JP2007282502A - 細胞変性制御能力の検定方法 - Google Patents

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健太郎 小林
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Abstract

【課題】哺乳動物における細胞変性を制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために使用される、細胞変性制御能力を検定する方法等を提供する。
【解決手段】配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列等のアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力の検定方法であって、
(1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び
(2)前記第一工程後に、前記哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする検定方法等。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞変性制御能力の検定方法等に関する。
神経細胞は、細胞分裂を終えた細胞(postmitotic cell)として終生にわたって生存維持することが求められる。この生存維持機構に何らかの破綻が生じ、徐々に特定の神経細胞が萎縮したり、脱落したり、完全に破壊されてしまったり等の形態的な変化を生じた結果、これら細胞が失われていく疾患は、一般に神経変性疾患(neurodegenerative disease)と呼ばれる。このような神経変性疾患としては、例えば、痴呆・運動失調・ふるえ・筋力低下等の特有の症状を示す数多くの種類のものが存在し、根本的な治療法がないことから神経難病として社会的にも大きな問題となっている。
例えば、アルツハイマー病や脳血管障害等においては、神経細胞が脱落することによって記憶が部分的に障害されていくことも知られており、このような細胞変性を適正に制御することが可能になれば、老化による認識能力不全、精神遅延、アルツハイマー病による認識能力不全等を効果的に予防、改善することが可能となる。
これまでに、神経成長因子(以下、NGFと記すこともある。)には、細胞変性を制御する作用が存在していることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また一方、ある種の転写調節因子が存在していることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
Brain Research, 632 (1993), p.296-302 特開2003−000279号公報
そこで、哺乳動物における細胞変性を制御するための薬剤の開発が求められており、かかる薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために、細胞変性制御能力を検定する方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、かかる状況のもと鋭意検討した結果、細胞変性の制御に関与する有用物質(例えば、NGF)が、ある種の転写調節因子におけるリン酸化の有無を制御していることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.下記のいずれかのアミノ酸配列(以下、本アミノ酸配列と記すこともある。)を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力の検定方法であって、
(1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び
(2)前記第一工程後に、前記哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする検定方法(以下、本発明検定方法と記すこともある。);
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
2.下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力の検定方法であって、
(1)前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び
(2)前記第一工程後に、前記形質転換哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする検定方法;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
3.被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における、前記形質転換哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価することを特徴とする請求項1又は2記載の検定方法;
4.異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が前記能力を有さない物質であることを特徴とする請求項5記載の検定方法;
5.下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力を有する物質の探索方法であって、請求項1又は2記載の検定方法により評価された前記能力に基づき前記能力を有する物質を選抜することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法と記すこともある。);
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
6.請求項7記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体に製剤化されてなることを特徴とする細胞変性制御剤(以下、本発明細胞変性制御剤と記すこともある。);
7.哺乳動物細胞における細胞変性を制御するための、下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAの使用;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
8.有効成分として、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子を発現する哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化を制御する物質を含有することを特徴とする細胞変性制御剤;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
等を提供するものである。
本発明により、哺乳動物における細胞変性を制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質(例えば、NGF)を探索するために使用される、細胞変性制御能力を検定する方法等が提供可能となった。
以下に本発明を詳細に説明する。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明でいう「下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子」(以下、本転写調節因子と記すこともある。)とは、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(basic helix-loop-helix:以下、bHLHと記す。)モチーフとPASドメイン(Per-Arnt-Simホモロジードメイン)とを有する蛋白質であって、ヘテロ二量体を形成して特定の塩基配列を有するDNAに結合することにより転写調節因子として機能し、アポトーシスの制御に関与する蛋白質である(後述参照)。
本発明でいう「下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子に依存的な細胞変性」とは、本アミノ酸配列を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)が関与する細胞変性であって、本転写調節因子が係わる代謝過程や信号伝達等のカスケード反応が起こると直接的又は間接的に制御を受ける。かかるカスケード反応のことを本発明では「前記(即ち、本アミノ酸配列を有する)転写調節因子依存的−細胞変性経路」又は「本細胞変性経路」と記載する。
本発明検定方法において用いられる「下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)」には、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する蛋白質(ここで、配列番号1で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、ヒト由来の本転写調節因子であり、配列番号2で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、マウス由来の本転写調節因子であり、また、配列番号3で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、ラット由来の本転写調節因子である。)、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質が含まれる。このような蛋白質は、SDS-PAGEでの分子量として、約8〜10万程度の分子量であることが好ましい。
本転写調節因子のアミノ酸配列において認められる、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列との相違としては、アミノ酸の欠失、置換、修飾、付加等の変異をあげることができる。これらには、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって人為的に導入され得る変異に加えて、動物の系統、個体、器官、組織等の違いによるアミノ酸配列の相違等の天然に生ずる多型変異も含まれる。
本発明において「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は、Vector NTI、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)等の市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。
本発明におけるアミノ酸同一性は、例えば、90%以上であることが好ましい。
また、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNA」としては、例えば、高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりDNA-DNAハイブリッドを形成し、低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも該ハイブリッドが維持されうるDNAをあげることができる。本転写調節因子の転写調節能は、例えば、後述のレポーター遺伝子を用いたアッセイ等に基づき評価することができる。
本転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本転写調節因子遺伝子と記す。)は、例えば、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織から、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じて取得することができる。
具体的には、まず、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織由来の全RNAを調製する。例えば、脳の組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)がある。得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素により一本鎖cDNAを合成する。次いで、合成された一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ大腸菌RNaseHを用いてRNA鎖にニックとギャップを入れることにより得られるRNAをプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖のcDNAを合成する。更に、合成された二本鎖cDNAの両末端をT4 DNAポリメラーゼにより平滑化する。末端が平滑化された二本鎖cDNAは、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿等の通常の方法により精製、回収する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムファルマシアバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムファルマシアバイオテク社製)等があげられる。次に、得られた二本鎖cDNAを例えば、プラスミドpUC118やファージλgt10等のベクターとリガーゼを用いて連結することによりcDNAライブラリーを作製する。尚、cDNAライブラリーとしては、市販のcDNAライブラリー(GIBCO−BRL社製やClontech社製等)を用いることも可能である。
また、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織片から、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)や、村松正寶、”ラボマニュアル遺伝子工学”(丸善1988)等に記載される通常の方法に準じてゲノムDNAを調製する。例えば試料が毛髪の場合には、毛髪2〜3本を滅菌水、次いでエタノールで洗浄した後、2〜3 mmの長さに切断し、これにBCL-Buffer[10mM Tris-HCl(pH7.5), 5 mM MgCl2, 0.32M Sucrose, 1 Triton X-100]200μlを加え、さらにProteinaseKを最終濃度100μl/ml 、SDSを最終濃度0.5 (w/v)になるようにそれぞれ加え混合する。この混合物を70℃で1時間保温した後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が末梢血の場合は、DNA-Extraction kit(Stratagene社製)等を用いて該試料を処理することによりゲノムDNAを得ることができる。得られたゲノムDNAをλgt10等のベクターとリガーゼを用いて連結することによりゲノムDNAライブラリーが得られる。尚、ゲノムDNAライブラリーとしては、市販のゲノムDNAライブラリー(Stratagene社製等)を用いることも可能である。
上記のようなcDNAライブラリーやゲノムDNAライブラリーから、例えば、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)や、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、本転写調節因子遺伝子を取得することができる。
PCRに用いられるプライマーとしては、例えば、約10塩基から約50塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドであって、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列の5’非翻訳領域から選択した塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、及び、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列の3’非翻訳領域から選択した塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをあげることができる。具体的には、フォワードプライマーとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。また、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号11で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号12で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。PCRの条件としては、例えば、反応液50μl中に、LA-Taqポリメラーゼ用10倍濃緩衝液(宝酒造社製)5μl、2.5mM dNTP混合液(各2.5mMのdATP,dGTP,dCTP及びdTTPを含む。)5μl(dATP,dGTP,dCTP及びdTTP各々の終濃度が0.25mM)、20μMプライマー 各0.25〜1.25μl(終濃度が0.1〜0.5μM)、鋳型cDNA 0.1〜0.5μg、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)1.25ユニットを含む組成の反応液にて、95℃で1分間次いで68℃で3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行う等の条件が挙げられる。
ハイブリダイゼーション法に用いられるプローブとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNA、配列番号7で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列からなるDNA、又はこれらDNAの部分塩基配列を有するDNA等があげられる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v)フィコール400、0.1(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1(w/v)BSA)、0.5(w/v)SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件等をあげることができる。また、例えば、5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液及び20μg/ml変性サケ精子DNA存在下に65℃にて保温し、次いで2xSSC中で室温にて30分間の保温を行い、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間の保温を2回行う条件をあげることもできる。
尚、本転写調節因子遺伝子は、例えば配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al.,Nature,310,105,1984)等の通常の方法に準じて、核酸の化学合成を行うことにより調製することもできる。
このようにして得られた本転写調節因子遺伝子は、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えば、TAクローニングキット(Invitrogen社)やpBluescriptII(Stratagene社)等の市販のプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
得られた本転写調節因子遺伝子の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,560,1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
本転写調節因子遺伝子の具体例としては、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列を有するDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列を有するDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列、配列番号7で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
本転写調節因子遺伝子を、該遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクター(以下、基本ベクターと記す。)、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより本転写調節因子遺伝子ベクターを構築することができる。
本転写調節因子遺伝子ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合、例えばプラスミドpUC119(宝酒造社製)や、ファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等を上げることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合は、プラスミドpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等をあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合はpRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルス等をあげることができ、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本転写調節因子遺伝子を組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いることができる。このようなトランスファーベクターの具体的例としては、Pharmingen社から市販されているpVL1392,pVL1393(Smith,G.E.,Summers M.D.et al.:Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983))、pSFB5(Funahashi,S.et al.:J.Virol.,65,5584-5588(1991))等のプラスミドをあげることができる。本転写調節因子遺伝子を前記のようなトランスファーベクターに挿入し、該トランスファーベクターとウイルスのゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスのゲノムとの間で相同組換えが起こり、本転写調節因子遺伝子がゲノム上にくみこまれたウイルスを得ることができる。ウイルスのゲノムとしては、Baculovirus,Adenovirus,Vacciniavirus等のゲノムを用いることができる。
より具体的には、例えばバキュロウイルスに本転写調節因子遺伝子を組み込む場合、トランスファーベクターpVL1393,pVL1392等のマルチクローニング部位に本転写調節因子遺伝子を挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとBaculovirus genome DNA(Baculogold;Pharmingen社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等により導入し、得られた細胞を培養する。培地から遠心分離等により、本転写調節因子遺伝子が挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を回収し、これをフェノール等で除蛋白処理することにより、本転写調節因子遺伝子を含有するウイルスのゲノムを得ることができる。さらに、該ウイルスのゲノムを、昆虫細胞Sf21株等のウイルス粒子形成能を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等により導入し、得られる細胞を培養することにより、本転写調節因子遺伝子を含有するウイルス粒子を増やすことができる。
一方、マウス白血病レトロウイルス等の比較的小さなゲノムへは、トランスファーベクターを利用せずに、本転写調節因子遺伝子を直接組み込むこともできる。例えばウイルスベクタ-DC(X)(Eli Gilboa et al.,BioTechniques,4,504-512(1986))等は、該ベクター上のクローニング部位に本転写調節因子遺伝子を組み込む。得られた本転写調節因子遺伝子の組込まれたウイルスベクターを、例えばAmpli-GPE(J.Virol.,66,3755(1992))等のパッケージング細胞に導入することにより、本転写調節因子遺伝子の挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を得ることができる。
本転写調節因子遺伝子の上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本転写調節因子遺伝子を宿主細胞で発現させることの可能な本転写調節因子遺伝子ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本転写調節因子遺伝子が導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に本転写調節因子遺伝子が発現されるように、該プロモーターと本転写調節因子遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、導入される宿主細胞内でプロモーター活性を示すDNAをあげることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合にはADH1プロモーター)等をあげることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本転写調節因子遺伝子とが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本転写調節因子遺伝子を挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本転写調節因子遺伝子を挿入し動物細胞へ導入することにより、本転写調節因子遺伝子を発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えばCOS細胞等に該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として該プラスミドに組み込まれた本転写調節因子遺伝子を大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミド又はその誘導体のADH1プロモーターの下流に本転写調節因子遺伝子を挿入すれば、本転写調節因子遺伝子を例えばCG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能な本転写調節因子遺伝子ベクターが構築できる。
構築された本転写調節因子遺伝子ベクターを宿主細胞に導入することにより、形質転換体を取得することができる。本転写調節因子遺伝子ベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合は、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法に準じて前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合は、例えばリチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)等を用いて導入することができる。
尚、ウイルスをベクターに用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、本転写調節因子遺伝子の挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
当該形質転換体を選抜するには、例えば、本転写調節因子遺伝子ベクターと同時にマーカー遺伝子を宿主細胞へ導入し、マーカー遺伝子の性質に応じた方法で細胞を培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本転写調節因子遺伝子ベクターが導入された宿主細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本転写調節因子遺伝子ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を取得するには、例えば、本転写調節因子遺伝子ベクターとマーカー遺伝子を有するベクターとを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これらを前述の方法で宿主細胞へ導入して該細胞を通常数週間培養し、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標にして目的とする形質転換体を選抜し取得すればよい。また、例えば、上記のような選抜薬剤に対する耐性付与遺伝子をマーカー遺伝子として有する本転写調節因子遺伝子ベクターを前述の方法で宿主細胞に導入し、該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上継代培養して、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養することにより、本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を選抜し取得することもできる。導入された本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に組み込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、調製されたゲノムDNAから、導入された本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いるPCRや、導入された本転写調節因子遺伝子をプローブに用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、本転写調節因子遺伝子の存在を検出すればよい。かかる形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
本転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力(以下、本細胞変性制御能力と記すこともある。)を検定するには、(1)本転写調節因子を発現する哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、(2)前記第一工程後に、前記哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び、第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程を有する検定方法(即ち、本発明検定方法)を用いることができる。この際に、例えば、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値(第一の測定量、第二の測定量)を比較することにより差異を調べる。その結果、得られる差異(第一の測定量と第二の測定量との差)に基づき前記被験物質が有する本細胞変性制御能力を評価することにより当該能力の検定を行う。このようにして評価された本細胞変性制御能力に基づき本細胞変性制御能力を有する物質であることを確認することができる。
このように本転写調節因子は、前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を効果的に測定する方法に利用でき、物質が有する本細胞変性制御能力を検定するために利用される。
本発明検定方法において用いられる哺乳動物細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。場合によっては前記細胞の抽出系でもよい。当該細胞の由来としては、例えば哺乳動物等を挙げることができ、さらに具体的にはヒト、サル、ウシ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターなどを挙げることができる。
本発明検定方法の第一工程において、本転写調節因子を発現する哺乳動物細胞と接触させる被験物質の濃度としては、通常約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。上記哺乳動物細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常10分間以上2日間程度であり、好ましくは数時間〜1日間程度である。
上記哺乳動物細胞に被験物質を接触させる環境としては、当該哺乳動物細胞の生命活動を維持させるような環境が好ましく、例えば、当該哺乳動物細胞のエネルギー源が共存する環境をあげることができる。具体的には、培地中で第一工程が行なわれることが好都合である。
さらにまた本発明検定方法の第一工程は、例えば、哺乳動物細胞に本アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物細胞(以下、本形質転換哺乳動物細胞と記すこともある。)に、被験物質を接触させる方法でもよい。
当該工程において、本形質転換哺乳動物細胞と接触させる被験物質の濃度は、通常約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。本形質転換哺乳動物細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常10分間以上2日間程度が好ましく、より好ましくは数時間から1日間程度が挙げられる。
前記本形質転換哺乳動物細胞は、以下のようにして調製することができる。
本転写調節因子遺伝子を、通常の遺伝子工学的手法を用いて、本転写調節因子遺伝子を導入する哺乳動物細胞において使用可能なベクターに発現可能な形でプロモーターと接続されるように挿入することにより、プラスミドを作製する。ここで用いられるプロモーターは、本転写調節因子遺伝子が導入される哺乳動物細胞で機能可能なものであればよく、例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。尚、このようなプロモーターをマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用してもよい。
次いで、上記プラスミドを選抜マーカー遺伝子とともに哺乳動物細胞へ導入する。哺乳動物細胞への導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法、電気導入法、DEAEデキストラン法、ミセル形成法等を挙げることができる。リン酸カルシウム法としてはGrimm, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 10923-10927等に記載される方法、電気導入法及びDEAEデキストラン法としてはTing, A. T. et al., EMBO J., 15, 6189-6196等に記載される方法、ミセル形成法としてはHawkins, C. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 13786-13790等に記載される方法を挙げることができる。ミセル形成法を用いる場合には、リポフェクトアミン(ギブコ製)やフュージーン(ベーリンガー製)等の市販の試薬を利用するとよい。
上記プラスミドの導入処理を施した哺乳動物細胞を、例えば、当該プラスミドとともに導入された選抜マーカー遺伝子を利用し、当該選抜マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、本形質転換哺乳動物細胞を選抜することができる。さらに選抜を続けて、本転写調節因子遺伝子が染色体に導入されてなる安定形質転換体となった本形質転換哺乳動物細胞を取得してもよい。導入された本転写調節因子遺伝子が哺乳動物細胞中に存在する染色体上に組込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプライマーとして用いるPCRや、本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、ゲノムDNA中の本転写調節因子遺伝子の存在を検出・確認すればよい。
また、本形質転換哺乳動物細胞は、後述する形質転換非ヒト動物から通常の方法に準じて調製してもよい。
本発明検定方法において、前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を測定する方法としては、例えば、被験物質との接触系と被験物質との非接触系との各々の試験系において、哺乳動物細胞内の本転写調節因子の分子量を、当該哺乳動物細胞から調製された抽出物のSDS-PAGEによる分画操作後に、本転写調節因子に対して特異的な抗体を用いた免疫染色法等の免疫学的手法により検出する方法等をあげることができる。その際に、検出精度を向上させるために、脱リン酸化酵素処理を行う工程を追加することで、非特異的なアーティファクトによる誤検出を効果的に排除することができる。また、32P放射能を用いて、被験物質との接触系と被験物質との非接触系との各々の系において、本転写調節因子が当該放射能を帯びるか否かを検定することで、被験物質による哺乳動物細胞内の本転写調節因子のリン酸化の有無を検出することができる。検出精度を向上させるために、細胞のMAPKシグナル伝達酵素阻害剤を加える試験系と加えない試験系とを比較検討することにより、非特異的なアーティファクトによる誤検出を効果的に排除することができる。
また他の方法として、本転写調節因子とDHX57との相互作用を利用した検出方法をあげることができる。本願出願人は、リン酸化状態にある本転写調節因子とDHX57との相互作用が、非リン酸化状態にある本転写調節因子とDHX57との相互作用と比較して、著しく増強・向上することを見出し、当該現象を、例えば、One-hybridアッセイ法、Two-hybridアッセイ法、免疫沈降操作と免疫沈降物中の着目蛋白質の同定操作(Western blottin)との組み合わせ法等に応用することにより、本転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を測定することもできる。
具体的には例えば、Two-hybridアッセイ法の場合には、本転写調節因子をBaitとし且つDHX57をPreyとして、又はその逆の組合せを用いたTwo-hybridアッセイにより、本転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を測定することもできる。また、本転写調節因子を免疫沈降した際に共沈殿する蛋白質にDHX57が含まれるか否かをWestern blottin法を用いて検出するか、又は、DHX57を免疫沈降した際に共沈殿する蛋白質に本転写調節因子が含まれるか否かをWestern blottin法を用いて検出するか、という免疫学的手法により、本転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を測定することもできる。
上記のようにして本発明検定方法により測定された、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における、前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の本細胞変性制御能力を評価する。このようにして被験物質が有する本細胞変性制御能力の検定を行うことができる。
本発明検定方法において、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質を本細胞変性制御能力を有しない物質(例えば、溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等であってもよい。)としこれを基準として、他の被験物質が有する本細胞変性制御能力を評価してもよい。また、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が有する本細胞変性制御能力を基準として、他の被験物質が有する本細胞変性制御能力を評価してもよい。
本転写調節因子と被験物質とを接触させた場合における前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値(以下、測定値1と記す。)を、本転写調節因子と被験物質とを接触させなかった場合の前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその量と相関関係を有する指標値(以下、測定値2と記す。)と比較することによって、該被験物質の本細胞変性制御能力を評価してもよい。例えば、本細胞変性制御能力を、前記測定値を用いて、下記の式に従って制御能力率として表すこともできる。
制御能力率(%)=[(測定値1−測定値2)/測定値2]×100
本細胞変性制御能力を有する物質を探索するには、本発明検定方法により評価された本細胞変性制御能力に基づき本細胞変性制御能力を有する物質を選抜すればよい。
例えば、被験物質の本細胞変性制御能力を表わす制御能力率の絶対値が、統計学的に有意な値を示す物質、具体的に好ましくは、例えば、30%以上を示す物質、より好ましくは50%以上を示す物質を、本細胞変性制御能力を有する物質として選抜する。ここで当該制御能力率が正の場合には、促進的能力を有する物質として選抜され、一方、負の場合には、抑制的能力を有する物質として選抜される。
尚、当該物質は、本細胞変性制御能力を有する限り、低分子化合物、蛋白質(抗体を含む)又はペプチド等のいかなる物質であってもよい。
本発明探索方法によって選抜された物質は本細胞変性制御能力を有しており、細胞変性制御剤(例えば、認識能力不全改善剤、精神遅延改善剤等の治療剤等)の有効成分として使用してもよい。
本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする細胞変性制御剤(即ち、本発明細胞変性制御剤)は、その有効量を経口的または非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明細胞変性制御剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本発明細胞変性制御剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本発明細胞変性制御剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、動脈硬化病態増悪因子分泌抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
本発明細胞変性制御剤の適用可能と考えられる疾患としては、老人による認識能力不全、精神遅延、アルツハイマー病による認識能力不全等の疾患をあげることができる。
本転写調節因子遺伝子は、当該遺伝子を外来遺伝子として、哺乳動物細胞に、当該細胞で発現する位置に置かれるように提供することによって、哺乳動物細胞における本転写調節因子依存的−細胞変性経路上に存在するマーカー蛋白質遺伝子の発現を促進するために利用することもできる。
哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物由来の細胞を挙げることができる。当該細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、前記哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。従って、哺乳動物がヒトである場合には、一般にいう遺伝子治療が施されたヒトの細胞から各種実験に使用されるような株化細胞までを意味し、また哺乳動物が非ヒト動物である場合には、一般にいう遺伝子治療が施された非ヒト動物の細胞から各種実験に使用されるようなモデル動物の細胞や株化細胞までを意味する。後者の場合には、ラット、マウス等を好ましい動物種として挙げることができる。さらに、哺乳動物細胞が精神遅延を伴う疾患又はアルツハイマー症に羅患していると診断されうる哺乳動物の体内にある細胞である場合をより具体的な例としてあげることができる。
本転写調節因子遺伝子の調製は、上述と同等な方法に準じて行えばよい。また、高効率プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター)の制御下に本転写調節因子遺伝子を発現させるインビボ転写系によって調製することもできる。調製された遺伝子を用いて後述のように形質転換細胞を調製することにより、当該遺伝子が哺乳動物細胞で発現する位置に置かれるように提供された形質転換細胞を得ることができる。
上記の発現促進方法において「発現する位置に置かれた」とは、DNA分子が、その塩基配列からの転写及び翻訳を指向する(即ち、例えば、本転写調節因子をコードするRNAおよび本転写調節因子の産生を促進するような)塩基配列と隣接した位置に置かれていることを意味する。
本転写調節因子の発現レベルは、本転写調節因子遺伝子が提供されていない細胞と比較して上記マーカー蛋白質遺伝子の発現を制御するために十分である量であればよい。この場合、本転写調節因子遺伝子は、本転写調節因子の全体をコードするDNAであってもよいし、当該蛋白質の一部をコードするDNAであってもよい。
上記の発現促進方法において、本転写調節因子遺伝子がゲノムに組み込まれるように哺乳動物細胞に提供することにより、前記転写調節因子のリン酸化の有無を制御してもよい。
上記の方法において、本転写調節因子遺伝子を哺乳動物細胞に導入するために用いられる遺伝子構築物(以下、本遺伝子構築物と記載することもある。)および移入送達手段には、当該遺伝子が導入される哺乳動物細胞に対して親和性を有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はその他のウイルスベクターを用いることができる。具体的には例えば、ミラー(Miller),Human Gene Therapy 15〜14,1990;フリードマン(Friedman),Science 244:1275〜1281,1989;エグリティス(Eglitis)およびアンダーソン(Anderson),BioTechniques 6:608〜614,1988;トルストシェフ(Tolstoshev)およびアンダーソン(Anderson),current opinion in Biotechnology 1;55〜61,1990;シャープ(Sharp),The Lancet 337:1277〜1278,1991;コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322,1987;アンダーソン(Anderson),Science 22-:401〜409,1984;モーン(Moen),Blood Cells 17:407〜416,1991;ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990,1989;Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990,1993;およびジョンソン(Johnson),Chest 107:77S〜83S,1995等に記載される公知のベクターをあげることができる。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクターは特に開発が進んでおり、臨床の場でもすでに使用されている。
また、本発明DNAの移入送達手段としては、非ウイルス的手法を用いることもできる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987;オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259,1990;ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985,1989等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465,1990等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等があげられる。
本遺伝子構築物において、本転写調節因子遺伝子は、当該DNAを構成的に発現させるようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。
また、本転写調節因子遺伝子は、当該遺伝子の発現を環境刺激により調節するようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、上記遺伝子は、化学的信号もしくは薬物刺激等の外来性の信号もしくは薬物の導入により活性化されるプロモーターを用いて発現させてもよい。
また、本転写調節因子遺伝子は、組織特異的もしくは細胞型特異的なプロモーターの制御下に置かれていてもよい。かかるプロモーターには、哺乳動物における組織または細胞に特異的な転写制御に関与するプロモーター要素(エンハンサー等)が含まれていてもよい。例えば、必要に応じて、本転写調節因子遺伝子を発現させるために、神経細胞におけるDNAの発現を優先的に指向することが知られるエンハンサーを用いてもよい。また、本転写調節因子をコードするゲノムDNA(例えば配列番号7または8で示される塩基配列を有するDNA等)のクローンを本遺伝子構築物として用いる場合には、本転写調節因子遺伝子の元来の発現調節領域に含まれるコグネイト調節配列を介して本転写調節因子遺伝子を発現させることができ、必要に応じて、上記の任意のプロモーター又はプロモーター要素を付加して発現を制御することもできる。
尚、上記のようなプロモーターまたはプロモーター要素をマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用することもできる。
上記の方法を遺伝子治療の手段として応用する場合には、本遺伝子構築物は、上記マーカー蛋白質遺伝子の異常発現が予想される部位に対して適用される(例えば、注入によって)ことがよい。また、前記転写調節因子のリン酸化の有無が予想される部位の近傍の組織又は前記転写調節因子のリン酸化の有無が起こると予想される細胞に供給される血管に対してそれを適用してもよい。また、本遺伝子構築物を適用しようとする哺乳動物にとって外因性又は内因性の培養可能な細胞に、本遺伝子構築物を導入し、次いで、導入された細胞を血清学的に標的組織に対して注入することもできる。
理想的には、かかる遺伝子治療の手法により、少なくとも非罹患細胞における正常な本転写調節因子の細胞内レベルと同等の本転写調節因子の発現量がもたらされるとよい。
以下に、一例として、哺乳動物が形質転換非ヒト動物である場合の上記発明についてより詳細に説明する。
形質転換非ヒト動物の作製における本転写調節因子遺伝子の導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、レトロウイルスを用いる方法、胚性未分化細胞(ES細胞)を用いる方法等を挙げることができる。このうち、マイクロインジェクション法が最も汎用されている。マイクロインジェクション法とは、マイクロマニピュレーターを用いて、顕微鏡下で受精卵の前核内部に上記DNAを含んだ溶液を注入する方法である。
まず、本転写調節因子遺伝子を受精卵に注入する。その際、当該遺伝子を高い確率で染色体へ組込むためには、当該遺伝子の単離に用いたベクター領域を可能な限り除去すること、mRNAの不安定化に寄与するAUに富む領域を除くこと、直鎖状にすることが好ましい。また、当該遺伝子に対してイントロンを予め挿入しておくことが好ましく、当該イントロンとしては、例えば、β−グロビンイントロン等を挙げることができる。
受精卵は、目的に応じた系統の非ヒト動物から採取する。例えば、マウスの場合には、近交系のC57BL/6マウスやC3Hマウス、あるいはC57BL/6マウスと他系統のマウスとの交雑系(例えば、(C57BL/6×DBA/2)F1等)、非近交系のICRマウスが挙げられる。受精卵は、通常、妊馬血清ゴナドトロピンとヒト絨毛性ゴナドトロピンとの両者の腹腔内投与により過剰排卵を誘発させた雌マウスと雄マウスとを交尾させた後、前記雌マウスから採取する。尚、採取した受精卵は培養用ドロップに入れ、CO2ガスインキュベーターで培養・維持することにより、上記遺伝子の注入操作まで保管することができる。
上記遺伝子の注入はマイクロマニピュレーターをセットした倒立顕微鏡下で行なう。用いられる受精卵としては、雄性前核が雌性前核より大きくなる頃から両前核が融合するまでの発達段階にあるものを用いるとよい。まず受精卵を固定し、当該受精卵の雄性前核内に当該遺伝子を含有するDNA溶液を注入する。当該DNA溶液は必要に応じて複合体として調製する。複合体形成に用いられる物質としては、リポソーム、リン酸カルシウム、レトロウイルス等を挙げることができる。DNA溶液の注入は雄性前核が膨らむことにより確認できる。遺伝子注入量としては、例えば、約200〜約3,000コピーの上記遺伝子を含む量を挙げることができる。
このようにして、本転写調節因子遺伝子が注入された受精卵は胚盤胞になるまで前記と同様にして培養した後、仮親の子宮に移植する。好ましくは当該DNAの注入操作後ただちに仮親の卵管に移植するとよい。仮親としては、精管切断手術を施した雄マウスと交尾させて偽妊娠状態にした雌マウスを用いるとよい。具体的には、まず当該雌マウス背側の腎臓付近の皮膚と筋層を切開して卵巣・卵管・子宮を引き出し、卵巣膜を破いて卵管口を探し出す。次いで当該DNAの注入操作後に生き残った受精卵を該卵管口から移入し、卵巣・卵管・子宮を腹腔内に戻した後、筋層を縫合し、皮膚をクリップでとめる。約20日後に仔が生まれる。
得られた仔の体組織の一部、例えば尾の一部、を切り取り、当該部位から抽出されたDNAのサザンブロッティング等により当該遺伝子の存在有無を確認する。このようにして、当該遺伝子が非ヒト動物に導入されたことを確認できる。あるいは他の方法、例えばPCRなどの確認方法を利用してもよい。
本転写調節因子遺伝子治療剤の有効成分となる、本転写調節因子遺伝子は、前述の如く調製すればよい。また、例えば、当該遺伝子を含有する組換えベクター又は組換えウイルス等の形態で使用されることもある。このような形態には、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連性ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、SV40ベクター、ポリオーマウイルスベクター、乳頭腫ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクター等のウイルスベクターを利用することができる。さらに、アデノウイルスベクターを使用する場合には、例えばQUANTUM社製のAdEasy Kitを用い、本転写調節因子遺伝子をTransfer Vectorのマルチクローニングサイトに組み込み、得られた組換えベクターを直線化した後
に、pAdEasy vectorと共に大腸菌にトランスフォームし、相同組換え体DNAをヒト293A細胞に組み込むことにより、本転写調節因子遺伝子を含有する組換えウイルスを産生させ、これを回収し、使用することもできる。
また、ヒトサイトメガウイルスのプロモーター領域を有するプラスミドDNA等のような非ウイルス系のベクターを用いることもできる。本転写調節因子遺伝子を上記マーカー蛋白質の異常発現が予想される部位に直接注入する場合のように、非ウイルスベクターを用いて本転写調節因子遺伝子を局所的に送達するシステムにおいては、プラスミドDNAの使用は極めて有益である。体外に取り出された細胞に本転写調節因子遺伝子を含有する組換えベクターを導入して体内に戻す方法、すなわち、ex vivo法を使えば、あらゆる既知の導入方法が利用可能である。例えば、a)直接注入、b)リポソームを介する形質導入、c)リン酸カルシウム法・エレクトロポレーション法・DEAE−デキストラン法による細胞トランスフェクション、d)ポリブレンを介した送達、e)プロトプラスト融合、f)マイクロインジェクション、g)ポリリシンを使った形質導入などによって、非ウイルスベクターを導入することができる。
本転写調節因子遺伝子治療剤は、その有効量を非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、非経口的に投与する方法としては、例えば、上述のような注射(皮下、静脈内等)等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本転写調節因子遺伝子(本発明DNAが組み込まれた組換えベクター、組換えウィルス、組換えプラスミド等の形態を含む)を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本脂肪蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は、患者細胞において本発明蛋白質が細胞内で有効に働くような濃度レベルをもたらす有効成分量を投与すればよい。1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1(本転写調節因子遺伝子が含有されてなるベクターであるpGEM-mNXFの調製)
配列番号9で示される塩基配列(aagcacggag gaggaagccg ccggtgcgtc gggac)からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10で示される塩基配列(ggagagcggc tccacgtctt gatgacaata tgcca)からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。マウスBrain cDNAライブラリー(#10655−017ギブコBRL社製)10 ngを鋳型として、かつ、前記ポリヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。当該PCRにおいて、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いた。PCR反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
次いで、PCR反応液の全量を、低融点アガロースゲル電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供した。約2.5kbのDNAの単一バンドを確認した後、当該DNAを回収した。回収されたDNAの一部とダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いたダイレクト塩基配列解析に供した。
次に、上記のようにして回収されたDNA(約1μg)とpGEM T easyベクター(プロメガ社製)(10ng)とを混合し、この混合物にT4 DNAリガーゼを添加して反応させることにより、pGEM-mNXFを得た。得られたpGEM-mNXFの塩基配列をABIモデル3700型オートシークエンサーを用いてダイターミネーター法で決定した。決定された塩基配列を、前記のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致していることを確認した。
実施例2(pRC/RSV-mNXFsense等の調製)
哺乳動物細胞内において本転写調節因子の全長を発現させるためのプラスミド(以下、本発現プラスミドと記すこともある。)を、以下のようにして作製した。
実施例1で得られたpGEM-mNXFは、市販のpGEMベクターのSp6プロモーターの下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンが位置するように構築されていた。そこでこのpGEM-mNXF(1μg)を鋳型にして、かつ、配列番号13で示されるオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー 5´-gggcgctgcagcccagccaccatgtaccgatccaccaaggg-3´)および配列番号14で示されるオリゴヌクレオチド(リバースプライマー 5´-aatctcggcgttgatctggt-3´)をプライマーとして、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いたPCRを行うことにより、本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入され、さらにその上流にPstI制限酵素部位が導入された本転写調節因子の一部をコードするDNAを得た。尚、PCRの反応は、95℃1分間次いで55℃30秒間さらに72℃1分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
このようにして得られたDNAをPstIとBssHIIとで切断した後、低融点アガロースゲル電気泳動(NusieveGTGアガロース;FMCbio社製)に供することにより精製・回収した。精製・回収されたDNAを下記で用いるインサートDNAとした。次に、pGEM-mNXFをPstIとBssHIIとで切断した後BAP処理して得られたDNAを低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供し、前記DNAを回収した。回収されたDNA(0.1μg)に上記のインサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、マウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入されているプラスミドpGEM-mNXFコザックを作製した。
次に、プラスミドpGEM-mNXFコザックをPstI、NotI及びScaIの3者で同時に切断した後、これを低融点アガロース電気泳動に供し、約2.5kbpのDNA(mNXFコザックPstI-NotI)を回収した。そして、回収されたDNAをT4ポリメラーゼで平滑末端化し、得られたDNAをインサートDNAとした。RSVプロモーターを保有するプラスミドpRC/RSV(Invitorgen社製)をHindIIIで切断した後T4ポリメラーゼで平滑末端化して得られたDNAをBAP処理し、これをベクターDNAとした。このベクターDNA(0.1μg)に前記インサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、(a)コザック配列の下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFsense、及び(b)コザック配列の下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのアンチセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFantisense(陰性対照として)を作製した。尚、作製されたプラスミドが所望の構造を有することを、ベクターDNAとインサートDNAとの境界領域の塩基配列を調べることにより確認した。
実施例3 (本転写調節因子を発現する哺乳動物細胞等の作製)
まず、約1x107のSK-N-MC細胞(ATCC No.HTB10;大日本製薬より購入した)を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1x107に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。この細胞分散液0.4mlに、実施例2で作製された本発現プラスミド((a)pRC/RSV-mNXFsense、又は(b)pRC/RSV-mNXFantisense)10μgを混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに10cmシャーレ内で約24時間培養することにより、所望の哺乳動物細胞を得た。
実施例4 (本発明検定方法(その1))
実施例3で得られたpRC/RSV-mNXFsense導入哺乳動物細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された哺乳動物細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度DMEM培地に分散する。
次に、分散させた哺乳動物細胞を、(a)DMSOのみを添加した培地、又は(b)DMSOで種々の濃度に溶解した被験物質を添加した培地、を予め加えておいた6穴プレートに106個/ウェルの割合で播種する。このプレート内で当該哺乳動物細胞を37℃で約24時間培養する。
培養後、プレートから培地を除きPBS(-)(GIBCO-BRL社製)で哺乳動物細胞を洗浄する。洗浄後、回収された哺乳動物細胞をプレート一枚当たり0.3mlのRIPAbuffer(10mM HEPES (同仁社製)pH7.9, 0.1%NP40(BioRad社製)、0.5mM NaCl、1mM EDTA)を用いて溶解する。得られた溶解物を20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を分取して、これを細胞抽出物とする。
前記の細胞抽出物に等量のSDSサンプルバッファー(BioRad社製)を添加した後、これに100℃で5分間の加熱処理を実施する。得られた処理物をSDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で単離する。ゲル上で単離されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)へ転写する。Hybond-P膜を、PBS(-)で50分の1に希釈された膜ブロッキング試薬(ナカライテスク社製)により処理(30分間)した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で5000分の1に希釈されたビオチン化Anti-Flag抗体(SIGMA社製)を滴下する。室温で1時間インキュベートすることにより、Hybond-P膜の上における抗原抗体反応を進行させる。
次に、Hybond-P膜をPBS-T液中で30分間インキュベートする(4回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-Tで3000分の1に希釈されたビオチン-ストレプトアビジン-HRP(アマシャムファルマシア社製)を滴下する。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持するHybond-P膜を、PBS-T液中で30分間インキュベートする(2回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜に、ECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理する。このようにして得られたHybond-P膜を、イメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、Flag-本転写調節因子を同定するためのWestern blottingの像を得る。
このようにして、得られたpRC/RSV-mNXFsense導入哺乳動物細胞に含まれる本転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する。
次いで、DMSOのみを添加した培地を用いて培養された細胞に含まれる本転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値と、種々の被験物質を添加した培地を用いて培養された細胞に含まれる本転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値とを比較することにより、被験物質が有する、本転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力を評価する。その結果に基づき所望の物質を選抜する。
実施例5 (本発明検定方法(その2))
本実施例における、本発明検出方法でいう「被験物質」としてはNGFを用いた。また本実施例における、本発明検出方法の第一工程でいう「接触」はNGFが添加された培地と交換した後、当該培地中で哺乳動物細胞を培養することにより実施された。また本実施例における、本発明検出方法の第二工程でいう「測定」は、前述のような、本転写調節因子とDHX57との相互作用を利用した検出方法により実施された。また本実施例における、本発明検出方法の第三工程でいう「評価」は、本転写調節因子を発現する哺乳動物細胞とNGFとの接触によって本転写調節因子のリン酸化が著しく増強・向上することを確認することにより実施された。以下、詳細に試験方法を説明する。
本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸No.256〜596)のN末端にFlagタグペプチドが融合した融合タンパク質を発現させるプラスミドは次のように作製した。
まず、本転写調節因子遺伝子の配列情報(Accession No.AB054577)に従って、PCRプライマーとして、配列番号15で示されるForward primer:(5’-ctacaccccgaggacctggcccaagcttcttctca-3’)及び配列番号16で示されるReverse primer:(5’-gccccggagctgagctagggccaggagtgtacagt-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸No.256〜596)のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で3分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた本転写調節因子の部分蛋白質のcDNA断片と、配列番号17で示される(5’-caaaacctataaatatggactacaaagacgatgacgacaaggacccc-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、当該cDNA断片がコードする部分蛋白質のN末端にFlagペプチドが融合した融合タンパク質(以下、Flag-NXF-Mと記すこともある。)の発現プラスミドを得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
次いで、本転写調節因子遺伝子の配列情報(Accession No.AB054577)に従って、PCRプライマーとして、配列番号18で示されるForward primer:(5’-ggccccctctctgtggatgtccccctggtgcccga-3’)及び配列番号19で示されるReverse primer:(5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸No.596〜802)のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で3分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた本転写調節因子の部分蛋白質のcDNA断片と、配列番号20で示される(5’-caaaacctataaatatggactacaaagacgatgacgacaaggacccc-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、当該cDNA断片がコードする部分蛋白質のN末端にFlagペプチドが融合した融合タンパク質(以下、Flag-NXF-ADと記すこともある。)の発現プラスミドを得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
次いで、DHX57cDNAの配列情報(Accession No.NM_145646)に従って、PCRプライマーとして、配列番号21で示されるForward primer:(5’-atgacttctgagaatcaagagaaagtgaaagctct-3’)及び配列番号22で示されるReverse primer:(5’-aacaaataagtcccagtcataccacttatgacaa-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、DHX57蛋白質全長ののcDNA断片をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物(尚、当該PCR産物ではDHX57のSTOPコドンが欠損している。)を得た。
次いで、pCMV/myc/cytoベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化されたNcoIサイト部分に、上記のPCR産物を結合することにより、DHX57の蛋白質全長のC末端にmycタグペプチドが融合した融合タンパク質(myc-DHX57)を発現させる発現プラスミドを得た。因みに、因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、10cmコラーゲンコートプレート(Falcon社製)上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、上記で作製された2つの発現プラスミドを含むプラスミド混合物(合計12μg)をトランスフェクションした。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。尚、対照としては、インサートを持たないpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)又はpCMV/myc/cytoベクター(Invitrogen社製)を用いた。
上記のようにトランスフェクションした後、24時間経過後に各々の哺乳動物細胞をPBS(−)(GIBCO-BRL社製)で洗浄した後、回収された哺乳動物細胞をプレート一枚当たり1mlのRIPAbuffer(10mM HEPES (同仁社製)pH7.9, 0.1%NP40(BioRad社製)、0.1%SDS、0.2mM NaCl、1mM EDTA)を用いて懸濁した。得られた懸濁物を、21Gニードル(テルモ社製)を取り付けたシリンジで吸引・排出操作を5回行うことにより、哺乳動物細胞を破砕した。このようにして得られた破砕物を20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を分取して、これをAnti-Flag アガロースビーズ(SIGMA社製)50%懸濁液30μlと混合した後、当該混合物を4℃で30分間インキュベートした。
このようにして得られた混合物を2000gで1分間遠心分離することにより得られた沈殿画分を分取して、これをAnti-Flag アガロースビーズ(SIGMA社製)に結合させた後、再度1mlのRIPAで懸濁してから2000gで1分間遠心分離する操作(1回の洗浄操作単位)を5回繰り返すことにより、Anti-Flagアガロースビーズに特異的に結合したタンパク質を得た。得られたタンパク質を、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)にビーズごと懸濁して、当該懸濁物を100℃で5分間の加熱処理を実施した。得られた処理物をSDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で単離した。ゲル上で単離されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)へ転写する。Hybond-P膜を、PBS(-)で50分の1に希釈された膜ブロッキング試薬(ナカライテスク社製)により処理(30分間)した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で5000分の1に希釈されたビオチン化Anti-Flag抗体(SIGMA社製)を滴下する。室温で1時間インキュベートすることにより、Hybond-P膜の上における抗原抗体反応を進行させる。
次に、Hybond-P膜をPBS-T液中で30分間インキュベートする(4回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-Tで3000分の1に希釈されたビオチン-ストレプトアビジン-HRP(アマシャムファルマシア社製)を滴下する。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持するHybond-P膜を、PBS-T液中で30分間インキュベートする(2回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜に、ECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理する。このようにして得られたHybond-P膜を、イメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、c-myc付加蛋白質(myc-DHX57)を同定するためのWestern blottingの像を得た。
このようにして、本転写調節因子の転写活性を調節するDHX57(mycタグ標識したDHX57)と本転写調節因子(Flagタグ標識した本転写調節因子の部分蛋白質)との間の蛋白質−蛋白質間相互作用を確認し、その結果を図1Aに示した。尚、図1Aの最上部パネルに、そのDHX57をYeast two-hybrid試験によりクローニングした際に使用されたBaitの作製において、使用された本転写調節因子の部分ペプチド(下線部:アミノ酸番号256〜596)の位置関係を示しており、当該領域を「NXF-M領域」(図1Aの中では単に「M」)と名付けた。一方、当該領域よりC末端側の本転写調節因子の転写活性化ドメイン領域を「NXF-AD領域(Activation domain)」(図1Aの中では単に「AD」)と名付けた。また図1Aの中の「Flag-NXF-M」とは、NXF-M領域(NXF[256-596])のN末端にFlagタグ標識を融合させたタンパク質あり、また図1Aの中の「Flag-NXF-AD」とは、NXF-AD領域(NXF[596-802])のN末端にFlagタグ標識を融合させたタンパク質あり、図1Aの中の「Myc-DHX57」とは、DHX57の全長(DHX57 full length)のN末端にFlagタグ標識を融合させたタンパク質である。
図1Aのレーン1は、myc-DHX57とFlag-NXF-Mとを同時に強制発現させた場合の結果である。全レーンのうち当該レーンの場合のみ、myc-DHX57の存在が確認された(矢印がmyc-DHX57のバンドである)。他のレーン2〜6の場合には、いずれもmyc-DHX57の存在を示すバンドは認められなかった。レーン2の場合は、myc-DHX57とFlag-NXF-ADとを同時に強制発現させた場合の結果であり、バンドが認められないことから、レーン1においてバンドが認められたことと合わせて、myc-DHX57と本転写調節因子との間の相互作用は特異的なもので且つそれを担う本転写調節因子のドメインは、NXF-ADの領域ではなく、NXF-Mの領域に存在すると判断することができた。一方、レーン3の場合は、myc-DHX57のみを強制発現させた場合の結果であり、バンドが認められないことから、Anti-Flagアガロースを用いた免疫沈降の際にmyc-DHX57がアガロースビーズに非特異的に吸着したものが、レーン1におけるバンドのように見えているのではないということが確認された。またレーン4〜6の場合は、陰性対照の試験区であり、いずれの試験区においてもmyc-DHX57が含まれていないことから、myc-DHX57のバンドは当然認められなかった。
次いで、本転写調節因子遺伝子の配列情報(Accession No.AB054577)に従って、PCRプライマーとして、配列番号23で示されるForward primer:(5’-ctacaccccgaggacctggcccaagcttcttctca-3’)及び配列番号24で示されるReverse primer:(5’-gccccggagctgagctagggccaggagtgtacagt-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子遺伝子cDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
次いで、pMベクター(Clontech社)の平滑末端化されたBamHIサイト部分で且つ当該ベクター上のプロモーターの下流に、上記のPCR産物を結合することにより、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)のC末端に本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸番号256〜596)を融合した融合蛋白質を発現させる発現プラスミド(Baitとして)を得た。因みに、因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。尚、Gal4応答配列(Gal4 Responsive Elements)を持つレポーターとしては、市販のpFR-Luc(Stratagene社製)を用いた。
次いで、DHX57cDNAの配列情報(Accession No.NM_145646)に従って、PCRプライマーとして、配列番号25で示されるForward primer:(5’-atgacttctgagaatcaagagaaagtgaaagctct-3’)及び配列番号26で示されるReverse primer:(5’-ttaaaacaaataagtcccagtcataccacttatga-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、DHX57蛋白質全長のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
次いで、pVP16ベクター(Clontech社)の平滑末端化されたBamHIサイト部分で且つ当該ベクター上のプロモーターの下流に、上記のPCR産物を結合することにより、VP16の転写活性化ドメイン(「VP16」と示されている)のC末端にDHX57全長(DHX57 full length)を融合した融合蛋白質を発現させる発現プラスミド(preyとして)を得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、6穴プレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該6穴プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、上記で作製された2つの発現プラスミド(Bait及びPrey)0.8μgを含むプラスミド混合物(合計1μg)をトランスフェクションした後、得られた哺乳動物細胞とPromega社製Dual luciferaseアッセイキットとを用いて、当該キットに添付される取扱説明書に記載される基本条件に従ってルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。また、上記のDual luciferaseアッセイキットに添付される取扱説明書に従って、phRRL-CMVベクター(Promega社製)を、トランスフェクション時に、レポータープラスミド1μgに対して0.01μg共存させた条件下でDual luciferaseアッセイとすることにより、各穴のルシフェラーゼ活性の測定値の補正を行った。対照としてはプラスミドpVP16(VP16)を用いた。
レポーターベクターをトランスフェクションした後、4時間経過後に、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)のみが追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。当該培地交換から16時間経過した後、NGFによる刺激を加える場合(NGF+)には、300ng/mlのNGF(WAKO社製)、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。一方、NGFによる刺激を加えない場合(NGF+)には、300ng/mlのNGF(WAKO社製)、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。当該培地交換から12時間経過した後、細胞をDual luciferase アッセイキットの融解液で細胞融解して得られた混合物の発光量をルミノメーター(ベルトールド社製)を用いて測定した。
このようにして、NGFによる刺激に基づく本転写調節因子の活性化と本転写調節因子の相互作用因子であるDHX57との関係を確認し、その結果を図1Bに示した。尚、図1Bでは、上記のように、本転写調節因子の部分ペプチド(NXF[256-596]:本転写調節因子のアミノ酸番号256〜596部分)であるNXF-M領域とDHX57全長(DHX57 ful length)との間の相互作用を、Mammalian Two-hybrid アッセイ法により確認するために、Two-hybrid baitプラスミドとしてGal4のDNA結合ドメイン(Gal4-DBD)とNXF-Mの領域(本転写調節因子の部分蛋白質:NXF[256-596])との融合タンパク質を発現する発現プラスミドを用いて且つTwo-hybrid preyとしてVP16の転写活性化ドメインとDHX57の全長蛋白質(DHX57 full length)との融合タンパク質(VP16-DHX57)を発現する発現プラスミドを用いた。またTwo-hybridレポータープラスミドとしてルシフェラーゼ構造タンパク質の上流にプロモーター領域としてGla4の応答配列(Gal4-RE)を持つレポータープラスミドを用いた。この場合のTwo-hybridアッセイでは、NXF-Mの領域とDHX57との間に物理的な相互作用が細胞内で存在する場合のみに、前記レポータープラスミドの転写の活性化が認められることになる。
各試験区について、陰性対照のベクタープラスミドの場合におけるルシフェラーゼ酵素活性を1とした時の活性相対値としてレポーター遺伝子の転写の活性化をグラフの縦軸に示した。レーン1及び2の場合には、Bait のみでPreyが存在しないためにレポーター遺伝子の転写の活性は殆ど認められないのに比較して、BaitとPreyとのVP16-DHX57が共存している試験区であるレーン3の場合には、レーン1の場合に比較して、レポーター遺伝子の転写の活性化が認められた。当該試験結果から、NXF-Mの領域とDHX57との間に物理的な相互作用が細胞内に存在することが確認された。レーン4の場合には、レーン3における条件に加えて、細胞を培養する際にNGFを共存させることにより、NGFによる刺激を加えた系での試験区であるが、レーン3に比較してより強いレポーター遺伝子の転写の活性化が認められた。
以上より、細胞に、NGFによる刺激を加えると、NXF-Mの領域とDHX57との間の物理的相互作用は、著しく増強されることが判明した。そして、本転写調節因子がNGFによる刺激によりリン酸化されると、DHX57とNXF-Mの領域との間の物理的相互作用が著しく増強されることが明らかとなった。レーン5及び6の場合には、レーン3及び4の試験区で用いられているVP16-DHX57(Prey)の代わりに、DHX57部分が存在しないVP16のみを発現する発現プラスミドが用いられた陰性対照試験区であり、DHX57部分が存在しないことからレーン3及び4のようなレポーター遺伝子の転写の活性は認められなかった。レーン7から12の場合には、レーン1から6の各々の場合からBaitを除いた陰性対照区であり、いずれもBaitが存在しないためにレポーター遺伝子の転写の活性は殆ど認められなかった。 従って、レーン3及び4の場合には、認められたレポーター遺伝子の転写の活性化は、Bait(DHX57)とPrey(NXF-Mの領域(NXF[256-596]))との両方に依存するものであることが確認された。
次いで、本転写調節因子遺伝子の配列情報(Accession No.AB054577)に従って、PCRプライマーとして、配列番号27で示されるForward primer:(5’-ctacaccccgaggacctggcccaagcttcttctca-3’)及び配列番号28で示されるReverse primer:(5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子遺伝子cDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
次いで、pMベクター(Clontech社)の平滑末端化されたBamHIサイト部分で且つ当該ベクター上のプロモーターの下流に、上記のPCR産物を結合することにより、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)のC末端に本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸番号256〜802)を融合した融合蛋白質を発現させる発現プラスミド(Baitとして)を得た。因みに、因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。尚、Gal4応答配列(Gal4 Responsive Elements)を持つレポーターとしては、市販のpFR-Luc(Stratagene社製)を用いた。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、6穴プレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該6穴プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、上記で作製された発現プラスミド0.8μg及びGal4-DBD-NXF[256−802]発現プラスミド0.2μg若しくはGal4-DBDのみを発現する発現プラスミドpM0.2μg(Clontech社製)(図1C中では「Gal4-DBD」と表示されている。)を含むプラスミド混合物(合計1μg)をトランスフェクションした後、得られた哺乳動物細胞とPromega社製Dual luciferaseアッセイキットとを用いて、当該キットに添付される取扱説明書に記載される基本条件に従ってルシフェラーゼレポーターアッセイ(One-hybrid アッセイ)を実施した。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。また、上記のDual luciferaseアッセイキットに添付される取扱説明書に従って、phRRL-CMVベクター(Promega社製)を、トランスフェクション時に、上記の2種のレポータープラスミド1μgに対して0.01μg共存させた条件下でDual luciferaseアッセイとすることにより、各穴のルシフェラーゼ活性の測定値の補正を行った。
レポーターベクターをトランスフェクションした後、4時間経過後に、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)のみが追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。当該培地交換から16時間経過した後、NGFによる刺激を加える場合(NGF+)には、300ng/mlのNGF(WAKO社製)、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。一方、NGFによる刺激を加えない場合(NGF+)には、300ng/mlのNGF(WAKO社製)、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換し培養した。当該培地交換から12時間経過した後、細胞をDual luciferase アッセイキットの融解液で細胞融解して得られた混合物の発光量をルミノメーター(ベルトールド社製)を用いて測定した。
図1Cの中の「DHX57+」と示されている試験区では、上記のトランスフェクションの際に、DHX57全長を発現する発現プラスミド0.1μgを共存させた系である。また図1Cの中の「P300+」と示されている試験区では、上記のトランスフェクションの際に、p300を発現するプラスミド0.1μgを共存させた系である。
DHX57全長を発現させる発現プラスミドは、pRC/RSVベクターのプロモーター下流にある平滑化したHindIIIサイトに、DHX57全長のcDNAを結合することにより作製された。尚、DHX57cDNAの配列情報(Accession No.NM_145646)に従って、PCRプライマーとして、配列番号29で示されるForward primer:(5’-atgacttctgagaatcaagagaaagtgaaagctct-3’)及び配列番号30で示されるReverse primer:(5’-ttaaaacaaataagtcccagtcataccacttatga-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、DHX57蛋白質全長のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
p300を発現させる発現プラスミドは、pRC/RSVベクターのプロモーター下流にある平滑化したHindIIIサイトに、下記のインサートDNA断片を結合することにより作製された。尚、Genbank accession No.U01877の配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号31で示されるForward primer:(5’-atggccgagaatgtggtggaaccggggccgccttc-3')及び配列番号32で示されるReverse primer:(5'-ctagtgtatgtctagtgtactctgtgagaggtttg-3')を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、前記のインサートDNA断片をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で10分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
このようにして、NGFによる刺激とDHX57強制発現との両方による本転写調節因子の活性化を検討し、その結果を図1Cに示した。尚、図1Cでは、上記のように、NXF-M領域(アミノ酸No.256-596)と本転写調節因子の転写活性化領域との両方を含む本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸No.256-802)をGal4のDNA結合ドメインのC末端に融合させた融合タンパク質(Gal4-NXF[256-802])をEffecterとし、ルシフェラーゼ構造遺伝子の上流にGal4応答配列(Gal4-RE)を持つプロモーターを結合させたものをレポーターとする、PC12培養細胞を用いたOne-hybridアッセイ法と用いて、前記Effecter(融合タンパク質)の転写活性化能を検討した。各試験区におけるレポーター活性の相対値を縦軸に示した。
レーン2の場合には、レポーターを用いてGal4-NXF[256-802]の転写活性を測定した結果が示されている。レーン1の場合には、陽性対照として、p300(Gal4-NXF[256-802]を活性化する)を共存させた場合の結果が示されている。レーン3の場合には、p300によるGal4-NXF[256-802]の転写の活性化と同程度の活性化が、Gal4-NXF[256-802]にDHX57を共存させた場合にも認められた。レーン4の場合には、細胞にNGFによる刺激(培養液中にNGFを添加すること)を加えると、Gal4-NXF[256-802]にDHX57を共存させた場合に認められたGal4-NXF[256-802]の転写の活性化が更に向上した。
以上より、DHX57がGal4-NXF[256-802]のCo-activatorとして働くことが確認された。また、DHX57がCo-activatorとして働いている際の細胞に、NGFによる刺激が加わると、Gal4-NXF[256-802]の転写の活性化がさらに向上することが確認された。レーン5〜7の場合には、レーン2〜4の場合の陰性対照として、EffecterのGal4-NXF[256-802]の代わりに、NXF[256-802]の部分が存在しないGal4DNA結合ドメインのみ(Gal4-DBD)をEffecterとして用いた場合の結果が示されている。レーン2の場合に対してレーン3及び4の場合に認められた活性化効果は、レーン5の場合に対して、レーン6及び7の場合には全く認められなかったことから、検出された活性化効果は本転写調節因子[256-802]の部分に対して発揮されたものであることが確認された。
図1Cの右のパネルでは、Gal4-NXF[256-802]にDHX57を共存させ、更にその細胞にNGFによる刺激を加えた場合(レーン8:左パネルのレーン4と同じ場合)のレポーター活性を1とした時の相対活性が縦軸に示されている。レーン9の場合には、Gal4-NXF[256-802]にDHX57を加えてp300を共存させ、更にNGFによる刺激を加えた場合の活性が示されており、p300が試験区に新たに追加されることにより、活性の向上が認められた。従って、Gal4-NXF[256-802]に対して、DHX57とp300とは相互に排除せず作用することが明らかになった。
実施例6 (本発明に至るための新知見(その1):本転写調節因子遺伝子の誘導発現)
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、6穴プレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該6穴プレート上で6割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞を、さらに1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウムが追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、37℃、5%CO存在下で約16時間培養することにより、下記の実験で用いられる哺乳動物細胞を調製した。
このようにして調製された哺乳動物細胞の培地を、下記の3つの試験区になるように、下記の培地に交換した。
(1)基本培地(1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウムが追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製))に、NGFと溶媒(0.1%DMSO)のみとを加えてなる培地を用いた試験区(NGF単独処理:陰性対照区)(図2中の黒色バー:+Vehicle)
(2)前記の基本培地に、NGFとMAPK活性化を特異的に阻害する薬剤(以下、MEK阻害剤と記すこともある。)であるU0126(10μM)とを加えてなる培地を用いた試験区(図2中の灰色バー:+U0126)
(3)前記の基本培地に、NGFとPI3 kinaseを特異的に阻害する薬剤であるLY29402(10μM)とを加えてなる培地(図2中の白色バー:+LY29402)
培地を交換した後、前記の哺乳動物細胞をそのまま15分間インキュベートした。次いで、前記の哺乳動物細胞に対してNGFによる刺激を与えるために、前記の哺乳動物細胞の培地を、300ng/mlのNGF(WAKO社製)、1%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウムが追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)に交換した。
次に、上記のNGFによる刺激の開始時点から0hr、1hr、2hr、3hr経過した各時点での各々の前記の哺乳動物細胞から、全RNAを回収した。尚、前記の哺乳動物細胞からの全RNAの回収及び精製には、QIAGEN社製RNA精製キット(RNeasy kit)が用いられ、当該キットに添付されたプロトコールに従って各々の前記の哺乳動物細胞から数μgずつの全RNAが回収された。
回収された全RNA1μgずつを鋳型にし、且つ、RNA Reverse transcriptase(Invitrogen社製;SuperscriptII)及びOligo-dT(アマシャムファルマシア社製)を使用することにより、cDNAを得た。
TaqMan universal pre-mix(Applied biosystems社製)及びラット由来の本転写調節因子特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製Rn00596522_m1)を用いたTaqMan Real Time PCR法により、全RNA中の本転写調節因子のmRNAの量を定量的に測定した。尚、当該測定は、Applied biosystems社製7900HTシステムを用いてデフォルトモードで実施された。また同時に、ラット由来の本転写調節因子特異的TaqManプローブの代わりにGAPDH特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製;#4308313)を用いたこと以外は同様な方法により、全RNA中のGAPDHのmRNAの量を定量的に測定し、当該測定値に基づき各サンプルの本転写調節因子のmRNAの測定値を補正した。
このようにして得られた全RNA中の本転写調節因子のmRNAの量は、上記のNGFによる刺激の開始時点(0hr)における定量値を1とした時の相対値(N=6の平均値)として算出された。その結果を図2Aに示した。
図2Aから明らかなように、哺乳動物細胞においてNGFが本転写調節因子遺伝子を誘導発現させる能力に関して、(1)MAPK経路(NGFのレセプター下流にあるシグナル伝達経路の一つ)を阻害した場合には、前記誘導発現が弱く阻害されること、(2)PI3 Kinase経路(NGFのレセプター下流にあるシグナル伝達経路の一つ)を阻害した場合には、前記誘導発現が強く阻害されること等が確認された。従って、本転写調節因子遺伝子のプロモーターを活性化する主要な細胞内シグナル伝達経路の一つはPI3 Kinase経路であることが明らかにされた。
実施例7 (本発明に至るための新知見(その2):本転写調節因子のプロモーターが活性化するに至るシグナル伝達経路)
本転写調節因子遺伝子のゲノム配列(Accession No.AB054577及びNC_000085)の塩基配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号33で示されるForward primer:(5’-tccagtatttgagaaaaggagccaggagtctccat-3’)及び配列番号34で示されるReverse primer:(5’-ggaggcttcctcttccttgcttcccggtcttttcg-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子遺伝子プロモーター部分翻訳領域の上流約5kbpから転写開始点近傍までの領域をPCR法により単離した。この際、マウスゲノムDNA(タカラ社製)1μgを鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で8分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた本転写調節因子のプロモーター部分断片を同プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が配置されるようにpGL3 Basicベクター(Promega社製)のSmaIサイトに導入することにより、本転写調節因子のプロモーターの作用でルシフェラーゼ酵素が発現するレポータープラスミドを作製した。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、6穴プレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該6穴プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、上記で作製されたレポータープラスミド1μgをトランスフェクションした後、得られた哺乳動物細胞とPromega社製Dual luciferaseアッセイキットとを用いて、当該キットに添付される取扱説明書に記載される基本条件に従ってルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。また、上記のDual luciferaseアッセイキットに添付される取扱説明書に従って、phRRL-CMVベクター(Promega社製)を、トランスフェクション時に、レポータープラスミド1μgに対して0.01μg共存させた条件下でDual luciferaseアッセイとすることにより、各穴のルシフェラーゼ活性の測定値の補正を行った。
レポーターベクターをトランスフェクションした後、16時間経過後に2図B中のレーン1〜4の試験区では、被験物質を含む培地に交換した。当該培地交換から8時間経過した後、細胞をDual luciferase アッセイキットの融解液で細胞融解して得られた混合物の発光量をルミノメーター(ベルトールド社製)を用いて測定した。尚、被験物質を含む培地は、「+Vehicle」と表示されている対照区では、終濃度0.1%DMSOが添加された培地であり、また「+NGF」と表示されている試験区では、NGFによる刺激を加えた場合において、終濃度300ng/mlのNGFが添加された培地であり、また「+LY294002」と表示されている試験区では、終濃度10μMのLY294002が添加された培地であり、また「+LY303511」と表示されている試験区では、終濃度10μMのLY303511(LY294002の対照化合物として)が添加された培地である。一方、2図B中のレーン5〜7の試験区では、レポーターベクターをトランスフェクションした後、24時間経過後に、細胞をDual luciferase アッセイキットの融解液で細胞融解して得られた混合物の発光量をルミノメーター(ベルトールド社製)を用いて測定した。尚、「+Vehicle」と表示されている対照区では、トランスフェクション時に0.1μgのpRC/RSVベクターを共存させた条件下でレポーターベクターを細胞導入した試験系であり、また「+myr-Akt」と表示されている試験区では、トランスフェクション時に0.1μgの構成的活性化型AKTを発現する発現プラスミドを共存させた条件下でレポーターベクターを細胞導入した試験系であり、また「+PKAc」と表示されている試験区では、トランスフェクション時に0.1μgのpFC-PKA(Stratagene社製)を共存させた条件下でレポーターベクターを細胞導入した試験系である。
尚、「pFC-PKA」とは、PKAの構成的活性化型酵素活性ドメイン(PKAc)を発現する発現プラスミドを意味する。また構成的活性化型AKTを発現する発現プラスミドは、以下のようにして作製した。まず、PCRプライマー:配列番号35で示されるForward primer:(5’-ggggctgaagagatggaggtgtccctggccaagcc-3’)及び配列番号36で示されるReverse primer:( 5’-tcaggccgtgctgctggccgagtaggagaactggg-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、ヒトAktのcDNAの塩基配列情報(Accession No.NM_005163)に基づきAktの部分塩基配列(アミノ酸No.130〜480に対応する部分塩基配列)をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られたAkt断片と、配列番号37で示される(5’-atgggcagcagcaagagcaagcccaaggaccccagccagagaaggctcgaa-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、Akt断片がコードする部分蛋白質のN末端にミリストリ化シグナル配列が融合した融合タンパク質の発現プラスミドを得た。因みに、当該融合タンパク質は、構成的活性化型AKT活性を有することが知られており、また意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
このようにして、本転写調節因子のプロモーターが如何なる細胞内シグナル伝達経路の下流に位置するのかを検討した結果、図2B中のレーン1に示されている溶媒のみが添加された系である対照区における本転写調節因子のプロモーターの活性(ルシフェラーゼの活性として測定されている)を1とした時の相対値で、横軸に示されたそれぞれの試験区における相対活性値を縦軸に示した。本実施例において、NGFによる刺激(300ng/mlのNGFを含む培地を用いた)を加えた場合には、約8倍程度の本転写調節因子のプロモーターの活性が向上すること(即ち、プロモーターの活性化)が判明した(レーン2)。また、LY294002(PI3 kinaseの特異阻害剤)の共存下においてNGFによる刺激を加えた場合には、本転写調節因子のプロモーターの活性が強く阻害されることが判明した(レーン3)。また、LY303511(PI3 kinaseに対する阻害活性の無い陰性対照化合物)の共存下においてNGFによる刺激を加えた場合には、本転写調節因子のプロモーターの活性は阻害されないことが判明した(レーン4)。以上より、レーン3で判明した本転写調節因子のプロモーター活性に対する阻害活性は非特異的なものではないと考えられた。図2B中のレーン6では、PI3 kinaseシグナル伝達経路上でPI3 kinaseの直接の下流にあるAkt及びその更に下流のシグナル伝達経路を活性化するために、発現プラスミドを用いて構成的活性化型Akt遺伝子(myr−Akt)を哺乳動物細胞内で強制発現させた場合における結果を示しており、陰性対照であるPRC/RSVベクターを哺乳動物細胞に導入した場合(レーン5)と比較して、レーン6では本転写調節因子のプロモーターの活性化が認められた。一方、レーン7のように、PKAの酵素活性ドメイン(PKAc)を哺乳」動物細胞内で強制発現させた場合には、本転写調節因子のプロモーターの活性化は寧ろ低下する傾向が認められた。
以上から、本転写調節因子のプロモーターが活性化するに至る主要なシグナル伝達経路の一つは、PI3 kinase−Aktシグナル伝達経路であることが示唆された。
実施例8 (本発明に至るための新知見(その3):本転写調節因子の活性化の機構解析)
まず、本転写調節因子遺伝子のゲノム配列(Accession No.AB054577及びNC_000085)の塩基配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号38で示されるForward primer: (5’-ctacaccccgaggacctggcccaagcttcttctca-3’)及び配列番号39で示されるReverse primer: (5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子cDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた本転写調節因子cDNA断片を、pMベクター(Clontech社)のBamHIサイトを平滑末端化した部位へ、そのプロモーターの下流に導入することにより、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)のC末端に本転写調節因子の部分蛋白質(アミノ酸番号256〜802)を融合した融合タンパク質を発現させる発現プラスミドを作製した。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。尚、Gal4応答配列(Gal4 Responsive Elements)を持つレポーターとしては、市販のpFR-Luc(Stratagene社製)を用いた。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、6穴プレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該6穴プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、上記で作製されたレポータープラスミド0.8μg及びGal4-DBD-NXF[256−802]発現プラスミド0.2μgをトランスフェクションした後、得られた哺乳動物細胞とPromega社製Dual luciferaseアッセイキットとを用いて、当該キットに添付される取扱説明書に記載される基本条件に従ってルシフェラーゼレポーターアッセイ(One-hybrid アッセイ)を実施した。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。また、上記のDual luciferaseアッセイキットに添付される取扱説明書に従って、phRRL-CMVベクター(Promega社製)を、トランスフェクション時に、上記の2種のレポータープラスミド1μgに対して0.01μg共存させた条件下でDual luciferaseアッセイとすることにより、各穴のルシフェラーゼ活性の測定値の補正を行った。
レポーターベクターをトランスフェクションした後、4時間経過後に1%FCSと1mMピルビン酸ナトリウムのみとが添加されたRPMI培地に交換した。当該培地交換から16時間経過した後、NGFによる刺激を加えるために300ng/mlのNGF(WAKO社製)を含む1%FCSと1mMピルビン酸ナトリウムとが添加されたRPMI培地に交換した。当該培地交換から6時間経過した後、細胞をDual luciferase アッセイキットの融解液で細胞融解して得られた混合物の発光量をルミノメーター(ベルトールド社製)を用いて測定した。尚、被験物質を含む培地は、「(−)」又は「+No chemical」と表示されている対照区では、1%FCSと1mMピルビン酸ナトリウムのみとが添加されたRPMI培地であり、またNGFによる刺激を加えた場合において、「+Vehicle」と表示されている試験区では、終濃度0.1%のDMSOが添加された培地であり、また「+LY294002」と表示されている試験区では、終濃度10μMのLY294002(PI3K特異阻害剤)が添加された培地であり、また「+U0126」と表示されている試験区では、終濃度10μMのU0126(MEK特異阻害剤でMAPK活性化を阻害する薬剤)が添加された培地であり、また「+PD98059」と表示されている試験区では、終濃度10μMのPD98059(MEK特異阻害剤でMAPK活性化を阻害する薬剤)が添加された培地である。「+Vehicle」と表示されている対照区では、トランスフェクション時に0.01μgのpRC/RSVベクターを共存させた条件下でレポーターを細胞導入した試験系であり、また「+myr-Akt」と表示されている試験区では、トランスフェクション時に0.01μgの構成的活性化型AKTを発現する発現プラスミドを共存させた条件下でレポーターを細胞導入した試験系であり、また「+PKAc」と表示されている試験区では、トランスフェクション時に0.01μgのpFC-PKA(Stratagene社製)を共存させた条件下でレポーターを細胞導入した試験系である。
尚、「pFC-PKA」とは、PKAの構成的活性化型酵素活性ドメイン(PKAc)を発現する発現プラスミドを意味する。また「pFC-MEK1」とは、MAPKKであるMEK1を発現し、MAPKを活性化するプラスミドを意味する。また構成的活性化型AKTを発現する発現プラスミドは、以下のようにして作製した。まず、PCRプライマー:配列番号40で示されるForward primer:(5’-ggggctgaagagatggaggtgtccctggccaagcc-3’及び配列番号41で示されるReverse primer:(5’-tcaggccgtgctgctggccgagtaggagaactggg-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、ヒトAktのcDNAの塩基配列情報(Accession No.NM_005163)に基づきAktの部分塩基配列(アミノ酸No.130〜480に対応する部分塩基配列)をPCR法により単離した。この際、ヒトBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で2分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られたAkt断片と、配列番号42で示される(5’-atgggcagcagcaagagcaagcccaaggaccccagccagagaaggctcgaa-3’という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、Akt断片がコードする部分蛋白質のN末端にミリストリ化シグナル配列が融合した融合タンパク質の発現プラスミドを得た。因みに、当該融合タンパク質は、構成的活性化型AKT活性を有することが知られており、また意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
このようにして、本転写調節因子のプロモーターが如何なる細胞内シグナル伝達経路で調節されているかを検討し、その結果を図3Aに示した。
Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)と本転写調節因子のDNA結合ドメイン以降のドメイン(アミノ酸No 256〜802)とを融合させた融合タンパク質(Effecter)の転写活性を、Gal4応答配列(Gal4−RE)をプロモーター領域に持つGal4応答レポータープラスミドを用いて測定すること(所謂、One-hybridアッセイ法)により、本転写調節因子の転写活性化領域の活性を評価した。尚、ここでは、NGFによる刺激に応答するPC12細胞を使用して検討した。
図3A中のレーン1に示されている溶媒のみが添加された系である対照区における本転写調節因子の転写活性化領域の活性を1としたときの相対値で、横軸に示されたそれぞれの試験区における相対活性値を縦軸に示した。本実施例において、NGFによる刺激(300ng/mlのNGFを含む培地を用いた)を加えた場合には、本転写調節因子の転写活性化領域の活性が向上すること(即ち、転写活性化領域の活性化)が判明した(レーン2)。また、LY294002(PI3 kinaseの特異阻害剤)の共存下においてNGFによる刺激を加えた場合には、本転写調節因子の転写活性化領域の活性が微弱に阻害されるに過ぎないことが判明した(レーン3)。また、U0126又はPD98059(両者ともMAPK活性化の特異的阻害剤(MEK阻害剤))の共存下においてNGFによる刺激を加えた場合には、本転写調節因子のプロモーターの活性が強く阻害されることが判明した(レーン4、5)。また、PI3 kinaseの特異阻害剤の非共存下(+No chemical)で各種の発現プラスミドを強制発現させた場合において、NGFによる刺激を加えた場合には、
(a)陰性対照であるベクタープラスミドを強制発現させた場合(レーーン6):
対照として下記の活性の評価に使用する。
(b)構成的活性化型Akt(myr-Akt)に係る発現プラスミドを強制発現させた場合(レーーン7):
本転写調節因子の転写活性化領域の活性が、レーン6での活性と比較して同程度であった。
(c)PKAの酵素活性ドメイン(PKAc)に係る発現プラスミドを強制発現させた場合(レーーン8):
本転写調節因子の転写活性化領域の活性が、レーン6での活性と比較して同程度であった。
(d)MAPKの活性化を引き起こすようなMAPKのキナーゼ(MAPKK)であるMEK1に係る発現プラスミドを強制発現させた場合(レーーン9):
本転写調節因子の転写活性化領域の活性が、レーン6での活性と比較して向上することが判明した。
以上から、本転写調節因子の転写活性化領域が活性化するに至る主要なシグナル伝達経路の一つは、MAPKシグナル伝達経路であることが示唆された。
実施例9 (本発明に至るための新知見(その4):本転写調節因子のタンパク質修飾状況)
まず、本転写調節因子遺伝子のゲノム配列(Accession No.AB054577及びNC_000085)の塩基配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号43で示されるForward primer: (5’-atgtaccgatccaccaagggcgcctccaaggcgcg-3’及び配列番号44で示されるReverse primer: (5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子全長のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で3分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた断片と、配列番号45で示される(5’-caaaacctataaatatggactacaaagacgatgacgacaaggacccc-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、前記断片がコードする部分蛋白質のN末端にミリストリ化シグナル配列が融合した融合タンパク質の発現プラスミドを得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、10cmコラーゲンコートプレート(Falcon社製)上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、Flagタグラベル本転写調節因子発現プラスミド12μgをトランスフェクションした。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。
上記のようにトランスフェクションした後、4時間経過後に0.5%FCSと1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)のみとが添加されたDMEM培地(GIBCO-BRL社製)に交換した。当該培地交換から16時間経過した後、培地を除去し、「リン酸塩を含まないDMEM培地」(GIBCO-BRL社製)で前記の哺乳動物細胞を3回洗浄した。洗浄後、終濃度370MBq/5mlの32P-放射能ラベル化Orthophosphate(アマシャムファルマシア社製)が「リン酸塩を含まないDMEM培地」に添加された培地に交換した後、前記の哺乳動物細胞を2時間インキュベートした。尚、被験物質を含む培地は、「NGF-」と表示された試験区では、特に何も追加的に添加されない培地であり、また「NGF+」と表示された試験区では、終濃度300ng/mlのNGF(和光社製)が添加された培地である。
次いで、各々の哺乳動物細胞をPBS(−)(GIBCO-BRL社製)で洗浄した後、回収された哺乳動物細胞をプレート一枚当たり1mlのRIPAbuffer(10mM HEPES (同仁社製)pH7.9, 0.1%NP40(BioRad社製)、0.1%SDS、0.2mM NaCl、1mM EDTA)を用いて溶解した。得られた溶解物を20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を分取して、これをAnti-Flag アガロースビーズ(SIGMA社製)50%懸濁液30μlと混合した後、当該混合物を4℃で1時間インキュベートした。
このようにして得られた混合物を2000gで1分間遠心分離することにより得られた沈殿画分を分取して、これをAnti-Flag アガロースビーズ(SIGMA社製)に結合させた後、再度1mlのRIPAで懸濁してから2000gで1分間遠心分離する操作(1回の洗浄操作単位)を10回繰り返すことにより、Anti-Flagアガロースビーズに特異的に結合したタンパク質を得た。得られたタンパク質を、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)にビーズごと懸濁して、当該懸濁物を100℃で5分間の加熱処理を実施した。得られた処理物をSDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で単離した。ろ紙上でゲルを乾燥させた後、当該ゲルをIPプレート(富士フィルム社製)に12時間密着させた。次に当該IPプレート上に記録されたゲルの放射能分布イメージをIPプレートリーダー(富士フィルム社製BASstation)を用いて解析した。
このようにして、本転写調節因子のタンパク質修飾状況を検討し、その結果を図3Bに示した。尚、図3Bでは、上記のように、N末端にFlagタグが標識された本転写調節因子を強制的に発現させたPC12細胞を、32P-放射能ラベル化Orthophosphateが添加された「リン酸塩を含まない哺乳動物細胞培地」の中で培養することにより、哺乳動物細胞内に32P放射能を取り込ませた後、当該哺乳動物細胞から調製された全細胞蛋白質抽出物の中に存在するFlagタグ標識本転写調節因子をAnti-Flagアガロースを用いた免疫沈降法で精製し、次いで精製されたFlagタグ標識本転写調節因子が32P放射能で標識されているかを、SDS-PAGE後のオートラジオグラフィ−で検討した結果、培地にNGFが共存しない条件(NGF-)下では、放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドが認められなかったが、一方、培地にNGFが共存する条件(NGF+)下では、放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドが認められたことから、本転写調節因子はNGFによる刺激に応答してリン酸化されることが判明した。
実施例10 (本発明に至るための新知見(その5):本転写調節因子のタンパク質修飾状況−リン酸化状況−)
まず、本転写調節因子遺伝子のゲノム配列(Accession No.AB054577及びNC_000085)の塩基配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号46で示されるForward primer: (5’-atgtaccgatccaccaagggcgcctccaaggcgcg-3’及び配列番号47で示されるReverse primer: (5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子cDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で3分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた断片と、配列番号48で示される(5’-caaaacctataaatatggactacaaagacgatgacgacaaggacccc-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、前記断片がコードする部分蛋白質のN末端にミリストリ化シグナル配列が融合した融合タンパク質の発現プラスミドを得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、10cmコラーゲンコートプレート(Falcon社製)上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、Flagタグラベル本転写調節因子発現プラスミド12μgをトランスフェクションした。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。
上記のようにトランスフェクションした後、4時間経過後に0.5%FCSと1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)のみとが添加されたDMEM培地(GIBCO-BRL社製)に交換した。当該培地交換から16時間経過した後、培地を除去し、0.5%FCS(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が添加されたDMEM培地(GIBCO-BRL社製)に交換した後、前記の哺乳動物細胞を4時間インキュベートした。尚、被験物質を含む培地は、「NGF-」と表示された試験区では、特に何も追加的に添加されない培地であり、また「NGF+」と表示された試験区では、終濃度300ng/mlのNGF(和光社製)が添加された培地である。
次いで、各々の哺乳動物細胞をPBS(−)(GIBCO-BRL社製)で洗浄した後、回収された哺乳動物細胞をプレート一枚当たり0.3mlのRIPAbuffer(10mM HEPES (同仁社製)pH7.9, 0.1%NP40(BioRad社製)、0.5mM NaCl、1mM EDTA)を用いて溶解した。得られた溶解物を20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を分取して、これを細胞抽出物とした。尚、「+BAP」と表示されている試験区では、当該細胞抽出物50μlに対して5UのAlkaline Phosphatase(TAKARA社製)が添加された後、37℃で10分間インキュベート処理された。
前記の細胞抽出物に等量のSDSサンプルバッファー(BioRad社製)を添加した後、これに100℃で5分間の加熱処理を実施した。得られた処理物をSDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で単離した。ゲル上で単離されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)へ転写した。Hybond-P膜を、PBS(-)で50分の1に希釈された膜ブロッキング試薬(ナカライテスク社製)により処理(30分間)した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で5000分の1に希釈されたビオチン化Anti-Flag抗体(SIGMA社製)を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより、Hybond-P膜の上における抗原抗体反応を進行させた。
次に、Hybond-P膜をPBS-T液中で30分間インキュベートする(4回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-Tで3000分の1に希釈されたビオチン-ストレプトアビジン-HRP(アマシャムファルマシア社製)を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持するHybond-P膜を、PBS-T液中で30分間インキュベートする(2回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜に、ECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られたHybond-P膜を、イメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、Flag-本転写調節因子を同定するためのWestern blottingの像を得た。
このようにして、本転写調節因子のタンパク質修飾状況をさらに検討し、その結果を図3Cに示した。尚、3C図では、上記のように、左のパネルと右のパネルとの両パネルとも、発現プラスミドを用いて、N末端にFlagタグが標識された本転写調節因子を強制的に発現させたPC12細胞を、32P-放射能ラベル化Orthophosphateが添加された「リン酸塩を含まない哺乳動物細胞培地」の中で培養することにより、哺乳動物細胞内に32P放射能を取り込ませた後、当該哺乳動物細胞から調製された全細胞蛋白質抽出物の中に存在するFlagタグ標識本転写調節因子を、Anti-Flag抗体を用いたWestern blotting法(Anti−Flag W.B.)で検出することにより検討した。その結果、左のパネル(全細胞蛋白質抽出物の抽出前にNGFによる刺激の存在有無、アルカリホスファターゼ(BAP)処理無)で示されるように、培地にNGFが共存しない条件(NGF-)下での放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドの位置と培地にNGFが共存する条件(NGF+)下での放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドの位置との間には差異(即ち、SDS-PAGE上での見かけの分子量の差異)が認められたことから、本転写調節因子はNGFによる刺激に応答してリン酸化されることが前実施例と同様に確認された。さらにまた、右のパネル(全細胞蛋白質抽出物の抽出前にNGFによる刺激の存在、アルカリホスファターゼ(BAP)処理の有無)で示されるように、In vitroでアルカリホスファターゼ(BAP)処理された放射化Flagタグ標識本転写調節因子(+BAP)のバンドの位置とIn vitroでアルカリホスファターゼ(BAP)処理されていない放射化Flagタグ標識本転写調節因子(−)のバンドの位置との間には差異(即ち、SDS-PAGE上での見かけの分子量の差異)が認められ、In vitroでアルカリホスファターゼ(BAP)処理された放射化Flagタグ標識本転写調節因子(+BAP)の方がSDS-PAGE上での見かけの分子量の小さいことから、本転写調節因子はNGFによる刺激に応答してリン酸化されること(翻訳後修飾)が上記と同様に確認された。
実施例11 (本発明に至るための新知見(その6):本転写調節因子のリン酸化のための細胞内シグナル伝達経路)
アーティファクトを排除するための更なる確認試験を下記のように実施した。
まず、本転写調節因子遺伝子のゲノム配列(Accession No.AB054577及びNC_000085)の塩基配列情報に従って、PCRプライマーとして、配列番号49で示されるForward primer: (5’- atgtaccgatccaccaagggcgcctccaaggcgcg-3’び配列番号50で示されるReverse primer: (5’-tcaaaacgttggttcccctccacttccatcttcat-3’)を作製した。作製されたPCRプライマーを用いて、本転写調節因子全長のcDNA断片をPCR法により単離した。この際、マウスBrain cDNAライブラリー(Clontech社製)を鋳型にし、且つ、PCR反応の変性条件として95℃で1分間、アニーリング及び伸張条件として68℃で3分間の2ステップ反応を35回繰り返すことにより、PCR産物を得た。
得られた断片と、配列番号51で示される(5’- caaaacctataaatatggactacaaagacgatgacgacaaggacccc-3’)という塩基配列を持つ2本鎖オリゴヌクレオチドとを結合した後、これをpRC/RSVベクター(Invitrogen社製)の平滑末端化後のHindIIIサイトに導入することにより、前記断片がコードする部分蛋白質のN末端にFlagペプチド配列が融合した融合タンパク質(Flagタグラベル本転写調節因子)の発現プラスミドを得た。因みに、意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
哺乳動物細胞であるPC12細胞(ATCCより購入)を、5%FCS(GIBCO-BRL社製)、15%ウマ血清(GIBCO-BRL社製)及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL社製)が追加的に添加されたRPMI培地(RPMI培地:GIBCO-BRL社製)を用いて、10cmコラーゲンコートプレート(Falcon社製)上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された哺乳動物細胞に、Flagタグラベル本転写調節因子発現プラスミド12μgをトランスフェクションした。尚、トランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件で行った。「+MEK1(MAPKK)」と表示されているレーン5の試験区では、トランスフェクション時に0.1μgのpFC-MEK1プラスミド(Stratagene社製)を共存させた条件下でMEK1を発現させることにより、細胞内MAPKを活性化させた試験系である。
トランスフェクションした後、4時間経過後に1%FCSと1mMピルビン酸ナトリウムのみとが添加されたDMEM培地(GIBCO-BRL社製)に交換し、そのまま16時間インキュベートした。次いで当該培地を除去した後、1%FCSと1mMピルビン酸ナトリウムのみとが添加されたDMEM培地(GIBCO-BRL社製)に交換し、そのまま更に4時間インキュベートした。尚、被験物質を含む培地は、レーン1、5及び6の試験区では、特に何も追加的に添加されていない培地であり、「+NGF」と表示された試験区(レーン2〜4)では、終濃度300ng/mlのNGFが添加された培地であり、またNGFによる刺激を加えた場合において、「+Vehicle」と表示されている試験区では、終濃度0.1%のDMSOが添加された培地であり、また「+U0126」と表示されている試験区では、終濃度10μMのU0126(MEK特異阻害剤でMAPK活性化を阻害する薬剤)が添加された培地であり、また「+PD98059」と表示されている試験区では、終濃度10μMのPD98059(MEK特異阻害剤でMAPK活性化を阻害する薬剤)が添加された培地である。
インキュベート後、各々の哺乳動物細胞をPBS(−)(GIBCO-BRL社製)で洗浄した後、回収された哺乳動物細胞をプレート一枚当たり0.3mlのRIPAbuffer(10mM HEPES (同仁社製)pH7.9, 0.1%NP40(BioRad社製)、0.5mM NaCl、1mM EDTA)を用いて溶解した。得られた溶解物を20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を分取することにより、細胞抽出物を得た。
前記の細胞抽出物に等量のSDSサンプルバッファー(BioRad社製)を添加した後、これに100℃で5分間の加熱処理を実施した。得られた処理物をSDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で単離した。ゲル上で単離されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)へ転写した。Hybond-P膜を、PBS(-)で50分の1に希釈された膜ブロッキング試薬(ナカライテスク社製)により処理(30分間)した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で5000分の1に希釈されたビオチン化Anti-Flag抗体(SIGMA社製)を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより、Hybond-P膜の上における抗原抗体反応を進行させた。
次に、Hybond-P膜をPBS-T液中で30分間インキュベートする(4回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜の上に、PBS-Tで3000分の1に希釈されたビオチン-ストレプトアビジン-HRP(アマシャムファルマシア社製)を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持するHybond-P膜を、PBS-T液中で30分間インキュベートする(2回繰り返す)ことにより洗浄した後、得られたHybond-P膜に、ECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られたHybond-P膜を、イメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、Flag-本転写調節因子を同定するためのWestern blottingの像を得た。
このようにして、本転写調節因子のリン酸化のための細胞内シグナル伝達経路を検討し、その結果を図3Dに示した。尚、図3Dでは、上記のように、発現プラスミドを用いてFlagタグ標識本転写調節因子を強制発現させたPC12細胞の全細胞蛋白質抽出物の中のFlagタグ標識本転写調節因子を、Anti-Flag抗体を用いたWestern blotting法(Anti−Flag W.B.)で検出した。Flagタグ標識本転写調節因子を強制発現させ全細胞蛋白質抽出物を回収する前のPC12細胞に対して、NGFを培地に添加してNGFによる刺激を加えたレーン2の場合には、バンドの位置が、レーン1及び6の陰性対照の試験区で認められるFlagタグ標識本転写調節因子のバンドと比較して、SDS-PAGE上での見かけの分子量の増加を示す方向へシフトしていることが判った。一方、レーン3の場合のように、MAPK活性化の特異的阻害剤(MEK阻害剤)であるU0126の共存下においてNGFによる刺激を加えると、Flagタグ標識本転写調節因子のバンドの位置が上記の見かけの分子量の増加を示す方向へシフトしないことが判った。また、レーン4の場合のように、MAPK活性化特異的阻害剤(MEK阻害剤)であるPD98059の共存下においてNGFによる刺激を加えると、Flagタグ標識本転写調節因子のバンドの位置が上記の見かけの分子量の増加を示す方向へシフトしないことが判った。レーン5の場合には、発現プラスミドを用いて、MAPKを特異的に活性化することが知られているMAPKのキナーゼ(MAPKK)であるMEK1を強制発現させたPC12細胞内での結果が示されているが、バンドの位置がレーン1及び6の陰性対照の試験区で認められるFlagタグ標識本転写調節因子のバンドと比較して、SDS-PAGE上での見かけの分子量の増加を示す方向へシフトしていることを判った。
以上より、NGFによる刺激の下流にあるMAPKの活性化を阻害すると、(1)本転写調節因子のリン酸化が阻害されること、(2)MAPKをMEK1の強制発現により活性化すると、本転写調節因子にリン酸化が生じること等が明らかとなった。この場合の蛋白質の修飾は、図3Bまたは図3Cの結果からリン酸化であることから、MAPK自身が本転写調節因子を直接的にリン酸化することが確認された。
参考例1 (ラット個体における本転写調節因子の誘導状況の確認(その1))
8週齡のSlc:Wistarラット(日本SLC社より購入)をネンブタール(50mg/Kg;i.p.)で麻酔した後、当該ラットの頭部を脳固定装置(ASI Instruments.Inc.)に固定した。固定後、当該ラットの頭皮を切開し、右内側前脳束(Teeth barを-2.4mmにセットし、Bregmaより右1.1mm、Bregmaより後ろに4.4mmで硬膜下の深さ7.4mm)にステンレス製カニューレを挿入し、挿入されたカニューレを用いて6-OHDA(2mg/mL, SIGMA社製、ラット脳内のドーパミン系ニューロンに一種の変性を引き起こしその結果としてパーキンソン症様の症状がを生じさせることが知られている毒物)を5分間かけて5μL/匹を注入した。
このようにして6-OHDAが投与されたラットを5分間そのまま放置して組織に注入液を浸透した後、前記カニューレを取り出し、前記の切開部位を縫合した。術後のラットを14日間飼育した後、当該ラットにアポモルヒネ(0.25mg/mL)を皮下投与(0.1mL/100g)した。アポモルヒネ投与後のラットについて、その回転運動量(一定方向への回転運動数をカウンターで計測)を測定し、投与後15〜20分間経過後の5分間で9回以上の回転運動量を示したラットを選択した。選択後7日間経過した後、片側のドーパミン神経が変性していることを確認する目的で、前記ラットにアポモルヒネ(0.25mg/mL)を再度皮下投与(0.1mL/100g)した。アポモルヒネ再投与後のラットについて、その再投与後15〜20分間経過後の5分間で30回以上の回転運動量を選択し、これを30日間飼育した。
このようにして、6-OHDA投与神経変性モデルラットは日本バイオリサーチセンター(岐阜県羽島市:日本)にて作製された。
次に、作製された6-OHDA投与神経変性モデルラットと神経未変性対照ラットとの各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
抗本転写調節因子ペプチド抗体は、CRFNTSKSLRRQSAGNKLのアミノ酸配列を持つペプチドをKLHキャリアーに結合させたものを免疫原としてウサギに免疫することにより作製された抗血清から、上記ペプチドのアフィニテイーカラムを用いてアフィニテイー精製されたIgG画分として得られたものを使用した(アサヒテクノグラス社(千葉県船橋市;日本)製)。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。得られた薄切切片の上に、上記で調製された抗本転写調節因子ペプチド抗体の1/200希釈液、Anti-BDNF抗体(Chemicon社製AB1534)の1/500希釈液又はAnti-NGF抗体(Biomedical Technologies Inc社製BT555)の1/100希釈液を滴下した後、4℃で一晩抗原抗体反応を行った。次いで、得られた薄切切片をPBS(−)で10分間3回洗浄した後、これをヒストファインシンプルステインMAX-POキットラビット用(ニチレイ社製)及びヒストファインシンプルステインDAB溶液(ニチレイ社製)を用いて、当該製品に添付される取扱説明書の記載に従って染色した。尚、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上にマイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
このようにして、ラット個体レベルにおいて、NGFが誘導される状況下での本転写調節因子の誘導状況を検討し、その結果を図4Aに示した。尚、図4Aでは、上記のように、6-OHDAが投与されたラットの脳の薄切切片を、抗本転写調節因子抗体(図中の上から1段目と2段目のパネル)、Anti-BDNF抗体(図中の上から3段目と4段目のパネル)又はAnti-NGF抗体(図中の上から5段目と6段目のパネル)で染色したところ、BDNFやNGF等の神経栄養因子がIn vivoで誘導される状況下において、海馬CA1、海馬CA3及び大脳皮質(Cerebral cortex)のニューロンのいずれにおいても本転写調節因子が誘導することが明らかになった。対照は、溶媒のみが投与されたものであり、6-OHDAが投与された各試験区における薄切切片の上で認められる濃染シグナルは誘導された各タンパク質の存在を示している。Anti-BDNF抗体(図中の上から3段目と4段目のパネル)及びAnti-NGF抗体(図中の上から5段目と6段目のパネル)を用いて染色された海馬CA1、海馬CA3及び大脳皮質のニューロンのいずれにおいても各タンパク質(BDNF又はNGF)の誘導を示す濃染シグナルが、6-OHDAが投与された試験区において認められていることから、本実施例における試験が成立していることも確認された。
参考例2 (ラット個体における本転写調節因子の誘導状況の確認(その2))
17週齡の雄Crj:WI(G1x/BRL/Han)IGSラット(チャールズリバー社より入手)をガス麻酔(3%ハロセン)した後、当該ラットの頭部を脳固定装置(ASI Instruments.Inc.)に固定した。固定後、術中の体温は直腸に体温計センサーを挿入し、卓上ランプで一定に保った。当該ラットの前頸部を正中切開し、左総頸動脈を周囲結合組織より剥離し、左総頸動脈を糸で結さくした。次いで同様に右総頸動脈を結さくした。
このようにして、慢性脳循環障害モデルラット(総頸動脈永久結さくラット:図4中では「Ischemia」と表示されている。)は日本バイオリサーチセンター(岐阜県羽島市:日本)にて作製された。
次に、作製された慢性脳循環障害モデルラットと非慢性脳循環障害対照ラットとの各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
抗本転写調節因子ペプチド抗体は、CRFNTSKSLRRQSAGNKLのアミノ酸配列を持つペプチドをKLHキャリアーに結合させたものを免疫原としてウサギに免疫することにより作製された抗血清から、上記ペプチドのアフィニテイーカラムを用いてアフィニテイー精製されたIgG画分として得られたものを使用した(アサヒテクノグラス社(千葉県船橋市;日本)製)。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。得られた薄切切片の上に、上記で調製された抗本転写調節因子ペプチド抗体の1/200希釈液、Anti-BDNF抗体(Chemicon社製AB1534)の1/500希釈液又はAnti-NGF抗体(Biomedical Technologies Inc社製BT555)の1/100希釈液を滴下した後、4℃で一晩抗原抗体反応を行った。次いで、得られた薄切切片をPBS(−)で10分間3回洗浄した後、これをヒストファインシンプルステインMAX-POキットラビット用(ニチレイ社製)及びヒストファインシンプルステインDAB溶液(ニチレイ社製)を用いて、当該製品に添付される取扱説明書の記載に従って染色した。尚、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上にマイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
このようにして、ラット個体レベルにおいて、NGFが誘導される状況下での本転写調節因子の誘導状況を更に検討し、その結果を図4Bに示した。尚、図4Bでは、上記のように、脳に対する動脈血流を供給する血管を一部断つことにより、脳全体に対する動脈血流量を持続的に低下させ、脳のニューロンの変性が開始するようにしたラット(全脳の持続的脳虚血/脳溢血モデル)の脳の薄切切片を、抗本転写調節因子抗体で染色したところ、海馬CA1、海馬CA3及び大脳皮質(Cerebral cortex)のニューロンのいずれにおいても本転写調節因子が誘導することが明らかとなった。そして、BDNFやNGF等の神経栄養因子がIn vivoで誘導される状況下においても海馬CA1のニューロンに本転写調節因子が誘導することが明らかとなった(上から3段目、4段目の左のパネル)。そして、全脳の持続的脳虚血/脳溢血モデル(Ischemia)の脳では、本転写調節因子が海馬CA1のニューロンに誘導しており、これに並行してBDNFやNGF等の神経栄養因子も誘導している(それぞれ、上から3段目、4段目の真中のパネル、および右のパネル)ことが確認された。つまり、全脳の持続的脳虚血/脳溢血モデル(Ischemia)が本実施例における試験として成立していることも確認された。
以上より、実際のラット個体の生体内(In vivo)においても、BDNFやNGF等の神経栄養因子が誘導されて脳神経細胞に作用する際には、本転写調節因子も誘導されてBDNFやNGF等の神経栄養因子と並行して存在しており、且つ、その共存するBDNFやNGF等の神経栄養因子の作用により、本転写調節因子の転写活性化能の活性化が生じることが示唆された。
本発明により、哺乳動物における細胞変性を制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために使用される、細胞変性制御能力を検定する方法等が提供可能となった。
図1は、実施例5(本発明検定方法(その2))における試験結果を示す図である。図1Aは、本転写調節因子の転写活性を調節するDHX57(mycタグ標識したDHX57)と本転写調節因子(Flagタグ標識した本転写調節因子の部分蛋白質)との間の蛋白質−蛋白質間相互作用を確認した結果を示す図である。図1Bは、NGFによる刺激に基づく本転写調節因子の活性化と本転写調節因子の相互作用因子であるDHX57との関係を確認した結果を示す図である。図1Cは、NGFによる刺激とDHX57強制発現との両方による本転写調節因子の活性化を検討した結果を示す図である。 図2Aは、実施例6(本発明に至るための新知見(その1):本転写調節因子遺伝子の誘導発現)における試験結果を示す図である。当該図から、NGFによる刺激により、本転写調節因子遺伝子が誘導発現する際には、如何なる細胞内シグナル伝達経路を介して生じているのかを明らかになった。図2Bは、実施例7(本発明に至るための新知見(その2):本転写調節因子のプロモーターが活性化するに至るシグナル伝達経路)における試験結果を示す図である。当該図から、本転写調節因子のプロモーターが活性化するに至る主要なシグナル伝達経路の一つは、PI3 kinase−Aktシグナル伝達経路であることが示唆された。 図3Aは、実施例8(本発明に至るための新知見(その3):本転写調節因子の活性化の機構解析)における試験結果を示す図である。当該図から、本転写調節因子の転写活性化領域が活性化するに至る主要なシグナル伝達経路の一つは、MAPKシグナル伝達経路であることが示唆された。図3Bは、実施例9(本発明に至るための新知見(その4):本転写調節因子のタンパク質修飾状況)における試験結果を示す図である。当該図から、培地にNGFが共存しない条件(NGF-)下では、放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドが認められなかったが、一方、培地にNGFが共存する条件(NGF+)下では、放射化Flagタグ標識本転写調節因子のバンドが認められたことから、本転写調節因子はNGFによる刺激に応答してリン酸化されることが判明した。図3Cは、実施例10(本発明に至るための新知見(その5):本転写調節因子のタンパク質修飾状況−リン酸化状況−)における試験結果を示す図である。当該図から、本転写調節因子はNGFによる刺激に応答してリン酸化されること(翻訳後修飾)が図3Bと同様に確認された。図3Dは、実施例11(本発明に至るための新知見(その6):本転写調節因子のリン酸化のための細胞内シグナル伝達経路)における試験結果を示す図である。当該図から、NGFによる刺激の下流にあるMAPKの活性化を阻害すると、(1)本転写調節因子のリン酸化が阻害されること、(2)MAPKをMEK1の強制発現により活性化すると、本転写調節因子にリン酸化が生じること等が明らかとなった。この場合の蛋白質の修飾は、図3Bまたは図3Cの結果からリン酸化であることから、MAPK自身が本転写調節因子を直接的にリン酸化することが確認された。 図4Aは、参考例1(ラット個体における本転写調節因子の誘導状況の確認(その1))における試験結果を示す図である。図4Bは、参考例2(ラット個体における本転写調節因子の誘導状況の確認(その2))における試験結果を示す図である。これらの図から、実際のラット個体の生体内(In vivo)においても、BDNFやNGF等の神経栄養因子が誘導されて脳神経細胞に作用する際には、本転写調節因子も誘導されてBDNFやNGF等の神経栄養因子と並行して存在しており、且つ、その共存するBDNFやNGF等の神経栄養因子の作用により、本転写調節因子の転写活性化能の活性化が生じることが示唆された。
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号17
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号18
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号19
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号20
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号22
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号23
遺伝子クローニングのためのPCRプラマイーとして設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号24
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号25
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号26
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号27
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号28
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号29
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号30
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号31
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号32
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号33
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号34
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号35
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号36
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号37
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号38
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号39
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号40
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号41
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号42
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号43
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号44
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号45
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号46
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号47
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号48
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド
配列番号49
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号50
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号51
プラスミド構築のために設計された2本鎖オリゴヌクレオチド

Claims (8)

  1. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力の検定方法であって、
    (1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び
    (2)前記第一工程後に、前記哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
    (3)第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
    を有することを特徴とする検定方法。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  2. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力の検定方法であって、
    (1)前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び
    (2)前記第一工程後に、前記形質転換哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
    (3)第二工程により測定されたリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
    を有することを特徴とする検定方法。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  3. 被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における、前記形質転換哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価することを特徴とする請求項1又は2記載の検定方法。
  4. 異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が前記能力を有さない物質であることを特徴とする請求項5記載の検定方法。
  5. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に依存的な細胞変性制御能力を有する物質の探索方法であって、請求項1又は2記載の検定方法により評価された前記能力に基づき前記能力を有する物質を選抜することを特徴とする探索方法。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  6. 請求項7記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体に製剤化されてなることを特徴とする細胞変性制御剤。
  7. 哺乳動物細胞における細胞変性を制御するための、下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAの使用。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  8. 有効成分として、下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子を発現する哺乳動物細胞において前記転写調節因子のリン酸化を制御する物質を含有することを特徴とする細胞変性制御剤。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
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