JP2007282501A - アポトーシス制御能力の検定方法 - Google Patents

アポトーシス制御能力の検定方法 Download PDF

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耕三 元永
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Abstract

【課題】哺乳動物又はその組織若しくは細胞(以下、哺乳動物等と記す。)におけるアポトーシスを制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために有益である、アポトーシス制御能力を検定する方法等を提供する。
【解決手段】複数の特定の配列からなるアミノ酸配列等を有する転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力の検定方法であって、(1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物等と前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物等との両者に、各々独立して、被験物質を接触させる第一工程、及び(2)前記第一工程後に、前記の哺乳動物等においてグリア細胞の活性化の有無等を測定する第二工程、及び(3)第二工程により測定された活性化の有無等に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、を有することを特徴とする検定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、アポトーシス制御能力の検定方法等に関する。
従来、神経変性疾患は、疾患毎に特有の障碍部位とその結果として特有の症状(痴呆・運動失調・異常運動・筋力低下等)とを示し、多くの疾患に当てはまる統一的な発症機構といったものは考え難いとされてきた。しかしながら、一方で、様々な神経変性疾患で共通に見られる現象として、発症が中年以降に起こり進行性であること、優性の遺伝様式を示すものが多いこと、変性部位は異なっても神経細胞の萎縮・脱落像が見られること等の事実が存在している。
このような共通現象は、分裂を停止した細胞(神経細胞)に年月を経て蓄積していった変性蛋白質が(即ち、発症が中年以降に起こり進行性であることを意味する。)、神経細胞の基本的な機能を阻害し(即ち、遺伝性のものでは優性の様式が多いことを意味する。)、神経細胞の萎縮・脱落という形態的な変化に至るというアポトーシスのメカニズムの観点から理解することができる。
このように、変性蛋白質の蓄積による細胞死又は細胞の変性過程では、細胞死が決定的となったときに起こるアポトーシスという最終的な事象が極めて重要であり、これを制御するための薬剤を開発することは、神経変性疾患の予防や治療等に直接的に役立つと考えられている。
これまでに、アポトーシスの制御への関与が示唆されるある種の転写調節因子が存在していることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−000279号公報
そこで、哺乳動物又はその組織若しくは細胞におけるアポトーシスを制御するための薬剤の開発が求められており、かかる薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために、アポトーシス制御能力を検定する方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、かかる状況のもと鋭意検討した結果、アポトーシスの制御への関与が示唆されるある種の転写調節因子の発現と、グリア細胞の活性化との相互関係が存在していることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.下記のいずれかのアミノ酸配列(以下、本アミノ酸配列と記すこともある。)を有する転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力の検定方法であって、
(1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞と前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞との両者に、各々独立して、被験物質を接触させる第一工程、及び
(2)前記第一工程後に、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)第二工程により測定された活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする検定方法(以下、本発明検定方法と記すこともある。);
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
2.前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞が、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を欠失させてなる形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞であることを特徴とする請求項1記載の検定方法;
3.前記転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞が、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載の検定方法;
4.被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における、前記形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価することを特徴とする請求項1、2又は3記載の検定方法;
5.異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が前記能力を有さない物質であることを特徴とする請求項4記載の検定方法;
6.下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力を有する物質の探索方法であって、請求項1、2又は3記載の検定方法により評価された前記能力に基づき前記能力を有する物質を選抜することを特徴とする探索方法(以下、本発明探索方法と記すこともある。);
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
7.請求項6記載の探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体に製剤化されてなることを特徴とするアポトーシス制御剤(以下、本発明アポトーシス制御剤と記すこともある。);
8.哺乳動物又はその組織若しくは細胞における下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に拠るアポトーシスを制御するための、下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAの使用;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
等を提供するものである。
本発明により、哺乳動物又はその組織若しくは細胞におけるアポトーシスを制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために使用される、アポトーシス制御能力を検定する方法等が提供可能となった。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明でいう「下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子」(以下、本転写調節因子と記すこともある。)とは、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(basic helix-loop-helix:以下、bHLHと記す。)モチーフとPASドメイン(Per-Arnt-Simホモロジードメイン)とを有する蛋白質であって、ヘテロ二量体を形成して特定の塩基配列を有するDNAに結合することにより転写調節因子として機能し、アポトーシスの制御に関与する蛋白質である(後述参照)。
本発明でいう「下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子に拠るアポトーシス」とは、本アミノ酸配列を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)がアポトーシスの発生を抑制するように関与しているアポトーシスであって、本転写調節因子が係わる代謝過程や信号伝達等のカスケード反応が起こると直接的又は間接的に制御を受ける。かかるカスケード反応のことを本発明では「前記転写調節因子関与アポトーシス経路」又は「本アポトーシス経路」と記載する。また、当該経路に含まれ発現調節を受けている蛋白質であって、本発明においてアポトーシスの目安として利用し得る蛋白質のことを本アポトーシス経路上に存在するマーカー蛋白質」という。具体的には、例えば、GFAP、XBP-1、GRP78、Ern1、GPX2等をあげることができる。
尚、GFAPは、グリア細胞の細胞骨格に関係する蛋白質であり、神経細胞のアポトーシスが生じた際にその周辺に生じるグリア細胞の活性化のマーカー蛋白質として広く用いられている。
XBP-1は、小胞体ストレス応答時に当該ストレスによるアポトーシスに抵抗的に働くために発現誘導されることが知られているいくつかの蛋白質を制御する中心的転写因子の一つであり、その発現量、誘導量の低下等の異常が生じると、小胞体ストレスに対する抵抗性の低下及びアポトーシスに対する抵抗性が低下すること等が知られている。
GRP78は、小胞体ストレス応答時に当該ストレスによるアポトーシスに抵抗的に働くために発現誘導されることが知られている蛋白質の代表であり、その発現量、誘導量の低下等の異常が生じると、小胞体ストレスに対する抵抗性の低下及びアポトーシスに対する抵抗性が低下すること等が知られている。また逆に当該蛋白質を強制発現させるとアポトーシスに対して防御できることも知られている。
Ern1は、上記のXBP1のシグナルの上流蛋白質の一つであり、小胞体ストレスに応答して、小胞体ストレス防御及びアポトーシス防御に働くいくつかの蛋白質の遺伝子の誘導発現に重要な働きをしていることが知られている。当該蛋白質の機能低下によりアポトーシスに対する抵抗性が低下すること等が知られている。
GPX2は、グルタチオンペルオキシダーゼの一種として、酸化ストレス等の結果として生じる細胞のアポトーシスの防御のためにも機能していることが知られている。当該蛋白質の「量の低下」及び「機能の低下」の結果として、細胞内での酸化ストレス防御機構の機能低下が生じ、細胞はアポトーシスで死滅しやすくなること等が知られている。
これらマーカー蛋白質の発現量は、例えば、これらのマーカー蛋白質に対する抗体を利用した通常のWesternブロット法や免疫染色法等の免疫学的手法を初めとする、当該マーカー蛋白質の量を特異的に測定する方法により測定すればよい。
また、これらマーカー蛋白質のmRNAの量を測定してもよい。例えば、GenBank等の遺伝子配列データベースに記載されている、これらマーカー蛋白質の遺伝子の塩基配列に基づいて設計された特異的PCRプライマーを用いたRT-PCR法、ノーザンブロット法、ドットブロット法等の方法により検討することができる。
また、RNAから逆転写されてなるcDNAを、ABI社製のTaqMan試薬及び当該試薬に添付された説明書に記載された手法を用いたTaqMan法等によるReal-Time-PCR法等により測定してもよい。
本発明検定方法において用いられる「下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)」には、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する蛋白質(ここで、配列番号1で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、ヒト由来の本転写調節因子であり、配列番号2で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、マウス由来の本転写調節因子であり、また、配列番号3で示される本アミノ酸配列を有する蛋白質は、ラット由来の本転写調節因子である。)、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質が含まれる。このような蛋白質は、SDS-PAGEでの分子量として、約8〜10万程度の分子量であることが好ましい。
本転写調節因子のアミノ酸配列において認められる、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列との相違としては、アミノ酸の欠失、置換、修飾、付加等の変異をあげることができる。これらには、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって人為的に導入され得る変異に加えて、動物の系統、個体、器官、組織等の違いによるアミノ酸配列の相違等の天然に生ずる多型変異も含まれる。
本発明において「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は、Vector NTI、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)等の市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。
本発明におけるアミノ酸同一性は、例えば、90%以上であることが好ましい。
また、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNA」としては、例えば、高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりDNA-DNAハイブリッドを形成し、低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも該ハイブリッドが維持されうるDNAをあげることができる。本転写調節因子の転写調節能は、例えば、後述のレポーター遺伝子を用いたアッセイ等に基づき評価することができる。
本転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本転写調節因子遺伝子と記す。)は、例えば、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織から、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じて取得することができる。
具体的には、まず、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織由来の全RNAを調製する。例えば、脳の組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)がある。得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素により一本鎖cDNAを合成する。次いで、合成された一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ大腸菌RNaseHを用いてRNA鎖にニックとギャップを入れることにより得られるRNAをプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖のcDNAを合成する。更に、合成された二本鎖cDNAの両末端をT4 DNAポリメラーゼにより平滑化する。末端が平滑化された二本鎖cDNAは、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿等の通常の方法により精製、回収する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムファルマシアバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムファルマシアバイオテク社製)等があげられる。次に、得られた二本鎖cDNAを例えば、プラスミドpUC118やファージλgt10等のベクターとリガーゼを用いて連結することによりcDNAライブラリーを作製する。尚、cDNAライブラリーとしては、市販のcDNAライブラリー(GIBCO−BRL社製やClontech社製等)を用いることも可能である。
また、ヒト、マウス、ラット等の動物の組織片から、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)や、村松正寶、”ラボマニュアル遺伝子工学”(丸善1988)等に記載される通常の方法に準じてゲノムDNAを調製する。例えば試料が毛髪の場合には、毛髪2〜3本を滅菌水、次いでエタノールで洗浄した後、2〜3 mmの長さに切断し、これにBCL-Buffer[10mM Tris-HCl(pH7.5), 5 mM MgCl2, 0.32M Sucrose, 1 Triton X-100]200μlを加え、さらにProteinaseKを最終濃度100μl/ml 、SDSを最終濃度0.5 (w/v)になるようにそれぞれ加え混合する。この混合物を70℃で1時間保温した後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNAを得ることができる。また、試料が末梢血の場合は、DNA-Extraction kit(Stratagene社製)等を用いて該試料を処理することによりゲノムDNAを得ることができる。得られたゲノムDNAをλgt10等のベクターとリガーゼを用いて連結することによりゲノムDNAライブラリーが得られる。尚、ゲノムDNAライブラリーとしては、市販のゲノムDNAライブラリー(Stratagene社製等)を用いることも可能である。
上記のようなcDNAライブラリーやゲノムDNAライブラリーから、例えば、配列番号4、5、6又は7(もしくは34)のいずれかで示される塩基配列の部分塩基配列又は該部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)や、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、本転写調節因子遺伝子を取得することができる。
PCRに用いられるプライマーとしては、例えば、約10塩基から約50塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドであって、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列の5’非翻訳領域から選択した塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、及び、配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列の3’非翻訳領域から選択した塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをあげることができる。具体的には、フォワードプライマーとしては、例えば、配列番号7で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号8で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。また、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドや配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをあげることができる。PCRの条件としては、例えば、反応液50μl中に、LA-Taqポリメラーゼ用10倍濃緩衝液(宝酒造社製)5μl、2.5mM dNTP混合液(各2.5mMのdATP,dGTP,dCTP及びdTTPを含む。)5μl(dATP,dGTP,dCTP及びdTTP各々の終濃度が0.25mM)、20μMプライマー 各0.25〜1.25μl(終濃度が0.1〜0.5μM)、鋳型cDNA 0.1〜0.5μg、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)1.25ユニットを含む組成の反応液にて、95℃で1分間次いで68℃で3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行う等の条件が挙げられる。
ハイブリダイゼーション法に用いられるプローブとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNA、配列番号7で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列からなるDNA、又はこれらDNAの部分塩基配列を有するDNA等があげられる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v)フィコール400、0.1(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1(w/v)BSA)、0.5(w/v)SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件等をあげることができる。また、例えば、5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液及び20μg/ml変性サケ精子DNA存在下に65℃にて保温し、次いで2xSSC中で室温にて30分間の保温を行い、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間の保温を2回行う条件をあげることもできる。
尚、本転写調節因子遺伝子は、例えば配列番号4、5、6又は7(もしくは8)のいずれかで示される塩基配列に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al.,Nature,310,105,1984)等の通常の方法に準じて、核酸の化学合成を行うことにより調製することもできる。
このようにして得られた本転写調節因子遺伝子は、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えば、TAクローニングキット(Invitrogen社)やpBluescriptII(Stratagene社)等の市販のプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
得られた本転写調節因子遺伝子の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,560,1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
本転写調節因子遺伝子の具体例としては、配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列を有するDNA、配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列を有するDNA、配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列、配列番号7で示される塩基配列の塩基番号1419〜6164で表される塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
本転写調節因子遺伝子は、当該DNAを外来DNAとして、哺乳動物又はその組織若しくは細胞細胞で発現する位置に置かれるように当該哺乳動物又はその組織若しくは細胞細胞に提供することによって、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化を調節するために利用することもできる。
本転写調節因子遺伝子を、該遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクター(以下、基本ベクターと記す。)、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより本転写調節因子遺伝子ベクターを構築することができる。
本転写調節因子遺伝子ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合、例えばプラスミドpUC119(宝酒造社製)や、ファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等を上げることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合は、プラスミドpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等をあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合はpRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルス等をあげることができ、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本転写調節因子遺伝子を組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いることができる。このようなトランスファーベクターの具体的例としては、Pharmingen社から市販されているpVL1392,pVL1393(Smith,G.E.,Summers M.D.et al.:Mol.Cell.Biol.,3,2156-2165(1983))、pSFB5(Funahashi,S.et al.:J.Virol.,65,5584-5588(1991))等のプラスミドをあげることができる。本転写調節因子遺伝子を前記のようなトランスファーベクターに挿入し、該トランスファーベクターとウイルスのゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスのゲノムとの間で相同組換えが起こり、本転写調節因子遺伝子がゲノム上にくみこまれたウイルスを得ることができる。ウイルスのゲノムとしては、Baculovirus,Adenovirus,Vacciniavirus等のゲノムを用いることができる。
より具体的には、例えばバキュロウイルスに本転写調節因子遺伝子を組み込む場合、トランスファーベクターpVL1393,pVL1392等のマルチクローニング部位に本転写調節因子遺伝子を挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとBaculovirus genome DNA(Baculogold;Pharmingen社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等により導入し、得られた細胞を培養する。培養液から遠心分離等により、本転写調節因子遺伝子が挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を回収し、これをフェノール等で除蛋白処理することにより、本転写調節因子遺伝子を含有するウイルスのゲノムを得ることができる。さらに、該ウイルスのゲノムを、昆虫細胞Sf21株等のウイルス粒子形成能を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等により導入し、得られる細胞を培養することにより、本転写調節因子遺伝子を含有するウイルス粒子を増やすことができる。
一方、マウス白血病レトロウイルス等の比較的小さなゲノムへは、トランスファーベクターを利用せずに、本転写調節因子遺伝子を直接組み込むこともできる。例えばウイルスベクタ-DC(X)(Eli Gilboa et al.,BioTechniques,4,504-512(1986))等は、該ベクター上のクローニング部位に本転写調節因子遺伝子を組み込む。得られた本転写調節因子遺伝子の組込まれたウイルスベクターを、例えばAmpli-GPE(J.Virol.,66,3755(1992))等のパッケージング細胞に導入することにより、本転写調節因子遺伝子の挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を得ることができる。
本転写調節因子遺伝子の上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本転写調節因子遺伝子を宿主細胞で発現させることの可能な本転写調節因子遺伝子ベクターを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本転写調節因子遺伝子が導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に本転写調節因子遺伝子が発現されるように、該プロモーターと本転写調節因子遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、導入される宿主細胞内でプロモーター活性を示すDNAをあげることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ-pL、λ-pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合にはADH1プロモーター)等をあげることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、ベクター保有のプロモーターと本転写調節因子遺伝子とが機能可能な形で結合するように、該プロモーターの下流に本転写調節因子遺伝子を挿入すればよい。例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等は、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、該クローニング部位に本転写調節因子遺伝子を挿入し動物細胞へ導入することにより、本転写調節因子遺伝子を発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えばCOS細胞等に該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として該プラスミドに組み込まれた本転写調節因子遺伝子を大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、該プラスミド又はその誘導体のADH1プロモーターの下流に本転写調節因子遺伝子を挿入すれば、本転写調節因子遺伝子を例えばCG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能な本転写調節因子遺伝子ベクターが構築できる。
構築された本転写調節因子遺伝子ベクターを宿主細胞に導入することにより、形質転換体を取得することができる。本転写調節因子遺伝子ベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合は、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法に準じて前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合は、例えばリチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)等を用いて導入することができる。
尚、ウイルスをベクターに用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、本転写調節因子遺伝子の挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
当該形質転換体を選抜するには、例えば、本転写調節因子遺伝子ベクターと同時にマーカー遺伝子を宿主細胞へ導入し、マーカー遺伝子の性質に応じた方法で細胞を培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、本転写調節因子遺伝子ベクターが導入された宿主細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、該栄養素を含まない最少培地を用いて、本転写調節因子遺伝子ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を取得するには、例えば、本転写調節因子遺伝子ベクターとマーカー遺伝子を有するベクターとを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これらを前述の方法で宿主細胞へ導入して該細胞を通常数週間培養し、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標にして目的とする形質転換体を選抜し取得すればよい。また、例えば、上記のような選抜薬剤に対する耐性付与遺伝子をマーカー遺伝子として有する本転写調節因子遺伝子ベクターを前述の方法で宿主細胞に導入し、該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上継代培養して、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養することにより、本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に導入されてなる形質転換体を選抜し取得することもできる。導入された本転写調節因子遺伝子が宿主細胞の染色体に組み込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、調製されたゲノムDNAから、導入された本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いるPCRや、導入された本転写調節因子遺伝子をプローブに用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、本転写調節因子遺伝子の存在を検出すればよい。かかる形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
本転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力(以下、本アポトーシス制御能力と記すこともある。)を検定するには、(1)本転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞と前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞との両者に、各々独立して、被験物質を接触させる第一工程、(2)前記第一工程後に、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び、第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程を有する検定方法(即ち、本発明検定方法)を用いることができる。この際に、例えば、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における上記マーカー蛋白質遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値(第一の測定量、第二の測定量)を比較することにより差異を調べる。その結果、得られる差異(第一の測定量と第二の測定量との差)に基づき前記被験物質が有する本アポトーシス制御能力を評価することにより当該能力の検定を行う。このようにして評価された本アポトーシス制御能力に基づき本アポトーシス制御能力を有する物質であることを確認することができる。
このように本転写調節因子の発現は、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を効果的に測定する方法に利用でき、物質が有する本アポトーシス制御能力を検定するために利用される。
本発明検定方法において用いられる哺乳動物の組織若しくは細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。当該細胞の由来としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物等を挙げることができる。
本発明検定方法の第一工程において、本転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞と接触させる被験物質の濃度としては、通常約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。上記哺乳動物又はその組織若しくは細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常10分間以上2日間程度であり、好ましくは数時間〜1日間程度である。
上記哺乳動物又はその組織若しくは細胞に被験物質を接触させる環境としては、当該哺乳動物又はその組織若しくは細胞の生命活動を維持させるような環境が好ましく、例えば、当該哺乳動物又はその組織若しくは細胞のエネルギー源が共存する環境をあげることができる。具体的には、哺乳動物の組織若しくは細胞の場合には、培地中で第一工程が行なわれることが好都合である。
さらにまた本発明検定方法の第一工程において「本転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞」の場合には、例えば、哺乳動物又はその組織若しくは細胞に本アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞(以下、本形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞と記すこともある。)に、被験物質を接触させる方法でもよい。
当該工程において、本形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞と接触させる被験物質の濃度は、通常約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。本形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常10分間以上2日間程度が好ましく、より好ましくは数時間から1日間程度が挙げられる。
前記本形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞細胞は、以下のようにして調製することができる。
本転写調節因子遺伝子を、通常の遺伝子工学的手法を用いて、本転写調節因子遺伝子を導入する哺乳動物細胞において使用可能なベクターに発現可能な形でプロモーターと接続されるように挿入することにより、プラスミドを作製する。ここで用いられるプロモーターは、本転写調節因子遺伝子が導入される哺乳動物細胞で機能可能なものであればよく、例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。尚、このようなプロモーターをマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用してもよい。
次いで、上記プラスミドを選抜マーカー遺伝子とともに哺乳動物細胞へ導入する。哺乳動物細胞への導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法、電気導入法、DEAEデキストラン法、ミセル形成法等を挙げることができる。リン酸カルシウム法としてはGrimm, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 10923-10927等に記載される方法、電気導入法及びDEAEデキストラン法としてはTing, A. T. et al., EMBO J., 15, 6189-6196等に記載される方法、ミセル形成法としてはHawkins, C. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 13786-13790等に記載される方法を挙げることができる。ミセル形成法を用いる場合には、リポフェクトアミン(ギブコ製)やフュージーン(ベーリンガー製)等の市販の試薬を利用するとよい。
上記プラスミドの導入処理を施した哺乳動物細胞を、例えば、当該プラスミドとともに導入された選抜マーカー遺伝子を利用し、当該選抜マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、本形質転換哺乳動物細胞を選抜することができる。さらに選抜を続けて、本転写調節因子遺伝子が染色体に導入されてなる安定形質転換体となった本形質転換哺乳動物細胞を取得してもよい。導入された本転写調節因子遺伝子が哺乳動物細胞中に存在する染色体上に組込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプライマーとして用いるPCRや、本転写調節因子遺伝子の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、ゲノムDNA中の本転写調節因子遺伝子の存在を検出・確認すればよい。
また、本形質転換哺乳動物細胞は、後述する形質転換非ヒト動物から通常の方法に準じて調製してもよい。
一方、本発明検定方法の第一工程において「本転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞」の場合には、例えば、本アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が欠損されてなる哺乳動物又はその組織若しくは細胞(以下、本遺伝子欠損哺乳動物又はその組織若しくは細胞と記すこともある。)に、被験物質を接触させる方法でもよい。
当該工程において、本遺伝子欠損哺乳動物又はその組織若しくは細胞と接触させる被験物質の濃度は、通常約0.1μM〜約100μMであればよく、1μM〜50μMが好ましい。本遺伝子欠損哺乳動物又はその組織若しくは細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常10分間以上2日間程度が好ましく、より好ましくは数時間から1日間程度が挙げられる。
本遺伝子欠損哺乳動物の細胞を作製するには、まず本転写調節因子遺伝子の遺伝子座の周辺のゲノムDNAを単離し、単離されたゲノムDNAの中の欠損させたい部分を、例えば、Neo耐性付与遺伝子等と置き換えたプラスミドを作製し、作製されたプラスミドを哺乳動物の細胞に導入することにより、本転写調節因子遺伝子の遺伝子座の周辺のゲノムDNAの部位と、前記細胞に内在する本転写調節因子遺伝子の遺伝子座の部位との相同組換えに基づき、前記細胞に内在する本転写調節因子遺伝子の遺伝子座が前記プラスミド上の「欠損部位を含む本転写調節因子遺伝子の遺伝子座の周辺のゲノムDNAの部位」と置き換わった細胞クローンを選択すればよい。当該細胞クローンの選択の際には、上記でゲノムDNAの中の欠損させたい部位がNeo耐性付与遺伝子で置き換えられている場合には、細胞クローンがNeo耐性を示すか否かで選択し、次のステップで当該細胞クローンのゲノムDNAのサザンブロット法等によるゲノム構造解析等により、正しく相同組換えが起こり、結果として細胞に内在する本転写調節因子遺伝子の遺伝子座が「欠損部位を含む本転写調節因子遺伝子の遺伝子座の周辺のゲノムDNAの部位」と置き換わった正しい細胞クローンを最終的に選択すればよい。
尚、このようにして本転写調節因子遺伝子を欠損した細胞を作製する際には、ヒトを含めたどのような種類の哺乳動物細胞を用いてもよい。例えば、ES細胞を用いる場合には、通常の確立された遺伝子欠損哺乳動物(即ち、ノックアウト哺乳動物)の作製方法に準じて、本転写調節因子遺伝子を欠損したES細胞を哺乳動物個体まで分化させることにより、本遺伝子欠損哺乳動物の個体、そして次にホモ型の本遺伝子欠損哺乳動物の個体を作製することができる。
「欠損部位を含む本転写調節因子遺伝子」とは、本転写調節因子遺伝子が実質的に機能しない遺伝子を意味し、このような遺伝子としては、例えば、本転写調節因子遺伝子のプロモーターに変異や欠損等を加えることでプロモーターが機能しないようにする場合や、本転写調節因子遺伝子の蛋白質翻訳領域のうち、例えば、DNA結合ドメイン等の重要な領域に変異や欠損を加えることで実質的に本転写調節因子が機能しないようにする場合等、さまざまな場合における遺伝子をあげることができる。
また「本転写調節因子遺伝子を実質的に発現しない哺乳動物」とは、本転写調節因子遺伝子の発現量が、通常の野生型の哺乳動物での正常細胞又は組織における本転写調節因子遺伝子の発現量と比較して10分の1以下に低下した哺乳動物を意味し、このような哺乳動物での細胞又は組織においては、本転写調節因子がその機能を実質的に保持していない状態にある。尚、このような哺乳動物は、例えば、siRNA法、アンチセンス法等のある特定の遺伝子の発現量及びその遺伝子産物量を低下させるような通常の方法を応用することにより、通常の野生型の哺乳動物での正常細胞又は組織における本転写調節因子遺伝子の発現量を低下させること等で作製することもできる。ここで、本転写調節因子遺伝子の発現量は、例えば、当該遺伝子のmRNAの発現量を定量する方法等の通常の遺伝子工学的手法(具体的には例えば、RT-PCR法、ノーザンブロット法、ドットブロット法)を用いればよい。
本発明検定方法において、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する方法としては、例えば、顕微鏡下で、脳内の神経細胞周囲に存在するミクログリア細胞等のグリア細胞を形態的に観察することにより活性化状態を検出することもできるが、他の方法としては、例えば、ミクログリア細胞等のグリア細胞に特異的又は選択的な遺伝子の発現量又はその遺伝子産物量を指標にして検出することもできる。このような遺伝子産物としては、具体的には例えば、IbaI等があげられる。尚、IbaIの測定には、IbaIの特異的抗体等を用いればよい。
上記のようにして本発明検定方法により測定された、本転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞と本転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞との両者を各々独立して用いた区における、グリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の本アポトーシス制御能力を評価する。このようにして被験物質が有する本アポトーシス制御能力の検定を行うことができる。
勿論、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた上記の区における、グリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の本アポトーシス制御能力を評価してもよい。このようにして被験物質が有する本アポトーシス制御能力の検定を行えばより精密な検定を行うことができる。
さらにまた、上記のような本発明検定方法において、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質を本アポトーシス制御能力を有しない物質(例えば、溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等であってもよい。)としこれを基準として、他の被験物質が有する本アポトーシス制御能力を評価してもよい。また、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が有する本アポトーシス制御能力を基準として、他の被験物質が有する本アポトーシス制御能力を評価してもよい。
本遺伝子欠損哺乳動物又はその組織若しくは細胞と被験物質とを接触させた場合におけるグリア細胞の活性化の有無又はその量と相関関係を有する指標値(以下、測定値1と記す。)を、本遺伝子欠損哺乳動物又はその組織若しくは細胞と被験物質とを接触させなかった場合のグリア細胞の活性化の有無又はその量と相関関係を有する指標値(以下、測定値2と記す。)と比較することによって、該被験物質の本アポトーシス制御能力を評価してもよい。例えば、本アポトーシス制御能力を、前記測定値を用いて、下記の式に従って制御率として表すこともできる。
制御率(%)=[(測定値2−測定値1)/測定値1]×100
本アポトーシス制御能力を有する物質を探索するには、本発明検定方法により評価された本アポトーシス制御能力に基づき本アポトーシス制御能力を有する物質を選抜すればよい。
例えば、被験物質の本アポトーシス制御能力を表わす制御率の絶対値が、統計学的に有意な値を示す物質、具体的に好ましくは、例えば、30%以上を示す物質、より好ましくは50%以上を示す物質を、本アポトーシス制御能力を有する物質として選抜する。ここで当該制御率が正の場合には、促進的能力を有する物質として選抜され、一方、負の場合には、抑制的能力を有する物質として選抜される。
尚、当該物質は、本アポトーシス制御能力を有する限り、低分子化合物、蛋白質(抗体を含む)又はペプチド等のいかなる物質であってもよい。
本発明探索方法によって選抜された物質は本アポトーシス制御能力を有しており、アポトーシス制御剤の有効成分として使用してもよい。
尚、本発明アポトーシス制御剤の有効量は、例えば、Tunel法(細胞がアポトーシスを起こした場合に生じるクロマチンの断片を検出原理とするアポトーシス検出方法)等を用いて決定してもよい。
本発明探索方法により選抜される物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするアポトーシス制御剤(即ち、本発明アポトーシス制御剤)は、その有効量を経口的又は非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明アポトーシス制御剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本発明アポトーシス制御剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本発明アポトーシス制御剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本発明探索方法により選抜される物質又はその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、動脈硬化病態増悪因子分泌抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
本転写調節因子遺伝子は、当該遺伝子を外来遺伝子として、哺乳動物又はその組織若しくは細胞に、当該哺乳動物又はその組織若しくは細胞で発現する位置に置かれるように提供することによって、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化を促進するために利用することもできる。
哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物由来の細胞を挙げることができる。当該細胞は、組織から分離された細胞や、同一の機能・形態を持つ集団を形成している細胞や、前記哺乳動物の体内にある細胞であってもよい。従って、哺乳動物がヒトである場合には、一般にいう遺伝子治療が施されたヒトの細胞から各種実験に使用されるような株化細胞までを意味し、また哺乳動物が非ヒト動物である場合には、一般にいう遺伝子治療が施された非ヒト動物の細胞から各種実験に使用されるようなモデル動物の細胞や株化細胞までを意味する。後者の場合には、ラット、マウス等を好ましい動物種として挙げることができる。
本転写調節因子遺伝子の調製は、上述と同等な方法に準じて行えばよい。また、高効率プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター)の制御下に本転写調節因子遺伝子を発現させるインビボ転写系によって調製することもできる。調製された遺伝子を用いて後述のように形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞を調製することにより、当該遺伝子が哺乳動物又はその組織若しくは細胞で発現する位置に置かれるように提供された形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞を得ることができる。
ここで「発現する位置に置かれる」とは、DNA分子が、その塩基配列からの転写及び翻訳を指向する(即ち、例えば、本転写調節因子をコードするRNAおよび本転写調節因子の産生を促進するような)塩基配列と隣接した位置に置かれていることを意味する。
本転写調節因子の発現レベルは、本転写調節因子遺伝子が提供されていない細胞と比較してアポトーシスを制御するために十分である量であればよい。この場合、本転写調節因子遺伝子は、本転写調節因子の全体をコードするDNAであってもよいし、当該蛋白質の一部をコードするDNAであってもよい。
上記の方法において、本転写調節因子遺伝子がゲノムに組み込まれるように哺乳動物細胞に提供することにより、アポトーシスを制御してもよい。
上記の方法において、本転写調節因子遺伝子を哺乳動物細胞に導入するために用いられる遺伝子構築物(以下、本遺伝子構築物と記載することもある。)および移入送達手段には、当該遺伝子が導入される哺乳動物細胞に対して親和性を有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はその他のウイルスベクターを用いることができる。具体的には例えば、ミラー(Miller),Human Gene Therapy 15〜14,1990;フリードマン(Friedman),Science 244:1275〜1281,1989;エグリティス(Eglitis)およびアンダーソン(Anderson),BioTechniques 6:608〜614,1988;トルストシェフ(Tolstoshev)およびアンダーソン(Anderson),current opinion in Biotechnology 1;55〜61,1990;シャープ(Sharp),The Lancet 337:1277〜1278,1991;コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322,1987;アンダーソン(Anderson),Science 22-:401〜409,1984;モーン(Moen),Blood Cells 17:407〜416,1991;ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990,1989;Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990,1993;およびジョンソン(Johnson),Chest 107:77S〜83S,1995等に記載される公知のベクターをあげることができる。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370,1990;アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクターは特に開発が進んでおり、臨床の場でもすでに使用されている。
また、本発明DNAの移入送達手段としては、非ウイルス的手法を用いることもできる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987;オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259,1990;ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278,1989;シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985,1989等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465,1990等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等があげられる。
本遺伝子構築物において、本転写調節因子遺伝子は、当該DNAを構成的に発現させるようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、SV40ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター)、Raus Sarcoma Virusプロモーター(RSVプロモーター)、βアクチン遺伝子プロモーター等が挙げられる。
また、本転写調節因子遺伝子は、当該遺伝子の発現を環境刺激により調節するようなプロモーターの制御下に置かれていてもよい。例えば、上記遺伝子は、化学的信号もしくは薬物刺激等の外来性の信号もしくは薬物の導入により活性化されるプロモーターを用いて発現させてもよい。
また、本転写調節因子遺伝子は、組織特異的もしくは細胞型特異的なプロモーターの制御下に置かれていてもよい。かかるプロモーターには、哺乳動物における組織又は細胞に特異的な転写制御に関与するプロモーター要素(エンハンサー等)が含まれていてもよい。例えば、必要に応じて、本転写調節因子遺伝子を発現させるために、神経細胞におけるDNAの発現を優先的に指向することが知られるエンハンサーを用いてもよい。また、本転写調節因子をコードするゲノムDNA(例えば配列番号7又は8で示される塩基配列を有するDNA等)のクローンを本遺伝子構築物として用いる場合には、本転写調節因子遺伝子の元来の発現調節領域に含まれるコグネイト調節配列を介して本転写調節因子遺伝子を発現させることができ、必要に応じて、上記の任意のプロモーター又はプロモーター要素を付加して発現を制御することもできる。
尚、上記のようなプロモーター又はプロモーター要素をマルチクローニング部位の上流に含む市販のベクターを利用することもできる。
上記の方法を遺伝子治療の手段として応用する場合には、本遺伝子構築物は、アポトーシスが予想される部位に対して適用される(例えば、注入によって)ことがよい。また、アポトーシスが予想される部位の近傍の組織又はアポトーシスが起こると予想される細胞に供給される血管に対してそれを適用してもよい。また、本遺伝子構築物を適用しようとする哺乳動物にとって外因性又は内因性の培養可能な細胞に、本遺伝子構築物を導入し、次いで、導入された細胞を血清学的に標的組織に対して注入することもできる。
理想的には、かかる遺伝子治療の手法により、少なくとも非罹患細胞における正常な本転写調節因子の細胞内レベルと同等の本転写調節因子の発現量がもたらされるとよい。
以下に、一例として、哺乳動物が形質転換非ヒト動物である場合の上記発明についてより詳細に説明する。
形質転換非ヒト動物の作製における本転写調節因子遺伝子の導入法としては、例えば、マイクロインジェクション法、レトロウイルスを用いる方法、胚性未分化細胞(ES細胞)を用いる方法等を挙げることができる。このうち、マイクロインジェクション法が最も汎用されている。マイクロインジェクション法とは、マイクロマニピュレーターを用いて、顕微鏡下で受精卵の前核内部に上記DNAを含んだ溶液を注入する方法である。
まず、本転写調節因子遺伝子を受精卵に注入する。その際、当該遺伝子を高い確率で染色体へ組込むためには、当該遺伝子の単離に用いたベクター領域を可能な限り除去すること、mRNAの不安定化に寄与するAUに富む領域を除くこと、直鎖状にすることが好ましい。また、当該遺伝子に対してイントロンを予め挿入しておくことが好ましく、当該イントロンとしては、例えば、β−グロビンイントロン等を挙げることができる。
受精卵は、目的に応じた系統の非ヒト動物から採取する。例えば、マウスの場合には、近交系のC57BL/6マウスやC3Hマウス、あるいはC57BL/6マウスと他系統のマウスとの交雑系(例えば、(C57BL/6×DBA/2)F1等)、非近交系のICRマウスが挙げられる。受精卵は、通常、妊馬血清ゴ等トロピンとヒト絨毛性ゴ等トロピンとの両者の腹腔内投与により過剰排卵を誘発させた雌マウスと雄マウスとを交尾させた後、前記雌マウスから採取する。尚、採取した受精卵は培養用ドロップに入れ、CO2ガスインキュベーターで培養・維持することにより、上記遺伝子の注入操作まで保管することができる。
上記遺伝子の注入はマイクロマニピュレーターをセットした倒立顕微鏡下で行なう。用いられる受精卵としては、雄性前核が雌性前核より大きくなる頃から両前核が融合するまでの発達段階にあるものを用いるとよい。まず受精卵を固定し、当該受精卵の雄性前核内に当該遺伝子を含有するDNA溶液を注入する。当該DNA溶液は必要に応じて複合体として調製する。複合体形成に用いられる物質としては、リポソーム、リン酸カルシウム、レトロウイルス等を挙げることができる。DNA溶液の注入は雄性前核が膨らむことにより確認できる。遺伝子注入量としては、例えば、約200〜約3,000コピーの上記遺伝子を含む量を挙げることができる。
このようにして、本転写調節因子遺伝子が注入された受精卵は胚盤胞になるまで前記と同様にして培養した後、仮親の子宮に移植する。好ましくは当該DNAの注入操作後ただちに仮親の卵管に移植するとよい。仮親としては、精管切断手術を施した雄マウスと交尾させて偽妊娠状態にした雌マウスを用いるとよい。具体的には、まず当該雌マウス背側の腎臓付近の皮膚と筋層を切開して卵巣・卵管・子宮を引き出し、卵巣膜を破いて卵管口を探し出す。次いで当該DNAの注入操作後に生き残った受精卵を該卵管口から移入し、卵巣・卵管・子宮を腹腔内に戻した後、筋層を縫合し、皮膚をクリップでとめる。約20日後に仔が生まれる。
得られた仔の体組織の一部、例えば尾の一部、を切り取り、当該部位から抽出されたDNAのサザンブロッティング等により当該遺伝子の存在有無を確認する。このようにして、当該遺伝子が非ヒト動物に導入されたことを確認できる。あるいは他の方法、例えばPCR等の確認方法を利用してもよい。
本転写調節因子遺伝子による治療剤の有効成分となる、本転写調節因子遺伝子は、前述の如く調製すればよい。また、例えば、当該遺伝子を含有する組換えベクター又は組換えウイルス等の形態で使用されることもある。このような形態には、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連性ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、SV40ベクター、ポリオーマウイルスベクター、乳頭腫ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクター等のウイルスベクターを利用することができる。さらに、アデノウイルスベクターを使用する場合には、例えばQUANTUM社製のAdEasy Kitを用い、本転写調節因子遺伝子をTransfer Vectorのマルチクローニングサイトに組み込み、得られた組換えベクターを直線化した後に、pAdEasy vectorと共に大腸菌にトランスフォームし、相同組換え体DNAをヒト293A細胞に組み込むことにより、本転写調節因子遺伝子を含有する組換えウイルスを産生させ、これを回収し、使用することもできる。
また、ヒトサイトメガウイルスのプロモーター領域を有するプラスミドDNA等のような非ウイルス系のベクターを用いることもできる。本転写調節因子遺伝子を本アポトーシス経路上に存在するマーカー蛋白質の異常発現が予想される部位に直接注入する場合のように、非ウイルスベクターを用いて本転写調節因子遺伝子を局所的に送達するシステムにおいては、プラスミドDNAの使用は極めて有益である。体外に取り出された細胞に本転写調節因子遺伝子を含有する組換えベクターを導入して体内に戻す方法、すなわち、ex vivo法を使えば、あらゆる既知の導入方法が利用可能である。例えば、a)直接注入、b)リポソームを介する形質導入、c)リン酸カルシウム法・エレクトロポレーション法・DEAE−デキストラン法による細胞トランスフェクション、d)ポリブレンを介した送達、e)プロトプラスト融合、f)マイクロインジェクション、g)ポリリシンを使った形質導入等によって、非ウイルスベクターを導入することができる。
本発明遺伝子による治療剤は、その有効量を非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、非経口的に投与する方法としては、例えば、上述のような注射(皮下、静脈内等)等を挙げることができる。前記の適当な投与剤型は薬学的に許容される、例えば、水溶性溶剤、非水溶性溶剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定剤等の担体に本転写調節因子遺伝子(本発明DNAが組み込まれた組換えベクター、組換えウィルス、組換えプラスミド等の形態を含む)を配合することにより製造することができる。必要に応じて、防腐剤、懸濁化剤、乳化剤等の補助剤を添加してもよい。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本脂肪蓄積抑制剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は、患者細胞において本発明蛋白質が細胞内で有効に働くような濃度レベルをもたらす有効成分量を投与すればよい。1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (本遺伝子欠損哺乳動物の作製のためのTargetingベクター及び本遺伝子欠損哺乳動物ES細胞の調製:その1)
図1Aで示されている本転写調節因子遺伝子のExon1〜3を欠損させるTargeting constructは、下記のように実施された。
まず、本転写調節因子遺伝子のゲノム配列情報(Accession No.AB054577及びNC_000085)を参考に、ライブラリースクリーニングで129/SvJマウスゲノムライブラリー(Stratagene社製)から得られた本転写調節因子遺伝子のGenomic DNAを制限酵素分解することにより、HapI部位からEcoRI部位までの4.7Kbp(5’HR4.7Kb)の断片を5´アーム、EcoRV部位からScaI部位までの4.3Kbp(3’HR4.3Kbp)の断片を3´アームとして調製した。このようにして調製された、それぞれの断片を、pBluescriptクローニングベクター上でNeo遺伝子(Neo)発現カセットの3´末端側と5´末端側とに、それぞれ配置されるように結合した。
また当該プラスミド上で、5’HR4.7Kbの5´アームのHpaIサイト部分に、DTA遺伝子発現カセットを結合させて、Targeting constructを構築した。尚、上記のNeo遺伝子発現カセット及びDTA遺伝子発現カセットは、ジェノジェンバイオサイエンス社(カルフォルニア;USA)より入手した。
次いで、構築されたTargeting constructのマウスES細胞への導入、及び、本転写調節因子遺伝子のExon1〜3を含む領域(Deletion region)がNeo遺伝子でちょうど置き換わった組換えES細胞のNeo選択培地による細胞クローニングは、ジェノジェンバイオサイセンス社(カルフォルニア;USA)にて実施された。
細胞クローンの遺伝子構造決定による目的の組換えES細胞の選択及び確認は、全ゲノムDNAのSouthern blotting 法(Total southern blotting法)により行った。
まず、1次スクリーニングでは、候補細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)を用いて、当該試薬に添付された説明書の記載に従って全ゲノムDNAを抽出した。抽出された全ゲノムDNA(各ゲノムDNA約10μg)をSphIで、又は、SpeIとKpnIとで、又は、SpeIで切断した後、切断処理された各々のDNAをアガロース電気泳動した。当該電気泳動後のゲルから、ゲル中のDNAを、サザンブロッティング法により、HybondN膜(アマシャムファルマシア社製)へと転写した。転写後の膜を80℃、1時間ベーキングした後、ハイブリダイゼーション液(ExpressHyb; Clontech社製)中で65℃、1時間プレハイブリダイゼーションを行い、さらに各種プローブを加えて65℃、16時間ハイブリダイゼーションを行った。次いで、得られたHybondN膜を、2XSSC液中で65℃、30分間振盪を2回繰り返して行った後、当該膜を洗浄し、さらに、0.1XSSC液中で65℃、30分間振盪を2回繰り返して行った。得られた膜を洗浄した後、これをラップで密閉しIPプレート(富士フィルム社製)に密着させて1時間放置した。このようにして、膜上の放射能像をIPプレート上の像へと転写した。
次に、当該IPプレートを、IPプレートリーダー(BASステーション;富士フィルム社製)を用いて解析することにより、膜上のプローブがハイブリダイゼーションしたバンドの像を得た。尚、上記のプローブのうち、図1Aの中で5´probeとして表されているプローブの作製のために、本転写調節因子遺伝子のゲノムDNAを鋳型にして、配列番号9で示されるPCRプライマー(5´-gaggatgtgacagctcagtttgttctgagactgga-3’)と 、配列番号10で示されるPCRプライマー(5’-caggcgtcagttctttcactttgacacacagcctt-3’)とを用いたPCRを行った。また、図1Aの中で3’probeとして表されているプローブの作製のために、本転写調節因子遺伝子のゲノムDNAを鋳型にして、配列番号11で示されるPCRプライマー(5´-cctgggtttatggtgtgatggggaggaaagagcct-3’)と、配列番号12で示されるPCRプライマー( 5’-ctgaaatggaggtcgcaccgaccaagccttcactg-3’)とを用いたPCRを行った。PCRにおける反応条件は、それぞれ変性が95℃、1分間、アニーリング反応と伸張反応とが68℃、1分間の2ステップからなるサイクルを35回繰り返すものであった。また、Neo probeは、pRC/RSVベクター(Invitrogen社製)のNeo部分断片(SmaIサイト〜SphIサイト)を用いた。これらのDNA断片をRediprimeIIキット(アマシャムファルマシア社製)を用いてα[32P]-dCTP(アマシャムファルマシア社製)でラベルしたものを、ハイブリダイゼーション用プローブとして、ハイブリダイゼーションの際に10cpm/mlの割合でハイブリダイゼーション液に混合してから用いた。野生型本転写調節因子の遺伝子座(本転写調節因子遺伝子のGenomic locus)の場合には、約8.9Kbpの陽性シグナルバンドを与え、一方、目的の組換え型本転写調節因子の遺伝子座の場合には、約6.4Kbpの陽性シグナルのバンドをも与えた。
次いで、2次スクリーニングでは、目的の目的の組換えES細胞の候補細胞クローンの全ゲノムDNAをSpeIとKpnIとで切断した後、1次スクリーニングで用いた「Targeted locus」パネル中に表示された位置のプローブ(5’Probe)の代わりに「Targeted locus」パネル中に表示された位置のプローブ(3’Probe)を用いること以外は1次スクリーニングで用いたTotal southern blotting法と同様な方法を使用した。この場合、野生型本転写調節因子の遺伝子座(本転写調節因子遺伝子のGenomic locus)の場合には、約23Kbpの陽性シグナルバンドを与え、一方、目的の組換え型本転写調節因子の遺伝子座の場合には、約8.8Kbpの陽性シグナルのバンドをも与えた。さらに、このようにして選択された目的の組換えES細胞がTargeted locusに示されているように正しい構造でNeo遺伝子を持つか否かについても、それぞれのクローンの全ゲノムDNAをSpeIで切断し、NeoのcDNA全長をプローブとしたTotal southern blotting法を行うことにより、約17〜19Kbpのバンドが目的の組換え型本転写調節因子の遺伝子座の場合にのみ検出できることで確認した。
このようにして、目的の組換えES細胞を調製した。
尚、図1Aの中では、パネルの上部に、本転写調節因子遺伝子のゲノム上の構造(本転写調節因子遺伝子 Genomic locus)、本遺伝子欠損マウス(即ち、本転写調節因子遺伝子ノックアウトマウス)を作製するために構築されたTargeting ベクターの構造(Targeting construct;尚、pBluescriptベクター部分の表示は省略している。)及びそれにより作製される本遺伝子欠損マウスで欠損する本転写調節因子遺伝子の領域(Deletion region)の位置関係が示されている。パネルの下部には、Targeting constructで作製される組換えES細胞及びそれにより最終的に作製される本遺伝子欠損マウスのゲノム上の本転写調節因子遺伝子の欠損部位の構造を示す図が示されている。
本転写調節因子遺伝子のGenomic locusの構造には、少数の制限酵素部位の位置と共に、合計8個のExonから成る本転写調節因子遺伝子のExonが、黒四角で示されるE1(Exon1)〜E8(Exon8)として表示されている。開始メチオニン(ATG)の位置がE1(Exon1)に存在することも示されている。そのうち、本転写調節因子遺伝子のExon1〜3を含む領域に相当する2.1Kbpの部分を本遺伝子欠損マウスで欠損させる部位(Deletion region)とすることにした。
図1Aのストラテジーに従い、上記の部位を欠損させるためのTargeting constructを作製した。当該Targeting constructでは、前述の如く、本転写調節因子遺伝子のGenomic locusのHapI部位からEcoRI部位までの4.7Kbp(5’HR4.7Kb)の断片を5´アーム、EcoRV部位からScaI部位までの4.3Kbp(3’HR4.3Kbp)の断片を3´アームとして調製される。このようにして調製された、それぞれの断片と、pBluescriptクローニングベクター上でNeo遺伝子(Neo)発現カセットの3´末端側と5´末端側とに、それぞれ配置されるように結合している。また当該プラスミド上で5’HR4.7kbの5’アームのHpaIサイト部分に、DTA遺伝子が発現カセットを結合している。
このような組換えES細胞及びそれを利用して作製された本遺伝子欠損マウスのゲノムDNA上の本転写調節因子遺伝子 Genomic locus部分は、図1Aの中では、パネルの中央に、「Targeted locus」パネルのような構造が示されている。ここでは本転写調節因子遺伝子のExon1〜3を含む領域が欠損しており、結果として本転写調節因子遺伝子機能が破壊されている。
実施例2 (本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態の確認:その1)
実施例1で得られた2種の目的の組換えES細胞を通常の方法に準じて分化、再生させることにより、独立した2系統のマウス個体(本遺伝子欠損哺乳動物)を得た。得られたマウスのテール1mm程度をTrizol試薬(Invitrogen社製)を用いて、当該試薬に添付された説明書の記載に従って全ゲノムDNAを抽出した。抽出された全ゲノムDNA約10μgをSphIで切断した後、得られたゲノム断片をアガロース電気泳動した。次いで、電気泳動後のゲルの中のDNAをサザンブロッテイング法により、HybondN膜(アマシャムファルマシア社製)に転写した。転写後のHybondN膜を80℃、1時間ベーキングした後、当該膜をハイブリダイゼーション液(ExpressHyb; Clontech社製)の中で65℃、1時間プレハイブリダイゼーションし、更に下記のプローブを加えて65℃、16時間ハイブリダイゼーションした。次いで、得られたHybondN膜を2XSSC液の中で65℃、30分間振盪(2回繰り返す)することにより洗浄した。洗浄後、0.1XSSCの液の中で65℃、30分間振盪(2回繰り返す)することにより洗浄した。洗浄後のHybondN膜をラップで密閉し、IPプレート(富士フィルム社製)に密着させて1時間放置し、当該膜の上の放射能像をIPプレート上の像に転写した。次いで、当該IPプレートをIPプレートリーダー(BASステーション;富士フィルム社製)を用いて解析することにより、HybondN膜の上のプローブがハイブリダイゼーションしたバンドの像を得た。
尚、上記で用いられたプローブは、図1Aの中で「5´probe」として表示されたプローブである。当該プローブを作製するために、本転写調節因子のゲノムDNAを鋳型にして且つ配列番号5で示されるPCRプライマー(5´-gaggatgtgacagctcagtttgttctgagactgga-3’)及び配列番号6で示されるPCRプライマー( 5’-caggcgtcagttctttcactttgacacacagcctt-3’)をPCRプライマーとして用いて、変性が95℃、1分間アニーリング及び伸張反応が68℃、1分間の2ステップPCRを35サイクル繰り返すPCR法を用いた。当該PCR法により得られたDNA断片を、RediprimeIIキット(アマシャムファルマシア社製)を用いα[32P]-dCTP(アマシャムファルマシア社製)で放射能ラベルした。放射能ラベルされたプローブをハイブリダイゼーション用プローブとしてハイブリダイゼーションの際に10cpm/mlの割合でハイブリダイゼーション液に混合した。
このようにして本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態の確認を行った結果を図1Bに示した。図1Bでは、4候補のマウス個体由来の各々の全ゲノムDNAをSphIで切断した後、得られたゲノム断片について図1Aの「Targeted locus」のパネル中に表示された位置のプローブ(5´Probe)を用いるTotal southern blotting法を行ったが、レーン1のマウス個体では約8.9kbpの野生型本転写調節因子遺伝子のGenomic locusの存在を示すバンドと、約6.4Kbpの本転写調節因子遺伝子のTargeted locusの存在を示すバンドとの両方が認められたことから、前記マウス個体はヘテロ型であると判断できた。一方、レーン4のマウス個体では、約8.9kbpの野生型本転写調節因子遺伝子のGenomic locusの存在を示すバンドは認められず、約6.4Kbpの本転写調節因子遺伝子のTargeted locusの存在を示すバンドのみが認められたことから、前記マウス個体はホモ型であると判断できた。従って、本遺伝子欠損マウス個体が作製されていることが確認できた。
実施例3 (本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態の確認:その2)
独立した2つの組換えES細胞クローンに由来する2つの系統(本転写調節因子遺伝子のTargeted locusの構造は同一であるが)の本遺伝子欠損マウス(以下、KO-(1)及びKO-(2)と記すこともある。)5匹ずつ、及び、その出生時の各々の野生型マウスの兄弟5匹ずつ(WT-(1)及びWT-(2)と記すこともある。)の各々の個体の全脳を、Trizol試薬(Invitrogen社製)を用いてポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA AG社製)でホモジナイズすることにより得られた組織破砕物から、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って全RNAを抽出し、抽出された全RNAをRNA精製キット(Rneasy kit;QIAGEN社製)を用いて、当該キットに添付された説明書の記載に従って精製することにより、全脳由来のRNA(以下、Total RNAサンプルと記すこともある。)を得た。
得られたTotal RNAサンプル1μgを、Oligo dT(アマシャムファルマシア社製)及び逆転写酵素(SuperscriptII;Invitrogen社製)を用いてcDNAとした後、当該cDNAを鋳型としてTaqMan-RealTimePCR法により、本転写調節因子遺伝子のmRNAの量を定量した。また、TaqMan universal pre-mix(Applied biosystems社製)及びマウス本転写調節因子遺伝子特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製Mm00463644_m1)を用いて、TaqMan Real Time PCR法により、本転写調節因子遺伝子のmRNAの量を定量した。尚、測定は、Applied biosystems社製7900HTシステムを用いたデフォルトモードで行った。
同時に、マウス本転写調節因子遺伝子特異的TaqManプローブの代わりにGAPDH特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製;#4308313)を用いること以外は前記と同様な方法により、GAPDHのmRNA量を定量した。得られた測定値で各サンプルの中の本転写調節因子遺伝子のmRNA量の定量測定値を補正した。このようにして得られた本転写調節因子遺伝子のmRNA量の各定量値は、WT-(1)の平均の定量値を1とした時の相対値(N=5の平均値)で縦軸に表示した。
このようにして、本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態を確認し、その結果を図1Cに示した。尚、図1Cでは、上記のように、本遺伝子欠損マウスの場合には、2系統とも本転写調節因子遺伝子の発現が検出できず(N.D.)、本転写調節因子遺伝子を欠損する「本遺伝子欠損マウス」の個体が作出されていることが確認された。
実施例4 (本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状の免疫染色による確認(その1))
30週齡の遺伝子欠損マウス及びその兄弟の野生型マウス(Wild)の各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。このようにして得られた薄切切片を、GFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)用の免疫染色試薬キット(ヒストファインSAB−PO(R)GFAPキット;ニチレイ社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した。尚、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上にマイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
このようにして、免疫染色法による本遺伝子欠損哺乳動物の脳におけるGFAPの発現を確認し、その結果を図2Bに示した。尚、図2Bでは、上の2段のパネルに、30週齡の本遺伝子欠損マウス3例(KO-1〜KO3)及び対照として本遺伝子欠損マウスと同腹の30週齡の野生型マウス(Wild)について、各々の脳の海馬部分(Hippocampus)の薄切切片をAnti-GFAP抗体を用いて免疫染色した結果を示した。
野生型マウスの海馬部分では、全例でGFAPの発現の活性化を示す濃染像は得られなかった。これに対して、30週齡の本遺伝子欠損マウス海馬部分では、グリア細胞の活性化に由来するGFAPの発現の活性化を示す像(濃染像)が得られた。尚、図2Bの中の3段目の右パネルには、海馬部分において比較的強いGFAPの発現の活性化を示す像(図2Bの二段目の左パネル)が認められたKO-2の個体の大脳皮質部分の薄切切片を、Anti-GFAP抗体を用いて免疫染色した結果を示した。一方、図2Bの3段目の左パネルには、対照として同腹野生型マウスの大脳皮質部分の薄切切片を、Anti-GFAP抗体を用いて免疫染色した結果を示した。30週齡の本遺伝子欠損マウスの全例ではないが、このKO-2の例のように海馬のGFAP(グリア細胞マーカー)活性化が比較的強い例(10例中4例程度)では大脳皮質部分でもGFAPの発現の活性化が認められた。
実施例5 (本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状(アポトーシス進行状態)の免疫染色による確認(その2))
30週齡の遺伝子欠損マウス及びその兄弟の野生型マウス(Wild)の各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。このようにして得られた薄切切片を、0.06%KMnO4溶液を用いて15分間処理した後、流水下で3分間洗浄した。得られた薄切切片を、0.001%のFluoro-jade B(Chemicon 社製)/0.1%酢酸溶液を用いて遮光下で30分間染色した。染色された薄切切片を水で3分間3回振盪して洗浄した後、乾燥した。得られた薄切切片を封入してOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いてGFP用フィルターセット及び光源で蛍光検鏡像を写真撮影した。
このようにして本遺伝子欠損哺乳動物の脳細胞の変性を検討し、その結果を図2Aに示した。尚、図2Aでは、上記のように、変性ニューロンを染色することが知られている蛍光試薬であるFluoro-jade試薬を用いて、GFAPの発現の活性化が認められた本遺伝子欠損マウスの脳(30週齡)及び対照として本遺伝子欠損マウスと同腹の野生型マウスの脳(30週齡)の薄切切片を染色した。ここでは、海馬部分(Hippocampus)と大脳皮質部分(Cerebral cortex)との結果を示したが、個体毎に程度の差があるものの本遺伝子欠損マウスの脳では、いずれの部分でもニューロンが前記蛍光試薬を用いて染色された結果の蛍光シグナル(緑色)を認めることができた。従って、染色されたニューロンでは、変性が開始されていることが確認された。一方、野生型マウスの脳及びGFAPの発現が活性化していない週齡の本遺伝子欠損マウスの脳(15週齡)において、上記のような蛍光染色による結果は得られなかった。
以上より、本遺伝子欠損マウスの脳(30週齡)は、本遺伝子欠損マウスの脳において週齡が進むにつれてニューロンが変性を開始することを直接的に示している。そして、GFAPの発現の活性化は、ニューロンの変性に反応して生じる例が広く知られていることから、本遺伝子欠損マウスの場合にもニューロンの変性に反応して、GFAPの発現の活性化が生じていることが明らかになった。
実施例6 (本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状の免疫染色による確認(その3))
30週齡の遺伝子欠損マウス及びその兄弟の野生型マウス(Wild)の各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。このようにして得られた薄切切片を、Tunnel用の免疫染色試薬キット、Anti-IbaI(グリア細胞マーカー)用の免疫染色試薬キット又はAnti-nitrotyrosine用の免疫染色試薬キット(ヒストファインSAB−PO(R)GFAPキット;ニチレイ社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した。尚、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上にマイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
このようにして、神経変性に伴って認められることが多いいくつかの現象が本遺伝子欠損哺乳動物で生じているか否かを検討し、その結果を図2Cに示した。尚、図2Cでは、上記のように、GFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)の発現の活性化が比較的強く認められた本遺伝子欠損マウスの個体(KO;30週齢)とその同腹野生型マウス(Wild;30週齢)について、各々の海馬部分の薄切切片をTunnel染色法(図2Cの中の1段目)、Anti-IbaI抗体免疫染色法(図2Cの中の2段目)及びAnti-nitrotyrosine抗体免疫染色法(図2Cの中の3段目)により比較検討した。
まずTunnel染色法(細胞に生じたアポトーシスに伴う核内DNAの断片化を検出する方法)の場合には、野生型マウス(Wild)の海馬垂体細胞においては、その核内に陽性シグナル(茶色濃染像)を認めなかったのに対して、本遺伝子欠損マウス(KO)の海馬垂体細胞においては、その核内に陽性シグナル(茶色濃染像)を認めた。従って、本遺伝子欠損マウスの個体の海馬垂体細胞ではアポトーシスが生じていることが明らかとなった。尚、当該結果は、GFAPの発現の活性化が比較的強く認められた本遺伝子欠損マウスの個体の一例であったが、GFAPの発現の活性化が比較的弱い本遺伝子欠損マウスの個体の場合には、Tunnel染色法による陽性シグナル(茶色濃染像)は認められなかった。このように、GFAPの発現の活性化の強度とTunnel染色法による陽性シグナル(茶色濃染像)の出現には正の相関関係が認められ、ニューロンの障害は進行し重篤化するとアポトーシスに至るということが判った。
一方、老化した細胞、酸化ストレスが亢進した細胞で認められるNitrotyrosineに対する抗体で染色した結果(図2Cの中の3段目:Anti-nitrosyrosine)において、野生型マウス(Wild)の海馬垂体細胞においては、その核内にNitrotyrosine陽性シグナル(茶色濃染像)が殆ど認められなかったのに対して、本遺伝子欠損マウス(KO)の海馬垂体細胞においては、その核内にNitrotyrosine陽性シグナル(茶色濃染像)を認めた。
尚、Nitrotyrosine陽性シグナル(茶色濃染像)が認められた海馬垂体細胞の形態は全て正常細胞の形態に比較して萎縮が認められること、またGFAPの発現の活性化が比較的弱い本遺伝子欠損マウス(KO)の個体の場合にはNitrotyrosine陽性シグナル(茶色濃染像)は認められなかった。このように、ニューロンの障害が進行し重篤化すると細胞内酸化ストレスが亢進し、Nitrotyrosine抗原が出現することが明らかになった。
30週齡の本遺伝子欠損マウス(KO)及びその兄弟の野生型マウス(Wild)の各々を、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該マウスから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次にパラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、更にエタノールを用いて脱水処理をした。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。このようにして得られた薄切切片を、Tunnel用の免疫染色試薬キット(ApopTag Plus Peroxidase In situ Apoptosis Detection Kit; Chemicon社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した(図中では「Tunnel」と表示されている)。
また上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、更にエタノールを用いて脱水処理をした。脱水処理後、得られた薄切切片を1000分の1に希釈されたラビットAnti Iba1抗体(Wako社製)を用いて4℃、16時間処理した。得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いて30分間、2回洗浄した。得られた薄切切片を、2次抗体染色キット(ヒストファインシンプルステインMAX-PO(ラビット用; ニチレイ社製)及びヒストファインシンプルステインDAB溶液(ニチレイ社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した(図中では「Anti-IbaI」と表示されている)。
また上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、更にエタノールを用いて脱水処理をした。脱水処理後、得られた薄切切片を50分の1に希釈されたラビットAnti-Nitrotyrosine抗体(AB5411;Chemicon社製)を用いて4℃、16時間処理した。得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いて30分間、2回洗浄した。得られた薄切切片を、2次抗体染色キット(ヒストファインシンプルステインMAX-PO(ラビット用; ニチレイ社製)及びヒストファインシンプルステインDAB溶液(ニチレイ社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した(図中では「Anti-IbaI」と表示されている)。
尚、いずれの染色においても、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上に、マイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
その結果、脳神経細胞の中でも(ミクロ)グリア細胞にのみ選択的に発現しているIbaI抗原に対する抗体染色の場合(図2Cの中の2段目:Anti-IbaI)には、野生型マウス(Wild)の海馬垂体細胞の周辺では極少数で弱いIbaI陽性シグナルのみが認められるのに対して、本遺伝子欠損マウス(KO)の海馬垂体細胞の周辺では多数の強いIbaI陽性シグナルが認められた。従って、(ミクロ)グリアの集合・活性化が生じていることが明らかとなった。尚、当該結果は、GFAPの発現の活性化が比較的強く認められたTunnel染色法による陽性シグナルを出現させる個体の一例であるが、GFAPの発現の活性化が比較的弱い本遺伝子欠損マウスの個体の場合には、Anti-IbaI染色法による強陽性シグナルは認められなかった。このように、ニューロンの障害が進行し重篤化すると(ミクロ)グリアの集合・活性化が生じるということが明らかになった。
実施例7 (本遺伝子欠損マウスにおける、GFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)の発現の活性化状態)
15週齡の本遺伝子欠損マウス(KO-(1)の系統;KO-1〜KO-10)10匹、及び、その出生時の各々の野生型マウスの兄弟(WT-1〜WT-10)10匹、並びに、30週齡の本遺伝子欠損マウス(KO-(1)の系統;KO-11〜KO-20)10匹、及び、その出生時の各々の野生型マウスの兄弟(WT-11〜WT-20)10匹、の各々の個体の全脳を、Trizol試薬(Invitrogen社製)を用いてポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA AG社製)でホモジナイズすることにより得られた組織破砕物から、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って全RNAを抽出し、抽出された全RNAをRNA精製キット(Rneasy kit;QIAGEN社製)を用いて、当該キットに添付された説明書の記載に従って精製することにより、全脳由来のRNA(以下、Total RNAサンプルと記すこともある。)を得た。
得られたTotal RNAサンプル1μgを、Oligo dT(アマシャムファルマシア社製)及び逆転写酵素(SuperscriptII;Invitrogen社製)を用いてcDNAとした後、当該cDNAを鋳型としてTaqMan-RealTimePCR法により、本転写調節因子遺伝子のmRNAの量を定量した。また、TaqMan universal pre-mix(Applied biosystems社製)及びマウス本転写調節因子遺伝子特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製Mm00463644_m1)を用いて、TaqMan Real Time PCR法により、本転写調節因子遺伝子のmRNAの量を定量した。尚、測定は、Applied biosystems社製7900HTシステムを用いたデフォルトモードで行った。
同時に、マウス本転写調節因子遺伝子特異的TaqManプローブの代わりにGAPDH特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製;#4308313)を用いること以外は前記と同様な方法により、GAPDHのmRNA量を定量した。得られた測定値で各サンプルの中の本転写調節因子遺伝子のmRNA量の定量測定値を補正した。このようにして得られた本転写調節因子遺伝子のmRNA量の各定量値は、15週齡の試験区では、WT-(1)の平均の定量値を1とした時の相対値で、また30週齡の試験区では、WT-(11)の平均の定量値を1とした時の相対値で、縦軸に表示した。
このようにして、本遺伝子欠損マウスにおける、GFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)の発現の活性化状態を検討し、その結果を図3Aに示した。尚、図2Aでは、15週齡から30週齡になるにつれて、GFAPの発現の活性化が認められることが判明した。当該結果から、本遺伝子欠損マウスの脳内のニューロンには、神経変性に至る障害が生じた際にそれに伴いGFAPの発現が活性化し、その神経変性に至る障害は週齡とともに重篤になっていくということが判った。本転写調節因子遺伝子が欠損すると、このような現象が生じることから、本転写調節因子の機能の一つは、このような現象が生じないようにニューロンを維持管理するもの(即ち、細胞を保護するもの)であることが確認された。
次に、15週齡の本遺伝子欠損マウス5匹、及び、その出生時の各々の野生型マウスの兄弟5匹、並びに、30週齡の本遺伝子欠損マウス5匹、及び、その出生時の各々の野生型マウスの兄弟5匹、の各々の個体の全脳を、Trizol試薬(Invitrogen社製)を用いてポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA AG社製)でホモジナイズすることにより得られた組織破砕物から、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って全RNAを抽出し、抽出された全RNAをRNA精製キット(Rneasy kit;QIAGEN社製)を用いて、当該キットに添付された説明書の記載に従って精製することにより、全脳由来のRNA(以下、Total RNAサンプルと記すこともある。)を得た。
得られたTotal RNAサンプル1μgを、Oligo dT(アマシャムファルマシア社製)及び逆転写酵素(SuperscriptII;Invitrogen社製)を用いてcDNAとした後、当該cDNAを鋳型としてTaqMan-RealTimePCR法により、各遺伝子のmRNAの量を定量した。また、TaqMan universal pre-mix(Applied biosystems社製)及びマウス各遺伝子特異的TaqManプローブ(XBP-1:Mm00457359_m1、GRP78:Mm00517691_m1、ATF6:Mm01295316_m1、Ern1:Mm00470233_m1、GPX1:Mm00656767_g1、GPX2:Mm00850074_g1)を用いて、TaqMan Real Time PCR法により、各遺伝子のmRNAの量を定量した。尚、測定は、Applied biosystems社製7900HTシステムを用いたデフォルトモードで行った。
同時に、マウス各遺伝子特異的TaqManプローブの代わりにGAPDH特異的TaqManプローブ(Applied biosystems社製;#4308313)を用いること以外は前記と同様な方法により、GAPDHのmRNA量を定量した。得られた測定値で各サンプルの中の各遺伝子のmRNA量の定量測定値を補正した。このようにして得られた各遺伝子のmRNA量の各定量値は、15週齡の試験区では、WT-(1)の平均の定量値を1とした時の相対値で、また30週齡の試験区では、WT-(11)の平均の定量値を1とした時の相対値で、縦軸に表示した。
このようにして、本遺伝子欠損マウスの脳内における幾つかの遺伝子の発現量を検討し、その結果を図3Bに示した。15週齡時点では、いずれの遺伝子も野生型マウスの場合と本遺伝子欠損マウスの場合との比較においては有意な発現量の変動は認められなかった。これに対して30週齡時点では、小胞体ストレス(ERストレス)応答に関わることが知られているXBP-1、GRP78及びErn1の発現量の低下が本遺伝子欠損マウスの脳(正確には、全脳由来のRNA中)で認められた。一方、ERストレス応答に関わることが知られている遺伝子の中でもATF6の発現量の低下は、本遺伝子欠損マウスの脳(正確には、全脳由来のRNA中)で認められなかった。以上より、上記3種類の遺伝子(XBP-1、GRP78及びErn1)の本遺伝子欠損マウスの脳内での発現量の低下は非特異的なものではないと判断できた。また30週齡時点では、酸化ストレス応答に関わることが知られているGPX2の発現量の低下が本遺伝子欠損マウスの脳(正確には、全脳由来のRNA中)で認められた。一方、酸化ストレス応答に関わることが知られている遺伝子の中でもGPX1の発現量の低下は、本遺伝子欠損マウスの脳(正確には、全脳由来のRNA中)で認められなかった。以上より、GPX2の本遺伝子欠損マウスの脳内での発現量の低下は非特異的なものではないと判断できた。そして、これら各遺伝子については、15週齡時点では、野生型マウスの場合と本遺伝子欠損マウスの場合との比較においては有意な発現量の変動は認められなかったことから、いずれも本転写調節因子遺伝子の直接的な下流標的遺伝子ではなく間接的な下流標的遺伝子であることが明らかとなった。
尚、図3Aの下の段パネルで明らかなように、30週齡の本遺伝子欠損マウスの脳では、脳神経細胞の変性に至る障害時に活性化が認められる遺伝子(脳神経細胞の変性に至る障害発生の間接的なマーカー遺伝子)の一種でもあるGFAPの発現の活性化が認められることから、野生型マウスにおいてはERストレス応答に関わる遺伝子、酸化ストレス応答に関わる遺伝子のいずれの場合にも細胞保護のために活性亢進されるべきであるが、本遺伝子欠損マウスの脳においては、通常とは逆にその細胞保護のための応答を構成する重要な遺伝子であるXBP-1、GRP78、Ern1、GPX2の各遺伝子の発現が低下している。当該結果として30週齡時点での本遺伝子欠損マウスの脳は、通常よりもERストレスや酸化ストレスに対して耐性能が低下し、ますます細胞が変性に至りやすくなっている負のスパイラルが形成されていることが示唆された。
実施例8 (本発明検定方法)
本実施例における、本発明検出方法でいう「被験物質」としてはカイニン酸(グルタミン酸アナログ)を用いた。また本実施例における、本発明検出方法の第一工程でいう「接触」はカイニン酸を腹腔内投与することにより実施された。また本実施例における、本発明検出方法の第二工程でいう「測定」は、前述のような、グリア細胞の活性化に係るマーカーであるGFAPの発現の活性化を示す像をAnti-GFAP抗体を用いた免疫染色により実施された。また本実施例における、本発明検出方法の第三工程でいう「評価」は、本転写調節因子を発現する哺乳動物とカイニン酸との接触によってグリア細胞の活性化が生じることを確認することにより実施された。以下、詳細に試験方法を説明する。
15週齡の本遺伝子欠損マウス(NXF-KO)又はその兄弟の野生型マウス(Wild)に対して、生理的食塩水(大塚製薬製)又はカイニン酸/生理食塩水溶液(図中では「Kainate」と表示されている。; Wako社製)を28mg/Kgの割合で腹腔内投与した。投与5日後、各々のマウスを、エーテル麻酔下で4%パラホルムアルデヒド(Merk社製)/PBS液(日水製薬社製)で十分に灌流固定した後、当該ラットから脳を摘出した。摘出された脳をエタノールで脱水処理した後、トルエン中でパラフィン(Fisher Scientific社製)置換することによりパラフィン包埋した。次に、パラフィン包埋された脳のブロックを、クリオスタットミクロトーム(ライカ社製)を用いて約10μmに薄切し、これをシランコートスライドグラス(MATUNAMI GLASS社製)上の薄切切片とした。
上記で得られた薄切切片を、キシレンを用いて脱パラフィンした後、さらにエタノールを用いて脱水処理した。脱水処理後、得られた薄切切片を、PBS(−)(日水製薬製)を用いてすすいだ。このようにして得られた薄切切片を、Target Retrieval solution(DAKO社製)の中で120℃、5分間処理して賦活化した後、得られた薄切切片をGFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)用の免疫染色試薬キット(ヒストファインSAB−PO(R)GFAPキット;ニチレイ社製)を用いて、当該キットに添付される取扱説明書の記載に従って染色した。尚、対比染色は、前記染色処理前の薄切切片の上にマイヤーヘマトキシリン溶液(ニチレイ社製)を滴下した後、室温で1分間反応させ、反応後流水中で30分間洗浄することにより実施した。封入後、検鏡及び検鏡像写真撮影をOLYMPUS社製IX-FLA-DP50システムを用いて実施した。
このようにして、GFAPの発現の活性化がまだ認められない15週齢時点で、本遺伝子欠損マウス(NXF-KO)及び対照として本遺伝子欠損マウスと同腹である野生型マウス(Wild)に対して28mg/Kgのカイニン酸(グルタミン酸アナログ)を投与することにより、そのグルタミン酸神経興奮毒性によるニューロンの障害(即ち神経変性)の出現(尚、これはアポトーシス進行段階を意味する。)に基づく重篤度を検討し、その結果を図4に示した。尚、図4では、上記のように、野生型マウス(15週齢;N=10)に対して28mg/Kgのカイニン酸を投与した場合(28mg/Kg Kainate)には、投与後5日目の脳の海馬部分の薄切切片をAnti-GFAP免疫染色した結果、殆どのマウスの個体においてGFAPの陽性シグナルである点状の茶色濃染像が増加しており、GFAPの発現の活性化が認められた。尚、野生型マウスと同条件下で、28mg/Kgのカイニン酸が投与された本遺伝子欠損マウス(15週齢;N=8)8個体のうち3個体(Animal No.K6,K7そしてK8)が、投与後5日目までに死亡した(Death after injection)。当該結果は、本遺伝子欠損マウスの場合には、カイニン酸の投与によるグルタミン酸神経興奮毒性によるニューロンの障害(即ち神経変性)の出現(尚、これはアポトーシス進行段階を意味する。)が野生型マウスよりも一層重篤に生じることを示している。また投与後5日目までに死亡に至らなかった個体5例では、投与後5日目の脳の海馬部分の薄切切片をAnti-GFAP免疫染色した結果、5例中3例に相当するK1、K2及びK3において、野生型マウス10例で観察されたGFAPの陽性シグナルの程度を超えるGFAPの強い陽性シグナルが認められた。残るK4及びK5においても、野生型マウス10例で観察されたGFAPの陽性シグナルの程度のGFAPの陽性シグナルが認められた。以上より、本遺伝子欠損マウスの場合には、カイニン酸(グルタミン酸アナログ)投与によるグルタミン酸神経興奮毒性によるニューロンの障害(即ち神経変性)の出現(尚、これはアポトーシス進行段階を意味する。)が野生型マウスの場合よりもより、重篤に生じることを明らかになった。
尚、本発明の非ヒト本遺伝子欠損哺乳動物又は同動物細胞は、神経変性に関して検討するためのモデル動物として、ダウン症の既モデル動物の一種である「Ts65Dn」やアルツハイマー症の既モデル動物である「APPSWE(2576)」に比較してより有用である。これらの既モデル動物では、上記の実施例で示されるように、対照の通常の状態の正常動物個体に比較して脳内の本転写調節因子の量が十分の1以下まで低下していないため、本発明の非ヒト本遺伝子欠損哺乳動物の方がより重篤な神経変性を生じる。また本発明の非ヒト本遺伝子欠損哺乳動物は、ヒトのアルツハイマー症患者よりもより重篤な神経変性を生じるのでより有用である。ヒトのアルツハイマー症の患者脳中の本転写調節因子遺伝子の発現量の低下は、上記の実施例で示されるように、本発明の非ヒト本遺伝子欠損哺乳動物のように、実質的に本転写調節因子の機能が欠損しているレベルまでには達しておらず、本発明の非ヒト本遺伝子欠損哺乳動物で認められる神経変性の重篤さよりも軽度である。
参考例1(本転写調節因子遺伝子が含有されてなるベクターであるpGEM-mNXFの調製)
配列番号15で示される塩基配列(aagcacggag gaggaagccg ccggtgcgtc gggac)からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号16で示される塩基配列(ggagagcggc tccacgtctt gatgacaata tgcca)からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。マウスBrain cDNAライブラリー(#10655−017ギブコBRL社製)10 ngを鋳型として、かつ、前記ポリヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。当該PCRにおいて、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、LA-Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いた。PCR反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間次いで68℃3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
次いで、PCR反応液の全量を、低融点アガロースゲル電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供した。約2.5kbのDNAの単一バンドを確認した後、当該DNAを回収した。回収されたDNAの一部とダイターミネーターシークエンスキットFS(アプライドバイオシステムズ社製)とを用いてダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、これを、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル3700)を用いたダイレクト塩基配列解析に供した。
次に、上記のようにして回収されたDNA(約1μg)とpGEM T easyベクター(プロメガ社製)(10ng)とを混合し、この混合物にT4 DNAリガーゼを添加して反応させることにより、pGEM-mNXFを得た。得られたpGEM-mNXFの塩基配列をABIモデル3700型オートシークエンサーを用いてダイターミネーター法で決定した。決定された塩基配列を、前記のダイレクトシークエンスで得られた塩基配列と比較して、翻訳領域の塩基配列が完全に一致していることを確認した。
参考例2(pRC/RSV-mNXFsense等の調製)
哺乳動物細胞内において本転写調節因子の全長を発現させるためのプラスミド(以下、本発現プラスミドと記すこともある。)を、以下のようにして作製した。
実施例1で得られたpGEM-mNXFは、市販のpGEMベクターのSp6プロモーターの下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンが位置するように構築されていた。そこでこのpGEM-mNXF(1μg)を鋳型にして、かつ、配列番号17で示されるオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー 5´-gggcgctgcagcccagccaccatgtaccgatccaccaaggg-3´)および配列番号18で示されるオリゴヌクレオチド(リバースプライマー 5´-aatctcggcgttgatctggt-3´)をプライマーとして、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いたPCRを行うことにより、本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入され、さらにその上流にPstI制限酵素部位が導入された本転写調節因子の一部をコードするDNAを得た。尚、PCRの反応は、95℃1分間次いで55℃30秒間さらに72℃1分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
このようにして得られたDNAをPstIとBssHIIとで切断した後、低融点アガロースゲル電気泳動(NusieveGTGアガロース;FMCbio社製)に供することにより精製・回収した。精製・回収されたDNAを下記で用いるインサートDNAとした。次に、pGEM-mNXFをPstIとBssHIIとで切断した後BAP処理して得られたDNAを低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供し、前記DNAを回収した。回収されたDNA(0.1μg)に上記のインサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、マウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-CCAGCCACC-3')が導入されているプラスミドpGEM-mNXFコザックを作製した。
次に、プラスミドpGEM-mNXFコザックをPstI、NotI及びScaIの3者で同時に切断した後、これを低融点アガロース電気泳動に供し、約2.5kbpのDNA(mNXFコザックPstI-NotI)を回収した。そして、回収されたDNAをT4ポリメラーゼで平滑末端化し、得られたDNAをインサートDNAとした。RSVプロモーターを保有するプラスミドpRC/RSV(Invitorgen社製)をHindIIIで切断した後T4ポリメラーゼで平滑末端化して得られたDNAをBAP処理し、これをベクターDNAとした。このベクターDNA(0.1μg)に前記インサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、(a)コザック配列の下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFsense、及び(b)コザック配列の下流にマウス由来の本転写調節因子をコードする翻訳領域が接続されてなるDNAのアンチセンス鎖がRSVプロモーターの制御下に発現するプラスミドであるpRC/RSV-mNXFantisense(陰性対照として)を作製した。尚、作製されたプラスミドが所望の構造を有することを、ベクターDNAとインサートDNAとの境界領域の塩基配列を調べることにより確認した。
参考例3 (本転写調節因子を発現する哺乳動物細胞等の作製)
まず、約1x107のSK-N-MC細胞(ATCC No.HTB10;大日本製薬より購入した)を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1x107に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。この細胞分散液0.4mlに、実施例2で作製された本発現プラスミド((a)pRC/RSV-mNXFsense、又は(b)pRC/RSV-mNXFantisense)10μgを混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに10cmシャーレ内で約24時間培養することにより、所望の哺乳動物細胞を得た。
本発明により、哺乳動物又はその組織若しくは細胞におけるアポトーシスを制御するための薬剤の有効成分として使用し得る物質を探索するために使用される、アポトーシス制御能力を検定する方法等が提供可能となった。
図1は、実施例1(本遺伝子欠損哺乳動物の作製のためのTargetingベクター及び本遺伝子欠損哺乳動物ES細胞の調製:その1)における試験結果を示す図である。図1Aは、本転写調節因子遺伝子のゲノム上の構造(本転写調節因子遺伝子 Genomic locus)、本遺伝子欠損マウス(即ち、本転写調節因子遺伝子ノックアウトマウス)を作製するために構築されたTargeting ベクターの構造(Targeting construct;尚、pBluescriptベクター部分の表示は省略している。)及びそれにより作製される本遺伝子欠損マウスで欠損する本転写調節因子遺伝子の領域(Deletion region)の位置関係を示した結果を示す図である。図1Bは、実施例2(本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態の確認:その1)における試験結果を示す図である。図1Bは、本遺伝子欠損マウス個体が作製されていることを確認した結果を示す図である。図1Cは、実施例3(本遺伝子欠損哺乳動物におけるノックアウト状態の確認:その2)における試験結果を示す図である。図1Cは、本転写調節因子遺伝子を欠損する「本遺伝子欠損マウス」の個体が作出されていることを確認した結果を示す図である。 図2Aは、実施例5(本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状(アポトーシス進行状態)の免疫染色による確認(その2))における試験結果を示す図である。図2Aは、本遺伝子欠損マウスの脳(30週齡)では、本遺伝子欠損マウスの脳において週齡が進むにつれてニューロンが変性を開始することを直接的に示していること、そして、GFAPの発現の活性化は、ニューロンの変性に反応して生じる例が広く知られていることから、本遺伝子欠損マウスの場合にもニューロンの変性に反応して、GFAPの発現の活性化が生じていること等の結果を示す図である。図2Bは、実施例4(本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状の免疫染色による確認(その1))における試験結果を示す図である。図2Bは、30週齡の本遺伝子欠損マウスの全例ではないが、KO-2の例のように海馬のGFAP(グリア細胞マーカー)活性化が比較的強い例(10例中4例程度)では大脳皮質部分でもGFAPの発現の活性化が認められることを確認した結果を示す図である。図2Cは、実施例6(本遺伝子欠損哺乳動物の脳で生じる症状の免疫染色による確認(その3))における試験結果を示す図である。図2Cは、ニューロンの障害が進行し重篤化すると細胞内酸化ストレスが亢進し、Nitrotyrosine抗原が出現することが明らかになることを確認した結果を示す図である。 図3は、実施例7(本遺伝子欠損マウスにおける、GFAP(グリア細胞の活性化に係るマーカー)の発現の活性化状態)における試験結果を示す図である。図3は、本遺伝子欠損マウスの脳内のニューロンには、神経変性に至る障害が生じた際にそれに伴いGFAPの発現が活性化し、その神経変性に至る障害は週齡とともに重篤になっていくということを確認した結果を示す図である。 図4は、実施例8(本発明検定方法)における試験結果を示す図である。図4は、本遺伝子欠損マウスの場合には、カイニン酸(グルタミン酸アナログ)投与によるグルタミン酸神経興奮毒性によるニューロンの障害(即ち神経変性)の出現(尚、これはアポトーシス進行段階を意味する。)が野生型マウスの場合よりもより、重篤に生じることを確認した結果を示す図である。
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号16
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号17
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号18
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチド

Claims (8)

  1. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力の検定方法であって、
    (1)前記転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞と前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞との両者に、各々独立して、被験物質を接触させる第一工程、及び
    (2)前記第一工程後に、前記哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
    (3)第二工程により測定された活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価する第三工程、
    を有することを特徴とする検定方法。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  2. 前記転写調節因子を実質的に発現しない哺乳動物又はその組織若しくは細胞が、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を欠失させてなる形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞であることを特徴とする請求項1記載の検定方法。
  3. 前記転写調節因子を発現する哺乳動物又はその組織若しくは細胞が、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子が導入されてなる形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載の検定方法。
  4. 被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区における、前記形質転換哺乳動物又はその組織若しくは細胞においてグリア細胞の活性化の有無又はその程度と相関関係を有する指標値を比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質が有する前記能力を評価することを特徴とする請求項1、2又は3記載の検定方法。
  5. 異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が前記能力を有さない物質であることを特徴とする請求項4記載の検定方法。
  6. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に拠るアポトーシス制御能力を有する物質の探索方法であって、請求項1、2又は3記載の検定方法により評価された前記能力に基づき前記能力を有する物質を選抜することを特徴とする探索方法。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
  7. 請求項6記載の探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、該有効成分が薬学的に許容される担体に製剤化されてなることを特徴とするアポトーシス制御剤。
  8. 哺乳動物又はその組織若しくは細胞における下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子に拠るアポトーシスを制御するための、下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAの使用。
    <アミノ酸配列群>
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
    (e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
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