、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを、GSTとの融合蛋白質として産生させた場合には、グルタチオンセファロース(アマシャムファルマシア社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーで精製することができる。
このようにして製造された本発明蛋白質は、例えば、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体を作製するための免疫抗原として用いることができ、また、本発明蛋白質に結合する物質をスクリーニングするためのアッセイ等に用いることもできる。
【0017】
上述のように製造された本発明蛋白質を免疫抗原として、例えばマウス、ウサギ、ニワトリ等の動物を、Frederick M.Ausubel et al.著;Short Protocols in Molecular Biology 3nd Edition, John Wiley&Sons,Inc 記載の免疫学的方法に準じて免疫感作することにより、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体を作製することができる。具体的には例えば、まず、抗原として用いる本発明蛋白質と完全Freunds adjuvantとを混合してエマルジョン化する。得られたエマルジョンをウサギに皮下投与する。約4週間後に、不完全Freunds adjuvantと混合してエマルジョン化した抗原を投与する。必要に応じて、さらに2週間毎に同様に投与を行なう。採血して血清画分を調製し、本発明蛋白質に対する抗体価を確認する。このようにして得られた本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体価を有する血清画分を通常の硫安沈殿法等に準じて分画することにより、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識するIgGを得ることができる。
また、本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを化学合成し、これを免疫抗原として動物に投与することにより、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体を作製することもできる。免疫抗原として用いるポリペプチドのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列の中から、他の蛋白質のアミノ酸配列とのホモロジーがなるべく低くかつ免疫感作する動物種の有する本発明蛋白質のアミノ酸配列とも相違の多いアミノ酸配列を選択する。選択されたアミノ酸配列からなる10アミノ酸から15アミノ酸程度の長さのポリペプチドを、通常の方法に準じて化学合成し、Limulus plyhemusのhemocyanin等のキャリアー蛋白質とMBS等により架橋した後、上記と同様にウサギ等の動物に免疫する。
このようにして作製される本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドを認識する抗体と被検試料とを接触させ、被検試料中の蛋白質と前記抗体との複合体を、通常の免疫学的手法に準じて検出することにより、該被検試料中の本発明蛋白質を検出することができる。このような検出法により、例えば、各種組織における本発明蛋白質の量や分布の測定などを行うことができる。具体的には、精神遅滞を伴う疾患又はアルツハイマー症の診断薬として当該抗体を利用する場合には、当該抗体を用いた免疫染色により前記疾患の有無や進行具合を検出するなどの検査が可能となる。
【0018】
本発明蛋白質に結合する物質をスクリーニングする方法は、(1)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドと被検物質とを接触させる工程、及び(2)本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する物質を選択する工程を含む。
具体的な方法としては、例えば、本発明蛋白質を結合させたカラムに被検試料を接触させカラムに結合した物質を精製する方法、ウェストウェスタンブロッティング法などの公知の方法を利用することができる。
スクリーニングに用いる被検試料としては、例えば、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然由来の化合物などがあげられる。
かかるスクリーニング方法によれば、本発明蛋白質のリガンドや、本発明蛋白質に結合してその活性を調節する機能を有する蛋白質(抗体を含む)等を単離することができる。
【0019】
本発明蛋白質の転写調節能は、例えば、該蛋白質をコードするDNAとレポーター遺伝子とを用いたアッセイにより測定することができる。具体的には、まず、
i)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域と、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質をコードするDNAが、宿主細胞内で機能可能なプロモーターの下流に接続されてなるキメラ遺伝子、と
ii)i)記載のDNA結合領域が結合可能なDNAと宿主細胞内で機能可能な最小プロモーターとを含むプロモーターの下流に、レポーター蛋白質をコードするDNAが接続されてなるレポーター遺伝子
とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体(以下、測定用形質転換体と記す。)を作製する。また、測定の対照として、
iii)i)記載のDNA結合領域をコードするDNAが、i)記載のプロモーターの下流に接続されてなる遺伝子、と
ii)記載のレポーター遺伝子
とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体(以下、対照用形質転換体と記す。)を作製する。
i)記載の「宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域」としては、例えば、酵母由来の転写調節因子GAL4のDNA結合領域、バクテリア由来のリプレッサーLexA等をあげることができる。これらをコードするDNAと、本発明DNAもしくは本発明DNAの部分塩基配列であって本発明蛋白質の部分アミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAとを、その塩基配列の読み枠を合わせて連結し、連結されたDNAの上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させることにより、i)記載の「宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域と、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質をコードするDNAが、宿主細胞内で機能可能なプロモーターの下流に接続されてなるキメラ遺伝子」が得られる。なお、前記の「本発明DNAの部分塩基配列であって本発明蛋白質の部分アミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA」としては、例えば、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号100付近から800付近までのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
プロモーターとしては、例えば、宿主細胞が出芽酵母細胞である場合には、GAL1プロモーターのような誘導型プロモーターや、ADHプロモーターのような恒常的に発現するプロモーター等を使用することができる。宿主細胞が動物細胞である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター等をあげることができる。
ii)記載のレポーター蛋白質としては、ルシフェラーゼ、分泌型アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモンなどを利用することができ、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質が好ましい。このようなレポーター蛋白質をコードするDNAは、i)記載のDNA結合領域が結合可能なDNAと宿主細胞内で機能可能な最小プロモーターとを含むプロモーターの下流に接続される。例えば、GAL4のDNA結合領域が結合可能なDNAとしては、GAL1プロモーターのGAL4結合領域をあげることができ、LexAが結合可能なDNAとしては、LexA結合領域があげられる。また、宿主細胞内で機能可能な最小プロモーターとしては、宿主細胞で発現可能な遺伝子由来の最小TATAボックス配列からなるDNAをあげることができ、具体的には、TATAボックス及び転写開始点近傍の約50塩基程度からなる塩基配列を有するDNAがあげられる。
上記iii)の「i)記載のDNA結合領域をコードするDNAが、i)記載のプロモーターの下流に接続されてなる遺伝子」は、i)記載のキメラ遺伝子の作製に使用された「宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域」をコードするDNAを、i)記載のキメラ遺伝子の作製に使用された「宿主細胞で機能可能なプロモーター」の下流に機能可能な形で結合させることによって得ることができる。
【0020】
i)〜iii)記載の遺伝子を、例えばそれぞれベクターに挿入し、それらを上記の組合わせで宿主細胞に導入して形質転換体(いわゆるワンハイブリッドシステム)を取得する。また、上記i)記載の遺伝子の代わりに、(a) 宿主細胞内で2種類の蛋白質からなる複合体を形成可能な一組の蛋白質のうちの一方の蛋白質と上記i)記載のDNA結合領域との融合蛋白質をコードするキメラ遺伝子、及び、(b) 宿主細胞内で2種類の蛋白質からなる複合体を形成可能な一組の蛋白質のうちの他方の蛋白質と本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質をコードするキメラ遺伝子、の両者のキメラ遺伝子を宿主細胞に導入して測定用形質転換体(いわゆるツーハイブリッドシステム)を取得してもよい。宿主細胞としては、例えば、HeLa細胞、IMR32細胞などの哺乳類動物細胞や、出芽酵母細胞等があげられる。尚、ii)記載のレポーター遺伝子を含有するベクターとして、pFR-LUC(ストラタジーン社製)のような市販のベクターを使用してもよい。また、宿主細胞が、上記ii)のレポーター遺伝子として利用可能な内在性のレポーター遺伝子を有する場合はそれを利用しても良く、この場合はレポーター遺伝子の導入を省略することができる。
【0021】
上述のように作製された測定用形質転換体及び対照用形質転換体を、例えば数時間から数日間した後、それぞれの形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量を測定する。具体的には、例えば、レポーター蛋白質としてルシフェラーゼを用いた場合には、各形質転換体から調製された細胞粗抽出物に、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを加えると、細胞粗抽出物中のルシフェラーゼ量に比例した強度で発光する。従って、この発光強度をルミノメーターなどの測定装置で測定することにより、ルシフェラーゼの量、ひいては、ルシフェラーゼ(レポーター)遺伝子の発現量を知ることができる。対照用形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量に比較して、測定用形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量が高い場合には、該測定用形質転換体に導入されたDNAにコードされる本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドは、転写調節能(この場合には転写活性化能)を有すると評価することができる。また、対照用形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量に比較して、測定用形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量が低い場合には、該測定用形質転換体に導入されたDNAにコードされる本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドは、転写抑制能を有すると評価することができる。
例えば、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドは、宿主細胞としてIMR32等の神経細胞を用いる場合において転写活性化能を有している。
【0022】
上記の測定用形質転換体を使用して、本発明蛋白質の転写調節能を変化させる物質をスクリーニングすることもできる。測定用形質転換体を、例えば1日間から数日間培養する間に、被検物質を培地中に加えて該形質転換体と接触させ、被検物質存在下におけるレポーター遺伝子の発現量を測定する。一方、同様にして、測定用形質転換体に被検物質を接触させない条件下におけるレポーター遺伝子の発現量を測定する。被検物質非存在下における発現量と、被検物質存在下における発現量とを比較し、被検物質の存在の有無により異なる発現量をもたらす被検物質を選ぶことにより、該測定用形質転換体に導入されたDNAにコードされる本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドの転写調節能を変化させる物質を選択することができる。
【0023】
また、細胞単位での本発明蛋白質の転写調節能を変化させる物質(言い換えれば、本発明蛋白質による転写調節を変化させる物質)をスクリーニングするためのアッセイとしては、例えば、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子が宿主細胞に導入されてなる形質転換体に、被検物質を接触させる方法を用いることができる。例えば、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドの細胞内発現量を変化させる物質をスクリーニングする方法であって、
(1)前記蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子が宿主細胞に導入されてなる形質転換体と、被検物質とを接触させ、被検物質存在下における前記レポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び
(2)(1)で測定されたレポーター遺伝子の発現量が、被検物質非存在下における当該レポーター遺伝子の発現量とは実質的に異なる被検物質を選択する工程、
を含む方法をあげることができる。当該スクリーニング方法は、いわゆるレポータージーンアッセイを用いて、本発明蛋白質又はその部分アミノ酸配列を有するポリペプチドによる転写調節を変化させる物質をスクリーニングする方法である。
【0024】
前記形質転換細胞は、以下のようにして調製することができる。
まず、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を、必要に応じて例えば、(i)5’−レース法(5'-RACE法)(例えば、5’full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施されうる)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、本発明蛋白質をコードすmRNAの5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いてmRNAの5’末端よりも上流の領域のゲノムDNAを取得し、得られたゲノムDNAについてプロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定する。次いで、同定された発現調節領域を、通常の遺伝子工学的手法に従って取得し、取得された発現調節領域を、β-グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ、グリーン蛍光蛋白質(GFP)等のレポーター蛋白質をコードするDNAに機能可能な形で連結することにより、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を調製する。ここで「機能可能な形で連結する」とは、シグナルや因子に応答した発現調節領域の制御下にレポーター蛋白質をコードするDNAが発現されるように、該発現調節領域と該DNAとを連結することを意味する。また「発現調節領域」とは、細胞型特異的もしくは組織特異的な制御に係るプロモーター要素や、シグナルもしくは因子(例えば、転写活性化蛋白質等)に応答して遺伝子発現を引き起こすプロモーター要素などを含み、かつ転写を促すために必要な配列を含む領域を意味する。尚、上記のようなプロモーター要素は、発現させようとする蛋白質をコードするDNAの5’上流領域または3’下流領域のいずれかに位置させればよい。次に、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を通常の遺伝子工学的手法を用いて、当該レポーター遺伝子を導入する細胞において使用可能なベクターに挿入することにより、プラスミドを作製する。次いで、前記プラスミドを、選択マーカー遺伝子とともに細胞へ導入する。細胞への導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法、電気導入法、DEAEデキストラン法、ミセル形成法等を挙げることができる。リン酸カルシウム法としてはGrimm, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 10923-10927等に記載される方法、電気導入法及びDEAEデキストラン法としてはTing, A. T. et al., EMBO J., 15, 6189-6196等に記載される方法、ミセル形成法としてはHawkins, C. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 13786-13790等に記載される方法を挙げることができる。ミセル形成法を用いる場合には、リポフェクトアミン(ギブコ製)やフュージーン(ベーリンガー製)等の市販の試薬を利用してもよい。
【0025】
上記プラスミドの導入処理を施した細胞を、選択マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、前記蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子が宿主細胞に一過性に導入されてなる形質転換体を選抜することができる。さらに選抜を続けて、当該レポーター遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体(安定形質転換体)を取得してもよい。導入されたレポーター遺伝子が染色体に組込まれたことを確認するには、当該形質転換体のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、上記レポーター遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプライマーとして用いるPCRや、上記レポーター遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、ゲノムDNA中の上記レポーター遺伝子の存在を検出・確認すればよい。
【0026】
上記のスクリーニング方法において、上記形質転換体と接触させる被検物質の濃度は、通常、約0.1μM〜約10μMであればよく、1μM〜10μMが好ましい。当該形質転換体と被検物質とを接触させる時間は、通常、18時間以上60時間程度であり、好ましくは24時間から40時間程度が挙げられる。
「レポーター遺伝子の発現量を測定する」方法としては、例えば、上記形質転換体におけるレポーター遺伝子の発現量を時間経過に沿って連続的に又は不連続に測定する方法をあげることができる。例えば、レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である場合には、ルシフェラーゼアッセイ試薬(プロガメ社)等の市販の測定用試薬を利用することができる。また、「実質的に異なる被検物質を選択する」とは、被検物質非存在下における発現量と比較して被検物質存在下における発現量が10%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上増加するような変化が認められた化合物を選択すればよい。
このようなスクリーニング方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする本発明遺伝子の発現調節剤として利用してもよい。
【0027】
ヒト等の動物個体が保有する本発明蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子型を分析する方法としては、例えば、被検個体から得られる試料に含まれるゲノムDNAやRNA等の核酸において、本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べる方法をあげることができる。
具体的には例えば、まず、ヒト等の被検個体から試料を採取し、該試料からゲノムDNA又はRNAを調製する。例えば、毛髪、末梢血、口腔上皮細胞などの細胞組織の試料から、例えば村松正寶、”ラボマニュアル遺伝子工学”(丸善1988)やTAKARA PCR Technical news No2,宝酒造(1991.9)等に記載される通常の方法に準じてゲノムDNAを調製することができる。例えば試料が毛髪の場合には、毛髪2〜3本を滅菌水、次いでエタノールで洗浄した後、2〜3 mmの長さに切断し、これにBCL-Buffer[10mM Tris-HCl(pH7.5), 5 mM MgCl2, 0.32M Sucrose, 1 Triton X-100]200μlを加え、さらにProteinaseKを最終濃度100μl/ml 、SDSを最終濃度0.5 (w/v)になるようにそれぞれ加え混合する。この混合物を70℃で1時間保温した後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が末梢血の場合は、DNA-Extraction kit(Stratagene社製)等を用いて該試料を処理することによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が新鮮な生検組織サンプルである場合は、該試料から、例えばTRIZOL試薬(GIBCO社製)等を用いてRNAを調製する。調製されたRNAを鋳型にして逆転写酵素を作用させることによりcDNAを合成することができる。
【0028】
このようにして調製されたゲノムDNA、cDNA等から、必要に応じて、本発明蛋白質をコードするDNAをPCR等の手法により増幅する。
ゲノムDNAから、本発明蛋白質をコードするDNAを、PCRで増幅するために使用することのできるプライマーとしては、例えば、
配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
をあげることができ、具体的には、
配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
をあげることができる。より具体的にはフォワードプライマーとして、配列番号7又は8で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をあげることができ、リバースプライマーとして、配列番号9又は10で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をあげることができる。
ゲノムDNAにおいて、本発明蛋白質は8つのエクソンに分かれてコードされている(以下、本発明蛋白質をコードする塩基配列を含むエクソンを、5’上流側から順にエクソン1〜8と記す。)。例えば、ヒト由来の本発明蛋白質をコードする配列番号4で示される塩基配列は、以下の8つに分かれてエクソンに含まれる。
塩基番号1〜276で表される塩基配列;エクソン1
塩基番号277〜428で表される塩基配列;エクソン2
塩基番号429〜531で表される塩基配列;エクソン3
塩基番号532〜799で表される塩基配列;エクソン4
塩基番号800〜909で表される塩基配列;エクソン5
塩基番号910〜1045で表される塩基配列;エクソン6
塩基番号1046から2481で表される塩基配列;エクソン7
塩基番号2482から3252で表される塩基配列;エクソン8
【0029】
そこで、ゲノムDNAから、本発明蛋白質をコードするゲノム遺伝子のエクソンの塩基配列と、該エクソンに隣接するイントロンの塩基配列の一部とを含むDNAを増幅してもよい。このようなDNAを増幅するために用いることができるプライマーとしては、例えば、
配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
をあげることができ、具体的には、
配列番号43〜51のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
をあげることができる。かかるプライマーは例えば、以下のようにして設計することができる。
エクソン1とその5’上流側の非翻訳領域の配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号43で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号11又は12で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン1とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号44で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号13又は14で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン2とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号44で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号15又は16で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン2とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号45で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号17又は18で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン3とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号45で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号19又は20で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン3とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号46で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号21又は22で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン4とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号46で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号23又は24で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン4とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号47で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号25又は26で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン5とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号47で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号27又は28で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン5とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号48で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号29又は30で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン6とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号48で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号31又は32で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン6とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号49で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号33又は34で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン7とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号49で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号35又は36で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン7とその3’下流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号50で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号37又は38で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン8とその5’上流のイントロン配列を含むDNAを増幅するためのフォワードプライマー;配列番号50で示される塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号39又は40で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
エクソン8とその3’下流側の非翻訳領域の配列を含むDNAを増幅するためのリバースプライマー;配列番号51で示される塩基配列に相補的な塩基配列に基づき設計する。
例)配列番号41又は42で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0030】
cDNAから、本発明蛋白質をコードするDNAを、PCRで増幅するために使用することのできるプライマーとしては、例えば、
配列番号4〜6のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してポリメラーゼチェイン反応条件下でアニールすることができ、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチドをあげることができ、具体的には、
配列番号4〜6のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上50塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
をあげることができる。より具体的には例えば、フォワードプライマーとして、配列番号7又は8で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をあげることができ、リバースプライマーとして、配列番号9又は10で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をあげることができる。
これらのポリヌクレオチドは、例えばβ-シアノエチルホスホアミダイト法やチオホスファイト法を用いる市販の自動DNA合成装置によって調製することができる。
【0031】
上記のようなポリヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行う場合、一般にはフォワード用とリバース用の二種類のプライマーを組み合わせて用いる。PCRは、例えばSaikiら、Science、第230巻、第1350ページから第1354ページ(1985)等に記載の方法に準じて行うことができる。例えば、プライマーとして用いられるポリヌクレオチドをそれぞれ約10pmol程度添加し、DNAポリメラーゼ、4種類の塩基(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)、及び鋳型とするゲノムDNA約100ng程度又はcDNA約10ng程度をあらかじめ加えた約1.5 mMから約3.0 mMの塩化マグネシウム等を含有する増幅用緩衝液を調製する。調製された増幅用緩衝液を用いて、例えば、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル程度行なう。
【0032】
上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAの塩基配列を決定することにより、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べることもできる。
具体的には例えば、上記のようにしてPCRで増幅されたDNAを低融点アガロースゲル電気泳動等に供してゲルから回収した後、回収されたDNAについて、例えばダイレクトシークエンス[BioTechniques,7,494(1989)]を行うことにより該DNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列は、Maxam Gilbert法(例えば、Maxam.A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol.,94, 441, 1975.,Sanger,F., & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 74, 5463, 1977等に記載される)に準じて解析すればよい。ABI社製モデル377等の自動DNAシークエンサーを用いる場合には、対応するDNAシークエンスキット例えばABI社製BigDye terminator cycle sequencing ready reaction kit等を用いてシークエンス用サンプルを調製することができる。
【0033】
また、上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAを電気泳動してその移動度を測定し、測定された移動度と、標準蛋白質の該当する領域をコードするDNAの移動度とが異なるか否かを調べることにより、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べることもできる。
具体的には例えば、上記のようにしてDNAをPCRで増幅する際に、通常の方法に準じて32P標識したポリヌクレオチドをプライマーとして用いて前述のようにPCRを行う。また、標準蛋白質の相当する領域をコードするDNAも同様にして増幅する。増幅されたDNAを、例えばHum.Mutation, 2巻、338ページに記載されるSSCP(single strand conformation polymorphism)法などに準じて電気泳動する。具体的には、増幅されたDNAを加熱変性して一本鎖DNAに解離せしめ、これを非変性ポリアクリルアミド電気泳動に供して一本鎖DNAを各々分離する。電気泳動に用いられる緩衝液としては、トリス−リン酸系(pH7.5-8.0)、トリス-酢酸系(pH7.5-8.0)、トリス−ホウ酸系(pH7.5-8.3)などがあげられる。また必要に応じて、EDTA等を添加することもできる。電気泳動の条件としては、例えば、定電力30W-40W、泳動温度は室温(約20 ℃から約25℃)又は4 ℃にて、1時間から4時間泳動する条件をあげることができる。次いで、電気泳動後のゲルをろ紙上に移し、この上にX線フィルムを密着させ、適当な遮光カセットの中で、放射能ラベルされた各々の一本鎖DNAの放射線をフィルム上に感光させる。該フィルムを現像し、得られたオートラジオグラム上で、被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAと、標準蛋白質の相当する領域をコードするDNAの移動度を比較する。これらのDNAの移動度が異なる場合には、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有していると判定することができる。さらに、この移動度の異なるDNAを含むゲルからそこに含まれるDNAを沸騰水中に抽出し、これを鋳型にしてPCRを行うことにより該DNAを増幅し、低融点アガロースゲル電気泳動に供して回収したのちダイレクトシークエンスを行うことにより、該DNAの塩基配列を確認することもできる。このようにして標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を特定することができる。
【0034】
被検試料中のゲノムDNA、cDNAもしくはmRNA等の核酸、又は上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAと、
配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにスリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド
とのストリンジェントな条件下におけるハイブリダイゼーションのパターンを調べることにより、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有しているか否かを調べることもできる。
「配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにスリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチド」としては、具体的には例えば、配列番号4、5、6もしくは54のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有し、10塩基以上5000塩基以下の塩基からなるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0035】
被検試料から調製されたゲノムDNA、cDNAもしくはmRNA等の核酸、又は上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAと、プローブとして用いる上記のポリヌクレオチドとを混合してストリンジェントな条件下にハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションは、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載される通常のドットブロットハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法又はノザンブロットハイブリダイゼーション法や、ミスマッチハイブリダイゼーション部位に結合する酵素であるTaq MutSを利用したミスマッチ検出方法[ Biswas,I.and Hsieh,P. J.Biol.Chem.,271 9 pp5040-5048(1996)やNippon gene information 1999 No.125,ニッポンジーン社 、富山 などに記載がある]、などに準じて行うことができる。
ハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件としては、例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを、6×SSC(0.9M 塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v) フィコール400、0.1(w/v) ポリビニルピロリドン、0.1SA)、0.5(w/v) SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に行うか、又は100μg/ml変性サケ精子DNAを含むDIG EASY Hyb溶液(ベーリンガーマンハイム社)中で行い、洗浄工程として、1×SSC(0.15M 塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5DS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5DS存在下に、30分間保温する条件をあげることができる。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及び洗浄工程における保温温度は、プローブとして使用されるポリヌクレオチドの長さと組成によって異なるが、一般的には、プローブのTm値と同じか、Tm値よりも若干低い温度に設定される。具体的には例えば、ハイブリダイゼーションにおいて、プローブと試料中の核酸との間に塩基間水素結合が形成される際の塩基対を想定し、AとTの塩基対1つにつき2℃、GとCの塩基対1つにつき4℃として、水素結合を形成するすべての塩基対の値を合計してこれをTm値とする。このようにして算出されるTm値と同じ温度か、およそ2℃〜3℃程度低い温度を選択する。
【0036】
ドットブロットハイブリダイゼーション法の具体的な手順としては、例えば、まず、被検試料から調製されたゲノムDNAもしくはcDNA等の核酸、又は上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAを、例えば、90 ℃から100 ℃で、3〜5分間保温した後、ナイロンフィルター[Hybond N(アマシャムファルマシア社製)など]にスポットし、スポットされたフィルターを濾紙上で乾燥した後、これに紫外線照射することによりDNAをフィルターに固定する。次いで、得られたDNA固定フィルターと上記のプローブとを、例えば、40℃〜50℃で、10時間〜20時間インキュベートすることによりハイブリダイズさせ、通常の方法に準じてプローブを含むハイブリッドを検出する。プローブとして32P等の放射性同位元素で標識した放射性プローブを用いる場合は、ハイブリダイズ後のフィルターをX線フィルムに感光させることによりプローブを含むハイブリッドを検出することができる。ビオチン化ヌクレオチドで標識した非放射性プローブを用いる場合は、ストレプトアビジンを介してビオチン化アルカリ性フォスファターゼ等により該プローブを含むハイブリッドを酵素標識し、酵素反応による基質の呈色あるいは発光を検出することによりプローブを含むハイブリッドを検出することができる。また、アルカリ性フォスファターゼあるいはペルオキシダーゼ等の酵素でスぺーサーを介して直接標識した非放射性プローブを用いることもできる。被検試料由来のDNAについてプローブを含むハイブリッドが検出されないか、又は標準蛋白質の相当する領域をコードするDNAについて検出されるハイブリッドの量よりも、被検試料由来のDNAにおいて検出されるハイブリッドの量の方が少ない場合には、被検試料の核酸に、使用したプローブの塩基配列とは異なる塩基配列が含まれると判定することができる。
【0037】
サザンブロットハイブリダイゼーション法やノザンブロットハイブリダイゼーション法の手順としては、被検試料から調製されたゲノムDNA、cDNAもしくはmRNA等の核酸、又は上記のようにして被検試料の核酸を鋳型として増幅されたDNAを、必要に応じて制限酵素で消化した後、アガロースゲル電気泳動やポリアクリルアミドゲル電気泳動等の電気泳動に供して分画し、ニトロセルロースフィルターやナイロンフィルター等のフィルターにブロッティングする。得られたフィルターは、上記と同様に処理してプローブとのハイブリダイゼーションを行う。プローブを含むハイブリッドの量やプローブとハイブリッドを形成した核酸の長さ等が、被検試料由来の核酸と、標準蛋白質の相当する核酸とで異なる場合には、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有していると判定することができる。
【0038】
ミスマッチハイブリダイゼーション部位に結合する酵素であるTaq MutSを利用したミスマッチ検出方法を利用する場合には、熱(0〜75℃)に対して安定で、高い温度でも活性を維持してDNAのミスマッチ塩基対を認識して結合可能なTaq MutSの結合特性を利用して、未変性ポリアクリルアミドゲルを利用したゲルシフトアッセイ又はナイロンフィルターやニトロセルロースフィルターなどの固相上でのドットブロッティング法等にてミスマッチ塩基対を検出することができる。ミスマッチが検出された場合には、被検試料の核酸に、使用したプローブの塩基配列とは異なる塩基配列が含まれると判定することができる。
標準蛋白質は、本発明蛋白質の中から適宜選ぶことでき、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列からなる本発明蛋白質をあげることができる。
【0039】
本発明キットは、上記の如く、ハイブリダイゼーション(例えば、ドットブロットハイブリダイゼーション、サザンブロットハイブリダイゼーション、ノザンブロットハイブリダイゼーション、ミスマッチハイブリダイゼーション等)法、SSCP法(DNAの移動度を利用する手法)、PCR(例えば、ゲノムDNAを鋳型としたPCR、cDNAを鋳型としたPCR等)等の公知の方法を利用して遺伝子の存在有無、遺伝子型、蛋白質型等を調べる方法に適用することができる。この場合、本発明キットは、上記の公知の手法に必要な試薬を含んでいてもよいし、また当該試薬と組み合わせて使用してもよい。
上述のようにして行うことができるヒト等の動物個体が保有する本発明蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子型の分析は、本発明蛋白質の変異により惹起される疾病や障害等の診断、予防、治療等に有用である。
また本発明蛋白質をコードする遺伝子は、ヒト染色体上の11q13領域のSTSマーカーD11S913とD11S1889との間にマップされる。詳細にはD11S913からテロメア側へ約175kbpの位置に存在する遺伝子であることから、Bardet-Biedl症候群I型に関するTightly linked遺伝マーカーとしての利用が期待でき、前記方法によって当該疾患の診断に応用可能である。
【0040】
さらに、本発明は、本発明蛋白質をコードする塩基配列に相補的な塩基配列またはその部分塩基配列からなる核酸をも提供する。例えば、病理切片に対してかかる核酸をプローブに用いてIn situハイブリダイゼーションを行うことにより、本発明蛋白質が関わる疾患の有無や進行具合を調べることができる。
プローブとして利用する上記核酸としては、例えば20塩基以上の長さを有するポリヌクレオチドをあげることができる。当該プローブを診断薬の有効成分とするには、プローブが分解されないような適当なバッファー類や滅菌水に溶解することが好ましい。また、In situハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、J. Neurobiol. 29, 1-17 (1996)に記載の手法が挙げられる。また、In situ PCRを利用することも可能である。
【0041】
本発明は、哺乳動物細胞に、本発明蛋白質をコードするDNAを、当該DNAが前記細胞で発現する位置に置かれるように提供する工程を含む哺乳動物におけるdrebrin 1の発現促進方法も提供している。
哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物由来の細胞を挙げることができる。当該細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、前記哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。従って、哺乳動物がヒトである場合には、一般にいう遺伝子治療が施されたヒトの細胞から各種実験に使用されるような株化細胞までを意味し、また哺乳動物が非ヒト動物である場合には、一般にいう遺伝子治療が施された非ヒト動物の細胞から各種実験に使用されるようなモデル動物の細胞や株化細胞までを意味する。後者の場合には、ラット、マウス等を好ましい動物種として挙げることができる。さらに、哺乳動物細胞が、精神遅延を伴う疾患又はアルツハイマー症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞である場合をより具体的な例としてあげることができる。
【0042】
本発明DNAの調製は、上述と同等な方法に準じて行えばよい。また、高効率プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター)の制御下に本発明DNAを発現させるインビボ転写系によって調製することもできる。調製されたDNAを用いて後述のように形質転換細胞を調製することにより、当該DNAが哺乳動物細胞で発現する位置に置かれるように提供された形質転換細胞を得ることができる。
本発明発現促進方法において「発現する位置に置かれた」とは、DNA分子が、その塩基配列からの転写及び翻訳を指向する(即ち、例えば、本発明蛋白質をコードするRNAおよび本発明蛋白質の産生を促進するような)塩基配列と隣接した位置に置かれていることを意味する。
本発明蛋白質の発現レベルは、本発明蛋白質をコードするDNAが提供されていない細胞と比較してdrebrin 1の発現を促進するために十分である量であればよい。この場合、本発明DNAは、本発明蛋白質の全体をコードするDNAであってもよいし、当該蛋白質の一部をコードするDNAであってもよい。
上記の発現促進方法において、本発明DNAがゲノムに組み込まれるように哺乳動物細胞に提供することにより、drebrin 1の発現を促進してもよい。
【0043】
上記の発現促進方法において、本発明DNAを哺乳動物細胞に導入するために用いられる遺伝子構築物(以下、本遺伝子構築物と記載することもある。)および移入送達手段には、当該DNAが導入される哺乳動物細胞に対して親和性を有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はその他のウイルスベクターを用いることができる。具体的には例えば、ミラー(Miller),Human Gene Therapy 15〜14,1990;フリードマン(Friedman),Science 244:1275〜1281,1989;エグリティス(Eglitis)およびアンダーソン(Anderson),BioTechniques 6:608〜614,1988;トルストシェフ(Tolstoshev)およびアンダーソン(Anderson),current opinion in Biotechnology 1;55〜61,1990;シャープ(Sharp),The Lancet 337:1277〜1278,1991;コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322,1987;アンダーソン(Anderson),Science 22-:401〜409,1984;モーン(Moen),Blood Cells 17:407〜416,1991;ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990,1989;Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990,1993;およびジョンソン(Johnson),Chest 107:77S〜83S,1995等に記載される公知のベクターをあげることができる。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクターは特に開発が進んでおり、臨床の場でもすでに使用されている。
また、本発明DNAの移入送達手段としては、非ウイルス的手法を用いることもできる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987;オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259,1990;ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985,1989等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465,1990等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等があげられる。
【0044】
本遺伝子構築物において、本発明DNAは、当該DNAを構成的に発現させるようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。
また、本発明DNAは、当該DNAの発現を環境刺激により調節するようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、上記DNAは、化学的信号もしくは薬物刺激等の外来性の信号もしくは薬物の導入により活性化されるプロモーターを用いて発現させてもよい。
また、本発明DNAは、組織特異的もしくは細胞型特異的なプロモーターの制御下に置かれていてもよい。かかるプロモーターには、哺乳動物における組織または細胞に特異的な転写制御に関与するプロモーター要素(エンハンサー等)が含まれていてもよい。例えば、必要に応じて、本発明DNAを発現させるために、神経細胞におけるDNAの発現を優先的に指向することが知られるエンハンサーを用いてもよい。また、本発明蛋白質をコードするゲノムDNAのクローンを本遺伝子構築物として用いる場合には、本発明蛋白質をコードする遺伝子の元来の発現調節領域に含まれるコグネイト調節配列を介して本発明DNAを発現させることができ、必要に応じて、上記の任意のプロモーター又はプロモーター要素を付加して発現を制御することもできる。
尚、上記のようなプロモーターまたはプロモーター要素をマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用することもできる。
【0045】
上記の発現促進方法を遺伝子治療の手段として応用する場合には、本遺伝子構築物は、drebrin 1過少発現が予想される部位に対して適用される(例えば、注入によって)ことがよい。また、drebrin 1過少発現等の現象が予想される部位の近傍の組織又はdrebrin 1過少発現が起こると予想される細胞に供給される血管に対してそれを適用してもよい。また、本遺伝子構築物を適用しようとする哺乳動物にとって外因性又は内因性の培養可能な細胞に、本遺伝子構築物を導入し、次いで、導入された細胞を血清学的に標的組織に対して注入することもできる。
理想的には、かかる遺伝子治療の手法により、少なくとも非罹患細胞における正常な本発明蛋白質の細胞内レベルと同等の本発明蛋白質の発現量がもたらされるとよい。
【0046】
以下に、一例として、哺乳動物が形質転換非ヒト動物である場合の本発明発現促進方法についてより詳細に説明する。
形質転換非ヒト動物の作製における本発明DNAの導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、レトロウイルスを用いる方法、胚性未分化細胞(ES細胞)を用いる方法等を挙げることができる。このうち、マイクロインジェクション法が最も汎用されている。マイクロインジェクション法とは、マイクロマニピュレーターを用いて、顕微鏡下で受精卵の前核内部に上記DNAを含んだ溶液を注入する方法である。
まず、本発明DNAを受精卵に注入する。その際、当該DNAを高い確率で染色体へ組込むためには、当該DNAの単離に用いたベクター領域を可能な限り除去すること、mRNAの不安定化に寄与するAUに富む領域を除くこと、直鎖状にすることが好ましい。また、当該DNAに対してイントロンを予め挿入しておくことが好ましく、当該イントロンとしては、例えば、β−グロビンイントロン等を挙げることができる。
受精卵は、目的に応じた系統の非ヒト動物から採取する。例えば、マウスの場合には、近交系のC57BL/6マウスやC3Hマウス、あるいはC57BL/6マウスと他系統のマウスとの交雑系(例えば、(C57BL/6×DBA/2)F1等)、非近交系のICRマウスが挙げられる。受精卵は、通常、妊馬血清ゴナドトロピンとヒト絨毛性ゴナドトロピンとの両者の腹腔内投与により過剰排卵を誘発させた雌マウスと雄マウスとを交尾させた後、前記雌マウスから採取する。尚、採取した受精卵は培養用ドロップに入れ、CO2ガスインキュベーターで培養・維持することにより、上記DNAの注入操作まで保管することができる。
上記DNAの注入はマイクロマニピュレーターをセットした倒立顕微鏡下で行なう。用いられる受精卵としては、雄性前核が雌性前核より大きくなる頃から両前核が融合するまでの発達段階にあるものを用いるとよい。まず受精卵を固定し、当該受精卵の雄性前核内に当該DNAを含有するDNA溶液を注入する。当該DNA溶液は必要に応じて複合体として調製する。複合体形成に用いられる物質としては、リポソーム、リン酸カルシウム、レトロウイルス等を挙げることができる。DNA溶液の注入は雄性前核が膨らむことにより確認できる。DNA注入量としては、例えば、約200〜約3,000コピーの上記DNAを含む量を挙げることができる。
【0047】
このようにして、本発明DNAが注入された受精卵は胚盤胞になるまで前記と同様にして培養した後、仮親の子宮に移植する。好ましくは当該DNAの注入操作後ただちに仮親の卵管に移植するとよい。仮親としては、精管切断手術を施した雄マウスと交尾させて偽妊娠状態にした雌マウスを用いるとよい。具体的には、まず当該雌マウス背側の腎臓付近の皮膚と筋層を切開して卵巣・卵管・子宮を引き出し、卵巣膜を破いて卵管口を探し出す。次いで当該DNAの注入操作後に生き残った受精卵を該卵管口から移入し、卵巣・卵管・子宮を腹腔内に戻した後、筋層を縫合し、皮膚をクリップでとめる。約20日後に仔が生まれる。
得られた仔の体組織の一部、例えば尾の一部、を切り取り、当該部位から抽出されたDNAのサザンブロッティング等により当該DNAの存在有無を確認する。このようにして、当該DNAが非ヒト動物に導入されたことを確認できる。あるいは他の方法、例えばPCRなどの確認方法を利用してもよい。
【0048】
本発明遺伝子治療剤の有効成分となる、本発明DNAは、前述の如く調製すればよい。また、例えば、当該DNAを含有する組換えベクター又は組換えウイルス等の形態で使用されることもある。このような形態には、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連性ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、SV40ベクター、ポリオーマウイルスベクター、乳頭腫ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクター等のウイルスベクターを利用することができる。さらに、アデノウイルスベクターを使用する場合には、例えばQUANTUM社製のAdEasy Kitを用い、本発明DNAをTransfer Vectorのマルチクローニングサイトに組み込み、得られた組換えベクターを直線化した後に、pAdEasy vectorと共に大腸菌にトランスフォームし、相同組換え体DNAをヒト293A細胞に組み込むことにより、本発明DNAを含有する組換えウイルスを産生させ、これを回収し、使用することもできる。
また、ヒトサイトメガウイルスのプロモーター領域を有するプラスミドDNA等のような非ウイルス系のベクターを用いることもできる。本発明DNAをdrebrin 1過少発現が予想される部位に直接注入する場合のように、非ウイルスベクターを用いて本発明DNAを局所的に送達するシステムにおいては、プラスミドDNAの使用は極めて有益である。体外に取り出された細胞に本発明DNAを含有する組換えベクターを導入して体内に戻す方法、すなわち、ex vivo法を使えば、あらゆる既知の導入方法が利用可能である。例えば、a)直接注入、b)リポソームを介する形質導入、c)リン酸カルシウム法・エレクトロポレーション法・DEAE−デキストラン法による細胞トランスフェクション、d)ポリブレンを介した送達、e)プロトプラスト融合、f)マイクロインジェクション、g)ポリリシンを使った形質導入などによって、非ウイルスベクターを導入することができる。
【0049】
本発明遺伝子治療剤は、その有効量を非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、非経口的に投与する方法としては、例えば、上述のような注射(皮下、静脈内等)等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本発明DNA(本発明DNAが組み込まれた組換えベクター、組換えウィルス、組換えプラスミド等の形態を含む)を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本脂肪蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は、患者細胞において本発明蛋白質が細胞内で有効に働くような濃度レベルをもたらす有効成分量を投与すればよい。1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
実施例1(本発明DNAの取得と本発明ベクターの作製)
配列番号7〜10のいずれかで示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。鋳型として、ヒトFetal Brain cDNAライブラリー(#10662−013ギブコBRL社製)10 ng、マウスBrain cDNAライブラリー(#10655−017ギブコBRL社製)、又はラットBrain cDNAライブラリー(#9539宝酒造社製)を使用し、それぞれの鋳型に対してプライマーとして前記ポリヌクレオチドを表1に記載の組合せで用いてPCRを行なった。
【0052】
【表1】
【0053】
該PCRにおいて、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチドをそれぞれ10pmol添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び該酵素に添付されたバッファーを用いた。反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次いで、反応液全量を、低融点アガロース(アガロースL:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供した。約2.5kbのDNAの単一バンドを確認した後、該DNAを回収した。回収されたDNAの一部とダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いたダイレクト塩基配列解析に供した。ヒトcDNAライブラリーを鋳型として得られたDNAは配列番号4で示される塩基配列を有しており、該塩基配列には配列番号1で示されるアミノ酸配列がコードされていた。マウスcDNAライブラリーを鋳型として得られたDNAは配列番号5で示される塩基配列を有しており、該塩基配列には配列番号2で示されるアミノ酸配列がコードされていた。また、ラットcDNAライブラリーを鋳型として得られたDNAは配列番号6で示される塩基配列を有しており、該塩基配列には配列番号3で示されるアミノ酸配列がコードされていた。
次に、上記のようにして回収され塩基配列の確認された約2.5 kbのDNAの約1μgを、それぞれpGEM T easyベクター(プロメガ社製)10ngと混合し、これにT4 DNAリガーゼを添加して反応させた。得られた反応液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリン耐性を示したコロニーからプラスミドDNAを調製し、その塩基配列をABIモデル3700型オートシークエンサーを用いてダイターミネーター法で決定した。決定された塩基配列を、前述のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致しているプラスミドを選択した。配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNAを含有するプラスミドをpGEM-hNXF、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードするDNAを含有するプラスミドをpGEM-mNXF、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードするDNAを含有するプラスミドをpGEM-rNXFと名付けた。
配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列を互いに、GenetyxSV/R ver.4(ソフトウエア開発社製)プログラムを用いて比較した。その結果、配列番号1で示されるアミノ酸配列と配列番号2で示されるアミノ酸配列とのアミノ酸同一性は93%であり、配列番号2で示されるアミノ酸配列と配列番号3で示されるアミノ酸配列とのアミノ酸同一性は98%であった。
また、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列について、GenomNet(日本,www.motif.genome.ad.jp)のデータベースサービスを利用し,PROSITE(Nucl.Acids.Res,1997;24:217-221,Bairoch,A.et al.),BLOCKS(Nucl.Acids.Res,1991;19:6565-6572,Henikoff,S.et al.),ProDom(Protein Sci,1994;3:482-492,Sonnhammer,E.L.et al.),PRINTS(Protein Eng,1994;7:841-848,Attwood,T.K.et al.)の各モチーフ辞書に対してモチーフ検索を行なった。その結果、いずれのアミノ酸配列においても、アミノ酸番号1〜24付近の領域にbHLHモチーフが存在し、アミノ酸番号25付近〜310付近の領域にPASドメインが存在することが判った。
【0054】
実施例2(本発明蛋白質をコードするcDNAのPCRによる増幅)
ヒト76人分の網膜から抽出されたmRNAから作製されたcDNA(#7124−1,クロンテック社製)を鋳型にして、配列番号52で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドオリゴヌクレオチドと配列番号53で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドオリゴヌクレオチドとをプライマーとして用いてPCRを行った。50μlの反応液に対して前記ポリヌクレオチドをそれぞれ10 pmol添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び該酵素に添付されたバッファーを用いた。反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95 ℃1分間次いで68 ℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次いで、反応液全量を、アガロース(アガロースS:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供した。約2.5kb付近にDNAの単一バンドが認められた。本発明蛋白質をコードするmRNAがヒト網膜で発現していることが確認された。
【0055】
実施例3(本発明蛋白質をコードする核酸のハイブリダイゼーション法による検出)
実施例1で作製されたプラスミドpGEM-hNXFをBamHIとNotIとで消化し、消化物を低融点アガロース(アガロースL、ニッポンジーン社製)を用いたアガロースゲル電気泳動に供して、約1.0kbpのDNA及び約2.3kbpのDNAを回収した。回収されたそれぞれのDNAの50ngをランダムプライマー法によるラベリングキット(RediprimeII:アマシャムファルマシア社製)とα32P-dCTP(アマシャムファルマシア社製)とを用いて32P標識した。
標識された約1.0kbpのDNAをプローブとして、ヒトの種々の組織のmRNAがブロットされたナイロンフィルター[Human 12−Lane MTN Blot(#7780−1、クロンテック社製)及び Human MTN Blot IV(#7766−1クロンテック社製)]に対してハイブリダイズさせた。また、標識された約2.3kbpのDNAをプローブとして、ヒトの脳等の組織のmRNAがブロットされたナイロンフィルター[Human Brain MTN BlotII(#7755−1クロンテック社製)及び Human Brain MTN BlotIV(#7769−1クロンテック社製)]に対してハイブリダイズさせた。
ハイブリダイゼーションの条件は、上記ナイロンフィルターの取扱説明書に記載の条件にしたがった。即ち、5mlのExpressHyb液(#クロンテック社製)中でナイロンフィルターを68℃で30分間保温した後、上記の標識プローブをそれぞれ50ng加え、68℃で更に1時間保温した。次に、フィルターを、0.05DSを含む2XSSC溶液 約200ml中で65℃30分間保温する操作を2回行い、更に0.1%SDSを含む0.1XSSC溶液で65℃30分間保温する操作を2回行った。次いで、ナイロンフィルターをイメージングプレート(フジフィルム社製)に密着させて1週間放置した後、イメージングアナライザー(BASstation:フジフィルム社製)でプレート上の感光像を検出した。検討したヒト組織は以下の通りである。
Brain,Heart,Skeletal muscle,Colon(no mucosa),Thymus,Spleen,Kidney,Liver,Small intestine,Placenta,Lung,Peripheral blood leukocyte,Prostate,Testis,Uterus(no endometrium),
Cerebellum,Cerebral cortex,Medulla,Spinal cord,Occipital pole,Frontal lobe,Temporal lobe,Putamen,Amygdala,Caudate nucleus,Corpus callosum,Hippocampus,Substantia nigra,Thalamus.
その結果、ヒトの種々の組織のmRNAがブロットされているナイロンフィルターにおいて、Brainに強いシグナルが検出され、Skeletal muscle及びKidneyに弱いシグナルが検出され、他の組織についてはシグナルが検出されなかった。また、ヒトの脳等の組織のmRNAがブロットされたナイロンフィルターにおいては、フィルター上にブロットされたすべての脳組織と延髄及び脊髄でシグナルが検出された。
【0056】
実施例4(本発明蛋白質をコードする遺伝子の遺伝子型分析)
ヒト脳の凍結サンプル0.1グラムに対してTrizole試薬(GibcoBRL社製)を1ml加えホモジナイズする。得られたホモジネートに0.2mlのクロロホルムを加えて攪拌した後、4℃にて12,000xgで15分間遠心分離し、有機層と水層をそれぞれ別のチューブに移す。水層には0.5mlのイソプロパノールを加えて混合し5分間室温放置した後、4℃にて12,000xgで10分間の遠心分離してRNAの沈殿を回収する。回収された沈殿を70%エタノールでリンスした後風乾し、水に溶解させ、これをヒトRNA試料とする。
上記のように調製されたヒト脳RNA1μgを鋳型にして、オリゴdTプライマー(アマシャムファルマシア社製)1μgをプライマーとして用い、SuperscriptII(ギブコ社製)及び該酵素に添付のバッファーを添加して37℃で1時間保温する。得られたヒト脳cDNA溶液の50分の1を鋳型にして、配列番号7で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド及び配列番号9で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをプライマーとして用いて、実施例1と同様にしてPCRを行いDNAを増幅する。得られたDNAを、1%の低融点アガロース(アガロースL、ニッポンジーン社製)ゲルで電気泳動して回収する。回収されたDNAの全量を鋳型にして、ダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)によりダイレクトシークエンス用のサンプルを調製する。これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いた塩基配列解析に供し塩基配列を決定する。
一方、ヒト肝臓凍結サンプル0.1グラム分にTrizole試薬を加えて上記と同様にして有機層を分取した。得られた有機層に0.3mlのエタノールを加えて、4℃にて2,000xgで5分間遠心分離し、沈殿を回収した。この沈殿を0.1M クエン酸ナトリウムと10%エタノールとの混合溶液でリンスした後風乾し、TEに溶解させてヒトゲノムDNA試料とした。該ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、本発明蛋白質をコードするゲノム遺伝子のエクソンの塩基配列と、該エクソンに隣接するイントロンの塩基配列の一部とを含むDNAを増幅した。プライマーとしては、配列番号11〜42のいずれかで示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成し、表2に記載の組合せで用いた。
【0057】
【表2】
【0058】
PCRは、LA−Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造製)を使用し、100μMの4種類の各々の塩基(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)及び前記酵素に添付された専用バッファー中で、95℃にて1分間次いで68℃にて1分間の保温を1サイクルとして、これを35サイクル実施した。得られた反応液の一部をそれぞれアガロースゲル電気泳動に供した。サンプル番号1〜16のいずれにおいても、アガロースゲル上でDNAの単一バンドが検出された。
残りのPCR反応液を、1%の低融点アガロース(アガロースL、ニッポンジーン社製)ゲルで電気泳動し、バンドとして検出されるDNAを回収する。回収されたDNAを鋳型にして、ダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)によりダイレクトシークエンス用のサンプルを調製する。これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いた塩基配列解析に供し塩基配列を決定する。
検体の毛髪2〜3本を滅菌水で洗浄した後、さらに100%エタノールで洗浄し、室温で風乾した後、2〜3mmの長さに切断してプラスチック製チューブに移す。これにBCL buffer[10mM Tris-HCl(pH7.5), 5mM MgCl2, 0.32M sucrose, 1Triton X-100]200μlを加え、さらに最終濃度100μg/mlのProteinase K溶液及び最終濃度0.5(w/v)のSDS溶液をそれぞれ添加し混合する。得られた混合物を70℃にて1時間保温した後、等量のフェノール/クロロホルムを加え、激しく振とうした後、遠心分離(15,000rpm,5分間、4℃)する。フェノール層を乱さないようにピペットで水層を回収し、もう一度フェノール抽出を行なう。回収された水層に等量のクロロホルムを加え、激しく振とうした後、遠心分離により水層を回収する。回収された水層に500μlの100%エタノールを加え、-80℃にて20分間保温した後、遠心分離する。得られたペレットを乾燥した後、滅菌水に溶解させゲノムDNAとして上記と同様にPCRを行なう。ヒト末梢血を被検試料として用いる場合は、10mlの血液を採取し、DNA Extraction kit(ストラタジーン社製)を用いて添付マニュアルに従いゲノムDNAを抽出する。得られるゲノムDNAを上記と同様にPCRに供する。
【0059】
実施例5(PCR−SSCP法による遺伝子型の分析)
実施例4でプライマーに用いたポリヌクレオチドを、DNA MEGALABELキット(宝酒造社製)を用いて、末端を32P標識する。実施例4と同様にして得られるゲノムDNA1μg程度を鋳型にして、標識されたポリヌクレオチド100pmol程度ずつをプライマーとして用いてPCRを行い本発明蛋白質をコードするゲノム遺伝子のDNAを増幅する。該PCRは、LA-Taq(宝酒造製)を使用し、100μMの4種類の各々の塩基(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)及び前記酵素に添付された専用バッファー中で、95℃にて1分間次いで68℃1分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル実施する。増幅されたDNAの1/20量を80%ホルムアミド中で80℃、5分間の条件で加熱変性した後、その1/20量を5%未変性中性ポリアクリルアミドゲルを用いて、180mMトリス−ホウ酸緩衝液(pH8.0)中で電気泳動する。電気泳動の条件は、室温空冷、定電力40W、60分である。泳動終了後、ゲルをX線フィルムに密着させてオートラジオグラムをとることにより、標識されたポリヌクレオチドをプライマーとして増幅されたDNAを検出する。標準蛋白質の該当する領域をコードするDNAを隣り合わせて泳動しておき、被検試料由来のDNAの移動度と比較する。これらのDNAの移動度が異なる場合には、被検試料の核酸において本発明蛋白質をコードする塩基配列が、標準蛋白質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有していると判定する。さらに、オートラジオグラフィーにより検出される被検試料由来のDNAのバンドに対応する位置のゲルの一部を1mmx1mm角に切り取り、滅菌水100μl中で90℃にて10分間処理し、その1/20量を鋳型にしてPCRを行う。増幅したDNAを低融点アガロースゲル電気泳動に供してゲルからDNAを回収した後、回収されたDNAを鋳型にして、BigDye Terminator cycle sequence ready reaction kit(アプライドバイオシステムズ社製)と自動DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製モデル377)を使用して塩基配列を決定することにより変異を特定する。
【0060】
実施例6 (本発明蛋白質の転写調節能)
(6−1)pGL3-TATA-Galx4の調製
GAL4のDNA結合領域と任意の転写調節因子との融合蛋白質の転写調節能を測定するために用いたレポーター遺伝子プラスミドであるpGL3-TATA-Galx4には、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流に、Gal4のDNA結合領域が結合可能なDNAがタンデムに4コピー導入されている。GAL4のDNA結合領域と任意の転写調節因子との融合蛋白質を当該レポーター遺伝子プラスミドに作用させルシフェラーゼ遺伝子の発現量を測定することによって、前記融合蛋白質が有する転写調節能を測定することができる。当該pGL3-TATA-Galx4レポーター遺伝子プラスミドは以下のようにして作製した。
まず、GAL4のDNA結合領域が結合可能な塩基配列を有する2種のオリゴヌクレオチド[5´-cgcgtcgagc tcgggtcgga ggactgtcct ccgactgctc gagtcgagct cgggtcggag gactgtcctc cgactgctcg aga-3´(配列番号56)、5´-cgcgtctcga gcagtcggag gacagtcctc cgacccgagc tcgactcgag cagtcggagg acagtcctcc gacccgagct cga-3´(配列番号57)]をアニールした後にT4 Kinaseで5´末端をリン酸化し、これをT4 Ligaseと反応させた。得られた反応物を、低融点アガロース(NuseiveGTG;FMCbio社製)を用いた電気泳動に供することにより、上記2種のオリゴヌクレオチドがアニールしてなるDNAがタンデムに2つ結合してなるDNAを回収した。これをインサートDNAとし、pGL3-TATAベクターをMluIで切断した後アルカリフォスファターゼ(BAP C75;宝酒造製)処理して得られたDNA0.1μgにT4 Ligase(宝酒造製)を添加して16℃16時間反応させることにより結合させた。このようにして、レポーター遺伝子プラスミドpGL3-TATA-Galx4を得た。
【0061】
(6−2)pRC/RSV-Gal4-DBDの調製
GAL4のDNA結合領域(以下、Gal4-DBDと記すことがある。)を発現するプラスミドであるpRC/RSV-Gal4-DBDは、以下のようにして作製した。
Gal4-DBDをコードする塩基配列を有するプラスミドpM(市販キットK1602-1に含まれる;Clontech社より購入)をNheIとXbaIとで切断した後、更にT4 ポリメラーゼで平滑末端化した。それを低融点アガロース(アガロースL;ニッポンジーン社製)を用いた電気泳動に供することにより、Gal4-DBDをコードするDNA(約500bp)を回収した。回収されたDNAをインサートDNAとした。
次に、pRC/RSV(Invitorgen社製)をHindIIIで切断した後に、更にT4ポリメラーゼで平滑末端化した。それをBAP処理して得られたDNA(0.1μg)に前記インサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、pRC/RSV-Gal4-DBDを作製した。尚、得られたプラスミドの塩基配列をABIモデル3700型オートシークエンサーを用いたダイターミネーター法で決定することにより、RSVプロモーターの制御下にGal4-DBDが発現するようにプラスミドが構築されていることを確認した。
【0062】
(6−3)pRC/RSV-MAの調製
GAL4のDNA結合領域と任意の転写調節因子の転写調節領域等とが結合した融合蛋白質を発現させるために、Gal4-DBDをコードするDNAの下流に、制限酵素PmaCIの認識部位が導入されたプラスミドpRC/RSV-MAを作製した。当該プラスミドは、RSVプロモーターの下流にGal4-DBDをコードするDNAを有しており、さらにその下流のPmaCI切断末端に、Gal4-DBDをコードするDNAの翻訳フレームに対して任意の平滑末端化DNAの翻訳フレームが一致するように当該DNAを結合させることができる。
具体的には、pRC/RSV-MAは以下のようにして作製した。
まず、2種のオリゴヌクレオチド[5´-agcttcatcccacgtgagtcat-3´(配列番号58)、5´-ctagatgactcacgtgggatga-3´(配列番号59)]をアニールした後にT4 kinaseでその5'末端をリン酸化した。得られたDNAをインサートDNAとし、前記(6−2)で調製されたpRC/RSV-Gal4-DBDをHindIIIとXbaIとで切断した後BAP処理して得られたDNAとT4 Ligaseで結合させることにより、pRC/RSV-MAを作製した。
【0063】
(6−4)pRC/RSV-MA-mNXF(AvaI frg)の調製
RSVプロモータの制御下に、GAL4のDNA結合領域(GAL4-DBD)と本発明蛋白質の転写調節領域との融合蛋白質を発現するためのプラスミドであるpRC/RSV-MA-mNXF(AvaI frg)(以下、このプラスミドをGal4-NXF Ctermと記すこともある。)は、以下のようにして作製した。
まず、実施例1で調製されたpGEM-mNXFをAvaIとNotIとで切断した後、更にT4ポリメラーゼで平滑末端化した。それを、低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供することにより、DNA(約1.8kbp)を回収した。回収されたDNAは、本発明蛋白質のbHLHモチーフ-PASドメイン以降からC末端までの、転写調節領域をコードするDNAである。この回収されたDNAと、前記(6−3)で調製されたpRC/RSV-MAをPmaCI制限酵素で切断した後BAP処理して得られたDNAとをT4 Ligaseで結合させることにより、pRC/RSV-MA-mNXF(AvaI frag)を作製した。
次に、約1x107細胞の神経細胞IMR32(ATCC No.CCL127;大日本製薬から購入した)を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1x107に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。この細胞分散液0.4mlに、レポーター遺伝子プラスミドpGL3-TATA-Galx4と、前記(6−2)で調製されたプラスミドpRC/RSV-Gal4-DBDまたは(6−4)で調製されたプラスミドpRC/RSV-MA-mNXF(AvaI frag)とを3μgずつ添加し混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに6穴プレート内で約24時間培養した。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(-)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置した。この細胞液20μlずつをオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定した。
その結果を図1に示した。レポーター遺伝子プラスミドpGL3-TATA-Galx4を用いたワンハイブリッドアッセイ(One hybrid assay)を行った結果、Gal4のDNA結合領域と本発明蛋白質の転写調節領域(AvaI切断部位に相当するアミノ酸からC末端まで)とが結合してなる融合蛋白質を発現する形質転換体の場合(図中ではGal4-NXF Ctermと記載される)には、レポーター遺伝子の高発現が認められた。一方、対照であるGal4のDNA結合領域のみを発現する形質転換体の場合(図中ではGal4 DBDと記載される)には、レポーター遺伝子の発現は認められなかった。このように宿主細胞としてIMR32等の神経細胞を用いた場合において、本発明蛋白質は、転写活性化能を有することが確認された。
【0064】
(6−5)pGL3-TATAベクターの調製
上記の実施例でpGL3-TATA-Galx4を構築するために用いられたpGL3-TATAベクターは、以下のようにして作製された。
まず、マウスメタロチオネインI遺伝子のTATA box近傍の塩基配列とリーダー配列(Genbank Accession No.J00605)に由来する塩基配列とからなる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと前記塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド[5'-GATCTCGACTATAAAGAGGGCAGGCTGTCCTCTAAGCGTCACCACGACTTCA-3'(配列番号60)、5'-AGCTTGAAGTCGTGGTGACGCTTAGAGGACAGCCTGCCCTCTTTATAGTCGA-3'(配列番号61)]とをアニールした後に、T4 kinaseで5'末端をリン酸化した(以下、当該DNAをTATA DNAと記すこともある。)。このTATA DNA 1μgと、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むベクタープラスミドpGL3(プロメガ社製)を制限酵素Bgl II及びHind IIIで消化した後アルカリフォスファターゼ(BAP C75;宝酒造製)処理して得られたDNA(0.1μg)とをT4Ligase(宝酒造製で結合させる(16℃、16時間反応)ことにより、pGL3−TATAを得た。
【0065】
実施例7(本発明蛋白質の転写調節能を変化させる物質のスクリーニング)
動物細胞発現用pMベクター(クロンテック社製)をSmaIで消化し、次いでアルカリフォスファターゼ(BAP)を添加して65℃1時間保温した後、低融点アガロースゲル電気泳動に供し、ベクターDNAを回収する。一方、実施例1で作製されたpGEM-hNXFをNcoIとNotIとで消化し、Blunting kit(宝酒造製)で末端を平滑化する処理をした後、低融点アガロースゲル電気泳動に供し、約2kbのDNAを回収する。回収された上記のベクターDNAと約2kbのDNAとを混合し、T4リガーゼを反応させる。この反応液を大腸菌DH5αコンピテントセル(TOYOBO製)に導入する。得られた大腸菌形質転換体を培養し、保有するプラスミドを抽出して、得られたプラスミドDNAについて制限酵素分析及び塩基配列分析を行なう。pMベクターに上記の約2kbのDNAが挿入されたプラスミドを選択し、pM-hNXF(SmaI)と名付ける。このようにしてGal4DNA結合領域と、本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するポリペプチドとの融合蛋白質を発現させるためのベクターが得られる。
HeLa細胞を10cmプレートに約2x106細胞播種し、FBS含有E-MEM培地で、5O2存在下37℃にて1日間培養を行う。得られた細胞に、リポフェクトアミン(Life Technologies社製)を用いてその添付プロトコールに従い、3.75μgのプラスミドpM−hNXF(SmaI)と3.75μgのプラスミドpFR-LUC(ストラタジーン社製;Gal4応答ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する。)とを導入する。37℃にて16時間培養した後、培地を交換しさらに3時間培養する。細胞を集めてFBS含有E-MEM培地に懸濁して均一化し、DMSOで溶解した様々な濃度の各種被検物質を添加した培養液をあらかじめ加えておいた96穴プレート(DMSO終濃度0.1)に播種する。このプレートを37℃にて約40時間培養した後、5倍に希釈した細胞溶解剤PGC50(ニッポンジーン社製)を50μl/wellずつ加えて、時々軽くゆすりながら室温にて30分間放置して細胞を溶解させる。このようにして調製された細胞溶解液を10μlずつ96穴白色サンプルプレート(ベルトールド社製)に採取し、基質自動インジェクター付きのルミノメーターLB96p(ベルトールド社製)で50μl/wellずつ酵素基質液PGL100(ニッポンジーン社製)を添加しながら直ちに発光量を5秒間測定する。
【0066】
実施例8(本発明蛋白質をコードするゲノムDNAの取得)
実施例1で得られたプラスミドpGEM-mNXFのDNAをEcoRIとHindIIIで消化した後、低融点アガロース(アガロースL:ニッポンジーン)を用いたアガロースゲル電気泳動に供し、0.6kbのDNA、0.9kbのDNA及び1kbのDNAを回収した。回収されたDNAを等量ずつ混合し、そのうち約25ngを分取してアマシャム社製マルチプライムDNA標識システムを用いて該システムの添付プロトコールに従い32P標識した。
大腸菌XL1-Blue MRA(Stratagene社より入手)を一晩培養し、得られた培養液0.3mlに、直径15cmのプレート1枚あたり5x104プラークが形成される量のマウス(129SvJ系統)ゲノムDNAライブラリー(#946313、Stratagene社から購入)を加え、37℃にて20分間保温した後、50℃に保温された6.5mlの0.7アガロースを加え、直ちに直径15cmのNZYM(NZamine 10g、NaCl 5g、Yeast Extract 5g、MgSO4・7H2O 2g及びAgar 15gを水1Lに溶解)プレート上へ広げた。
このプレートを37℃にて一晩保温した。次いで、プラークの生じたプレートの表面に、直径15cmの丸型ニトロセルロースフィルター(ハイボンドN、アマシャム社製)を静かにのせ、このフィルターにプラークをトランスファーした。このフィルターを室温で20分間放置した後、変性バッファー(組成:0.2N NaOH, 1.5M NaCl)に浸した濾紙上に5分間載せた。次にこのフィルターを、中和バッファー(組成:0.4M Tris-HCl pH7.5, 2xSSC)に浸した濾紙上に1分間載せ、さらに500mlの2xSSCに5分間浸した。次いで、フィルターを乾いた濾紙上へ移し、室温で数時間、乾燥するまで放置した後、80℃のオーブン中で2時間保温した。得られたフィルターをプラスチック製シールバックに入れ、50mlのハイブリバッファー(組成:5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液、20μg/ml変性Salmon sperm DNA)中で65℃にて一晩保温した。次にこれに、上記の32P標識されたDNAを熱変性させた後全量加え、65℃で一晩保温した。次いでフィルターを取り出し、2xSSC中で室温にて30分間リンスし、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間リンスした。次にフィルターを新しい0.1xSSCに移して65℃にて40分間リンスした後、濾紙上で室温にて放置して乾燥させ、オートラジオグラフィー(−80℃にて2日間)を行った。
上記のオートラジオグラフィーで陽性シグナルが検出された部分のプレートからファージを回収して100μlのSM buffer(NaCl 5.8g、MgSO4・7H2O 2g及びゼラチン0.1gを1Lに溶解、pH7.5)に懸濁した。得られたファージ懸濁液を用いて、上記と同様にしてハイブリダイゼーション法による2次スクリーニングを行った。但し、プレート1枚あたりに形成させるプラークの数は、約1000個程度とした。このスクリーニングで陽性シグナルが検出された部分のプレートからプラークを回収し、2次スクリーニングと同じ方法で3次スクリーニングを行い、陽性シグナルを与えるファージクローンを得た。
前記の陽性シグナルが検出されたファージクローンの懸濁液1μlを、100μlのTE bufferに添加して煮沸し、これを鋳型にしてPCRを行った。プライマーには、上記ゲノムDNAライブラリーの作製に用いられたLambda FIXIIベクターの保有するクローニングサイトの両側にそれぞれアニールする2種のプライマー[T7ユニバーサルプライマー及びT3ユニバーサルプライマー(Stratagene社製)]を使用した。PCRの反応液は、上記の煮沸液5μl、上記2種のプライマーそれぞれ10pmol、LA-taq polymerase(宝酒造)、該酵素に添付のバッファーを添加して全量50μlとした。反応は、95℃1分間次いで50℃1分間さらに72℃10分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。次いで、反応液をアガロースゲル電気泳動に供して、約7kbpのDNAを回収した。回収されたDNAの約10μgを鋳型にして、DyeTerminator Cycle Sequence FSキット(パーキンエルマーABI)を用いて、該キットに添付プロトコールに従い、ダイレクトシークエンスを行った。その結果、上記のDNAは、配列番号54で示される塩基配列を有することがわかった。得られた塩基配列と配列番号5で示される塩基配列とを比較することにより、イントロン/エクソンの構成が明らかとなった。
【0067】
実施例9 (本発明蛋白質によるdrebrin 1の発現促進)
(9−1)pRC/RSV-mNXFsense及びpRC/RSV-mNXFantisenseの調製
哺乳動物細胞内において本発明蛋白質の全長を発現させるためのプラスミドを、以下のようにして作製した。
実施例1で得られたpGEM-mNXFは、市販のpGEMベクターのSp6プロモーターの下流にマウス由来の本発明蛋白質をコードする翻訳領域の開始コドンが位置するように構築されていた。そこでこのpGEM-mNXF(1μg)を鋳型にして、かつ、配列番号62で示されるオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー 5´-gggcgctgcagcccagccaccatgtaccgatccaccaaggg-3´)および配列番号63で示されるオリゴヌクレオチド(リバースプライマー 5´-aatctcggcgttgatctggt-3´)をプライマーとして、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いたPCRを行うことにより、本発明蛋白質をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入され、さらにその上流にPstI制限酵素部位が導入された本発明蛋白質の一部をコードするDNAを得た。該PCRは、95℃1分間次いで55℃30秒間さらに72℃1分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。このようにして得られたDNAをPstIとBssHIIとで切断した後、低融点アガロースゲル電気泳動(NusieveGTGアガロース;FMCbio社製)に供することにより精製・回収した。精製・回収されたDNAを下記で用いるインサートDNAとした。次に、pGEM-mNXFをPstIとBssHIIとで切断した後BAP処理して得られたDNAを低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供し、前記DNAを回収した。回収されたDNA(0.1μg)に上記のインサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、マウス由来の本発明蛋白質をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入されているプラスミドpGEM-mNXFコザックを作製した。
次に、プラスミドpGEM-mNXFコザックをPstI、NotI及びScaIの3者で同時に切断した後、これを低融点アガロース電気泳動に供し、約2.5kbpのDNA(mNXFコザックPstI-NotI)を回収した。そして、回収されたDNAをT4ポリメラーゼで平滑末端化し、得られたDNAをインサートDNAとした。RSVプロモーターを保有するプラスミドpRC/RSV(Invitorgen社製)をHindIIIで切断した後T4ポリメラーゼで平滑末端化して得られたDNAをBAP処理し、これをベクターDNAとした。このベクターDNA(0.1μg)に前記インサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、(a)コザック配列の下流にマウス由来の本発明蛋白質をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFsense、及び(b)コザック配列の下流にマウス由来の本発明蛋白質をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのアンチセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFantisenseを作製した。尚、作製されたプラスミドが所望の構造を有することを、ベクターDNAとインサートDNAとの境界領域の塩基配列を調べることにより確認した。
【0068】
(9−2)本発明蛋白質によるdrebrin 1の発現促進
まず、約1x107細胞のSK-N-MC細胞(ATCC No.HTB10;大日本製薬より購入した)を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1x107に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。この細胞分散液0.4mlに、上記のようにして調製されたプラスミド、即ち、(a)本発明蛋白質の全長をコードするDNAのセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFsense、又は(b)本発明蛋白質の全長をコードするDNAのアンチセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFantisense、10μgを混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに10cmシャーレ内で約24時間培養した。培養後、(a)pRC/RSV-mNXFsense導入細胞シャーレ5枚分、又は(b)pRC/RSV-mNXFantisense導入細胞シャーレ5枚分を材料にしてRNA精製及び放射能ラベル用市販キットであるAtlas Pure Total RNA Labeling system(K1038-1;クロンテック社製)を用いてDNAを含まないtotalRNAを精製した。RNA収量は、(a)の場合には23μg、(b)の場合には26μgであった。次に、得られたRNAを材料にして、上記キットに含まれる特異的プライマー及び逆転写酵素を用いて[α-P32] -dATP(アマシャムファルマシア社製)でそれぞれのRNAを放射能ラベルした。次に、放射能ラベルされたRNA(以下、プローブと記す。)を上記キットを用いて精製した後、精製されたRNAの1.3x105DPM相当分を以下のハイブリダイゼーションに使用した。ハイブリダイゼーションは、種々の遺伝子がブロットされたナイロン膜を含むキット(Atlas cDNA Expression array-Neurobiology ;7736-1 クロンテック社製)及び該キットに付属のハイブリダイゼーションバッファーを用いて、(a)pRC/RSV-mNXFsense導入細胞由来のプローブまたは(b)pRC/RSV-mNXFantisense導入細胞由来のプローブをそれぞれ添加し、同一条件のもとで18時間行った。ハイブリダイゼーションの後、各ナイロン膜を2XSSC、1%SDSバッファーで洗浄(68℃、30分間)した。これを4回繰り返した後、更に0.1XSSC、0.5%SDSバッファーで洗浄(68℃、30分間)した。それぞれのナイロン膜をプラスチックラップに包み、IPプレート(富士フィルム社製)に7日間感光させたのち、イメージングアナライザー(BASstation;富士フィルム社製)でナイロン膜上の種々の遺伝子に対応するハイブリダイゼーションシグナルの強度の定量と比較を行った。
その結果、drebrin 1遺伝子について、(a)pRC/RSV-mNXFsense導入細胞由来のプローブとハイブリダイズさせたナイロン膜上のハイブリダイゼーションシグナルが、(b)pRC/RSV-mNXFantisense導入細胞由来のプローブとハイブリダイズさせたナイロン膜上のハイブリダイゼーションシグナルよりも有意に強く検出された。このように、本発明蛋白質にはdrebrin 1の発現を促進する能力が存在することが確認できた。
【0069】
実施例10 (本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の作製及びそのプロモーター活性確認:マウス由来の本発明蛋白質のゲノムの塩基配列の決定)
(10−1)材料の調製
配列番号55で示される本発明蛋白質をコードするマウス由来のゲノムDNAの塩基配列を以下のようにして決定した。
実施例8に記載のマウスゲノムDNAライブラリーのスクリーニングにより取得された本発明蛋白質をコードするゲノムファージクローンのうちの1つのファージ液1μlを鋳型とし、上記ゲノムDNAライブラリーの作製に用いられたLambda FIXIIベクター上に設定されたプライマー対であるT7ユニバーサルプライマー及びT3ユニバーサルプライマー(Stratagene社製)を使用し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造製)を用いてPCRを行なった。PCRは、95℃1分間次いで68℃ 20分間の保温を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返した。得られた増幅DNA(約21kbp)を、0.8%低融点アガロース(アガロースL;日本ジーン社製)を用いた電気泳動に供することにより、DNA(約21kbp)を精製・回収した。精製・回収されたDNAについてキャピラリーシークエンサー(PE-biosystems社製model3700)とダイターミネーターシークエンスキットFS ver2(PE-biosystems社製)とを用いたカスタムプライマーダイレクトシークエンスを行うことにより当該DNAの全塩基配列(配列番号55)を決定した。
【0070】
(10−2)本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とレポーター蛋白質をコードするDNAとが機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の作製
マウス由来の本発明蛋白質をコードする遺伝子の転写開始点(配列番号55における塩基番号9437-9442)からそれぞれ約10kbp、約5kbp、約2.5kbpまたは約1kbp上流までを含む、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を取得するために、まず、配列番号55で示される塩基配列に基づき、以下の塩基配列からなるフォワード側PCRプライマーを設計した。
上流約10kbp用:5´-gggcggtaccatacctagggccaataggagtgatgagcccatgtc-3´:配列番号64
上流約5kbp用:5´-gggcggtaccaacgaggaatctctcttcctctccactgtccgggc-3´:配列番号65、
上流約2.5kbp用:5´-gggcggtaccctgcttaaattgcttggagaccagctgtggaccca-3´:配列番号66、
上流約1kbp用:5´-gggcggtaccctcagtgacaagtgcacaggcagaacgaggagccc-3´:配列番号67
また同様に配列番号55で示される塩基配列に基づき、以下の塩基配列からなるリバース側PCRプライマーを設計した。5´-gggcacgcgttcgcctgcctcgatccgccttatgtagctcctgac-3´:配列番号68。
上記のフォワード側プライマーにはKpnI制限酵素サイトが設けられており、リバース側プライマーにはMluI制限酵素サイトが設けられている。上記のフォワード側プライマーのいずれかとリバース側プライマーとをプライマー対とし、かつ、マウス由来の本発明蛋白質をコードするゲノムファージクローンのファージ液1μlを鋳型にし、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いてPCRを行なった。PCRは、95℃1分間次いで68℃10分間の保温を1サイクルとして35サイクル行った。このようにして、マウス由来の本発明蛋白質をコードする遺伝子の転写開始点からそれぞれ約10kbp、約5kbp、約2.5kbpまたは約1kbp上流までを含むDNAを増幅した。これらそれぞれを制限酵素KpnI及びMluIの両者で切断した後、低融点アガロースゲル電気泳動(Agarose L;日本ジーン社製)に供することによりそれぞれの増幅DNAを回収した。回収されたそれぞれの増幅DNA(約0.5μg)と、実施例6で調製されたpGL3-TATAベクターをKpnI及びMluIの両者で切断した後アルカリフォスファターゼ(BAP C75;宝酒造製)処理して得られたDNA(0.1μg)とをT4 Ligase(宝酒造製)で結合させる(16℃、16時間反応)ことにより、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流に、マウス由来の本発明蛋白質をコードする遺伝子の転写開始点からそれぞれ約10kbp(配列番号55で示される塩基配列における塩基番号72-9436)、約5kbp(配列番号55で示される塩基配列における塩基番号4364-9436)、約2.5kbp(配列番号55で示される塩基配列における塩基番号6889-9436)または約1kbp(配列番号55で示される塩基配列における塩基番号8216-9436)上流までを含む、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域がそれぞれ挿入されたプラスミドを得た。
【0071】
(10−3)発現調節領域が有するプロモーター活性の確認
本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域が有するプロモーター活性の相対活性を調べるために、対照レポータープラスミドであるpGL3-TK-BSDを以下のようにして作製した。尚、この対照レポータープラスミドのルシフェラーゼ遺伝子は、ヘルペス単純ウイルスのチミジンキナーゼのプロモーターによる制御を受ける。
まず、プラスミドpRL-TK(プロメガ社製)をHind III及びBgl IIの両者で切断した後、それを低融点アガロースゲル電気泳動(アガロースL;ニッポンジーン社製)に供することにより、TKプロモーターを含むDNA(760bp)を回収した。次に、プラスミドpGL3をHind IIIとBgl IIとで切断した後BAP処理して得られたDNAを、低融点アガロースゲル電気泳動に供することにより、pGL3由来のルシフェラーゼ遺伝子を含むBgl II−Hind IIIのDNAを回収した。回収されたDNAのうち約0.1μgを、上記のTKプロモーターを含むDNA約0.2μgと混合し、この混合物をT4 リガーゼと反応させることにより、pGL3のHind III切断部位とBgl II切断部位との間に上記のTKプロモーターを含むDNAが挿入された構造を有するプラスミドであるpGL3-TKを作製した。作製されたpGL3-TKのDNAをBamH Iで切断した後BAP処理て得られたDNAを、低融点アガロースゲル電気泳動に供することにより、単一のバンドとして検出されるDNAを回収した。当該DNAと、プラスミドpUCSV-BSD(フナコシ社より購入)をBamHIで消化することにより調製されたブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットをコードするDNAとを、T4 Ligaseで結合させることにより、ブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子発現カセットがpGL3-TKのBamHI切断部位に挿入された構造を有するプラスミドであるpGL3-TK−BSDを作製した。
約5x106の293細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃で5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度5x106に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。この細胞分散液0.4mlに、(10−2)で調製されたプラスミドまたは上記のプラスミドpGL3-TK−BSDのいずれかをそれぞれ3μg混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により220V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に交換してさらに6穴プレート内で約24時間培養した。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(-)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置した。この細胞液20μlずつをオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定した。
その結果を図2に示した。ヘルペス単純ウイルスのチミジンキナーゼプロモーター(HSV-TK)と本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域とのプロモーター活性を比較したところ、本発明蛋白質をコードする遺伝子の転写開始点から約5kbp、約2.5kbpまたは約1kbp上流までを含む、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域(図中では-5kbp NXFgenome、-2.5kbp NXFgenome、-1kbp NXFgenomeと記載される)は、いずれも293細胞の中でHSV-TKプロモーター(図中ではHSV-TK enhancerと記載される)との比較において同等またはより高いプロモーター活性を示した。特に、ここで確認されたプロモーター活性にクリテイカルな部分は、本発明蛋白質の遺伝子の転写開始点から約1kbp上流までを含む領域に存在していることが確認された。
【0072】
実験例11 (本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域を利用した本発明蛋白質の転写調節能を変化させる物質のスクリーニング方法)
実施例10で作製された、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流に、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域(マウス由来の本発明蛋白質の転写開始点からそれぞれ約10kbp、約5kbp、約2.5kbpまたは約1kbp上流までを含む)が、それぞれ挿入されたプラスミドを293細胞にエレクトロポレーション法を用いてトランスフェクションする。トランスフェクション後、(a)被検物質を添加しない培養液、又は(b)被検物質を添加した培養液、をそれぞれあらかじめ加えておいた96穴プレートに、トランスフェクションされた細胞を播種する。この細胞を37℃で約24時間培養した後、ルシフェラーゼ活性を測定する。測定されたルシフェラーゼ活性の比較において、(a)で培養した場合におけるルシフェラーゼ活性に対して(b)で培養した場合におけるルシフェラーゼ活性が高い場合には、その被検物質は、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現を増大させる物質であると判断する。逆に、低い場合には、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現を減少させる物質であると判断する。このようにして本発明蛋白質による転写調節能を変化させる物質をスクリーニングすることができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明により、bHLH−PAS蛋白質、該蛋白質をコードするDNA等が提供可能となる。
【0074】
[配列表フリーテキスト]
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
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配列番号11
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配列番号12
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配列番号13
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配列番号14
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配列番号15
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配列番号16
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配列番号17
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配列番号18
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配列番号19
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配列番号20
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配列番号21
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配列番号22
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配列番号23
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配列番号24
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号25
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配列番号26
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配列番号27
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配列番号28
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配列番号29
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配列番号30
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配列番号31
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配列番号32
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号33
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配列番号34
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配列番号35
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配列番号36
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配列番号37
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配列番号38
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配列番号39
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配列番号40
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配列番号41
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配列番号42
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配列番号52
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配列番号53
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号56
設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号57
設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号58
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配列番号59
設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号60
設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号61
設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号62
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号63
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号64
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配列番号65
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配列番号66
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配列番号67
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号68
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【0075】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明蛋白質の転写調節能を確認するための、レポーター遺伝子プラスミドであるpGL3-TATA-Galx4を用いたワンハイブリッドアッセイ(One hybrid assay)の結果を示す図である。横軸は供試された形質転換体(右端がGal4のDNA結合領域のみを発現する形質転換体であって、対照に相当する。一方、左端はGal4のDNA結合領域と本発明蛋白質の転写調節領域等とが結合してなる融合蛋白質を発現する形質転換体である。)を示す。縦軸はルシフェラーゼ活性の測定値(即ち、レポーター遺伝子の発現量)であり、これは転写調節因子の転写調節能を示す指標値である。
【図2】本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域が有するプロモーター活性を確認するための、レポーター遺伝子アッセイの結果を示す図である。横軸は供試された発現調節領域である。最左端から順に、本発明蛋白質をコードする遺伝子の転写開始点から約1kbp、約2.5kbp、約5kbp上流までをそれぞれ含む、本発明蛋白質をコードする遺伝子の発現調節領域(図中では-1kbp NXFgenome、-2.5kbp NXFgenome、-5kbp NXFgenomeと記載される)、及び、対照であるヘルペス単純ウイルスのチミジンキナーゼプロモーター(HSV-TK enhancer)である。縦軸はルシフェラーゼ活性の測定値(即ち、レポーター遺伝子の発現量)であり、これは蛋白質遺伝子の発現調節領域が有するプロモーター活性を示す指標値である。
Claims (12)
- 以下の(a)〜(e)のいずれかの蛋白質をコードするDNA。
<蛋白質群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。 - 以下の(a)〜(d)のいずれかの塩基配列を有するDNA。
<塩基配列群>
(a)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列。
(b)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列。
(c)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列。
(d)配列番号54で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列。 - 請求項1又は2に記載のDNAを含有するベクター。
- 請求項1又は2に記載のDNAの上流に、プロモーターが機能可能な形で結合されてなるDNAを含有するベクター。
- 宿主細胞内で複製可能なベクターに、請求項1又は2に記載のDNAを組込むことを特徴とするベクターの製造方法。
- 請求項1もしくは2に記載のDNA又は請求項3もしくは4に記載のベクターが宿主細胞に導入されてなる形質転換体。
- 宿主細胞が動物細胞である請求項6記載の形質転換体。
- 宿主細胞が大腸菌又は酵母である請求項6記載の形質転換体。
- 請求項1もしくは2に記載のDNA又は請求項3もしくは4に記載のベクターを宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の製造方法。
- 以下の(a)〜(e)の蛋白質。
<蛋白質群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。 - 以下の(a)〜(e)のいずれかの蛋白質をコードするDNAが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を培養する工程を含むことを特徴とする前記蛋白質の製造方法。
<蛋白質群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質。 - 配列番号11〜42のいずれかで示される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
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